2007
浅草色つき不良少年団 (2007/05) 祐光 正 商品詳細を見る |
戦前の浅草には、親を亡くした子供たちが集まった3つの不良少年団がありました。
冬瓜の百合子を頭目に置いた浅草紅色団。やくざまがいの集団である浅草黒色団。規模は小さいが結束力があった浅草黄色団。
漫画家の私が、戦前の浅草の事を調べるために、当時を詳しく知る神名火譲二老人を訪ねる。その老人は、かつての黄色団を率いていた似顔絵ジョージ本人だった。そんな彼から聞いた、戦前の浅草で起こった様々な出来事を描いた連作短編集です。
「幻景淺草色付不良少年團」追っ手から隠れた家で、目覚めたジョージが死体を見つける。
「墨東鬼啖事件」双子の姉妹と、過去の事件が絡んだ、顔がない幽霊騒動。
「瓶詰少女」瓶に詰められた少女と男が、建物ごと消失してしまった事件。
「イーストサイド物語」決闘する二人と立会人の3人が消えてしまった神隠し。
「二つの墓」関東大震災で水槽に閉じ込められたジョージ。黄色団発足のきっかけ。
軽快な江戸弁を話すジョージの号令で、少年達が事件の謎を追うため浅草を走りぬける。順調に調査は進むが、最後の一歩を何故か、紅色団の冬瓜の百合子に持っていかれる。躍動感があって、少年たちがイキイキしていて、モンクなしと言いたいところ。
しかし、審査員の高橋さんが時代考証の精密さがうるさいとのお言葉。まさにうざい。ストーリーと関係ないところを、いちいち掘り下げて描写する必要があったのだろうか。これが読みやすいリズムを何度も邪魔をして、文章の流れを崩す要因になっている。本の後ろにある参考文献の多さを反映させすぎで、作品の質を落としてしまっている。
似顔絵ジョージに冬瓜の百合子。煙草売りの六、天狗小僧の長吉、さくらの慶治。ジャンケン雅、辰吉。彼らが、個性的で、すごく可愛くて、面白く、元気なのだ。それに、平井太郎なんて実在の大物まで登場する。誰かって?明智小五郎の産みの親よ。
これはたぶん続編が出るだろう。その時にはマイナスだった部分は解消されていて欲しい。そうすれば人気シリーズになる可能性はさらにアップするだろう。今後が期待される。
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