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    2007

07.31

「どきどきフェノメノン」森博嗣

どきどきフェノメノン―A phenomenon among students (カドカワ・エンタテインメント)どきどきフェノメノン―A phenomenon among students (カドカワ・エンタテインメント)
(2006/11)
森 博嗣

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窪居佳那は二十四歳。大学院のドクターコースに在籍中。趣味は「どきどき」すること。悩みは酔うと記憶が無くなり、自分が何をしたかを全く覚えていないこと。ミステリです。

相澤助教授に密かな恋心をもつ。どきどき。後輩・鷹野史哉の軽いアプローチにどきどき。同じく後輩で人形オタクの水谷浩樹との微妙な関係にどきどき。謎のホームレス、武蔵坊。彼の知り合いが、公園に設置された犬の銅像を世話する姿をこっそりと見る。どきどき。花屋で勤める友達・美保を、自分の後輩とくっつけようと計画し見守る。どきどき。記憶を無くしたときの自分の行動を推理する。どきどき。大小様々などきどきが溢れてる。

佳那の豊かな妄想ぶりと、酔った暴走ぶりがすべて。佳那を誰が一番どきどきさせるのか。そこに付随するのは、森博嗣さんのくすりと笑えるシュールな笑いと、笑えないダジャレ。時にはぷーっと吹き出す大当たりもあり、サクサク読める軽量級のライトなお話でした。

表紙のかわいい絵は奥様のささきすばる氏。こんなに稼いでいるのに夫婦で儲けています。ですがとってもキュートで、本書で水谷が人形を持っていたのも分かるような気がする。

森博嗣が恋愛小説を描いたら、こんなに変てこな内容の作品になりました。という代物。森さんの独特な文章や笑いの嗜好が合えば楽しめます。自分は森ファンなので楽しめた。この作品もまたシリーズ化すればいいのに。続編を希望します。終始笑いモードが全開の一冊でした。新たな森ワールドが体験出来ます。

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森博嗣
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    2007

07.31

7月の本代の合計金額

計9.716円

わーい、1万円を割った!やった、やった!
なんか金銭感覚が麻痺してなかろうか。。。 ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

自分への戒め
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    2007

07.30

「水の繭」大島真寿美

水の繭 (角川文庫)水の繭 (角川文庫)
(2005/12)
大島 真寿美

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随分前に図書館で借りて読んでいましたが、文庫化されたので久しぶりに読み直しました。見事に記憶がなく、初読のように楽しむことが出来ました。忘却するって便利かも。


両親が離婚し、母親が双子の兄を連れて家を出たあと、とうこは父と二人で暮していた。父と二人で当たり前のように暮していたのだが、とうこが二十歳のとき父が死んでしまう。父が死んだことで、心にぽっかりと穴が開いてしまい、抜け殻のような生活を送るとうこ。そこへ死んだと思い込んでいた二つ年下の瑠璃が転がりこんできて、二人の同居が始まる。

この瑠璃が、子供の頃から祖母に家事全般を叩き込まれ、働きまくる元気印な女の子だ。彼女のモットーが、「楽しいことは、自分でさがす。楽しいところへ自力で移動する」両親と気が合わずに家出を繰り返した、彼女のパワーというか行動力がとても心地よい。

そんな二人が子供の頃に隠れ家にしていた廃屋へ行ってみると、そこには新たな住人が。月見遊子と葉紫茂が営む?というかいつまでも営まれない、カフェになっていたのだ。遊子さんには他の誰にも見えない二十歳の息子がいて、不思議な関係で寄り添っている。

中盤からは、瑠璃がきっかけになり、とうこが忘れようとしていた双子の兄と再開をする。この兄の陸もまた、離婚後に情緒不安定になった母との、いびつな暮らしをしていた。陸がとっていた行動はどう捉えたらいいのだろう。簡単にわかるとは言えない痛さがある。だが、とうこ・陸の双子は長い間別の生活をしていたが、すぐに一体感を取り戻していく。これが普通の兄妹とは違う、双子だけが持つ繋がりとでもいうのだろうか。

双子の兄妹が再会してからは、ストーリーの展開は連鎖が連鎖を呼びラストへ一直線。失われた空間は中々簡単には埋まらない。だけど、いい兆しぐらいは見せてあげよう。全てが上手くいくわけでは無いが、何とかなるんじゃないの、という希望が残される。これからも大丈夫だろうけど少し気になる、という余韻の残し方が絶妙でした。

これだけ心に失望を抱えた人物たちが登場するのに、暗いムードが漂わないのはすごい。それに温かで清々しいのも良かった。すごく好きな作品です。

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大島真寿美
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    2007

07.30

「雪が降る」藤原伊織

雪が降る 雪が降る
藤原 伊織 (2001/06)
講談社

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「台風」
吉井卓也のかつての部下が、会社内で上司を危うく殺しかけた。彼は上司の歪な懲罰に、ついにキレてしまったのだ。彼の呆然自失な震える左手を見て、かつて一度だけ人を殺した男に出会ったことを、吉井は思い出す。現実と過去が交錯した作品です。

吉井がかつて知り合った男との、馴れ初めから別れまでを回想する。淡い憧れをいだいたお兄さんへの哀愁が印象的でした。朗らかなお兄さんが絶望し、殺人をしてしまう経緯はすごく切なかった。しかし最後のオチにはニヤリ笑い。藤原さんのセンスが光っています。


「雪が降る」
同期ながらも上司にあたる高橋の息子から、「母を殺したのは、志村さん、あなたですね。」という電子メールが、志村秀明の元へ届いた。志村は高橋の息子に会い、封印させた淡くて苦い記憶を少年に語り出す。

志村と高橋の同期二人は、かつて一人の女性を巡って火花を散らした。そして志村は敗れ、女性のことを忘れることにした。そして数年後、偶然映画館で再会した二人は、過去の幸せだった頃を思い出す。それら全てを少年に打ち明ける志村は男前です。そして何も知らずに志村を信頼する高橋も男前だし、話を聞いて納得した少年も男前。渋い男たちがかっこよかった。


「銀の塩」
ボロアパートに住む島村は、隣人のバングラディシュ人の青年・ショヘルに誘われ軽井沢に避暑にきていた。そこで出会った里見という女性と恋に落ちるショヘル。しかしショヘルには内緒でやらなければならない夜の仕事を抱えていた。

この島村という男は「テロリストのパラソル」の彼ですよね。相変わらずなキレ者ぶりが渋かった。ショヘルと里見の恋は、まあありがち。ネタバレしますが、一瞬の恋って素敵ですね。この作品では、島村とウブなショヘルの交流が面白かったです。


「トマト」
自分は人魚だというきれいな少女と、むごたらしい顔の男の、不思議な一瞬のひと時を描いたショートショート。

少女に声を掛けられた男が、一緒にホテルのバーでトマトを食べるだけ。すごくシュールです。理解して読むのではなく、感覚で読むのでしょう。


「紅の樹」
堀江徹は、本来なら父親の組の跡目を継ぐはずだった。しかしその父が病死したあと、組は解散に追い込まれ、堀江は父が五分の縁を交わしていた秦野会の預かりになった。そして自らの希望で人を撃ったあと、突然に稼業から足を洗いたくなり、世話役だった遠山の勧めで身を隠す。それから二年半後、堀江の住むアパートに田島幸枝と舞の親子が引っ越してきた。するとかつての自分と同じ臭いがする男たちが、親子を脅しに現れた。

本作中もっとも長い中篇。未だ追われ者の生活をしている堀江が、田島親子と温かな関係を築く。しかし親子もまたヤクザに追われる者だった。堀江は彼女たちを守るために、自分の身を顧みずに行動する。まさにハードボイルドの王道。田島母との淡い関係、少女の澄んだ瞳に真摯に答える堀江に、キュンとくるものがありました。そしてラストの場面は壮絶の一言。とても熱くてすごく切なかったです。

「ダリアの夏」
かつて野球選手だった考志だが、怪我を負い野球を断念。今はデパートの商品配送のアルバイトをしている。そんな彼が配送先のお屋敷で出会ったのは、元女優の由利、姿を消した大御所俳優、彼らの息子の野球少年だった。

歪な両親の間で育つ少年が健気。考志は深く関わるつもりは無いのだが、由利の身勝手さと少年の野球への思いに、つい関わってしまう。さらっとしている考志にも熱いものが眠っていて、それが目覚めていく姿は気持ちが良かった。

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藤原伊織
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    2007

07.29

「しずかな日々」椰月美智子

しずかな日々しずかな日々
(2006/10/03)
椰月 美智子

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これは良かった。最高に面白かった!読まなくちゃ損です。大損です!

