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    2007

04.30

「きいろいゾウ」西加奈子

きいろいゾウきいろいゾウ
(2006/02/28)
西 加奈子

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夫のムコさんは、集中すると話を聞かなくて背中に鳥の絵がある売れない小説家。妻のツマさんは、植物や動物の声が聞こえておしゃべりをする不思議ちゃん。ムコさんツマと呼び合う夫婦の、田舎でおくる二人の生活を描いた物語です。

前半部分は、微笑ましくてちょっぴりずれた夫婦の日常が続く。ムコさんとツマさんの暖かい平和な生活に、くすり笑いと吹き出し笑いの連続。ツマの1日の生活のあとにムコさんの日記が追う、という展開で物語が進むのだ。

そこに出てくる登場人物のネーミングセンスが、抜群に上手いんだな。ムコさんの本当の名前は、無辜歩(むこ・あゆむ)だからムコさん。ツマさんの本当の名前が、妻利愛子(つまり・あいこ)だからツマ。肝油ドロップの缶を、頭から被ったのを助けた犬だからカンユさん。隣で飼われているチャボのコソクや、ゴールデンレトリバーのメガデス。どこからこんな発想が出てくるんだろう。そしてこの名づけの場面がまた笑えるのだ。

出てくる小道具もツボに嵌る物がばんばん出てくるのだ。 世界ふしぎ発見!に、五百円貯金。ミロに、キン肉マンのどんじゃら。 なんかむちゃくちゃ波長があってしまう物ばかり。それに出てくるスーパーが「さかえ」ってねー。今は無き「サカエ」のことでしょ。年代もそうだし地域性を感じる二人の関西弁にも、琴線にびりびり触れるのだ。

二人の幸せな日常が続くのかと思いきや、そこは西さんの曲者ぶりが黙っていちゃいない。登校拒否児の大地くんの存在で温かい気持ちになり、やがて東京に帰る別れの場面。そしてツマさんへの大地くんの手紙にほろっときて、良い少年だったな~と思うと、いきなりズドーンと奈落に突き落とされるのだ。 これは「さくら」でもそうだった。

ある日ムコさんのもとに手紙が届き、ムコさんは自分の部屋に閉じこもってしまうのだ。ムコさんにはツマに話したくない過去がある。それは相手を傷つける過去なのだ。そんなムコさんの殻に閉じ篭った態度に、何も出来ずに一人で苦しむツマさんが痛いのだ。

夫婦といえども、お互いのすべての感情や、苦い過去を理解するのは無理だろう。そして問うという行為も、相手を思う心があればあるほど簡単には出来ないもの。いつかは話してくれるだろうと、薄い期待を持つしか出来ない心情がもどかしくて切ない。

そんなひりひりするような緊張感が続く中、ムコさんはある決意をするのだ。ムコさんはツマを失う覚悟をしながら、過去に別れを告げるべく旅立つ。

あとは予想通りの展開でわかっていたが、素直に感動してしまったのだ。二人の奇跡の出会いに、うるるとくるのを我慢し、最後の一行にぽろぽろと涙する。笑いあり、さわやかあり、涙あり。最愛の人の存在の大きさや、夫婦の絆が詰まった良書でした。
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西加奈子
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    2007

04.29

「風精の棲む場所」柴田よしき

風精の棲む場所 (光文社文庫)風精の棲む場所 (光文社文庫)
(2005/06/14)
柴田 よしき

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京都の北山に住む作家の赤間寺竜之介は、ファンだという少女とメールのやり取りをしていた。その少女に、村祭りで奉納の舞をすることになったので見に来て欲しいと誘われる。赤間寺は愛犬のサスケをつれ、北山の奥地にある地図に載らない風神村を訪れる。そこは未開発で、幻の蝶が舞う風精(ゼフィロス)に守られた村だったのだ。

この作品は、猫探偵正太郎シリーズの番外編ともいえるミステリなのだ。主人公は桜川ひとみの師匠であり、正太郎の育ての親である赤間寺竜之介。そして相棒のサスケはチャウチャウの血が混ざった雑種で、正太郎の幼馴染。今回は正太郎が居ないのでサスケがまったくしゃべらない。すんごく残念なのだ。探偵役は赤間寺のおやっさん。彼は関西弁でまったりしゃべるクールなおやじ。そんな彼らが、40年前にタイムスリップしたかのような村で事件に遭遇する。

舞の通し稽古を見に行く赤間寺だが、舞の直後に少女の一人が息絶えていた。たくさんの視線がある衆人環境の中、出口の無い密室で起こった殺人事件だったのだ。

読み進めるとなんだか懐かしい雰囲気を感じるのだが、なんだろうと考える。陸の孤島。時間が止まったような暮らし。土俗の因習。外部の美青年に熱を上げる娘たち。それを苦々しく思う若い衆。衆人環視の中での密室殺人事件。あーっと気づくと、それは横溝正史なのだ。これはオマージュなんだろうか。

ミステリ的なトリックはいまいちピンと来なかった。というかイメージしずらいのだ。でもここで語られる様々なことは面白くて、ふむふむと楽しく読める。ブナの木の神秘。植林の問題。蝶の生息、などをさらりと読ませる薀蓄。

ストーリーは赤間寺のおやっさんの独壇場で、ずんずん進むが少し物足りない。それはサスケがほとんど赤間寺のおやっさんと絡まないからなのだ。しかしラストのファンタジックな最後を飾ったのがサスケだというのがニヤリなのだ。

正太郎シリーズを読んでなければもっと純粋に楽しめただろう。先入観が邪魔をしたのだった。この物足りなさを埋めるには、残りの正太郎シリーズを読めば埋まるだろう。


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柴田よしき
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    2007

04.29

4月の本代の合計金額

計11.202円

やっぱり単行本を買うと金額が大きい。 ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

自分への戒め
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    2007

04.29

4月29日 書店でお買い物

しずく しずく
西 加奈子 (2007/04/20)
光文社

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「通天閣」を積んでるのに買っちゃった。 ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

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    2007

04.28

「ぼくらの心霊スポット」あさのあつこ

ぼくらの心霊スポットぼくらの心霊スポット
(2006/11)
あさの あつこ

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もとは2冊の単行本みたいで、1冊で2冊分が楽しめるお得本でした。


「ぼくらの心霊スポット」
小学六年生のヒロは、キタおばさんの家に幽霊が出るという噂を聞く。キタおばさんの家は村のはずれにあり、3年前から廃屋になっている。ヒロはこの噂を、幼稚園から仲良しのかっちゃんとマッキーに告げる。3人の少年たちは真相を突き止めようと、幽霊屋敷探検をすることにした。


「首つりツリーの謎」
ヒロたちの住む有麗村には、首つりの木と呼ばれる大樹がある。タマを散歩させていたかっちゃんは、その木にぶら下がる2本の足を見たのだ。急いで帰り大人を連れて首つりの木まで戻ると、そこには何もなく消えている。しかしその日から、毎日かっちゃんはある夢を見るようになる。かっちゃんを助けるために、ヒロとマッキーは3人で首つりの木を調べに行く。


素直なヒロに、たくましいかっちゃん、知性派のマッキー、と3人とも魅力的。ヒロには危険を感知するという不思議な能力が昔からある。それを親友の二人はいっさい疑わず、むしろ尊敬しているのだ。こういう人と違う力を持っているのを、認めてくれる仲間が居るっていいですね。かっちゃんは口数は少ないが、正しいと思ったらまず行動するタイプ。そして相棒のタマは頼りがいがある猟犬なのだ。マッキーは外国のミステリが大好きで、謎があるとホームズになる推理好き。

こいつらが前向きな性格でとてもいい奴ら。そして仲間同士の繋がりが濃密なのだ。お互いの悪いところも認め、良いところはそれ以上に理解し合っているのだ。

いつも一緒にいる3人だが、いつまでもこのままでは居られないという日が近づいてくる。その彼らの心理描写がきめ細かくて、彼らの絆の深さにぐっとくる。

ヒロたちのわんぱくぶりでストーリーは展開するが、ラストではヒロの思いが奇跡を呼ぶ。3人の危なっかしさにハラハラし、読了後にはじーんと温かな気持ちになれる。この本を児童書と侮るなかれ。 奇跡と感動が詰まった素晴らしい本なのだ。


おっと、すんごく大事な人物を忘れてた。この人は絶対外せないのだ。ヒロのおばあちゃんが新しいモノ好きでHPを作ったり、レストランかという洋食を作る。 それがすごく微笑ましくて印象的だった。お茶目でパワフルなおばあちゃんにニヤリ笑いなのだ。

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あさのあつこ
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    2007

04.27

「怪盗グリフィン、絶体絶命」法月綸太郎

怪盗グリフィン、絶体絶命 (ミステリーランド)怪盗グリフィン、絶体絶命 (ミステリーランド)
(2006/03)
法月 綸太郎

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グリフィンの表の仕事は、保険会社の保険がかかった盗難品を取り戻すこと
裏の仕事は、「あるべきものを、あるべき場所に」を信条とする怪盗なのだ。

第一部「ニューヨーク」
グリフィンの元に依頼が舞い込んできた。
それはメット美術館にあるゴッホの自画像が贋物なので、本物とすり替えて欲しいという依頼。

第二部「サン・アロンゾ」
作戦名はフェニックス作戦。
ボコノン共和国の首都サン・アロンゾに潜入し、パストラミ将軍の屋敷から人形を盗み出す。

第三部「大統領官邸」
作戦名はフェニックス作戦パート2
人形に隠された謎を追え。(これ勝手に書きました。あしからず。)

これぞミステリ・ランドのコンセプトにぴたりとくる作品ですね。
以前に綾辻さんの「びっくり館」を読んで、おいおいって突っ込んだもの。

怪盗グリフィンが体よりも頭を使って、敵と味方を翻弄し盗むのだ。 まさに怪盗なのだ。
陰謀が渦巻くなか2転3転とドンデン返し。 さらにとっておきの切り札で大ドンデン返し。
子供向けの本でここまで執拗にひっくり返すのか、という大人が居るだろう。
チッチッチッ。 この本に関してはいいんだよ、そんな大人の意見なんて。 
カタカナ嫌いの自分でもさらっと読めたんだから。 ただワクワクと読むだけなのだ。
堅い頭をひねらずに、単純にグリフィンの活躍を楽しむのが正しい読み方。

大人たちよ。 子供の頃にワクワク本を読んでだ気持ちを取り戻せ!
それにはこの本が一番の近道なのだ。 そう、一緒に若返るのだー!!

