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    2007

09.30

「国境」黒川博行

国境 (講談社文庫)国境 (講談社文庫)
(2003/10)
黒川 博行

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「疫病神」の続編です。

二蝶会の若頭は趙成根から、北朝鮮貿易外交部が元山のホテルにカジノを造るという投資話を持ちかけられて、三千万円の金を預けた。趙は同じ手口で複数の組から十億円以上の金を集めたが、元山のカジノはまったくのイカサマであり、身辺が危うくなったことに気づいた趙は北朝鮮に高飛びした。若頭はなにがなんでもケジメをとれと桑原に命令し、建設コンサルタント業の二宮と暴力団幹部の桑原の「疫病神コンビ」が詐欺師を追って北朝鮮に潜入する。

彼ら二人をエスコートするのが柳井という男。観光ツアーで北朝鮮に渡り、着いたホテルで柳井は突然盗聴器を探すわ、ホテルの電話も危ないと言い出し、小声での会話を強要する。そんな状況で昼はツアー客として観光し、夜に案内員の目を盗んで町へ出るが、社会安全部に捕まり金を渡さなければ連行されるような目に合う。

その経験を踏まえて、人民服に身を包んで夜間に情報を求めて様々な人物を訪問するのだが、それだけでおとなしく振舞う桑原ではない。相変わらず口は悪いは、軍人上がりの突撃隊とやり合って味方に引き入れたりと、桑原の姿を追いかけるだけで面白い。特にこの国の指導者をパーマデブ呼ばわりする傍若無人ぶりは、読んでいるだけで気持ちが良い。まさに痛快ですな。

そしてドル札をばら撒きながら、趙成根を追いかけ隠れ家を見つけるが、一足違いで観光客では行くことが出来ないところへ逃げられる。そこで一度大阪へ戻って情報を集めて、こんどは中国側から密入国をして趙を追いかける。後は自分で読んで楽しんで下さい。

ページ後ろの参考文献の多さにも驚いたが、どこまで今の現状と同じかわかりませんが、北朝鮮事情がすごく面白い。良いところを見せようと立派なホテルの外見は見繕っているが、電気が来ないのでエレベーターは使えないし、人が居ない。それに工事が中断し、雨ざらしのまま放置されているホテルなんかもある。金に脆くて腐敗した役人や金で動くゴロツキなど、ほんとにいそうだから想像が膨らむ。

この作品は最初から最後まで読みどころだから、この辺で止めておきます。かなり分厚い本だけど一気読みは間違いないだろう。魅力ある人物が北朝鮮に潜入するなんて、すごく刺激的なことを黒川さんは思いついた。それにユーモアが溢れてノンストップのサスペンスが楽しめる。無茶苦茶に贅沢な読書をすることが出来ました。お薦め!

これの続編は「暗礁」です。


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黒川博行
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    2007

09.30

9月の本代の合計金額

計9.537円也。微妙な金額やな。

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自分への戒め
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    2007

09.30

9月30日 書店でお買い物

風に桜の舞う道で (新潮文庫 た 83-2) 風に桜の舞う道で (新潮文庫 た 83-2)
竹内 真 (2007/09/28)
新潮社

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君たちに明日はない (新潮文庫 (か-47-1)) 君たちに明日はない (新潮文庫 (か-47-1))
垣根 涼介 (2007/09/28)
新潮社

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お買い物
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    2007

09.29

「不器用な赤」ヒキタクニオ

不器用な赤不器用な赤
(2007/08)
ヒキタ クニオ

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高校二年生の仲澤利沙は、キューバ革命のゲバラに心酔し、金、金、金の商業主義を侮蔑して、日夜ゲリラ戦を挑んでいる。カップルの男だけを徹底的に痛めつけ、女の持つ高級ブランドバック奪って換金し、それを資金にして、商業主義の象徴としての看板を赤に塗りつぶす。破壊活動と奪取だ。その活動に共感したのは、在日の利権を使って日本人から金をむしり取るという、金、金、金の守銭奴である父と兄に嫌気がさした、同級生の在日韓国人、伊原知恵。知恵は韓国名と日本名を持つ自分のアイディンティティに対する疑問を持っている。そんな生活にやり場のない閉塞感を感じた二人の少女が行き着く先とは。

二人のゲリラ戦の一方で、利沙の二人暮らしの母、里佳子は商業主義に踊らされて、離婚した元夫から送られる利沙の養育費を湯水のごとく使いまくり、あげくに高級スポーツクラブのインストラクターである直樹に鴨にされている。二人の少女も、ダメな母も、しょぼいたかり屋の直樹にも共感出来ない。だけど、少女たちから盗品買いをしている質屋の伊勢爺だけは、いい味を出していて魅力的でした。警察の違法捜査に対して警察官職務執行法を持ち出して、やり込める場面には最高に溜飲が下がった。そして少女たちを煽りながらも、彼女たちの息苦しさを理解した上で、本当の手助けをしたいと思っている。その結末が、壮絶の一言。

なんというかすごく映画的な作品でした。少女たちは真直ぐ前を向いているんだけど、その向いている方向がすごく偏っている。その極端に偏った方向へ暴走していく二人の姿は気持ちが良いのだが、こんなことをしていいのかという理性も出てくる。確かにチャラチャラした女子高生が、ヴィトンやシャネルなどの高級ブランド品を持ち歩いているのを見ると、それはどうかと思う。そのバックはいくらで買ったの?と一度くらい聞いてみたいものだ。だけどこうまであっさりと狩って、商業主義は息苦しい、で済ましてしまうのは少し抵抗がある。それにデパ地下で惣菜を買いあさる食事が普通の家庭や、高級ジムに通って痩せたからといって、ご褒美に服を買いあさる母親の姿は見苦しい。自分は高級ブランドなどに興味が無い男ですが、女性がこの本を読んだ感想は少し気なります。

ラストの暴走ぶりは触れることが出来ませんが、そんなアホなという大騒動を巻き起こす。やはり共感は出来ないが、ここでも映画的というか映画向きだと感じました。少し分厚い本だが、ヒキタ氏の文章は読みやすいし、ビートが利いてテンポも抜群に良い。暴力的なシーンも疾走感ある文章が問題なく読ませてくれる。かなり危険な香りがする作品だが、理性の葛藤がありながらも面白く読めました。そして少女たちの無邪気な壊れっぷりが、少し切い余韻を残しました。

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ヒキタクニオ
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    2007

09.28

「動機」横山秀夫

動機 (文春文庫)動機 (文春文庫)
(2002/11)
横山 秀夫

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「動機」
勤務時間以外は各所属長が部下の手帳を預かれるようにした。勤務を終えた警察官は手帳を持ち歩かない。帰宅する際には所属部署に手帳を預ける。つまりは警察手帳の紛失事故防止を狙った新制度が導入され、提案したのはJ県警本部警務課企画調査官の貝瀬正幸だった。その一括保管がやられた。U署で一括保管していた三十人分の警察手帳が盗まれてしまった。

「逆転の夏」
かつて女子高生を殺してしまった前科を持つ山本洋二は、匿名の相手から殺して欲しい人間がいる、という殺人依頼の電話に苦悩する。なぜ俺なんだ?始めは相手にしない山本だが、依頼主は電話で話を聞くだけで金を振り込んでくる。山本の心は次第に揺れる。そして考え抜いた山本がとった行動とは。

「ネタ元」
全国紙におされている県民新聞の事件記者である水島真知子。男たちが作った決め事の中で生きている真知子には、ネタをつかんで特ダネを抜くことがすべて。そんな真知子に全国紙からの引き抜き話が持ち込まれる。なぜ、私なんだろう?引き抜き先は真知子のネタ元である「彼女」が欲しいだけではないのか。

「密室の人」
第三十五号殺人被告事件が公判中の法廷内に響いた「美和」という声。それは居眠りをしていた裁判官、安斎利正が妻の名前を呼ぶ寝言だった。安斎の裁判官人生はどうなってしまうのか。


警察ものが有名な横山秀夫だが、それ以外でも上手い、それに面白い、というのがわかる作品集。「動機」は感想を書いている方が多いだろうから省くが、「逆転の夏」がすごかった。一寸先で自分が加害者や被害者になるかもしれない、そんな怖さを感じた作品だ。それに反省と欲望のバランスというかせめぎあいが見事。「ネタ元」は、働く女性の心理が絶妙。と言っても女性心理なんて男なのでわからないが、たぶんこんな悔しさを味わっている女性が多いだろうことは想像がつく。ネタ元のオチもストーリーのオチも素晴らしかった。「密室の人」は、やってしまった裁判官と後添えの若妻のお話。裁判官も人間だなあ、裁判所もお役所だなあ、というのがわかる面白さはあるが、ちょっと切ない。だけどこの妻は有罪でしょ。それに所長も。これって男だけの意見かな??

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横山秀夫
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    2007

09.28

「片耳うさぎ」大崎梢

片耳うさぎ片耳うさぎ
(2007/08)
大崎 梢

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小学六年生の蔵波奈都は、父が事業に失敗したので、1ヶ月前から父の実家へ家族で転がりこんでいた。古くて大きな蔵波邸だが、奈都はどうしても馴じめずに苦痛の日々を過ごしている。そんな中、母が数日間留守をすることになり、父親は仕事を探しにシンガーポールに滞在中。よって広くて不気味な屋敷で、誰にも構われずに一人で過ごすことになった奈都。
そんな奈都を心配した級友の一色裕太の紹介で、中学生のねえちゃんこと、さゆりさんが泊まってくれることになった。しかし奈都の当てが外れて、好奇心あふれるさゆりさんに振り回されて、屋敷の探険に乗り出すことに。そしてふたりが屋根裏に忍び込むと、そこには…?