枝田光輝は小学五年生に進級するまで、ただの1人も友達の出来ない冴えない少年。それが新しいクラスで後ろの席になった人気者の押野と親友になり、世界が急に広がる。枝田一というあだ名。初めての野球。広場で遊ぶ、じゃらし・ヤマたち仲間。グッピー。すべてが初めての経験。しかし二人暮らしをする母の仕事の都合で転校の危機を迎える。落ち込む枝田少年を、これまで優しく見守ってくれていた椎野先生が母に相談してくれた。すると枝田少年には、一度しか会ったことがないおじいさんの存在を母は打ち明ける。うっすらと残る微かな風景、土の匂い。おじいさんの家からなら転向せずに学校へ通える。枝田少年は、母と別れておじいさんの家で生活をすることを選んだ。


枝田は普通の子供なら経験していることを、押野と出会い遅いデビューをしていきます。クラスにも馴染むことが出来るし、ヘタクソだが野球も覚える。学校外でも仲間が出来る。それに母にはなかった優しさと安心を、これまで縁がなかったおじいさんが与えてくれる。母には捨てられたに近いです。というか風変わりしてしまった母を少年が見限ったのか。

とにかく元気で明るくて、飾り気なしに友達の良さを教えてくれた、押野の存在。押野にすれば普通に接しているだけかもしれませんが、枝田にすればすべてが新鮮。一見ぶっきらぼうで、接し方がヘタ。石頭だけど愛情があって、そっと見守るおじいさん。おじいさんと住むまでは家とは母を待つ場所だった。だけど家の持つ温かさを初めて知る。

遠くから見たらおもちゃのような工場を、押野と見に行ったちょっとした自転車旅行。おじいさんと縁側に並んで座り、おじいさんを真似てスイカに塩をかけて食べる風景。家へ訪れたじゃらしがおじいさんの作ったお漬物に嵌り、来るたびにお漬物を食べまくる。カナヅチな枝田が、水泳大会で泳ぐヤマを応援に行き、彼の泳ぐ姿に感動をして涙を流す。枝田と押野が共にした、すべての温かな時間。なにもかもが好きでした。文句なしです。

日のあたる縁側。冷たい井戸水。その水で冷やしたスイカ。植物への水やりと土の匂い。自分は田舎というものを持っていない。だから余計にこんな風景には憧れてしまいます。まったく知らない世界ですが、なぜか懐かしい風景に感動し、温かな気持ちになれました。

タイトルの、しずかな日々。ほんと、普通にしずかな日常を、少年が過ごすだけです。だけれどもこの作品は読まないと勿体無いです。すごくすっごくお薦めです。とにかく少年たちがカワイイの。

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椰月美智子
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    2007

07.28

「イトウの恋」中島京子

イトウの恋イトウの恋
(2005/03)
中島 京子

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中学教師の久保耕平が祖父の遺品の中から見つけたのは、伊藤亀吉らしき手記だった。イトウは明治期に日本を訪れた著名な女流探険家I・Bの通訳をし、一緒に旅をしたという。手記には北日本を旅した内容やI・Bへの淡い思いが綴られているが、途中で欠落していた。耕平は顧問を務める郷土部のただ一人の部員・赤堀と共に、欠落した手記を追い求める。

女性劇画家のシゲルは、先祖のことで話を聞きたいという見知らぬ男性から手紙を受ける。相談した親友の七恵に「出会いのチャンス」とそそのかされ、シゲルは耕平と会うことに。手記によって現代の子孫たちが過去に実在した伊藤の淡い恋を追いかけるという作品。


新発見に興奮して熱くなる耕平と会話が空回りをするシゲルだが、やがて打ち解けることになる。そんな二人の間で、シゲルのファンだった赤堀はシゲルに会えることに大興奮をする。この凸凹トリオがなんともいい味を出している。それにその後を想像する楽しみもある。髪の薄さが気になる耕平と、元モデルで奇天烈なシゲルの二人は、この後どうなるのか。

手記の世界に生きるイトウとI・Bは、現代の彼らとは違った世界観で毎日を過ごしている。そこには西洋人による日本人への差別や偏見、日本人を奴隷のように扱う西洋人がいる。そんな中、I・Bはイトウと対等に近い関係で接していく。そしてイトウは彼女に惹かれる。

年齢が一回りも年上女性への若者のひたむきな愛。歳を重ねたがゆえに現実を知る女性。突然心変わりをしたようなI・Bの行動には、おまえもかとは思うがあんな裏があったとは。お互いに思いがあるのに報われない大きな愛が、すごく深くて切なくて心が痺れました。

冒頭での謎の女性と少女のやり取りも、ラストにはすっきりします。中島さん上手いです。

実在の人物がモデルになっているので、本当はどうだったのだろうという想像が膨らんで行く。歴史の謎が持つ、「もし」「かも」という魅力にやられちゃいました。読後の余韻も爽やか。中島京子さんの作った虚構と現実の交錯する世界にどっぷりと浸ることが出来ました。すごく心地良かったです。勝手に顔が自然と微笑んできました。にんまりと。

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中島京子
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    2007

07.28

「鳶がクルリと」ヒキタクニオ

鳶がクルリと (新潮文庫)鳶がクルリと (新潮文庫)
(2005/08)
ヒキタ クニオ

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一流会社でバルバリ働いていた貴奈子だが、上司の洩らした一言で会社を辞めてしまった。家で寝て暮らす生活に母がひそかに画策する。母の弟、つまり叔父の元で働くようにと。貴奈子が再就職した先は、叔父・勇介が鳶頭の「有限会社日本晴れ」。鳶の世界だった。

ヒロインの貴奈子が鳶になるわけではなく、事務などをしながら鳶の世界に触れるだけ。つまり鳶の世界を貴奈子が見て、これまで経験してきた仕事との違いを認識していく。そこで働く鳶職の男たちの、自分の仕事への誇りみたいなものが描かれた作品です。

男たちを紹介していこう。鳶たちを纏めているのが、まずは叔父であり鳶頭でもある勇介。勇介の片腕で、白丸とヤサ悦のコンビと言われるのが、刑務所から出所帰りをした悦治。勇介の義理の親で、貴奈子に鳶の仕事内容や専門用語を、丁寧に教えてくれる隠居。そんなやもめ三人衆に育てられ、女だてらに鳶をやっている、鼻っ柱の強い16歳のツミ。アメリカと戦争をして、どうすれば勝てるのかを言い合う、軍事オタの雷太と風太の双子。何故か人の偏差値が気になり、すべての物事の基準を都内の高校偏差値で区別する剛。部屋にいるときはずっと正座をする18歳の建次は、勇介に拾われ可愛がらている。

勇介と悦治のコンビがかっこ良すぎ。それに隠居がいい味を出している。剛は少し疲れた。雷風太の双子コンビの軍事談義は、アメリカを倒すために日本へゴルバチョフを呼ぶと、笑えてしまうのだが、これが中々侮れない代物。実際に9・11のテロがあったことだし。ツミちゃんは最初にムカっときたけど、途中からめちゃめちゃ可愛かったです。

彼らは大手の会社が断った仕事を、意地とプライドにかけ、納期までに完遂しようとする。お話としは単純なものだが、サラリーマン社会における評価基準など、皮肉がたっぷり。
それでいて、勇介が目指す理想の会社とは、というのが作品テーマになっているのだろう。これ以上は本書を読んで下さい。すっごく読みやすくてとても面白かったです。

ヒキタさんを2冊目を読了ですが、自分の中でどんどん評価が上がっています。おもろい。

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ヒキタクニオ
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    2007

07.27

「ほどけるとける」大島真寿美

ほどけるとけるほどけるとける
(2006/07)
大島 真寿美

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高校を発作的に中退し、バイトも長続きせず、祖父が経営する銭湯・大和湯を手伝う美和。常連客の佐紀さんとの交流や、君津との淡い恋を経て、自分の夢を見いだしていく。

薄い本ですが読み応えがあるし、なんと言っても、面白くて温かな気持ちになれました。すっごく良かったです。これまで読んだ大島さんの本の中でもトップクラスの面白さ。大島さんの好き好き度、ぎゅーーんとあがって天井を突き抜けてしまいました。

辞めれば何かが変わると思って高校を中退しても、なんにも変わらない美和の生活。何かをやりたいという目標もなく、「ああ、めんどくさい」と思いながら大和湯で働く毎日。不安定な立場なのに切羽詰った感じがない、こんなダメっぷりには過剰に共感してしまう。どこにでもあるような生活風景で、出てくる人物たちもしみじみとしていてすごく良い。

常連の佐紀さんとはお友達になって、一緒にお酒を飲んで酔っ払い喚き散らしてしまう。あの「かっこ」のないたれ流しのような会話はすごく新鮮で、会話内容も笑えてしまう。大和湯に貸しタオルなどを卸すため、出入りをしているフジリネンのおじさんも味がある。美和と付き合うことになる君津の愚痴はうっとおしいが、逆に美和が引き立つから許す。

そしてなんと言っても美和の弟・智也の存在が強烈だった。彼曰くすべてはRPGにある。RPGゲームをやって、知恵と勇気の使い方を学べ、ボスキャラを間違えるな、のセリフ。あんたの達観ぶりというか、シュールな渋さというかは中学生とはとても思えない大人ぶり。

そしてある出来事から、自分の目指したいものが見つかる美和の姿がとても愛おしかった。若いうちは寄り道も立ち止まりも存分にしてみるといい。時間はたっぷりとあるんだから。財産だよなー、若さって。この作品とはもっと若い頃に出会いたかったですね。今でもこんなに心が揺さぶられるんだから、あの頃なら心のバイブルになったかも。

とても共感出来て、さらに笑えて、その上じんわりと温かな気持ちになれる一冊でした。すごーく好きです。文庫化したら絶対に買います。お薦め!

