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    2007

10.31

「サッカーボーイズ 再会のグラウンド」はらだみずき

サッカーボーイズ―再会のグラウンドサッカーボーイズ―再会のグラウンド
(2006/06)
はらだ みずき

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桜ヶ丘FCは新チームになり、遼介はキャプテンとして練習試合に挑むが、連敗が続いて監督の罵声が飛ぶ。そこで監督の指示で多数決をとってキャプテンを決めることになり、地域の選抜チームにも選ばれ活躍した、点取り屋の星川良が新キャプテンに選ばれ、遼介は副キャプテンを命じられた。そして新学年を迎えた四月、桜ヶ丘FCに新しい仲間が加わった。新加入した巧のポジションは攻撃的MF。それは遼介がこれまでやってきたポジションだった。その日、チームにはもうひとり新たに入ってきた人がいた。小暮という見知らぬコーチ。監督をサポートするという新しいコーチは謎の人物だった。

翼くん的な作品かと思っていたが違っていました。少年たちの気持ちと指導者の気持ちが交錯する人間ドラマが描かれた少し深めな作品でした。勝つことを求めて怒鳴る監督に、まとまらないチーム。これまでキャプテンだった少年が壁にぶち当たり伸び悩む。片や点を取って勝ちたい少年は、チームメイトの不味さに当り散らす。そこへサッカーの楽しさを解いていたコーチが監督に就任するが、雰囲気は変わるものの中々勝てない。しかしサッカーの楽しさに気づいた少年たちは…。

もちろんサッカーの楽しさも描かれていて、サッカーをやったことがある方なら、本読みじゃなくても当然楽しめます。一応括りは児童書だけど、本読みの大人でも充分楽しめる作品になっていました。サッカーは子供たちだけのスポーツではなく、大人も楽しめるスポーツである。ボールがあれば何歳になっても楽しめる。そんなメッセージがたっぷり詰まった作品でした。男性の方が楽しめる作品ですが、お子さんのいるママさんにも楽しめるだろう作品でした。そしてもちろん、少年少女にも。ネタバレしそうなので、本書についてはこの辺で止めておきます。

ああ、ドライブシュートを練習したあの頃が懐かしい(出来なかった)。オーバーヘッドキックも(落ちたら痛かった)。それとツインシュートも(ボールは揺れず)。翼く~ん、岬く~ん。

続編もチェックします。

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はらだみずき
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    2007

10.31

10月の本代の合計金額

計7.306円也


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自分への戒め
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    2007

10.30

「空を見上げる古い歌を口ずさむ」小路幸也

空を見上げる古い歌を口ずさむ (講談社文庫 (し80-1))空を見上げる古い歌を口ずさむ (講談社文庫 (し80-1))
(2007/05/15)
小路 幸也

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図書館で借りた「高く遠く空へ歌ううた」から、読み始めるところでした。読む前に気づいて良かった。そしてこの本を買っておいて良かった。

みんなの顔がのっぺらぼうに見える。息子の彰がそう言ったとき、父は彼のことを思い出した。かつてのっぺらぼうを視てしまう少年がいたことを。そして姿を消してしまった少年が、兄だったことを。20年前に兄は言った。いつか、お前の周りで、誰かがのっぺらぼうを見るようになったら呼んでほしい。母のもとに毎年届く年賀状を頼りに、20年ぶりに弟は兄と再会した。そして兄の口から、のっぺらぼうにまつわる驚くべき話を初めて聞かされる。

場面がかわって少年時代の兄、恭一の目線で語られる。

パルプの匂いが常に漂うパルプ町で生まれ育った、キョウイチが小学五年生の時、原因不明の高熱にうなされたあと、急にすべての人の顔がのっぺらぼうに見えるようになってしまった。そんな風に世界が見え出したその年の夏、キョウイチは六角交番のサンタさんの拳銃自殺を目撃する。そしてサンタさんの横に、顔の見えない白いシャツの男がいたことも。(のっぺらぼうに見えるから)さらにその夜に、親友のヤスッパが赤いノートと共に失踪した。その後、パルプ町では次々に馴染みのある住人たちが死ぬ。のっぺらぼうに見えることを周りの誰にも言えないキョウイチだが、友人であるアサミ、ケイブン、カビラ、シホらには打ち明け、少年たちはヤスッパの行方を捜す冒険に出た。

かなりファンタジー色が強いですが、何故のっぺらぼうに見えるのか、という疑問を、そのまま放置していたのが良かったです。これを理屈づけて説明されるとうざい。(勝手な好みです)それに稀人、解す者、違い者が、何故生まれてしまうのかも明かされていない。小路さん、ナイスです。不思議は不思議なままが一番。(勝手な好みです)

かつて少年だった大人が昔を語る、という手法も、ノスタルジックで味わいのある雰囲気を作っていました。少年たちが住むパルプ町が一つの大きなコミュニティで、少年たちにとってはその世界がすべて。パルプ町駅前交番ではなく六角交番といった、その地域ならではの呼び名で統一されていたのも良かったです。

この本が小路さんのデビュー作ですが、初めて人が死ぬ小路さんを読みました。だけど暗さというものがなく、力のない少年たちが精一杯走り続けている、といった印象が強かったです。それに、ヤスッパがいなくなっても、少年たちが大騒ぎをせずに、普段と変わりない生活を送っている。この少年たちの描写に、子供の本質をついているなあ、と妙に納得してしまった。

次は「高く遠く空へ歌ううた」を読みます。まったく別物語みたいですが、どういう風に繋がっているのか、読むのが楽しみです。やっぱ順番は大事ですからねえ。

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小路幸也
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    2007

10.29

「蛇にピアス」金原ひとみ

蛇にピアス (集英社文庫)蛇にピアス (集英社文庫)
(2006/06)
金原 ひとみ

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「スプリットタンって知ってる?」そう言って、男は蛇のように先が二つに割れた舌を見せてきた。そして数日後、ルイはその蛇男ことアマと二人でパンクな店Desireに来ていた。そこで顔中をピアスで武装した彫り師のシバさんに、彼女は自らの舌にもピアスを入れてもらい、さらに刺青を彫る、というように、身体改造をしていく。ルイはキレると相手を殺しかねないアマと同棲しながらも、マッドなサディストのシバとも濃厚な関係を持つ。少女は暗い世界で身を燃やしたい。アンダーグラウンドの住人でいたいと願っていた。

いまさらと思いながらも本書を読んだ。とにかく冒頭が痛いのだ。1ページ目から、イタタッという描写。耳に穴をあけるのも怖~と思うのに、さらに舌に穴をあけるなんて考えられない。それを最終的には、残った先端部分を切り離して蛇の舌の完成ってねえ。それらの段階を踏む描写が痛すぎて、目を背けてしまった。

しょっちゅう死にたい、殺されたいと思いながら、痛みで生を確認する少女。この壊れっぷりや、何を考えているのかわからないところが、本書の読ませどころだろう。渋谷の路上で暴力団員の撲殺で死亡、という新聞記事をルイは見つけ、アマがたこ殴りした男だと知り、アマにだまったまま守ろうと生活していく。これはわかる。だけど、背中に刺青を彫った直後から拒食症になってしまう。そしてアマが突然失踪し、殺されていたことをルイは知るが、その後にアマを殺した犯人が誰なのか気づくのだが、その時ルイが取った行動はさっぱり理解が出来ない。若さで片付けられない何かがあるのだろうが。

これらの出来事で、少女が何を思い、何故こういう行動を取るかは、まったく明かされていない。少女だけでなく、アマやシバの危うさや脆さ、狂気や死にたいする思いなど、理解は出来ないけれど、何か心に響く物がありました。彼女が今後どうなろうと知ったことじゃない。だけど、ずしんと残る余韻がありました。それも重さを引きずるような。

かなりヘビーで、共感なんてこれっぽっちも出来ないが、本の薄さを感じさせない一冊でした。

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    2007

10.29

「神野悪五郎只今退散仕る」高原英理

神野悪五郎只今退散仕る神野悪五郎只今退散仕る
(2007/07)
高原 英理

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夏休みの一ヶ月間を、祖母の所有する黒間屋敷で、妹と二人きりで過ごすことになった夕凪紫都子、十三歳。その屋敷は夜になると妖怪たちが出るわ出るわ。しかし、怖がりの妹をなだめつつ、紫都子は難なくかわして一夜を過ごす。それら嚇しは、五十年前に祖母が受けたものと同じ試練であった。妖怪たちに豪傑だと認められた紫都子は、白辰という大妖怪に寄生した女妖を取り去って欲しいと頼まれた。それはかつて祖母が失敗し、その場しのぎに封印した怨霊だった。それを祓うために紫都子たちは、三千世界の大魔王、神野悪五郎を甦らせる。

内容紹介だけ読むとワクワクしそうなお話ですが、実際はかなりユルイお話でした。最初から児童書やラノベだとわかっていれば、面白く読めたのだろう。だけど、大人向けの本なんだよ、こ・れ・が。児童書なら、読む前から結末が見えているのは悪くない。子供だましのストーリー展開もちゃちっぽいが、児童書なら許容範囲。(子供を悪く言ってません)それなのにこの本は大人向けで、220ページほどで1.700円というお値段は如何なものか。(図書館で借りたけど)

それに、神野悪五郎がしょぼいーーーー! どこが大魔王やねん。

このブログは褒めを基本にしていて、文句を言わない方針をとっています。
だけど、これは酷いなあと思ったので、あえて書いてみました。

もう一つ、参考になるだろうから書いておく。
著者の経歴に、澁澤龍彦、中井英夫の選により第一回幻想文学新人賞受賞でデビューとあった。誇れる経歴だと思うのだが、それが何故こんな…??