読む前に本文前にあった蔵波邸見取り図をコピーしました。ちらちらとページを戻るのが面倒なので、こんな不精をしながら読んだ。これが無茶苦茶序盤を読むのに役に立った。コピーだから、ここは奈都の部屋、ここは雪子伯母さんの部屋、勝彦おじいさんの部屋と自由に書きこめる。それを見ながらふたりと一緒に探検する。だから混乱知らずだし、一度頭に入ればめっちゃ楽。今度から館モノを読むときはコピーしよっと。

本書について戻りますが、読み始めは、なんでこんなに奈都が屋敷を怖がるのかと疑問に思ったが、読み進めると、怖がっていたことがストーリーの展開に繋がっていたとおいおいわかる。でもあの怖がり方は浮いていたな。そこまで伯母さんと比較することはなかったような気がするけど。
途中で何度かファンタジーかと思ったがミステリでした。それも書店を離れるとどうだろうと懸念されていた普通のミステリ。屋根裏でニアミスをしたのは誰か、屋敷内の隠し部屋探し、一族の過去の因縁みたいな感じ。これらも悪くなかったです。どこかかくれんぼをしているみたいで、ワクワクと楽しむことが出来ました。

だけど一族の謎部分はまたもや感づいてしまった。なんか最近冴えているなあ。これ以上はネタバレしないと書けないので触れませんが、ちらっと複線が出た瞬間にわかってしまった。いっぱしのミステリ通みたいっすね。その上で書かせてもらうと、あちらこちらでアンフェアなにおいも感じた。本格好きな方が読めば、何箇所か取り上げて糾弾しそうに思う。だけどそこに目を瞑れば普通に楽しめました。どこかはあえて言いませんが。

最後の方はやっぱり的な展開でしたが、結構まとまっていたんじゃないでしょうか。期待以上に面白く読めたし、ワクワクも楽しめました。やっぱ書店ネタが切れていたのかな?なんて、うがった見方までしてしまう。あちらのシリーズに物足りなさを感じている方は、ぜひとも本書を読んでみてはいかがでしょうか。

読み終わってからフト思ったのですが、奈都って小学六年生ですよね。最後の方の推理部分の頭の切れはすごかった。じっくり考えるとすごい小学生だったよなあ。まあコナンくんもいることだし、ってコナンくんは高校生か。


TBさせて貰いました。「今日何読んだ?どうだった??」

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大崎梢
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    2007

09.27

「愚者のエンドロール」米澤穂信

愚者のエンドロール (角川スニーカー文庫)愚者のエンドロール (角川スニーカー文庫)
(2002/07)
米澤 穂信

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省エネがモットーの折木奉太郎(ホータロー)、お嬢様で好奇心旺盛な千反田える、相棒で好敵手の福部里志、腐れ縁があり里志に気がある伊原麻耶花、彼ら四人が神山高校古典部メンバー。

えるに誘われて文化祭に出展する二年F組制作のビデオ映画を見ることになった古典部の面々。その映画の仮称は単に「ミステリー」。入須先輩のしっかり見て欲しいの言葉に、メモを取りながら見る彼らだが、映画は途中で終わってしまった。それも密室で少年が腕を切り落とされ死んでいるところで。入須先輩が言うには、脚本をひとりで書いていた本郷さんが倒れてしまい、この先を要求出来ない。だから後を継ぐ者が必要。あの事件の犯人は、誰だと思う?…..続きが気になるえるの一言で、古典部員たちはビデオ映画の事件を解決するには情報が足りない、ならば関係者を呼んで尋問だ、と動き出す。

前作よりもミステリー度は強くなっていますが、これはちょっと無理を感じたというか何というか。ただ、その結末に至る過程や、古典部員のほのぼのとしたやり取りは、読んでいるだけで楽しかった。だけどまあ、この古典部の活動内容って何だろう。これが一番のミステリーだったりして。

そしてこのシリーズで外せないのが、あの人の存在。冒頭の意味不明な通信のやり取りが、ラストでは鳥肌モノに変貌していた。上手い。そしてやられたー。すっかり忘れているところに、爆弾を落とされたような衝撃を受けた。顔がないあの人だけど、一番のインパクトを与える人物だ。そしてその後の「ほうたる」には吹き出してしまった。これにもやられたー。

ミステリーよりも学園ものとして楽しめた一冊でした。

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米澤穂信
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    2007

09.26

「ラッシュライフ」伊坂幸太郎

ラッシュライフ (新潮文庫)ラッシュライフ (新潮文庫)
(2005/04)
伊坂 幸太郎

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伊坂幸太郎のマイベスト作品を再読した。やっぱり上手い。そして面白い。その上気持ちがいい。

泥棒の黒澤は新たなカモを物色しつつも順調に空き巣を繰り返し、新興宗教の神である高橋を信奉する河原崎は塚本から神の解体を持ちかけられ、カウンセラーの京子は不倫相手の妻を殺そうと画策し、リストラされて四十社連続不採用になった豊田は野良犬を拾い、画家の志奈子は資金と権力を持つ画商に付き添いながら仙台へ向う電車に乗っている。

てんでバラバラの人生を送っている四人の人物たちだが、これが見事にというか綺麗に交錯して繋がっていく。何もなかった場所にピースを埋めていくとパズルが完成する。その最後の1ピースを埋める瞬間をこの作品は味あわせてくれる。この作品については、とやかく言いません。ぐだぐだ言うより、読めと叫びたい。伊坂幸太郎のすごさに痺れた一冊でした。超お薦め!


リンク先

「オーデュポン」:伊藤
「砂漠」:黒澤
「重力ピエロ」:黒澤、伊藤、高橋
「フィッシュストーリー」:河原崎父、親分とタダシ、佐々岡、老人夫婦強盗
「チルドレン」:お面銀行強盗
「陽気なギャングが地球を回す」:映画館爆破未遂事件





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伊坂幸太郎
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    2007

09.26

「TOUR1989」中島京子

ツアー1989ツアー1989
(2006/05)
中島 京子

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かつて、迷子つきツアーというものがあった。いわゆるパッケージツアーだが、迷子と呼ばれる客が一人いて、一緒にツアーに参加したのに気がつくといない。迷子の役割は、現地で迷子になることで、ツアー参加者に様々な余韻を残すこと。そして迷子になった客は、少しばかり遅れて無事に飛行機に乗せられる。しかし15年前の香港ツアーで迷子になった人物だけ、ほんとうに戻ってこなかった。

架空のツアーで姿を消してしまった青年。その印象の薄い青年を巡って3人の記憶が交錯し、1人が追います。これは連作になるのかな?

まずは「迷子つきツアー」では、15年前に書かれた香港からの手紙を、凪子は今日受け取った。差出人にさっぱり心当たりがないが、相手の男は凪子のことを知っていて、自分に対して手紙は語りかけている。

「リフレッシュ休暇」では、失職した男が妻の実家への引越作業のさなか、過去の日記を偶然見つけた。そこには15年前の香港旅行について綴られているが、男はほとんど覚えていない。だけどそこに書かれているある青年に心がひっかかって、落ち着かない気分になる。

「テディ・リーを探して」は、お遊びでかつての恋人の名前をネット検索した女性が、自分しか知らないことが書かれているブログを発見する。それは15年前に添乗員をしていた、香港での女性自身の体験談を綴ったように読めるのだが、途中からはまるで記憶にないことが語り始めているものだった。

最後の「吉田超人」は、ノンフィクションライター志望の男が凪子宛の手紙を香港で託されて、凪子だけでなく、その手紙の差出人である迷子になった男の足跡を捜していく。そして全てが明らかになる。

他の中島京子さんの作品が面白かったので、本書を予備知識なく手に取りました。簡単にまとめると、自分の知っている過去と、微妙に違う過去が突然現れる。それは記憶違いではなく、自分しか知らないはずの過去が何者かに歪められている、という居心地の悪さというか気持ち悪さというのでしょうか。そんな「ずれ」みたいなものが全体的に蔓延していて、それらと直接関わりのない男が興味を抱いて調べてみると、不特定多数によって作られた都市伝説みたいなものが現れる、というお話です。

かなり思っていた系統の作品ではありませんでしたが、中々深みがあって面白かったです。ただお薦めはしにくい作品だとは思いました。他の中島さんを読んだ上で、違う雰囲気を楽しみたいのであれば、本書を手にとってみてはいいかも、ぐらいですかね。

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中島京子
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    2007

09.25

「おっぱいバレー」水野宗徳

おっぱいバレー (Linda BOOKS)おっぱいバレー (Linda BOOKS)
(2006/11)
水野 宗徳

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中学二年生の平田育夫は、バレーボール部に所属しているが部員はたったの5名。キャプテンである平田、昔からのツレ・ヤスオ、部内一の長身・岩ちゃん、みかん農家の長男・杉さん、ただのデブ・江ブー。少年たちは人並み以上に女の子に興味はあるが、実際にはキモイと呼ばれてただ悶々とした毎日を過ごしていた。そんな少年たちの前に突如女神が現れた。美人の新任教師、寺嶋美香子が顧問に選ばれたのだ。さっそく新入生の城くんを加えたバレー部は女子バレー部と対戦するが見事に惨敗。しかも経験者だと思っていた寺嶋先生だが、バレーのルールも知らない素人だった。そんな少年たちがバレーを続ける原動力となるのは、秋の新人戦で優勝すれば寺嶋先生のおっぱいが見れるということ。実話を元にした、思春期を向えた少年たちの青春物語です。

