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    2007

06.30

「桐畑家の縁談」中島京子

桐畑家の縁談桐畑家の縁談
(2007/03/22)
中島京子

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この作品は終始琴線に触れっぱなしで、ずっとニヤリ笑いをしながら読みました。だからほっぺの筋肉が、きゅっとひきつって顔が疲れた。まず冒頭の姉・露子がこたつに入ったままでとる仕草で感情移入することができた。女性誌の「顔の体操」という記事を見て、百面相をするが、大あくびで終わってしまう。その後、8時以降の飲食はダメという見出しを隠して物を食べてしまう。こんな堕落した姿に、すごく共感してしまう自分ってどうよ。でもわかるよなぁ。

彼女は勤める会社が倒産し、無職のまま、妹の家に転がりこんでダラダラしている。妹・桂子は地味で、誰にも相談せずに何でも決断をしてしまうという変わり者。その妹が、毎日「アイシテル」と言ってくれるからと、台湾人と結婚すると言い出した。この発言で桐畑家の家族たちが小さく揺れる。この作品はたぶん家族小説だろうな。

浮世離れした妹が恋に浮かれる姿も可愛かったが、なんと言っても姉が自分と似ていた。似ているだけで一緒ではないので、そのあたりはまあ察して下さい。

妹が先に結婚すると言っても、自分も結婚したいと思わないという結婚願望がないところ。それに、仕事に一生懸命になるわけでもなく、ただ毎日をぼんやり過ごしているダメさ。焦りというのがなくて、なんとかなるさ、と漠然としているところに共感をしてしまう。それでいて、周りから結婚しないのかと言われると、耳が痛いながら心の中で毒を吐く。彼女は27歳で女性。けっして行き遅れという年齢ではない。自分は男で現在33歳。同じ状況ではないが、すっごくシンパシーを感じてしまった。こう書くと自分ってダメ男っすね。

ここに出てくる彼女たちの父親・桐畑氏のダメさも、すごくキュートで可愛かった。娘の結婚に反対したいのだが、強い態度に出られなくて、手紙でという消極的な抵抗をする。しかし、当の娘は鼻にもかけず、その姉は手紙を見て大爆笑をしてしまうという始末。愛すべき父ですね。女3人男1人の家族で、自分の居場所がない姿がすごく滑稽だった。実際、この立場なら笑えないけど、自分がまだ独身なので勘弁して下さい。

性格も見た目も違う姉妹ですが、すごく仲が良くて、ほんとは似ているとこが微笑ましい。同性の姉妹・兄弟って憧れる。うちは妹がいるが、仲は悪くはないが微妙な距離間がある。別々に住んでいるというのもあるとは思うが、やっぱり同姓ではないから根本が違う。ラストの二人の会話で、益々この姉妹が羨ましくなりました。

父親の勤める会社の会長が語った言葉、「やっかいなもんですが、楽しまれることです」 恋も仕事もほんまにその通り楽しみたいものですね。おじいもいいこと言う。今の自分にぴったりの内容だったから、とっても好きな作品でした。

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中島京子
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    2007

06.29

「試験に出ないパズル」高田崇史

試験に出ないパズル (講談社文庫―千葉千波の事件日記)試験に出ないパズル (講談社文庫―千葉千波の事件日記)
(2005/12)
高田 崇史

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「私と弟が、山羊を二頭連れて、海苔を一箱持って歩いていると、目の前に川がありました。橋はかかっていなくて、小さな二人乗りのボートが一艘浮かんでいました。私たちは、その川を渡らなくてはなりません。その船を漕ぐことができるのは、もちろん私と弟の二人だけです。さて、どうやったら全員が向こう岸に渡ることができるでしょうか?」

このシリーズに欠かせない論理問題です。これと同じ事件が起こります。
ぴいくん、千波くん、慎之介、のトリオに加え、ぴいくんの妹、大森と犬。
その後、桜と小梅の姉妹が増え、二人乗りの一艘のボートで向こう岸に渡ることに。
第一作品の「《九月》山羊・海苔・私」のおおまかな内容です。

その他収録作は、「《十月》八丁堀図書館の秘密」「《十一月》亜麻色の鍵の乙女」
「《十二月》粉雪はドルチェのように」「《一月》もいくつ寝ると神頼み」です。
他の作品の内容紹介はサボっちゃおう。

論理問題と事件の謎が楽しめるこのシリーズも、ついに三作目まで読了です。
主な登場人物は過去に書いたシリーズの感想を参照して下さい。さぼりすぎ?

今回は論理問題が前面に出て来ています。だからちょっと着いて行けない部分がある。
普通の頭では難しいのだよこれが。まあ自分の頭を普通と言っていいのか。。。
冒頭に書いた問題を読んでもらえれば、言っている意味が理解してもらえるでしょう。
読んでいて途中で何度かパスしたくなりました。だって頭がぐらぐらしてくるのだもの。

取り上げた論理問題の解答が気になるという方がいますかね?載せておきましょうか。

一、 弟、山羊1を連れて渡る。
二、 弟だけ戻ってくる。
三、 私、山羊2を連れて渡る。
四、 私だけ戻ってくる。
五、 私と弟、渡る。
六、 弟戻る。
七、 海苔を積んで渡る。

これが正解です。こんな事を考えながら読むなんて苦手。だからかなりはしょった。
今度からはQEDシリーズだけを読もうかな。でも新刊が出たら買いそうな気もする。
本シリーズに関しては進んでお薦めはしません。かなり特殊な系統の本だからね。
でも好きな方は読んでみるのも良いだろう。

余談。
あの人がちらりと出て来ていました。誰って…?歴史に詳しい漢方薬剤師さんです。

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高田崇史
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    2007

06.29

「美晴さんランナウェイ」山本幸久

美晴さんランナウェイ美晴さんランナウェイ
(2007/04)
山本 幸久

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我が家の居候・美晴叔母さんは、すらりとしたプロポーションで27歳の超美人。しかし未だ独身で、定職に就かずに古本店・幕間堂で店番をしている。姪にあたる中学生の世宇子の目線で、美晴さん周辺に起こる出来事を描いた作品。

主な登場人物は、両親と父の妹である美晴さん、世宇子と翔の姉弟、従兄の自由。それと幕間堂での美晴さんの仕事仲間小山田くん。医者の那須先生(なすび)。それぞれ個性的でとても魅力があります。

お母さんは美晴さんを結婚させ、家から出そうと見合いを勧めまくる。弟の翔は超常現象にこり、「モー」というオカルト雑誌に無我夢中。従兄の自由に思いを寄せる、世宇子の乙女っぷりも弄らしい。その自由は、父の借金のせいで自分の将来に不安を持っている。そして実は重要な位置をしめるお父さんは、始終美晴さんを怒っている。

とまあ、美晴さんが主人公ではなく、それぞれ家族たちがメインのお話でもある。一方で、世宇子はいつも身勝手な美晴さんの言動・行動に振り回され続けている。この自由奔放な行動には、美晴さんなりの理由がある。まあ読んで確かめて下さい。

連作短編形式でお話は進みますが、最後まで読むと繋がったお話だったと気づく。これにはちょっと、へーと感心。本音で言うと、途中まで物足りないんだ。ですが最終章を読むことで、がらりと印象が変わる本ですね。

よくある家族ものですが、途中で投げずに最後まで読んで欲しいものですな。そうしたらこの本を好きになれると思います。たぶん。

余談。
お父さんとなすびの会話は必読。
ちょー笑えた!ぷぷっ。

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山本幸久
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    2007

06.28

「れんげ野原のまんなかで」森谷明子

れんげ野原のまんなかで (ミステリ・フロンティア)れんげ野原のまんなかで (ミステリ・フロンティア)
(2005/03/01)
森谷 明子

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秋庭市のはずれ、ススキばかりがおいしげる斜面に立つ秋庭市立秋葉図書館。文子は先輩職員の能勢や日野と共に、利用者が少ないと悩みながらも勤めている。そこの図書館で起こる様々な出来事や、文子の淡い恋心を描いた連作短編集です。

図書館を利用される方なら心をくすぐられる作品なのは間違いないであろう。最初はススキが一面を覆っているのが、れんげの種から次第に花が咲き乱れていく。それと共に閑古鳥が鳴く図書館が、秋庭市の名所へと変貌していくのだ。

ミステリ部分では、初めの子供の居残りゲームでは少し弱いかなと思いました。それが後へいくほど、どんどん深みを増していき、ついには変死事件まで出てくる。ミステリ・フロンティアだと侮っていると、あっさりとやられちゃいますよ。実際に、ころっと森谷さんにやられてしまいました。恐るべし森谷明子。

