2010

02.09

「太古の血脈」藤木稟

太古の血脈太古の血脈
(2009/10/17)
藤木 稟

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祖父の名は、酒井勝軍。歴史を齧った人間であれば、その名を目にしたことがあるはずだ。酒井勝軍は、明治から大正、昭和にかけて常に日本軍の要職にあり、当時流行した日本人とユダヤ人が同祖であるとする説を唱えた先駆け的存在である。さらに世界を駆けめぐって、ピラミッド日本起源説等を提唱したという、異端の歴史研究家であった。酒井勝一が歴史を志したのは、大いに祖父の影響によるものだ。しかし、祖父が亡くなり、長ずるにつれ、勝一は祖父の異説に否定的な意見を持つようになった。

勝一は、大学の講師を辞め、大阪で進学塾の講師をして二十五年が経つ。祖父の残した手帳に、丹後の伊根に百五十五年に一度だけ海上に現れる島があるとの記述を見つけた勝一は、妻との結婚記念日に旅行を計画していた。だが、その直前に妻が殺されてしまう。戸惑う勝一の前に、自分はサンカ(幻の漂白民)だという男、当麻カヤキが現れる。祖父から託された手帳には、当麻を名乗る者が現れたらその言葉に従うことが明言されていた。勝一は当麻に導かれて、妻と行くはずだった浦島伝説発祥の地に向かう。

この著者のことはまったく知らなかった。大好きな高橋克彦氏による帯の推薦文を見て、高橋氏の「竜の柩」の系譜かな、と手にすることにした。日ユ同祖説、歴史ある寺社仏閣、浦島伝説、秦氏、弥勒信仰、ヒヒイロカネという金属、フリーメーソン、三種の神器、聖徳太子、弘法大師空海、天皇家、キリストの墓、日本ピラミッド。これらのキーワードは、酒井勝軍や竹内文書を齧ったことがある人ならピンとくるだろう。そして彼らを追う狂信的な帝国陸軍に、待ち受ける様々な仕掛けの数々。解釈がつけられていく裏歴史の謎。

こういう伝奇小説は好きだ。でも高橋作品なら必ず場の雰囲気を変えるユーモア系の人物がいる。そういう人物がいない分、全体的に硬い。敵方の組織にしても作りすぎが胡散臭い。だが、それでも知的好奇心をくすぐる内容だった。ただ惜しいのは、独自の解釈に押しが足りないところだ。例え、その説がが無茶苦茶であっても、自分の説はこうだ、と言い切って欲しかった。そうすることによって、その可能性は…、と読者の妄想力が働くからだ。「竜の柩」には、ひょっとすると思わせる力があった。冒険にもワクワクした。それと比べると、本書はカタルシスを得るまでには至らなかった。しかし嫌いではない。惜しいの一言だ。

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    2010

02.06

「パパはロクデナシ」上村佑

パパはロクデナシパパはロクデナシ
(2009/12/10)
上村 佑

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ふすまの向こうには、僕の部屋がある。お気に入りのベッド、オーディオ、テレビ、ゲーム機、パソコン、コミック、カード。小さいながら、僕の王国がある。いや、あった。そうだ、僕は王国を追われた。僕を王国から追い出した張本人は、イビキまでとてつもなく迷惑で、このまま呼吸が止まってしまえと本気で念じたが、通じなかったらしい。なにしろコイツは犯罪者なのだ。しかも凶悪部類の人殺しだ。そしていまだに信じ難いけれど、僕の父親なのだ。ずっと今まで死んだと思っていた。十二年ぶりに帰ってきたコイツの第一声は、「ヒトゴロシで刑務所に入っていた」だった。