軽~い内容だけど、この年代の少年たちの気持ちはすっごくわかる。女性から見れば子供やなあと思えるかも知れないが、実際の男子の頭の中身はこんなもんでしょう。例えば、女の子はお風呂ではどこから順に洗っていくのか?とか、テレビCMで流れる「女性のデリケートなかゆみ」とは何なのか?とか、めっちゃしょうもない事に興味深々だったあの頃。シャツから透けて見えるブラに興奮したり、とにかく少年たちが可愛いんだ。自分も昔は可愛かったー^^;

そういう性に目覚めはじめた少年たちの目線ばかりでなく、寺嶋先生の目線で描かれているのも面白かった。不順な動機ながらも少年たちはどんどん実力をつけていく。だけど彼らの頭の中身はおっぱいしかない。挫けそうになったときや辛くなったときは、先生の胸に視線を注ぐ。練習がハードになるとチラッ。新しい技に挑戦するとチラッ。それが成功するとニタッ!っと、先生は毎日、目で犯されているのだ。彼らの真直ぐさに怯みながらも、少年たちの成長を見る喜びも味わうことになる。なんかこんな先生が居たらいいなあ。うちの学校は若い女の先生が居なかったからなあ。性に興味のある生徒は腐るほど居たけど。←自分も含む

このままほのぼの系で行くのかなと思っていたが、やっぱり出てきたのは、嫌な大人の理論と、上から目線での少年たちへの押さえ付け。こういうのは大嫌いだけど、少年たちの抵抗が清々しくて、なんだか許せてしまった。許せても不愉快な思いは残ったけど。ラストのオチはなんとなく想像がついていたけれど、ここで疑問に思うことがあった。子供の頃なら誰もがやった事でしょうが、オチに使っているあれを表紙の写真でバラしても良いのだろうか。これには編集者に文句を言いたーい。内容が面白かっただけにそこが残念だった。

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    2007

09.25

「陰の季節」横山秀夫

陰の季節 (文春文庫)陰の季節 (文春文庫)
(2001/10)
横山 秀夫

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D県警シリーズの第一弾。4つの短編が収録されています。


「陰の季節」
人事部屋と揶揄される警務課で働く二渡真治は、管内業者との癒着疑惑が浮かんだ署長の移動先を毒づきながら考えていると、部長がとんでもない話を持ってきた。大物OBである男が天下り先のポストの任期がまもなく切れるのに、辞めずに居座ると言い出したという。しかもそのポストの後任は、今回勇退する男が座ることで話がついていた。説得にあたるも、お前らには関係ないと撥ねつけられた。二渡は大物OBの周囲を探ると、ある事件が浮かび上がってきた。

「地の声」
警務部監察課監察官への配転を命じられた新堂隆義が着任したら、そこにはQ警察署の生活安全課長がパブのママと出来ていて密会している、というタレコミが届いていた。早速新堂が内偵調査にかかると、タレコミをしたのは警察内部の人物らしいとわかる。そこへ二渡が新堂に声を掛けてきた。

「黒い線」
警務課婦警担当係長の七尾友子は、機動鑑識班の平野瑞穂が無断欠勤をしていると連絡を受けた。七尾は瑞穂の性格や人物をよく知っており、にわかには信じられない。しかも瑞穂が描いた似顔絵から犯人が捕まり、新聞各紙が彼女のお手柄を報じていた。

「鞄」
警務部秘書課の課長補佐、柘植正樹の職務は議会対策である。柘植が議員の警察への質問内容を肩代わりして考えていると、その議員から、県警への質問で爆弾を投げると言っている議員がいる、という情報を貰った。早速、その議員を捕まえ質問内容を問うても答えてくれない。柘植は質問内容を議会までに調べようと奔走する。


殺人事件を捜査する表側ではなく、縁の下の裏方にスポットを当てた作品集です。「陰の季節」では主人公だが他の作品でもちらっと登場する二渡真治がカッコ良すぎ。自分が女性なら惚れるな。陰ではエースと呼ばれ、人事を握るだけでなく頭も切れる。そしてもう一人外せないのが「黒い線」に出てくる似顏絵婦警の平野瑞穂だ。本書では脇役だがシリーズ二作目である「顔 FACE」では、ヒロインとして登場している。だから要チェクなのだ。

本書は派手さはないが警察内部の裏事情がぎっしりと詰まっていて、人間ドラマが抜群に面白い。拳銃を撃ったり、犯人を追うだけが警察ではない。そんな当たり前のことに気づかせてくれるとっておきの一冊でした。

「顔 FACE」読了済

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横山秀夫
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    2007

09.24

「またたび峠」藤谷治

またたび峠またたび峠
(2007/07/26)
藤谷 治

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時は江戸時代。ジスケは裕福な商家に生まれ育ったものの、両親が芝居見物に出かけたまま姿を消してからは、親類にないがしろにされ、仲間には恵まれず、あげく住まいや食べるものはおろか、身にまとうものさえ半纏のほか何もかもとられて、生きていられぬほど追い詰められたが、偶然にも塵点寺の良蹟和尚に助けられた。あれから四年ほど塵点寺で寺男として働いていたジスケは、今は去ること二十年ほど前に姿を消した、唯一の友達であった鮒丸という猫と再会した。その数日後には、目と鼻の先にスーパークライシスが迫っているので、これから旅にでないといけない、と猫の鮒丸が突然ジスケに語りかけてきた。ジスケはなんだか判らないまま、どこだか知らぬまたたび峠とやらへ、鮒丸に連れられて旅立つことになった。

「いなかのせんきょ」と同様に、ストーリーの前後に講談口調の説明があります。だからわかりやすかったです。前半部分は、ジスケがどんどんと没落していく情景が描かれ、中盤からは、ジスケと鮒丸の旅が始まる。

本書は理屈付けて読むと間違いです。ふむふむ、それからどうした、と何も考えずに読んでいけば、きっと楽しい物語が楽しめるだろう。軽妙な鮒丸のおしゃべりに、少し幻想的な世界。そしてただ流されていたジスケが、最後にはキレル。どこか憎めない滑稽な叔父やバカ息子たちに、突然現れるおさきという女性。すべてが行き当たりばったりなんだけど、何故だかすんなりと読めてしまう。それに藤谷さんのセンス光る名詞が、そこらじゅうに散りばめられている。それにラストのあれは…、うーん、あれに触れるのは止めておこう。

ちょっと不思議な世界を通過するジスケたちですが、これはこういう原理だという説明がなかったのが良かった。執拗に尋ねるジスケに対して、人間的な概念は猫にはない、と鮒丸がわからないまま押し通してくれているのがありがたい。これをグダグダと説明されると、もうええわい、と投げ出してしまう。自分にはピッタリなものだった。

この本とセットになった「いつか棺桶はやってくる」を読みましたが、表題になっている「つんつるてんの男」というキーワードは、なんとなく意味がわかりました。まったく絡み合わない二冊だけど、読めば気づくと思うので、あえて明かすのは止めておきます。

さあ、藤谷さんの新作よ、いつでも掛かってきなさい。次回作を待ってまーす。

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藤谷治
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    2007

09.24

「二枚舌は極楽へ行く」蒼井上鷹

二枚舌は極楽へ行く (FUTABA・NOVELS)二枚舌は極楽へ行く (FUTABA・NOVELS)
(2006/10)
蒼井 上鷹

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前作「九杯目には早すぎる」では、ブラックさとショートショートの切れ味に度肝を抜かれて唸ってしまった。そして本書では、各作品間にリンクがあり、派手さはないモノのミステリ色が濃く、思わず上手いと声を張り上げてしまう、やられた感の強い作品が粒揃いだった。全部で12のショートショートを含めた短編集なので、お気に入りを抜粋して紹介してみよう。

「野菜ジュースにソースを二滴」
妻を殺されたと思い込んだ男が容疑者たちを招待して、食後にこういった。「犯人が口に入れたものにだけ毒を盛った。この解毒剤を飲まなければ、あと三十分で死ぬ。解毒剤が欲しければ自白しろ」
自分は犯人では無い。だけど犯人だと疑われて毒を盛られた可能性がある。あの時の見られていた行動は勘違いされても仕方がないものだった。迫り来るタイムリミットに対する緊張感と、疑いを込めて見られる仲間の目つき。凄い。そしてラストもまた凄い。

「待つ男」
十七年後にこの店で、この酒を飲もう。役者を目指した男二人が、別れの席で約束をした。そして男が一人、ショット・バー「レニ」へ待ち合わせに現れた。
上手い。男同士の約束と思わせておいて…、い、言えない。これ以上は言えない。蒼井さんの策士ぶりを堪能しました。ほんとに上手い。

「ラスト・セッション」
復活ライブを遂げたジャズ・ピアニストが、その直後に自宅マンション内で殺されていた。しかもピアニストにとっては命とも言える右人差指が切断され、現場から持ち去られていた。
へー、蒼井さんもこういうのが描けるんだ、と驚きのあった作品。ラストの一行に、おりゃあ、とやられました。

「二枚舌は極楽へ行く」
クビになったことを内緒にしてくれ、と強要した同僚の嘘が、その妻にバレてしまった。その頃男は何者かに殺されていた。
その場しのぎの嘘を並べる男に迷惑をかけられた元同僚たちだが、その男の末路にも迷惑をかけられる。タイトルそのままですが、面白かった。その男の結末が滑稽としか言いようがない。男の死ぬ直前のその姿を想像すると、あのブラックさは思わず笑ってしまう。それに参考文献を見て、なるほどと感心してしまった。

ショートショートでのお気に入りは、「値段は五千万円」「私のお気に入り」「ミニモスは見ていた」でした。もうオチが最高に面白かった。蒼井さんの切れ味をぜひ楽しんで欲しいです。

