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    2007

05.31

「紫鳳伝」藤野恵美

紫鳳伝―王殺しの刀 (TOKUMA NOVELS Edge)紫鳳伝―王殺しの刀 (TOKUMA NOVELS Edge)
(2007/01)
藤野 恵美

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ここは仰の国。王の徳がが失われ、世は乱れはじめていた。紫鳳は、「王を殺す刀」を作ったという罪を着せられ殺された父母の仇を討つために、女であることを隠し、流浪の旅を続けていた。そして、いつしか「絶命殺」と恐れられる暗殺者となっていた。ある日、幼き頃の知人、戚世震という老人に再開するが、そこには盗賊の黒飛爪の姿が…。

本の背表紙をそのまま載せたけど、わかり辛いですよね。ようするに仇討ちが目的の主人公が、犯人を捜しながらも様々な人物に出会い、いろんな出来事に首を突っ込む武侠モノですね。そこにはかつての師匠みたいな人物や、殺しをしない覆面の盗賊や、王族の娘とその娘に惚れる青年武官が、主人公と絡んでいく。その合間に剣術使いやこそ泥な敵を倒していく。そんなストーリーです。

よくありがちな軽い内容の読み物です。何も考えずに読むにはぴったりですね。何故この本を買ったのだろう?そうそう、「十二国記」みたいなのを想像して買ったんだ。でも読んでみたら内容は違いました。でもアニメちっくで普通に楽しめた。「北斗の拳」に近いのかな。

上下二段で怯みましたが、さくさく読めて一気読み。ライトな読み物が好きな方には良いでしょう。ただ大人が読むには少し物足りない感じ。トクマEdgeだから当たり前か。それを分かった上で買ったのだし。ラノベ感覚で読める本でした。

「ハルさん」とはえらく違う雰囲気でした。元々、児童書作家だからこちらの方が本来に近い姿の作家なのでしょう。今度、藤野さんの児童書を読んでやろうっと。

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    2007

05.31

「下北沢」藤谷治

下北沢下北沢
(2006/06/30)
藤谷 治

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大阪在住で一度も行ったことが無い場所です。だから江坂かな、十三かな、と想像。その熱狂的に下北沢を愛する気持ちはなんとなく判る。大阪人も大阪愛が強いからね。でもそんなに下北沢って固執する場所なんですかね?それになぜ上から目線なの?東京に住む人って多数が地方出身者でしょ。それがこんなに思い入れるものなのかな。いまいち理解が出来ないんだよなー。都会への憧れともまた違うしね。知らない街について、街の印象を書いてもしかたが無いか。

脱サラをして利益は少ないが、たくさんの人と出会えることを楽しむ勇が主人公。そんな勇の桃子に対する淡い恋心や、ポエム土蔵真蔵のタカリとへんてこぶり。元モデルのみずほのキャバクラ体験など、日常風景がたんたんと描かれている。そんな彼らが下北沢を舞台に、愛する街で人々が繰り広げる下北沢物語です。

ストーリー自体は面白かったです。主人公のお店は藤谷さんのお店がモデルなのかな。そのお店は店舗の中に箱を置き、その箱をレンタルスペースとして貸す箱貸し屋。そこに出入りする人たちが、不思議な活力を持っているんだ。ほんと不思議。これがなんとも根拠が無い自信ぶりだったりして、しかしパワーがあったりもする。これが下北沢という特異な街なのでしょう。たぶん。

そんな下北沢にも時代の移り変わりによって、様々な変化も起こっている。しかしそこで生きる人たちは、そんな変化に順応しながらも根っこの部分は変わらない。

読んでるうちにますます江坂のイメージと被ってくる。あそこもディープやもんなー。あまり行かない場所ですが、江坂に住む人も熱いんだよ。何故?ってぐらい江坂好き。普通の人には理解出来ない地域愛が集まる場所って、いろんな所にあるんですね。とにかくそんなへんてこなパワーは、読んでいて感じられました。

下北沢といい、江坂といい、何をそんなに惹きつけるのかは理解出来ない。愛?ブランド?でもそんな場所があるということだけは判りました。街ではなく人を描いた本でしょう。

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藤谷治
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    2007

05.30

「天使の耳」東野圭吾

天使の耳 天使の耳
東野 圭吾 (1995/07)
講談社

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交通事故に関連した6つの短編が収録。

「天使の耳」
深夜の交差点で車同士の交通事故が発生した。そこで信号無視をしたのかはどちら側か。片方は青信号だったと主張。もう片方は運転手が死亡し、同乗者は盲目の少女だった。

「分離帯」
トラックが分離帯を越えるという横転事故発生した。後ろを走っていた目撃者は言う。事故があった直後に、左斜線に路上駐車をしていた黒い車が急発進をしていったと。

「危険な若葉」
男は抜け道を快調に飛ばす。その前方にゆっくり走る若葉マークの車が道を塞ぐ。男は車を執拗に煽り、若葉マークの車は事故を起こしてしまう。男は通報せずに逃亡した。

「通りゃんせ」
大晦日の夜、道を塞いだ形で違法駐車をしていた車に傷をつけられた。その後、傷をつけた人物が名乗り出てきて弁償するが、何度も偶然会うようになる。

「捨てないで」
高速道路を運転中、前を走る車が缶コーヒーを窓から捨て、助手席の婚約者の目に当たった。女性は失明し、警察に届けるが警察は相手にしてくれない。二人は独自の調査を始める。

「鏡の中で」
右折車両が反対車線で信号待ちの原付に衝突する死亡事故。運転手は素直に自供。しかし事故がありえるはずもない状況の事故。しかも不思議なタイヤ痕が残っていた。


どれもが非常に面白かったです。加害者になった側の身勝手さ、モラルの欠如がすごくリアルに描かれてる。皆が駐車をするから違法駐車をする。皆がポイ捨てする。皆がのろい車ならこれぐらいは煽る。ほとんどが皆がという集団意識を持った行動。

被害者になった側の怒りもリアルです。加害者への持って行き場の無い怒り。これらが警察や司法に任せずに、実際に自分や残された家族が復讐をしてしまう。この暴走してしまう気持ちが痛いほど判ってしまうんだ。自分も近い人が被害に遭い、歯止めが無ければ行動してしまうかも、と考えてしまった。

そして中々動いてくれない警察への苛立ち。進展のない捜査への苛立ち。法律では裁けない盲点など、すごく細やかに描かれている。

ドライバーにはぜひ読んで欲しい作品だ。低俗なモラルを改めなくてはね。自分もドライバーなので、読んでいて反省する部分がありました。

読み物としても面白かったです。全体的にブラックな作品が多いので、黒好きには堪らないでしょう。特に悪意を持った被害者側のお話などは最高に痺れる。まだまだ東野圭吾の本は読了が少ないですが、マイベストに入れてもいい本だと思った。

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東野圭吾
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    2007

05.30

「いなかのせんきょ」藤谷治

いなかのせんきょいなかのせんきょ
(2005/12)
藤谷 治

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四方を山々に囲まれた戸蔭村は、人口二千百六十余名という貧しい寒村。前村長が雛わらじ記念館を作り、莫大な借金を残したまま逃げるように引責辞任。村の助役の平山は、自分の思い通りに操ろうと、村会議員の深沢清春を焚き付ける。そこに慌てたのは談合や利権に絡む、村の有力者たち。侃侃諤諤の無能な議論。深沢に請うて村長に立候補してもらったはずの、平山が対立候補に祭り上げられた。人も足りない、金もない、あるのは村への想いだけ、という深沢清春の選挙戦の物語。


選挙のお話ですが、これが無茶苦茶面白かった。硬いところはいっさい無し。どこの方言か知りませんが、会話はすべて方言で溢れてる。でも読みやすいんだ。そして物語の章の合間に口上が入り、講談風の雰囲気でさくさく読める。良い!すんごく良い!!すんっげー好きだ。 

深沢清春は、選挙を家族と村を想う心のみの、すべて正攻法で戦って行きます。東京から手伝いに帰ってきた弟の哲次の頭脳。スーパーを細々と営む長男夫婦。まったく手伝う気が無い有休休暇中でエセ都会人の娘の百合子。あとは少数の手すきの応援者のみ。

かたや平山陣営は、議長や村議を始め、地元で有力な企業の社長が二人と圧倒的。負ける要素が無いと序盤は何もしないが、深沢の人気が上がると暴挙に出る。金も権力もあり、饗応、談合、根回し、買収、となんでもありの選挙をする。

互いの選挙戦の内容は読めば判るので、これ以上は控えます。とにかくたくさんの方に読んで欲しい本です。ちょーお薦め本です。あまり書くと自分の持った印象を植え付けそうなので、ここらへんで止めときます。最高に面白かったです。 続編も読みたいよーっ!