登場人物に関しては少し物足りなさを感じてしまいました。ぼやけているのかな。視点である文子や探偵である能勢をもう少し掘り下げて描いて欲しかったですね。日野に関しては言うまでもありません。人物像をつかめないまま終わってしまいました。その中では、図書館へと土地を提供した、名士の秋葉おじいちゃんが唯一良かったな。

それに女性の作家さんらしく、四季の移り変わりの描写がすごく丁寧でした。これは前から気づいていたのですが、花や草木が出てくるのは女性作家に多いですね。物語に関係なく草木ばかりが出てくるのは違和感を覚えますが、本書は上手かったです。今すごく頭に浮かんでいる作家がいますが、伏せておくのが賢明でしょう。

それにしても、仕事の面に関しては素敵な司書さんたちばかりが出てきました。図書館の裏側も楽しむことが出来たし、良い本に出合えたと思います。お初の作家でしたが、興味が持てた作家なので、他の本も気になりました。

余談。
調べてみると源氏物語に関わる本があるみたい。古文や短歌嫌いでも読めるのかなー。

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その他の作家
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    2007

06.28

「ストロベリーナイト」誉田哲也

ストロベリーナイト (文芸)ストロベリーナイト (文芸)
(2006/02/22)
誉田 哲也

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若くして主任警部補になった姫川玲子。所属は警視庁捜査一課殺人犯捜査係。彼女が駆けつけた現場には、ビニールシートに包まれた無残な死体が待っていた。玲子は所轄に所属する食えない井岡巡査長とペアを組み、捜査を進めていく。玲子の部下には、石倉巡査部長、菊田巡査部長、大塚巡査、湯田巡査、が居る。彼らが捜一の姫川班で、結構良い雰囲気を持っているチームだ。

そして公安出身のガンテツというライバル警部補の個性がとても強烈です。違法捜査、違法取引は当たり前で、独自の考えをすべての人にぶつけて行きます。

玲子だけが主人公という訳ではなく、ガンテツや大塚の目線も交えてストーリーは進む。ようするに捜査をする刑事たちが主人公と言えるだろう。警察、ここでは警視庁だが、彼らの善悪を混ぜた捜査方法・組織内部が楽しめるのだ。

エグイ描写も多々ありますが、玲子や井岡の軽いキャラが随分と救ってくれます。かといってコメディ風で終始進むわけでもなく、中盤からはどっしりとした展開だ。特に玲子の過去の回想部分では、不覚にも涙してしまいました。あの敬礼のシーンです。

それ以降の展開はすごくスピーディーで、あれよあれよという間にラストを向える。この作品はミステリではなくサスペンスです。ですが犯人の正体にはやられました。章の初めに犯人の殺害シーンが描かれていますが、見事に騙されてしまった。

言葉は悪いですが、ここまで面白いとは想像していませんでした。反省です。骨太な警察ものに新たな女性刑事の誕生です。今後も期待大なシリーズになりそう。すでに出ている続編の「ソウルケイジ」を読むのが、すごくすごく楽しみになりました。玲子の恋の行方もめっちゃ気になる。誰を選ぶんだろう。ワクワクです。

余談。
そう言えば誉田さんの警察ものを本書ではじめて読みました。ちょっと遅すぎたかな。それと「ジウ」シリーズも読まなくちゃ。


関連記事
「ストロベリーナイト」誉田哲也
「ソウルケイジ」誉田哲也
「シンメトリー」誉田哲也

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誉田哲也
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    2007

06.27

「ココ・マッカリーナの机」中島京子

ココ・マッカリーナの机 (集英社文庫)ココ・マッカリーナの机 (集英社文庫)
(2006/04)
中島 京子

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作家デビューをする前にアメリカで教育実習を経験したときのエッセイです。赴任先には、3歳から14歳までのあらゆる人種の子供たちが待っていた。「ミス・キョウコ」が、幼い子供の舌がまわらず「ミス・ココ」と呼ばれる。「ミス・ナカジマ」が、「マカジマ」になり「マッカリーナ」と呼ばれる。その結果、「ココ・マッカリーナ」というあだ名をもらうことになる。

個人的なことですが、エッセイというものが苦手です。しかしこの本は読めるんだ。それはたぶん、考え方や思想の押し付けがなかったのが大きかったのだと思う。あなたもこう思うでしょ、と書かれると、いいえ思いませんと反発してしまう。天邪鬼な自分は、エッセイを読むといつもこんな感じで読むのが苦痛になる。それがこの本にはなかったから、すんなりと読むことが出来たのでしょう。

雑誌の編集者をしていた中島さんが、占い師のお告げで会社を辞め、アメリカへ渡る。んな、アホな、な決断にまず惹かれました。こんな事普通は出来ないよ。本書で描かれた様々なことを経験し、その後、作家デビューをすることになる。この作家になったという結果がなければ、この本は読まなかったでしょう。まあ読む理由がどおであれ、この本自体はすごく面白かったです。

文章も上手くて読みやすいし、特定の子供に贔屓をしない姿勢も気持ちが良い。アメリカという国の考えは好きではないが、この本のアメリカ人たちは素敵でした。

エッセイなので、内容について触れるのはよくないが、1つだけ紹介をしておこう。五十歳を目前にして神学校入学しなおしたロス牧師の新人としての言葉です。「僕らはルーキーなんだ。何度だってルーキーをやれるのはしあわせなことだ。」日本人ではこういた発想はまず出てこないだろう。そこがすごく新鮮でした。

この本に触発されて、会社を辞めて海外に飛び出る勇気は自分にはありません。ですが、成功者のかつての意外な体験記としては面白く読める本だと思います。今度は中島京子さんの小説の方を読んでみます。

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中島京子
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    2007

06.27

6月27日 古本店でお買い物

ぎぶそん ぎぶそん
伊藤 たかみ (2005/05)
ポプラ社

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蛇にピアス 蛇にピアス
金原 ひとみ (2006/06)
集英社

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小学生日記 小学生日記
hanae* (2005/07/23)
角川書店

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半分の月がのぼる空―looking up at the half‐moon 半分の月がのぼる空―looking up at the half‐moon
橋本 紡 (2003/10)
メディアワークス

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半分の月がのぼる空〈2〉waiting for the half‐moon 半分の月がのぼる空〈2〉waiting for the half‐moon
橋本 紡 (2004/02)
メディアワークス

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半分の月がのぼる空〈3〉wishing upon the half‐moon 半分の月がのぼる空〈3〉wishing upon the half‐moon
橋本 紡 (2004/09)
メディアワークス

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半分の月がのぼる空〈4〉 半分の月がのぼる空〈4〉
橋本 紡 (2005/02)
メディアワークス

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半分の月がのぼる空〈5〉 半分の月がのぼる空〈5〉
橋本 紡 (2005/09)
メディアワークス

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半分の月がのぼる空〈6〉 半分の月がのぼる空〈6〉
橋本 紡 (2006/02)
メディアワークス

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半分の月がのぼる空〈7〉another side of the moon―first quarter 半分の月がのぼる空〈7〉another side of the moon―first quarter
橋本 紡 (2006/06)
メディアワークス

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半分の月がのぼる空〈8〉 半分の月がのぼる空〈8〉
橋本 紡 (2006/08)
メディアワークス

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お買い物
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    2007

06.26

「建てて、いい?」中島たい子

建てて、いい?建てて、いい?
(2007/04/06)
中島 たい子

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30半ばの未婚の女性が、一戸建て住宅に興味を持ち、実際に建てていくお話です。彼女はアパート2階から階段を降りる途中でこけて、手の骨にヒビが入ってしまう。その結果、精神的に痛みを覚え、現状を脱却するには結婚することだと思う。しかし男探しをするうちになんだかどうでも良くなり、男探しをやめてしまう。その次に自分の居場所を作ろうと考え、何故か自分の家を欲しくなってしまう。

彼女はまず住宅展示場を訪れ、部屋や設備をいろいろ見るが、結局は疲れて帰る。ここの描写がすごく好きでした。というのも自分が不動産業を営んでいるからだ。モデルルームには、お洒落な家具や小物、最新の設備や工法が展示されている。そこには生活感というものが全くなく、営業の人がスーツ姿で案内をするのが普通。それを見事に小気味よく笑いにし、現実感の無さを指摘している。同業者である自分でも、あの雰囲気は異様だと思うし未だに馴染めない。