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法月綸太郎
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    2007

04.27

4月27日 書店でお買い物

後巷説百物語 後巷説百物語
京極 夏彦 (2007/04)
角川書店

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夢館 夢館
佐々木 丸美 (2007/04)
東京創元社

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石川くん 石川くん
枡野 浩一 (2007/04)
集英社

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深追い 深追い
横山 秀夫 (2007/04)
新潮社

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    2007

04.26

「ファミリーレストラン」前川麻子

ファミリーレストランファミリーレストラン
(2004/04)
前川 麻子

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公子と母の和美の二人の視線で描かれた、血の繋がりがない家族のお話です。

「あたらしい・あたし」
お母さんとお父さんが離婚した7歳の公子は、決めないとならない事がある。お父さんの三枝さんと二人で暮らすか、お母さんと一緒に桃井さんと三人で暮らすかだ。大人の身勝手な行動に、何の躊躇いもなく従う公子は健気なのだ。不憫だが下向きな気持ちにならず、明るい公子がとても可愛い。

「空にはためく」
新しい学校に転向し、母の妊娠と死産を経験する公子。子供にはヘビーだ。最初は桃井さんと呼ぶ公子だが、モモちゃんを経てお父さんと呼ぶようになる。子供ながらもしっかりした考えを持つ公子がいじらしいのだ。 この時点で感情移入有り。

「望む力」
公子が中学生のころ、桃井の妹が死に息子の一郎が一人残された。一郎を引き取り、公子に血の繋がらないお兄さんが出きて新しい生活が始まる。公子のどこまでも前向きな姿がさわやかで、なんだか楽しくなるのだ。それに引きかえ、和美の家族に対するモノの考え方が居心地が悪く違和感を感じる。家族を本質的な部分で否定し、役割などと考えるからだ。すごくイラついたよ。そんな考えも桃井の一言で解消され、救ってくれたけどね。

「男の子・女の子」
高校生になった公子にも彼氏が出来、他人の集まりである家族も落ち着いた。一郎がかつて飼っていた犬のバズが出戻りで、新しく家族の仲間入り。ここでは大きな変化は無いが、日常の呑気さが楽しめ幸せな時間。和美の家族に対する考えも落ち着いたしね。


ここまでが序章と言ってもいいかもしれない。まるで児童書のようなお話なのだ。しかしこの先がどろどろとして行くのだよ。一言でいえば昼ドラの世界だな。これまで子供だった公子や一郎が大人になり、和美や桃井と同じ位置にくる。血の繋がらない他人が同居する家族という設定が生きてくるのだ。

章のタイトルだけでも載せとこう。 可愛いらしいタイトルだが中身は深く濃厚。「そういう時もある」「だれかの孤独」「たとえ、あなたが」「あたしらしい・あたし」本の帯に書いてあるからここに書くが、一郎のことを思う公子や和美の死までが描かれている。

届かない思いや、相手の思いの方向に気づく複雑な心情にぐっとくるのだ。切ない描写なのに本の世界にすっぽりと引き込まれ、ページを捲る手が止まらない。一番の読みどころなので詳しく書かないが、血の繋がりに対して公子が悟ったことが全てでしょ。ラストの和美の死の場面では、和美らしくてちょっぴり滑稽だが、鼻の奥にツンときたのだ。

「鞄屋の娘」「夏のしっぽ」と読んできたが、この本が一番好きだな。和美の性に対する薀蓄にふむふむと関心し、たくさんの名言にペンを持ちメモをする。1つ紹介しよう。 「人に好かれたかったら、自分が人を好きになりなさい。人は誰でも、自分を好きになってくれる人にしか好きになってくれない。」 ね、いいっしょ!

「ファミリーレストラン」というタイトルの意味もついでに書いとくか。中華もイタリアンも和食もあるけど決して満足出来ない。だけど落ち着く場所ということ。

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    2007

04.26

「疾風ガール」誉田哲也

疾風ガール疾風ガール
(2005/09/29)
誉田 哲也

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19歳の夏美は、ペルソナ・パラノイアというバンドでギタリストをしている。同じく人気を二分するバンドメンバーで、ボーカルをしていた薫が自殺した。納得のいかない夏美は、自分をスカウトしたいという芸能マネの祐司をお供に走りだす。

読む前はミステリだと思っていたが全く違っていた。青春ロードムービーでしょうか。前半部分はほとんどバンド一色。それも経験者をわくわくさせる細かい描写なのだ。演奏を離れたバンドメンバーの他愛のない会話や、貸しスタジオの風景がとても懐かしい。これだけで経験者はノスタルジーに浸れるのだ。

夏美の愛器は真っ赤なギブソン・レスポール・ジュニア。この楽器を選んだ作者のセンスがすばらしい。レスポールはロックの王道。それを女の子らしく真っ赤にして、小ぶりサイズのジュニアにしたあたりが小粋なんだ。ちょっとマニアックすぎた指摘だろうか。まあ、楽器の説明はこれぐらいにしておこう。 

夏美は容姿も美人で、ギターの演奏も超絶に上手く、大きなオーラを持つ存在だ。これらのことを念頭に置いて、実在の人物を探すが誰も見当たらず。プリプリやショーヤまで遡ったが無駄だった。古いか。性格は無鉄砲で、思ったことをぽんぽん飛ばすが、実は怖がり。かなりな毒舌家でいつもタメ語だが、時に可愛い口調もするので、そのギャップに愛おしくなる。

一方の宮原祐司は元ベースマンで、芸能プロダクションで働くタレ目な男。夏美を見る目が結構エロすぎるが男なら健全な証拠だろう。そんな祐司を夏美は勢いとはったりで引っ張り込み、自殺した薫の本当の姿を探すのだ。この凸凹コンビの会話がむちゃくちゃ面白かった。「くすり」と「ぷっ」の連続攻撃で、中卒の夏美の天然ボケや、漢字の弱いところに萌えるんだ。

薫の自殺の謎や、本当の姿を追いかけるのだが、謎自体はいたって普通。薫の死を夏美がどう受け止めるのかが本筋のようだ。それにしてもバンドものは良い。音楽は流れてこないが、頭の中でロックが弾けるのだ。この作品はぜひとも続編が読みたくなった。天辺っを目指す夏美と、タレ目の宮原サンにまた逢える日を、楽しみに待ちたい。すごく面白かったです。


余談。
オマィ、ダ~リン、ダリン~♪ ダ~リン、ダリン~♪ 
表紙の女の子は、「中ノ森バンド」の中ノ森文子。いいねー。
この本の雰囲気にぴったりで、高感度UP!

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誉田哲也
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    2007

04.25

「幻をなぐる」瀬戸良枝

幻をなぐる幻をなぐる
(2007/01/06)
瀬戸 良枝

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第三十回すばる文学賞受賞作の「幻をなぐる」と「鸚鵡」の二編が収録。

「幻をなぐる」
中川は4年ぶりに再会した奴と何度か会ううちに大人の関係を持つ。その翌朝、奴は宗教のことを持ち出しセックスもその一環だったと言う。奴を忘れるために、中川は就寝時間以外はワークアウトをすることにしたのだ。

この設定はなんだろう? 男を忘れるために、マシン、スイム、ラン、ヨガ、と身体を鍛える女。その後、昔の知り合いの女から電話があり、あさみも、たまこもみんな姉妹だと言われる。
うーん、ほんとにどうなってるの?って感じなのだ。そして挙句には、奴を思い出すだけで収まらずに幻覚まで見る妄想っぷり。

ストーリーや文章はともかく、自虐的な壊れ方が突き抜けていて滑稽なのだ。でもこれは好き嫌いが別れるだろうと思う。解らない方にはまったく理解出来ないだろう。こう書きながらも自分が理解しているかというと、めちゃめちゃ微妙なんだな、これが。難解な心理描写や解りにくい表現が多く、独特な世界にすんなり入れなかったことは確かだ。


「鸚鵡」
自殺した姉の現場に居合わせ女性と葉子との不思議な世界を描いた作品。

まずはじめにタイトルは「おうむ」と読む。書けと言われても書けない漢字やな。姉の葉子は弟の親友とセックスにあけくれる。そこには愛情などこれっぽっちも無い。ただの肉と肉のぶつかり合いなのだ。描写がめっちゃキモすぎ。うげーって感じ。

こちらも独特な壊れた世界ですごく難解。登場人物をこれでもかと苦しめるのだ。そこに救いはなく、読者はただ苦しい、と思いながら読むだけなのだ。

だけど弟くんの壊れ方がツボに嵌り、むちゃくちゃ好きだった。家で飼っている弟くんの会話を真似する鸚鵡のしゃべりも、笑える要素が満載。「お前を壊すぐらい造作もないよ」「いつでも返り討ちにしてやるよ」これ鸚鵡のしゃべり。