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藤谷治
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    2007

05.29

「青空の卵」坂木司

青空の卵 (創元推理文庫)青空の卵 (創元推理文庫)
(2006/02/23)
坂木 司

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語り手でワトソン役は、外資系の保険会社に勤務している坂木司。彼には一風変わった友人がいる。子供の頃のイジメで引きこもりになった鳥井だ。現在は在宅プログラマとして家から出ないで生活している。自称ひきこもり。そんな鳥居を外の世界に連れ出そうと、坂木は日夜頑張っている。そこで出会うちょっとした事件を、鳥井はするどい観察眼と推理力で解決していく。日常の謎系の5つの連作短編集です。

「夏の終わりの三重奏」
鳥居のアパートに、刑事になった同級生の滝本がお巡りさんになって現れる。滝本の警告は、近所に男を襲う女のストーカーが出没するようになったと言う。その頃2人は、ヒステリックな美人の巣田香織という女性と出会っていた。

「秋の足音」
坂木は駅の階段で、盲目で杖を持った塚田基という美少年を手助けする。坂木は親しくなった塚田から、調べて欲しいことがあると頼まれるそれは塚田の後を、双子が毎日つけているという話だった。

「冬の贈り物」
塚田の友人で歌舞伎役者の安藤から、歌舞伎を観に来てくれと招待される二人。そこで歌舞伎を観たあとの楽屋で、意図のわからないおかしなプレゼントの話を聞く。その後も次々と送られてくるプレゼントに困った安藤に、謎解きを頼まれる。

「春の子供」
駅前にいつまでたっても一人ぼっちでじっと立っている子供に、坂木は声をかける。その子供はまりおと名乗り、住所の書いた紙を取り出し連れていって欲しそうにする。しかしその住所の家は留守。坂木はまりおにとことん付き合うことにする。

「初夏のひよこ」
エピローグです。おまけのお話ですな。


これが噂に聞くボーイズラブの世界なのか、というぐらい二人はべったりな関係。涙脆くて良い人すぎて問題を持ち込む坂木と、傷つきやすく口が悪いが推理が冴える鳥井。まあ二人はつりあいの取れたコンビなんでしょう。でも、ゲーっと反感を持つ人もいるだろうな。

正直に言うと、すぐにめそめそとする坂木にうんざりしたし、きれいごとすぎる坂木にこんなヤツおらんで、という非リアル感は多々ありました。そしてひきこもりという設定の鳥居ですが、仕事もちゃんとしてるし、自炊もして坂木を逆に食わせているのだよ。坂木の方が鳥居に依存している感じを受けてしまうんだけど、どこがダメなんだろう?なんて思ったりもした。

けれど読み進めていくうちに、そんな違和感は消えていったな。それは出てくる人物たちに魅力があったのが大きいかもしれない。滝本と小宮のお巡りさんコンビだったり、巣田さんや、塚田くんと安藤たちが、彼ら二人と普通に接していたしね。深く考えないでさらっと読めば、日常ミステリは楽しめるはずだと思う。

今回は一度読んだ本を再読しました。随分以前に読んだので、内容がすっぱり抜けていたからね。だから近いうちに続編の「子羊の巣」を読もうと思ってます。と言いながらいつ読むかは決めていない。早く読まないとまた忘れるのに。


関連記事
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「仔羊の巣」坂木司
「動物園の鳥」坂木司

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坂木司
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    2007

05.28

「恋するたなだ君」藤谷治

恋するたなだ君恋するたなだ君
(2005/05)
藤谷 治

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主人公はたなだ君。29歳で身長がやたらと高く、極度の方向音痴の持ち主だ。ある日の仕事帰りに車でドライブに行き、ふっと気がつくとそこは見知らぬ街だった。そこできらりと光る女性の後姿を見つけ、一目で恋に落ちてしまった。おかしな街に紛れ込んだ、たなだ君の困難と恋の物語です。


この強烈なパワーはなんだろう。読者は圧倒されたまま、ぐいぐいと読んでしまう。すごく不思議な世界観です。 なんと言えば通じやすいのだろうか。不思議の国のアリスと、森見系の妄想&暴走と、ポップな舞城の文章が合体した。これが一番しっくりとした表現でしょう。ほんとかよ。

まず、へんてこなルールが通っている街ですが、これは異世界ではありません。風俗成金の真黒という人物が、大金を使って作っただけの物です。でもここでは真黒の意思がすべてという世界で、一種の独裁国家のような街だ。

そこにたなだ君が迷いこみ、真黒のホテルで働くまばさんという女性に恋をする。しかしこのたなだ君がすっとぼけていて、そのために強盗と間違われてしまう。その挙句には名前はゲストルームだが、実際は牢屋に閉じ込められたりするのだ。

その後も、予測不可能な出来事が次々とたなだ君を襲う。たなだ君はいつも受身。そんな中で、たなだ君はまばさんの噂に振り回されながらも、どんどん惹かれる。こんな恋もありでしょう。先に書いた森見さんの作品にも似た雰囲気です。

世界観も不思議系だが、出てくる登場人物たちもどこか歪です。たなだ君はぶきっちょで、自分の恋に暴走しあとで我に返って反省したりする。まばさんはこの街に嫌悪感を持っているが、諦めが強く変化のない毎日を過ごす。ホテルで働く下っ端のイガラシとヤタガラシの二人は、名前がころころ変わる変人。真黒は気まぐれな性格で、たなだ君とまばさんの二人の関係を見守っている。たなだ君に口説きのレクチャーなんかもする。 この謎はラストに解けますが。言葉の最後に「にえ」と付ける牢屋の番人の俊造さん。彼にはとても好感が持てた。

彼らが最初から最後までただドタバタするだけの物語です。この本を読んだからといって、心に響いたり、何かを思うことも無いでしょう。だけど読後には、あー面白かった!と言える至福な時間を味わうことは間違いない。たぶん。

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藤谷治
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    2007

05.27

「凍りのくじら」辻村深月

凍りのくじら (講談社ノベルス)凍りのくじら (講談社ノベルス)
(2005/11)
辻村 深月

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有名カメラマンだった父が五年前に失踪し、余命わずかの母を支える高校生の理帆子。理帆子は周りにいる人たちを、「スコシ・ナントカ」とその人の性質を分析している。理帆子はいつも当事者になれず、どこにも自分の居場所がないと思っている。それは自分より頭の悪い人を軽んじ、けっして本心で語り合うことが出来ないからだ。そんな自分の性質を、理帆子は「少し・不在」だと思っている。

ある日の放課後、図書室にいた理帆子の前に別所あきらという上級生が現れる。彼との出会いで初めて本音を話すことを経験し、孤独だった心が良い方に変わっていく。しかし昔の恋人の若尾の常軌を逸した行動で、事態は思わぬ方向へと変化していくのだ。


読み進めて行くと、これまでの作品にあった辻村さんぽい設定が見当たらない。おかしいなー、と思いながら読んでいたら、ある可能性に気づいてしまった。そしたらラストのくだりで見事に的中していたのだ。や、やってしまった!これは喜んで良いものなんだろうか?それとも驚きが味わえ無いと悔やむべきなのか?だからヤラレタ感は無かった。だけどこれまで読んだ作品の中で一番好きな本です。

これまで読んだ本は、グロイ描写の部分が好きになれず、恐々とページを捲ったものだ。それがこの本には無く(1箇所だけ)、理帆子や若尾の心理描写で物語が進む。この心理描写が半端じゃなく、ヒリヒリとした感情の動きに惹き付けられたのだ。

冷めた目で人の性質を見て、そこに仲間に入った振りをしながら毎日を暮らす理帆子。別れたあとも若尾と連絡を取り、自分を取り返しのつかない立場に追い込まれる痛さ。行方の知れない父とのドラえもんを通じた繋がり。死のせまった母との面会場面。これらがすごくリアルで、本の世界にぐいぐいと引っ張られて、時間を忘れさせられた。

心に病を持った若尾の壊れていく痛々しい姿は、辻村さんの得意な分野だろう。これまでも壊れた人物の描写には辻村さんは抜き出ていたが、今回の若尾は凄かった。普通の方なら痛すぎてキモイと感じるだろう。だが黒いのが好きな自分には快感だった。うーん、少し微妙な言いようをしているかな。 けっして危ない人では無いですよ。

理帆子は様々な人との関わりを経ることで、自らの寂しさを自覚し少しずつ救われていく。それは別所あきらや母、郁也や多恵だけでなく、若尾との苦しい関わりも含まれている。そんな彼女にラストでは奇跡という救いが待っている。これ書いてもいいよね?
プロローグで大人になった理帆子が描かれるし。初めに書いた通り今回はやられませんでした。しかし写真集の「帆」のところは泣けた。あそこは読み始めてすぐに、やばいなーという予感があった。案の定の結果ですな。

初めは気づかなかったですが、「ぼくのメジャースプーン」のふみちゃんが出てましたね。作品自体に大きな仕掛けを施す辻村さんですが、作品のリンクという仕掛けも楽しめる。辻村深月という作家の構想の大きさは計り知れない大きさだ。恐るべし、辻村深月よ。若くて美人で、女狐の才もあるということなのか。

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辻村深月
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    2007

05.26

「おがたQ、という女」藤谷治

おがたQ、という女おがたQ、という女
(2004/07)
藤谷 治

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なんか無茶苦茶に内容紹介が難しい本ですな。

自称、おがたQと名乗る女性は謎だらけで、掴みどころが無い。彼女は5歳のときに両親に捨てられ、石垣島の母方のオバアに育てられる。オバアは真実の愛と、誰も教えてくれなかった物事の理を教えてくれる。そんな幸せな時間も、おがたQが9歳のときに突然断たれてしまう。父がテレビで歯に衣着せぬコメントで有名になり、エセ文化人として活躍する。その父が社会に対する自分の影響力を意識し、おがたQを引き取ることにしたのだ。そこから周りの環境によって、有名人の娘という伝説が出来上がっていく。やがておがたQは映画に目覚め、映画を勉強するために大学へ入学する。そこで初めて会話が出来る喜びを覚えたおがたQは…。こんな感じかな。


この本を入れると藤谷さんの本を読むのが3冊目ですが、一番独特な文章でした。句読点がほとんど無く、やたらと長い文章でぎっしりとページが埋まっている。まるでお経を読んでるみたいな感じなんだ。お経を読んだことが無いけどね。

そのぎっしりに何かあるんだろうと思ったが、これが見事に何も無いんだ。彼女は他人との関わりを必要しないし、何かを成し遂げようともしない。映画の世界に行くのかと思ったが、それすらも速攻フェイドアウトをしてしまう。ただそこに存在し、周りの影響にふわふわと流される人生を送るだけ。

たぶんオバアの影響で、沖縄的なゆっくりした自分の時間を持っているんだろう。違うかな?うーん、やっぱ違うな。まあええわい。本の帯の保坂さんによると、80年代への、力強い鎮魂歌らしいです。でもどのあたりが80年代らしさなのかは、皆目分からなかった。

おがたQに共感というのを持てなかったのは、たぶん自分とは違うからだろう。でも彼女のネガティブな思考は、なんとなく理解出来る。全部じゃないけどね。

おがたQという名前の謎は、読んでいるうちに謎は解けます。こういうのをアナグラムっていうのですかね。でも本名は最後まで謎。というか、存在自体が謎だらけな女性なんだよな。そして映画もいっぱい出てきます。でも知らない映画ばっかりなんですよ。知ってたらもっと楽しめただろうに。ちょっと残念。