内容紹介を端折ったので、収録作を書いておきます。
「野菜ジュースにソースを二滴」
「値段は五千万円」
「青空に黒雲ひとつ」
「天職」
「世界で一つだけの」
「待つ男」
「私のお気に入り」
「冷たい水が背筋に」
「ラスト・セッション」
「懐かしい思い出」
「ミニモスは見ていた」
「二枚舌は極楽へ行く」

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その他の作家
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    2007

09.23

「Q.O.L」小路幸也

Q.O.L.Q.O.L.
(2004/08)
小路 幸也

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龍哉、光平、くるみ。彼ら三人はミュージシャンを若隠居中の龍哉の家で同居生活をしている。光平は東大出のエリート官僚で、裕福な家庭に育ったところからくるゆるやかな雰囲気を持つ青年。大食いのくるみは読書家で、趣味を生かした図書館司書をしている。そんなある日に、父が死んだと龍哉の口から語られた。そして弁護士から聞かされた話では、父は元殺し屋で、形見に愛車と拳銃を遺していて、拳銃は相棒だった人が横浜にいるからその人に返して欲しいということだった。光平とくるみには各々に殺したい人がいるが、これまで心の奥底に封印してきた。それが身近に拳銃の存在があるということがきっかけで、その殺したいという気持ちが湧き上がってきた。二人は秘めた思いを抱きながら、龍哉と共に函館まで拳銃を取りに行き、函館から横浜まで一緒にドライブをする。そして自分の黒い感情を途中で打ち明けて、それぞれの殺したい相手のいる場所へ寄り道して、拳銃で撃ってやろうとする。そんなドライブ中に、目的地である横浜で誘拐事件が起こって…。というお話。

殺したいと思うほどの人間が自分にはいるかと考えてみた。どうやら特定の人物はいないらしい。今のところ。さらに範囲を広げて考えてみると、結構な人たちが思い浮かんだ。くちゃくちゃと音を出して食べる下品なやつ。つまようじでシーシーするオヤジ。痰やガムを道に吐くモラルのないやつ。自転車ですれ違うときに降りるオバハン。おいおい、何人殺すねん(汗)

こういう程度の低い感情ではなく、本書ではもっと重い負な感情が渦巻いている。だけど、かなりと言うかめっちゃお好みの作品でした。これを読んで気づいたのが、どうやら自分はロードノベルというジャンルが好きだということ。よくある東京がメインで、地名がバンバン出てくる作品はまったくピンとこない。それが本書では、函館や岩手、横浜とどんどん移動していく。どうせ知らない場所なら、いろんな所を旅してくれた方が面白い。それに移動中のドライブ風景も楽しいし、車が大好きというわけではないが、なんかワクワクする。

読み始めはほのぼのとした共同生活で、いきなりドンっと重い過去が明らかになり、さあやるぞっとなったら、いきなり違う所でバタバタする。それに首を突っ込んだ結果、ツライ過去と正面に向き合って、なんとなく折り合いがつく。とまあこんな感じの流れで展開していく。

実はまたやっちゃいました。構成を見破ったというか、裏で何をやっていたのか気づいてしまった。だけど気づいたからと言って面白くないわけではない。むしろその後は確信を深めていくのだから、やっぱりねという楽しみ方ができた。この彼らの下した結論に納得がいかないとか、リアル感に欠けるという方がいるかもしれない。だけどここではさらっと流しておきます。だって読書は楽しくが一番だから。

こんな共同生活って憧れるなあ。男二人に女一人って、実際に出来るものかはわからないけど。まあ、くるみちゃんみたいな子がいればの話だけど。でも惚れてしまいそう。。。

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小路幸也
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    2007

09.23

「都立水商!」室積光

都立水商 (小学館文庫)都立水商 (小学館文庫)
(2006/03/07)
室積 光

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「水商売だけ差別するのか!」「実験的に始めよう!」というわけで、水商売を教える東京都立水商業高等学校が歌舞伎町に設立された。卒業後には即戦力になるようにと、さまざまな専攻科目が決定した。女生徒のための、「ホステス科」「ソープ科」「「ヘルス科」。男子の方は、「マネージャー科」「バーテン科」「ホスト科」「ゲイバー科」。一般の科目である歴史を担当することになった圭介は、ナンバーワンソープ嬢だった吉岡あかねや、レスリング経験者でゲイの疑いがある大野や、野球でオリンピック候補に選ばれた伊東ら教師と、一生懸命な生徒と共に、水商卒業がステイタスになるまでの学校に築いていく。こんなのありか?ありだー、という青春小説です。

笑えたー!感動したー!泣けたー! と言っても気軽にお薦め出来ないのである。なぜかと言うと、授業内容に手こすり千回といったここには内容を書けないものや、ハンドプレイ実習などというものがあって、あられもない姿が普通にあるから。でもやらしくはない。だけど大声で読めとは言えないのである。これ以上はここらへんの事を書けないっす。

この学校はスポーツも盛んで、柔道や野球で大偉業を達成する。特に野球は読み応えが抜群で、まるでこの本が熱血野球小説のような感がある。弱小野球部に天才ピッチャーが入部し、努力のキャッチャー、実力者の双子らと、一からチームを作って甲子園を目指す。彼ら生徒たちも素晴らしいが、彼らを育てた伊東先生がなによりも素晴らしい。例えば、スポーツを見ている人に「大変ですね」って言われるようじゃ駄目だ。「楽しそうですね」こう言われるぐらいでないとな。なんて名ゼリフがポンポン出てくる。それに指導方法なんかも感心してしまうもので、伊東先生がすごく光っていた。それに実は天才が一人じゃなかったというオマケつき。結果はすでにわかっているのだが、すっごく楽しかった。とにかく野球が熱い。などと熱弁を奮っているが、野球にはまったく興味がない。そんなでもテンションがあがってしまったということ。

とにかく出てくる人物たちが先生も生徒も可愛いんだ。ちょっと狙った感じの名前の小田真理や、徳永や内山、圭介先生に大野先生。それにゲストの長嶋や江夏にも笑える。他にも生徒同士の恋や、先生同士の恋なんかもある。これがかなりのベタで、ベタ好きにはたまらんものだ。大きな声でお薦めは出来ないが、こっそり囁いておこう。面白いっすよ。

ちなみに大阪の図書館を調べたら在籍になっていた。やるやんか。

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    2007

09.22

「いつか棺桶はやってくる」藤谷治

いつか棺桶はやってくるいつか棺桶はやってくる
(2007/07/26)
藤谷 治

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基礎科学研究所で、秘密裏に大量殺戮兵器になりうる通称「まむし」を研究している内藤タダオが帰宅すると、妻が消えていた。残されたのは正体不明の記号の羅列が綴られた四冊のノートと、夏目漱石の「暗明」という本。そしてマンションの自宅玄関前には謎の女性マーちゃんの姿。結婚して二年間経つが、妻との出会いから結婚まで、長崎のさる素封家の娘だという彼女と、義父の強引なペースで物事が進み、妻が何をいっているのかその気持ちが理解出来ないまま現在に至った。なぜ妻はいなくなったのか。タダオの研究とは関係があるのか。

これを書いている藤谷さんは楽しかっただろうと想像する。思いついたからこれも書こう。こんなのも思いついたと、結果的にごった煮状態になっている。そこにはくすっと笑える名詞や、にやりとしてしまう例えがあちらこちらに散りばめられている。ただ読者にとっては行き着く先がまったく見えないし、キーになるアイテムや今後関わってくるエピソードが絞れずに、大量の情報が怒涛のように与えられる。話がどんどん複雑に絡み合って広がっていくので、はっきり言って難解なのだ。

それにページにぎっしりと詰まった、字、字、字。町田康さんを一瞬思い出すが、あの独特なリズムとはまた違う。まったく未知の世界に迷い込んだようで、手探り状態で一歩ずつ進んでいくしかない。

妻が消えたのは自分の意思か。それとも他人の意思でそこに悪意はあるのか。妻が残していった品物の意味とは。おどおどとした返答ながら何かを隠している電話先の義父。恩師であり上司でもあるN.M氏の謎の行動。タダオに付きまとうマーちゃん。そして宅配便を装った謎の黒いスーツ二人組。すべてが怪しすぎて、頭の中で整理するのに苦労した。

中盤からは雰囲気が少し変わって読みやすくなる。ただただ困惑して途方に暮れていたタダオが、一杯のおいしいコーヒーと、軽やかな音楽をきっかけに、自由であることを面白おかしく感じるようになって、彼の思考がわかりやすいものになる。特に電車での席を譲れというババアをやり込める部分は痛快だった。そんなタダオとは逆に、一緒に行動するマーちゃんがかなり謎なんだけど、なぜあんなにこだわっていたのかは謎のまま。うーん、気になる。これはネタバレになるのかな。N.M氏に惚れていた??