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大島真寿美
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    2007

07.26

「でりばりいAge」梨屋アリエ

でりばりぃAge (講談社文庫)でりばりぃAge (講談社文庫)
(2006/04/14)
梨屋 アリエ

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真名子は中学2年生の女の子。夏休みに高校で行われている夏期講習に参加していた。一生懸命勉強をして、それなりの高校大学へ行き、それなりの就職し、結婚、妊娠をする。こんな家を出るために、早く大人になりたい。だけど大人になったら女になってしまう。つまらない女になるのなら大人になりたくない。いまのままはもっとイヤ。その先になにがあるのか見えてこないという怖さを感じ、もやもやした感情を抱いている。そんな中、学校の隣にある家で暮らす、ローニンセイとふれ合うことで、変わっていく。

真名子のお母さんは自分が大忙しだし、お父さんも無関心。二人とも話を聞いてくれない。そして弟へは跡取りという特別な存在理由だし、真名子は自分はいらない存在だと思う。この年代の少年少女が持つ、先行きというか大人になるという不安な心理描写が絶品。それにただフラフラと心が迷うだでなく、真名子が話すシュールな会話が秀逸だった。

真名子のお母さんが、教育熱心ではなく教育マニア。知識だけあって活かされていない。この作品を読んで、ドキっとするお母さんが居ないことを祈ろう。居るだろうけど。電車の運転ゲームに熱中するお父さんにはグサっときた。自分がああなる可能性大です。そして弟は7歳にして、自分に仮面をつけて変身をしてから家から出る。おいおいです。

こうして書き出してみると痛い家族ですね。何故これが普通に続いているのか不思議。だからこそ溜めていた真名子がキレて、母に痛烈な言葉を浴びせたのかもしれません。そしてついに、いい子ちゃんだった弟までキレてしまう。母が惨め。でもダメ母だからね。ですが、ここまで昼行灯だったお父さんが救ってくれる。これがなければ家族崩壊だった。まあ、児童書で家族崩壊はないですが、ローニンセイとお父さんに拍手と握手を求める。

思春期時代に悩みを抱え込む中高生にはピッタリの作品。心の休憩にはなるでしょう。だけどお母さんが読むには刺激が強いかも。読む人によって見えてくるものが違うと思う。ですが読んで良かった。この作品を読んで反省をしたくない大人になりたいと思いました。

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梨屋アリエ
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    2007

07.25

「風が強く吹いている」三浦しをん

風が強く吹いている風が強く吹いている
(2006/09/21)
三浦 しをん

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寛政大学そばにある竹青荘というおんぼろアパートは、実は寛政陸上部の合宿所であった。なにも知らない学生たち9人が住む竹青荘だが、ハイジはついに10人目の入居者を見つけた。銭湯からの帰り道に、万引き犯を追いかけ、その走る姿に一目惚れ。走(カケル)だった。ハイジは皆を集めて、この10人で箱根駅伝を目指す!と宣言した。

いきなりネタバレしますが、ほとんど未経験者という彼らが、箱根駅伝を走っちゃいます。まあ表紙の絵がバレバレですから、書いてもいいでしょう。陸上をしている方にすれば、そんなアホなというお話だろう。ですが面白いから許す。

まず10人という大人数な登場人物を紹介しておこう。順番は適当です。清瀬灰二、ハイジ。経験者。住人たちを巧み操り、メンバーたちを纏める言いだしっぺ。蔵原走、カケル。天性の才を持つ長距離走者。過去に問題を起こし、表に出たがらない。岩倉雪彦、ユキ。司法試験にすでに合格した知性派。理論・統計と独自の枠で行動する。平田彰彦、ニコチャン。元経験者だが、今ではヘビースモーカー。大学5年生で最年長。城太郎・次郎の双子。ジョータ・ジョージ。見た目そっくりな陽気で能天気な双子。坂口洋平、キング。テレビのクイズ番組マニア。クイズ王だからあだ名はキング。ムサ・カマラ、ムサ。外国人だから走るのが速いわけでは無いという、ただの国費留学生。柏崎茜、王子。マンガオタクで運動音痴。漫画で埋まった部屋に住む。美顔の持ち主。杉山高志、神童。帰省するのに二日かかる山奥の村出身。山道には強いが方向音痴。

ハイジとカケル以外は、素質はあるものの素人ばかり。そんな彼らが一から陸上を始める。初めは纏りのない彼らだが、ハイジの的確な指導や、自身で走るのが楽しくなっていく。そんな姿は読んでいてすごく楽しいし、やっぱありえないと突っ込みたくもなる。でもね。彼らの頑張る姿が、どこかお間抜けで可愛らしくて、読む事を止めることが出来なかった。個人的には、ニコチャンが禁煙のイライラから作り続ける禁煙人形がニヤリでした。一番のお気に入りもニコチャンでした。たぶん少数派だとは思うけど。

陸上にはあまり興味がありませんが、伯父さんが陸上の審判をしているのでたまに見る。伯父さんのツテで、うちのオカンが大阪国際女子マラソンの沿道整理をしたりもする。それに大きな大会が行われる長居競技場の、入場チケットを貰えるという環境でもある。しかし自分はノータッチ。勿体無いんですかねー。興味がないのでよく分かりませんが。ですが来年の箱根駅伝は見るかもしれない。たぶん見るでしょう。

ここで描かれた彼らの人間ドラマにじーんとくるんだから、本物はもっと心にくるだろう。この本を読んで同じ気持ちになった方は多いと思う。そんな影響力を持った作品でした。駅伝シーンでの個別な思いはグっときました。仲間で繋ぐ襷の重みもじわっと心に浸みる。ラストも見え見えですが、やっぱり感動してしまった。泣きはしませんでしたが。

男の意見としては、女性がもっと出て来て欲しかったです。1人って少なすぎですよね。女性の方には、男たちが10人もいて選り取りでしょうが、そこが残念といえば残念。ですがめちゃめちゃ面白かったです。最高!

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三浦しをん
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    2007

07.24

「花まんま」朱川湊人

花まんま花まんま
(2005/04/23)
朱川 湊人

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大阪の下町とあったので、ノスタルジー物だと思って読み始めると、えらい勘違いだった。
たしかに貧しい環境を苦にせず、元気に遊びまわる子供たちはいっぱい出てくる。
文化住宅や舗装されていない道が懐かしい。ですが鳥肌物でめちゃめちゃ怖いのもあった。
それでいて温かみのある作品もあった。6編すべてが、昔語りの手法で語られています。


「トカピの夜」
玩具をたくさん持っていた私と、病弱な朝鮮人の男の子。二人の不思議な物語です。
朝鮮人の男の子が突然死に、朝鮮の幽霊トカピになって、近所に騒動を起こす。

これは温かみがあって好きでした。子供の頃にこれと同じ差別は確かにありました。
ですが自分は主人公と同じように、その子と普通に遊んでたし、おうちにもお邪魔した。
だけど、朝鮮の幽霊トカピは知らんかったです。ほんまにある話なんですかねえ。
当時遊んでいた子とは小学校卒業と同時に遊ばなくなった。民族学校へ行ったからかな。
昔を思い出し、懐かしくなりました。もちろん大阪人なのでパルナスもね。


「妖精生物」
少女は高架下にいた男から、「妖精生物」と言う名のクラゲのような生き物を買った。
そしてその生き物を手に乗せると大人な快楽を得て、密かにその快楽を楽しむ少女。

うげって感じ。何もかも肌に合わずに気持ちが悪かったです。変な生き物も気色悪い。
それにこの少女は死にかけのおばあになんてことをするねんやろ。おもろかったけど。
解体ショーは、もちろんあかんかった。あー、やだやだ。想像しただけで吐きそうです。
おまけにオカンはなんてことをしてくれるねん。オヤジが惨めすぎるのもちょっとねえ。


「摩訶不思議」
ウマがあったツトムおっちゃんが突然亡くなった。火葬場へ向う車だが目前で突然止まる。
おっちゃんと仲が良かったアキラは、何故車が動かなくなったのかを知っていた。

これは面白かったです。生前のおっちゃんのエピソードも、めっちゃ可愛くて笑えた。
大阪人っぽいおっちゃんがめっちゃ好き。亡くなったあとの、ごねた理由もええ感じ。
こういうアホらしいお話は大好き。最後のオチもいけててグッドでした。


「花まんま」
亡き父に妹のことを守るよう言われた兄。その妹が自分は誰かの生まれ変わりだと告げる。
妹の一生のお願いを聞き、兄は妹と共に、妹の記憶する滋賀県へと向う。

妹を必死に守ろうとする兄の姿に感動。それに訪ねた先の家族の対応と花まんまの意味。
上手い。そして素敵。それにバンザイをした亡き父も、妹が兄やんと呼ぶのも可愛い。
こういうのを読むと、お国自慢やないねんけど、大阪弁っていいなと改めて認識する。


「送りん婆」
親戚のおばさんは、人に頼まれると言霊を使い、苦しむ人を送る、送りん婆だった。
おばさんの指名で少女はおばさんを手伝い、不思議な呪文を受け継ぐことに。

これはすごく雰囲気があって面白かった。それに伏せられた地名が全部わかって楽しい。
大阪人の特権でしょう。Tという町は天満。O公園は扇町公園。おすそ分けしとこう。
それにラストもユーモアがあって、ほのぼのとしているところがすごく好印象だった。


「凍蝶」
子供の頃から差別を受け、友達がまったく出来ない少年が、ある墓地で女性と出会う。
その女性と毎週水曜日に会うことが楽しみだった少年だが、女性の故郷の蝶を見かける。
そして別れがあり、少年は新たに大事なものを手にいれる。

「トカピの夜」と重なる部分が多かった。理由は書かれてませんが、彼は差別を受ける。
女性もまた、弟の病気のために慣れない土地で働いている。一言でいえば孤独。
そんな孤独を知る二人がお互いを温めあう。いい話なんだけど、差別ものはしんどい。
少年が周りから拒否される描写が痛くて、すごく居心地が悪くてムズムズとする。
ここで出てきたT新地って飛田新地ですよね。まだあるよ。とまた、おすそ分け。


大阪が舞台、じゃべりが大阪弁なので、自分も大阪弁で感想を書いてみました。
ほんまはもっとコッテリな大阪弁で書きたいけど、通じないと困るので少し控えた。
いつもと対して変わんかもしらんけど、書きやすかったです。でも変換が着いてこない。。。
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朱川湊人
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    2007

07.24

「アルゼンチンババア」よしもとばなな

アルゼンチンババアアルゼンチンババア
(2002/12)
よしもと ばなな奈良 美智

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「TUGUMI」でつまずいき、疎遠だったばななさんに、再び挑戦してみました。良かったです。空気感というか雰囲気というか、そこに漂っているものが気持ち良かった。本の作りも凝っていて面白かったです。ページ右が日本語、ページ左が英語、という構成。もちろん読んだのは右側だけですが、英語を勉強するには便利な本だと思いました。中高生のときに出会いたかったな。わりと英語は好きだったから。ほんとマジで。装画も可愛くてキュンとくるものでした。ただ赤いページだけは読みにくかったです。