読了後に残った、この独特ななんとも言えない余韻はなんだろう。ちょっぴりの不思議な暖かい部分と、沖縄に消えた切なさが、心に沁みました。本の中ではたくさんしゃべってますが、まるで無声映画を見ているように感じた。それとちょっぴり綿矢さんの「夢を与える」を思い出しました。

最後に一言。オバアがとても素敵だった。

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藤谷治
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    2007

05.25

「死者は黄泉が得る」西澤保彦

死者は黄泉が得る (講談社文庫)死者は黄泉が得る (講談社文庫)
(2001/02)
西澤 保彦

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ハイスクール時代の仲間が集まり、ささやかな結婚祝いパーティーを開く。
参加したのは、クリスティン、マーカス、ジュディ、スタンリー、タッド、の5人。
その夜、クリスティンの弟が、謎の電話をマーカスに残して殺される。
捜査ははかどらず謎ばかりが残るなか、新たな悲劇が繰り広げられる。
それは彼らが何者かに襲われ、ジュディ、スタンリー、と次々と殺されていく。

他方では、ある謎の館で、生ける屍と化した女性たちが共同生活をしている。
その館には、死者を蘇らせて、それまでの記憶を消す、という装置がある。
そこでは館を訪れる人物が現れるたびに殺して、自分たちの新たな仲間にしている。

二つのストーリーが交互に描かれ、やがて繋がっていくという展開で進みます。


西澤さんのSF設定を説明するのは、すっごく難しいんだよなー。

彼女たちは一度死んだあと、SUBREという蘇生装置を使って蘇る。
蘇った死者は生前の記憶を失っていて、彼女たち全員がMESSという装置で新たに疑似記憶を与えられ、この奇妙なコミュニティを形成している。
それを新たな人物が現れるたびに繰り返し、少しずつ人数を増やして行くのだ。
もちろんそのたびに全員がMESSで記憶を初期状態に戻すので、誰が始めの一人か分からないという状況なのだ。

分かる? たぶん無理でしょ。 書いてる本人もこんがらがってきたもん。
でもどっちかというと、こちらの話はサイド的な役割で、メインは殺人事件の方。
だからクリスティンたちのストーリーを追う方さえ、ついていければ大丈夫。

自分はカタカナに弱いタイプですが、この作品はなんとか乗り切れました。
これ以上、登場人物が出てきたら危なかったけど。 まあ、ぎりぎりセーフでしたね。

ネタバレなしでは無理なので、トリック等については言及を避けておきます。
少し分厚目の本ですが、わりとサクサク読めました。 1日で読めたしね。

西澤さんの積読本もそろそろ中盤ぐらいまで読めてきたのかな。
でもまだ「神麻嗣子シリーズ」は1冊も読んでないんだよなー。
あと何冊を積んでいるのだろう? 数えたら落ち込むので冊数は書きません。

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西澤保彦
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    2007

05.24

「アンダンテ・モッツァレラ・チーズ」藤谷治

アンダンテ・モッツァレラ・チーズアンダンテ・モッツァレラ・チーズ
(2003/11)
藤谷 治

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医学文献のコピーが主な仕事という、SISという会社が舞台です。ここでアルバイトをする由果は、全身に奇妙な刺青を入れた一児の母。由果の連れ子のモーくんは、なぜか流暢に大人言葉を話す5歳の男の子。その由果の恋人で同棲中の健次は、読書好きで博覧強記なめっぽう明るい男。健次を尊敬するアルバイトの京一は、歌がへたくそな路上ミュージシャン。京一に惚れた千石さんは、キリスト教に凝り固まったお金持ちのご令嬢。健次の同僚で仲良しの浩一郎は、執行猶予中の映画オタク。

SISに勤める彼らは、抜群の運転技術を持つ浩一郎の運転で通勤を始める。その車中で5人は馬鹿話に花を咲かせ、爆笑な世界を満喫する時間を共有する。しかしその幸せな時間は、刺青マニアの野茂部長の策略で崩壊の危機に面する。強烈な個性を持った面々が繰り出す、ラブとお馬鹿が詰まったお話です。

独特なポップな文章が疾走し、実際に起きた事件と絡み合って展開します。最初から最後までお馬鹿なことばかりです。でもこのお馬鹿が良いのだよ。彼らのお馬鹿に連れられて、ぐいぐい引っ張られて気づけばラストでした。このリズムというかテンポというかが、自分にぴったり合いました。

彼らがいつの間にか心を通わせ、チームの様な硬い絆で結ばれる。お馬鹿な話で結束した彼らですが、結び付きの強さにはきっかけなんてなんでも良い。ただ一緒に居て気持ちが良く、お互いが存在することで安心できることが一番だ。良い仲間に出会えた彼らの姿が、とても羨ましく思えました。仲間っていいよね。

ストーリーの立場上、彼らの敵になる野茂部長のへんてこぶりがウケルんだ。絶妙な妄想ぶりと変質的な狂い具合が、がははっ、と笑わせるのだ。

そして忘れちゃならないのが、妙に理屈っぽいしゃべりのモーくんの存在。実際の子供があんな風にしゃべる姿を想像しただけで、ニヤリ笑いをしてしまう。彼の今後がすごく気になります。どんな成長をするのだろうな。ほんとに居たら嫌な子供かな。でもたぶん可愛いんだろうと思いたい。

恋のラブ。仲間のラブ。家族のラブ。変質なラブ。多くのラブが詰まった作品でした。そしてお馬鹿は素晴らしかった。

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藤谷治
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    2007

05.23

「桜宵」北森鴻

桜宵 (講談社文庫)桜宵 (講談社文庫)
(2006/04/14)
北森 鴻

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ビアバー「香菜里屋」は、度数の違う4種類のビールと創作料理を楽しめる。その店のマスターの工藤が、店で語られるお客たちの謎を見抜いていく。「花の下にて春死なむ」の続編にあたる連作短編集です。

「十五周年」
仕事を求めて、岩手から東京に出てきてタクシー運転手をしている日浦。彼が客として乗せたのは、岩手時代に馴染みにしていた小料理屋の娘だった。彼女から小料理屋の十五周年記念パーティーに誘われた日浦は、主席することにする。しかしパーティー会場には馴染みのない顔ばかり。彼は何故、招待されたのか。

「桜宵」
亡くなった妻の手紙に、最後のプレゼントを用意したと、香菜里屋の名前が記されていた。その手紙に導かれて香菜里屋を訪れると、そこには妻と同じ味の食べ物がある。妻のプレゼントとはいったい何か?

「犬のお告げ」
人事部長が開くホームパティーには、リストラ候補者が招かれるという噂。そのパーティーで、部長の飼い犬に噛まれた者は、2週間以内にクビになるという。そこに今回、結婚を考えている修が参加するように呼ばれた。

「旅人の真実」
金色のカクテルはありませんか? 香菜里屋にこんな注文をする男が現れる。そこで工藤は、自分の認める香月の経営するバーを、男に推薦する。常連の七緒は、同じ男を別の店でも見かけていた。

「約束」
10年前に別れた男女が、約束通りにある店で10年ぶりに再会した。お互いの人生には様々な出来事があり、二人は過去を思い出す。しかし微妙にずれた二人の思いが、意外な方向へと進んでいく。


久しぶりに大好きな北森鴻さんを読みました。やはり上手いです。このシリーズは、客が抱えた問題を工藤が推測をつけるが、中々明かさない。だから最後の最後に、あくまで推測ですよ、とそっと教えてくれるという趣向。それまでは客がしゃべるのを、美味いビールと絶品料理を食べながら聞くのだ。
これがヨダレがずずっと出るほど美味そうなんだ。こっちは発泡酒をちびりなのに。しかも第3の発泡酒なんだな、これが。たまにはビールをぐいっと飲みたいぜ。一種の拷問ですな。北森さんの他の本にもたくさんの料理が出てきます。レシピがあれば作ってやるのに、と思うのは自分だけじゃ無いだろう。

それに料理だけでなく、北森さんが描く連作短編集は絶品なのです。なにもかもが、うへー、と唸る出来なんですよ。それは全てが上手く収まるものばかりで無く、悪い結果もあるということ。だから居心地が悪く、読後にもやっと残るものも多々あります。それらをひっくるめても、すっごく面白いのです。

この本も連作短編の名手ぶりを充分堪能出来る一冊でした。

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北森鴻
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    2007

05.22

「コスプレ幽霊 紅蓮女」上甲宣之

コスプレ幽霊 紅蓮女(ぐれんオンナ) (『このミス』大賞シリーズ)コスプレ幽霊 紅蓮女(ぐれんオンナ) (『このミス』大賞シリーズ)
(2006/05)
上甲 宣之

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小学校教師の辺倉史代は、人前に出ると声が出せない陰気な30歳前の女。教師の仕事に充実感を覚えず、唯一の友達は飼っているフェレットだけ。荒んだ心がそのまま顔や風貌、錆色のオーラへと転写されている。そして日々、都市伝説の研究にいそしむことしかしないオタク女だ。そんな辺倉には実は裏の顔があり、自分が作った紅蓮女という都市伝説を利用し、紅蓮女のコスプレをして、人を怖がらせることに生きがいを感じている。コスプレ衣装を着ることで性格まで変わってしまう女の戦いを描いた作品です。

「紅蓮女VS口裂け女」
いつものコスチュームと特殊メイクで、夜の暗闇でターゲットを待つ紅蓮女。そこに現れたのは、赤い傘とマスクで顔を隠した平成の口裂け女だった。

「紅蓮女VS紅蓮女es」
コスプレ居酒屋で開かれる、紅蓮女コスプレバーティーに参加をする。ここでは月に1度に紅蓮女フリークが集まり、情報交換をしているのだ。そこに集まった5人の中の1人から狂気の物語が語られる。

「辺倉史代VS刃業の鏡」
紅蓮女伝説を広めるために、生き神の風習が残るある村を訪れる。着いた村では人形を持った娘に出会い、一緒に女湯に隠された謎の鏡を探すことになる。そして、娘と一緒に風呂場へ行くが自分を強くする衣装は脱ぐことになる。

「紅蓮女VS虹色の手紙」女が教師を勤める学校で蔓延している不幸な手紙とゆきこさんの亡霊騒ぎ。そして過去に自殺した少女が使っていたという誰も使わない栄光欠番の席。自殺した少女は副担任の先生の心を今でも縛っていたのだ。紅蓮女は副担任の教師の心を解放出来るのか?