その後「まむし」絡みで大きなことも起こってラストに向って進んでいくのだが、これまでの大風呂敷が収束していくと、本質は当たり前なことだとわかる。人の繋がりとはみたいなことで…。おっと、これ以上はネタバレになるので言えない。危ない、危ない。あんなに複雑だった事柄をよくすっきりと最後は纏めたなあと、藤谷さんに感心してしまった。たぶん苦労したでしょうね。しっかし、この本の感想を書くのは非常に難しかった。他の方の感想をぜひ読んでみたいものである。

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藤谷治
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    2007

09.22

「カラフル」森絵都

カラフル (文春文庫 も 20-1)カラフル (文春文庫 も 20-1)
(2007/09/04)
森 絵都

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死んだはずのぼくの魂が、ゆるゆるとどこか暗いところへ流されていると、いきなり見ず知らずの天使が行く手をさえぎって、「おめでとうございます、抽選に当たりました!」とプラプラという名の天使が告げてきた。プラプラのいう要点をまとめると、ぼくは前世で大きなあやまちを犯した魂だけど、もう一度生まれ変わる再挑戦のチャンスを得た。その再挑戦とは、前世で失敗した下界で、もういちど修行を積んでくること。その修行とは、下界にいるだれかの体を借りてすごすこと。その体の持ち主がいい家庭もあればひどい家庭もあること。修行が順調に進むと、ある時点で、記憶を取り戻し、前世で犯したあやまちの大きさを自覚した瞬間、輪廻のサイクルに復帰する。そういうわけで、ぼくは三日前に服薬自殺をはかった小林真になった。

小林真の生活には様々な嫌なことや辛いことがたくさん待っている。進路のことや、コンプレックスや、初恋の女の子の援助交際や、いじめや、家族や友達のことなど、難題を少しずつ乗り越えていかなければならない。児童書なので悪い結果にならないのはわかっているが、読んでいて頑張れーとなるのは間違いない。彼が毎日を一生懸命生きている姿が素晴らしいのだ。そんな毎日を過ごした結果、前世で犯したあやまちをついに思い出す。そのシビアな独白のあとに、プラプラの「ピンポーン!」には失笑してしまった。ギャップがありすぎやねんな。そこは絵都さんの茶目っ気ですかね。

今回文庫化したので再読してみました。やっぱ絵都さんは良いっす。ストーリーは非現実的なのに、何故か親近感みたいなものを感じてしまった。その上で温かな思いになれるし、最後に泣ける。この泣けるっていう要素がポイント高いんだよ。それに一番良かったのは、少し変わっているが表紙のカラーが継承されていること。すごくキレイだー。

これはずっと手元に置いておきたい一冊です。お薦め!

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森絵都
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    2007

09.21

「氷菓」米澤穂信

氷菓 (角川スニーカー文庫)氷菓 (角川スニーカー文庫)
(2001/10)
米澤 穂信

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省エネをモットーとする折木奉太郎ことホータローが、恐れる姉の「無事高校生になったあんたに、アドバイスをしてあげる。古典部に入りなさい。現在部員はゼロ」という手紙にしたがい、古典部に入った。古典部部室の鍵をあけて部室に入ると、古典部に入ったという名家の娘・千反田えるが居た。ホータローは鍵をあけて入ってきたということは、彼女は閉じ込められていたということ。そこに悪友の福部里志が加わり、密室の謎に挑む。これがきっかけで、里志は手芸部と掛け持ちで古典部に入った。さあ潰れかけていた古典部は復活した。だけど古典部はなにをする部活なんだろう。そこで千反田えるの発案で、文化祭で文集を出そう。だけど内容はどんなしろものだ、というわけで、バックナンバーを求めて図書館にやってきた三人は、ホータローの幼なじみの伊原摩耶花から、愛なき愛読書の謎を聞かされ謎を解く。里志を追って漫研部員でありながら古典部にも籍を置いた伊原。彼ら古典部の四人たちが、日常のちょっとした謎を解きながら、「氷菓」という題名の文集に秘められた真実に近づいていく。

ふ~、内容紹介だけで息切れしそうになっている。初読ならわりとさらっと紹介を済ませられるが、再読の場合はあれもこれもと詰めすぎてしまう。たぶんより理解をしているからだろう。

学園ものなんだけど、キャラは少し弱いかなあ。ホータローやえるちゃんに魅力が欠けているのが残念。省エネとかもったいぶっているのが、活かされていないように思える。だけどミステリーとかはこんなもんでしょう。これも少し弱いというかたが居るとは思うが、ガチガチを期待しなければ楽しめるだろう。

このシリーズで外せないのが、ホータローの姉の存在。彼女は直接出てこないのだが、読み終わるとなるほどといつも感心をしてしまう。影でうごめく何とかみたいなキーとなる人物で、ホータローの冴える推理も釈迦の手の中みたいな感じになる。ポンと膝を打ってみたくなる、そんな米澤さんの上手さが光っています。これが読後のポインントをかなり上げていると思う。

まあミステリーなのであれこれ言ってもしょうがないので、後は読んで楽しんで貰えたらなあと思います。読んで損なしです。

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米澤穂信
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    2007

09.20

「幸福ロケット」山本幸久

幸福ロケット幸福ロケット
(2005/11)
山本 幸久

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小学五年生の香な子は、お父さんが会社を辞めて母方の祖父の経営する工務店に入社し、工務店があるお花茶屋へと引っ越してきた。お花茶屋小学校へ転校した香な子は、隣の席にすわる小森くんと話すようになった。そんな二人を見た学級委員の町野ノドカに呼び出された香な子は、小森くんことコーモリと話す機会を作って欲しいと頼まれた。そんなある日、これまで通っていた進学塾帰りの電車の中でコーモリと偶然会う。そこで二人暮らしのコーモリの母が入院中だと初めて知った香な子は、駅まで迎えに来ていた母と共にコーモリを自分の家へ食事に誘う。それ以降、香な子のお父さんの作る料理を一週間に一度、コーモリは食べに来るようになった。

やっと素直に面白かったといえる山元さんの本に出会えた。これは面白かったです。

まず褒める前に負なことから。読み始めは、香な子の(かっこ)を使った注釈に野暮ったさを感じた。あの(かっこ)はいらんよなあ。それに勝手な贅沢を言っているのに嫌悪感を覚えた。冒頭で香な子は生まれつきの不幸があったと言っている。誕生日がクリスマス・イブで、ハッピー・バースデイよりメリー・クリスマスが幅をきかせていた、なんて言いながら誕生日用とクリスマス用のプレゼントを二つ貰っている。自分の場合29日生まれなので、子供の頃はイベントを一緒にされたし、プレゼントも一つしか貰えなかった。これって僻みかなあ。

話を本筋に戻します。小森くんはラジオの深夜放送をきくのが趣味で、夜更かしをするからコーモリと呼ばれている。そんなコーモリのことが好きな町野さんが、ほんとにめんどくさい。自分では何もせずに、香な子にばかり頼ってきて、親友呼ばわりをする。こんな身勝手な子っていたよなあ。そんな町野さんに内緒で二人は共通の秘密を持ちながら、どんどん仲良くなっていく。本を読まなかったコーモリが、本の面白さにのめり込んでいくのは、やっぱ本好きならニンマリでしょう。それに一緒に電車に乗って話す10分間。しかも本について話す。いいなあと思うのは自分だけではないだろう。でも電車って年に数えるぐらいしか乗らないんだよなあ。ははは。

元モデルで美人でちょっと怖い二人の担任である鎌倉先生は、はじめはキツイなあと思ったが、途中からすごく物分りの良い先生になり、売れない漫画家である香な子の義昭オジサンとの仲も楽しかった。欲を言えば、もう少し二人の仲がどうなったか知りたかった。

本の帯に「可笑しくて切ない初恋未満の物語」とあるから書くけど、二人の関係は実る前に別れがきてしまう。でもたぶん再会するんだろうなあという希望のあるラストは、疾走感もあって(ほんとに走ってる)、最後の別れまでがすごく読ませ方が上手かったです。ほんと山本さんを三冊目にして見直した。何故人気があるのかわからないまま、これまで読んでいましたが、これなら次も読んでみたいと思いました。なんか褒めながら他作品をけなしている感もあるが、気にしないでね。すごく、すごーく面白かったです。この本は。なんか毒がありそうなので消しておこう。



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山本幸久
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    2007

09.20

9月20日 書店でお買い物

螢坂 (講談社文庫) 螢坂 (講談社文庫)
北森 鴻 (2007/09/14)
講談社

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エナメルを塗った魂の比重<鏡稜子ときせかえ密室> (講談社文庫) エナメルを塗った魂の比重<鏡稜子ときせかえ密室> (講談社文庫)
佐藤 友哉 (2007/09/14)
講談社

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QED~ventus~〈鎌倉の闇〉 (講談社文庫) QED~ventus~〈鎌倉の闇〉 (講談社文庫)
高田 崇史 (2007/09/14)
講談社

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神様が用意してくれた場所2 明日をほんの少し [GA文庫] (GA文庫 や 1-2) 神様が用意してくれた場所2 明日をほんの少し [GA文庫] (GA文庫 や 1-2)
矢崎 存美 (2007/09/12)
ソフトバンククリエイティブ

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君に舞い降りる白 (集英社文庫 せ 4-2) 君に舞い降りる白 (集英社文庫 せ 4-2)
関口 尚 (2007/09/20)
集英社

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    2007

09.19

「小学生日記」華恵

小学生日記 (角川文庫)小学生日記 (角川文庫)
(2005/07/23)
hanae*

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ごめんなさい。所詮小学生の作文だろうと嘗めていました。これがとんでもなく心を揺さぶるもので、ビックリしてしまった。読んでいて鳥肌がぶわっと出てくるし、感情がぴくぴくと痙攣する。解説で重松清さんが、小学生にしか書けないけれど、小学生には書けないと語っている。まさにその通りで、日常で受ける感性が大人のそれとは違って瑞々しかった。かと言って普通の小学生がこう書けるわけもない。とにかくすごーいのだ。