母を亡くした女性の目線で描かれています。突然の死に動揺してしまい父が失踪する。その父を友達が目撃したのは、廃墟同然のアルゼンチンババアの住むビルだった。勇気を出してアルゼンチンババアを訪問すると、そこで父はババアと同棲をしていた。ババアの本当の名前はユリさん。昔はアルゼンチンタンゴとスペイン語を教えていた。魔女のようなわし鼻に、においつきなボロボロの衣装をまとい、家庭菜園で自給自足。とまあ、不思議系なババアと父がまったりと生活を共にしているというお話です。

ババアは何もしない。ただ一緒にいるだけで、優しさや温かさを与えるという存在。タイトルはアルゼンチンババアですが、主人公は傷心を負った父なのかも知れません。墓石造りの仕事を辞め、彫刻を造り始めて何かを残そうとしようとする前向きな姿。アルゼンチンババアの死を乗り越えて、新たな命と共に生きていこうとする父の意思。母を失った女性も同時にババアに癒されていくが、あくまで彼女は第三者の目線。

じわっとした温かさが心地良く、心にしんみりと浸みてくる。そして読者も癒してくれる。ちょっと苦手意識が薄れて、ばななさんを見る目が変わりました。挿画がたくさんありましたが、どうせなら父が造った曼荼羅が見てみたかったです。それは要求しすぎでしょうか。

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    2007

07.23

「空はきんいろ」大島真寿美

空はきんいろ―フレンズ空はきんいろ―フレンズ
(2004/09)
大島 真寿美細川 貂々

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小学生のアリサは、同級生のニシダくんがよくわからなくて、すごく気になっている。一方のニシダくんも、アリサのことを変わり者だと思っている。そんな二人の1年間です。

アリサの住むマンションの、むかいのビルの解体工事が始まり、リサは工事に夢中になる。そしてビルはなくなり、敷地部分があらたな基礎のために穴になってしまった。アリサは次に穴に夢中になり、見続けているとニシダくんも何かを見続けていた。

子供にしか分からない目線で一点を見る二人。自分もこんな頃があったのだろうか。まったく覚えていないけど、子供にはありそう。うちの猫も壁の一点を凝視している。何が見えているのだろう。すごく気になるが、知るのもまた怖い気もする。微妙だ。

アリサは体育の時間の前になるとお腹が痛くなり、早退するために母に迎えに来てもらう。しかし、何故か下駄箱の前までくると、お腹の痛みは治ってしまうが、そのまま家へ帰る。ニシダくんもまた、その日は起きることが出来なくて、いつも同じ頃まで寝てしまう。

これはすごく分かる。一種のストレスから、身体が拒否反応を起こしてしまうことだろう。自分も未だに緊張すると、吐き気がしたり、胃が痛くなったりしてしまう。オエって。身体は正直ですね。ふふっ。

とまあこんな感じで、二人の変わり者同士は、お互いのことは何故か理解をしてしまう。少しシュールな二人ですが、素朴な感じがすごくかわいい。お目目に入れたいぐらいに。その後、家庭のことや家族の事情が二人に起こるのですが、ここでは書きません。書きすぎると勿体無いですから。

キュートな二人のその後が気になります。すごくよい雰囲気を楽しむことが出来ました。

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大島真寿美
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    2007

07.23

「ココナッツ」大島真寿美

ココナッツ (偕成社おたのしみクラブ)ココナッツ (偕成社おたのしみクラブ)
(1999/07)
大島 真寿美荒井 良二

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とびらは朝寝坊で、いつもラジオ体操に間に合わず悔しがる、父と二人暮らしの女の子。大家の孫の健太朗は、夏休みだけおじいさんの家に来ているのでとびら以外友達がいない。ある日、二人はビルの屋上で釣りをしている、不思議なおじいさんに出会います。そしておじいさんの釣ったやしの実を二人はもらい、芽をだそうと公園の砂場に埋める。その後、おじいさんが台風がくると予言をした日、やしの実を埋めた砂場に変化が起こる。そこには、南の島屋という屋台と、ココナッツという女性が、砂場に現れていました。台風に飛ばされそうになる、屋台とココナッツを二人はあたふたと助けようとする。

こんな感じのお話です。ファンタジックなお話なので、内容紹介がぐだぐだになった。そのあたりは勘弁して下さい。反省。

かなり不思議なお話ですが、読み終えると、ははぁん、と納得出来ました。納得は出来るが、読んでいない方には上手く説明出来そうにない、困ったな。児童書をああだこうだと言うのは無粋なので、このまま終わってしまってもいいか。健太朗のおばあさんが作った「ねんのためおにぎり」が、すごく美味しそうでした。

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大島真寿美
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    2007

07.22

「風に舞いあがるビニールシート」森絵都

風に舞いあがるビニールシート風に舞いあがるビニールシート
(2006/05)
森 絵都

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第135回直木賞受賞作品です。実は今まで積んでいました。なんちゅう愚か者でしょう。もう一つ白状すると、「DIVE!!」「永遠の出口」も積んだまま。お宝が眠ってます。


「器を探して」
菓子職人を目指していた弥生だが、現在はヒロミの秘書で、身の回りの世話をしている。弥生はヒロミが作るケーキに惚れたのだが、わがままなヒロミに振り回され続けている。クリスマスにも、急にプリンに合う美濃焼の器を探してこいと命じられ、岐阜へ行く。そんな中、恋をとるか仕事を取るかという、お決まりの問いかけを、彼氏から迫られる。

男女お決まりのセリフが出た時点で、なんだか冷めてしまった感はあるが、悪くはない。ただこの男が鼻持ちならん言葉を吐くたびに、イラっとくるのは個人的な生理現象。でも弥生はしっかりとして、いい加減に男をあしらいつつ、自分の仕事をしようとする。中々好印象を覚えたが、ラストのあの終わり方は意味深。結局はそうなの?


「犬の散歩」
捨て犬の里親探しのボランティアをするために、スナックで稼いで費用に当てる恵利子。満足に食べることのできない人間が居る中で、犬を少しでも救おうと毎日を過ごす。持病を抱えた地味顔の犬ビビ、わがままで元気いっぱいのギャル、貰い手は現れるのか。

ボランティアに関する意見は控えたいと思う。大きなことは言えないですからね。ただ、これまでに犬を3頭、猫を5匹と生活を共にした。現在はにゃんこ2匹と同居。命のあるものと生活をするには、しっかりとした覚悟がいることは当たり前のことだ。ごはん代、医療代、など、さまざまにお金はかかるが、最後まで責任を持って面倒をみる。ここで描かれている現状は知っているが、自分に出来ることは同居の子たちと生きるだけ。ラストの展開には、じーんときて涙しました。やっぱ動物モノには弱いな。


「守護神」
夜間大学に通うフリータの裕介は、今年もニシナミユキの前に現れ、必死の懇願をする。ニシナミユキはレポート代筆の達人で、4年で卒業するためには彼女の協力が必要なのだ。去年は代筆を断られたが、今年こそ書いてもらわなければと、自分の真情を吐露をする。

他力本願に見えた主人公だが、実は、と彼の本当の姿が見えてくる展開がすごく良かった。それに最後のオチもわりと普通だが自分の好み。読後もさわやかで好印象でした。好き。今こうして書いているわけだが、誰か代筆をしてくれないかなーと、いつも思ってしまう。だから主人公の気持ちがすごく理解出来る。頭の中では纏っているのに時間がないんだよ。


「鐘の音」
仏像修復師松浦の下で働く潔は、ある仕事先で出会った仏像に惚れてしまい夢中になる。その結果、師匠とは考えの違いから対立をするは、ある出来事から出奔をしてしまう。そんな潔だが、師匠の後を継いだかつての同僚を、二十五年ぶりに訪ねる。

これは官能的というかなんというか、言葉で表すのが非常に難しい作品でした。でも好き。仏像に惚れて、それしか見えなくなってしまう主人公の気持ちが、なんとなく理解出来る。ネタバレになるが、惚れて人生を変えてしまった仏像の存在が、ひっくり返ったのは笑い。鐘がうるさく感じるのは分かる。自分も本を読むとき物音が気になる性質だから。


「ジェネレーションX」
クレーム対応をすることになった健一は、取引先の若い営業と一緒に苦情処理へと向う。訪問先へ健一が運転する横で、堂々と携帯電話で次から次へと電話をはじめる若き相棒。ジェネレーションギャップを感じながらも、聞こえてくる会話に興味を持ち始める健一。そして二人はいつしか年代の壁を超え…。

一番好きかも。読み始めは携帯電話の会話がうるさくて、正直うんざりしながら読んだ。しかし物語が進むにつれ、二人の距離が縮まっていき最後には。すげーいい話やないか。好きすぎて書きすぎるかもしれないので、ここらで止めときます。


「風に舞いあがるビニールシート」
国連の難民救済に奔走するエド。彼と結婚をした里佳の、難民救済に対しての温度の違い。長く海外赴任をするエドと、東京で彼を待つしかない里佳。そんな中、エドは非業の死を。

これはスケールが大きすぎて、自分にはちょっと荷が重い作品でした。ほんと、マジで。「犬の散歩」を大きくしたような話だが、大きすぎて迂闊なことを書けない内容です。確かに難民救済や支援援助は、誰かがやらなくてはならないだろう。だけどねえ…。奥さんを幸せに出来ないエドの生き方は、なんだかむずむずとして居心地が悪かった。里佳の作った料理を要らないといったり、里佳が持ち込んだカーテンやマットを嫌がる。里佳の存在意義を疑い、人格否定をしているみたいで、追い込んでいるとしか思えない。だから少女を守って死んだといっても、エドが好きになれないまま読み終えてしまった。