本物のヒトゴロシのロクデナシで、極めつけのヒトデナシでカイショナシだ。そう思ったが、不思議と嫌悪感が湧いてこなかった。ホントに訳の分からない人だ。なんで母親がこのろくでも無い人と別れずにいるのか、さっぱり理解ができない。引きこもりの僕を見たアイツは、修行場に行くぞと、男の修行に引きずり回す。今日は競馬で、僕の十二年分の貯金を一秒で無にした。風俗デビューもした。ネトゲに夢中になって、人助けのためにオフ会に参加した。草野球の試合中にアーチェリーで狙われた。父と息子の笑ってホロッとする痛快ドタバタ劇。

少年マンガにありそうな設定をぎゅっと詰め込んだような作品だ。ケンカが強く、ギャンブル好きで、女が好きで、やってることは無茶苦茶だけど、何故か人に好かれる。こち亀の両さんに似てる? 何も考えずに、ぱ〜っと本を読みたい人にはもってこいかも。キャラ読みできて、展開もスピーディーで、もちろん読みやすい。ただ、さらっと読めてしまう分、あとに何も残らないかもしれない。そういう本があってもいいと思う。楽しく読めて、おもしろかったと本を閉じる。エンタメの基本はこれでしょう。続編が出るようなら、ぜひ読みたい。その時に内容を覚えているかは不安だけど。

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    2010

02.04

「お稲荷さんが通る」叶泉

お稲荷さんが通るお稲荷さんが通る
(2009/11)
叶 泉

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「名前は?」「リリカ!」なんて、答えてはみたけど大嘘。あたしの名前は桐之宮稲荷だ。稲荷山の高層スラムに住み、アゴに貼った絆創膏の下には、「ウガ」という役立たずの自称神さまも住まわせている。あたしはそんな生き方をしている可愛い十八歳の女の子!…でも娼婦なの。ここはかつて、経済大国なんて呼ばれていた日本の古都があった場所、中華人民共和国、日本省特別行政自治区。あたしたち日本族は最下層の民族と成り果て、過去の栄光が埋もれた世界で、なんとか生きぬいていかなければならない。衝撃の未来を舞台に、健気に生きる娼婦の姿をユーモラスな一人称で描く鮮烈なデビュー作!第9回ボイルドエッグズ新人賞受賞作。《出版社より》

ふいの事故から、あたしの中に変なものが住み着きだした。自称は宇迦之御霊神(うがのみたまのかみ)。主人公のあたしはウガと呼んでいる。まったく、高貴な血が泣いているわ。しかも、神聖な巫女が処女ではないとは、まったく嘆かわしい。とり憑かれてからウガのこの言葉は何度も聞かされている。あたしの職業が娼婦だからだ。ときおり、お祓いの依頼がくる。昔、日本には「わび・さび」なんてもんがあったらしい。ウガと一緒にお祓いする瞬間は、そんな「いとおしい」って気持ちがあたしにも少しだけわかる気がする。

そんなあたしの前に、八咫烏を宿した漢族の少女が現れた。日本族を毛嫌いする少女の怒りもあって、とつぜん神々のバトルに巻き込まれてしまう。その一方で、好きな人の友達に言い寄られて困り、その友達というのが娼婦仲間の華が想いを寄せる人で、あたしが好きな人は華に対して熱い眼差しで見つめている。嫉妬のせいか、華を邪険にあしらってしまう。そうしたところ、華は悪霊にとり憑かれてしまった。あたしの力では祓えないほどの強いやつ。かつて平安の都を震え上がらせていた最強の御霊、菅原道真だった。

未来の京都。しかも日本は中国の属領で、日本族は大陸から来た漢族によって差別の対象になっている。そして廃神毀釈と呼ばれたものが、神社と日本特有の文化を徹底的に破壊した。だから日本族は神々を信仰していたことを忘れ、そして貧しくて、主人公は食っていくために娼婦をしている。こういうユニークな設定はありだと思う。しかしストーリーが進むにつれ、何かで読んだことがある既視感が続く。そんなありきたりな展開になっていくのはもったいないと思った。