読みやすいし面白くない訳でもない。ただ、自分にとって腑に落ちない作品であった。
裏切られた感の残る作品でした。

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    2007

10.28

「頭のうちどころが悪かった熊の話」安東みきえ

頭のうちどころが悪かった熊の話頭のうちどころが悪かった熊の話
(2007/04/02)
安東 みきえ

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表紙が気になり、図書館で借りてみました。とてもかわいらしい七つの寓話(ぐうわ)物語です。

「頭のうちどころが悪かった熊」
気がついたとき、熊は頭をおさえていた。どうやら頭をぶつけたらしいということはわかったけれど、その他のことはさっぱり思い出せない。いつもレディベアが側にいたような気がしたので、熊はレディベアを探すために歩きだした。

「いただきます」
トラがないた。ガオッと鳴かずに、メソメソ泣いた。通りかかった旅人がたずねると、さっきキツネを食べ、わたしの腹の中でキツネが泣いているという。そのキツネもニワトリを食べたと泣き、ニワトリもまたトカゲを食べたと泣く。

「ヘビの恩返し」
ヘビの子はどうやったら自分の口より大きな卵を飲みこめるのか知りたい。教えて欲しい父さんヘビはカコの実を食べてしまい、過去しか考えられないようになってしまった。母さんヘビはミライの芽を食べてしまった。教えてくれない家族にヘビの子はぐれてみることにした。

「ないものねだりのカラス」
カラスがきれいなシラサギを見つけ、友達になれたらどんなに嬉しいだろうと思う。しかしカラスはひねくれた言葉しか言ったことがなかった。友達になろうよ、その美しい言葉を話すためにカラスは努力をするが。

「池の中の王様」
おたまじゃくしのハテは、何故起きなければならないのか、何故決まりごとを守らなければならないのか、何故、何故と疑問を持つ。そして目をつむりさえすれば、世界はなくなる。自分の目でしか見えない。ぼくの世界ではぼくが王様だと思い旅にでた。そして寂しがり屋のヤゴと出会い友達になった。

「りっぱな牡鹿」
恋わずらいのヤマアラシ、潔癖症のアライグマ、飛べないことを嘆くダチョウ。なんでも悩みを相談される牡鹿のホーイチは、ある日突然に決心した。意味なんてもの、もともとないんだ。生きていくのに、意味なんていらないんだ。意味のあることは、いっさいしないことにホーイチは決めた。

「お客さまはお月さま」
友達はみんな冬眠してしまったが、不眠症の熊は眠れずに、一人ぼっちで冬を越さなければならなかった。洞穴にある家に向う途中、熊は三日月がついてきてくれることに気づいた。そして三日月と友達になるが、熊が家の外に出ている間に、洞穴の上から岩がすべり落ちて入り口を塞いでしまい、三日月が閉じ込められてしまった。


記憶をなくした熊は最愛の人と再会して愛を知り、キツネを食べたトラは巡り巡って食物連鎖を知り、ヘビの親子は家族の絆を感じ、バカなカラスはないものねだりの虚しさに気づかず、おたまじゃくしは友達を得て世界を知り、りっぱなツノを持った牡鹿は意味を考え意味の必要を覚り、不眠症の熊は友だちのために奮闘する。全篇とも動物たちが人生の教訓を教えてくれる、とてもキュートな一冊でした。

カラスの話を読んで、何でもすぐに欲しくなる自分を反省。

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その他の作家
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    2007

10.27

「この人と結婚するかも」中島たい子

この人と結婚するかもこの人と結婚するかも
(2007/09/05)
中島 たい子

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「この人と結婚するかも」
美大の学食の隅で、働いている美術館で、仕事帰りのスーパーで、「この人と結婚するかも」っていう節っちゃんの直感はいつもアタらない。これといって好みの男性像もなく、その上出会いもない。ただフトしたきっかけでときめくのだが、積極的にアピールする事もしないで、そのまま終わってしまう節ちゃん。そんな節ちゃんが通っている英話教室にケンという男が現れ、ものの見事に結婚するかも病に掛かり、期待と諦念の間で心が揺れる。

誰しもが一度や二度は思う、結婚するかも、というなんとなくの漠然とした直感。節ちゃんはいいと思うと同時に毎回感じてしまい、何もすることがないまま玉砕してしまう妙齢の女性。本人にしかわからないが、かなり疲れるだろう節ちゃんのあたふたぶりと妄想力がすごく可愛くておかしかったです。

小学生時代からの親友の春子ちゃんと千穂ちゃん、美術館のオーナーである漫画家の浅井みつる先生と、出てくる人物たちがみんな魅力的。そんな彼らとやり取りしながらも、ケンと微妙な距離が埋まらない節ちゃん。こういうダメ系の女性を描くのが中島たい子さんは上手い。そしてラスト一行のセリフに思わずニヤリとし、温かな気持ちになれたのだった。男ならこんな風に思われたいものだ。えへん。


「ケイタリング・ドライブ」
一人で二十四人分の料理作って、一人で荷物を運んで、一人で清里までライトバン運転して。できなくはない、とは言ったけど、真樹夫がどんどん勝手に決めてしまって、山荘を借り切ったパーティーで料理をすることになった料理研究家の野島サトル。真樹夫の妹、美絵ちゃんが可愛い子で、おれに気がある、と思ったのはつかの間の出来事で、美絵ちゃんは元カレとよりを戻してしまった。自分が勘違いしたことを彼女に知られてしまうのは、イタい。だから彼女の兄貴のパーティーのケイタリングも断らなかった。サトルは目的地へ向かいながら、妄想し、自問自答する。

たい子さん初の男性主人公が自分勝手な毒を延々と吐いているだけなのだが、これがとてつもなく面白い。噛めば噛むほど味が出るような作品で、主人公の無茶苦茶な語りを読んでいくと、ほとんどが寄り道なんだけど、彼の半生や、本当に大事にしなければならない物が見えてくる。そしてものすごく焼き魚が食べたくなる。ダメな男性に妙に共感してしまった作品でした。

これまで読んだ中島たい子さんの中で、一番好きな作品でした。すっごく良かったです。これは五点満点中、十点をあげたい。図書館で借りたが、この本は買うべきでした。後に買いましたとも。偶然見つけた、サイン本を。


中島たい子さんのサイン。

たい子

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中島たい子
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    2007

10.26

「犯人に告ぐ」雫井脩介

犯人に告ぐ犯人に告ぐ
(2004/07)
雫井 脩介

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児童誘拐事件が起こり、神奈川県警の警視、巻島文彦は管理官でありながらも現場に出て陣頭指揮をとるが、犯人であるワシと、ニアミスをするものの逃げられ、人質が殺されてしまった。さらに、記者会見で巻島は大失態を犯してしまい、地方の所轄へ飛ばされてしまう。
それから数年後、川崎で起こった連続児童殺人事件の本部長になった曾根に、巻島は呼び戻され、特別捜査官のポストに命じられた。犯人が自己主張のためにメディアを使って自らを主役に仕立て上げる劇場型犯罪に対し、巻島がメディアに露出して犯人に呼びかけ、闇に隠れた犯人をおびき寄せる捜査。劇場型捜査と題された公開捜査が始まった。

巻島は尊敬するデカ長である津田巡査部長を参峰につけ、同じ苦汁を嘗めたかつての部下である本田警視らと、テレビに出演して得た情報を選り分け捜査していく。巻島ははたして犯人であるバッドマンを誘き寄せることが出来るのか。

かつてメディアに叩かれた主人公が、メディアを利用して捜査をしていきます。警察モノとしても読めますが、メディアの内幕としても読めます。放送の視聴率が大事なテレビ局や、スクープを狙うライバル番組のキャスター。そのキャスターをどうにかしようと、捜査情報をリークする警察幹部。

はっきり言って、情報を流す巻島の上司や、ハイエナのようなキャスターにはうんざりしました。けれど、巻島はただではやられない。ガツンとやっちゃうのだ。彼らを罠に嵌めてやっつける場面では、無責任にもやっちゃえと応援してしまった。これには溜まっていたムカムカがスカっとして、溜飲を下げることができました。

犯人の姿が見えないので、警察サイドの風景しか見えない。だけど、巻島自身の存在感や、味のある津田長。←お気に入り。かつての苦いワシ事件。巻島を襲う勝手な世論や、巻島を出し抜こうとするライバル放送局など、犯罪捜査とは違う別場面で、上手く読ませていく作品でした。そして、「ビターブラッド」では前面に出ていたニックネームも、若き日の巻島がヤングマンと呼ばれていたり、チョロ出だが重要な役どころのチョンボだったりと、本書にも片鱗がありました。

ラストはこう来たかという展開で、切なさがあるものの、わりとアッサリした締めくくりでした。切ない部分は文句がないんだけど、アッサリ部分はもう少し書き込んで欲しかったです。これまでが重厚だったので、ちょっと物足りなかったというのが、正直な感想。しかし、それを差し置いても面白かった。上下二段の文章だけど、慣れてしまえば読みやすかったです。

雫井さんは面白いっすね。今後、他の作品にも手を出しそうです。だけど他の本も分厚いのがネックなんだよな。調べたら「火の粉」が評判いいみたいですね。ああ…、だけどこれも分厚い。

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雫井脩介
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    2007

10.25

「あなたの呼吸が止まるまで」島本理生

あなたの呼吸が止まるまであなたの呼吸が止まるまで
(2007/08)
島本 理生

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どこまで内容に触れて良いのやら、すごく気遣いのいる作品だ。一応気をつけますが、ネタバレしてるかも。この作品は不評な意見が多いみたいですが、自分は面白く読めましたし、島本さんの好き度も上がりました。

舞踏家の父と暮らす12歳の少女、野宮朔。将来の夢は、作家になること。母は舞踏に情熱をそそぐ父に嫌気がつのり、家を出てしまった。その父は夜遅くまで戻ってこないこともしばしば。朔は父が家へ戻るのを待つのに、渋谷のロフトで見つけた、外国の童話の本みたいな表紙のノートに、ラジオを聴きながら物語を書くのが、毎晩の密かな楽しみだった。朔は学校でも友達と呼べるのは、鹿山さんただ一人。そして田島君へのほのかな思い。
そんな朔は父の知り合いの佐倉さんと二人きりで話し、年上の優しさに触れた彼女は、この人だったら私の寂しさを、きっと分かってくれる。助けてくれると思うが…。

主人公が小学生なので語りが作文調だったのが、とても良い雰囲気を作っていました。少女の母に捨てられた寂しさや、居て欲しいときに居ない父への思いなど、彼女の孤独への恐怖がこちらに伝わってきました。