好き嫌いの別れる人物が登場したが、ひたむきに生きる姿、懸命に生きる姿は気持ち良い。直木賞に疑問を持っていますが、やはり好きな作家が受賞をすると嬉しいです。ちと本音。冒頭に書いた2作品も、ぼちぼち読んでしまわなくては。てへっ。

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森絵都
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    2007

07.22

「テロリストのパラソル」藤原伊織

テロリストのパラソル (講談社文庫)テロリストのパラソル (講談社文庫)
(1998/07)
藤原 伊織

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先日、お亡くなりになった藤原伊織さん。すごく残念です。なので再読してみました。追悼とか言うのは好きじゃないけど、作品を読むことで藤原さんを送りたいと思う。

主人公の島村は、アル中のバーテンダーとして過去を隠しひっそりと暮らしていた。 しかし、新宿中央公園で起こった爆発事件に遭遇したことで、生活は急変してしまう。 爆弾テロの犠牲者の中には、島村のかつての恋人である優子が含まれていたのだ。 そして彼は過去の事件から容疑者として追われる身となってしまう。

登場人物がすごく魅力的でした。島村は40半ばでアル中だけど知的で紳士な男。 寡黙な彼は、実は喧嘩も強いし、暗い過去を背負って生きている。 他にも島村の店に訪れるヤクザの浅井や、亡くなった優子の娘・塔子、と魅力がある。 個性の際立つキャラたちが物語を盛り上げて、読者を楽しませてくれるのだ。

そんな中でも、島村と浅井の会話のやり取りが面白くて、すごく印象に残りました。 キザなセリフやおしゃれな会話がかっこよくて痺れてしまう。ダンディです。

物語が進むにつれて、主人公の過去も絡んでいく展開も見事でした。ほんと上手いです。 学生闘争といわれてもピンとこない年代ですが、それらギャップを感じさせない筆力で、江戸川乱歩賞、直木賞と同時受賞となったのも納得出来ました。

あまり書きすぎるとネタバレしそうになるので、この辺りで止めときます。 読んで損はありません。たくさんの方に手に取って欲しい作品であることは間違いない。 お薦めです。

藤原さんのご冥福を祈ります。

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藤原伊織
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    2007

07.21

「塩の街」有川浩

塩の街塩の街
(2007/06)
有川 浩

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有川本で唯一買ったのがこれの文庫版。なのに単行本化なんて、気が悪いちゅうねん。でもまあ、その後が追加されているし、実際には図書館で借りた訳だし、文句はいえん。これから逆のパターンも増えるのだろうか。確かに読者の数は増えるが歓迎出来ない。こんな捻くれた気持ちを持ちながら読み出しました。

あとがきによると前半は文庫を改稿したもので、設定など一部が変更されているそうです。気になる方は、あとがきに細かく載っていますので参照してみて下さい。後半が文庫本のその後を描いた作品です。これが追加部分です。


「塩の街」
その日、東京湾の埋め立て用地に巨大な隕石が落下。同時に人が塩化する現象が起こった。その怪現象は塩害と名付けられる。治療法も発見されておらず、世界中で塩害が発生する。塩害が進行中の東京には、1組の男女が一緒に生活を過ごしていた。秋庭と真奈である。塩がすべてを埋め尽くした世界で生きる、SFラブ・ファンタジーです。

秋庭はすぐに怒るが、優しくてすごく頼りになる元軍人。そして表には出さないが熱い。真奈はすぐに余計なものに引っかかる18歳の女の子で、後先を考えないで行動する。そんな真奈が、猫、犬ときて、次に拾ってきたのは、空腹と疲労で倒れた人間だった。男は遠路からすごく重い荷物を持ち、きれいな海を目指して歩いてきたのだった。

塩だらけという世界、人が塩化してしまう現象、これらは本書を読めば理解出来ます。だから設定の説明は省きます。混沌とした狂った街で、偶然出会った真奈と秋庭。彼らが、海を目指す男や、刑務所を脱走した男と出会い、ゆっくりと恋を育てて行く。そしてある男が二人の前に現れ、塩害に立ち向かっていく、という恋愛物語です。

文庫本を読んでいるのでかすかに記憶はあったけど、ベタ甘は再読の邪魔にはならず。何度読んでもニヤリと笑ってしまう、最強の武器でした。ベタ甘、恐るべしです。

秋庭が真奈を抱きしめたまま、「もう二度と他人とは言わない」のセリフには痺れました。終始真奈を守ろうとする秋庭がかっこ良すぎです。あの男らしい姿に憧れてしまうよな。真奈もぎゅっと抱きしめたくなるぐらい可愛くて、おっさんの萌え心をくすぐりました。いつも真奈が作るお弁当に入っている、タコさんウィンナーは特にポイントが高かった。あの毒々しい赤いタコさんが大好きです。カニさんもすきだけど。子供かっ、ちゅうねん。

入江という男が途中から出てくるが、自分のやりたい事に対して手段を選ばない傲慢男。個性がすごく強烈で、普通なら嫌いになってしまうキャラですが、何故か好きになった。秋庭と入江のやり取りなど、めちゃくちゃな中にも信頼があって心地良さがあった。これぞ男同士という関係が随所にあり、そういうところが好きになれた要因だろう。

エンディング前に挿絵が挿入されていましたが、視覚効果を与えて抜群に盛り上げていた。だけどその後あれれ?と思い、文庫を見てみると、スパンとラストが切られていました。気になる方は、文庫本をチェックして下さい。派手な続きがありますよ。


「塩の街、その後」
その後については、「塩の街」のエンディングをネタバレしないと書けそうにない。だから内容紹介は少しだけに留めておきます。

「旅のはじまり」ルポライター志望の中学生・ノブオの旅立ち。
「世界が変わる前と後」自衛隊員の男女のなれそめ。
「浅き夢みし」自分勝手な男VSヒステリックな少女。
「旅の終わり」塩の街、完結。


冒頭で書いた通り、あまり良い感情を持たないまま読み始めました。しかーーーーし。その後を読むことで、文庫を読んだときに感じた物足りなさが一掃されてしまった。これで完結、という単行本化の意味が理解出来ました。

でも新たな疑問が現れたのも事実。あの中途半端な文庫本の存在って何?買った自分は?まあ、そんなうやむやを残しながらも、面白く読めてしまったのが少し悔しい。再度文庫化するときには、「その後」だけ出版するんですかねぇ。

真奈の乙女っぷり、秋庭のぶきっちょ、ベタ甘最高!と褒めて、終わっておきます。面白かった本は、素直に褒めて終わらなくちゃね。

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有川浩
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    2007

07.21

「白戸修の事件簿」大倉崇裕

白戸修の事件簿 (双葉文庫)白戸修の事件簿 (双葉文庫)
(2005/06)
大倉 崇裕

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主人公の白戸修は、どこにでもいそうな善良な大学生。人と違うのは少しお人好し。そんな彼は何故か犯罪に巻き込まれる。それも東京の中野という地域に限定されて。いたって普通な彼が、ほんの少し活躍する連作短編集です。

「ツール&ストール」
友人にかけられた殺人容疑を晴らそうと、白戸修は友人の紹介で元刑事の男と接触をする。そして二人は、事件の鍵を握るスリを追いかけるため、さまざまなスリと出会っていく。

「サインペインター」
怪我をした友人からアルバイトの代行を頼まれた白戸修。そのバイト内容はステ看貼り。電柱などに看板を付ける犯罪行為だった。そしてステ看貼りの縄張り争いに巻き込まれる。

「セイフティゾーン」
預金トラブルに遭い、銀行内の別階別室に連れて行かれる白戸修。そこへ銀行強盗が侵入。人質を取って立てこもる銀行強盗たち。しかし上階にいた白戸修は孤立をしてしまった。

「トラブルシューター」
間違い電話で呼び出され、間違いを正しにいくお人好しな白戸修。そして巻き込まれる。電話の主は探偵で、人材不足だからだと臨時助手をするはめに。敵はストーカーだ。

「ショップリフター」
ついに明日は入社式という日、デパート内で万引き犯と間違えられそうになった白戸修。しかも、何故か保安員になりデパート内で本物の万引き犯を探すことになってしまう。


これらがすべて東京の中野で起こります。しかし中野に括る意味があるのだろうか。まあそれは置いといて、それぞれの短編が普段知らない特殊な仕事を取り扱っている。スリの手際、ステ看貼り、銀行内部、探偵、万引き防止の保安員、とまあ多彩な仕事。それぞれが実際に働いてみないと分からないようなことが、詳しく描かれています。

この中で自分が知っていたのは、ステ看貼り、銀行内部、の2つでした。何故かって?仕事が不動産業なので、ステ看貼りは知って当たり前。年2回、回収にも周っています。銀行内部は、缶ジュースの販売機へのジュースの補充の仕事を、かつてやっていました。販売機の設置場所が、表からは見えない社員食堂にあったので、銀行内を知ることに。

毎度のことですが、また話題がずれて横道に入ってしまいました。もうしわけない。

この作品は、そもそも何が起こったのか、というのを読ませるように展開していきます。文章も簡潔で、テンポも軽快。サクサク読めて、なにより面白い。大当りでした。それに、どこにでもいそうな白戸修と書きましたが、これが中々のキレ者だったりする。各短編にそれぞれ渋い脇役も出て来て、読者を飽きさせないのも好印象の要因。すごく良かったです。なので今後も大倉崇裕さんの本を読んでいきたいと思います。

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大倉崇裕
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    2007

07.20

「エンド・クレジットに最適な夏」福田栄一

エンド・クレジットに最適な夏 (ミステリ・フロンティア 33)エンド・クレジットに最適な夏 (ミステリ・フロンティア 33)
(2007/05)
福田 栄一

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貧乏大学生で根性だけはある晴也に、友人の和臣から15万円の仕事が持ち込まれた。和臣の知人の女子大生・美羽を付け回す不審な変質者を退治するというものだ。早速、女性宅で張り込みを開始すると、そこにはマンションを見上げる怪しい男の影。問質せば男は不審者ではなく、美羽の隣に住む女性の兄で、妹と連絡が取れないという。その行方の知れない千晶という女性の安否確認を兄は頼み、晴也は引き受けることにする。一方で美羽を付け回す怪しい人物・馬場に接触する晴也だが、彼からも頼まれることに。馬場は夏紀という美人局の罠に嵌り、多額の金銭を要求されているのだった。

