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    2007

12.31

「切れない糸」坂木司

切れない糸 (創元クライム・クラブ)切れない糸 (創元クライム・クラブ)
(2005/05/30)
坂木 司

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もうすぐ大学の卒業を控えた大学生の新井和也。家はいわゆる商店街にある町のクリーニング屋さん。店の屋号はアライクリーニング店。苗字の新井と洗濯の洗いをひっかけた、ひねりのかけらもない名前。親父が集荷と配送をこなし、母親がカウンターを受け持っている。自分のことを語らないアイロン職人のシゲさん。日替わりでカウンターを手伝う松岡さん、竹田さん、梅本さんの松竹梅トリオのパートのおばちゃん。そんなアライクリーニング店の一人が、突然いなくなった。親父が急死して、魂が抜けたような母親と役立たずの和也。店のシャッターは一ヶ月も下ろされたまま。そんなある朝、シゲさんが一括した。そして、店を開けましょうと松竹梅トリオのおばちゃんの声。和也は家業を継ぐ決意をし、この日から、新しいメンバーで動き出すことになった。

親父のやっていた集荷を引き継いだ和也だが、クリーニングの集荷だけでなく、なぜか面倒の種も集荷してしまう。クリーニング店に持ち込まれる数々の謎。そんな悩み相談なら、この人のところへ行こう。魔法の言葉を与えてくれる友人の沢田直之。お客さんの悩みを紐解き、極めの細かいアフターサビースもしてくれる。主人公の成長と共に、ライトなミステリーも楽しめる連作短編集です。

主人公の和也と名探偵の沢田くんの関係が、かなりひきこもりシリーズとだぶる所があった。だけど、あちらよりもベッタリ度は薄め。そんな二人が、お客さんの河野さん父子、同級生の糸村麻由子、男なのに女性の衣類をだす渡辺さん、商店街で不審な行動をする女性、という人たちの抱える悩みを解決してゆく。

舞台がクリーニング店なので、衣類の知識や、衣類からお客さんのプライベートがわかることや、へ~と思えることが、自然に詰め込まれている。これらをさりげなく挟んでいるところがミソ。これは上手かったね。そして、ここに出てくるアイロン職人のシゲさんがプロって感じで、とにかく渋くて素敵。それにシゲさんと和也の関係も、頼って、見守って、温かくて、という二人の距離感が気持ち良かった。

主人公がクリーニング店の仕事をしていくと、ちらほらと亡き親父の影が見えてくる。ふ~ん、これがタイトルの意味か、なんて思っていたら、まったく見当ハズレだった。この肩透かしってどうよ。こんなのありか。などと突っ込みを入れながらも、面白く読めました。じんわりした温かさが心地よかった作品です。帯に書いてあったけど、これってシリーズ? 続編を雑誌で連載でもしてるのかな。

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坂木司
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    2007

12.30

「やがて目覚めない朝が来る」大島真寿美

やがて目覚めない朝が来るやがて目覚めない朝が来る
(2007/11)
大島 真寿美

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小学四年の終わり、両親の離婚がきっかけで、私と母は蕗さんの家に転がり込んだ。念のために言っておくと、蕗さんにとって母は、嫁であって、娘ではない。なぜ自分のお祖母さんについて「蕗さん」なんていう他人行儀な呼び方をするのかおかしな気もするが、私にとって彼女は最初からずっと「蕗さん」でしかなかった。蕗さんのところへ時折現れる様々な人たち、富樫さんや一松さんや田幡さん、ミラさんなどが代表するレギュラー陣から、皆一様に、私と母がここに移り住んだことを喜んだ。

蕗さん、母ののぶちゃん、私こと有加。女が三人集まって、めいめいにくつろぎながら過ごしていた穏かな時間。もっとも幸せな時間。満ちたりた時間。風変わりな人たちとの楽しい毎日。私は人の話を聞くのが好きだった。声のする場所で、寝たふりをしながら、じっとおしゃべりを聞く。そんなふうに語られた言葉が、わたしの中に宿り、積もり、重なり、いつのまにか、大きな一つの物語に育った。