それと作品の構成はあっちに振られ、こっちに振られ、とにかくバランスが悪い。主人公の一日を追ったと言われると確かにそうではあるが、そこはもっとすっきりさせるべきだと思った。好きっぽい感じはある。だけど、独自性があるようで、実際のところはなかった。キャラの特色も、それ以外の要素も、もっと膨らますことができたであろう。一本の筋さえ通してもらえれば、さらなる突飛な発想や展開があっても、読者を世界観に引き付ける力はありそう。次に期待かな。その価値はあると思った。

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    2010

02.01

「シャボン玉同盟」梨屋アリエ

シャボン玉同盟シャボン玉同盟
(2009/11)
梨屋 アリエ

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あぁ、梨屋アリエだ。

「ジグソー・スイッチ」
あたしがそれを見つけたのは、偶然だった。おへそから一本、ひもが垂れていた。ひもは、わずかな抵抗のあと、プチッ、と音を立てて抜けたのだった。あたしのからだは、まるで立体パズルのように、分離してしまった。復元はおもったよりも簡単だった。あたしは理想的な人物になりたくて、いらない部分をどんどんはずして自分を改造していった。すると、いらない部分だけで作られた、もう一人の嫌なあたしが動きだした。

「シャボン玉同盟」
女、女、女。世の中、女のことばっかりだ。ぼくだって興味がないわけじゃないけれど、安直すぎじゃないか。ぼくは大多数の軽薄な連中とは違う。ぼくが求めているのは、もっと尊くて美しくて完璧なものだ。そんな時にぼくは萌え缶を手に入れた。フワフワ浮かんだシャボン玉の中にはハルカがいた。シャボン玉のハルカは、どんなときでもぼくを受け入れてくれた。ぼくにはハルカしかいない。

「世界を征服する前に」
足もとに、なにかがあった。でも、それは目に見えない。なのに明らかに存在する。段の上に重心を移動しようとしたとたん、段は、足の下からするっと逃げた。見えない段は、錯覚だったのだろう。と、都合よく考えることにしたそばから、強い違和感を持つ。クラスの連中が、でこぼこしていた。みんなの足もとが浮いていたり沈んでいたりして、めちゃくちゃになってしまっている。教室のみんなには、この異変が見えていないようだ。

「連れ恋」
ぼくの心の中にタマゴがある。心の中でタマゴの中身が動いていると、ぼくは落ち着いていられなくなる。近頃、タマゴの中身は、新たな動きをするようになってきた。どうやら、そいつは殻の外にでたいようで。親友に見知らぬ女の子からメールが来た。いたずらでなければ、ぼくのところにも送ってくれたってかまわないのに。そのとき、ぼくは動きを感じた。心の中のタマゴの殻に、ピシッと亀裂が走ったのだ。ひよこが孵った。

不可思議な現象のそれら自体を見ると、とても奇妙なものだ。しかし違和感はない。なぜなら思春期の彼らは持て余した感情を心に抱えているからだ。清潔になりたくてやましい気持ちを捨てたい。二次元の女の子に夢中になる。同級生に対して上とか下とかレベルを意識する。ほのかな初恋にドキドキする。そんなもやもやをカタチとして表現したのが本書だ。これを面白いと思ったかたは、「プラネタリウム」「プラネタリウムのあとで」をどうぞ。梨屋アリエの不思議世界が堪能できると思います。

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梨屋アリエ
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    2010

01.31

1月に買った書籍の代金

個人メモです。


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    2010

01.31

1月に買った書籍

単行本
さよならドビュッシーさよならドビュッシー
(2010/01/08)
中山 七里

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文庫本
人類は衰退しました 5 (ガガガ文庫)人類は衰退しました 5 (ガガガ文庫)
(2010/01/19)
田中 ロミオ

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僕とおじいちゃんと魔法の塔(1) (角川文庫)僕とおじいちゃんと魔法の塔(1) (角川文庫)
(2010/01/23)
香月 日輪

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ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)
(2010/01/25)
紅玉 いづき