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    2007

04.24

「桜川ピクニック」川端裕人

桜川ピクニック 桜川ピクニック
川端 裕人 (2007/03)
文藝春秋

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お父さんたちの短編集ですがそれぞれリンクしています。


「青のウルトラマン」
近所に虐待されているらしい子供がいる事に気付く、在宅勤務の川崎恵。

表紙のイメージで読んだらぶっ飛んだ。 なんという重い作品なんだろう。
帰りの遅い母を迎えにきた長男。 そんな長男を一人歩きは危ないと殴る母。
児童虐待に証拠がないと動いてくれない行政。 うーん、重すぎる。


「前線」
実家で療養中の妻の代わりに、産休をとって子育をする千葉慎二の憂鬱。

戦地での壮絶な少女と、今時の女子高校生を比べて考えこむ。
嫌な雰囲気でストーリーは続くがラストに救いがありほっとした。 終わり良ければです。
こんな見方もあるんだなーと、ちょっぴり感心。 あ~、良かった。


「うんてんしんとだっこひめ」
出産を控え入院中の妻に代わり、仕事の合間に長男と見舞いに通う矢島治の長男との約束。

言葉が不明瞭な幼い子供と、言葉を理解しないまま買ってあげると約束するお父さん。
タイトルの言葉を推理するゆるーいミステリです。
お母さんと中々会えない寂しさと、お兄ちゃんになるという自覚がすごく心に響いた。


「夜明け前」
保育園のパパ交流会を開き、夜の街に繰り出す九條誠と矢島治(やっさん)。

これまで真面目一筋だったお父さんたちが、今夜は弾けるぞーと頑張る姿に失笑。
やっぱり慣れないことを無理しちゃいかんね。 なんだか悲しくなるよ。


「おしり関係」
娘から「おちんちん、いつはえてくるの」と聞かれた川崎恵。

ぷぷぷっ、笑えたー! 娘が生まれると避けては通れない質問にお父さんが苦戦。
娘の立てた間違えた仮説を、正しい仮説に導き出そうとする姿に爆笑。
そしてパンクに燃えるお父さんの、はっちゃけぶりにまた爆笑。 これが一番好きだった。


「親水公園ピクニック」
保育園の交流会で、近くの公園でバーベキューをする事になった子供たちとその家族。

これまでに出てきたお父さんたちが勢ぞろい。 ラストを飾るにはぴったりの作品だ。
公園内を探検するお父さんと子供たちだが、大人の方が子供っぽくて温かな気持ちになれるのだ。
こんな休日に憧れるなー。 でも虫嫌いなので無理か。 ちょうちょやトンボでも怖いもん。


色んなお父さんが居ましたね。働きながら子育てするお父さんや主夫のお父さん。
次の出産を控え子供と二人で過ごすお父さんなど、えらいお父さんたちがイッパイ。
頑張るお父さんの姿が微笑ましいが、実際には少ないんだろうな。

お母さんたちよ。 この本を読んでこんなヤツ居らん!と嘆かないでね。
「月に向かって吠えたくなる」お父さんが居ることも、忘れてはいけないのだ。

でもまともなお母さんが出て来なかったですな。 そのあたりがリアル感に欠ける一因か。
まあこの本のコンセプトがお父さんだからかな。 尻上りに面白くなっていく短編集でした。

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    2007

04.23

「竜巻ガール」垣谷美雨

竜巻ガール 竜巻ガール
垣谷 美雨 (2006/10)
双葉社

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小説推理新人賞受賞の表題作を含む4つの短編集です。

「竜巻ガール」
父が再婚することになり、ぼくには同い年の妹が出来ることになった。
そこに現れたのは、陽に灼けたパンダのような生き物。 そう、ガングロ娘だった。

主人公である僕が、突然妹になった涼子に振り回される。 まさにタイトル通り。
辛い過去を持つ涼子のしたたかさには唖然とした。僕の周りで起こる出来事が全て計算ってねー。
でもこれが可愛いくて惚れてしまうのだ。 男ってつくづくとバカだね。
この作品の続きを、長編で読みたいと思うのは自分だけだろうか。


「旋風マザー」
俺の父はインチキ商売をし、行方不明を装って家でひっそりと暮している。
そんな所に出て行ったお袋が現れ、親父の代わりに離婚届を書いてくれと用紙を置いていく。
その後ボランティアを名乗る絵美という女性が現れ、親子二人の生活に変化が生まれる。

この作品もすっごい面白かったのだ。 まるでブラックな漫画のような世界なのだ。
短編という長所を存分に活かし、ドキドキさせた後のラストは圧巻。
上手い!と、ぽんっと手を打ちたくなるんだな。


「渦潮ウーマン」
会社の上司の昭夫と2年前から愛人関係だった私は、二人で温泉旅行に出かけた。
二人で温泉に入るが、すぐ横に流れる川で昭夫が泳ぐが急流にのまれ流されていく。
フロントに助けを求めた私はそのまま逃げた。 なぜなら二人の関係は秘密だからだ。
その後、昭夫が死んだことを知るが、何もなかったように過ごすが…。

これまで知らなかった昭夫のことを、次々と知ることになる女。
そして疑心暗鬼に陥り暴走していく事になる。 嫉妬や妄想に狂う女が怖いのだ。
でも、その挙句にとる行動や結末には笑えるのですがね。
遊園地の急流滑りのように落ちたあとの静かなため池。 
こんな着地点がすごく好き。 気持ちいー!


「霧中ワイフ」
年下の夫の入院中に、夫の職場のロッカーの中の荷物を引き上げることになった妻。
そこには夫の祖国の中国からの手紙の束と、女の人と子供と一緒に写っている写真があった。

夫の秘密の手紙について妻は自分で調べようとする。 しかし周りに居る人物が曲者ばかり。
40代の女性の微妙な気持ちはリアル感があって、なんとなく分かるんだ。
そして夫の退院後に二人が出した結論は、うーん、普通ならオッケーなんでしょう。
でも腑に落ちないと感じる自分が居る。 何故かというと、これが中国人だからなんだろう。
中国人のしたたかさというか、厚顔ぶりを邪推してしまうのだ。
偏見では無く実体験なので勘弁なのだ。 この事についてはここまでにしとこう。 

 
デビュー作でこれほど読ませるとは、これからがもっともっと楽しみ。
また新しく追いかけたくなる作家が増えたのだ。 要ちぇ~っく!

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垣谷美雨
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    2007

04.22

「がんばっていきまっしょい」敷村良子

がんばっていきまっしょい がんばっていきまっしょい
敷村 良子 (1996/07)
マガジンハウス

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「がんばっていきまっしょい」
松山東高校に入学した悦子は、ボート部に入部しようとするが女子の部が無い。
そこで悦子は女子ボート部を作り、メンバーもぎりぎり集まり始動する。
悦ネエこと悦子、ヒメこと敦子、ダッコこと多恵子、リーこと理恵、イモッチこと真由美。
素人ばかりで新人戦に出るが惨敗。 大野夫婦のコーチを受けてボート部が成長していく。

想像していたより大人しいですな。 もっときゃぴきゃぴしていると思っていた。
それに人物が掘り下げて描かれていず、上っ面を読まされたような感じで期待はずれ。

でもボートレースの場面は、専門用語は分からんが熱さだけは伝わった。
何か物足りないと思っていたら、その後が描かれた「イージー・オール」が良かったのだ。


「イージー・オール」
悦子たちのボート部卒業までと、悦子が新たに見つけた夢へ向かう姿を描いたお話です。

悦子の苦悩や前向きになる姿勢。 そして自分に出来ることを見つけ、羽ばたく姿が眩しいのだ。
薄っぺらかった女子ボート部の面々も少しはマシになっている。 少しだけだが。

しかし前に影が薄かった関野ブーやテンマ・カケルが、魅力的だったのだ。
それに性格が掴めなかった悦子もいきいきしている。 
この前のお話とのギャップは何なんだ? こっちの方が断然と面白いじゃないか。

最悪の出来事も考え方を変えれば何とかなる。 それを実践する悦子が素敵だ。
自分の役割が変わっても、仲間たちと同じ目標には向かえる居場所がある。
それに気づくまで、暖かく待ってくれるすばらしい仲間たちが居る。

うーん、いい話ではないか。 ちょっぴりじーんときましたぜ。

それに恋かどうか自分では分からないが、気になる異性を目で追いかける。
そして他の異性と話すのを見て、微妙な感情を持つことに戸惑う姿がとても瑞々しいんだな。

こういうベタなのすごく好きよ。 甘い恋が懐かしーい! レモンの香りだっけ?
ひたむきに毎日を生きる悦子たちが、昔を思い出させてくれたのだ。



余談。
部の練習風景やボートのややこしい説明よりも、日常生活や学園生活を前面に出した方が面白い。
こんなことを個人的に思ったのだ。 これは暴論になるのかな。
でもレースのシーンだけは良かったけどね。 
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    2007

04.20

「夏休み」中村航

夏休み 夏休み
中村 航 (2006/06/03)
河出書房新社

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マモルとユキは、倍率30倍の都民住宅の抽選に当選し、その勢いで結婚する。ある週末、ユキの友人の舞子さんと結婚相手の吉田くんが遊びにきた。ユキと舞子の仲良しぶりに、微笑ましく思う男二人。夏になった頃、吉田くんが「10日間ほど留守にします」とメモを残し家出した。それに対抗する女二人組。帰ってきた吉田くんとマモルの、奇妙な夏が始まる。

家出をした吉田くんはどうしてるんだろうと、3人が集まったときの会話。「借金取りから逃げる吉田くん」「国家機密を握ってしまった吉田くん」「駆け落ちした吉田くん」「盗んだバイク走り出す吉田くん」などと、吉田くんの家出をお気楽に言い合うのだ。そのあとに、ユキの「家出には家出だ。仕返しをするんだ。」と旅行を計画。なぜそうなるのだ~、という突っ込みは今更しない。なぜならこれは中村航だから。

結局マモルは仕事があったので、女二人で旅行に行ってしまう。その後、メモの通りに帰ってきた吉田くん。その吉田くんが帰ってきたときの、舞子の残していた言葉が洒落ている。それは吉田くんが家出のときに置いていったメモを皮肉ったものだった。「10日間ほど留守にします。必ず帰ってきます。心配しないでください。直人」に対し、「一週間ほど留守にします。必ず帰ってきます。心配しないでください。舞子」女性って、こういうところが本当にあるから怖いのだ。

一緒に女性陣を追いかけて誤るべきだと、マモルは吉田くんを誘う。しかし宿泊先についても女性陣の姿がない。女性陣からたびたび電報はくるが空振りばかり。やっぱり女性が怒ると怖いのだ。男2人はお釈迦様の手の上の悟空のような感じなのだ。怖えー!