いつの間にか晴也が抱え込むトラブルの数は、雪だるま式にどんどん増えていく。依頼する方も安易に頼むし、それらを受ける晴也もお人好しで、どんどん大忙しになっていく。

葵、俊喜、和臣、といった脇にいる人物たちが薄いのが、ほんとにもったいない。それと主人公が通っていたという荒れた中学の話を、もっと丁寧に描いて欲しかった。ですが計算された構成が物語を膨らませ、読者を飽きさせずに盛り上げるのはさすがに上手い。出来事自体は大きなものではないが、それぞれが上手く絡みあって質を上げている。それに追跡を同時進行していくがが、文章が読みやすくて混乱することもなかった。やっぱ福田さんの力は本物。たぶんこれからもっともっと有名になっていくだろう。今のうちに唾をつけておくと、後々悦に浸れることが出来るかも。

ラストで主人公がああいう風になるのは、やっぱりという感じかな。これは他の本で経験済みなのでね。福田さんのラストは捻くれているが、それでも中々渋くバサリとやってくれている。こういうものに、ふふんっと鼻を鳴らしてしまう自分もまた、捻くれているのだろうか。


余談。
うちの通っていた中学校の、2年先輩たちがかなり荒れていた。もう凄かった。ゲー○センターに軽○ラックを横付けし、ゲー○機を○奪したりという暴れぶり。晴也は中学時代に、どんな悪い事をしたのでしょうね。

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福田栄一
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    2007

07.19

「ある閉ざされた雪の山荘で」東野圭吾

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)
(1996/01)
東野 圭吾

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劇団「水滸」のオーディションに合格した7人の男女が、ペンションに召集される。彼らを待ち受けていたのは、創作殺人事件の舞台稽古をしろという、演出家の手紙。最初は芝居作りと楽しくしていたのが、被害者役として、やがてひとり、ふたりと、仲間の姿が次々と消えていくうちに、芝居か本当の事件かと疑心暗鬼に落ちていく。演出家の命令で、実際には外との連絡は可能なものの、それをすれば失格となってしまう。もちろん電話も繋がっているが、かければ当然失格で、不安の中、身動きが取れない彼ら。

登場人物を紹介しておきましょう。笠原温子、元村由梨江、中西貴子、の女性組3人。雨宮京介、田所義雄、本多雄一、久我和幸、の男性4人。

ストーリーが進む中、時おり久我の独白が入ります。これがすごく個性的で滑稽。自分のことは自信満々で、他の面々を独自に判断し、優越に浸ったりしているおバカ。田所のことを心の中で見下げて馬鹿にし、由梨江とどうにかなろうと奮闘をしている。彼が探偵役となってストーリーは展開をしていきます。

ここまではスムーズに書けましたが、ここからが腰が引けてしまうのは毎度のこと。ミステリーの感想だからネタバレに気をつかいすぎて、どこまでOKなのか悩むのだ。面白かったで終わったらやっぱ不味いよな。うーん。うーーーん。どうしよう?

この作品の謎の結末にはやられました。まさかあんな構成だなんて思いもしなかった。ある特定の作家を思い出して、一人でニヤリ笑いをしてしまった。作家名はないしょ。それに読後にくる余韻が、他の本格物とはまったく違った物で、中々やってくれています。これ以上はいえません。あしからず。少し趣向の違った本格が楽しめる作品でした。上手い!

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東野圭吾
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    2007

07.18

7月18日 書店でお買い物

ワーキング・ホリデー ワーキング・ホリデー
坂木 司 (2007/06)
文藝春秋

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あしたはアルプスを歩こう (講談社文庫) あしたはアルプスを歩こう (講談社文庫)
角田 光代 (2007/07/14)
講談社

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うさぎとトランペット (新潮文庫 な 46-2) うさぎとトランペット (新潮文庫 な 46-2)
中沢 けい (2007/06)
新潮社

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嘘つき。―やさしい嘘十話 (ダ・ヴィンチ ブックス) 嘘つき。―やさしい嘘十話 (ダ・ヴィンチ ブックス)
ダヴィンチ編集部 (2006/08)
メディアファクトリー

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秘密。―私と私のあいだの十二話 秘密。―私と私のあいだの十二話
ダヴィンチ編集部 (2005/03)
メディアファクトリー

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画像がないなあ。

「ワーキング・ホリデー」はサイン本をゲット。
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    2007

07.18

「覇権の標的」阿川大樹

覇権の標的(ターゲット)覇権の標的(ターゲット)
(2005/12/09)
阿川 大樹

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旭製作所で、シリコンチップを試作するエンジニアの神田淳は、新現象を発見する。彼は上司に相談をするが、会社の上からは話をなかった事にされてしまう。しかし、上司は知り合いの中国系アメリカ人、チャーリー・チェン(C・C)に打診。日本とアメリカという離れた場所にいながら、淳とC・Cはメールのやり取りをする。そして淳は、エンジニアの聖地シリコンバレーで、C・Cと共に新会社を興すのだ。

日本の投資会社は、彼らの会社にマネーを投じ、副社長として篠原翔子を送る。しかし、なにものかの圧力がかかり、出資は中断をされてしまう。新技術を巡る攻防と、困難を切り抜けるエンジニアたちを描いた超大作です。

まず冒頭で、日本の企業の現状と、そこで働く過酷な労働風景が描かれています。自分の仕事はここまで身を切り詰めることはないが、悪習なのはすごく伝わってくる。睡眠時間を削って仕事をし、彼女と会う時間を作れなくて、自然消滅をしてしまう。仕事と私はどっちが大事、という言葉を我慢した彼女がすごく健気でした。えらい。まさに理想の女性だけに別れるのは勿体無いよな。すぐに言う女性が多いだけに。喧嘩を売っているわけではないので、勘弁してね。

エンジニアが主人公なので、専門用語がばんばん出てくる。しかも説明はいっさい無い。しかしそれが反って良いリズムをつくり、臨場感をつくりあげている。

先に半導体で特許を取り、巨額のマネーを稼ぐベンチャー企業は新技術を恐れる。そこのトップは自分の利益や利権が失われるのを恐々とし、見えない裏側で暗躍をする。そんな企業の裏側には、さらに石油資本が暗躍したりと、淳たちの技術を奪おうとする。そこで行われるのは、情報操作であり、マネーゲームであり、違法な行いなどもある。

今現在、世界で行われている商取引や特許というものが、分かりやすく書かれている。会社乗っ取りの構図や、資源を一手に抑えるシンジケートのありようも教えてくれる。それら経済情報を含みながらも、サスペンスや立志伝としても楽しめるのが本書です。

ですが敵を追い詰めていく手段が、「D列車」とまったく同じだったのはちょっぴり残念。でもネットが普及した現在では、これ以外には方法がないだろうとは理解は出来る。しかし2作とも○○○というのは避けて欲しかったな。マジで。

だけど内容は読み応えがあり、最後は気持ち良く読み終わることが出来るのはさすが。まだ世に出ているのは2作だけ。今後も楽しみな作家さんであることは間違いない。これを読んで益々ハゲタカが嫌いになりました。石油などでマネーゲームをするな!ガソリンが高くて困るんだから。ほんとに。

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阿川大樹
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    2007

07.17

「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」桜庭一樹

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet
(2007/03)
桜庭 一樹

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山田なぎさは中学生。父を亡くし、母のパートの収入と生活保護で生活をしている。だから、なぎさの欲しいのは実弾。生活に打ち込む、本物の力。一言でいえばお金。そんな彼女の前に、不思議な転校生がやって来る。有名人の父を持つ、海野藻屑。持ち物はブランド物で、買い物はゴールドカードを使うが、嘘ばかりつく少女。二人の対比した少女の奇妙な友情を描いたお話です。


なぎさには、三年前からひきこもりただの傍観者として生きている友彦という兄がいる。家のことを全てするなぎさは、兄を養育していこうと、卒業後には自衛隊を希望している。これまで自分は不幸だ、かわいそうだ、と思うことで、自分を支えていたなぎさ。

一方の藻屑が撃つのは、砂糖菓子の弾丸。自分は人魚だと言ったりする空想的な弾丸だ。注目を集めようと足をひきずったり、都合が悪ければ人の話を聞こえないフリをする。しかし読んで貰えれば分かると思うが、それらは周りの勝手な思い込みだった。

自分が不幸だというのを支えにしてきたなぎさだが、藻屑はもっと不幸だったと知る。そこで二人は結びつくのだが、本書の冒頭で描かれている結末を迎えてしまう。

藻屑の不安定な精神には居心地の悪さを覚えるが、何故か読むことを止められない。父から暴力を受けるが、好きだと言い切る藻屑。嘘を重ねて気に入られようとする姿。それらは、彼女が精神の安定を保つためにとってしまう自己肯定の表れで、すごく痛い。その裏にあるのは、大人の世界では子供は何も変えられない、というもどかしさ。

はっきり言って本書の内容は黒いです。救いのない終わり方であまりにも残酷です。なぎさと友彦の兄妹には開放というか救いはありますが、藻屑がとても可哀想です。ですが読んで良かった。上手く言葉に出来ませんがすごく良かった。

文庫本から単行本化という異例な販売方法に、商業主義なニオイがして嫌悪感を覚えた。ですが単行本になったからこそ、自分のように手に取る読者も増えるだろう。まあ、たまたま図書館ですぐに借りられる状態だっただけですが、それでも良かった。少しでも多くの方に読んで欲しいな。そう思える一冊でした。