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雑誌
大人の科学マガジン Vol.09 ( プラネタリウム )大人の科学マガジン Vol.09 ( プラネタリウム )
(2005/09/26)
大人の科学マガジン編集部

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大人の科学マガジン Vol.13 ( 投影式万華鏡 ) (Gakken Mook)大人の科学マガジン Vol.13 ( 投影式万華鏡 ) (Gakken Mook)
(2006/09)
不明

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    2010

01.30

「シアター」有川浩

シアター! (メディアワークス文庫)シアター! (メディアワークス文庫)
(2009/12/16)
有川 浩

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春川巧は生まれて初めて自己表現を叶えた演劇にのめり込み、大学時代に仲間を集って自分の劇団を立ち上げた。巧は脚本と演出を担当する。たいしたものじゃないか、と兄の司が微笑ましく見守っていられたのは学生の間までだった。卒業しても一向に就職せず演劇にかまけているとなると、さすがに眉間にシワが寄る。そのうえ、何かトラブルがあるごとに弟は兄に泣きついてくるのだ。

話は二ヶ月ほど前に遡る。巧が座長を務める劇団シアターフラッグに入団希望者が訪ねてきた。羽田千歳。台詞の巧さと動きの硬さがアンバランスで、良くも悪くも印象的だった。その正体はプロの声優だった。分野は違ってもプロが自分たちの芝居を好きだといって応募してきたのだ。自分の芸で金を稼ぐプロの世界へ届くんじゃないか。

そのためにどうするか。巧の出した結論は役者が総出演するスタイルを見直すことだった。キャストを絞った脚本に、半数近い役者が反旗を翻し辞めてしまった。それに伴い劇団の事務関係を任されている制作というポジションのスタッフも辞めた。そして、この制作が今まで劇団の赤字を立て替えており、辞めるに当たって返せという話になったという。

額は三百万。司は弟の劇団に金を貸すことに交換条件をつきつけた。今から二年で返せ。劇団が上げた収益しか認めない。返せなかったらシアターフラッグを潰せ。債務期間中の資金繰りは俺が管理する。今までみたいなどんぶり勘定が通用すると思うなよ。後に制作として、シアターフラッグの鉄血宰相と呼ばれることになる春川司の、これが誕生だった。

シアターフラッグの黒幕とも呼ばれる鉄血宰相の春川司、その弟で末っ子気質でモテる泣き虫主宰の春川巧、存在自体が場をかき回すディープインパクトの羽田千歳、複雑な思いを秘めている看板女優の早瀬牧子、牧子オンリーの忠犬石丸こと石丸翼など、彼らにはそれぞれにわかりやすいニックネームがあり、キャラの特徴がすごく掴みやすい。

また、みんなで芝居を楽しくやれたらそれでいいよねってサークルの延長だった劇団が、利益を出せなきゃプロじゃないと、お金がすべてという考えで行動し、さらに芝居を作るところが面白い。そこには財務を握る春川司の強権発動があるのだが、まったく嫌味などはなかった。というか、これまでのお金にたいする無頓着ぶりが異常すぎる。

これまでにあった乙女萌えはない。だけど、司と千歳、巧と千歳、巧と牧子など、その恋の前段階ともいえる部分では楽しめるだろう。とはいいながらも、それ以上に春川兄弟のべったりなブラコンぶりが楽しかったりする。作品の最後にはfinと打たれていた。これで終わりはもったいないと思うみんなで覆そう! それを出来るのが読者なのだ。

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有川浩
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    2010

01.28

「結婚小説」中島たい子

結婚小説結婚小説
(2009/12/04)
中島 たい子

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ムリだ、ムリっ。結婚もしたことないのに、花嫁の心境なんか書けるわけがない。続編を書きます。貴世はそう言ってしまったことが、今さら悔やまれてならない。三十代独身女性が奮闘する小説は自分をそのまま書けばよかったが、今度は想像がつかないところを書かなくてはいけない。なぜ結婚はハッピーなのか? 二人で暮らすことで得る安心感ってなに?