「紅蓮女VS電話男」
女の住む部屋へ「おまえが紅蓮女なのだろう。俺を殺してくれ。」と電話がかかる。それはかつて紅蓮女のモデルにした殺人事件の犯人からの電話だった。紅蓮女の正体を知られた犯人との戦いの行方は…?

ストーリー自体は軽い感じでさくさく読める、ミステリというよりエンタメ小説。紅蓮女が各章で、様々な敵と戦っていくとい展開でストーリーは進んでいく。この紅蓮女の特技が、改造したマッチをびゅんびゅん飛ばすことです。しかも所かまわず火を飛ばしまくる。危ないったらありゃしない。おまけに秘伝奥義とかいって、飛ばし方の技名まで叫んで飛ばすのだ。さすが、オタク女というべきなのかな。微妙なラインでしょ。

女には魅力がいっさいなくて、それでも少しずつ成長していくがやっぱり無理。どうしても好きになれなかったです。この女が街を歩いていると、おばさんと声をかけられ怒る場面があった。29歳でおばさんなら、30歳を超えた自分はおじさんと呼ばれる歳なのかな。まだ呼ばれたことがないですが、呼ばれる覚悟だけはそろそろ必要になったのかも。

主人公に魅力が無くて、ストーリーがマンガちっくで、良かったとこはないかと考える。あったー。女が飼っているフェレットがめっちゃ可愛かった。食いつくところが間違ってる? でもちょー可愛かったよ。なんか普通に時間潰しをした本でした。こんなのもたまーにはいいかな。

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    2007

05.21

「書店繁盛記」田口久美子

書店繁盛記書店繁盛記
(2006/09)
田口 久美子

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この本は現在ジュンク堂池袋店副店長の書店員が、書店のあれこれを教えてくれます。大崎梢さんの本の実在版と言えば分かりやすいですかね。

リアル書店(この呼び方は嫌いです)が、アマゾンに脅かされる話は深刻です。現在、日本一の売上高はアマゾンが一番だそうです。そしてリアルに売っている店の売上高一位がセブンイレブンで、主に雑誌が占めている。知り合いの新聞屋さんも、コンビニが増えてから新聞が売れなくなったと嘆いてた。二位がTSUTAYA、三位がブックオフ。こんな現状にびっくりしました。トップ3に紀伊國屋書店が入ってないのは寂しい。

自分はネットで買い物をしないで、実際に手にとって買っています。通っている旭屋書店が百貨店内にあるので、百貨店のポイント目当てもあるけどね。しかーし、この現状を知って、これからも書店で買い続けるぞと鼻息が荒くなった。

まあ、書店のない地域や、新刊が入ってこない地域では、ネットは確かに便利です。欲しい本が自宅に居て、お手軽に確実に手元に届くのは魅力的です。しかし、その便利が、町の小さな書店を潰しているのも現実なのです。うーん、話が重くなってきたなー。

もう一つおまけに、書店員の読書離れには、まったく笑えなかったです。司馬遼太郎が読めないおバカがおるそうです。よく書店員が勤まるものですな。東野圭吾を「とうの」と言った書店員の話を、以前にも聞きましたしね。

他には、芥川賞・直木賞のお祭り騒ぎの裏側などは面白かったです。イベントの裏側や、書店の新規オープンまでの道のりなども、興味深く楽しめました。

けれど、最初のオンライン書店のインパクトがありすぎて、すごくショックを受けた。このままいくと、ますます小さな書店は潰れていくのでしょうね。あなたの町の書店も、このままでは潰れるかもよ。ほんとマジで。こういった嘆かわしい現状は何とかならないのでしょうか。書店員のみなさん、書店を取り巻く厳しい環境ですが頑張って下さい! そして最低限の知識ぐらいは持って欲しいものです!!

偉そうに言ってますが、自分も古本店に行って本を買ってるんだよなー。安く買えるのは良いが、安く買い叩かれるのはムカツクんだよ。うーん、自分勝手ですよね。へへっ(苦笑)


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    2007

05.20

「水上のパッサカリア」海野碧

水上のパッサカリア水上のパッサカリア
(2007/03/20)
海野 碧

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過去を隠した大道寺勉は、Q県穂刈高原の翡翠湖の湖畔の家に菜津と暮らしていた。半年前、暴走族の無理な追い越しによる交通事故に巻き込まれ、菜津が死んでしまった。菜津が育てた飼い犬と静かな暮らしを続けていた大道寺だが、最近妙な視線を感じだす。ある日、帰宅してみると、昔の始末屋をしていた時の仲間が待っていた。

大道寺が菜津との出会いや彼女と過ごした日々を思い出す所から物語が始まる。それはたった3年間ですが、二人と一匹の犬にとってはとても濃いものです。この時点では、大道寺には何か過去があるらしいと隠されたまま、物語は進んでいく。それらがすごく文学的で、その情景が目に浮かぶような描写で読者を読ませます。審査員が絶賛していたのも納得出来ますね。とにかく凄い力を感じました。ただ、菜津の自己卑下や、大道寺への盲従ぶりには、少し居心地が悪かったです。

そのあとに、かつての始末屋時代の仲間が現れ、物語は場面展開をしていきます。始末屋の内容については、あえて触れずにおいておきます。 読めば分かるからね。ここからはハードボイルド色が強くなりますが、想像するハードボイルドとは違います。興奮するようなアクションは無く、静かな雰囲気で淡々とした描写なのです。しかし、優れた文章力でぐいぐい読ませるのです。この文章力には惚れました。

湖畔での生活や菜津と犬についての回想などが、実に丁寧に描かれていました。ミステリー文学賞新人賞ですが、大人の男と女の物語ともいえる作品だとも思いました。

登場する犬のケイトちゃんの描写が可愛らしく、海野さんは犬が好きなんだろうな。犬好きだと思える表現が随所に垣間見れました。うちは現在は猫たちだけですが、犬とも生活をしていた経験があるだから犬好きな部分を、こちょこちょやられました。

極め細やかな筆致で描かれた重厚な物語と、可愛い犬が楽しめて大満足です。大好きな高橋克彦さんのお薦めは正解。今後も楽しみな作家に出会えました。

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    2007

05.20

「月光スイッチ」橋本紡

月光スイッチ月光スイッチ
(2007/03)
橋本 紡

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香織には抱きしめあっているだけで幸せを感じる大好きな人がいる。
大好きなセイちゃんには奥さんがいるが、出産を控えて実家に帰ることになる。
奥さんの留守の間に、二人で一緒に住まないか?というセイちゃんからの誘い。
香織とセイちゃんは、一ヶ月半という期間だけの新婚生活(仮)を始めることに。


どうしようも無いおバカな二人ですが、なぜか憎めないのですよねー。
香織が持つ、女の子ちっくな雰囲気と、自分に対する冷静な目線が対照的で面白い。
相手のセイちゃんは、子供が産まれるというのに、愛人を家に引っ張り込むダメ男。
しかも奥さんからの電話を、自宅ですべてキャッチするという愚か者です。
これは橋本さんの得意な、日常の中の非日常を描いた作品ですが、少し風変わりですね。

そんな二人が仮の住まいをするのが、セイちゃんがオーナーの山崎第7ビルの最上階。
そこには香織同様に、なにかが欠けた人たちが住んでいます。集まったと言う方が正しいか。
未婚の母で、ハナちゃんと犬のサハと暮らす吉田さんを代表に、個性派が揃っています。
他には猫を15匹も飼っているおばさんや、たった一人で住む女子高生など。

夜のコンビニで弥生と睦月の気持ちの良い姉弟と出会い、香織は自分の不安を認識する。
二人の姉弟は憎まれ口を叩きあいながらも、相手の事を思って本音で話あっています。
しかし香織は自分がセイちゃんに対して、けっして本音のやり取りが出来ないことを思う。
愛人の立場では、好きという気持ちだけでは理屈では割り切れないことが多々ある。
それに気づいているのに、どうしようも無い苛立ちを、月光の中でスイッチを押されます。

その事に気づいた瞬間から、部屋の中に溢れた奥さんの気配に押し潰されそうになる。
すべてを分かった上でセイちゃんとの関係を結んだのに、今更自己嫌悪に落ちます。
そこにハナちゃんと偶然出会い、自分の苛立ちをハナちゃんの思いに被せてしまう。
あとは一気にラストへ向かうのみです。ここから先は読んで確かめて下さい。

損得を抜いて心に感じたことをそのまま行動し、そのあとにやっと気づく人間の愚かさ。
それらを描く、人間の細やかな気持ちの動きが絶妙でした。 橋本さんは良いなー。

ダメダメ人間たちですが、愛おしく感じました。弥生と睦月の姉弟はもっと良かったけど。


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橋本紡
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    2007

05.19

「大きな熊が来る前に、おやすみ。」島本理生

大きな熊が来る前に、おやすみ。大きな熊が来る前に、おやすみ。
(2007/03)
島本 理生

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「大きな熊が来る前に、おやすみ。」
普段は優しい撤平から、一度だけ暴力を受けた珠実は、どこか遠慮な態度で接している。珠実は幼い頃の恐かった父親の面影を徹平に重ねがらも、日々は平和に過ぎていく。そんな生活がずっと続くと思いきや、珠実の身体に異変が起こり…。

二人の価値観の違いがすごく面白く読めました。ものぐさなとこは徹平に近いのかもと思いながら、そうなんだよなー、と共感。こういう珠実のように、物事を突き詰めて考える人って苦手だから徹平に肩を持つ。しかし暴力はいけないですよね。それに徹底した暴力の理由に問題がありますよね。ラストではああいう終わり方をしていますが、今後も徹平の暴走は続くんだろうな。口で言っても、人間ってそんなにすぐに変われるもんじゃ無いですもん。