少女は父と二人暮らしなので、父についてよく大人の集まりに顔を出している。だから、考え方や口調が大人っぽくなって、同級生たちの低度の低い会話や考えに馴染めずに、鹿山さんと田島君としか話すことが出来ない。家でも学校でも孤独を感じている少女は、すごく切なーいのである。

そんな少し大人に近い少女だが、性に関しては子供らしく無知で、ほとんどと言ってよいほど理解をしていない。そこを優しくて好感を持っていた大人に突然裏切られて、彼女はどん底に落とされてしまう。この部分が好き嫌いの別れている部分なのだが、自分は小説だと割り切って読めました。どろどろ系を描く作家なら最後まで行くのだろうが、手前で止めていたのが島本さんらしいと言えばらしい、とさえ思ってしまった。

その結果少女は壊れていくのだが、彼女の心の揺れや誰にも言えない辛さは、読んでいて同じように辛かったです。しかし、そこから自分で立ち直ろうとする、少女の姿が健気でいじらしい。だけど、少女に与えた側の大人は、どうしようもない馬鹿でクズ。本の帯に復讐と書いてあったが、もっと大きな鉄槌を加えても良いように思いました。

父親も馬鹿な大人で、もっと少女と時間を過ごすべき。自分の勝手な舞踏のイメージが、全身白塗りでクネクネなんだけど、少女を放りっぱなしにするまで熱中するのは、如何なものかと思う。せめて連絡ぐらいはしろと叫びたい。

とにかく少女が可愛そうなお話なんだけど、田島君の優しさに少しは救われました。彼のことを、もっと好きになれば良かったのに。寂しさに付け込まれる少女。それを埋めてやったんだと思い込んでいる馬鹿な大人。その悪いことをしたと気づいていない大人にムカついたけど、こういう大人がいることも確か。

少年少女のみなさん、大人の甘い言葉には気をつけましょう。

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島本理生
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    2007

10.24

「探偵ガリレオ」東野圭吾

探偵ガリレオ (文春文庫)探偵ガリレオ (文春文庫)
(2002/02/10)
東野 圭吾

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旬やからねえ。

警視庁捜査一課の草薙俊平は、説明のつかない難事件にぶつかったとき、必ず訪ねる大学時代からの友人がいる。帝都大学理工学部物理学科助教授の湯川学だった。草薙が湯川を訪ねる5つの難事件を描いた連作短編集です。

「燃える もえる」
夜中になると殆ど車も通らない静かな町に、五人の少年たちの大声がこだまする。その時突然、少年の後頭部あたりから炎が上がり、瞬く間に彼の頭部全体を炎が覆い、少年は一瞬で焼死した。

「転写る うつる」
自然公園のひょうたん池で、アルミで出来た金属マスクを拾った少年たち。彼らはこれを使ってデスマスクを作り、所属しているクラブの展示品の一つとして出品した。それはこの夏に行方不明になった男の顔に酷似し、その後の捜査で池の中から男の腐乱死体が発見された。

「壊死る くさる」
大学生の青年が五ヶ月ぶりに自宅に立ち寄り、風呂場の浴槽内で変死した父親を発見した。一見ただの心臓発作のように思えるのだが、死体の胸には痣があり、灰色になったその部分は細胞が完全に壊死していた。つまり、その部分は瞬間的に破壊され、皮膚が腐っていた。

「爆ぜる はぜる」
ビーチマットに上半身だけを乗せ、波間に漂って女性はのんびり過ごしていた。それが突然、轟音と共に黄色い火柱になって姿が消えてしまう。爆死だった。一方、帝都大卒業生の青年が、アパートで他殺死体になって発見された。

「離脱る ぬける」
独身者向けの賃貸マンションで、女性の扼殺死体が発見された。容疑者はすぐに浮上するが、死亡推定時刻には、多摩川の近くに車を停めて休んでいた、とアリバイを主張し、容疑を頑なに認めない。そこへ、自分の息子が幽体離脱をして、そのアリバイ通りの光景を見た、という男が現れた。しかも、その直後に息子が描いた絵には、容疑者の車がはっきりと描かれているというのだった。


一応ミステリなんだろうけど、しょっぱなから謎解きの参加は諦めました。トリックや事件の謎の解明がおもいっきり理系で、レーザーや超音波、金属の化学反応と言われてもねえ。自分には小学生時代に分数の計算でお手上げだった過去がある。だから湯川の答えを聞いても、ああ、そうなの、という具合で、理解が出来てるんだか出来てないんだか、すごく中途半端にふーんと肯くしかなかった。

だけどそれ以外のストーリーや、湯川と草薙のやり取り、犯人の目線で描かれる描写などは面白く読めました。そして今回テレビ化されたので途中まで観たが(何故、途中までやねん)、やはり、ふーんというぐらいの感想しか持てなかった。福山くんの湯川も普通だった。かっこ良かったし、いつまでも若いなあ、柴崎コウも可愛い、なんて関係のない感想はたんとあった。しかし、そこで気になってしまったのは、湯川のモデルになった佐野史郎氏の今の気持ち。ほっとけって??

熱狂するような面白さは感じませんでしたが、続編の「予知夢」も読むでしょう。テレビの最終回と、自分の「予知夢」読破は競争なのだ。小さい?

そして映画化って、やっぱしな。



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東野圭吾
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    2007

10.23

「冠・婚・葬・祭」中島京子

冠・婚・葬・祭冠・婚・葬・祭
(2007/09)
中島 京子

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タイトルの「冠・婚・葬・祭」のとおり、成人、結婚、葬式、お盆に纏わる、それぞれの人間模様を描いた4つの短編集です。すべての短編が面白かったです。

「空に、ディアボロを高く」
菅生裕也は、勤めていた地方新聞社を辞職することになった。そして二年暮らしたこの土地と今日でさよならという日に、自分が書いてしまった誤報道記事がすごく気になりだした。あの日、成人式の行われる会場で中止になってしまったストリートパフォーマンス大会。そのイベントだと勘違いしてしまったジャグリングをしていたあの大道芸人のことを。

「この方と、この方」
菊池マサ枝六十八歳は、三十年間、知る人ぞ知る優秀なお見合いおばさんとして生きてきた。しかし、もう世間は自分を必要としないことを感じ、密かに引退を決めていた。そこへ偶然にも彼女のところへどうしても見合いが必要だという二枚の見合い写真が持ちこまれた。マサ枝は気が進まないものの最後のお見合いを引き受けることにした。

「葬式ドライブ」
佐々木直之は、半日のドライブを一緒に過ごしたおばあちゃん、宇都宮ゆかりさんの葬儀に参列した。直之がおばあちゃんと出会ったのは三ヶ月前。会社の上司の命令で、付き合いのあった工務店の創業者の告別式に、グループホームに入所しているおばあちゃんをお連れしてお世話したのがきっかけだった。

「最後のお盆」
母がなくなって早くも三年が経った。母の生家である古い日本家屋は娘三人が相続し、次女の皐月夫婦が管理していたけれど、夫の海外赴任が決まり土地も屋敷も手放すことになった。そこであの家も見納めだから、夏休みを利用して最後にみんなで集まって、昔やったお盆をやることに決まった。だが、いざその伝統行事をやってみるとなると、その頃幼すぎてやや鮮明だが心もとない。いちばんよく覚えているはずの長女の史江は、嫁ぎ先の新盆があるので来れない。二組の姉妹夫婦は、手探りでお盆をすることになった。


「空に、ディアボロを高く」は、二十歳の子の若さや、夢への熱意に触れて、前向きに生きようと決意する青年。なにより二十歳の子のエネルギーが気持ちよかった。 「この方と、この方」は、かつて上手くいったことも、時代がかわると一筋縄で行かない。ダメ人間に振り回される、お見合いおばさんのあたふたする姿が面白かった。 「葬式ドライブ」は、おばあちゃんの知られざる人生を青年だけが知ってしまった。だけど、どうする事も出来ずに、そっと心にしまう青年が素敵。 「最後のお盆」は、いまはもう亡くなってしまった人々の面影が立ち現れる伝統行事。姉を見て母を思う。そしてちょっぴり不思議があって、お盆ならありそうと思わせる何かがあった。

やっぱ中島京子さんはいいわ。なんか読んでるとほっとする、そんな一冊でした。

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中島京子
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    2007

10.23

「TSUNAMI」志賀泉

TSUNAMITSUNAMI
(2007/08)
志賀 泉

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一九九九年、沖縄。映画撮影のためにやって来た大学生の岸谷陽介は、ちょっと変わった少女と出会った。鷹津奈美。つなみと呼ばれる十五歳の少女は、東京から来た不登校児で、通うはずのフリースクールも登校拒否して、民宿に住み込みで働いていた。

岸谷は撮影の解散後、沖縄に残って四日間だけ一人旅をすることにする。そこへ、民宿から飛び出してきたつなみの強引さに負け、二人は一緒に旅に出ることになる。実はつなみの家庭には複雑な問題があり、それを聞いていた岸谷は、大人の勝手な都合に不快感を抱いていた。そして、つなみの亡き母の実家、曾祖父母の住む家を訪ねた末に、つなみを無事送り返して岸谷は東京へ戻った。

そして二〇〇五年、東京。自分を見失っていた岸谷は、偶然つなみと再会することになる。かつて沖縄で芭蕉布工房を見て、織り姫になりたいという夢を持ったつなみは、その夢を目指した人生を生きていた。

ここからネタバレありです。ご注意を。


文学色の強い文章。そして情緒的で、かなり独特な雰囲気で読ませていく作品です。十五歳のつなみは情緒不安定で、自分で自分の心をつかみそこねているような少女。その彼女が可愛がって世話をしていた豚を、殺してしまう場面がある。まだ冒頭だったので、いきなり度肝を抜かれたが、何故彼女がこうまでしてしまうに至ったかを、その後興味深く読む事が出来ました。その殺してしまった豚での豚肉パーティーは、正直に言うとブラックすぎてひいてしまった。かなりエグかったです。