うちも売り物件があればオープンハウスをし、現場待機を当然します。まあ住宅メーカーと違い、家具や小物はいっさいありませんが。そこに来るのは大半が冷やかし。それと何故か運動会をする子供を連れた夫婦です。一日が終わると精神的な疲れがどっと来るんだよなー。愚痴ってもしょうがないか。

そのあと彼女は出会った設計士の事務所を訪ねて、家を建てる計画を進める。ここであれこれと間取りを悩んだり楽しんだりをする。家を作るメインですね。そして実際には、あとになってからこの部分のところを後悔するのがほとんど。予定予算をオーバーするのも当たり前だしね。人ってなんだかんだ言って欲張り。そんな事を裏読みしながらも、むふふと楽しく読めました。

本書で一箇所だけ気になった部分がある。それは彼女の土地の手に入れ方だ。そんなに簡単に土地を手に入るのは、はっきり言ってどうかなと思う。しかも60坪ってめちゃめちゃ贅沢すぎやしませんか。1坪いくらか知らんけど。60坪もあったら家が3~4戸建つやないかい!とツッコミ。

本作は中島さんの笑いのセンスが随所に散りばめられた作品で、ほんとに笑える。ページ数は少ないけど、とてもウキウキとした時間を過ごすことが出来ました。

同時収録された、別れた彼からのお届けものの「彼の宅急便」も良かったです。前作はちょっとびっくりしたけど、次回作にも期待してしまいます。

彼女と同じく、「結婚せえへんの」という言葉が、耳に痛くなる今日この頃です。うはっ。だけど、不動産はそんなに甘くない。

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中島たい子
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    2007

06.25

「青空チェリー」豊島ミホ

青空チェリー (新潮文庫)青空チェリー (新潮文庫)
(2005/07)
豊島 ミホ

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文庫版を読みました。単行本版とは内容が少々異なっています。「青空チェリー」だけが原型のままで、それ以外は書き直しているそうです。

「ハニィ、空が灼けているよ。」
戦争が始まって一年。大学で働く教授とわりない仲の大学生の麻美。21歳。二人の住む首都に危険が迫り、教授の独断で麻美は故郷へ一人避難することになる。帰った町で同級生の英二と再会し、いつしか「ダーリン」「ハニィ」と呼ぶ仲へ。戦争の気配がどんどん濃くなる中、麻美は二人の男のことで心が大きく揺れる。

架空の戦争が起こっている世界ですが、全く違和感というものを感じません。最初からなんの問題もなく、すーっと物語の世界に入っていくことが出来ます。前半部分の可愛らしさと、後半部分のひりひりとした緊張感のバランスが良かった。プリン化したダーリンの頭とハニィの足の毛を脱色するシーンが、すごく好きでした。一方で身の回りで起こった事を手紙に書き、教授へ送り続ける麻美の心も好きです。表題作よりもこの作品に出会えたことに、とてつもない幸せを感じました。ラストは涙なしでは読めませんでした。ぐすん、号泣です。


「青空チェリー」
R-18文学賞読者賞の作品です。青春小説ですが、発情小説ともいえます。予備校の隣にラブホが出来て、千花には予備校の屋上が自分だけの秘密の場所になる。そこはラブホの中が見え、男女の行いが覗けるというベストポイントだから。そんなある日、千花がいつものように覗いていると、男子が同じ目的で現れる。二人のうふふな交流を描いた作品です。

露骨な描写ですが、二人の男女がすることがすごく可愛くて全部を許しちゃおう。ページ数がすごく少ないし、感想を書きすぎると変態に思われてしまいそう。だからこのあたりで止めときます。この作品は大人になってから読みましょう。


「誓いじゃないけど僕は思った」
中学時代に好きだったアツコのことを、いつまでも忘れられない浩介くん。他の女の子に告られて付き合いだしても、ウンザリして逃げてしまう始末だ。そのアツコが結婚すると、友達が情報を仕入れてきて浩介に告げる。アツコに対しての過去の記憶に、浩介が振り回されているお話です。

少し異常。だけど片思いってこんなものかも、とも思ってみたりもする。なんか切ないですよね。思いだけが残り先へ進めない。ちょっと哀愁ですな。すべてが理解出来たわけではありませんが、これも恋の一種でしょう。でも実際に身の周りにいたら絶対に引くけどね。

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    2007

06.23

「森へようこそ」風野潮

森へようこそ (ピュアフル文庫)森へようこそ (ピュアフル文庫)
(2006/11)
風野 潮

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中国へ長期出張する母と別れて、日本に残ることになった美森という少女。彼女が住むことになるのは、大阪郊外にある自然の森に囲まれた古い洋館だ。白ペンキで書かれた表札には、「木のお医者さん、芦原植物病院」の文字。そこには両親の離婚後、これまで一度も会ったことがない父が住んでいる。そしてもう一人。植物の声が聞こえるという、双子の弟・瑞穂がいた。

母の仕事が忙しかった美森は、これまで家庭の温かさを知らずに暮してきた都会っ子。新しく住むここには植物が溢れ、時間が止まったような静けさに美森は最初戸惑う。しかし植物と話をしながら大事に育てている瑞穂を見るうちに、次第に打ち解けていく。

美森が通うことになる小学校で、瑞穂はイジメにあいずっと不登校を続けている。瑞穂と対称に美森は友達たちもすぐに出来て、楽しく学校生活を過ごす。

そんな生活の中、クラスメイトの家の社員の不始末で、大きな山火事が起こる。その結果、クラスメイトがイジメの対象になる瞬間を見て、美森は知ることになる。弟が受けたイジメも、不特定多数のみんなによるものだったのだと。この場面で描かれた、子供が持つ悪意のある集団心理に、怖くてゾクっときました。

ここでは葉山という少年がイジメの対象になり、「みんな対1人」の構図が出来る。美森は集団に入らず「みんな対2人」になることを選び、クラスメイトから疎外される。この選択をした美森の強さを、少しでも多くの子供たちに持って欲しいと願う。いや、子供だけでなく大人も含めた人たち、と言いなおすべきか。

台風が美森たちの住む森を直撃することで、物語は大きな展開をしていきます。クラスの再生あり、家族の再生ありで、読みどころが満載です。

イジメ問題が底辺にありながらも、読後はすかっとさわやか。爽快です。森の木々が、疲れた都会の生活を癒してくれる清々しい良書でした。この作品に出会って森へ行けば、「モリ、ヘ、ヨウコソ」と声が聞こえるかも。


風野潮さんのブログです。潮のつれづれ語り

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風野潮
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    2007

06.23

「カラスのジョンソン」明川哲也

カラスのジョンソンカラスのジョンソン
(2007/02/07)
明川 哲也

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ジョンソンが初めての記憶を持つところから物語は始まる。すごく詩的です。自分の隣に居る同じ姿の物体を意識する。兄弟。大きな影がごはんを運ぶ。親。未熟な兄弟が動かない物体になる。死。そして遠くで唸る物体。人間。そんなジョンソンに母よりも大きな影が襲ってくる。弱肉強食。

里津子は勤める会社の敷地内で、傷ついたカラスの幼鳥が倒れているのを発見する。そのカラスの子供を拾った里津子は、小学五年生の陽一が待つ市営住宅へ連れ帰る。動物禁止の住居で内緒で飼うが、ある日に見つかり何とかベランダから逃す。カラスのジョンソンと陽一少年の2つの視点で描かれた物語です。

陽一に起こる出来事も面白く読めましたが、カラスに起こる出来事が印象に残った。だからジョンソン中心で感想を書いていきたいと思います。カラスの生態がすごく詳しく描かれています。生きるためにごはんを探す。繁殖期には卵を産みヒナを孵らせる。すべて動物には当たり前な自然な行いです。

一方で街のゴミを散らかす害鳥と人間に決められ、世間でも話題になっている。実際に動物の死骸にたかるカラスを見たことがある。人を襲うカラスも見た。人に飼われて言葉を話すカラスを見たこともある。

物語では、ジョンソンに野生のカラスの仲間が出き、やがてつがいになる。その結果三羽のヒナが誕生し、ごはんを運ぶうちに親の感情が芽生えていく。感情移入していると突然人間側の視点になり、カラスは害鳥の姿に戻る。そして駆除の場面になり、なんとも言えないえげつないシーンが淡々と描かれている。