その後も振り回されたあとには大一番の勝負が待っている。それはここでは書きませんので、読んでみてください。女性陣の行動がすべてを握っていた。惚れた弱みの男たちとでも言おうか。しかし舞子さんもそうだけど、ユキの性格はぶっ飛んでいたな。これには「リレキショ」のウルシバラさんを思い出したのだ。

振り回されながらも、マモルと吉田くんも楽しそうにしていた。無邪気だな。それに会話や行動はまるで子供のようで、読んでるこちらも楽しくなったのだ。それに最後の勝負の仕方が、現代風といえば現代風だ。おかしな事はおこりませんが、ちょっぴり不思議な世界で、ストーリー自体はさらりとした雰囲気で、ほんわかした余韻が残った。でも表紙と内容のギャップはすごく感じた。しかしこの表紙はすごく好きだ。額に入れて飾りたいぐらいに大好きなのだー。

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中村航
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    2007

04.19

「夏のしっぽ」前川麻子

夏のしっぽ 夏のしっぽ
前川 麻子 (2007/02/01)
講談社

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読み始めはあまりのえっちさに、ここに書くのを止めようと思った。しかし後半の「千代に踏まれて」から、すごく良い作品だったので感想を書くことにする。

「夏のしっぽ」
初子が小学生のときに母が家を出た。初子は40代になるが未だ父と二人暮らし。ある日、家を出た母から結婚式の招待状が届く。新郎はかつての初子の恋人だった。
かつての恋人との性の行為を思い出し、それが現在母とそうのかと想像する。うげー。とにかく気持ちが悪い。これ以上のことを初子はしますが、ここには書けない。初子の人生と、母の人生を考える作品でした。枯れた父親がいい味を出していたな。

「宴の夜」
英治と亮子の結婚式当日に、英二の周りで様々なことが起こる。小さな町なので、気心が知れた連中たちがどんちゃん騒ぎをする中…。
英治が過去を振り返る場面は良かったが、全体的にあまり気持ちが良くなかった。茶目っ気のある亮子が唯一の救いかな。

「下田のモーツアルト」
孝利と治美の夫婦、それと内田夫婦はお互いのパートナーを替える夫婦交換をすることに。二組の夫婦は下田の温泉旅館で落ち合い…。
なんかすっごいエロなんですけど。 読んだことが無いですが、官能小説みたいでドキドキ。

「三が日」
30歳になる娘の幸子と結婚相手の一郎が、母の利江の住む家で三が日を過ごす。ネットで知り合い出来ちゃった婚をした娘。 そんな娘に嫌悪する母親を描いた作品?
この話は意味がまったく分からないのですが…。何が言いたいのかさっぱりだ。う~ん、理解に苦しむ。母と娘の心の歪さを描きたいのかな。

「故郷の女」
20年ぶりに帰る故郷には、かつての亡き兄の女であり唯一手を出さなかった女が居た。
友達の嫁と関係を持つしどうなるかと思いきや、読み終わるといい話なのだ。何なんだこれは?えっちな部分を除いて読みたかったんだな。

「千代に踏まれて」
真治がアパートに越してすぐ、千代と首輪に名前を書かれた猫が迷い込んだ。そのうち飼い主の許へ帰るだろうと好きにさせていると、そのまま居ついてしまった。不動産屋に勤める真治は、ダイアナというスペイン人の女に部屋を紹介する。後日再会した真治は、ダイアナの勢いにおされ婚姻届を出し同居することになる。すると猫の千代は真治の部屋に入らないようになったのだ。
バカな男が外国人の女に騙され、戸籍を作ったあと逃げられるお話です。まったく部屋に入らなくなった猫の千代だけが、知っていたんでしょうね。これぞ動物的カンってやつでしょうか。すごく好きな作品でした。

「金の朝」
興一郎と由佳の夫婦はセックスレスになって10年経つ。過去に由佳が事故に遭い、お腹の中の子を死産させたのが原因だった。近くに住む興一郎の両親の家で一晩過ごすことになり…。
両親の二人の心の繋がりを知り、上手くいっていない夫婦に奇跡が起こる。と~っても素敵できゅんとくる、この本の中で一番好きな作品でした。

「つるかめ」
もうすぐ65歳になる庄司毅は、コインパークの巡回の仕事をしている。あと3日で定年を迎えるという日に若い女性と出会い、お昼を公園で食べる約束をする。
歳をとった男が若い女と知り合い、自分の都合の良い想像をしてにやけるのだ。そして女の私生活を覗き、勝手に失望したりする。 男は幾つになってもアホですね。

全体的に男女のあちらの描写がかなり刺激的。露骨すぎるとも言えるが。ここには書けない単語がぽんぽん出てくるのに、最初はビックリ。しかし最初に書いたとおり、後半の作品がすごく琴線に触れたのだ。以前に読んだ「鞄屋の娘」とは全く雰囲気が違うが、大人が読む分には許容範囲か。


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その他の作家
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    2007

04.18

「図書館内乱」有川浩

図書館内乱 図書館内乱
有川 浩 (2006/09/11)
メディアワークス

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「図書館戦争」より先にリアル図書館から順番が回ってきてしまい、焦っりまくった「内乱」なのだ。ほんとに乱だった 順番通りに読めて良かったー、とほっと安心。

過保護な親に、戦闘職種に配属していることを白状していない郁。そこに郷里の両親が、郁の勤め先の図書館を見学しにくるという。親相手に言葉は噛むは寝ながらうなされる郁は、両親にはしどろもどろ。母はのん気だが、父が郁の仕事ぶりを試したりするのだ。

郁の乙女ぶりが母の遺伝だと分かる場面にニヤリ笑い。こういう細かいの好きだな。郁の父に、郁の仕事に関する評価を話す堂上には惚れるんだな。堂上にラブなのだ。

次に小牧のことを密かに思う、耳に障害を持った毬江が登場。小牧は毬江に「レインツリーの国」を勧める。リンクがあると聞いていたのはこれだったのか。しかし随分前に「レインツリーの国」を読んだので、すでにうろ覚えなのだ。いかんなー。この「レインツリーの国」が、聾唖者に難聴の登場人物が出てくる本を薦めるのは差別だと、小牧は良化特務機関に無理やり拘束されたのだ。

聾唖者を差別するなと、声を上げる人物が一番差別している可能性は痛切に感じたな。これは誰にでも当てはまる問題だろう。 人間の傲慢さというか押し付けは確かにある。

堂上の堅物ぶりに女性組が勝手に行動し、解決後の郁が堂上を詰る場面は恥ずかしかった。上から目線で勝ち誇るが、いつの間にか堂上の身を心配する発言をする郁。きゃ~って感じ。

柴崎が利用者の朝比奈に誘われ食事に行くことになるが、それを偵察に行く郁と手塚。柴崎と目が合うたびに「てへっ」って笑う郁がとても可愛いのだ。きゅん。

ここでは柴崎の裏の顔が描かれているが、すべて計算する女って恐ろしいですな。そしてもう一人の恐ろしくてキツイ女が、広瀬という柴崎の同僚だ。好きになった男が柴崎を好きだというだけで、影でうごめく妖怪なのだ。怖え~!

図書館のHP上で「一刀両断レビュー」として、本を酷評しているのを発見する。そのレビューを書いてるのが、手塚と同部屋の砂川という図書館員だった。この砂川が事件を起こし、共謀者として郁の名前が出てくるのだ。

自分も本の感想を書いているので、耳が痛いお話なんだな。 気をつけよう。

ここでは原則派と行政派の対立の中で、手塚の兄の慧が重要人物として登場。手塚兄弟の対比は中々面白い。けれどもそれ以上に郁と堂上の二人の会話にきゅん。二人のベタ甘な会話にニヤリと笑い、いい大人がトキメキまくり。

それと新たに小牧と毬江の二人の今後も楽しみだ。要チェックなのだ。

ますます続編に期待を残した終わり方は絶品。 はやくリアル図書館で「危機」の順番が回ってくるのを祈るのだ。


余談
ベタた甘い恋が大好きなので、男なのに乙女推進委員会に入会している。今回も「きゅん」っとしながら目じりが下がり、よだれをずずっと啜りニヤリ笑い。いい大人が何たる低落なのだろう。でもいいのだ。乙女心万歳なのだ!