東京で再会してからも、つなみは親の勝手に振り回され、ある事件の結果、岸谷の前から姿を消してしまう。この親は何を考えているんだ、と憤りながら読むが、主人公である岸谷も、なんだかなあという青年なのでどっこいどっこい。少し共感しにくい彼に、物足りなさを感じつつ読んでいくと、つなみもある場所であっさりと発見される。だけど、つなみは自分の思いをしっかりと持っている。
しかしここでもまた、つなみの思いに便乗して行動してしまう岸谷には、やっぱりなんだかなあと思ってしまった。彼の誰かに依存してしまう性格が好きになれなかったです。もうちょっと自分を持て!と言いたい。

ラストは岸谷が依存したままハッピーエンド。つなみの人生に乗っかったまま、満足している岸谷に、チッ、と舌打ちしながらも、普通に楽しめました。

著者である志賀さんが、「人が成長するということ、それは自分だけの力ではできない。自分を超えた力。たとえば自然風土とか、ひょっとすると死んだ人の心にも支えられて成し遂げられるものじゃないか」とメッセージを込めたと語っていました。しかし、岸谷にツッコミを入れながら読んでいたら、そんなメッセージがあったとは気づけなかったです。ちょっと残念。

ああ、読み方を間違えてしまった。やっちゃったよ、自分。

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    2007

10.22

「シンデレラ・ティース」坂木司

シンデレラ・ティースシンデレラ・ティース
(2006/09/21)
坂木 司

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小さい頃から、歯医者なんて大嫌いだったサキ(叶咲子)は、十九歳の大学二年生。友達のヒロちゃんと、来年の夏休みに備えて、まとまった時期に稼いでおきたい、と話し合って帰宅をすると、ママから受付嬢のバイトを紹介された。時給千円に目がくらんだサキが、メモを頼りに面接に行くと、そこは唯史叔父さんが勤める歯医者さんだった。とんとん拍子で苦手な歯医者さんのバイトをする羽目になったサキ。しかし、ひと夏のバイトが終わる頃、彼女は健康な歯だけでなく、生きるための勇気もちょっぴり手に入れていた。

サキがバイトすることになった、品川デンタルクリニックのメンバーを紹介しておこう。まずは院長の品川先生に、ドクターをしている唯史叔父さんと、少しナンパな成瀬先生。セクシーな歌子さんに、色白美人の中野さんと、童顔でアニメ声な春日さんの三人の歯科衛生士。直属の上司である事務の葛西さん。そして無口だが頭が冴える歯科技工士の四谷さん。みんな個性的だけど、優しくて、仕事も真面目で、訪れるお客様(患者さん)の歯の治療だけでなく、些細なお悩みも解決していきます。

このクリニックはすごく患者のことを真摯に考えていて、院長の方針でサキはお客様と雑談して、情報を集めて第二のカルテを作っていきます。そこで様々なお客様と接しているうちに、サキは腰掛気分で働いていたのだが、自分で勉強してお客様の質問に答えられるようにまでなる。お客様のお悩みを解決するだけでなく、サキ自身も成長し、おまけにサキの恋も描かれている。かなりベタだけど、そのベタがすごく良かったです。

昼食やおやつの時間といった。ほのぼのとした雰囲気もすごく良かったです。だけど、そういった温かい系ばかりではなく、たっくん先生と知花ちゃんのエピソ-ドみたいに、自然と涙がこぼれるようなお話もあります。それに、歯医者さんで使われる専門的な用語なども、説明口調にならずにさりげなく触れていたのも好印象でした。

ひきこもりシリーズとは違った、かなり爽やかな作品でした。自分としてはこちらの方が好みです。文章も読みやすいし、なによりサキちゃんが可愛かった。という事で、次は姉妹編の「ホテルジューシー」を読もうと思います。ひきこもりは一旦おあずけ。後は自分用メモです。

「ホテルジューシー」で主人公になる、ヒロちゃん(柿生浩美)が出ています。ヒロちゃんは冒頭で、夏休みの間は沖縄の民宿でバイトすることになり、サキは沖縄にいるヒロちゃんと連絡を取り合って、状況を報告したり相談をしたりします。

ヒロちゃんも魅力がありそうなので、「ホテルジューシー」を読むのが楽しみです。


そうそう、この本は古本店で購入したのだが、読もうとしたらサイン本だと気づきました。
なんでサイン本を売るのかな??

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他のサイン本はこちらをクリック。→「サイン本」


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坂木司
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    2007

10.22

10月22日 書店でお買い物

暗黒館の殺人 1 (1) (講談社文庫 あ 52-15) 暗黒館の殺人 1 (1) (講談社文庫 あ 52-15)
綾辻 行人 (2007/10)
講談社

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暗黒館の殺人 2 (2) (講談社文庫 あ 52-16) 暗黒館の殺人 2 (2) (講談社文庫 あ 52-16)
綾辻 行人 (2007/10)
講談社

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ミッキーかしまし ミッキーかしまし
西 加奈子 (2007/10)
筑摩書房

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古本店でお買い物
有頂天家族 有頂天家族
森見 登美彦 (2007/09/25)
幻冬舎

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お買い物
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    2007

10.21

「暗礁」黒川博行

暗礁暗礁
(2005/10)
黒川 博行

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「疫病神」「国境」に続くシリーズ三冊目です。

建設コンサルタントの二宮のもとに、半年ぶりに疫病神が舞い降りてきた。二蝶会の本人曰く頭脳派(実際は武闘派)ヤクザ桑原から「おまえ、麻雀をせい」の一言。その麻雀は東西急便のふたりが奈良県警交通部の現職幹部に負けて金を渡すのが目的のイカサマ麻雀。桑原はこれが金になると考えて、二宮に代打ちをするよう電話してきた。この麻雀は相当にレートが高いと踏んだ二宮は、金に釣られて性懲りもなしにほいほいと出かけて行った。

これが警察官の贈収賄事件の内偵に引っかかり、二宮は刑事の訪問を受けて逮捕されるかとビクビク。しかしそんな事はお構いなしの桑原は金の匂いを嗅ぎつけ、二宮は桑原の無理な命で奈良東西急便のあれこれを調べてみると、ヤクザの罠に嵌められ放火犯の容疑者になってしまう。そこで真犯人を追おうと二宮と桑原は、暴対課の悪徳刑事・中川から情報を買うことにした。

そこで浮上したのが、田舎ヤクザの花鍛冶組とそのバックにいる東和桜花連合の大幹部、奈良東西急便と奈良県警の癒着のカラクリ、そして裏金の存在。イケイケヤクザの桑原と、悪徳マル暴の中川は、これはでかいシノギになると踏んで動き出すが、二宮は放火の真相を知る男として、極道から狙われる懸賞首になってしまった。「疫病神」「国境」に引き続き、桑原のイケイケぶりに三たび誑しこまれた二宮。莫大な裏金を巡った追いつ追われつの壮絶な争奪戦の結末とは。

雪崩式にどんどんストーリーが展開していくので、内容紹介に力をいれてみました。相変わらずのちょっぴりハラハラの二宮と桑原の会話や、それとはテンポの違う二宮と悠紀のユルイ会話がすっごく楽しくて笑えて好きだーー。そして悪いヤツばっかりが出てくるのだが、そんな中を二宮は毎度のごとく痛めつけられ、桑原は殴る蹴るの大暴れ。時には拉致って相手を殺す寸前まで脅して情報を引き出し、そして最後には桑原も…。そして前回は北朝鮮に潜入したが、今回は沖縄まで二人は飛ぶ。

だけど地元である大阪を大事にしているところが、同じ大阪人としてみてはやはり好ましいのだ。二宮の事務所があるアメリカ村周辺や、近畿自動車道から阪神高速東大阪線に入り、第二阪奈道路を抜けて奈良生駒線へ出る。大阪奈良を移動する二人に、うちの近所を通ってるやんと興奮する自分。そして桑原の女が経営する、大日にあるカラオケ店「キャンディーズ」が2号店を出店し、チェーン展開をしている。そして桑原の本業についても触れ、散財できるわけも明らかにされている。それらを知って、桑原さんも地道に儲けているのね、と一人悦に入ってしまった。

今回は二蝶会で電話番をしているセツオや、二宮の父と親交が厚かった若頭の嶋田にもスポットがあたっていたのが良かったです。セツオのシノギや嶋田の渋さは、ポイントが高かった。そしてセツオの部屋で二宮は…。くくくっ。読めば笑いの意味がわかります。

現役警察官や天下りした警察OBの不祥事、企業との癒着やヤクザとの結びつきなど、主要キャラだけでなく、いろんなありそうを堪能することができ、すごく読み応えがありました。今回がシリーズ三冊目。次の四冊目は何をやってくれるのだろう、と期待しながらも、筆の遅い黒川さんを気長に待ちたいと思います。いやー面白かった。

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    2007

10.20

「たゆたいサニーデイズ」村崎友

たゆたいサニーデイズたゆたいサニーデイズ
(2006/11)
村崎 友

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入部したときは、こんなことになるなんて思いもしなかった。まさか、三年生が卒業したら部員が二人になるなんて。葉音梢と宮本さんこと宮本耕哉。たったふたりの合唱部だが、部活内容は謎解きばかり。横溝正史ミステリ大賞受賞第一作です。

連作短編っぽく、章の終わりで宮本さんの推理で一応謎は解かれるのだが、その後があって、かなり捻くれた構成になった作品です。形式的には連作の形を取っているが、実質は長編ミステリと言えるだろう。

合唱部の入部希望ノートに書かれた、中村雫という聞き覚えのない名前、野球部の部室から消えた泥棒、映研が撮った映画のDVDが消失、密室の部屋から火事などと、事件自体はしょぼいなあと思っていたら、最後の方に連鎖連鎖で一つに繋がってしまった。これにはちょっとすごいものがありました。しかし、動機やある事実を隠すためにそこまでやるか、という疑問は少し感じた。だけど悪くはなかったです。というか、上手さの方がめだっていました。

それよりも、こずえが送る学園生活がすごく楽しくて、読むことを途中で止められない。クラスで挑む合唱コンクール。文化際前の慌しさや当日風景。渡来くんの練習試合の応援。こずえの淡い思いなど、読みどころがたくさんあった。まさに若き日の青春ってやつです。すごく爽やかで温かで甘酸っぱかったです。