「クロコダイルの午睡」
苦手だと思っていた都築に料理を褒められ、いつのまにか部屋通いを許す女性。都築という男は、金に困らず苦労も知らずで大人になり、自分の価値で言葉を発する。そして彼女がいるのを気にせずに、料理を食べに一人暮らしの女性の家に通ってくる。

この男の厚顔無恥ぶりは理解が出来ないです。初めて部屋に来てトイレが狭いなんて言うかな。それに女の方も料理を褒められたぐらいで、彼女持ちの男にいそいそと料理を作るってねぇ。なんて思いがら読んでると、うひゃー、なんというブラックな終わり方だこと。黒いのが大好きなので、この作品をもう一度読み直してしまった。 その結果…。むむむ、むっちゃくちゃ好きだーー! 黒琴線にビリリと触れてしまいました。もっと黒いのを読みたいと、新たに島本さんへの期待が膨らんだ作品でした。


「猫と君のとなり」
恩師の葬儀で久しぶりに会った中学時代の後輩の荻原君と先輩だった志麻。二人の間に猫をはさんだ、ほんのり温かみのある恋の始まりを描いた作品です。

な~んかほのぼのとした展開が心地良かったです。それに二人とも猫好きだし。自分も猫好きなので、猫ちゃんが出てくる作品は無条件で好きになるんです。でもこのお話は猫が居なくても良かったと思う。猫抜きでは有り得ないって?まあ犬でもネズミでも、という意味です。ラストの志麻のセリフは単純だけど、心にじわーっと染みますね。良いカップルになりそうな予感がして、自分も恋がしたい気持ちになりました。いつも以上に、という意味です。


これまでの島本さんへの印象が、がらりと変わった三作品でした。今まで読んだ中で一番好きな本です。特に「クロコダイルの午睡」が最高に良かった。たぶん非常に偏った意見だろうなー。でも黒いの好きは辞めれません! てへっ。


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島本理生
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    2007

05.18

「遭難、」本谷有希子

遭難、遭難、
(2007/05/16)
本谷 有希子

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この本は戯曲です。舞台の台本の形式になっております。登場人物はたったの5人。4人の先生と、自殺未遂を起こした生徒の母親だけです。

物語は、「ウンコしなさいよ、そこで。」と母親が担任に詰め寄る場面で始まる。うきゃー!ウンコって。さすがは本谷作品だと、妙に感心してしまった。パワーあるね!本谷さんの本にはブラックさを期待しますが、初っ端からこれは凄いっすね。だってウンコですよ!脱糞ですよ!!あー、いかん。下品を連発してしまった。うーむ、変なTBが来るかな?1日だけTBを承認制にしようかな。

しれっと内容紹介に戻りますね。まずは登場人物を軽く紹介します。

自殺をする前に生徒から相談されるが、無視をしていた里見先生。女。その里見に宛てた、先生のせいだという生徒からの手紙を見つけた石原先生。女。自殺未遂をした生徒の担任教師で、自分のせいだと思い込む江國先生。女。その場をとりあえず収めることが得意な、学年主任の不破先生。男。自殺を試みた生徒の母親で、江國先生を無茶苦茶に責める仁科。女。彼女ら5人がドタバタとする、ブラック・コメディです。

里見は生徒からの手紙のことを白を切るが、証拠があると知ると開き直る。自分にはかつて自殺をしようとした経験があり、それがトラウマになったのだ。だから責めないで欲しいと理不尽な主張をする。こういう突き抜けた身勝手な性格の黒さはすごい好きだ。

里見を責める唯一まともな意見をする石原は、なぜか何時も悪者扱いになる。そんな石原は、手紙のことがばれたら自殺をすると里見に脅される。そして、しゃべりそうな不破の口を封じるために、弱みを握る手伝いをさせられる。ますます好きな展開だ。 かなり自分は捻くれているのだろうな。里見の暴走と、そのたびに突っ込みながらも協力する石原が、次々に笑いを誘う。

そして毎回、場が変わるたびに江國に無理な注文をする仁科の存在にニヤリ笑い。里見への手紙の事を洩らさずに、様々な仁科の要求に従う自虐な江國も良いのだ。くーーっ!好き好きな設定すぎるではないか。お願いだから人格を否定しないでね。

ここから先の展開は控えておきます。ふふっ、他の人たちも凄いことになるよー。

人間のバカさダメさが黒いもの好きな琴線に、びんびんと響いてくる。しかも戯曲なので、背景描写が無くて人対人が直球でぶつかってくるのだ。だから人物のセリフのたびに、鐘をがんがん叩かれるように反応してしまうのだ。

たまにページの合間に、舞台での演劇風景の写真が挿まれている。これがまた想像力をかきたてて、より一層ワクワクさせるのだ。「劇団、本谷有希子」の舞台を一度、生で見てみたい。見たい。見たい。見たーーい!でも気軽に東京まで見に行けない。大阪でも公演をしておくれ。 本谷さんよ。ちぇっ、なんでも東京やもんなー。と嫉妬しつつも、面白く読めました。

すべてをトラウマのせいにしている里見の結末が見事でした。本谷有希子はやはり素晴らしかった。そして今回も男前ぶりに惚れ直しました。


余談
「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」は単行本を持っているのに、文庫本も買っちゃった。てへっ。

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本谷有希子
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    2007

05.18

「タイムカプセル」折原一

タイムカプセル (ミステリーYA!)タイムカプセル (ミステリーYA!)
(2007/03)
折原 一

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十年前にタイムカプセルを埋めたメンバーのもとに、切手のない手紙が次々届く。内容は「告!栗橋北中学校・三年A組卒業生の選ばれ死君たち」という奇妙な文。

石原綾香はタイプカプセルに賛同しつつも、埋める日には事故で入院中だった。現在、彼女は駆け出しのカメラマンとなっており、独自に卒業生に会う企画を考えていた。丁度良いと彼女は取材対象をタイムカプセルを埋めたメンバーたちに絞り会いに行く。過去にタイムカプセルを埋める前後には、いったい何があったのか?現在と過去が交差するミステリな物語です。


前半部分は綾香がかつての同級生と再会して、奇妙な手紙について話し合います。再会の相手は、当時学級委員長だった湯浅孝介。副委員長で恋のライバルだった冨永ユミ。男勝りで一番の仲良しだった三輪美和。当時から株をしていた鶴巻賢太郎。病院の後取りで弱虫だった佐々倉文雄。といった面々。人物紹介を兼ねてるんだろうが、はっきり言ってクドイ。しつこ過ぎてだらけました。再会のたびに、手紙の前文を読ませる必要があったのか疑問を持ちました。

再会した結果、出てきた疑問が、当時不登校だった2人の同級生と、ホールという言葉だ。1人は担任の先生も姿を見たことが無いという不破勇。もう一人は大河原修作という人物。不登校児が2人も居たなんて、怪しさがむんむんとしてますね。けれど、ここらあたりからドキドキ感があり、断然面白くなってきました。そして謎のホールについても引っ張りましたねー。やっぱミステリはこうでなくっちゃ。ここまでは普通に読めました。ここからは個人的なボヤキです。

タイムカプセルを開ける日までは楽しく読めましたが、このあとの展開はどうなんですかね。あんなのでいいのかな。動機も事件の謎も中途半端で、すごくしこりが残りました。ネタバレになるので詳しく書けないのが残念です。うーん、もやもや感がありまくりです。あまりなドアホなオチに白けてしまいましたが、これはYAだからと許すべきなのかな。でも子供相手でもあれは酷いですね。引きこもりを何だと思っているのだろう。

お薦めはしませんが、思うことがあったのでここに書いてみました。この感想を読んで気を悪くしたら御免なさい(ペコリ)

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    2007

05.17

「変身」嶽本野ばら

変身変身
(2007/03/30)
嶽本 野ばら

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星沢皇児は美容整形のプロもさじを投げてしまうほどの不細工な30歳の男。彼は中学一年生で竹宮恵子の「風と木と詩」に出会い、漫画家志望になる。そしてテレビで見た川久保玲の信者になり、全身をコム・デ・ギャルソンで身を飾る。彼はバイトの傍ら、日曜日に吉祥寺の路上で自費出版の少女漫画を売っている。そんな彼がある日の朝、目がさめると男前になっていたのだ。外見は変わったが中身はそのままな男を描いたお話です。

カフカのぱくりだそうですが、翻訳モノ嫌いなのでそんな本は読んだ事が無い。えっへん!おいおい、威張ってどうするねん。そんな自分ですが、嶽本さんの本なので何の問題なく面白く読めました。予備知識がまったく要らなかったという事です。

星沢は核となる強い自分を持っている。でもこだわり過ぎる部分は読んでいて疲れます。それは星沢が好きだという、ファッションやメリーゴーランドの薀蓄に興味が無いからです。そして無茶苦茶キザなセリフをしれーっと語るのです。これが、ひぇーな鳥肌もの。だからか男前になったとたん憧れの祐菜とデートをするが、木っ端微塵に玉砕してしまう。中身があれじゃ当たり前ですけどね。クサくて妙にメルヘンで気持ちが悪いだけですもん。

恋に破れますが、漫画の方がとんとん拍子で連載が決まり、人気もどんっと出てる。男前になったからといって、なぜ漫画が売れるのかは疑問だが…。そこで星沢につく担当編集者が、河原木マドレーヌという美男が大好きな女性。この河原木の哲学的な話し方にも、ひじょーに疲れました。こんなのばかりですね。

その後、テレビなどに出た星沢は人気者になり、アイドルと出会ったりする。しかし中身が変わらない星沢は、相変わらず寒~いセリフを連発する。星沢には終始、自虐的な言葉を投げかけられたり、ダメダメ行動が描かれています。それを笑って読んでしまう自分って、なんだかいけない大人に思えてしまう。

そんな星沢ですが、不細工なときからたった1人だけ熱烈な読者がいます。通称をゲロ子という、しゃべり方がいつも時代劇調で、夢見がちな不細工な女の子です。ゲロ子のしゃべりには毎回爆笑させて貰いました。ツボに嵌まりまくりでした。連戦連敗が続く星沢が行き着く先は、この女だろうなと最初から想像出来ました。ですがラストはこう持ってきたか、と言える締めくくり方でした。