わが子やつがいが殺されるカラスの目線。人間に育てられ守られたジョンソンの記憶。人間側には害を及ばすカラスの存在。どちらが正しいと断言出来ないもどかしさだ。

カラスは食べるものが豊富にあるから集まってくる。当然だ。そこには天敵が居ない。だから繁殖力が増えるのも当然。その食料をゴミとして出すのは人間の日々の行い。すべての現況は人間から始まっているが、それを無視して害鳥だと決めつける。

走る車を利用してクルミの殻を割っていたカラス。あの微笑ましい映像が懐かしい。いつからこんな嫌な世界になったのだろう?純粋にカラスと少年の物語を楽しめれば、泣ける要素があったと思います。しかし人間とカラスの現在の関係をたくさん考えてしまい、泣けませんでした。

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    2007

06.22

「スロウハイツの神様」辻村深月

スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス)スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス)
(2007/01/12)
辻村 深月

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スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス)スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス)
(2007/01/12)
辻村 深月

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また泣いた。辻村さんの上手さには弱い体質みたいです。だって毎回やもんなー。これまで読んだ作品の中で一番好きだったのが本書。もうとにかく良かった。何故かというと、誰も死なないし残虐さもないから。あのムゴさがいっさいない。本書は純粋な若者たちの成長だけを描いた作品だから。

注目の若手脚本家の赤羽環がオーナーの「スロウハイツ」という名のアパート。そこには環が気に入ったこれからの可能性を秘めた若者たちが集まる。漫画家志望の狩野、映画監督志望の正義、画家志望のスー、環の友達のエンヤ。そして中高生に大人気のナンバーワン小説家、チヨダ・コーキが共同生活をする。2人のスターに追いつこうと、クリエーターの卵たちはお互いに切磋琢磨をしあう。

前半はこんな感じで、それぞれの人物の現在過去にスポットが当っていきます。他の作品にも共通するのですが結構間延びをしています。まあ特徴ですか。それと視点がころころと変わるのはいつもと全く同じです。これも特徴か。

その後エンヤが部屋を出ることになり、莉々亜というコスプレ美女が新たに加わる。ここから物語は現在過去と入り乱れて徐々に大きく展開をしていきます。

これ以上は勿体無いので内容紹介はストップしておきます。いつも書きすぎだから…。先がまったくよめない展開になることは間違いないです。もう凄いです。

いつものあれ、他作品とのリンクもばっちり楽しめます。今回は「凍りのくじら」。未読の方はこちらを先に読むことをお薦めしておきます。

後半に入ると、これまで気になると思っていた事が次々に解消されていきます。やはり辻村深月の構成力はすごい。半端じゃなく凄すぎ。むむっと唸るしかないもの。それがラストでは、むむっが涙ぽろぽろになり、嗚咽でひっくひっくになっていく。そして読了後には、じんわりとした清々しさがあなたを待っている。じーんです。

もう一回言わせて下さい。この本はめちゃめちゃ面白い!辻村作品のマイベストです。個人的ですが今年上半期のマイベスト作品と言える本でした。

それを発売直後に買ったのに、今頃まで積んでいたのはおもいっきりアホでした。未読の方には「凍りのくじら」と合わせて、ぜひ読んで欲しい作品です。大絶賛を連呼したいです。

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辻村深月
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    2007

06.21

「イッツ・オンリー・トーク」絲山秋子

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)
(2006/05)
絲山 秋子

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今更ですが初めて読みました。2編の短編を収録したデビュー作です。

「イッツ・オンリー・トーク」
直感で蒲田に住むことにした女性が主人公。彼女は引越しの朝、男に振られた。そんな彼女は選挙演説をする大学時代の友達に再会し、飲んで関係することに。しかし、彼はED(勃起障害)で、一夜を一緒に過ごすが未遂に終わってしまう。

主人公は精神病を患い、貯金を切り崩しながらも危機感なく暮らす女性です。彼女は好きでもない男と平気で寝れるという、ちょっとゆるい系ですね。EDの都議候補、痴漢男、居候の従兄弟、鬱病のヤクザ、との彼女の関係。何か特別なことが起こるわけでもでもない。友情でもなく愛でもない男と女。
そこには性別を超えた何かがある。しかしそんな微妙な関係から得るものも無い。ここに出てくるのはダメ女とダメ男たちです。でも何故か憎めないのです。むしろ滑稽で可愛さまで覚えてしまう困ったやつらなのです。上手く言えませんが、こういう雰囲気は好きです。


「第七障害」
障害物の競技中に落馬した女性。その結果、馬の骨折が安楽死へとなり、自分を責める。馬に乗ることを辞めた女性は、かつてのライバルと再会し、苦悩を乗り越えていく。

こちらの方が好きでした。でもこの安楽死のことだけは心が受け付けない。古い話だが、大本命だったライスシャワーの落馬事故を、たまたまテレビで観た。世間で騒がれていた馬が、骨折したからあっさりと安楽死だと人間に殺された。これまでに犬猫と一緒に生活しているので、骨折ぐらいで殺す神経が理解出来ない。それ以前から競馬に興味はないが、あの落馬事故からまったくレースを見なくなった。話がずれたが、この主人公の自分を責める気持ちがすごく理解出来る。だからめちゃめちゃ感情移入してしまいました。彼女を救ってくれた彼に感謝です。作品に関係ないことばかり書いてしまったが、思ったことなので許してね。


人間関係の微妙な距離感がすごく繊細で、うなずける部分もあり痛くもあった。かなりの乱読ですが、こういうのをあまり読まないのでとても新鮮である。これからも読んで行きたい作家になり、追いかけることに決めました。

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    2007

06.20

「ぼくの・稲荷山戦記」たつみや章

ぼくの・稲荷山戦記 (講談社文庫)ぼくの・稲荷山戦記 (講談社文庫)
(2006/08/12)
たつみや 章

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第32回講談社児童文学新人賞受賞作を、大人向けに出版された作品です。

主人公は中学生のマモルという少年。マモルはおばあちゃんと二人暮らしです。マモルが幼い頃にお母さんを亡くし、お父さんはマグロの遠洋漁業で帰って来ない。おうちはたばこ屋ながらも、裏山の稲荷山神社の巫女をつとめる血筋です。そこに守山さんが2ヶ月間居候をすることになり、マモルの生活に変化が起こる。

ぶっちゃけて書きますが、守山さんは神社のお稲荷様に仕えるキツネが化けた姿だ。裏山にある古墳と山林を企業の土地開発から守るために、表の世界に現れた。そして、巫女の血をひくマモルは守山さんと行動を共にし、企業を相手に戦います。

神様やお仕えキツネが出てくるのでファンタジックかというとそうではありません。土地開発と環境破壊をテーマにした硬派だがとても読みやすい児童書です。普通に環境破壊を描くのではなく、子供の目線でこれらを見つめることが秀逸。社員を養う企業論理や、事業による自然の崩壊、人間の業というものを子供が考える。それでいて、狐が化けたり、神様の住処に訪れたりと硬すぎないバランスが良い。

登場人物も魅力的です。マモルは神様たちと知り合える血筋、という以外は普通の子。守山キツネはアブラアゲが好物で、話す言葉は時代劇風とちょっぴりユーモラス。企業の社長の次男で、ご隠居と呼ばれる鴻沼は、守山キツネを助ける側に付き頭を使う。お稲荷様であるミコト様は、マモルや守山キツネをどこまでも暖かく見守る。

そんな彼らが大企業に対して、開発事業の前面撤廃を目指して行動していきます。しかし、結果が大勝利にならないのがリアルで本書がもっとも優れているところだ。拍手喝采のラストではなく、ほろ苦さがありながらも、爽やかなところに現実味がある。

昔はこんな風に土着の神様への信仰が当たり前にあったのでしょうね。自分は外出先で神社を見つけると立ち寄り、神様の名前を見てからお参りをします。1日に幾つもお参りをするので、神様同士が喧嘩をするぞと知人によく言われることもある。だから、この作品を読んで、神社好きな部分を大いにくすぐられました。

この作家さんの2冊目の本も積んでいるので、読むのが楽しみになりました。次はどんな神様が出て来るのかわくわくしちゃいます。

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    2007

06.20

6月20日 書店でお買い物

マジカル・ドロップス マジカル・ドロップス
風野 潮 (2007/06/19)
光文社

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    2007

06.19

「凍える島」近藤史恵

凍える島 (創元推理文庫)凍える島 (創元推理文庫)
(1999/09)
近藤 史恵

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喫茶店を経営するあやめとなつこは、常連客に誘われ一緒に慰安旅行へ行く。参加者は総勢8名。あやめとなつこの喫茶店組に、なつこの彼の椋くん。常連客のうさぎくんこと田中くんと、彼女の静香と友達の守田の3人組。そして皆には内緒のあやめの不倫相手・矢島鳥呼と妻の奈奈子の夫婦。彼らが向うは瀬戸内海に浮かぶS島という無人島。そこで次々と惨劇が始まる。