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有川浩
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    2007

04.17

「図書館戦争」有川浩

図書館戦争 図書館戦争
有川 浩 (2006/02)
メディアワークス

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公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律「メディア良化法」が施行された日本。それに対抗するのは、図書館の自由を下敷きに作られた「図書館法」を持つ図書館のみ。良化特務機関の武力行使に対抗するため、図書館は図書を守る「図書隊」を組織する。

笠原郁は高校時代に書店で大事な本を検閲から救ってくれた王子様に憧れ、関東図書隊に入隊。しかし訓練を受ける郁と、教官である厳しい堂上とは喧嘩が絶えない。図書を守る最前線である防衛員を希望していた郁だが、エリートである図書特殊部隊に選ばれる。そこには、教官であった堂上、堂上の同僚の小牧、エリートだが性格悪の同期の手塚が居た。


面白いという情報は様々なところから入ってきたが、リアル図書館の順が回ってこなかった。読み終えてみて、こんなに面白いなら買っても良かったかも。と思うのは自分だけだろうか。

郁は田舎育ちで単純で純粋。きゃんきゃん吠えるが心は乙女。どんな設定なんだ。おまけにドジでミスを連発し、時には暴走しまくるが何故かすぐに泣く。これだけ読めばイメージが沸かないだろう。だが、問題無くすべて有りなのだ。

堂上は熱血タイプで厳しいが、郁にはチビと言われお互い意地を張り合い喧嘩が絶えない。しかしいざというとき優しく、実は郁の思う王子様だったりするのだな。

手塚はエリートで、郁のように能力的に劣る者と同等の立場にいるのが耐えられない。だけど後半部分から郁のことを認めだし、いつのまにか無くてはならない存在になる。

柴崎は郁の同期で図書館員。明るい性格で物事をズバズバいうが、情報収集能力に長けている。郁のルームメイトで、部屋での二人の開けっ広げなしゃべりが笑いを誘う。

小牧は堂上の友人で良き理解者。笑い上戸でソフトなあたりで感じは良いが正論好き。実はいま「内乱」を読み始めているので、ぽろっと書きそうだが我慢なのだ。

これらのキャラがとても個性的で良いのだな。 一部のキャラが「海の底」を思い出したが。読んだ方はわかるよね。潜水艦乗りのあの二人に似てなかったですか?まあいいか。

郁と堂上の関係が、ベタで、クサくて、小恥っずかしくて、にやり笑いが止まらない。堂上にドロップキックをかます郁。小言をくらって悪態をつく郁。しかし尊敬している郁。郁の失敗をさらりと庇う堂上。へこむ郁の頭の上に手を乗せる堂上。肩まで貸す堂上。このベタな展開がなんと言っても本書の醍醐味なんだな。

この本の設定にはあえて触れません。深く考えずに彼らの会話や行動を楽しむだけ。

郁と堂上の二人の関係や、郁が憧れの王子様にいつ再開(?)できるのか。郁を突っ込む柴崎をわははっと笑い、手塚のぽつりとこぼす言葉にくすりと笑う。これらを存分に楽しみ、にやりと笑い続ける幸せな時間を過ごすだけなのだ。

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有川浩
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    2007

04.16

「さくら」西加奈子

さくら さくら
西 加奈子 (2005/02)
小学館

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僕こと薫、もてもてでヒーローだったお兄ちゃん、きれいで暴力的な妹、両親。そして犬のさくらを加えた長谷川家。お兄ちゃんの恋、僕の初恋、妹の変わった友達。それらの中心に何時もいたさくら。ずっと続くと思われた幸せな日々が、兄の死で壊れる。彼ら家族に妹のミキが生まれた所から、長谷川家が再生するまでを描いた家族小説です。

ミキの誕生や、男兄弟ならではの共有した秘密。さくらが家族に増えて暖かく笑いが絶えない家族。そんなとても良い雰囲気で幸せいっぱいの家族が、前半部分で描かれている。少し兄弟や兄妹間がべたつき過ぎのように感じたが、あれぐらいの仲の良さには憧れる。自分には妹しか居ないので、兄と男同士で遊んだりあんな会話をしてみたいと思ったのだ。そんな家族が兄の死によって、ずどーんと一気に哀しみと絶望に落ちる。冒頭でお兄ちゃんが死んだことが分かっているが、その落差の分だけ胸にくるのだ。

美しかった母は過食で激太り、朗らかだった父はどんどん痩せていき、ついには家を出る。妹のミキは、報われない恋にがんじ絡め。 そんな時にさくらの身体に異変が起こり…。あれは奇跡なのか。いや、たぶん奇跡だろう。笑いの奇跡に万歳なのだ。

はっきり言ってしまえば直球ど真ん中。 ガツンとノックアウトされたような大好き本。絶妙な関西弁でくすりと笑いを誘い、動物好きなところをコチョコチョと擽られる。さくらさんのしゃべりに、うーん溜まらんと身を捩る。犬好きの方は必読の本なのだ。

動物と同居をすると、なぜか家族の中心に動物がくるのも事実。さくらの体調が悪くなった時のあたふたぶりが、すごく身に染みたのだ。これでさくらまで殺したら、確実に西加奈子さんを嫌いになっただろう。嫌いにならずに済んで良かったと、ホっとしている。

西さんがあとがきで言っていた、モデルになったサニーちゃんの尻尾のお話が良い。サニーはいつもぱたぱたと尻尾を振り、皆に元気を与えてくれる。 「私も尻尾を振ろうと思う。 私は全力で、尻尾を振ろうと思う。」 あとがきで、うるっときたのだ。はははっ、笑ってくれたまえ。 これだけで西加奈子のファンでは無く、大ファンになったのだ。動物好きに悪人無し。勝手な思い込みだがこれでいいのだ。ぬわはははっ。

今回は西加奈子さんを初読みだったが、これからガンガン読んで行く予定。すでに「きいろいゾウ」「通天閣」が手元にある。そう、1冊も本を読まずに3冊も積んでいたのだ。そろそろデビュー作の「あおい」が文庫化しそうだ。 これも楽しみに待つことにしよう。

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西加奈子
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    2007

04.15

「仮面山荘殺人事件」東野圭吾

仮面山荘殺人事件 仮面山荘殺人事件
東野 圭吾 (1995/03)
講談社

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結婚式を一週間後に控えた高之だが、婚約者の朋美が車の運転中に事故で死ぬ。それから3ヵ月後、高之は朋美の父の伸彦から別荘に招待される。別荘には8人の男女がいた。高之に、朋子の両親である伸彦と厚子。伸彦の秘書の下条玲子に、朋子の兄の利明。朋子の従妹の篠雪絵に、篠家の主治医の木戸。それに朋子の親友だった阿川桂子。

彼らが集まる夕食後のひと時に、朋子の死に不審なところがあると話題がでる。そんな事があった夜に、逃亡中の銀行強盗が別荘に侵入した。8人が監禁されるなか、新たな謎の殺人が起こり、お互いが疑心暗鬼になる。

以下、ネタバレありです。

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東野圭吾
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    2007

04.14

「蹴りたい背中」綿矢りさ

蹴りたい背中 蹴りたい背中
綿矢 りさ (2007/04/05)
河出書房新社

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高校一年生のハツは、クラスメートの軽いノリについていくことが出来ず馴染めない。ある日の授業中、同じくクラスに馴染まないにな川くんに声を掛けてみた。彼は女性雑誌を読んでいて、ハツはそこに載っているモデルを生で見たことがあったのだ。実は彼がオリチャンというモデルの熱烈なファンで、オリチャンの事を教えて欲しいと言う。ハツとにな川の、クラスで浮いた者同士の不思議な関係が始まる。


多数の中に埋もれることを嫌い、クラスに馴染もうとしないハツ。ハツと同じく一人でいるのに、何もそぶりも見せないにな川。似た者同士だが、理解出来ないにな川に対するハツの屈折した感情が面白いんだな。初めはオリチャンへのオタクぶりを不思議そうに見るハツが、捻じ曲がった感情を持つのだ。それが本のタイトル。熱心にオリチャンの事に没頭しているヤツの背中を蹴りたいという衝動だ。

そして好きという感情ではないが、にな川の姿を意識するハツ。親友が新しい友達を作り自分から離れていくのを、ぐじぐじと眺めるハツ。オリチャンに足が速そうだと褒められ、実は嬉しさをずっと持つハツ。そういうハツの若さの持つ危うさというか甘さが、愛しく思えたのだ。

人の感情の暗い部分が見事に描かれていると思う。それを重く読ませない文章も見事。多感な時期と言葉にすれば簡単だが、さらっと読ませる描写はさすが綿矢りさ。この本に関しては否定的な意見が多いが、自分の感性には合っていたようだ。しかしいきなり終わってしまったラストに、あれ?っと思ったことを付け加えておく。それ以降の展開を想像出来ない終わり方に、寂しさを感じたのは自分だけだろうか。

この本は文庫化したものを再読してみた。「夢を与える」を読んだ後なので思うことも多々。この本を描いたあとの綿矢さん自身の経験や描くという姿勢が、「夢を与える」になった。そういう綿矢さんの成長が、すごく自然に感じられた。再読もたまには良しなのだ。

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綿矢りさ
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    2007

04.14

「インストール」綿矢りさ

インストール インストール
綿矢 りさ (2005/10/05)
河出書房新社

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「蹴りたい背中」の文庫化に、わ~い、わ~い、と喜ぶ30代のお兄さん。この際この本も再読してやれ、という勢いだけで読んでみることにしてみた。本だけでなく、違う意味でも熱い視線、荒い鼻息、を持ってしまうのは野郎の悲しさ。そんな事はどうでもいいって? そりゃそうだ! わははっ(笑)。少しテンションを下げようっと。言うまでもないですが、第三十八回文藝賞受賞作です。そして文庫版なので、書き下ろし短編のおまけ付き。得した気分です。