お母さんの楽しいフリマライフを描いた、趣味と実益...「フリマとわたし」。アメリカ帰りで日本語がわからない兄の、《かのうせい》...「モトイと日本語」。京都&大阪鶴橋を満喫する、家族旅行...「太秦のオードリー」。着物を受け継ぐ特別な、誕生日...「おばあちゃんのつむぎ」。普段は元気なのに授業中に声を出さないエリカちゃんとの、出会いと別れ...「ポテトサラダにさよなら」。塾を移って新しい環境で仲間と受験へ向う、ドキドキとワクワク...「ひとりで行く渋谷」。これまで知らなかった友達の顔を知る、側面...「移動教室」。ニューヨークが停電し、テレビのニュースを観ながら向こうにいる兄へ電話で情報を教える、中継...「ニューヨーク大停電」。勉強しながらのラジオデビューをする、ラジオっ子...「ラジオの夏休み」。困っている人がいる時、サッと手を貸せる人、無視する人、動けずに固まる人...「昼間の電車」。時間に早く早くの母と、時間なんか関係ない別れた父...「受験タイマー」。CM撮影現場で、ローマの休日...「100円の恋愛力」。映画を観て三年間いたアメリカを思い出す、思い出...「ミュージック・オブ・ハート」。仕事場で気の合うメイクさんと再会した、会いたい人...「モミヤマさん」。イジメられてる子、デキる子、そして明日への希望...「受験まであと100日」。お母さんとの待ち合わせですれ違い、子供の言い分、親の言い分...「ひとりでまっていた日のこと」。小さい頃からの大事な本への、ありがとう...「あとがきに替えて わたしと本」。

くだらないエッセイが溢れている中、最後まで作文だと謙遜している華恵さんが、奥ゆかしくて微笑ましい。良書でした。

余談。
あ、そうそう、hanae*から華恵にペンネームを変更したそうです。

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    2007

09.19

「虹色天気雨」大島真寿美

虹色天気雨虹色天気雨
(2006/10/20)
大島 真寿美

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お~い!アマゾンよ。表紙の良さがまったく伝わらんではないか。ったくもうっ。

朝の五時半に幼なじみの奈津の電話で起こされた市子は、一人娘である美月を預かるよう押し付けられた。奈津の夫が二百万を持って失踪したので、これから探すということだった。この小学生の美月が、勝手知ったる他人の家という感じで堂々とし、私は何も知らないことになっているから何も聞かないで、という大人びた少女で手強い。そんなこんなで中々見つからない夫に見切りをつけた奈津は自立をし始め、気の合う仲間である、まりや三宅ちゃんたちと楽しみながらも、市子は忙しくも楽しい日常を過ごしていく。

夫探しがメインではなく、一緒にいて気の置けない仲間たちと、わいわいがやがやとした交流の中で力強く生きていく。大人のお友達とはこうだ、というのを描いた作品です。

お互いに大人なのでべたべたとした付き合いではなく、これ以上は踏み込まないという距離感が絶妙。それでいて昔から知っているので、それぞれに生活の環境が変わっても、本人自身は変わっていないなあ、なんて思うところがすごく共感できた。

特に良かったのが美月の運動会の場面。奈津に誘われて市子が運動会に行けば、まりもいるし、三宅ちゃん一行である三宅ちゃん、土方さん、土方さんの奥さんの洋子さん、究さん、経理のバイトの小糸ちゃんと集まり、仲間の娘の晴れ舞台が、いつのまにか宴会場のような雰囲気になっている。うわー、いいなあ。こういう関係に憧れるなあ、なんて思ったり、美月の出る障害物競争に、声を張りあげ力いっぱい応援する姿が微笑ましくて、泣けてきそうになった。後日に運動会の写真が土方さんから送られてきて、市子はその大量のスナップを見て、あの日の空気がそこには満ち満ちていると感じ、こんなにたくさんの一瞬があの一日を作っていたと気づく。こういう何気ない描写を切り取るのが大島さんは上手い。透明感のある文章が心に浸みてくるのだ。

その運動会で土方さんがビデオを撮りながら語っていたのが印象的だった。「奈っちゃんの旦那は、こんないい時を娘といっしょに過ごさずに何やってんだろうなあ。ったく、おれは腹が立って仕方ないよ、せっかく授かった宝じゃないか。おれ、このビデオを、いつか、奈っちゃんの旦那が戻って来たら観せてやるからな。無理やりにでも観せてやる。観たら、歯ぎしりしたくなるくらい、この場にいなかったことが悔しくてたまんなくなるくらいの超大傑作にしてやる。お前はこの時、この子をほったらかして、逃げ出してたんだぞ、ってな。おれは言ってやりたいのよ」 土方さんめっちゃ男前っす。

市子にしろ奈津にしろ、まりや三宅ちゃんたちが一所懸命生きている。それがすごく素晴らしくて気持ちが良かったです。読後もさわやかで爽快。自信を持ってお薦めできる一冊でした。


大島真寿美さんのサイン。

大島1


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大島真寿美
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    2007

09.18

「晩夏のプレイボール」あさのあつこ

晩夏のプレイボール晩夏のプレイボール
(2007/07/20)
あさの あつこ

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野球への愛がぎゅっと詰まった10の物語。野球のルールを知らなくても読めるし、興味が無くても読める。と言うのも、自分がまったく野球に興味が無いから。大阪人なので一応阪神ファンらしいのだが、選手を知らないし、テレビも見ないし、結果も気にならない。どちらかと言うと、イチローがヒットを打ったかの方が気になる。なんか時間ばかり食って、はやくせい!とイライラするのだ。バッターなんて、やあやあ我こそはみたいに順番に出て来て、一球ごとにのんびりと勝負する。これがまどろっこしいのである。だけど本書は面白かった。10の物語が全部何がしか甲子園に関わっている。まあちょっとは、しつこいなあとは思ったけど。横道にそれっぱなしなので、そろそろ内容紹介を始めよう。

夏の甲子園、地区予選準決勝。九回の裏、ツーアウト、ランナー無し。点差は四。高校野球最後になるかもしれない打席へ代打で出る少年。...「練習球」
小さい頃から男の子に混じって野球を楽しんでいた少女。彼女が小学校卒業と共に、野球をする環境が無くなる現実を知る。...「驟雨の後に」
かつて甲子園に出た兄に憧れていた弟は、大人になって10年ぶりに帰郷し、再会した兄から当時野球を楽しそうにしていた自分が羨ましかったと教えられる。...「梅香る街」
来年で廃校になることが決まり、最後の野球部員になった三人の少年たち。当然三人では野球を出来ないが、毎日グラウンドに集まって練習をする。...「このグラウンドで」
野球が大好きだった息子を10歳で亡くし、最愛の夫は医師から余命六ヶ月だと言い渡された妻。そんな夫婦は甲子園のテレビ中継の中に、頑張っている息子の姿を見る。...「空が見える」
幼い頃から甲子園でプレイすること、そして優勝することが夢だった少年が、本当に夢をかなえてしまった。そのことで抜け殻のようになった少年は、野球を知らない頃にいつも一緒にいた、病床にいる親友を訪ねる。...「街の風景」
小学六年生の少年は、いつも母から平凡だと言われて、無理な期待を背負わされていた。それがある日に、母の無駄よという母の諦めの声を心で感じた。その日、大雨で氾濫する河川敷で自殺を考えていたら、熱心に素振りをする高校生に出会った。...「雨上がり」
幼馴染の女の子に誘われて見た、高校野球地方大会の九回の攻防。少年は野球に魅せられ、高校入学と共に野球を始める。そして幼馴染との恋。...「ランニング」
30年ぶりに故郷に帰った男は、当時ランニングコースになっていた商店街を訪れた。そこは寂れていたが、かつてバッテリーを組んだ相棒と、野球部のランニングは変わっていなかった。…「東藤倉商店街」
一番初めに収録されていた「練習球」のサイドストーリー。...「練習球?」

こんな感じかな。お気に入りは「練習球」「驟雨の後に」「このグラウンドで」「街の風景」「ランニング」でした。多いなあ。ねっ!野球に興味が無くても、こんなに楽しめたのだ。とっても面白かったです。

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あさのあつこ
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    2007

09.17

「正義のミカタ」本多孝好

正義のミカタ―I’m a loser正義のミカタ―I’m a loser
(2007/05)
本多 孝好

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高校時代にとことんイジメられていた蓮見亮太は、大学生になってデビューしようと思っていた。そこへ現れたのはかつて自分をイジメていた同級生の畠田で、前は千円だったがもう大学生だから二千円だせとボコボコに殴られていた。そこへ桐生友一が現れ、畠田をあっという間にやっつけてしまった。そしてトモイチと呼んでくれという彼に連れられ部室に行くと、いきなり入部テストだと言われて、俺のパンチを避けろとなる。お前ならできるの言葉に単純に頑張った亮太は認められ、部長、優姫先輩、一馬先輩、亘先輩、トモイチらと固めの杯を交わした。その後で知ったのが、ここが正義の味方研究部であるということ。ここでは正義とはどういうものかを研究し、大学内でそれを実践しているということだった。

まずはじめに言っておきたいのだが、序盤の段階で読むのを辞めようと思った。亮太のイジメられっぷりや卑屈な態度がすごく不愉快。それに亮太を見下す自己中な妹にムカついた。図書館本ならこの時点で本を投げ出しただろう。だけど身銭を切った本なので、もうちょっと頑張ってみようと読んでみた。するとトモイチが出るあたりで面白くなってきた。しかし新歓コンパで起こった問題を解決したりと、正義の味方研究部の活動内容はかなりしょぼい。それに先輩や部長の武勇伝もしょぼい。だけど亮太とトモイチの童貞コンビのやり取りや、蒲原さんへの亮太のへっぴり腰な恋が中々楽しくてにやけてしまう。それにボクシングでインター杯三連覇だったトモイチから、戦い方の指導と特訓を受ける亮太の姿は微笑ましかった。だけど亮太の根っこはマイナスな性格なので、時折みせる負の思考は盛り上がりに水を差してしまう。トモイチの性格はわかりやすいのに。いっそトモイチが主役なら痛快なものだったろう。

中盤から企画サークル部に潜入して、裏でなにをしているのか探っていくのだが、怪しい人物はすぐにわかってしまうし、なんか哲学的な内容になってつまらない。上には上の、中には中の、下には下の希望がある、なんて階級格差を考えたり、世界は不公平だとか言われても、はあ、そうですかという感じでピンとこない。それに正義とは何かと亮太が悩んである決断をするのだが、その結末が腑に落ちない。何故大学生にもなった大人が暴力で解決しようとするのだ。それに部長のあの行動はなんだったのか。はっきりしないモヤモヤが残るし、亮太の恋もいつの間にかフェイドアウトしている。あの時計が原因なのかな??