えーっと、この本は近藤さんのデビュー作らしいです。そうとは思えなかったな。いわゆる孤島モノで、次々と殺人事件が起こりパニックになるというミステリです。ありふれた設定ですが、文章に独特な雰囲気があってぐいぐいと読ませていきます。ある種、詩的とも言える文章が人物を動かし、恐怖に脅えた精神の不安定さを煽ります。

読みどころもたくさんあり、登場人物も個性的で感情移入がしやすかったです。特に嫌味な人間やおバカな人間を読み進めるうちに、どんどん嫌いにさせていく筆力。これはもう飛びぬけて凄い。そして妻が一緒にいる男と愛人の二人だけの合図。これには思わずはっとする描写で、たまらずにむむむっと唸ってしまいました。

ミステリに関しても、二転三転する謎解きから、結末を迎えたあとのどんでん返し。えっ!まだひっくり返すんかい、と突っ込みを入れたくなっちゃいました。もう無茶苦茶圧倒されまくりました。やられたー!って感じですな。はい。

この本はミステリなので、ネタバレをしないうちに感想を終えておこう。なんかミステリの感想を書くときは、腰が引けてしまうチキンな自分。ダメっすね。読み応えがあり、存分に楽しむことが出来ました。もう満腹です。げぷっ。古典ミステリが好きな方にはお薦めな作品です。

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近藤史恵
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    2007

06.18

「誰か」宮部みゆき

誰か Somebody (カッパノベルス)誰か Somebody (カッパノベルス)
(2005/08/20)
宮部 みゆき

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ブログを始めてから宮部さんを初読みました。それ以前にほとんどの本は読んでいます。

財閥会長の運転手が自転車に轢き逃げされて命を落とす事故が起こった。そこへ遺された娘が父親の思い出を本にして犯人を見つけたいと会長にいいだす。そこで会長の娘婿である杉村三郎は、義父の依頼により彼女の相談役を引き受ける。しかし、姉の方は父の過去をこれ以上妹には知られたくない、と杉村に相談する。2人の娘の相反する考えに挟まれながらも杉村は運転手の過去を調べることに。

杉村はいわゆる逆玉の輿のマスオさん。元出版社勤務で現在は広報室で働く編集者である。妻は会長が妾に産ませたお嬢様で、金銭的にはなんの不自由もなく暮している。二人の間には4歳になる娘ちゃんがいて、この娘ちゃんがとにかく可愛いのだ。

亡くなった運転手のことを調べるために、杉村は遺された娘たちに会います。臆病で心配性の10歳年上の姉と、勝気で子供っぽさの残る妹の美人姉妹です。この姉妹がどうも好きになれずに感情移入がしにくかった。

彼女たちの意向の違いを気遣いながらも、調べを進めていくわけですがねえ。これが犯人探しでもなくて、運転手の過去ではあるけれど、意外な結末へ到達する。この本は純粋なミステリとは少し違うんだよなー。ジャンルな何になるのだろう? 杉村の家族小説でもあるし、愚かな人間ドラマでもあったりもするのだ。これ以上はネタバレになるから書けないのが残念です。

作品自体は、杉村の家庭部分でにっこり読めて、謎の追及もさくさく読める。しかし、杉村の調べが進むうちにある事実が浮かびあがって後味を悪くする。でも、随所に出てくる父と幼い娘の会話や、庶民とお嬢様の子育ての考え。一般社員の財閥会長の養父への恐れや、会社内での微妙な立場が面白いのだ。こう書いてみると人間ドラマのような気がしてきました。

後味の悪くなる要因の複線部分があって、そこでラストの展開に気がついてしまった。まあ、先に気づいたのだから、後味の悪さは緩和されたのかもしれないですね。謎にしても小さいものなので、これまでの宮部さんだと思って読まない方が良いです。好きになれたかった被害者の娘たちですが、ああいう終わり方ならしょうがないか。杉村さんには一言だけ言いたいですね。ほんとお疲れ様と。そして娘ちゃんと奥さんといっぱいラブして欲しいな~。

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宮部みゆき
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    2007

06.17

「そろそろくる」中島たい子

そろそろくるそろそろくる
(2006/03)
中島 たい子

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この本の感想を男の身で書くのは、ちょー難儀で、ちょーハードルが高いです。勇気がいるし、恥ずかしさも赤面を超えそう。三十歳を過ぎたイラストレーターの女性が主人公です。そして未婚です。彼女のイライラが爆発し破壊活動をする場面から、お話が始まります。

何故、彼女は暴れているのか。それは友達から聞いたPMSが原因だそうです。PMSとは、生理前に身体の具合が悪くなったり、精神が不安定になることらしい。というのも男なので、生理痛の辛さも知らないし、PMSと言われてもねぇ。あぁ、あれね。わかるわかる!あれは辛いよねー、なんて言えないもの(汗)

PMSでイライラしている彼女は、大晦日に帰った実家で母親と大喧嘩をする。
実家を飛び出し、家に戻るが灯油切れ。しかもスタンドでも売り切れな悲惨状態。そこに親切な友達の弟が灯油を持って来てくれるが、身体の関係を持ってしまう。

上手くいかない仕事や、付き合うことになった弟くんのことを抱えて生活する。そしてPMSについて女友達と、ああだこうだと言いながら過ごしていく。でもこの女性は、上手くいかないことをPMSのせいにしすぎじゃないかい。本人の資質も関係あるとは思うのだけど、ぜーんぶPMSにしている気もする。なんかこの女性には、ずっとPMSと生理がきているみたいに見えてしまった。ここらが女性ではないので、イマイチ理解出来ない部分でもある。

弟くんが雑誌を見てPMSを勉強していたが、男も勉強するべきなのかな?なんて思ってみたりもしました。でもたぶんしないでしょう。すまん。

まあ悩んだり苦しんだりしたけど、結果的には彼氏が出来て良かったね。でも月に一度はまた同じ繰り返しなのかなー、というのが正直な感想。少しは勉強にもなったな。うん。でもいつまで経っても女心は分からない。こればかりは奥が深すぎて、試練の繰り返しが続くのだった。

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中島たい子
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    2007

06.16

「ミカ×ミカ!」伊藤たかみ

ミカ×ミカ! (文春文庫)ミカ×ミカ! (文春文庫)
(2006/08)
伊藤 たかみ

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予定通り続けて読んだ。「ミカ」のラストで引越しをしたから環境も変わる。ここは大阪のどこだろう?古墳が出てくるから南の方だろうと予測する。

ミカとユウスケの双子は中学生になりました。なんとミカがスカートを穿く。そしてもっと驚くのが恋をしちゃいます。まあ中学生なら当たり前ですがね。それにユウスケも恋をし、離婚した父にも新しい恋人が出来ている。なんとまあ、お盛んな一家ですな。でもいやらしさが無いからいい感じ。

前作の「ミカ」と比べると割と普通な設定です。割とというとこがミソです。今回はユウスケだけにしゃべる、セキセイインコの「シアワセ」が登場する。この鳥がミカに教育されて変てこな踊りをしたり、ミカのために脱走したりする。いい感じで引っ掻き回して、偶然なのか奇跡なのかキーマンになったりもする。


新しく生活を始めた街で、いつも3人で遊んでいるミカとユウスケとヒロキ。まず冒頭で「女らしいってどんなん?」とミカが、ユウスケとヒロキに問いかける。どうやらミカが男の子に告白して、あっさりとふられたらしいのだ。うーん、羨ましい男の子やなあと、かなりミカを美化して読んでいる自分がいる。

そしてミカが化粧をしたり色付きリップをしたりもする。中学生でこんなのって今では普通なのでしょうか。ちょっと早すぎない?自分が中学生の頃に化粧をする子って、ヤンキーだけだったけど…。

一方のユウスケは、相変わらず苦手な女の子に迫られてあたふたしています。ですが今回は、その女の子の良いところに気づき、いい雰囲気になったりする。なんかねえ、甘~いの。こういうのを読むと野郎なのにキュンっとくるのだな。そしてユウスケは父親の恋人に、「結婚してあげて下さい」なんて言うの。もうキャーって感じ。この子はなんちゅうことを頼むんだ、なんて突っ込んだもん。