「インストール」
朝子は登校拒否児となるが、することが無いので家でごろごろ。これでは廃人になると恐れた朝子は、部屋にあるすべての物を捨てることにする。 最後に残ったのは、おじいちゃんに貰った壊れたコンピューター。迷った末にコンピューターも、マンションのごみ捨て場に持っていく。そこにコンピューターが欲しいという少年が現れ、あげることにした。数日後、少年はなおせた上に親に内緒で使っているという。少年の誘いで2人は隠れてチャット嬢のバイトをすることに。

朝子は何事もやる気がない、今風な高校生。今風って言ってもいいのだろうか。少年に対しても友達のように話したり、時には敬語を使って話す。これがメリハリが利いて中々読みやすい。こういうのを読ませる、と言うのだろう。言葉や文章もすっきりしている。

それに機械音痴の朝子が可愛い。ぽわんとした感じがいいのだ。それに引き換え、小学生のかずよしの成熟した大人びた態度。こんな小学生が本当にいたら末恐ろしい。いない事を祈ろう。プレイやエロ哲学なんて語るなんて、なんというヤツなんだ。 

またコンピューターを、押入れで隠れてするというところが良い。なぜかドキドキ感が妙に増幅する場所なのだ。押入れって入りたくなるものなのだ。ドラえもんは落ち着くのか、寝る場所にしているが。 ←無視して下さい。

ここでチャットに出てくる馬鹿な男たちは情けない。ほんとに居そうだし、というか確実に居る。この事には、あまり触れずにおいた方が無難か。二人の間逆の性格や、大人の世界へ背伸びをする姿が微笑ましかった。そして何も変わらないが、努力しようとする姿が実に清々しく心地良い。

「You can keep it.」
人に物をあげることによってしか、距離を近づける術を知らない城島。そんな彼が大学で綾香に出会い、何とか近づきたいと考える。

すごく短い短編ですが、すごくパンチが効いいる。物をあげたことにより、見返りを求めて当然だと思っている男。それが物ではなくても、あれをしてあげたから、これをするべきだ。こういう価値観でしでしか人間関係が築けない人って確かにいる。確実にお友達にはなれない人たちだな。というかなりたくない。そこにはLOVEはあるのかい。←東京バンドワゴンの影響です。

やっぱ綿矢さんはいい! 「夢を与える」の次はどんな本だろう?これからも熱い視線で追いかけよう。←この書き方は危ないかも。


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綿矢りさ
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    2007

04.13

「生きてるだけで、愛。」本谷有希子

生きてるだけで、愛 生きてるだけで、愛
本谷 有希子 (2006/07/28)
新潮社

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安い恋のトライアングルに勝手に巻き込まれ、叫んで暴れてバイトをクビになった寧子。
寧子は鬱になり、同棲中の津奈木の本部屋に二十日以上も閉じ篭っている。
今の寧子は、仮眠。メルヘン。二十五歳。 生きてるだけで疲れるひとりの女性の物語です。


これまでに本谷さんの本を2冊読んでましたので、黒い本だと思ってました。
それがまあ冒頭からぶっ飛んだ寧子に、あれ?っと思い、こちらもぶっ飛んだ。

無闇に当たり散らす寧子に、「うん」「ごめん」とまったく反応しない津奈木。
言ってはいけないと気づきながらも、口から出る嫌な言葉。
でも二人の仲ではバランスが取れていて、何も問題がない気もしたけど…。

津奈木に毒を吐く寧子は置いといて、世間に対して毒を吐く寧子が好き。
なぜか共感してしまう自分が居る。 心の中で死ね!とは言わないですがね。
もっと毒を吐いてくれと思いながら読むのは、世間を敵視した自分が眠っているのか。
ときにコミカルでいて病んでいる寧子を、可愛いと思ってしまうのは危ない兆候?
う~む、病んでるかも(汗)。 自分の事は、この際忘れてしまおう。

津奈木の元彼女が現れ、寧子に別れを迫る。 この身勝手さに何故か安心してしまった。
このバカ女が、これまで持っていた本谷さんの本のイメージだったからね。

そしてこのバカ女の強引さで、元ヤンキーがオーナーのレストランでバイトをすることなる。
ここがアットホームな雰囲気で和みの時間。 オーナーも良いしミズキも良い。
チューハイ好きのお父さんもいい味を出している。 トイレのみつをもね。

この和やかさで鬱とも脱却出来るのかと思いきや、ありゃりゃそっちなのとヤラレタ感じ。
本谷さんらしいと言えばそうなのかも。 想像を裏切るのが好きだからね。

痛い話のはずなのに、本谷さんの軽妙な言葉や単語の選択に笑えてしまった。
この言葉の選び方は才能なんでしょうね。 本谷さんは6つも年下ですが尊敬です。

そしてキーワドにもなった、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」の浮世絵の使い方に唸りました。
有名な奇跡を捉えたエピソードを、あんな風に使うなんてやっぱ本谷さんは上手い。
表紙の波がばしゃーんの画です。 お茶漬けを思い出す?

後日談も収録されてますが、感想は一言。
二人とも成長してないな~。

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本谷有希子
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    2007

04.13

「江利子と絶対―本谷有希子文学大全集」本谷有希子

江利子と絶対―本谷有希子文学大全集 江利子と絶対―本谷有希子文学大全集
本谷 有希子 (2003/10)
講談社

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「江利子と絶対」「生垣の女」「暗狩」の3つの短編が収録。
3つなのに「本谷有希子文学大全集」だってさ。
本谷さんのことは、勝手に男前作家だという位置づけをしている。
この本のタイトルも男前っすね。 こういうのはすごく好き。


「江利子と絶対」
田舎から無理やり姉の部屋に上京してきた妹の江利子。
江利子は引篭もりで、マンションの部屋から一歩も出ない。
そんな江利子が電車事故のニュースを見て、「前向きに引篭もる」と宣言。
江利子のリハビリはゴミ捨て。 これが江利子の唯一の外出なのだ。
そこで捨て犬を拾ってきたのち、「絶対」と名づけて飼うことに。

短い短編ですが絶品。本谷さんの世界がぎっしり詰まっていた。
江利子の壊れ方なんて好き好きでした。こういうの本谷さん上手いですね。
江利子が真面目になればなるほど笑いを誘う。このユーモアが溜まらん。
現在「ダ・ヴィンチ」に連載中の、「乱暴と待機」の奈々瀬ちゃんもそうですね。
不器用な江利子がすごく可愛いかったです。そして犬の絶対もね。
絶対にエリの味方って意味の「絶対」という名前。切ないっすね。

でも江利子が言っていることは、決して間違ってはないんですよね。
「エリのキレイな気持ち返せよ。」の叫びは、心にズドンときました。


「生垣の女」
アキ子を怖がりながらも、少し気になる中年男で禿げの多田。
生垣のわずか20センチの隙間に隠れて、男の帰りを待つ女・アキ子。
多田の部屋に無理やり転がり込んだアキ子に、多田はただ振り回される。
2人の気持ちが悪くて最低な恋愛を描いた作品です。

とにかくグロい。そしてアキ子のイカレっぷりが気持ちが良かった。
多田が飼っている猫の菊正宗を、電子レンジに入れて加熱するアキ子。
猫好きなのに笑ってしまう自分がいた。こんな場面で笑ってしまっていいのかよ。
とにかくアキ子の行動すべてが大爆笑。それとは逆に多田はひたすら悲惨。
残り少ない髪の毛が減っていくし、暴力も超M級。飼い猫もぼろぼろになっていく。
でもこの切なさに笑ってしまう自分がいて、人間性を疑ってしまう。 

すべてが過剰で暴力的で切ない。そしてグロくてシュールでコミカル。
森見登美彦さんが妄想系で笑えるなら、本谷さんは暴力系で笑えた。
自分の黒さに気づきましたが、すごく稀有な作品でした。
でも、好みは別れる作品だろう。


「暗狩」
広場で野球をして遊ぶ小学生3人だが、打ったボールが隣の屋敷に入ってしまう。
ボールを追って屋敷に忍びこんだ3人だが、そこに住むのは殺人鬼。
小学生3人の、命をかけたかくれんぼが始まる。

前2作が笑えたので、同じ雰囲気かな~と油断してたら、めっちゃ怖かった。
サイコ・ホラーっていうんでしょうか。ホラーは苦手なんですよ。
しか~し、さすがは本谷さんですね。先が気になってしょうがなかった。
最初から最後まで緊張感が続きっぱなし。ちょっと疲れたな。

子供たちに殺人鬼が迫るのですが、たぶんこうなるだろうな~と思った。
ですが見事に裏切らました。そこはさすがに本谷さんですね。
読み手が想像つかない展開にするなんて、捻くれてるというか…。
そこらあたりが男前・本谷有希子らしいですね。


読んでいて気持ちがいいお話ではないですが、この黒さが病みつきになる。
本自体は薄いですが、読み応えがたっぷり。本谷有希子は面白い。
そしてすんごい世界を描く。これらを改めて再認識しました。

文章がどうの構成がどうのと何も考えず、ただただ黒さを楽しむのが一番。

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本谷有希子
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    2007

04.13

4月12日・13日 書店でお買い物

あかね色の風/ラブ・レター あかね色の風/ラブ・レター
あさの あつこ (2007/04/12)
幻冬舎

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小生物語 小生物語
乙一 (2007/04)
幻冬舎

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幽霊人命救助隊 幽霊人命救助隊
高野 和明 (2007/04)
文藝春秋

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FUTON FUTON
中島 京子 (2007/04/13)
講談社

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鹿男あをによし 鹿男あをによし
万城目 学 (2007/04)
幻冬舎

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お買い物
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    2007