嶽本ワールド独特の薀蓄の深さやこだわりに、乗っていけない部分がありました。ですが「下妻物語」ほど絶賛は出来ませんでしたが、わりあい楽しめました。やっぱり「下妻」超えは難しいのかな。と、ボソっと呟く。

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嶽本野ばら
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    2007

05.17

5月17日 書店でお買い物

水の迷宮 水の迷宮
石持 浅海 (2007/05/10)
光文社

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葉桜の季節に君を想うということ 葉桜の季節に君を想うということ
歌野 晶午 (2007/05)
文藝春秋

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ほたる館物語 3 (3) ほたる館物語 3 (3)
あさの あつこ (2007/05)
ジャイブ

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12歳たちの伝説 2 (2) 12歳たちの伝説 2 (2)
後藤 竜二 (2007/05)
ジャイブ

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ぼくらのバス ぼくらのバス
大島 真寿美 (2007/05)
ジャイブ

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新・夢十夜 新・夢十夜
芦原 すなお (2007/05)
東京創元社

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チルドレン チルドレン
伊坂 幸太郎 (2007/05/16)
講談社

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生まれる森 生まれる森
島本 理生 (2007/05/16)
講談社

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空を見上げる古い歌を口ずさむ 空を見上げる古い歌を口ずさむ
小路 幸也 (2007/05/16)
講談社

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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
本谷 有希子 (2007/05/16)
講談社

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遭難、 遭難、
本谷 有希子 (2007/05/16)
講談社

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これはおまけ。
IN☆POCKET ’07-5 (2007) / ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

お買い物
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    2007

05.16

「雷の季節の終わりに」恒川光太郎

雷の季節の終わりに雷の季節の終わりに
(2006/11)
恒川 光太郎

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地図にも載らず、現世から存在を隠されている”穏”という町で暮らす少年賢也。“穏”という街には、春夏秋冬の他にもう1つ雷の季節があった。彼にはかつて姉がいたが、ある年の雷の季節に姉は行方不明になってしまう。姉の失踪と同時に、賢也は”風わいわい”に取り憑かれてしまったのだ。賢也は”風わいわい”の存在を隠して穂高や遼雲らの友と少年時代を過ごす。しかし知り合いが殺された犯人を偶然知ってしまい、穏に居られなくなり外の世界に出る。

ファンタジー系は苦手で、世界設定の説明だけで普段はウンザリしてしまいます。しかし本書にはそいった嫌悪感は全く無く、物語の世界にすんなり入って行けました。これは前作の「夜市」でもそうでした。隣にありそうな異世界が見事に出来上がっている。“穏”という異界の情景がありありと目に浮かぶのです。恒川さんってすごい描写力ですね。

そして少々だらけてきたなという感覚のときに、突如“穏”から現世に場面が変わる。“穏”の外の世界では、理不尽な継母に苦しむ茜という少女が第二の主人公として現れる。茜は友達が感覚に感じた、眼に見えない空に棲む”風霊鳥”の存在に憧れる。茜は訳の解らない母の想像以上の殺意に恐怖を感じ、家を出ることにする。そんな茜は家出した日、見知らぬ男に知らない土地に連れて行かれる。

ここからは怒涛の展開が待っている。2つの物語が見事に交差していくのだ。あとはあれとこれが繋がって、あの部分が複線でと物語りは終焉に近づいていく。恒川さんは異界を創るのも上手いが、長編の構成力もすごく上手いです。

異質な世界ですが、結局、鬼となるのは人である。人より怖いものは無いということかな。最後の終わり方は淡白すぎるきらいがあり、少々物足りなさを感じました。対決にしろ、別れにしろ、もう少し丁寧に描いて欲しかったです。でもこの完成された世界観を楽しめたので、良しとしときますか。

これは映画化するなら実写よりもジブリで見たい作品ですね。読みながら「天空のラピュタ」を思い出していました。

恒川さんの実力は本物でしたね。そして益々、次回作にも期待が膨らみました。次も異界ですかね? このまま異界作家で居続けるのかも楽しみです。

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恒川光太郎
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    2007

05.15

「守護天使」上村佑

守護天使守護天使
(2007/03)
上村 佑

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ぷぷぷっ、なんじゃこの本は。 アホほど笑えてしまったー!

須賀啓一は、チビ、デブ、ハゲ、と見た目の冴えない50歳のダメ親父。しかも、鬼嫁から貰う少ない小遣いでカツカツの生活をしている。啓一は通勤電車の中でいつも見かける女子高生に初めての恋をする。ストーカーとも言える啓一の片思いをよそに、他方ではある計画が進んでいた。

「誰か私を見つけてください」という女子高生のブログを見つけた青年が居た。彼は○ちゃんねるに新スレットを立ててこのブログを煽り、スレットはどんどん加熱していく。そして、プロデューサー・ブッチャー・ハーベストの3人組が集まり、彼女を襲うことになる。

その計画に気づいた啓一は、元引きこもりのヤマトと元ヤクザの村岡でチームをつくる。はたして啓一は守護天使として彼女を守れるのか?第2回日本ラブストーリー大賞受賞作です。


キャラ小説と言ってもいいぐらい、登場人物に魅力がありました。主人公の親父のバカバカしい受難と、こんな愛のかたちもありそうでリアルでした。ヤマトくんもお世話になったとはいえ、バカ親父に付き合う好青年でかわいかった。村岡もやることは無茶苦茶ですが、悪事には頭が切れる姿がかっこいいのだ。鬼嫁の傍若無人ぶりもずどんと突き抜けていて、なんだか快感を覚えてしまう。このキレっぷりが、ダメ親父の悲惨さを滑稽に仕上げているのだ。

鬼嫁に折られた歯を、啓一はお金が無くて自分で義歯を作る場面に爆笑。ラーメン屋で嵌めた義歯の飛んでいった行方にも大爆笑。涙が出たよ。女子高生を助けるために、資金稼ぎのアルバイトをする姿にも吹き出してしまった。カメラマンの、萌えええええええええっ、の叫びにも受けたー。この笑いのセンスは凄い!こんな書き出しじゃ、読んでない方にはわからないっすよねー。でも読まなくちゃあ、この本の面白さは伝わらないのですよ。ぜひぜひ読んで欲しいな。

中年オヤジの悲惨な奮闘に、ただただ笑いまくりの2時間でした。これは新しいカタチの恋愛小説なのだ。女性たちよ、決して引くことなかれ。キモくてダメダメな親父でしたが、最後にはちょっぴりかわいく思えました。

今後も要チェックな作家が1人増えました。上村佑さん、最高!!映画化らしいですが、映像を見る前にこの本を読まなきゃ損です。大損です。

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    2007

05.14

「メメントモリ」福田栄一

メメントモリ (Edge)メメントモリ (Edge)
(2007/02)
福田 栄一

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自分の腕に自信を持つバーテンダーの山県だが、働いていた渋谷のバーが潰れてしまう。そんな山県の新しい職場は、煮物のにおいがこもったカラオケが鳴る場末のスナックだ。バーテンダーとして働き出したものの、この店にはカクテルを飲みたいと言う客はいない。後悔しながら働く日々のなか、家出少女の亜須美を拾い、部屋で預かることに。スナック「メメントモリ」に訪れるダメ人間たちが絡むエンタメ小説です。

起こる出来事はありふれたものだが、さらっと読めて好きだった。キャラものというほどのキャラ立ちをしているわけでなく、どちらかと言うと人物たちは薄い。ストーリー展開もドタバタもしていないし、わりと淡々としていて盛り上がりもない。事件が起こっても、いつの間にか地味に解決する。ほんとすべてが地味。だけど黙々と読ませる何かがって、本の世界に引き込まれて夢中になって読むことができた。

登場人物をおさらいしてみる。まず、山県はこんな真面目なやつおらんやろ、というぐらい真面目。一緒に住むことになった亜須美にも、いっさい手を出さない。浮世離れと言ってもいいぐらい感情を表にださず、すべてをたんたんと事務的にこなす。リアル感に欠けると言えるが、何故かすんなりと迎えいれてしまう不思議なヤツ。

山県の部屋に転がり込んだ亜須美も、突飛なことをするのかと思ったが、いたって普通。ちょっぴり山県に恋心を見せるが、進展しないままいきなりフェイドアウトする。もう少し二人のベタな恋が読みたかったというのが本音かな。

山県の前の店の常連客の翔子も、いきなり押し掛けてきて最初はインパクトがあったが、いつの間にかこちらも落ち着いた存在になり下っている。スナックのオーナー兼ママの絢子も、我儘さが前面にくるのかと思ったが尻すぼみ。もっと無茶苦茶な捻くれた性格なのかと期待したが、実は優しさを持った普通の人でした。ちゃんちゃん、という淡々さ。

これだけ盛り上がる要素がない人物たちばかりが出てくるのは珍しい。そんな誰にも感情移入をしないまま最後まで読んでも、何故か楽しめてしまう不思議な作品。面白く読めた本なのに、褒めどころがまったく思いつかないんだよなー。大きな事件も起こらず、人物たちも薄く、すべてが地味なのだが、好きな本だった。

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福田栄一
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    2007

05.13

「しずく」西加奈子

しずくしずく
(2007/04/20)
西 加奈子

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様々な女同士を描いた初の短編集です。長編も良いがこの短編集はすごく良かった。

「ランドセル」
小学校低学年を仲良く過ごした幼馴染の女の子たち。その後、疎遠になるが30歳を越えたある日、二人は偶然再会する。再開した二人はお酒を飲みに行き、勢いで一緒に旅行する約束をする。大人になり再会した幼馴染の女同士を描いた作品です。
女の子から女性になっても、共通した思い出が幼馴染の二人を強くする。二人の間にしか存在しない記憶が思い出される瞬間は、鳥肌がぶわっと出ました。幼馴染というのは良いものですね。