今回は修学旅行に行きますが、こういうイベントでカップルが出来るのは分かる。ミカやユウスケと同じく、自分にも経験があるもんなー。夜に女の子の部屋に遊びに行き、先生に見つかって怒られたりした経験がある。でもそこで仲良くなった女の子と、お付き合いが始まったりもしました。なんか恥ずかしいけど、すっげー懐かしいことをいっぱい思い出しました。手をつなぐのもドキドキしたし、チューなんてもうバックバックものだったもん。かーっ、あの頃は青かったです。でもいい時間を過ごせたなあとも思う。またこっ恥ずかしいかしいことを書いてしまった(汗)

ミカとユウスケの双子の兄弟の仲の良さもいいし、恋のお話も存分に楽しめました。ユウスケとヒロキの会話も面白かったし、みんなの成長もすがすがしかった。終始ニヤリ笑いしながら読めて、とても良い読書時間を過ごせました。

読んだのが文庫版なのですが、森絵都さんの解説も良かったです。好きな作家とこうして再会出来るのも良いものですね。

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伊藤たかみ
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    2007

06.16

「ミカ!」伊藤たかみ

ミカ! (文春文庫)ミカ! (文春文庫)
(2004/04/07)
伊藤 たかみ

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「ミカ×ミカ!」を読もうとしたが、本書の内容をさっぱり忘れてた。だから再読をしてから「ミカ×ミカ!」を読むことにしました。

小学6年生のミカとユウスケの双子兄妹は、謎の生物を見つけてこっそり育てる。2人の別居中の両親や、歳の離れた姉のこと。友達の初恋や、クラスでの出来事。思春期の入り口に立つ、微妙な心理状態を描いた小学生ライフです。

舞台が大阪なので会話は当然大阪弁です。これが軽妙なテンポで読みやすい。個人的ですが、彼らが枚方に住んでいるみたいなので、より親近感を感じた。なぜかというと、自分が通っていた高校が枚方公園の隣の光善寺だったから。作品の中にもひらかたパークが出てきて、すげー嬉しかったもん。大阪のディズニーランドです。大嘘です。普通の遊園地でした。

ミカは女扱いをされるのが嫌いで、ケンカ早くてとても活発な女の子。だからスカートを履かないし、おっぱいなんか要らないと豪語をしている。だけどよく隠れて泣く泣き虫で、謎の生物・オトトイに涙で栄養を与えまくる。

オトトイはキウイを食べて、悲しみの涙で身体が大きくなっていく。動けないし、頭がどっちかもわからない。ほんと謎だらけです。わからなくても読めるので、軽く読み飛ばしちゃいましょう。おほほっ。

ユウスケはゲームが好きで、少し大人びた考えをする優しい男の子。しかしミカが暴れるたびに仲裁に入るが、ユウスケだけ怪我をする損な役割。家族に内緒で別居中の母に会うと、ミカに罪悪感をかんじたりする繊細さだ。ユウスケは終始ミカに振り回されますが、とても仲良しな双子の兄妹です。

そんなユウスケは、友達のコウジがミカのことが好きで、告白を手伝ったりもする。それに煩わしいと思っているクラス委員長に、好きだと告白されたりもする。なんか可哀想で少しトホホな感じが、可愛くて好感が持てるんだ。ユウスケの受難を読んでいると、自分の小学生時代をすごく思い出しました。

好きな女の子の友達と仲良くなって、その子が好きな子とお似合いだと連発した。本心は嬉しいのだが、恥ずかしくて好きな子のことを、わざと知らんぷりをする。数年後、実は両思いだったと知り、くそー!とむちゃくちゃ悔やんだのだ。その友達は、お互いをくっ付けようとするちょー親切な子で、良い子ちゃんだった。うひゃー、なにを告白してるんだ(汗)唐突ですが本の感想に戻ります。これ以上恥ずかしいことは書けません(滝汗)

これまでユウスケ側のことを書いてきましたが、タイトルが「ミカ!」です。ミカのことも書かないとやっぱマズイっすよねー。でも同じ男だからか、ユウスケに感情移入を多くしてしまう傾向がある。

もちろんミカにもたくさんの出来事が起こります。えーっと何だっけ?
これまで普通に遊んでいた友達からの告白に、戸惑いを覚えて泣いてしまう。仲の良くなかった姉の家出や、両親の正式な離婚もある。生理にもなる。だけどミカは感情を表に出さないんだよなー。だからわかりづらいんだ。それに目線がずっとユウスケだし、女の子の感情は自分が男なんでねぇ。だからここはパスにしときます。おいおいっ。

「子供には幸せになれる権利がある」といういい言葉が、作品中に出てきます。なんか心にずどんと響いてきました。これが本作のテーマでしょう。たぶん。様々な出来事を経験し、悲しくて泣きたくなることもあるでしょう。この幸せの言葉は、こんな時に子供たちに元気を与えてくれるのだろうな。さわやかで楽しく読めた児童書でした。子供の頃にこの本に出会いたかったな。

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伊藤たかみ
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    2007

06.16

6月16日 書店でお買い物

三人目の幽霊 三人目の幽霊
大倉 崇裕 (2007/06)
東京創元社

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未・フレンズ 未・フレンズ
魚住 直子 (2007/06)
講談社

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佐藤さん 佐藤さん
片川 優子 (2007/06)
講談社
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幸福な食卓 幸福な食卓
瀬尾 まいこ (2007/06)
講談社

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パラレル パラレル
長嶋 有 (2007/06)
文藝春秋

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あおい あおい
西 加奈子 (2007/06/06)
小学館
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密室に向かって撃て! 密室に向かって撃て!
東川 篤哉 (2007/06)
光文社

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監禁 監禁
福田 栄一 (2007/06/08)
講談社

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大人買いをしました。重い。。。 ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

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    2007

06.15

「鱗姫」嶽本野ばら

鱗姫 (小学館文庫)鱗姫 (小学館文庫)
(2003/09)
嶽本 野ばら

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ホラーと書いてあるので恐々読み始めてみた。な、なんじゃこりゃー。お肌を紫外線から守るためには日傘が必要だと、めちゃんこ力説しているではないか。しかもいつものあの口調で…。これならと安心して読むことが出来ました。


美の神様のような黎子叔母様に影響を受けた、楼子という少女が主人公です。楼子は京都の名門・龍烏家の長女で、家はもちろん大変なお金持ち。そして美へのこだわりが半端じゃなく、普通の人たちを見下している。同じく美の意識が高いお兄様にほのかな愛を持ちながらも、二人は仲良し。

この楼子の乙女っぷりが強烈。前に書いた日傘を校則を破ってまで持って通学。しかも太陽の下の体育の授業は、すべて欠席をしてしまう徹底ぶり。

だが楼子が11歳に初めて生理になってから、楼子の密かな苦悩が始まる。楼子は生理が終わると自分の性器の付近に、3枚の鱗を見つけてしまうのだ。その後、生理がくるたびに鱗は増殖し、誰にも相談出来ずに一人思い悩む。そんな楼子の前に、憧れの黎子叔母様が現れ、龍烏家に伝わる遺伝だと語る。

人より美へのこだわりが強い少女が、どんどん醜くなる自分への恐怖。憧れの黎子叔母様も自分と同じ鱗病なのに、何故あんなに強いのか?それらを主流に物語りは展開をしていきます。

ホラーというより乙女の恐怖です。しかもこの乙女がかなりの毒舌家なのだ。だからちっとも怖くなくて、むしろブラックさに笑えてしまうほどです。「下妻物語」の桃子を想像してもらっても結構です。わかるかなー?

出てくる登場人物がそれぞれ個性的で、すごく強烈な人格を持っています。ですからこんな人たちとは確実にお友達にはなれません。断言できる。

この本は、野ばらさんの作品の中ではあまり有名ではありません。だから期待せずに読みましたが、むちゃくちゃ大当たりでした。読んでいるブロガーさんは少ないですが、眠らせるには惜しい本です。たくさんの人に読んで欲しいなー。読んで損は絶対しません。たぶん。個人的にちょーお薦めの本です!