出てくる人物たちも魅力がありました。こずえ、紗歩、渡来くん、雛子、世良、正田くん、森川さんなど、高校生らしい普通っぽさに親近感がわきました。日常を描いているので、あまり突飛なキャラが出てくると、目がそちらに片寄ってしまうので、彼らの普通ぶりが良かったと思いました。だけど、主人公の相棒である宮本さんの影の薄さは如何なものか。ほんと薄いんだ。だけど、最後にはいいところを見せていたので、まあこんなものかも。

帯に切なくほろ苦い青春ミステリと書いてありましたが、なるほど、確かにビターでした。最後にもう一つ。参考資料に「エスパー魔美」「燃えよデブゴン」とあったが、どの辺りを参考にしたのだろう。これが本書の中で、一番のミステリかも。

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    2007

10.19

「君たちに明日はない」垣根涼介

君たちに明日はない (新潮文庫)君たちに明日はない (新潮文庫)
(2007/09/28)
垣根 涼介

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村上真介33歳は、企業の人事部からリストラ業務を請け負う会社、日本ヒューマンリアクト(株)の社員で、業種も会社も異なる様々なリストラ対象者を面接し、自己都合退社を受け入れさせるのが真介の仕事。ある建材メーカーでクビキリ面接を行う真介の前に、リストラ対象者として現れたのは、離婚暦のある41歳の芦沢陽子。彼女を人目で気に入った真介は強引なプッシュをかけ、陽子も真介の見た目とのギャップに新鮮さを感じ、ついには付き合うことに。真介と陽子の日常を描きながらも、様々なリストラ対象者を面接し、彼らの人間ドラマも堪能できる、お仕事小説の一面も持った山本周五郎賞受賞作です。

すごく面白かったです。真介の目線、陽子の目線、リストラ対象者の目線と、あらゆる角度から人というものを読ませるので、容易に作品世界に入ることが出来ました。理屈の通らない駄々っ子のようなエンジニア。実績があってミスがないのに窓際に追いやられた銀行員の同級生。名古屋への郷土愛が強い自動車メーカー直属のコンパニオン。考えが間逆な対立した二人の音楽プロデューサー。彼らの人間ドラマを読ませながらも、人にとって仕事とは何かを考えさせる。

それぞれのストーリーも面白かったですが、一番良かったのは同級生のストーリー。銀行の合併で、吸収された銀行側にいたために閑職に追いやられた池田昌男。彼はやりたい仕事が出来ずに腐りながらも、銀行を飛び出す勇気もなく一年を過ごした。そこへ現れたのがリストラ請負人の真介。そこで真介は二人の立場の違いために、距離を持って接する。そこへ現れるのが二人の同級生である山下。彼の粋な計らいや、時間外だと言って立場を超える真介にグっとくるものがありました。こういう大人の関係って、すごく憧れるものがある。手を差し伸べるのだが、決めるのは昌男という辺りも良かった。それに山下が言った言葉に痺れました。「収入は仕事に対する当然な報酬だ。だが、やりがいじゃない」 ううーー、かっこ良すぎです。

そんな彼らの人生と平行して、真介と陽子の関係も進展していく。ただ、垣根さんの描く大人の男女は濃厚すぎる。うひゃ~です。そしてこれはネタバレになるけど、続編があるので良いと判断して書くが、本書のラストで、陽子は健在メーカーを纏める建材協会の事務局長後任の誘いを受ける。だから、続編でもこの二人にまた会えるんだなあ、という楽しみを持ちながら読みました。

あともう一人忘れてはならないのが、真介のアシスタントをしている美代子。天然、呑気、無関心、と三拍子が揃った白痴美人で、普段は薄ぼんやりしているのに、色恋の兆候になると獣のように敏感に察知する。垣根さんが描く人物って、濃いのが普通なのだが、こういう薄いんだけど存在感がある今風な人物は新鮮でした。

続編の「借金取りの王子」は、すでに手元にあります。読後の余韻が残っている近いうちに読もうと思ってます。こちらも楽しみです。ハードボイルドじゃない垣根さんも面白かったです。

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垣根涼介
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    2007

10.18

「パパとムスメの7日間」五十嵐貴久

パパとムスメの7日間パパとムスメの7日間
(2006/10)
五十嵐 貴久

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あの頃はパパのことが大好きだった。世界で一番好きなのはパパ、と言い切っていた。パパのお嫁さんになるの、とまで言っていたのだ。気がつくと、会話がなくなっていた。休日の食事も別々になった。この一年ほどは挨拶さえない。そればかりか、私の下着と自分の衣服を一緒に洗濯するのを嫌がるようになった。私のあとに風呂に入るときは、お湯を入れ替える。…冴えないサラリーマンのパパ47歳

パパと話してもしょうがない。てゆうか、うざい。反抗期とかじゃなくて、そういうものなんだろう。ホント、メンドくさいのよ、話合わせるのが。嫌いとかそんなんじゃなくて、ただひたすらうざい。あと、不潔。それだけだし、それ以上の意味はなかった。…イマドキの女子高生・小梅16歳

そんな二人が電車事故に遭い、意識不明になるほど全身を強く打った。その結果として、気づけば父娘の人格が入れ替わってしまった。治しようがないなら、黙っているしかない。パパは小梅として、小梅はパパとして、二人はお互いに成りすまして生活をすることに。

よくある設定だけど面白かったです。二人は人格が入れ替わったわけだけど、元に戻れるかという不安感や緊迫感があまりない。それよりもむしろ、小梅は憧れのケイタ先輩との初デートが一番心配だし、パパは重役たちへの新商品開発最終プレゼンが上手く乗り切れるかが大事。だから、二人はお互いに妥協し、利用となだめ透かしを駆使して、なんとかお互いのイベントを乗り切ろうと必死になる。

ドラマ化されたそうですが観ていません。だから比較などはしませんが、ここから少しネタバレありで書いていきます。知りたくない方はご注意を。

小梅(実際はパパ)が男の子と映画を観に行く初デートでは、ムスメを大事に思うパパが、男の子に嫌われるように奮闘する。少し姑息な行動だけど、パパの気持ちもわかるし、それを近くで見ている小梅のイライラもわかる。だけど、小梅がラブの先輩がぼうっとしたタイプで、その攻撃がまったく通じずに、逆に小梅の株が上がったりする。

一方で、パパの会社では失敗が目に見えているティーン向けの新商品開発プロジェクトが最終段階にきている。チームリーダーのパパ(実際は小梅)だけど、何もしなくても勝手にプロジェクトは進んでいく。小梅はパパから、これが会社だと教えられ、書類にハンコを押すだけの毎日を過ごす。だけどこれで決まるという御膳会議では、重役たちが、ティーンの気持ちや行動パターンなどを何もわかろうとせずに、大人の都合だけで決めていく。それらの会話に反発心をもった小梅は…。想像通りだと思いますが、この結末は控えておきます。

とにかくすべてがベタです。だけど、すごく面白かった。まず問題にあがるのは、トイレやお風呂の問題。これらは容易に問題になると想像がつくが、二人の食べ物の好みを知っているママが、逆の味が好きな二人に苦手な食べ物を進めてきたり、携帯メールの打つ速度の違いに、これまで二人の周りにいた人物たちが驚いたり、パパになった小梅が体の重さに苦しみ、あちこちに体をぶつけたりと、すごく細かい描写がリアルを感じさせる。これら二人の対比した描写には、なるほどと関心しながらも、ニヤリと笑ってしまう自分がいた。

これらユーモアが、入れ替わりという設定を盛り上げるのに、とても上手く機能していたと思う。それに会話のなかった父娘が、事情があるものの、べったりとくっ付き、離れた所にいても連絡を蜜に取り合っている。そんな二人のわけありな会話も楽しいし、予想外の行動も面白かった。

ラストはまあ、タイトルを見れば想像がつくだろう。二人はこの不思議な七日間を通して、お互いのことを理解したが、急激な変化は望めないだろう。だけど、小梅が最後に「おやすみ、パパ」と声をかけていたのに希望を感じ、そんな小梅がとても微笑ましく、愛おしくなりました。頑張れ、パパ!

そして、ベタ最高っ!

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五十嵐貴久
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    2007

10.17

「ビター・ブラッド」雫井脩介

ビター・ブラッドビター・ブラッド
(2007/08)
雫井 脩介

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警視庁S署に配属された佐原夏輝は、新任早々に起きた事件で現場へ向うと、そこに捜査一課の面々が現れた。自称捜一オタクの先輩刑事、鷹野が教えてくれるには、捜査一課五係には個性的な刑事が集まっているという。

睡眠時間は三時間で、二十時間は仕事をしていて、その手は死人のように冷たいらしい、ベテラン係長のアイスマン鍵山。口臭と体臭が普通じゃない、鼻つまみもののスカンク富樫。ペーペーだが、尾行がうまいチェイサー稲木。五係の独身貴族のバチュラー古雅。刑事の命はジャケットだと真顔で言い、得意技がジャケットプレイだというジェントル島尾。

実はジェントル島尾こと島尾明村は、夏輝を捨てた実の父親だった。捜査にあたる刑事は二人一組。夏輝は父の明村とコンビを組むことになった。

はたから見れば島尾明村とは、シルバーの目立つ髪をオールバックにまとめ、浅黒い肌に薄いひげを浮かべるナイスミドルで低音ボイス。やたらと服装にこだわり、ジャケットの着方は、ジャケットの襟をつまんで持ち上げ、それを振り回すように動かし、右に左に宙を舞うジャケットに対して、肩をするどく動かして腕を捻じ込んでいく。バッ、バッと。得意技...ジャケットプレイ。うーん、渋い。つうか笑える。

それに対して夏輝が思う明村は、家族を見捨てて家庭を崩壊させ、子供は体よく妻に押しつけ、妻が失踪したら今度は養父母に押しつけた男、と心の中で軽蔑しておくのが一番相応しい相手だと思っている。そんな明村が夏輝に話しかけてくるときに、自分のことを「お父さん」ということに嫌気をさすが、捜一の刑事たちは夏輝のことをジュニアと呼ぶ。

二人の掛け合う会話や微妙な仕草、明村の夏輝に対する思惑、これらを読んでいると、ついニヤケてしまう面白さがあり、無茶苦茶好きだー!と声をだして叫びたくなる。そして夏輝もいつかは派手なジャケットプレイをするのではないか、と期待を多いに込めて読んでしまう魅力がある。