そんな時に友人からすすめられたのは、蕎麦打ち合コンにサクラとして参加することだった。潜入調査と称して参加をするが、惜しくも蕎麦による急性アレルギー症状で途中退場。だがその後、合コンに参加していた男性から連絡がきた。同じく潜入取材で参加していた映画作家をしている福原茂夫だった。

ところが、彼が監督撮影したドキュメンタリー作品のDVDを見て、日本にもこんな作品を撮る人がいたんだ、と貴世は感動する。お互いに連絡を取り合う内に、二人は小説と映画という違いはあっても意気投合することになる。彼の方には七年一緒に暮らしていた女性がいたが、その彼女とは別れ、とんとん拍子で二人のつきあいが始まった。

男性とつきあうということは、どのようなことなのか。久しく忘れていた感覚がよみがえる。貴世は小説を書くことを放り出して、彼のために家を掃除したり料理をしている方が楽しいと、恋愛一辺倒に没頭していく。友人や編集者には変わったとか、らしくない姿になったと非難される。でも四十歳を目前にした貴世に見えてくるのは、結婚で。

結婚した人と、結婚していない人の違いって何? そりゃ、するのが世間一般の流れであって、社会的にも結婚していないと一人前じゃないと見られ、それが会社の出世に関わる場合もあるみたいだ。この小説は、「結婚=幸せ」なのか、と何度も問うている。貴世は自然に結婚したいという思いが自分の中にも生まれ、家庭を作りたいという気持ちにもなる。

でも結婚というものが自分の中で漠然としたものであることも、ずっと変わらない。結婚ってなんだろう、夫婦って、家族って、なんだろうと思う。結婚してなにが変わるんだろう。何も変わらないなら、なぜ結婚するんだろう。そんな彼女が出した結論は、社会的にはバッドかもしれないが、自分たちが納得するこういうハッピーがあってもいいと思った。

また、結婚と真剣に向き合いながらも、女友達が定期的に集まるランチの会話が楽しくて、貴世の「結婚小説(仮題)取材メモ」にもユーモアがあって、この著者はつくづくエンターティナーだなあと思う。読者を重くさせない、厭きさせない、そんな工夫が随所に散りばめられ、ページ数は少ないけれど、中島たい子を存分に満喫することができた。

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    2010

01.27

「よろこびの歌」宮下奈都

よろこびの歌よろこびの歌
(2009/10/17)
宮下 奈都

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御木元玲は著名なヴァイオリニストを母に持ち、声楽を志していたが、受かると思い込んでいた音大附属高校の受験に失敗、新設女子校の普通科に進む。挫折感から同級生との交わりを拒み、母親へのコンプレックスからも抜け出せない玲。しかし、校内合唱コンクールを機に、頑なだった玲の心に変化が生まれる――。あきらめ、孤独、嫉妬……見えない未来に惑う少女たちの願いが重なりあったときにあふれ出す希望の調べ。いま最も注目すべき作家が鮮烈に描く、青春小説の記念碑!《出版社より》

デビュー作の「スコーレNo.4」以来、新刊が待ち遠しい作家だ。三作目となる今回の舞台は、少し前に新設された私立の女子高。ヒロインとなる女の子は六人。自分の居場所はここではないと思っている、音大附属高校の受験に失敗した御木元玲。うどん屋の娘だと知られたくなくて、雨が降っても片道一時間の自転車通学を選んだ原千夏。エースで四番だったソフトボールの選手生命を絶たれ、十六歳にして余生だという中溝早希。見えるはずのない人の姿が見え、彼らの声が聞こえる牧野史香。彼氏に家の地下室の核シェルターを見せられて以来、ずっともやもやしている里中佳子。そこそこなんでもできて、勉強もできてクラス委員をする佐々木ひかり。