前にも書いたが、本多さんの本はどこか納得がいかない。今回本書を読んでも嫌いじゃないけど、どこが良いのかイマイチわからなかった。相性が悪いわけではないが、良いとも言えない。などと言いつつ、また読んでしまった。ほんと不思議な作家だ。

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本多孝好
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    2007

09.16

「ぐるぐる猿と歌う鳥」加納朋子

ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド)ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド)
(2007/07/26)
加納 朋子

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小学五年生の高見森(シン)は腕白で、危ないといわれる遊びが大好きだった。そんなシンが東京から北九州の社宅へ引っ越してきた。主な登場人物を紹介しておきます。三ヶ月前に東京から引越しをしてきたお隣のココちゃんは、理解の出来ない方言の通訳者。おどろくような美少女なのに、おそろしいぐらいナマっている十時あやは、気が強くて周りにいる子たちはあやの言いなり。登校班の班長をしている竹ちゃんは、男ばかりの五人兄妹の長男。そして謎の人物であるパック。

転校初日に居なくなったパックを探して体育館の屋根にのぼったシンは、社宅全体の屋根をキャンパスにしたナスカの地上絵にあった有名な猿の絵を見つけた。そこでおもしろいことを思いついたシンは、竹ちゃん、あや、ココちゃんの四人で、みんなが寝静まった深夜に屋根にのぼって、ナスカのハチドリの絵をかいた。すると謎の人物から「猿より鳥へ、真似すなっちゃ」という、ナマった暗号メッセージがシンのもとへ届いた。そしてシンは猿を名乗る人物と会い、社宅に住む子供たちが共有するある秘密を知る。

パックて、なんやねん。読んだ方にはわかってもらえるだろうが、説明出来なーい。まあ、本書を読めばわかるんだけど。

乱暴者のレッテルをはられて友達が出来なかったシンが、パックやココちゃんと出会って、さまざまな経験をして自分から友達を作るというお話です。それと、かつて一緒に遊んでいたが突然姿を消してしまった少女の謎みたいな、ちょっとしたミステリーもあります。

加納さんが児童書を書けばこうなるんだ。悪くないじゃん。もともと人が死なない日常のちょっとした謎を書いていた加納さんだから、違和感なんてまったくなかったです。というか面白かった。とにかくキャラたちが可愛かったー。お気に入りは竹本五兄弟の次男のギザ十。縁がギザギザの十円玉を集めているからこう呼ばれています。こんな感じで愛称で人物たちを性格付けしていたのも上手かった。ふつうなら五兄弟の名前で混乱してしまうのが、竹ちゃん、ギザ十、メガネ、とわかりやすい。加納さんの親切さが光っていました。

時折はさまれる挿絵も情景がはっきりして良かった。久世早苗さん、グッジョブです。温かな気持ちになれて、ちょっと責任とはみたいなことを考える。そしてラストの坂道を下る場面は印象的でした。かつて子どもだったあなたと少年少女のために、というコンセプトにぴったりの爽やかな作品でした。

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加納朋子
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    2007

09.16

「佐藤さん」片川優子

佐藤さん (講談社文庫 か 101-1)佐藤さん (講談社文庫 か 101-1)
(2007/06)
片川 優子

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僕が佐藤さんを怖がっている理由。それは、僕だけが佐藤さんの後ろについているモノを見ることができてしまうからだ。そして佐藤さんは非常にソレに好かれやすい体質らしい。だから僕は、佐藤さんが怖い。ソレとはつまり・・・幽霊である。

今日のは特にひどかった。倒れそうなぐらいに体調を壊した僕は早退した。するとあくる日に佐藤さんから声をかけられ、私の背中に憑いてるモノ、見えてるんでしょ。今憑いてんのどんな人?と訪ねられた。すると幽霊のほうからしゃべりかけられ、自分は安土良介だと名乗り、僕は安土さんを除霊することを手伝うことになった。なんとか成仏した次の日、佐藤さんの背中には守護霊になった安土さんがいた。

佐藤さんに告白してふられた元気者の志村。佐藤さんに告白されたが、佐藤さんのことが好きかわからないが気になる僕こと佐伯くん。そして志村と仲良しになった僕。恋の三角形が出来ています。これが佐伯くんの性格上ぐずぐずしているので中々進展していかない。志村はふられたのに佐伯を応援する快男児で、何かとアドバイスをしたりする。それに陽気でおしゃべりな安土さんも口をだしてくる。とまあ、ゆるい感じでストーリーは展開していく。

同級生の香水が誰かに盗まれて佐藤さんが疑われたり、高原学校に行って二人がくっ付くかやきもきしたり、とのほほん系ばかりだと思っていたら、最後にちょっと重い展開があった。あっと驚くような出来事は起こりませんが、全体的にすごく読みやすく面白かったです。

霊の見える佐伯くん、憑かれる佐藤さん、普通の志村、守護霊の安土さん。彼らが普通の高校生活の日常の中で、普通に悩んだり、前向きな気持ちになって壁を越えようとする。安土さんも何もしてくれなくて、ちょっとだけアドバイスをするぐらい。自分は一人じゃない。自分のまわりには助けてくれる友達がいるし、家族もいる。そんな普通のありがたさに気づかせてくれる良書でした。

これを執筆された片川優子さんは、当時中学三年生だったそうです。そして現在は大学生だって。若いなあ。今後も面白くてワクワクするような本を出してくれるでしょう。これからも楽しみな作家さんです。

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片川優子
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    2007

09.15

「我らが隣人の犯罪」宮部みゆき

我らが隣人の犯罪 (文春文庫)我らが隣人の犯罪 (文春文庫)
(1993/01)
宮部 みゆき

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これまでいろんな方に、この本が面白いとお薦めしてきた。なのに自分が感想を書いていなかったので、これはいかん、と再再読をしました。だからフレッシュさはありません。あしからず。

「我らが隣人の犯罪」
三田村一家が半年前に越してきたラ・コーポだが、右隣に住む橋本美紗子さんちで飼われている犬のミリーがうるさくて、中一の誠は毅彦叔父さんと共にとうとう自己救済に乗り出した。それはミリーをさらってもっとまともな飼い主に飼ってもらおう、という計画だった。

「この子誰の子」
親戚の結婚式に出席をしている両親から留守をまかされ、一人で留守番をするサトシの前に、父の恋人だと名乗る恵美と女の子の赤ちゃんが現れた。恵美がどういう人物か怪しみながらも、サトシは自分の妹かもしれないという葉月にどんどん惹かれていく。

「サボテンの花」
六年一組の二十六人の生徒たちが自由研究のテーマに選んだのは、サボテンには本当に超能力がある、というものだった。ヒステリーを起こした女性教師は登校拒否をし、生徒たちの謎の行動に親からは抗議を受ける。そんな中、権藤教頭は酒飲み仲間である大学生の秋山徹に相談しながらも、生徒たちをそっと守りながらも静観する。

「祝・殺人」
妹の披露宴に出席した駆け出しの刑事である彦根和男は、タイプだと思っていた披露宴のエレクトーン奏者をしていた日野明子から、話を聞いて欲しいと持ちかけられた。それは管内で十年ぶりに捜査本部が設置された、晴海荘バラバラ殺人事件に関することだった。

「気分は自殺志願」
駆け出しの小説家である海野周平は、平日の昼間に近くの庭園をぶらぶら散歩するのを日課にしている。そのうち顔なじみになった老紳士の中田義昭から、私を殺して欲しい、つまりは絶対にバレることのない自殺の方法を考えていただきたい、と持ちかけられた。事情を聞いた周平は、自殺の方法ではなく、違う方法で中田を救う方法を伝授する。


多くのブロガーさんや解説で絶賛されているのは「サボテンの花」です。確かに面白いし、温かな気持ちになれる。だけど個人的にイチオシしたいのは、表題作である「我らが隣人の犯罪」だ。オール讀物推理小説新人賞をこの作品で受賞し、デビューになった作品になる。これがすごく面白いのだ。隣の家で飼われているスピッツがとにかくやかましい。両親は耳栓をして寝るし、少年はヘッドホンをして寝るぐらいにうるさい。文句をいってもいっこうに言うことを聞かない上に、逆にちょっとしたことで怒鳴りこんでくる始末。犬は散歩をしてもらえないからストレスがたまっているのだろうと、叔父さんの計画にのっとって行動を始める。天井が続いているので女性が留守の間に忍び込もうとすると、預金通帳とハンコを見つけたり、内緒にしていた病弱な妹にばれると、妹は鍵の隠し場所を知っていて、玄関から入れることがわかったりする。なんかすべてが行き当たりばったりだけど、結局は上手くいく。しかも病弱だった妹が一番張り切っていて、気づけば元気になっている。こういうのがとにかく面白くて、それにオチも素晴らしいものがあった。もうめっちゃ好きです。長編では「火車」が飛びぬけているが、短編では「我らが隣人の犯罪」がダントツに面白い。