二人が組むことになった捜査は、反発しながらも任務を追行した夏輝の初手柄により、容疑者逮捕で一応解決する。しかし一ヵ月後、事件を担当した捜査一課の鍵山係長が襲われる事件が起き、その捜査線上にあがってきたのは、先の事件でビルから転落死した情報屋、貝塚の名前と、捜査一課五係に内部犯がいるということ。事態は一変して警察組織内部の話に転じていく。

前半部分は、個性派集団の五係、特にジェントルの魅力で読ませる。中盤になってからは、探偵を名乗る情報屋、相星の陽気さでぐいぐい読ませていく。刑事は二人組が基本なのに、夏輝は相星とコンビを組んで、独自の捜査を展開していく。何故そうなるかは、本書を読んでもらえるとわかります。

とにかくこの相星が底抜けに明るくて笑えた。読んだ方にしか伝わらないだろうが、シニアさんには吹き出してしまった。他にも…。むぐう、言いたい病とただいま格闘しています。ううっ…、やっぱり言えない。自分で読んで確かめて下さい。ごめん。

ラストで明らかになる犯人に驚きはありませんでした。なんとなく想定内といった感じかな。事件の結末も落としどころとしては、すっきりと纏っていて、いいんじゃないかと思う。それよりも、本書はエンターテインメントとして完成されていたので、存分に楽しんで読むことが出来ました。それと父と息子の掛け合いは必読の価値あり。

映像化が進行している雫井作品ですが、本書もそちらの匂いがプンプンする作品でした。
すっごく面白かったです。お薦め!

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雫井脩介
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    2007

10.16

「こいわらい」松宮宏

こいわらいこいわらい
(2006/10/19)
松宮 宏

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和邇メグルは五歳の時、鴨川の土手でとてもきれいな棒を拾った。直径四センチ、長さ三十センチぐらい。棒はいつしか身体の一部と化し、小太刀を遣った居合いという不思議な剣を、メグルはおじいちゃんから伝えられた。これが「こいわらい」という秘剣だというのは、大人になってから知った。
そして両親が死におじいちゃんも亡くなったメグルが二十歳の時、長年住んだ西陣の屋敷を借金の形に取られたので、長年住み慣れた西陣から知恩院の門前町の長屋に、まだ幼い五歳の弟を連れてころがりこんだ。突然の貧乏で生活費を稼ぐことになったメグルは、大学の生活課へアルバイトを探しに行く。そこで見つけた求人は用心棒。メグルはよくヤーサンに襲われるという、京都宮内庁の会長、田上源助を守る用心棒になった。

ストーリーは悪くなかったと思います。ジャンルでいえばラノベ系で、女子大生が用心棒をしていると、ある日拳銃を持った相手が現れて勝負にならない。しかし、ヒロインの遣う小太刀の技が、「こいわらい」という秘剣だと思われていたが、本当の「こいわらい」ではなかった。本当の秘剣なら必ず勝てる。(なぜ幻の秘剣なら拳銃に勝てるのか?)そこで雇い主の会長や、天才剣士の川又新三たちがからんで、幻の秘剣「こいわらい」をメグルに身につけようとする、というお話。

内容的には面白いのだけれど、デビュー作にありがちなマイナス面があったのは少し…。読みやすいけど読みにくいという矛盾した表現になるが、ラノベ系らしくわかりやすい展開をするのだが、リズムが単調なので読んでいて飽きてくる。それに意図した句読点の使い方をしているが、文章を無闇に分断しているので歯切れが悪い。
それともう一つ、少し関西弁を詰め込みすぎかなと思った。関西弁で文章を書く場合、どうしても表現的なことを文字にすると、ひらがなが多くなってしまう。「~ちゃうちゅうねん」(~違うといってるだろ)みたいな部分が、関西人の自分でも読みにくかった。それら以外は許容範囲かな。

まあ、マンガ的な作品なので、上質なエンタメを求めるのは酷だと思うが、自分にとって熱狂するような作品ではなかった。軽い感じの本を読みたい方や、重い本を読んだあとには適しているだろう。読みにくいと言ってるわりに、思ったほど時間をかけずに読めてしまったし。たぶん若者向けの作品なのでしょう。

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    2007

10.15

「太陽の塔」森見登美彦

太陽の塔 (新潮文庫)太陽の塔 (新潮文庫)
(2006/05)
森見 登美彦

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再読です。

私の大学生活にはあらゆる意味で華がなかったが、そもそも女性とは絶望的に縁がなかった。そんな私が三回生の夏ごろ、水尾さんという恋人を作ってしまったのである。しかし、彼女はあろうことか、この私を袖にしたのである。私は長きに渡り「水尾さん研究」を行ってきたが、彼女から一方的に研究停止の宣告を受けたのであった。しかし、私はへこたれず、それ以後も、私の研究能力と調査能力と想像力をもって、「彼女はなぜ私のような人間を拒否したのか」という疑問の解明にあったことは言うまでもない。男は愛用の自転車「まなみ号」を走らせ、冬の京都の街を無闇に失踪する。

かなり危険な香りのする男が主人公です。研究とストーカーの違いは何だ、という疑問はこの際置いておきます。日夜ストーカーもとい研究をしている私の前に、遠藤という男が現れる。遠藤は水尾さんにこれ以上付きまとうなと警告してきた。ここから壮絶なバトルが繰り広げられる。手紙の応酬からゴキブリキューブの登場と目が離せない。必見なのだ。ここではあえてゴキブリキューブが何なのかは説明しない。ただ黒い光沢のグロさは想像出来るだろう。そして遠藤の正体がわかり、彼が求めているものが明らかになる。それがタイトルにもなっている、「太陽の塔」というキーワードだ。

自分が住んいでる所から国道を車で北上すること約一時間弱。左側にデンっと現れるのが太陽の塔。なにやら近寄りがたいオーラーを放ち、塔という名のわりに登れないし、中に入れない。(内部に階段はあるそうですが) さすがに置物のような土産物は買いやしないが、大阪人には馴染みがある。やっぱ観光客は買うのかな?貰っても嬉しくないと思うけど。

本書に戻ります。そんな高尚な戦いを繰り広げながらも、戦友である飾磨大樹たちとバカなイベントをし、学内や街中では植村嬢の蛇眼を恐れ、暴れたがる野獣のジョニーを鎮める毎日を過ごす日々。そこに飾磨の夢玉すりかわりや、突然京大生狩りに遭って逃げ、叡山電車で不思議な旅をし、打倒クリスマスからええじゃないか騒動などを起こす。さまざまな出来事に首を突っ込み、或いは巻き込まれながらも京都の街を走り続ける。そんな妄想男がたどり着いたところは。あとは自分で読んで楽しんで下さい。

主人公、水尾さん、飾磨、遠藤、植村嬢、高藪、井戸、湯島など、個性ある登場人物たちが、これでもかというぐらいに、紙面上を踊っています。そして彼らのせいで、京大生のイメージが崩れるだろう。だけど、おもろーーい!

結局、太陽の塔は何だったのだろう。あの得体の知れない存在感が本書とイコールと言いたいのだろうか。男汁がびゅんびゅん飛び散る一冊でした。

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森見登美彦
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    2007

10.15

「さようなら、コタツ」中島京子

さようなら、コタツさようなら、コタツ
(2005/05/19)
中島 京子

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部屋の数だけ人生はある。さまざまな人間模様を描いた7つの物語です。

「ハッピー・アニバーサリー」
その夜を、由香里は園子と、由香里の父親である松田清三と三人で過ごした。二人だけの記念日に突然転がりこんだ清三。そして酔いがまわって半分崩れそうな姿勢で眠ってしまった清三だが、そこに聞こえてきた娘たちの会話と怪しげな気配。そして見てしまった女同士のキス。翌日目覚めた清三が眺めた娘たちの寝姿に、父親は何を思う。

母さん!と清三が心のうちで呼ぶ、その混乱ぶりが笑える。しかし、いくら父親が寝ているといっても、そんな所でやってはいかんよ。


「さようなら、コタツ」
由紀子は十五年間使っていたコタツを捨てた。あれがあった十五年もの間、部屋では何も起こらなかった。そして新たにセミダブルサイズのベッドを買った。三十六歳の誕生日の今日、山田伸夫が部屋に料理を食べに来る。

嬉しさのウキウキと、妹の説教を思い出しグズグズ。この二つの感情が面白い。揺れる妙齢の女性心理がリアルでした。オチも中々のものだった。


「インタビュー」
イラストレーターの恭平は、インテリア雑誌の実例特集の取材に協力することになった。そこで恭平の住む家にやって来た女性記者と男性カメラマンだが、記者が興味を持ったのは、出て行った妻の妙子が買った物ばかりだった。

何事にもうるさい女性記者と、写真一枚を見つけて全てを悟った無口な男性カメラマン。帰る車中で女性が漏らした言葉に、温厚なカメラマンが返した返事が秀逸。見事。


「陶器の靴の片割れ」
もうじき結婚する洋平は、結婚で初めて家を出る千春の夢見がちな部屋設計にうんざりしていた。そんな洋平は最近やたらと昔の恋人の夢を見る。そこへ夢に出てきた昔の恋人が、洋平の前に現れた。

未練がましい男ってバカね、と思うと共に、こうして女性は男を尻に敷くのかとゾッとした。男性と女性では、読んだ感想が違うだろうなあ。


「ダイエットクィーン」
もうすぐ取り壊される築三十五年のアパート。そこに住む郁美と泰司の部屋に、マナが避難してきた。隣に住むマナの母親が男を部屋に入れ、あれを隣にまで響く激しい声で楽しむ。そんなマナだが、自分の体の変化を持て余す年齢で、部屋に来る男がいずれという危機感を持っていた。

少女マナが健気なのだが、このバカな母親の男なら、という危ない雰囲気が絶妙。それになんとなく気づくが、郁美と泰司はどうすることも出来ずに、この母子と別れてしまう。この突き放しっぷりは余韻を引きずる。マナの自衛を応援したい。


「八十畳」
相撲部屋の大広間で数人の人物たちが考える。十五歳の少年が3日前に逃げ出した。逃亡の理由は自分のシゴキのせいではないかと考える者。俺はなんで逃げなかったんだろうと考える者。同期入門の失恋の痛手と比べて考える者。Etc。