この学校に集まった子たちにはそれぞれこの学校に来る事情があり、抱えた事情をぶつけ合わずにつきあえる距離感がちょうどいいと思っている。たかが合唱コンクールだった。惨敗したからといって何かに影響があるわけではなかったはずだ。マラソン大会のゴール前で、合唱の指揮者だった御木元玲を励ますために少女たちは歌った。そのすぐ前にあった合唱コンクールではさんざんな出来だったのに、グラウンドで自然に歌われたその歌は、奇跡の歌だった。彼女たちはリベンジする。クラスの合唱を仕上げて発表会を成功させるために。

御木元玲は特別な人だ。その玲がクラスに打ちとけたそれだけで、少女たちは変わっていく。いや、お互いに影響し合うのだ。自分のいる現在を否定し、そうして未来も否定していた。彼女たちは声を合わせることで気づくのだ。いくら現実逃避したところで、ここで生きていくしかない。そうして立ち止まっていた自分を見直して、前へ前へ進んでいく。さらに彼女たちはしみじみと幸運を噛み締める。このクラスになれてほんとうによかった、と。少女たちがたまらなく愛おしくて、読み終わった後、感動で胸が熱くなる作品。大好きな一冊になった。この本をずっと大事にしたいと思う。

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    2010

01.25

「大人の科学マガジン vol.09−プラネタリウム」学研

大人の科学マガジン Vol.09 ( プラネタリウム )大人の科学マガジン Vol.09 ( プラネタリウム )
(2005/09/26)
大人の科学マガジン編集部

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大人の科学編集部は、世界で最も先進的なプラネタリウム・メガスターを開発したプラネタリウムクリエイター大平貴之氏と3年ほど前より、新しいプラネタリウムの企画検討を進めてきた。それが、今回JAXA(宇宙航空研究開発機構)「宇宙オープンラボ」のバックアップの元、かつてない星空を映し出すピンホール式プラネタリウムが完成した。正十二面体の恒星球には、7等星以上、約10000個の恒星データがプロットされている。恒星球の傾きと回転により、好きな場所、好きなの日、好きな時間の星空を投影できる(北半球のみ)。もちろん、これまでのふろく同様、組み立てキットになっている。さらに本誌では、さまざまな改造も紹介しているので、オリジナルへのカスタマイズが可能だ。《出版社より》


写真が充実したコラム等はあるが、なんと言っても、目的はふろくで作るプラネタリウム。箱を開け、パーツを見て不安になる。こんなに少ない材料でいいの?と。疑いつつ、まずは工作に必要な、先が細いプラスドライバー、はさみ、単三電池二本を用意。組み立て方を見ながら、プラスチックを組み合わせ、ネジで固定。次にシールを貼るが、いきなりシールを貼る場所を間違ってしまった。△にシールを重ねろと説明に書いてある。解釈のしかたがややこしい。あと、金具のはめ込みは硬い。手を切らないように注意。自分は、ドライバーをねかせてグッと金具を押さえた。

次に恒星球を組み立てる。説明書を見ない人ゆえのバカをした。表と裏を逆にして、恒星球を作ってしまったのだ。説明書にある保護シートって、パーツを保護していた不透明な紙ではない。ぱっと見てわからないぐらいピタっとくっ付いているシートだ。※保護シートをはがす前は、裏面の方がきれいだった。AとかBとか山谷の折りしろのある部分をくっつけ、はさみを入れて、やっと保護シートが見えてくる。ここの説明は不親切だと思った。失敗を嘆きつつ、失った両面テープを自前のテープで補い、本来の保護シートをびりびりはがして、なんとか完成。

スイッチを入れると、光のシャワーがきらきら。おおー! しかし平衡感覚が狂う。おえっ、気持ちが悪い。歩くとふらふらする。酔う〜。酔う〜。でも光の幻想はありかな。大人の工作って感じで楽しかった。ただ、お値段がお高い^^;


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