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嶽本野ばら
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    2007

06.14

「ぼくらの妖怪封じ」香西美保

ぼくらの妖怪封じぼくらの妖怪封じ
(2007/04)
香西 美保

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かつて妖怪に襲われて、乗っ取られたという伝説が残された由丹羽という街。ある日、ひろあきは妖怪を封じたという石が姿を消していることに気づく。はたして妖怪たちは封印を解かれ由丹羽に解き放たれたのか?妖怪退治屋の子孫のひろあきと、巫女の子孫の美依子が事件の謎を追う。

ひろあきは妖怪退治屋の子孫だが、妖怪の存在には半信半疑な普通の少年。おまけに両親は完全なリアリストで、現役退治屋のおじいちゃんは頼りにならない。一方の美依子はひろあきの先祖を助けた巫女の子孫で、その事を誇りに思ってる。こちらはガチガチに妖怪の存在を信じ、巫女になるために真剣に修行をしている。ひろあきはそんな美依子に強引にひっぱられ、様々に起こる事件を追いかける。

そこで封じの石の盗難を始め、雪女事件、座敷童事件、と調べ出す二人。やがて伝説に隠された真実を知り、もっと大きな封印の存在に気づく。ここからはストーリーががらっと変わり、物語はラストへまっしぐら。妖怪退治屋の本当の仕事や、封印の本当の意味、それらは読んで確かめて下さい。

自分たちの住む街を守ろうとする姿が、とてもさわやかで好印象でした。これがデビュー作だそうですが、先のよめないストーリー展開は上手いですね。水木しげるのような本なので、妖怪が好きならもっと楽しめるでしょう。今後がすごく気になる作家さんになりました。

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    2007

06.13

「猫は聖夜に推理する」柴田よしき

猫は聖夜に推理する (光文社文庫)猫は聖夜に推理する (光文社文庫)
(2005/11/10)
柴田 よしき

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琵琶湖湖畔のペット可の分譲マンションに住む、桜川ひとみと猫の正太郎。彼らが活躍するシリーズ4作目です。


「正太郎と井戸端会議の冒険」
おしゃべり好きの桜川ひとみは、おさんぽ仲間のおばあちゃんが寝たきりだと聞く。そこでおさんぽ仲間の住人たちに声を掛け、おばあちゃんを見舞うことにする。おばあちゃんの部屋には訪れた住人たちのペットたちも集合。猫の正太郎とチェルシー。犬の玉三郎とチェチェ。彼らの井戸端会議が始まる。

動物たちが、医療介護のことや、無農薬の食事について話している姿が笑える。そしてマンション内で見かける不審人物や、マンションで起こっている謎を話し合う。やがて噂話から導きだされた推理によって、ハードボイルドな展開になっていく。そこでの正太郎の、ひとみへの魂の叫びには泣きそうになりました。


「猫と桃」
田舎に帰りたくない、東京に居続けたい、と就職活動をするが惨敗をする女性。かつて身体の関係を持った男を頼ろうとすると、大文字焼きに誘われる。二人は京都へ不倫旅行をするが、その旅先で待つものとは?

高級志向に触れ、心が堕落した女性がメインです。正太郎たちは脇役です。そんな間違った女性を、正太郎がそっと助け、ひとみがやさしさを与える。ちょっぴり黒いですが、読後はさわやかです。


「正太郎と首なし人形の冒険」
ひとみと正太郎が住むマンションに、浅間寺の親父と犬のサスケが遊びにきた。そこへ、バービー人形や絵本の人の絵の頭が、何者かに消される事件が起こる。

ひとみの人物像が掘り下げられています。前から分かっていますが、ぐうたらです。そして新しく彼氏が出来たことを、それが自分に特なのかを正太郎が分析してます。なんという猫なのだろう。ですが笑えるんだな。ミステリーは小粒でした。


「ナイト・スイーツ」
瑞樹は相馬の小説の公開審査へ、相馬の知り合いのひとみを入れ3人で見に行く。お互いをよく知らない男女の、恋の始まりを描いた作品です。

ここでの小説家・桜川ひとみがかっこいいんだ。こんな一面もあるのですね。そのとき正太郎は・・・うなぎパイを食べているだけだった。


「正太郎と冷たい方程式〈番外編〉」
西暦2101年、宇宙ステーションで行われる、ミステリーイベントに参加した面々。このイベント中に殺人事件が起こり、ひとみは容疑者に間違われてしまう。

番外編は何故か未来の宇宙が舞台です。ひょっとして、ララの宣伝?おまけで読者への挑戦状が入っています。


「賢者の贈り物」
ひとみから正太郎への愛のメッセージです。ひとみの本心にぐっときました。猫好きにとっては、すごくわかる告白です。もちろん、じーんときましたよ。

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柴田よしき
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    2007

06.13

「宇宙のみなしご」森絵都

宇宙のみなしご 宇宙のみなしご
森 絵都 (1994/11)
講談社

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両親の仕事が忙しくいつも2人で遊んできた、中2の陽子と1歳年下のリンの姉弟。彼ら姉弟が新しく考えた遊びは、深夜に知らない家の屋根にのぼること。わくわくドキドキの2人だけの密やかな遊びのはずが、七瀬さんが加わることに。そして3人で屋根のぼりをしている所を、クラスで浮いたキオスクに見られてしまう。


まったく同じ遊びをやりました。く~、懐かしい!めっちゃ楽しかったー。向かいに住む幼馴染と一緒に屋根にのぼって、これといって何もしないんだ。ただ屋根にのぼるという行為に快感を覚えただけ。あとは廃屋探検とかね。

陽子は夏休みのあと、なんとなくの惰性で登校拒否を2週間したりする。それは深刻なものでは無く、家の家事すべてをこなす毎日の、健全な登校拒否だ。良くないことだと自分でも気づいていて、大事になると感じたところで終了する。陽子はちゃんと自分というものを持っていて、さっぱりしたすがすがしい女の子だ。

陽子のクラスで、これまで居たグループから外された少女が七瀬さんという少女。外された理由が、相談せずに陸上部に入ったということだけ。イジメって、こんな事ぐらいと言えない理由から始まるリアルさを感じました。

給食係りや掃除当番を押し付けられて、笑いながら引き受けるキオスクという少年。ひと駅にひとつある便利さから、キオスクと呼ばれる。これもイジメですね。キオスクと呼ぶ子供たちは、悪気をいっさい感じずに、これがイジメだと気づきもしていない。こういう子供の身勝手な残酷さってほんと嫌だなー。何とかならんのかな。

そんな七瀬さんとキオスクは、陽子とリンの姉弟の遊びに何かを感じ参加をする。このことによって、彼らは大事なものに気づき、ひとまわり大きく成長していく。ネタバレになるので、これ以上は控えます。絵都さんからのメッセージですものね。

人と人が接して何かを得る。友達を思う心の温かさ、そんなのがいっぱい詰ってます。大人になって読むと、いろんな懐かしさと忘れていた何かを思い出せるでしょう。子供だけに読ませるのは勿体無い本です。とってもとっても良い本でした。

異性を感じずに、手をつないで手の温かみを感じたくなりました。

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森絵都
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    2007

06.12

「新宿ミッドナイトベイビー」寺西一浩

新宿ミッドナイトベイビー新宿ミッドナイトベイビー
(2007/01/18)
寺西 一浩

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ホストのマサルは、新宿歌舞伎町にあるホストクラブ「グレイス」のナンバーワン。ホモの青木信二は、新宿二丁目の有名ホモバー「マロンのケーキ」のママ。彼らの同棲相手のカオルとマサルが、同じ日に同じ場所から赤ちゃんを拾ってきた。赤ちゃんを拾った2組のカップルの、○○を描いた作品です。ネタバレになるので、○○にしました。

ストーリーとは関係なく、歌舞伎町や新宿二丁目という特殊な街がわかります。ホモバーとゲイバーの違いや、売り専や外専という、あちらの世界がみっしり。バイやノンケなんて言葉が普通に出てくる、ディープです。濃いです。

しかし、話の展開や文章はいたって軽い。むしろ軽すぎると言えるだろう。だから、読み物としてはさくさく読めますが、一部で男同士がやっちゃう描写もある。人物描写もストーリーも何もかも薄いです。でも、特異な世界を普通に読めてしまう。

主人公のマサルとマロンのママは、仕事の割には考えや行動がいたってまとも。真面目すぎると言えるぐらいです。それ以外にここに出てくるやつらは、どうしようもないクズばかりです。マサルの同棲相手のカオルにしろ、ママの同棲相手のマサルにしろ、ダメ人間です。莫大な相続目当てで結婚し、お金を湯水のごとくつかうキモイばばあもいる。親が金持ちの娘なんて金があればなんでも手に入ると豪語しています。

こいつらを何とかしてくれと思いながら読んでいると、意外な結末が待っていた。これが素直に喜べないんだなー。いくらブラック好きといえどもね。寺西さんの本を始めて読みましたが、彼はそうとう捻くれているのかな。まあ、たまにはこんな本があっても良いだろう。だけど理不尽すぎないですかね。すべてが軽いのに、後味の悪さだけは強烈に残りました。

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    2007

06.11

「シャドウ」道尾秀介

シャドウ (ミステリ・フロンティア)シャドウ (ミステリ・フロンティア)
(2006/09/30)
道尾 秀介

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5年生の凰介と亜紀は同級生。父親同士母親同士も同級生で家族付き合いの2家族。癌で母を亡くした鳳介は、父の洋一郎との二人だけの暮らしが始まる。その数日後に、亜紀の母親が夫の職場の屋上から飛び降り自殺をしてしまう。2つの家庭はほぼ同時期に母であり妻を失ってしまうのだ。彼らの身の回りで次々に起こる事件の真相とは?