趣向は面白いと思う。だけどインパクトがないし、オチらしいものも見当たらない。肩透かしを感じてしまった。


「私は彼らのやさしい声を聞く」
十条のおじさんはときどき露子を死んだ大叔母さんの名前で呼んだ。けれど、おじさんの記憶が混乱していたのかどうか、露子にはわからない。だけど、惚けを見方につけることで、露子をおじさんの家に通わせることに成功したのだった。ある日、しばらくおじさんの家に行っていないという妹と、おじさんちで落ち合うことになった。

これはネタバレしないと書けない。まあ、ありそうだけど、ファンタジックでシュールな作品だった。


好みはあったものの、水準の高い短編集でした。自分のお気に入り作品を上げておこう。
「ハッピー・アニバーサリー」「さようなら、コタツ」「インタビュー」「ダイエットクィーン」
七戦中、四勝一敗二分。

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中島京子
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    2007

10.14

「インシテミル」米澤穂信

インシテミルインシテミル
(2007/08)
米澤 穂信

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モニターたちはさまざまな思惑を持って応募した。波乱を期待した者。小遣い稼ぎのつもりの者。記述が真実か確かめるつもりの者。そして…。
結城理久彦はコンビニでアルバイト情報紙を見ていた。そこへ声をかけてきたのは、浮世離れした美人の須和名祥子。彼女もバイトを探したいというので、一緒に調べていると、あるモニター募集に目が留まった。
年齢性別不問。一週間の短期アルバイト。ある人文科学的実験の被験者。一日あたりの拘束時間は二十四時間。期間は七日間。外部からは隔離する。拘束時間には全て時給を払う。時給、十一万二千円。
須和名祥子は、本当に時給十一万二千円のアルバイトが存在すると信じて応募した。
結城理久彦は、誤植だと思いながらも車が欲しくて応募した。
集まったモニターは全部で十二人。彼らは「暗鬼館」と名づけられた地下施設で、七日間にわたって、二十四時間モニタリングされることになった。

ミステリ読みのためのミステリといった作品です。前半部分は、施設の案内やルール設定の説明なんかが多くて、中々ストーリーが進展してくれない。その部分を軽く紹介すると、十二人それぞれにある武器が渡されて、人を殺した者や、人を殺した者を指摘すると、ボーナスが出るから好きにやってくれと言われる。結城の場合は火かき棒で、須和名は毒、といった物を手に入れる。その上、あてがわれた部屋は鍵がなくて、いつ進入されるかわからない、という恐怖感を登場人物たちに与える。
そして実験終了は、七日間が経過した場合、隠し通路を発見した場合、生存者が二人以下になった場合、と教えられる。

後はお決まりのサバイバルが始まり、誰かが殺されることで緊張感が高まっていく。そう、ワクワクどきどきが始まります。誰が自分を狙っているかわからない。次は自分の番かもしれない。そこで見られる人間たちの心理描写が面白い。チームを作ってリーダーになる者、リーダーの腰ぎんちゃくになる者、頭の良さを信じて行動する者。猜疑心のカタマリになる者、ただ脅えるだけの者。そしてある含みがある者。様々な人間模様が繰り広げられる中、また一人、殺されてしまう。

悲鳴が聞こえ次は誰だという緊張感、当然出てくる疑心暗鬼、誰がどんな武器を持っているのか、ルールに乗っ取った納得のいかない多数決、敵対視するグループ。
そんな中で、どこかのん気で緊張感に欠ける主人公の結城。ふわふわとして、何を考えているのか捉えることができない須和名。彼らが丁度良いバランスを保っていて、怖くなりすぎないけど雰囲気がある作品、という世界が作られていました。

この作品はラノベの延長ではなく、本格ミステリというジャンルです。だからこれまでのユルイ作品だと思って読むと、エライ目に遭う可能性があります。しかし、ジャンルを知った上で読むのなら、ある作品群を思い出し、懐かしさを感じさせてくれる作品だろう。だけど今の若い子に、「火かき棒」なんてわかるのかな、などと少し思ったけれど、一時期熱中したミステリ読みとしては、面白く読む事ができました。

これまでの米澤さんとは違う、新たな米澤穂信さんが堪能できた一冊でした。


おまけ。またサイン本をゲットしました。

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米澤穂信
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    2007

10.14

「密室の鍵貸します」東川篤哉

密室の鍵貸します (光文社文庫)密室の鍵貸します (光文社文庫)
(2006/02/09)
東川 篤哉

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烏賊川市大映画学科三年生の戸村流平は、映像関係の仕事につきたいと、IKA映画社の総務部に所属する茂呂耕作に、入社希望の旨を打ち明けた。二人の結びつきは二年前、茂呂の卒業制作としてドラマを撮ったときに、助監督兼照明助手兼撮影助手兼記録担当をして以来ずっと続いていた。早々に内定を貰った流平だが、カノジョだった紺野由紀に、「夢がない。意気地がない。腰抜け。弱虫。アホ。スケベ。へたくそ」と手ひどく振られてしまった。

そして事件が起こる。流平が茂呂先輩のアパートを訪ねて、レンタルした映画「殺戮の館」を観ていたころ、近くに住む元カノジョ、紺野由紀が背中を刺され、四階から突き落とされ死んだ。そして一緒だった茂呂先輩も、流平が気づかぬ間に、浴室で刺されて殺されていた。二つの殺人事件の容疑者になった流平は、警察の目を逃れながら、元・義理の兄だった探偵の鵜飼杜夫を頼った。

この探偵の鵜飼は、最初はなんとも頼りない。流平の説明を聞いて、探偵小説を持ち出すぐらいの素人。だけど好奇心は旺盛で、依頼者のはずの流平をワトソン役に命じて、「犯人は現場に戻る」とサラリといい、流平が逃げてきたばかりの茂呂のアパートへ向う。一方の砂川警部と志木刑事は、流平たちの後手にまわりながらも、二人の距離を詰めていく。

本書は本格ミステリだから、トリックやオチには触れませんが、溢れるユーモアや炸裂するギャグなどが素晴らしい。ここまで笑わせられると、芸術点をあげたくなる。これらもネタなので書きませんが、すごく面白かったです。流平と鵜飼の会話や、砂川警部と志木刑事の会話が、すごくセンス良い?笑いを誘ってくる。硬くなりがちな本格物を、コミカルな文章、巧なユーモアで読ませるのは、上手いなあと思った。

だけど事件の結末は、むむむというもので、少し物足りなかった。だけどそれまでの、仮説を組み立てるが破れるという、ああだこうだというやり取りは面白かったです。ミステリ初心者や、面白い本が読みたい、という方にはいいんじゃないでしょうか。笑って笑って、笑える一冊でした。

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東川篤哉
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    2007

10.13

「東京公園」小路幸也

東京公園東京公園
(2006/10/28)
小路 幸也

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まだ自分が小さい頃に死んでしまった母親のことを思うとき、いつも最初に浮かんでくる光景は、一眼レフのカメラを構える姿だった。カメラマン志望の大学生、志田圭司は母の残したカメラを手に、家族の写真を撮ろうと東京の様々な公園を訪れていた。
そしてある日偶然に出会った初島さんから奇妙な頼み事をされた。それは幼い娘と公園巡りをしている妻の百合香さんを尾行して、写真を撮ってほしい、という依頼だった。バイト感覚で引き受けた圭司だが、たった二歳しか違わないのに彼女は既にお母さんとして生きている。そんな姿をファインダー越しに見ているうちに、圭司は淡い感情を持つようになった。

サイド・ストーリーがすごく良かったです。友人ヒロのかつての償い。これは冒頭なんだけど、いきなり泣きそうになった。それに、星を観る宴で明かされる、ゲイのマスターと奥さんの幸せの匂いの話は、単純にいいなあと憧れた。

もちろん、ケイジ、ヒロ、富永の三人で過ごす、ゆったりした時間も良かったです。彼らのような男女を越えた関係には、すごく興味があります。だって自分には無理っぽいから。そういや「Q.O.L」でも同じようなことを書いたな。
ああ、説明が抜けていました。ケイジとヒロは男同士で一軒家に同居していて、女であることを捨てたいという富永が、そこにDVDと食材を持ってやって来て、一緒に料理を食べながら映画を観ます。これら彼らが作る雰囲気がすごく良くて、いいなあ、こんなの経験したーい、となりました。

メインである、ケイジと百合香さんのファインダーを通した会話は、ケイジが最後に出した結論がメッセージ性が強いので、書くことを控えておきます。血の繋がらない姉さんのことも。これらは自分で読んで感じて欲しいです。幸せのかたちとは、みたいなことが描かれています。

こういう静かで時間が止まったような雰囲気の作品は大好きです。穏やかな温かい目線が気持ちよく、優しい気持ちになれた一冊でした。それにラストは読み応えがありました。
言えないことだらけの感想になってしまったが、すごく面白かったです。

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小路幸也
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    2007

10.12

「GO」金城一紀

GO (講談社文庫)GO (講談社文庫)
(2003/03)
金城 一紀

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日本で生まれ、日本で育ったけれど、朝鮮籍を持つ在日朝鮮人である杉原は、韓国籍に変えると共に、民族学校ではなく日本の高校へ行くことを決めた。そして、元ボクサーのオヤジに鍛えられた杉原は、二十三戦無敗の男として校内に君臨していた。そんな杉原が恋に落ちた。問題はたった一つ。その魅力的な相手は日本人の女の子だった。

単純な恋愛ものではなく、根底に在日という差別が横たわっている。これがかなり重いです。自分の周りにも同業者や仕事仲間にそういう人たちでいて、普通に付き合いをしています。だけどどこか物の考え方の違いや、お金に対する執着心のずれを感じます。別に差別をしているつもりはないけれど、その人たちの生まれ育った環境の違いから、同じ日本に住んでいても違うんだなあ、と漠然と思っていました。

本書に戻りますが、杉原が桜井さんに在日だと打ち明けたあと、桜井さんは急激に距離を開けます。正直に言うとがっかりもするけどわかる気もする。大阪は在日と呼ばれる人たちが多いし、日本人の中でも差別を受けた日本人たちが多い。かつての士農工商から蔑まれた人たちで、上辺だけは差別はないといっているが、実際は未だに差別が残っているし、その地域に住みたがらない人たちも多い。