ますます桜庭一樹さんが好きになりました。今後も要チェックです。

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桜庭一樹
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    2007

07.16

「カワセミの森で」芦原すなお

カワセミの森で (ミステリーYA!)カワセミの森で (ミステリーYA!)
(2007/05)
芦原 すなお

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「山桃寺まえみち」では大学生だった桑山ミラ。本書はミラが高校生だった頃のお話です。お嬢様学校に通って、陸上部で走ることを楽しむミラの前に、転校生がやってくる。深山サギリ。スポーツ万能で深山財閥のご令嬢という女の子だ。彼女は本物のお嬢様。しかし、時には乱心し、暴力的になってしまう一面を持っていた。

そんな彼女から、夏休みの8月いっぴから、サギリの家族が持つ別荘へと招待されるミラ。ミラはサギリたちと一緒に別荘へ行くと、そこにはたくさんの人物がすでに集まっていた。サギリの父である臀一郎、まま母の弐子、祖母の宵さん、秘書の添木、執事の裏原、家庭教師の引江、小説家の高塔、別荘管理人、料理長、メイド、などなど。そして突如参加が決まったリンと、ミラとサギリたちは、そこへあらたに加わった。そして続々と殺人事件が起こるという、惨劇に襲われることになる。

中々物語が進まないと思われる方が多々いるでしょうが、これが芦原さんの味なのだ。他作品でも、すぐに話が脱線し横道へと外れて、違う話へと移行していく。これが普通。でもそこにはユーモアがあって、にこにこと楽しめるのが芦原作品の特徴なのだ。それが著しく現れているのが本書ということだけ。好き嫌いが別れるのかな。

会話の楽しさであったり、言葉のチョイスがとてもセンスがあり、くすくすと笑える。こういう特殊な引き出しをいっぱい持った作家さんは大好きです。実際に少ないからね。ミラの親父っぽいしゃべりにも愛嬌があるし、物の考え方もすごく面白い。絶品ですね。

前半から中盤までは、親父なミラちゃんが楽しめるという、お話が展開されています。そして中盤からは殺人事件へと移行していく。2つの連作だと思って構わないでしょう。

読み終えてから思い出しましたが、この本ってミステリーYA!でしたよね。若い方を対象にした本で、あの殺害の見立ては理解されないと思うんだけど、どうなんだ?まあ原典を知らなくても読めるとは思いますが、そこは引っかかってしまいました。

でもミラちゃんの思考・言動が笑えたから、そんなのはうっちゃっておこう。にやり。また再開出来るとは思ってなかったので、ミラにもう一度会えただけですべてを許す。でもこれで続編が出る可能性はかなり上がったのは間違いない。むふふ。ぐふふ。

個人的ですが、思い入れがある作品の続編だったので、すっごく嬉しかったです。

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芦原すなお
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    2007

07.16

「セカンド・サイト」中野順一

セカンド・サイト (文春文庫)セカンド・サイト (文春文庫)
(2006/04)
中野 順一

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キャバクラのボーイ・タクトは、ナンバーワンのエリカにストーカー退治を頼まれる。
エリカをストーカーしていたのは大倉という男で、店のかつての常連客だった。
一方、店の新人・花梨にある雰囲気を感じたタクトは、彼女に対して注意を向ける。
その結果、花梨には他人の近未来を知る不思議な力が備わっているのを、タクトは知る。
その後、ストーカー問題は解決したはずなのに、エリカは何者かに殺害されてしまう。
タクトは独自の調査を進めると、そこには夢丸というドラッグと、中国人マフィアの姿が。


主人公のタクトはフリーターで、いたって普通の青年。特徴というものがほとんど無い。
かつてピアノ奏者として有名だったとあるが、最後に活かされるが、それ以外は埋没。
真面目に働いているし、女性受けも満更ではない。しかし魅力というものが感じられない。

タクトの友達のアキラには魅力があったが、彼の登場場面が極度に低いのが残念だった。
何故、アキラをもっと絡ませなかったのだろう。もっと面白くなるだろうに勿体無い。

出てくるキャバ嬢にしても、上手く描けていたとは思えない。引き立つものが無いのだ。
花梨など、タクトと面白くなりそうだと思いだしたら、即刻フェイドアウトをしてしまう。
エリカや梓、久美にママと、出てくる人数は多いが、影の薄さが否めないのが残念。
予知能力にしても、あやふやに使われるだけで、ストーリーのキーになりきれていない。

しかし作品自体は、ミステリ、サスペンス、ハードボイルド、とそんなに悪くは無い。
文章も簡潔で読みやすいし、世界観も溶け込みやすくて、普通に楽しむことが出来る。
それだけに人物の薄さが勿体無くて、イマイチ褒めきれないのが悔やまれてしまう。

サントリーミステリー大賞受賞作ですが、少し小粒であと少しという作品でした。
こういう世界を描くのなら、もう少しどろっとしていても良かったのかもしれない。
タクトにしろ、ストーリーにしろ、あまりにも爽やかで清々しすぎるのは不自然だった。
でも読み始めると、止まらなくなったという事実も、ここに残しておきます。惜しい。


TBさせてもらいました。「今日何読んだ?どうだった??」

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その他の作家
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    2007

07.15

「シー・ラブズ・ユー」小路幸也

シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴンシー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン
(2007/05)
小路 幸也

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この本は買えば良かった。サイン本を売っていたのに前作を持ってなかったのでスルー。いまさらですが泣きです。ぐすん。とまあ、後悔するぐらい面白かったです。

前作は3ヶ月前に読んだのですが、所々設定をすでに忘却していました。痴呆症かな。人物表を見て、すずみの父と花陽の父が同じ人物だと知り、唖然としてしまった。ほんとに前作でこのことに触れてたのかなー、と疑ってしまったよ。とほほ。


「冬 百科事典は赤ちゃんと共に」
隣のアパートに住む学生さんが、「古事類苑」の全集を買い取って欲しいと持ってきた。買い取ったあとで本を調べると、一冊の本だけ中がくり貫かれているのに気づく。そんな中、バンドワゴンの喫茶店に、大金と共に赤ちゃんが置き去りにされる。


「春 恋の沙汰も神頼み」
初老の男が50冊の本を買い取って欲しいと来店し、すべてを買い取り店の棚へと並べる。その後、男は自分が売った本を1冊ずつ買い戻すため、変装しながら店へと通い続ける。店の常連客でIT企業の社長である藤島。その秘書が藤島を救って欲しいと相談にくる。


「夏 幽霊の正体見たり夏休み」
研人の学校に転校してきた少年は、幽霊の本を読みながら誰かと話をしているらしい。しかもその家では、天井から水が落ちたり、窓をノックされるという、怪奇現象が起こる。一方、夏休みに花陽と研人は、亜美の両親の計らいで、葉山へと遊びに行っていた。二人は向こうで知り合った人から、古い本を貰って帰ってくるが、本には曰くがあった。


「秋 SHE LOVES YOU」
我南人の亡くなった妻・秋実さんの七回忌、伝説の「呪いの目録」について語られる。その目録にあった検印と同じものが、殺人未遂事件があった部屋に残されていた。男たちは任意同行し警察へ。残った女たちが見守る中、バンドワゴンは家宅捜索を受ける。



前作でも大家族ならではのごちゃ混ぜの会話が楽しめた。そして今回もまた楽しめた。前作での勘一のこだわりはしょうゆにあった。今回の勘一のこだわりは七味。なんにでも七味をかけたがる勘一に大笑いです。それ以外にも時代の流れを感じたよ。ウィーと叫んでいる人物がおったね。なんやろと思ってたら、最新のゲームのことだった。

本シリーズは、安定感があって、安心して読むことが出来て、面白いんだからすごく贅沢。季節ごとにちょっとした事件が起こり、それとは別に誰かを掘り下げて人物像を深くする。だから読んでいるうちに、どんどん情報が入ってきて、感情移入がしやすくなっていく。それに新しく登場する人物たちがすごく魅力がある。小料理屋のコウさんなんて渋すぎ。

今回はイベントがいっぱいありましたね。堀田家の隠された過去も明るみになるし、2人も妊娠し出産するし、藍子を巡るマードックと藤島のさや当ても楽しめる。それに常連客たちのことも明らかにされるし、ラストの含みのある終わり方は気になる。あんな終わり方をするということは、絶対続編があるよね。めっちゃ楽しみっす。すごく楽しいシリーズで、人情溢れるラブな大家族に、今後も期待しちゃいます。

読んだのは単行本。その文庫版でサイン本をゲット。

小路幸也

他のサイン本はこちらをクリック。→「サイン本」


「東京バンドワゴン」小路幸也
「シー・ラブズ・ユー」小路幸也
「スタンド・バイ・ミー 東京バンドワゴン」小路幸也

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小路幸也
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    2007

07.15

「つめたいよるに」江國香織

つめたいよるに (新潮文庫)つめたいよるに (新潮文庫)
(1996/05)
江國 香織

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文庫版は、「つめたいよるに」と「温かなお皿」の2冊の単行本が、一緒になっています。
だから全部で21もの短編が収録されているという、すごく贅沢な本です。21も短編があるので個別に書き出すのはあきらめ、気に入ったものを取り上げてみます。

「デューク」
亡くなった犬が、飼い主のもとへ1日だけ人間の姿になってお礼をする。自分も長年生活を共にした猫が最近亡くなり、姿がだぶってウルウルときました。

「夏はジャングルに住みたい」
密かに思いを寄せる女の子にイジワルをしてしまう少年。ぶきっちょな少年に子供時代を思い出し、共感したし懐かしさを思い出した。

「鬼ばばあ」
広場で遊ぶ少年と、養護施設に入ったおばあちゃんとの、交流を描いたお話。自分もおばあちゃん子だったので、思うことがたくさんありました。今では良い思い出。