長々と感想を書いたが、他の短編の感想を書いていなかった。今更書くと蛇足っぽいことになりそうなので止めておこう。「この子誰の子」「祝・殺人」「気分は自殺志願」も面白いです。この短編集は読んで損なしです。初期作品に共通することだが、少年たちがすごく魅力的で、まだ未読だという方にぜひお薦めしたい一冊です。

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宮部みゆき
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    2007

09.15

「悪夢のエレベーター」木下半太

悪夢のエレベーター―Nightmare after a Secret悪夢のエレベーター―Nightmare after a Secret
(2006/07)
木下 半太

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レストラン・バーで副店長をする小川順は、送別会でベロベロに酔った愛人をマンションの部屋へ送ったところで、妻からの陣痛がはじまったという電話を受け取った。そして小川が気がつくと、見知らぬ男女三人とエレベーター内に閉じ込められていた。調子の良いヒゲ男、オタク風メガネ、黒ずくめの魔女のような女。彼らは自己紹介を始めたり、秘密の暴露大会をしだしたりと、緊張感がまったくない。彼らのペースに巻き込まれる小川だが、彼ら三人にはある目的があった。

面白いのだがそれ以上でも以下でもない。ただ軽すぎて、何かを訴えかけるというものがまったくない。はっきり言えば、中身のないエンタメ。もっと緊迫感のあるものだと思っていたが、ドタバタとしながら本筋がどんどんずれていく、なし崩しなC級コメディという代物。

この本やこういったジャンルを否定するつもりは無い。気疲れのしない読書や、気軽に暇つぶしをしたい方には喜ばれる本だろう。だけど自分にとっては無用な時間を割いてしまったというのがほんとのところ。本書で知ったがブログでアナザーストーリーらしきものを展開しているそうです。興味がある方は、本書を手に取るまえにそちらをチェックした方がいいだろう。そういう自分は見る気もしないけど。軽いものが読みたい方はどうぞ。お薦めはしませんが。

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その他の作家
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    2007

09.14

「ねこのばば」畠中恵

ねこのばば (新潮文庫)ねこのばば (新潮文庫)
(2006/11)
畠中 恵

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「しゃばけ」「ぬしさまへ」ときて、やっと「ねこのばば」を読みました。今回も前作に引き続き短編集です。ちょっとおさらいをしておこう。大店である長崎屋の一人息子である一太郎は病弱で、両親は異常と言える程に一太郎を溺愛している。そんな一太郎の側にはいつも仁吉と佐助という兄やがいるが、実はこの二人は白沢と犬神という妖で、大妖であった祖母の血をひく一太郎には人には見えない妖が見えるのだった。一太郎の身の回りで起こる事件、あるいは日限の親分が持ち込む事件を、一太郎は妖たちを使って情報を仕入れて謎を解く。とまあこんな感じです。

「茶巾たまご」
体が弱くて寝たきりが当たり前の一太郎だが、近頃は元気な日が続いてごはんもおかわりをしてもりもりと食べている。それ以外にも近頃長崎屋に起こった幸運から、福の神がいるに違いないとなり、新参者の下男の金次じゃないかとなる。数日前に一太郎の腹違いの兄である松之助に海苔問屋の大むら屋から縁談が持ち込まれ、断ったものの待ち伏せをされるが、相手側は松之助が誰かを間違い大恥をかくという出来事があった。大むら屋の奉公人であった金次は主人側を笑ってしまい、行き場がなくなり長崎屋に拾われることになった。そんなある日、大むら屋の娘が何者かに殺されたと、日限の親分が金次を訪ねにやってきた。

「花かんざし」
外出した一太郎一行は身なりが裕福そうな迷子の少女を拾うが、少女の身寄りの者が見つからずに長崎屋へ連れ帰った。少女は於りんという名前以外を告げず、身元がわかっていざ帰るとなった時に、少女は「家に帰れば殺される」とこぼした。少女を連れて彼女の家である材木問屋の中屋を訪問すると、主人が出迎えずに叔父にあたる正三郎が対面し、一太郎たちが帰る間際には、少女の乳母であるおさいが水死体で発見された。

「ねこのばば」
猫又が広徳寺の寛朝に閉じ込められ、一太郎一行は猫又を助けるために広徳寺へ向った。正直に猫をこちらに渡して欲しいと打ち明けてみると、寛朝からは交換条件を持ち出された。それは寺内で殺された僧の広人さんの犯人探しと、寄進された金子の消えた行方と、境内の木の枝にぶら下げられた錦の巾着の謎を解く、というものだった。

「産土」
佐助こと犬神のサイドストーリー。これは先入観なしで読んでもらいたいので、内容紹介はしないでおきます。

「たまやたまや」
幼馴染の栄吉の妹であるお春に縁談が持ち込まれたと聞いた一太郎は、嫁ぎ先となる松島屋という献残屋の跡取り息子である庄蔵の噂を、長崎屋を抜け出して自身で調べることにした。庄蔵という男に関しては妙な噂ばかりで、借金やら女やら、縁談を持ってくる男とはとても思えないものばかりだった。そこへ偶然お武家に追われた庄蔵が現れ、一太郎もまた庄蔵を追ってみると、ぽかりと殴られ、気がつけば庄蔵と共にどこぞの部屋に閉じ込められていた。


面白かったのは表題作である「ねこのばば」と「たまやたまや」の二作品。どちらも一太郎が長崎屋を出て、妖たちを使わずに自身で推理をしていくというもの。「しゃばけ」で妖怪封じの護符を分けてもらうのに、大金をぼったくられた寛朝とのやり取りが面白く、また、お春の旦那になるかもという庄蔵との話し合いが面白かった。それにラストの切なさにぐっとくるものがあり、ああ、畠中さんもこんなのを描くんだなと新鮮でもあった。

佐助のサイドストーリーである「産土」は、トリックの種類について触れなければ書けないが、これまでの作品とは雰囲気のまったく違う作風だった。こんなのもありでしょう。

それ以外の「茶巾たまご」「花かんざし」は、いつも通りの展開の作品。これがなくっちゃこのシリーズは始まらない。鳴家や屏風のぞきといった妖たちのボケた行動や手柄自慢が楽しめる。やっぱ鳴家はかわいいっす。キャラクター、世界観、すべてが魅力的で、シリーズ三冊目にしても飽きのこない作品でした。

畠中作品は完全に文庫待ちなので、続編はいつ読めることやら。次は積読してある「百万の手」を読もうっと。これもいつになるやら。ははっ。

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畠中恵
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    2007

09.13

「モデラートで行こう♪」風野潮

モデラートで行こう (ピュアフル文庫 か 1-2)モデラートで行こう (ピュアフル文庫 か 1-2)
(2007/07)
風野 潮

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家のまん前にある男子校が今年から女子を受け入れるようになったため、両親に無理やり受験をさせられた奈緒。彼女が入学式で出会った、ノリコ、真琴、恵美と共に、吹奏楽部に入部した一年間。...「一年目 四月から三月」
お世話になった三年生が卒業。新入生の入学式がすんだあと、中庭に響きわたるマーチングバンドの演奏。奈緒、ノリコ、真琴、恵美たちの演奏に誘われ、たどり着いたのは音楽室。花蓮、裕子、綾香、弥生、が吹奏楽部に加わった。...「二年目 四月から三月」

二部構成になった少女たち八人のブラバン青春小説です。よくある、初めはバラバラだった少女たちが大会を目指してまとまっていき、コンクールで優勝をねらう、という話ではありません。吹奏楽部に入部した少女たちが、自分のパートである楽器が決まり、高校野球の応援や文化祭、クリスマスコンサートといったイベントを体験しながら、二年間(後輩は一年間)をすごしていく。登場人物それぞれの目線に次々変わり、ストーリーが展開していきます。

登場人物を紹介しておきます。まずは小柄で可愛らしい奈緒。入部当初はお兄ちゃんが部長で、副部長である中元先輩に憧れている頑張り屋さん。ちょっと小太りで古風なおかっぱ風の髪型をしたノリコは、口ずさまないとリズムを刻めないリズム感なしのパーカス。すらりと背の高い美少年系の真琴は、父がプロ奏者でCDも出したことがある経験者。同姓でも見とれてしまう美少女の恵美は、過去に起こった出来事が原因でしゃべれない。

次に後輩組。体が大きくておばさんみたいな容姿の花蓮は、これまでの自分を変えたいと思っている。宝塚歌劇が大好きな裕子は、同性である真琴に憧れている。自分のことをなんとなく地味だと思っている綾香は、他人と自分を比べて壁を作ってしまっていた。ものすごく見た目が可愛い弥生は、土佐弁をバリバリ話す元気者。

彼女たち普通の高校生が、部活を中心に普通の日常をおくっていく。ときには今の自分に悩んだり、憧れの先輩に淡い恋心をいだいたり、お世話になっていたのがある日とつぜん好きだと気づいたりと、青春を謳歌しています。そしていつの間にか立派な先輩になった少女たちに対して、後輩である少女たちが同じような道をたどっていく。

あの部を辞めようかと悩んでいた少女が、馴染めない後輩を気づかう姿とかに、ああ、成長したなあ、なんて一年生から二年生になることによって楽しめる。それに先生に内緒にしたサプライズを計画して実行したりと、「ビート・キッズ」にもあったワクワク感が楽しめる。

吹奏楽を経験した方も、自分のように未経験でまったく吹奏楽を知らないという方も、気軽に手にとって楽しむことが出来るでしょう。最後に優勝しなくてもいいのだ。一生懸命一つのことに打ち込んで、それでいて楽しむことが出来ればそれが最高の幸せなのだ。そしてオマケがあればもっといいのだ。自分にとってもこの読書がすごく楽しくて心の洗濯が出来たのでした。お薦め!

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風野潮
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