「灰皿」
連れ合いを亡くしたおばあさんが、思い出の詰まった持ち家を貸し出すことに。その家に入居してきたのは27歳の女性で、仕事は小説家だという。彼女は引越しの挨拶のあとも、頻繁におばあさんの住む家を訪ねる。年老いたおばあさんと若い女性の女同士を描いた作品です。
世代の違う感性に戸惑いながらも、若い女の話を聞くうちに好きだという感情は同じだと気づく。そして亡き夫への愛情をあらためて感じるおばあさんが素敵だ。女の小説のタイトルは、西さんのユーモアだと捉えよう。

「木蓮」
34歳の女性が恋人を失いたくないために、彼と元妻との娘を1日預かることになる。その娘を、かわいくない、ムカツク、と思いながらも告げ口を恐れて頑張って付き合う。30女と恋人の娘の女同士を描いた作品です。
子供の歓心を得ようと頑張る姿に失笑してしまう。しかも下の方にばかり興味が行く子供。あんな言葉を大声で連呼されると、自分もどつきたくなるだろうな。辛抱しきれずに本音を吐く瞬間は気持ちが良かったです。でも結果オーライじゃ無い可能性もあるでしょうね。

「影」
自分という人間を演じる女性が、社内恋愛でトラブルをおこし旅に出る。その女性は旅先の砂浜で、島中の人から嘘つきだと呼ばれる女性に出会う。演じる女性と嘘をつく女性の女同士の交流を描いた作品です。
自分と同じ価値観を持っていると信じていたのを、裏切られた痛さはすごく判る。なんでグーで殴らなかったのかな。それすら出来ないほどのショックだったという事か。嘘をつくのも自分を作るのもすべて自分だと気づくのです。ですが、それまでの彼女を想像するとちょっと怖い。

「しずく」
それぞれの飼い主の元で家猫として飼われていた2匹の雌猫たち。飼い主たちがどこかで出会い勝手に恋をして、猫たちは一緒に住むことになる。飼い主たちの都合に左右される、2匹の雌猫たちを描いた作品です。
猫から見た人間がすごく面白かったです。うちの猫もこんな感じで見てるのかな?でも実際はこんなに簡単に忘れてくれないけどね。怨みを残すから化け猫なんて言葉がある。しかも環境の違いにもっと敏感だと、猫好きだから引っかかるんだな。でもお話自体はとても面白かったですよ。

「シャワーキャップ」
几帳面で神経質な30歳の娘と、雑で自由奔放な母親が、2人だけの時間を過ごす。大人へと成長したことで感じる思いを描いた、母娘の女同士の作品です。
大雑把な母に呆れる反面、少女のような無邪気さに憧れる娘が身近に感じました。このお母さんがすごく可愛いかったです。でも自分の親なら疲れるだろうなー。そんなお母さんの意外な一面を知り、ずしんと母の重みに気づく場面にぐっときた。いつまでたっても自分は母の娘だと気づき、母の無償の愛を感じられて一緒に涙しました。

心がぶつかり合うことで、新たな気持ちに気づいたり、ちょっとした成長をする。それらがすーっと自然に感性に響き、とても心地良く感じられました。これからも、もっともっと短編を読みたいと思わせる作品集でした。


西加奈子さんのサイン。

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西加奈子
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    2007

05.13

「石川くん」枡野浩一

石川くん (集英社文庫 ま 16-2)石川くん (集英社文庫 ま 16-2)
(2007/04)
枡野 浩一

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石川啄木の短歌を、枡野浩一さんが今の言葉でモデルチェンジ。
そしてその歌にあわせたエッセイを加えた本です。

読んでから気づいたのですが、後ろに載っている「石川くん年譜」から読むのがお薦め。
石川くんの生涯を踏まえて短歌を詠むほうが、その歌の背景がより分かるからです。
それに石川くんの破天荒な生涯が、きっと自分の身近に感じることが出来るだろう。

昔の言葉だからとなんとなく敬遠していた短歌も、枡野さんの現代語訳で面白く詠めます。
それに伴って、これまで持っていた石川啄木のイメージがガラリと変わりました。
いくつか例を挙げてみましょうか。

「はたらけど はたらけど猶わが生活樂にならざり ぢっと手を見る」
これはすごく有名な歌ですが、枡野さんに掛かればこうなります。
「がんばっているんだけどな いつまでもこんな調子だ じっと手を見る」
この歌に対してのエッセイでは、石川くんはあまり働かなかったと知れます。

「一度でも 我に頭を下げさせし人はみな死ねと いのりてしこと」
この短歌の現代語訳は笑劇でした。←勝手に新しい字を作ってしまった。
「一度でも 俺に頭を下げさせたやつら全員 死にますように」
石川くんってすごく強気な人だったのですね。ほんと、びっくりしました。

「目さまして 猶起き出でぬ息の癖はかなしき癖ぞ 母よ咎むな」
「目覚めても ふとんの中でぐずぐずとしちゃう駄目さを 責めないでママ」
こんな歌を残した石川くんって可愛いですね。

あまり書きすぎると勿体無いので、この辺で紹介は止めときます。

石川くんのイメージをあなたも変えてみませんか?
奥深いもの、心にしんみりと染みるもの、くすりと笑えるもの。
短歌も石川くんもぐっと身近に感じられる。そんな本でした。
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    2007

05.12

「試験に敗けない密室」高田崇史

試験に敗けない密室―千葉千波の事件日記 (講談社文庫)試験に敗けない密室―千葉千波の事件日記 (講談社文庫)
(2005/09)
高田 崇史

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主人公は慎重で気弱な浪人生の通称ぴいくん。八丁堀とも呼ばれてます。
同じく浪人生で強引でわがままなで美女に弱い慎之介。
ぴいくんの2つ年下の従弟で、パズル好きな美少年の千波くん。

お馴染みの3人トリオが、台風の影響で土砂崩れに遭い十三塚村に閉じ込められた。
電話も繋がらないし移動手段も無い中、次々と事件に巻き込まれる。
彼ら3人トリオが、密室事件と論理パズルに挑むシリーズ2冊目です。


前作よりもパズル色は控えめでした。でも読みやすさはアップしています。
まあ簡単に言えば、キャラ重視でストーリーは展開します。

そして今回彼らが挑むのがこれらの事件です。

過去に曰くのある「神裁きの土牢」に閉じ込められた慎之介。
鍵の閉まった納戸に閉じ込められた旅館のおかみ。
旅館3階の伍号室に入って消えてしまった謎の美女。

これらの謎に挑むのですが、トリックに豪腕さが目立ったというか、これはありなのかな。
たぶん読者で解ける方は居ないだろうなーという、ぶっとび系トリックでした。

論理パズルは今回は問題数が少ないですね。知ってた有名なのもあったしね。
しかーしっ! どうしても解けない論理問題が1つだけありました。

「柱時計が三時を打つのに三秒かかりました。では九時を打つのに何秒かかるでしょう?」

という問題です。答えが載ってるのに、どうしても理解出来ないのです。
答えは12秒だそうです。いくら考えても9秒なんですよね。
だから誰か教えてくれないかなーと、ネット検索してみました。
そしたら、居るわ、居るわ。この問題でつまづいた方たちがいっぱい居たよ。
答えへの導きもあったけど、自分がアホなのか中々理解出来なかったです。

こんなアホな自分ですが、これからもこのシリーズやQEDを読んで行きたいと思います。


わかりやすい答えがあったので、気になる方は続きを読む ?をポチっとどうぞ。


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高田崇史
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    2007

05.11

「ミミズクとオリーブ」芦原すなお

ミミズクとオリーブ (創元推理文庫)ミミズクとオリーブ (創元推理文庫)
(2000/10)
芦原 すなお

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八王子の郊外に住む作家の元に、様々な相談者が現れ謎が持ち込まれる。相談話を聞くが夫にはさっぱり解らない。隣で聞く妻が良い勘と鋭い洞察力で謎を解く。美味しそうな料理とともに、ユーモア溢れる会話と推理が楽しめるシリーズ第1弾です。

「ミミズクとオリーブ」
大学時代の友人が、奥さんが謎めいた置手紙と離婚届を残して出て行ったと相談にくる。奥さんが出て行った理由と、いったい何処へ行ったのかを推理する。

「紅い珊瑚の耳飾り」
高校時代の友人で警察官になった河田が、殺人事件を解決したと自慢する。すると聞いていた妻が捜査ミスを指摘し、思わぬ展開に発展していく。

「おとといのおとふ」
郷里で開かれた同窓会で、地元の大会社の会長が襲われ意識不明だと聞く。そこでうちの女房は名探偵だと謎解きを安請け合いしてしまう作家先生。

「梅見月」
かつて妻の親戚の家で起きた空き巣事件を、作家先生は思い出す。それは2人が知り合い結婚に到ったきっかけと、妻の優しさを思い出す出来事だった。

「姫鏡台」
アトリエで死んでいた画家の先生は病死に見えるが、家政婦が奇妙だと言い出した。刑事の河田は家政婦の言葉が気になり、作家では無く作家の妻に相談しにくる。

「寿留女」
河田の友達に離婚の話が持ち上がり、三行半を突きつけた嫁の慰謝料が奇妙だという。妻の指図で作家と河田が、嫁に慰謝料の話を聞くため会いに行く。

「ずずばな」
河田が見たのは、フグの毒にあたって死んだ女社長と、風呂場で溺死した旦那だった。事故か他殺か判断がつかない河田は、作家の家を訪れる。


友人などが相談話をしゃべる合間に、天然系のちゃちゃを入れる作家さん。だから話がすぐに脱線するが、これがユーモアがあってすごく面白い。至る所に笑いのくすぐりポイントがあり、推理部分をそっちのけで読み込んでしまうのだ。そして作家と妻の、夫婦間ののんびりした会話がとても良い雰囲気を醸し出す。2人が送る静かで暖かい生活が、疲れた心を癒してくれるのです。

そして外せないのが奥さんが作る数々の手料理なのです。讃岐名物の美味そうな料理の描写が、よだれと胃袋の胃液を呼ぶ。ミステリ部分はおまけと言えるようなものだが、それを差し引いても楽しました。

作家が頑張っても執筆が進まない風景は、芦原さんの苦悩するほんとの姿だろうか。そんなことを想像しつつも楽しめた作品でした。

本のタイトル名は表紙のイラストそのままです。妻の植えたオリーブの木にミミズクがやって来て、妻の手からごはんを貰う。ミミズクをお客さんとして迎える妻さんも素敵でした。