「夜の子どもたち」
日中に梅林で基地遊びをする子どもたち。夜にその場で遊ぶのは…。温かいのだろうが怖かった。少し背筋がぞっとしてしまった。

「スイート・ラバーズ」
結婚間近の女性と、入院している祖父との、交流を描いたお話。おじいちゃんが、すでに亡くなったおばあちゃんを未だに愛している姿に、じーんときた。

「朱塗りの三段重」
愛犬を過保護に可愛がる妻と、養父母たちの静かな戦い。妻の奇天烈さが絶妙。終わり方にもパンチがあり、皮肉り具合も最高。少しブラック。

「ラプンツェルたち」
彼氏と喧嘩をした女性。そこへ女友達が現れ話を始める。普通の会話をする彼女たちの元へ、ささやかな嬉しい訪問者が現れる。

「子供たちの晩餐」
両親が出かけ、留守番をすることになった4人の子供たち。子供らしい精一杯の抵抗が、ものすごく可愛くて笑える。とってもキュート。

「藤島さんの来る日」
女性と不倫相手の男性のやり取りを、猫の視線で描いた秀作。可愛らしく振舞う女性だが、どこか哀れで薄っぺらい。とてもシニカル。

「コスモスの咲く庭」
女房子供が出かけ、一人で気ままな休日を過ごすお父さん。過去を思い出して楽しむお父さんだが、突然現実に戻る瞬間がすごく愛おしい。

「とくべつな早朝」
クリスマスを深夜のコンビニのバイトで過ごすことになった青年。その彼の前へささやかなプレゼントが届く。最後のシーンは微笑ましかった。


先に収録されている「つめたいよるに」は、不思議系のお話がほとんどでした。後に収録の「温かなお皿」は、日常に起こるちょっとした幸せなお話。こちらの方が好き。江國さんの短編というか、ショートショートを初めて読んだが、とても素敵でした。可愛い作品、じーんとくる作品、微笑ましい作品。温かな作品、皮肉った作品、と贅沢。特に子供の目線で描かれた作品が秀逸で、あっさりと終わるが心にしっかりと残る。江國さんといい宮部さんといい、何故女性作家はこんなに少年を描くのが上手いのだろう。もっと江國さんの短編が読みたくなりました。短編が上手い作家って少ないですよね。とても質の高い短編集でした。うっとり。

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江國香織
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    2007

07.14

「陽気なギャングが地球を回す」伊坂 幸太郎

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)
(2006/02)
伊坂 幸太郎

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続編の記事があって、この本の記事がないのはおかしい。ということで再読しました。

どんな嘘でも見破る人間嘘発見器の成瀬。大嘘つきで演説好きの響野。正確な体内時計を持つドライバーの雪子。動物好きな無邪気なスリの久遠。

彼らはいつものごとく銀行強盗。響野の演説の合間に成瀬と久遠がさっさと集金。さあ逃げるぞっと雪子の運転する車で逃走中に、他の車と接触し、金を奪われてしまう。その車は現金輸送車ジャックの車で、彼らも逃走中だった。気に入らない彼ら。しかしやつらの身体から、久遠がするりと、身元の分かる運転免許証を掏っていた。

とまあこんな流れでストーリーは展開していきます。とにかくスピード感がありあり。しゃべりもありあり。笑いもありあり。小ネタもありあり。複線もありあり。ありあり尽くしです。軽妙なテンポでサクサク読むと、気づけばあっという間にラスト。

今回は再読だから複線に気をつけて読んだが、初読のときもラストの結果に気づいてた。そう、あの小道具を使ってやっつけるという場面。ほんとは大道具というんだろうが。それを差し引いても面白い。たいへんよろしい。

今回もまた響野と久遠の会話に笑ってしまった。再読でも笑えるってすごいよね。しかも響野の演説にうっとりしてしまった。そして成瀬は渋すぎっす。

前回読んだときとは違って、すでに映像化されているのを見ていたのは大きかったです。成瀬の大沢たかお、響野の佐藤浩市、雪子の鈴木京香、久遠の松田翔太。イメージが浮かぶ浮かぶ。映像の方はイマイチだったけど、原作を再読するには良かった。そしてまたしても引っかかったのは、祥子の加藤ローサ。可愛いんだけどね。

一度読んだ方も再読してみてはどうですか。新しく見えてくるものがきっとあるはず。何度でも楽しめる作品だと実証されました。あくまで個人的にだけど。


リンク先

「アヒルと鴨のコインロッカー」:祥子
「ラッシュライフ」:映画館爆破未遂事件
「チルドレン」:4人組銀行強盗


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伊坂幸太郎
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    2007

07.14

「タンノイのエジンバラ」長嶋有

タンノイのエジンバラタンノイのエジンバラ
(2006/01)
長嶋 有

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「タンノイのエジンバラ」
男はたぶん知っているだろう隣に住む女性に、子供を1日預かるよう押し付けられる。男と風変わりな女の子の交流を描いた作品です。/ 女の子に気を使いながらも、ぶっきらぼうに相手をする男がすごくリアルでした。男は無職でいいかげんな生活を送っていますが、女の子に対してはちゃんとしろと言う。きつく言い過ぎたと反省したり、少し親切にしたりという、不安定な距離感が絶妙でした。

「夜のあぐら」
家族をばらばらにした父が死の目前にいる。姉、妹、弟、の三姉弟が長姉に引きずられる。父と住む愛人にだけは、家を引き取られたくないと長姉は意地になっているのだ。そして終いには、家に侵入し、権利書を金庫から盗もうとたくらむ。/ ちょっと姉の心理状態は異常だと思ったが、読み終えるとそうだったのかと納得した。中の妹はなんだか抜け殻みたいだが、けっこう好きでした。道楽弟は羨ましいかった。そして死にかけの父よ。おいおい、まだ他に愛人が居たのかよ。という感じ。

「バルセロナの印象」
失意の姉を元気づけるため、男は妻と一緒に姉を誘い、バルセロナを観光することに。女性陣のガウディだという元気を他所に、男はずっと疲れたまんま。/ これに関しては心が揺れませんでした。だってただの観光にしか思えないもん。たぶん自分の感性が鈍いのだろう。

「三十歳」
ピアノ講師の仕事を辞め、パチンコ店で景品係としてアルバイトをする、30歳の女性。そこで出会った同僚男性から、なれなれしく話しかけられるうちに関係を持ってしまう。/ これが一番好きでした。出てくる人たちのダメさに、ぐぐっと共感してしまったのだ。自分はダメ人間のお話に弱いです。すぐに好きモードに入ってしまってテンションアップ。それにマニアックなこだわりなんてあったら即撃沈をしてしまう。まさにこの作品です。小さな部屋をグランドピアノが占領している風景なんて、想像するだけで堪らない。しかもピアノの下に敷いた布団はピアノの足でよれている。なんてセンスがすごいのだ。こういうセンスの良い表現に出会うと、盲目にその作家を追いたくなってしまう。とにかく、めちゃめちゃ好きな作品でした。

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    2007

07.13

「ぎぶそん」伊藤たかみ

ぎぶそん (teens’best selections)ぎぶそん (teens’best selections)
(2005/05)
伊藤 たかみ

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ロックバンド、ガンズ・アンド・ローゼズに惚れ込んだ、中学生の少年たち。ギター兼ボーカルのガク。ドラムスで紅一点のリリイ。彼ら二人の視線で物語は展開する。他のメンバーは、リードギターのかけると、ベースのマロ。彼らがバンドを通じて様々なことを経験していく青春小説です。

もっとバンドの熱さからくる熱気を想像していましたが、少し違った内容でした。ですが面白く読めたし、満足もしています。恋もベタ甘なもので、よだれが出るし。

ガクは、マロのお兄ちゃんマロニーにガンズを聞かされ、一発でKOされてしまう。そこで、ガク・マロ・リリイのバンドに、学校で一番ギターが上手い、かけるを誘う。かけるとマロの関係が上手くいかなかったり、ガクとかけるの仲の良さに嫉妬をする。これまでずっと一緒だったマロは拗ねるは、リリイはガクへの自分の思いに気づくはで、ガクとかけるの仲の良さに心を揺らす。喧嘩もあったりするが、メンバーという堅い絆が、彼らの心を結びつけるのだ。これはバンドを経験したものにしかわからないでしょう。メンバーだからという一種異様な結束が出来るのです。クラブ活動は近いかもね。

バンド自体はあまり上手くはありません。各パートが纏らずにてんでバラバラの一人相撲。これってすっごく分かるんだ。ペースを引っ張られたり、自分の演奏しか頭になかったり。経験者なので、もっとベースとドラムがしっかりしろ、と突っ込みながらも楽しめました。

ガクとリリイの二人の関係も、じれったくてムズムズするのが、すごく可愛かったです。あんな純な頃が懐かしくて、胸がきゅんとくる。ここでも早く言っちゃえと突っ込み。

ここで描かれているのは大阪のどこかです。これが自分と被る部分があって共感出来る。駄菓子屋に入り浸ってうまい棒を食べている。同じくメンタイ味が好きでしたよ。メローイエローという缶ジュースも飲んでたし、すっごくノスタルジーに浸れました。

読後も爽やかで清々しいし、彼らの今後もすごく気になります。だから続編を希望です。今度はもっとバンドモードを全開でね。


余談。
タイトルの「ぎぶそん」とは、ギター・メーカーのギブソン社のことです。ここではフライングVなんていう、ヘビメタなギターが出て来ています。個人的ですが、ギブソンのイメージは、やっぱレスポールになってしまう。ガクのギターはフェンダーのテレキャス。弾きやすいギターだけど、好みじゃない。まあ作品の評価に影響しませんが、自分とはセンスが違ったので一応書いてみた。普通の方は、面白ければなんだって良いのでしょうがね。


TBさせて貰いました。「Roko's Favorite Things」

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伊藤たかみ
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