04.13

「鹿男あをによし」万城目学

鹿男あをによし 鹿男あをによし
万城目 学 (2007/04)
幻冬舎

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大学の研究室に籍を置くおれに、ある日教授から話しがあると呼び出された。二学期から年内いっぱいまで高校教師をしないか、という話だった。おれは奈良の女子校で教師になることを決意。そこで先生と呼ばれる生活が始まった。

赴任した学校には姉妹校が京都と大阪にもあり、大和杯というものがある。大和杯とは、三校の運動部で毎年競い合う一年で一番の行事。神無月に、大和杯、謎のサンカク、とおれは振り回されることになる。

前作「鴨川ホルモー」では、ホルモーが奇抜な設定になっていた。本書では、鹿とサンカクが不思議系の設定になっている。どう不思議かは、読書の楽しみの一つなので触れないことにする。

「鴨川ホルモー」の京都から、本書は奈良に移動をしたが、こちらの方が個人的には馴染みがある。春日大社や、平城京跡。飛鳥に天理など知りすぎる場所。大阪在住には遠足でありがちな場所ばかりで、ちょいとウキウキ。先生が歩いて向かう新大宮駅なんて、現在妹が住んでる所なのだ。

それに関西限定の笑いが大阪人の心を熱くくすぐる。「グランシャトー」と並ぶ、深夜のローカルCMの常連の「奈良健康ランド」。ここに先生がゴルフの帰りに行き、サウナで汗を流す。これだけで関西人は笑えてしまうのだ。ほんとに関西限定の笑いで、わからない方々にはすまぬと言いたい。でも関西の方々は一緒に笑おう。わははっ!

登場人物は少し影が薄いかも。主人公の先生も普通。でも一部では普通では無いが。脇を固める同僚の藤原くん、重さん、教頭のリチャード。彼らも、ぱっとしない。美人なマドンナも、不思議ちゃんの堀田イトも、イマイチ萌えない。女子高の雰囲気もまったく伝わってこない。この女子高という設定に意味があったのかと疑問を持たっが、これはむにゃむにゃと口を濁しておこう。唯一というか邪道なのだが、大いに訳ありな雌鹿の仕草がなんとも可愛い。鹿せんべいよりポッキーが好きだという鹿に、少し萌えてしまった。

大和杯での剣道の試合の場面は、まさに手に汗握るというやつ。堀田の活躍にわくわくし、「六三四の剣」というマンガを思い出す。あれは中学時代だったか、「六三四の剣」の影響で剣道に興味を持つが、防具のくささにあっさり断念。マンガと現実の違いを、まざまざと感じた瞬間だった。 

謎のサンカクに関しては、ネタバレになるのであまり書けない。しかし日本の歴史を上手く取り入れた展開は、中々の出来で気に入った。歴史のある奈良という街が、存分に生かされていたのだ。

ラストの場面は、かなりと言うか超が付くぐらいの大ベタな展開。これが心の幼い大人の心にピタリと嵌り、にやり笑いを誘うのだ。「鴨川ホルモー」から、こんなに早くも万城目作品が読めるとは思わなかった。次回作には益々の期待を持つ。最後に一言だけ言っておきたい。

「マイシカ」が欲し~~い!!


TBさせて貰いました。おいしい本箱Diary

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万城目学
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    2007

04.12

「きつねのはなし」森見登美彦

きつねのはなし きつねのはなし
森見 登美彦 (2006/10/28)
新潮社

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京都を舞台にした、幻想的で耽美、そしてちょっぴり怖い4つの短編集です。

「きつねのはなし」
京都にある小さな古道具屋「芳蓮堂」で、バイトをすることになった大学生の私。
私は店主のナツメさんのお使いで、天城氏のお屋敷に行くことになる。
「彼には何も渡してはならぬ」というナツメさんの言葉に背いた私に、何かが起こる。

「果実の中の龍」
大学の先輩が住んでいたアパートに入り浸り、いろいろな言葉に耳を傾けていた私。
先輩の話は、自分では経験が出来なくすごく魅力的。 私は先輩のことを尊敬していた。
私が二回生になった春、私の前から先輩は姿を消した。 私は先輩と共有した時間を思い出す。

「魔」
家庭教師の教え子の家の界隈で、次々と人が襲われる事件が起きるという。
私はある日、得体の知れないものが居るのに気づく。 京の夜道には何が潜んでいるのか。

「水神」
祖父が亡くなり、私は父や伯父たちと通夜の夜を明かすことになる。
そこに古道具屋「芳蓮堂」の女主人が、祖父からのあずかりものを持ってくるという。
そこで女主人が来るのを待つ間、私は祖父の家にまつわる不思議な話を聞くことになる。


先に「新釈 走れメロス」を読んでいたので、作風の違いに驚くことは無かった。

各短編が、小道具屋、坂の上にある屋敷、狐の面など、特定のキーワードで繋がっている。
それらがその場には描かれていない多くの事を想像させ、イメージを膨らます。

そこに時が止まったような静けさの中、幻想的な京の街が浮かび上がる。
古都が持つ、底知れなさ、惑わす不思議な力、逢魔が刻、それらがぎゅっと詰まっていた。

京都に住む方、悪気は無いです。 ごめんなさい。 個人的な勝手なイメージです。

何かにそっと見られてるような雰囲気に、心がざわざわしました。
それは気持ちの良いものでは無いが、怖いもの見たさがページを捲らせる。

現実の中にあるだろう異界に迷い込んだのは、登場人物ではなく読者なのかも。
緊張感が持続した異界に、心地良く引き込まれました。

妄想系ではない森見作品、恐るべし。 あまり続けては読みたく無いが、たまにはいいかも。

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森見登美彦
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    2007

04.11

「ハルさん」藤野恵美

ハルさん ハルさん
藤野 恵美 (2007/02/28)
東京創元社

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ハルさんこと春日部晴彦は、亡き妻の瑠璃子さんの墓前に声を掛ける。
「今日はね、ふうちゃんの結婚式なんだよ。」
ハルさんは思い出す。娘のふうちゃんこと風里の成長の記憶を。


ふうちゃんが幼稚園児のときのお話。幼稚園でふうちゃん達はお弁当を食べようとしました。
すると隆くんの卵焼きがお弁当から消えている。卵焼き消失事件の始まりです。
ハルさんの仕事は人形作家。でも主に人形の衣装を作って糊口をしのぐ。
だからふうちゃんの頼みで、探偵の衣装を作るのもお手の物。
探偵の衣装を着たふうちゃんとハルさんが、消えた卵焼きの行方を推理します。

ふうちゃんが意外と鋭いんですよね。でもアリを食べたりもする幼稚園児。
こういう可愛らしい細かな描写が隅々まで行き届いてました。
これだけで藤野さんって、いいなーと思う。好きモードに突入です。
そして謎を解決するのが、アンティークな写真たての中の瑠璃子さん。
困ったハルさんを、天国にいる瑠璃子さんが助けてくれる。
いいーーー!!すんごくいいっす!完全に大好きモード。

でもこの設定って、加納朋子さんの「ささらさや」のパクリと違うの?
こんな感じに、後のお話も瑠璃子さんが助けてくれます。


ふうちゃんが小学四年生のときのお話。夏休みに突然ふうちゃんが居なくなった。
何かふうちゃんにあったのかと、あたふたするハルさん。はたしてふうちゃんは?

小学四年生で食費を心配するふうちゃん。あんたって子は健気だねぇ。
だからあんな行動をとってしまうのかな。整理整頓をしましょうという教訓話でした。
初めは卵焼きを焦がしていたハルさんが、その場にある食材で料理をする成長ぶり。
ふうちゃんだけで無く、ハルさんも成長するあたりがいいっすね。


中学二年生のふうちゃんのお話。ハルさんはふうちゃんの様子がどこかおかしいと気づく。
ハルさんはテレビのワイドショーでやっていたいじめ問題を思い出す。

友達にハルさんを見られて恥ずかしがるふうちゃん。父親の寂しい瞬間ですね。
そしてカロリーを気にするふうちゃん。う~ん、大人になったなー。
この時になって初めてテレビを購入する春日部家。ますます好きやな。


高校三年生のふうちゃんのお話。高校生活最後の冬休みに始めてバイトをするふうちゃん。
しかし落し物をした客を追いかけ転んでしまい、足の骨を折り入院してしまう。
ふうちゃんに落し物を落とし主に返すように、ハルさんは頼まれる。

明日からバイトという日に、ふうちゃんはハルさんを相手に接客の練習をする。
こんな家庭があるとは思えないが、微笑ましい二人ですね。
そしてふうちゃん入院の知らせを聞いた、ハルさんの慌てぶりに、じーん。
入院生活に必要な物を取りに、ふうちゃんの部屋に入るときに断りをいれるハルさん。
そこにいないふうちゃんに、「おじゃまするよ、ふうちゃん」って。またもや、じーん。


大学生になったふうちゃんのお話。
北海道の大学に入学し寮住まいををしているふうちゃんが、一年ぶりに里帰り。
一緒に瑠璃子さんの墓参りをするはずが、お世話になる浪漫堂からの電話が。
お客さんが大事にしていたハルさんの人形が、いなくなったらしいと。
そこでのふうちゃんの「人形はお父さんの大事な娘たちでしょ」の言葉に、じーん。

一年ぶりに会うふうちゃんの雰囲気に驚くハルさん。
ふうちゃんも化粧をするようになったんだ、と軽く感動。
そして人形がいなくなった事件が解決すると、冒頭に書いた結婚式のシーン。
これまでにふうちゃんと交わしてきた言葉が、走馬灯のように蘇るハルさん。

うーっ、泣いたーーー!!号泣ーーっす!!めっちゃええ話やんか。
ハルさんとふうちゃんの日常の生活が、ほのぼのとして温かくて心地よい。
小さな事件に二人は関わりますが、そこには愛が溢れてました。 
そしてラストには、もーーーっと大きな愛が待っている。ラブです!ちょーラブです!!