芦原さん3冊目を読了しました。続編を含め、今後も読むのが楽しみです。


TBさせてもらいました。「お菓子を片手に、日向で読書♪」

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芦原すなお
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    2007

05.10

「未来の息子」椰月美智子

未来の息子未来の息子
(2005/04)
椰月 美智子

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「未来の息子」
中学生の理子は、好きな先輩の気持ちが知りたくて、学校でコックリさんを呼ぶ。しかし、コックリさんを帰す前に不意の事態が起こり、儀式を途中でやめてしまう。すると理子にしか見えない親指ほどの大きさの小さなオヤジが現れたのだ。その小さなオヤジは、未来からやって来た理子の息子だという。少し変わった親子のお話です。

「三ツ谷橋」
古谷は戸板川の橋の上で、顔がきみどり色のおばあさんと出会う。このおばあさんは、この辺りではきみどりのおばあと呼ばれているそうだ。2人の不思議な交流を描いたお話です。

「月島さんちのフミちゃん」
中学生のフミちゃんは両親を亡くし、代わりに瑛子ちゃんとカンちゃんに育てられている。2人ともフミちゃんのお姉ちゃんとお兄ちゃんで、二卵性の双子なのだ。カンちゃんは家の中だけオネエ言葉の美男子な家庭内オカマ。瑛子ちゃんは頭の後ろに口が出来たという不思議系美女。ちょっと変わった3人家族のお話です。

「女」
直美は夫に満足はしているが、性行為だけはうんざりしている。だから夫が居ないときには様々な男を思い浮かべ、1人で快楽を得ている。そんな彼女は一部の人間の視線を感じると、不快感を覚えて狂いそうになる。歪な性癖を持った女の暴走を描いたお話。

「告白」
女は温泉旅館で出会った3本指の布団敷きについて、恋人に語る。その布団敷きの背中には、女の人の刺青が彫られていたのだ。女が体験した奇妙なお話です。


好き嫌いの別れた、ちょっぴり不思議な5つの短編集です。まず好きなお話だったのは、「未来の息子」と「月島家のフミちゃん」でした。主人公が両方とも少女なのと、児童書の雰囲気が残った温かさが、良い気持ちになれたのだ。この少女たちが純粋で、昔からある少女イメージにぴたりとくるのが可愛いかった。そんな少女の心の内面の動きが瑞々しくて、ほっこりと癒されるんだな。そして「フミちゃん」に出てくる異質な双子が、フミちゃんを大事にしているのが好印象。ぶきっちょながらも暖かい目で妹を見守る兄姉の姿に、じーんときました。

次に好きというよりも、むちゃくちゃ怖かったのが「女」。自分の好みの男以外のエロ視線に敏感に反応し、心に黒いものを溜め込む女。それがふとしたきっかけでついには暴走し、最悪の結末を迎えるのだ。キレタ女に思わず、怖え~っと声に出してしまった。

最後は嫌いというよりもまったく理解出来なかったのが、「三ツ谷橋」と「告白」。両作とも読み終わってまず思うのが、だから何?ということ。橋で変なおばあに出会って、意味の分からない会話をする主人公。それで?それだけなんだよ。旅館で指の欠けた刺青親父と関係を持った女が、恋人に出会いからすべてを告白する。それで何?そのあと何も起こらないんじゃ、感想の持ちようが無いんだよな。

まあ5戦中3勝2敗という感じでした。打率が6割だったのでまあ良しか。なんじゃそりゃ。

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椰月美智子
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    2007

05.10

「ふにゅう」川端裕人

ふにゅうふにゅう
(2004/07/23)
川端 裕人

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「桜川ピクニック」の兄本とも言える、5つの短編集です。

「おっぱい」
妻の半年間の育児休暇が終わると、夫の洋介は交代で育児休暇を取り子育てをする。
二人は子育ては平等にという約束で子供をつくったからだ。
洋介の子育てと主夫業を描いた作品です。

洋介は娘が授乳する妻のおっぱいにとても憧れる。
1日を頑張って娘と過ごしても、仕事から帰ってきたおっぱいを一番に求めるからだ。
洋介は娘に自分の乳首をあてがい、いやいやをされてくやしがったりもする。
なんかすげー可愛いパパですね。でも気持ちは分かるなー。
母親と赤ちゃんってみっしりと繋がりを感じられるが、そこのところは男親はねえ。
だからどんなに泣いてもぴたりと抑える、魔法のおっぱいに憧れるのだ。

洋介は母乳に憧れ、父乳を欲しがる。これが本のタイトルの「ふにゅう」という訳。
ちょっぴり痛くて切ないお話でした。


「デリパニ」
日本人の夫と妻のソフィアの夫婦は、いつ出産がくるかを待つばかり。
しかし男は血を見るのが怖く、出産に立会うのをびくびくと恐れている。
ニューヨークの産院を舞台にした、夫婦の立会い出産を描いた作品です。

文化の違いからくる二人の物の考え方の違いが、すんごく面白かった。
夫は緊張しまくってがちがちだが、妻は破水がきた後もビールを飲む強者。
しかもアメリカの産院なのですべてがいいかげん。これが笑えるんだ。
それに出産シーンがまた爆笑なのだ。もう笑いすぎて涙しました。


「ゆすきとくんとゆすあしちゃん」
匡志と志保の夫婦には、悠斗と理香の二人の子供がいる。
息子は日頃からママはきれいだと言い、ついにはママと結婚するんだと言い出す。
ママは満更でもなさそうにするが、パパは息子に結婚の説明と嫉妬でやきもきする。
結婚とはなにか。夫が求める夫婦と、妻が求める夫婦を考える作品です。

なんかママが好きって言う息子に嫉妬するパパって素敵ですね。
それだけ奥さんを愛し続けているのが、むちゃくちゃ分かるから。
子供のあまりの無邪気さには困るが、こんなパパになりたいなあと思いました。


「桜川エピキュリアン」
ジムのプールに息子の由紀夫とやって来たパパは、久しぶりに同級生の信一郎に出会う。
信一郎はホモで、パパは親子二人で暮らす由紀夫のなよっとした仕草に悩み始める。
そこで男のイメージを由紀夫に与えるために、パパはジムで真剣に鍛えることにする。

内容に中身があるわけでは無いが、川端さんのユーモアに笑いっぱなし。
由紀夫くんも可愛いかったし、信一郎も味があって良かった。
この本の中で一番好きな作品でした。 ほんと中身は無いけどね。


「ギンヤンマ、再配置プロジェクト」
ママが1ヶ月の出張に行き、残されたパパと2人の子供は近くの池で虫取りをする。
そこでギンヤンマの幼虫のヤゴを捕まえ、家に持ち帰り飼育することにする。
母の欠けた親子3人の1ヶ月の生活を描いた作品です。

ママが居なくなって、子供の服や靴下の収納場所を探すが見つからないパパ。
これすんごい分かるな。日頃ママにまかせっぱなしにすると、こういう目に遭うんだよ。
世の中のパパさん、気をつけましょうね。

ここでパパと息子くんが、歴代のウルトラマンや仮面ライダーのビデオを見る場面がある。
これはすっごい憧れる。そして「育児をすることは、子供時代を生き直すこと」と書かれてる。
めっちゃ良い言葉やなーと印象に残りました。それともう一つ心に残った言葉があるんです。
それは男親にとって息子は「年の離れた親友」で、娘は「年若い恋人」だという言葉。
女親は逆に見立てることもよくあることだってさ。そうだよなー、といたく感心しました。

しかし川端さんの描く母親って、自分勝手で子育てをしない母親が多いですね。
1ヶ月も小さい子を置いて出張に行くかなー。最後にじーんときたから、まあいいか。

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    2007

05.09

「ぜつぼう」本谷有希子

ぜつぼうぜつぼう
(2006/04/28)
本谷 有希子

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異国の地で過酷な長旅をし、日本に帰ると本人の知らないところで有名人になっていた戸越。お笑い芸人として人気者になるが、転落はそれ以上にはやく、ちやほやした奴等はどんどん去っていき、顔が売れてしまったがゆえに新しい仕事に就くことも出来ず、外を歩くことも難しい。戸越は2年前から度の不眠症になり、落ち窪んだ目元、かさついた肌、肉のない頬、白髪の混じった無精ひげと、35歳は超えて見える容貌になった。

戸越はある日の公園で、伝書鳩を育てようとする鳩男の浮浪者に出会い、自分の悩みを話してみると、何故か鳩男の故郷の誰も住んでいない実家に行くことになる。そこは町から離れた農村で、鳩男の家にはシズミという謎の先客が住んでいたのだ。

なんかあの猿○○苦悩みたいな設定ですな。他にもロバと旅した芸人が思い浮かぶけど…。だから読書中はずーっとあのジャガイモみたいな顔が目に浮かんでいた。今は何をしているのでしょうね、○岩○。もういっちょ。○○石。これってブラック・ジョークになるのかな(汗)

売れっ子だった戸越がどん底に落ち、人間不信になってすべてに絶望している。自分の絶望について、本人が語れば語るほど誇大強調をしている、人からそんな自分に酔っていると思われたくない、と戸越は心の中で葛藤している。こういうのって、誰の心の中にもありそうですね。

そして戸越はシズミと出会い、何か変化が起こるのかと思いきや、何故かするっといとも簡単に手をすり抜けていくのだ。戸越の行き着く先は自分で読んで確かめて下さい。そうすれば本谷有希子の捻くれぶりが確認出来る。そしてこう思うだろう。やはり本谷有希子は一筋縄では行かない作家でした。

これまでに読んだ3冊ほど圧倒的なパワーは無く、ユーモアもほとんど無かった。だけど、絶望の中でただただもがき苦しむ男の姿は本谷さんらしい毒だと感じた。救いの無いぐだぐだと苦しむ男の姿に自分を当て嵌めると、ちょっぴり元気が出るかもよ。

しかし、○波少年に出ていた芸人たちは見事に消えましたね。ほんと、あっという間に痕跡が無くなった。でもまったく気にならないけどね。

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本谷有希子
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