複数の事件が絡みあっていて、それがやがて収束していくのは凄かったです。ただ読んでいておかしな描写だなと思っていたら、それが複線だったのに後で気づく。そんな場面が複数ありました。複線の伏せ方はあまり上手くないのかな?警戒して読んでいたのではなく、普通に読んでいるだけなのに浮いているんだもの。

それにストーリーの中で、様々な謎についてヒントが少しずつ小出しされていく。だからラストの場面では、大きな驚きというのは感じませんでした。でも構成の巧さというのは、はっきりと上手いと断言出来る。

ストーリーは、凰介や洋一郎と視線が変わって展開していく。だから深みがあるんだ。まさに掘り下げた人物描写だと言えるだろう。しかし1人だけ気になった人物が居たので書いておこう。亜紀の印象が薄すぎ。重要な人物だったら尚更もっと肉付けして欲しかった。ラストのあたりで、「やっぱり、頭いいね」と連発されてもピンと来ないんだ。そのときになって初めて、亜紀って賢い設定だったのかと知りました。もっと始めの段階で、2つほど賢いエピソードがあれば納得できたのに。ちょっと勿体無いなあ、なんて思ってしまいました。

だけど読書を途中で中断するのがすごく難しかったこともここに書いておきます。それだけ本の世界に没頭させてしまう力が、この作品にはあるのでしょう。この作品が評判の良い理由もなんとなく分かりました。ですが絶賛は出来ませんでした。複線の荒っぽさが解消されれば、もっと面白くなる本だと思うと少し残念です。

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道尾秀介
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    2007

06.10

「トリツカレ男」いしいしんじ

トリツカレ男 (新潮文庫)トリツカレ男 (新潮文庫)
(2006/03)
いしい しんじ

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ジュゼッペのあだ名はトリツカレ男。何かに夢中になると、そればかりにこだわる。オペラにはまると、ずっと歌って踊る。三段跳びでは世界新記録を出す。彼の住む街では誰もが知っていて、誰もが温かい目で見る名物男。そんな彼が恋をする。そのお相手はベチカという風船売りの女の子。彼女と友達にはなるが、彼女の笑顔の底には灰色のにごりを感じてしまうのだ。

この物語で決して外せないのが、言葉を話せるハツカネズミの存在だ。いつもジュゼッペの側にいて、ジュゼッペとお話をしたり、助けたりもする。ベチカのくもった笑顔の原因を調べたり、もどかしい姿に背中を押したりもする。ジュゼッペ専用の調査隊であり、理解者であり、大事な仲間なのだ。

ペチカに恋したジュゼッペは、彼女の知らないところで、彼女の障害を取り除く。言葉を悪くすれば、ストーカーや下心のある足長おじさん、といったところ。でもまったく嫌らしさを感じさせず、むしろ一途な愛に見えてしまうのだ。そんなベチカを思うジュゼッペから、しだいに笑顔が消え体調もどんどん悪くなる。しかし彼女を思う綺麗な心に奇跡が起こり、あとは想像通りのハッピーエンド。

とても軟らかく温かな愛が溢れた物語でした。ほのかな余韻がちょー気持ちいい。物語作家・いしいしんじ、ここにあり!ってな感じです。

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    2007

06.09

「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」滝本竜彦

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫)ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫)
(2004/06)
滝本 竜彦

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この前に読んだ本が最悪だったので、面白い本が読みたくなった。前に読んだ本の感想はブログには書いておりません。あしからず。よって安心して読める本を選ぼうと、読了本を再読することにしました。

山本陽介は深夜のスーパーで初めて万引きした帰り道に、ある少女と出会う。彼女の名は雪崎絵理。彼女はセーラー服を着た美少女戦士だったのだ。絵理は毎晩現れる、不死身のチェーンソー男と戦い続けていた。平凡な日常に物足りない陽介は、絵理の戦いを手伝うことにする。

現実離れしたお話です。でもおもろい。面白かったら全てがOKなのだ。

ある日の夜、絵理はチェーンソーを振り回す、不死身のあいつと出会った。その瞬間に体が軽くなり、運動神経も良くなって、突然絵理は強くなる。同時にあいつを天敵だと悟り、いつどこに出現するかもわかるようになった。そんな絵理を陽介は自転車の後ろに乗せて出没先へ走るだけ。そして「怪我をしないように頑張ってね」と応援をする。こんな設定ですね。でもこんな単純な設定ですが、読ませるのだからすごい。

戦う理由やチェーンソー男が不死身なのはまったくもって謎です。そんな非日常を一緒に過ごす二人の関係だが、少しずつ良い方へ変化をしていく。そのちょっぴりベタ甘な展開が良いんだな。

そして陽介の心の中には、交通事故で死んだ友達の残像がずっと残っている。何かが起こるたびに陽介は、その友達に呼びかけたり問いかけたりをする。決してバトルちっくな展開ばかりでなく、若者の持つ心情も丁寧に描写されている。

なんの目的も無く、そして情熱も無く、日々を無為に過ごす現代の少年たち。それがチェーンソー男だろうが、熱くなれる物を見つけ、充実をした日々を過ごす。引きこもり作家・滝本竜彦だからこそ、描けたお話じゃないでしょうか。再読ですが充分に楽しむことが出来ました。

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    2007

06.08

「スクランブル」若竹七海

スクランブル (集英社文庫)スクランブル (集英社文庫)
(2000/07)
若竹 七海

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女子高時代の文芸部仲間の結婚式に出席した、元部員の女性たち。出席したことにより、彼女たちは15年前に起こった学校での殺人事件を思い出す。

舞台は、中高一貫教育の有名女子高校。そこで起こった殺人事件はまだ解決されていない。その事件や日常的な小さな事件を、6人の部員たちが順番に回想していく。主な登場人物で文芸部員は、夏見、マナミ、洋子、沢渡、飛鳥、宇佐、の6人。彼女たちに個性があって魅力的。個人的には夏見が好き。飛鳥はちょっとねえ…。

この女子高に高校から編入してきた生徒への、差別や偏見、イジメが痛かったです。自分が公立の共学だったので、実際にこんなのかは知りませんがすごいのよ。数を頼った集団心理や、変な思い込みによる犯人扱いと、不愉快すぎるんだ。心の中で何人殺してやったことか。無茶苦茶ムカツクんだよな。おまけにアホな先生がいっぱい出てくるし。こんな学校があったら嫌だなー。若竹さんの毒が、この部分にたっぷり入っていましたね。これでもかというほど。

彼女たちは自分がイジメられると反発しないが、仲間がやられると守りぬく。やっぱ仲間っていいよなー、と思える反面、微妙なズレもそこには存在している。微妙な人間関係がすっごくリアルに描写されているのは、さすがだなーと感心。それらを経験して現在31歳になった彼女たちは、強くなっているのでしょう。こんな理不尽を経験すれば強くなって当たり前か、当時に潰れてるよね。

そんな凄まじい学生生活の中で、文芸部らしいくたくさんの本がでてくるのが救い。そして本好きだからか推理をするが、まったく当たらないのが妙にうけた。ミステリを読んでも、簡単には探偵にはなれない。そんなおかしさに嵌りました。

そして現在と過去が入り混じったミステリの構造も一筋縄ではいかないんだ。これは読んじゃって、やられちゃって下さい、としか言いようがない。痛さはあるけど、面白く読めた作品でした。やっぱ女子高には女同士のラブがあるのかなー。なんて想像をしちゃったりもする。

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若竹七海
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