今後も追いかけたくなった作家が、一人増えました。 要ちぇ~っく!

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その他の作家
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    2007

04.10

「精霊の守り人」上橋菜穂子

精霊の守り人 精霊の守り人
上橋 菜穂子、二木 真希子 他 (1996/07)
偕成社

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短槍の使いの用心棒バルサは、偶然に新ヨゴ皇国の皇子チャグムの命を救う。そこでチャグムの母の二ノ后から、チャグムを帝の暗殺から守って欲しいと、依頼をされる。チャグムの身体には、得たいの知れない何かが宿っているのだ。チャグムの身体の謎を抱えたまま、暗殺集団から追われる二人。バルサの幼馴染の薬草師タンダ。その師匠の呪術師トルガイ。彼らの助けを借りながら、新ヨゴ国の隠された謎に立ち向かう。こんな感じのファンタジー系の児童文学です。


読む前に思っていた不安が的中。それはカタカナの多さだ。登場人物は登場人物表があるので問題は無い。しかしファンタジー特有の創られた造語。これが難敵中の難敵。こちらの見える世界が「サグ」で、見えない世界が「ナユグ」。他にも「ラルンガ」「ニュンガ・ロ・イム」「サアナン」「ナージ」と、覚えられない。

しかも一番苦手な種類のファンタジーだったから、さらに大苦戦。それは創られた世界の設定が、えんえんと説明され続けるというストーリー。古事記を真似た新ヨゴ国の創世記に始まり、水の精霊などなどと、食傷気味。勝者が創る歴史に埋もれる敗者の歴史。これも在り来たりな設定。こういうのに当たると、ファンタジー嫌いの黒い感情がむくむくと出てくる。

じゃあ何故、面白く無いのにブログに書くのか。それはバルサを気に入ったから。30歳でおばさん扱いをされながらも、短槍をぶんぶん振り回す女豪傑。そして無敵の主人公ではなく、ちゃんと傷を受けて血を流し倒れこむ.悩むチャグムに無理な慰みを言わずに、ただ抱きしめ涙する。これがリアルな描写なのだ。うんうん。すごく魅力がありかっこいいのだ。

そして幼馴染のタンダも忘れてはならない、大事な大事な人物。傷ついたバルサにホイミをかけるのでは無く、傷の縫合をしたり薬草を煎じる。危なっかしいバルサを、柱の影からそっと見守る星飛馬の姉のような温かさなのだ。例えが古い? そりゃー古いさ。それだけ歳をくってるからね。←開き直り(笑)

背景描写にはうんざり気味だが、人物描写にはメロメロ。困った本だ。すぐに続編を読む気は起こらないが、気が向いたらひょいっと手に取る本。そんな微妙な位置づけの本になったのだ。 

いつか読むだろうから、ここにシリーズを書いておこう。


「精霊の守り人」 
 
「闇の守り人」 
「夢の守り人」 
「虚空の旅人」
「神の守り人 来訪編」
「神の守り人 帰還編」
「蒼路の旅人」
「天と地の守り人 ロタ王国編」
「天と地の守り人 カンバル王国編」
「天と地の守り人 新ヨゴ皇国編」
「流れ行く者 守り人短篇集」

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上橋菜穂子
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    2007

04.09

「泣き虫弱虫諸葛孔明 第弐部」酒見賢一

泣き虫弱虫 諸葛孔明 第弐部 泣き虫弱虫 諸葛孔明 第弐部
酒見 賢一 (2007/02)
文藝春秋

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またもや破天荒な孔明に再会しました。 そして今回もやはりニヤリ笑いの連続。
本書では孔明出盧から、曹操の襲撃で逃げる劉備軍と民たち。
その途中の長坂波までが描かれてます。
それにしても本書は「三国志」の時の流れより、余談が多くてこれが笑える。

酒見版・孔明から見た張飛の単純ぶりは最高っすね。
張飛が「軍師」のことを「ぐんしー」って言ってるし。 
それに張飛にかかれば、徐庶も殺人鬼っていうとこは涙が出るほど笑えた。

関羽もここでは気合だけの人。息子の関平を褒められて髯を震わせてる。
美髯公の名が泣くね。そして気難しくて人の意見を聞かない。う~ん、微妙。

この二人も酒見さんにかかれば、ただの殺戮マシーンやもんな。

そんな豪傑二人と比べると、大好きな趙雲子竜はまだマシな方かな。
孔明の放火を見て「最高です!」、黄氏のうどんを食べても「最高です!」
孔明の耳打ちに「ちっ、ちぇー、いぁっ!」って吠えてる。
けど、好青年、いぶし銀の竜騎士、って書いてあったから許す。

劉備は大衆演劇並みのくさい芝居をしてましたね。
「三国志」でのやたらと高い人望は計算やったんか、とは全く思わんかったけど。

ちっぽけな話ですが、諸葛均の教育係りの簡雍の卑猥さは好きですね。

曹操軍の襲撃から慌てて逃げるはずやのに、酒を喰らって呑気に移動。
しかも張飛が民を邪魔だと、ばったばったと殺す。
相変わらず酒見さんの妄想力はぶっ飛んでましたね。

その後の趙雲と張飛の伝説作りは、暴れっぷりが気持ち良かったー!
まるで北斗神拳みたいでしたね。 あたたたたっ。 ふ、古っ…(汗)。

第三部が待ち遠しいっすね。 次は赤壁の戦い。 孔明の活躍にわくわくです!
呉の人物がどう描かれるのかもすごく楽しみです。 色男の周瑜はどんなんかな。
そしてまだ先になりますが、五虎大将軍の残りの二人。 黄忠と馬超も楽しみ。
彼ら二人はどんな化け物として描かれるのか(笑)。

次が赤壁で、その次が荊州南郡の平定。そして益州攻略で天下三分の計…。
う~ん、いったい何冊で終わるんやろ? まあいっぱい読めるという事か。

あれ? 孔明のこと書いたっけ?? 今回は何かしたっけ???
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    2007

04.08

「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦

夜は短し歩けよ乙女 夜は短し歩けよ乙女
森見 登美彦 (2006/11/29)
角川書店

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待ちに待った図書館の順番が回ってきた。 そして貪るように読むこと3時間。キター!! そうそう、この文章、この語り、この妄想、これを待っていたのだ!本屋大賞の発表には間に合わなかったが、そんなの関係なし。ただただ満足。

女性に気軽に声をかけれない男性諸君。読むべし!無駄な努力も実る可能性がある、ということを教えてくれる作品だ。そう、恋愛に不慣れなあなたへの、恋愛教則本にぴったりの一冊なのだ。 ←嘘
あほな事を書いてんと、そろそろ本の感想をかきます。


後輩の黒髪の乙女の後姿を見分けることに関しては、右に出る者がいない男。彼は、夜の先斗町、神社の古本市、大学の学園祭、と彼女の姿を追い続ける。これはストーカーではなく、たまたま通りかかったのだ。彼曰くの限定付で。本書は彼なりの努力と妄想に溢れた恋愛で、笑いと涙なしでは読むことが出来ぬ、と~~っても内気で一途な青年の熱い恋のお話である。 ←ここにも嘘が(笑)

一方の黒髪の乙女は、ほっそりとした小柄な身体つき。艶々と光る短く切りそろえた黒髪。猫の様に気まぐれな足取りで、ときには「おともだちパンチ」を繰り出す愛らしい乙女。そんな乙女は夜の先斗町に一人で繰り出し、伝説の偽電気ブランで飲み比べ。学園祭では大きな緋鯉を背負って練り歩き、溢れる好奇心を満たしている。そして至る所に出現する先輩に、「あ!先輩、奇遇ですねぇ!」と一言。

下心ありありの妄想大学生が、ただただ乙女を追いかける。黒髪の乙女はそんな事とは露知らず、好奇心に任せるがまま街を闊歩。古都の街・京都を舞台に二人が縦横無尽に駆け巡る、こんなのもあり系の恋愛小説です。

森見さんといえば、「太陽の塔」「四畳半神話大系」を思い出す。現実とファンタジー(妄想)が入り混じった不思議な世界。これらの完成度を高め、そこにあらたに恋愛を注ぎこんだのが本書です。二人のすれ違う男女の隣には、いつも強烈で個性的なキャラが彩る。

酔うと顔を舐めまわす羽貫さん。「四畳半」に出てきた懐かしい人物だ。至る所に出没する謎の人物の樋口さん。もっと謎の金貸しの李白翁。春画をコレクションする助平オヤジの東堂に、それ以上に怪しい閨房調査団。そして、詭弁論部の恒例の詭弁踊り。これは「走れメロス」に登場か。吉田神社に願を掛け、願いがかなうまで二度とパンツを脱がないパンツ総番長。

濃い、濃いすぎる面々だ。これらの連中が二人を温かく見守る。それだけでも大満足なのに、主役二人がナントもいえぬ魅力がある。策士策に溺れるをそのまま行く先輩。彼には頑張れとしか言いようが無い。そしてまたまた、京大生にはあまり良くない強烈な偏見を持ってしまう自分。反論がある方は、森見さん宛に手紙をどうぞ!当方は受け付けません。

そして黒髪の乙女がなんと愛らしいこと。すべての仕草が可愛いのだ。二足歩行ロボットのステップを踏む姿。「おともだちパンチ」を振るう姿。そして好奇心旺盛で人を信じすぎる彼女が、可愛いすぎるのだ。

また彼ら彼女に会える日が来ること願って祈ることにしよう。なむなむ!

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森見登美彦
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