本書とは関係ありませんが、自分の従兄弟がそういう家庭に生まれ育った女性と結婚し、親子の縁が切れてしまった。自分らの世代では差別意識は薄れているが、親たちの年代には濃厚に差別が残っている。だけど親子の縁は切れてしまったが、従兄弟はエライなあと。

重いテーマなんですが、軽やかな文体でスピード感もあって、読みやすいし面白い。在日朝鮮人と在日韓国人の違いが理解出来たり、彼らの思想教育がどんなものかも本書を読んで知った。ただ、ラストの場面での杉原の心の叫びは、ずしんと響いてくるんだけど、単純にわかってしまってはダメなような気がした。在日と呼ばれる苦しみを、日本人である自分などに、簡単にわかったと言われるのを拒否されるような、そんな重みを感じる言葉でした。

オヤジや正一、加藤など、個性ある人物が出てきましたが、彼らをかっこいいや面白いとかで、さらっと終わらせるのは勿体無い。だからこれまで書きませんでしたが、人物たちにも魅力がある作品でもありました。いろいろ考えさせられましたが、読んでよかったです。

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金城一紀
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    2007

10.12

10月12日 書店でお買い物

泣かない女はいない (河出文庫 な 23-1) 泣かない女はいない (河出文庫 な 23-1)
長嶋 有 (2007/10)
河出書房新社

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パンドラ’Sボックス パンドラ’Sボックス
北森 鴻 (2000/06)
光文社

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最後の願い (光文社文庫) 最後の願い (光文社文庫)
光原 百合 (2007/10/11)
光文社

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ボーイズ・ビー (幻冬舎文庫 か 23-1) ボーイズ・ビー (幻冬舎文庫 か 23-1)
桂 望実 (2007/10)
幻冬舎

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工学部・水柿助教授の逡巡―The Hesitation of Dr.Mizukaki (幻冬舎文庫 も 3-8) 工学部・水柿助教授の逡巡―The Hesitation of Dr.Mizukaki (幻冬舎文庫 も 3-8)
森 博嗣 (2007/10)
幻冬舎

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お買い物
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    2007

10.11

「サクリファイス」近藤史恵

サクリファイスサクリファイス
(2007/08)
近藤 史恵

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サイクルロードレースでのアシストの仕事はチームのエースを勝たせること。若手の白石誓は、エースの石尾豪を勝たせる六人のアシストの一人に選ばれた。そしてもう一人。若手ながらも実力二番手の伊庭和美は、石尾の座を狙ってレースに向う。レースは各地を転戦して行われる。白井は大阪・奈良とアシストに徹してエースの石尾をサポートする。しかし第三ステージではチームが立てた作戦が仇になり、飛び出していた白井は先頭集団で孤立。最後は自力勝負の末に優勝してしまった。その結果、ステージ優勝どころか、総合でもトップに立ってしまう。その番狂わせのせいで、チームは新人二人が上位に残り、エースの石尾は二十位以下の異状な状態になってしまった。その頃から、白石の耳に石尾に対する不穏な噂が届き始める。石尾は自分以外のエースを認めない。そのためにはライバルを容赦なく潰すと。

この作品はいくら内容紹介をしても、本を最後まで自分で読まなければ、良さが伝わらないだろう。石尾の過去の噂や、尊敬する石尾を信じたい、と心が揺れる白石だが、レースになれば、石尾の勝負へのこだわりに感動を覚えるし、アシストとしての役割に気持ちよさを感じる。

本書は、アシストの役割が理解出来なければ、熱くもなれないし感動も出来ない。だからエースとアシストの関係に触れてみたい。アシストの最大の役割は自己犠牲。風除けになったり、ガードをしたり、アシストは、勝利をエースに託している。途中で疲れて力尽きてもかまわない。リタイアにならない程度の順位でゴールすればいい。エースがパンクすれば、アシストはホイールを差し出す。それがロードレースの定石だ。逆にいうと、エースは非常にアシストを使い捨て、彼らの思いや勝利への夢を喰らいながら、勝利を目指すという重い責任を背負って走る。

これらを踏まえた上で本書を読むと、読者はとてつもなく大きな衝撃にガツンとやられて、本書のすごさに気づいて興奮を覚えるだろう。これ以上は読んで確かめて下さい。ロードレースに掛ける熱い思いと共に、深い感動が心に沁みてくる。とてつもなく壮絶な一冊でした。お薦め!


文庫本にサインをいただきました。
近藤2


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近藤史恵
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    2007

10.11

「NHKにようこそ!」滝本竜彦

NHKにようこそ! (角川文庫)NHKにようこそ! (角川文庫)
(2005/06/25)
滝本 竜彦

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この世の中には陰謀が存在する。ごくまれな確率で、本物の陰謀を悟ってしまった人間が存在する。それは誰だ?俺だ。大学を中退し、仕事もせずに「ひきこもり」。友人の数は、ゼロ。睡眠は一日十六時間。ひきこもり継続期間は、今年で早くも四年。このままでは、廃人だ。このままでは、人間失格だ。そのとき、ふいにテレビがこんな事を呟いた。「NHKは皆様の受信料によって運営されております」。そうか。ついに謎が解明された。俺はすべての真相を悟った。すなわちNHKとは、日本ひきこもり協会の略だった。悪の組織NHKの陰謀だったのだ。そんなひきこもり男の住むアパートに、日傘を差して、清楚な雰囲気を漂わせた美少女、岬ちゃんが現れた。そして岬ちゃんの、「あなたは私のプロジェクトに大抜擢されました」の言葉で、ひきこもり男は?

自分でひきこもり脱出を目論んでエロゲー製作に励むが、読者を大爆笑させてあっさり断念。その結果、「ひきこもり脱出と、そのサポートに関する契約書」にサインをして、ハンコを押してしまった男は、岬ちゃんのわけのわからないカウンセリングを受けたり、会話の練習をしたり、あげくには岬ちゃんの正体を突き止めようと、岬ちゃんの属する宗教団体の集会に参加する。

とにかくユルイ。共感なんてこれっぽっちも出来ないが、なんとなく笑える。一種の中毒みたいなものかな。でも前作の「チェーンソー」の方が面白かった。あっちは、わけのわからないバトルを繰り返しているだけだが、絵理ちゃんが可愛かった。同じように本書の岬ちゃんも不思議系少女だが、いまいち萌えなかった。一生懸命、「早わかり精神分析」などを参考にした、とぼけたカウンセリングや、ちらりと見える火傷の傷跡など、興味をひこうとしているのだが、あまり乗れなかった。なんかひきこもり男よりも弱さが見えてしまった。そこらは最後まで読めば明らかになるんだけどね。

それよか同志の山崎とのアホなやり取りが面白かった。ここには書かないが実にくだらない。だけどそのくだらなさに妙にパワーがあって、なんかわからんが、気がつけば好きってなっていた。これが一番の楽しみどころだろう。

ひきこもり男の死にたい病も途中から普通に感じたし、ずっとひきこもりは正直に言うとだれる。まあそれが若者に人気がある秘密かもしれないが、年齢的にはちょっとキツさを感じた。面白いんだけど、もういっちょってとこかな。

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    2007

10.10

「テリアさんとぼく」風野潮

テリアさんとぼく (新・わくわく読み物コレクション 3)テリアさんとぼく (新・わくわく読み物コレクション 3)
(2007/08)
風野 潮

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大好きな風野さんだけど、表紙の絵が恥ずかし~い!^^; 「ぼくはアイドル?」の続編です。少しおさらいをしておこう。主人公は坂口美樹でヨシキと読む男の子。以前は趣味の編み物や料理の特技をいかして、正体不明の美少女アイドル・ミキちゃんをしていた。今は編み物好きな、ただの中学三年生。こんな感じかな。

照屋手芸店を経営しているじいちゃんが、車にはねられ病院に運び込まれた。意識不明のまま集中治療室へ入ったじいちゃんだが、事故にあったときに握っていたテリアの編みぐるみの中に、意識が入ってしまった。ヨシキは幼なじみで同級生の有紗とともに、テリアのマスコット=テリアさんになったじいちゃんが元に戻れる方法を探す。

テリアさんになってしまったじいちゃんから、事故にあった原因を聞き、事故にあった瞬間を見ていたかもしれない詩織ちゃんを探すことにする。この詩織ちゃんが対人恐怖症で男の子が苦手ということで、有紗やじいちゃんのすすめでヨシキは女装することになる。そしてミキとして詩織ちゃん見つけて接しているところに、十年前に出て行ったままだった、アツシおじさんがアリエルという子供を連れて帰ってきた。その後の展開は、自分で読んで確かめて下さい。

どこに焦点をしぼって感想を書こうか。まずはテリアさんのじいちゃんがとにかく可愛かった。矢崎さんの「ぶたぶた」同様、なぜ編みぐるみがしゃべったり動けるのか、という理由が説明されていないのが良い。これを変に説明されるとしらけてしまう。しゃべれるのだからしょうがない、で押し切ってくれた風野さんにあっぱれ。

そして聞きなれない編みぐるみという名詞。女子や女性には編みぐるみは馴染みがあるのかな?男の自分は初耳でした。だから一応説明をしておこう。これは自分で毛糸を編んで作った縫いぐるみだそうです。
この編みぐるみのテリアさんに触れていると、編みぐるみにも心があって、他の編みぐるみたちの声が聞こえるようになる。心をこめて作り上げたものには、ちゃんと心が宿る。なんか素敵だなあと思いました。

ヨシキや有紗からは前向きな元気をもらい、詩織ちゃんからはおばあちゃんを思う温かさをもらいました。そしてハイカラなじいちゃん、あんたは素敵すぎる。(いまどきハイカラなんて言わないですかね?) アツシおじさんには優しさや温かさを感じ、アリエルは可愛すぎて、なんだかほっぺの筋肉が緩みっぱなし。すごく魅力ある登場人物たちが光り輝いてました。(褒めすぎ?)

それにしても言葉を話す編みぐるみ、欲しいなあ。

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風野潮
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