生があれば、死もある。すでに亡き人なら、その人を知る人物の語りを聞いて、その人は物語の人になり、これから別れがくる人は、自分の中の思い出になって、その人は生き続ける。タイトルを見ると分かると思うが、本書のテーマは死。

皆が元気で笑っていた。すごく大事にしてくれた。とても可愛がってくれた。自分が大人へと成長すれば、その分、まわりの大人たちも年齢を積みかさねる。たくさんの大人に囲まれて成長していく有加は、それゆえに、多くの人たちの老いていく姿を見て、その人たちの死に対面していく。

この作品の感想を一言で表すなら、震え。読んでる途中も、読んだあとも、心が震えてしまう。これはすごい作品かもしれない。だから余計なことは言いたくない。作品について紹介が不十分かもしれませんが、あえてここで止めておきます。

あなたも震えてみませんか? お薦めです。


TBさせて貰いました。「今日何読んだ?どうだった??」

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大島真寿美
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    2007

12.30

「骸の爪」道尾秀介

骸の爪骸の爪
(2006/03)
道尾 秀介

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「背の眼」の続編です。

滋賀県の南端、三重県と接するあたりの山間に、暮ノ宮という小さな町があり、瑞祥房はその町に古くからある仏所だ。ホラー作家の道尾は取材に訪れるが、ホテルの予約が手違いで取れておらず、翌日取材する予定だった瑞祥房の宿坊に泊めてもらうことになった。その夜、昼間に見学した工房にカメラを忘れた道尾は、懐中電灯を借りて一人工房へ向かう。そこで道尾は何かを感じた。訴えかけるような男の声。季節外れの蛇。唐突に聞こえてきた息づかい。そして道尾は見た。二十年前に行方不明になった韮澤隆三という仏師が、最後に彫ったという仏像。その千手観音が口を大きくあけて大笑いしている。その頬のあたりが、ひくひくと動いたのだ。慌てて逃げる道尾だが、先ほど聞こえた男の声、「マリ…マリ…」という声の響きに導かれ、辿りついたのは木づくりの社。その社の中には仏像が安置されていた。懐中電灯が点かなくなった道尾は、暗闇の中、カメラで仏像の写真を撮っておくことにした。翌日、社から聞こえてきた声、「マリ」について聞いてみると、瑞祥房の人たちの態度が一変。道尾は追い出されてしまった。

道尾は旧友の真備庄介に仕事を依頼しようと、真備霊現象探求所を訪ねる。そして、自分が瑞祥房で体験した出来事を語り、不気味な声に誘われて、暗闇の中、シャッターを切った写真を真備に見せる。その写真には、仏像の頭から真っ赤な血が流れていたのが写っていたのであった。やがて真備の調べで、二十年前に韮澤隆三が行方不明になったのと共に、房主・松月の妹も一緒に消えていたことが分かる。それと、松月の妹の名前が茉莉だということも。道尾は真備、助手の北見凛と共に、再び瑞祥房へ向かう。

真備さん、ちょっと地味になってやしませんか。それにユーモアも控えめ。民族学も抑え目だし、薀蓄も減っている。これは色モノになるのを嫌って、純粋な本格路線に変更したと捉えればいいのだろうか。前作の方が好みだったが、一作品としては面白かった。

相変わらず、複線がたくさん散りばめられ、事件解決に至るまでも、二転三転するドンデンガエシ。これで終わりだと思ったら、その後までやってくれる。この方は本当にミステリが好きなのだろう。ただ、サービスはとてつもなく多いのだが、その広げた風呂敷をたたむことに、ページ数を使いすぎているように思えた。真備によって犯人が明らかになる。その後、真備がたどった推理過程を披露するのだが、その説明する描写が長すぎるのだ。ここでやっと、あれが複線だったのか、と読者は気付くのだが、その複線が多すぎて、中々事件解明の過程が収束しない。少しサービスを過剰しすぎなのかも。

だけど、ミステリとしては抜群に上手い。誰々を犯人だろうとミスリードさせるのも上手いし、あるものの隠匿の仕方も上手い。動機や人間関係、過去の出来事のからめ方なども、なるほどと唸らせるものがあった。読者を飽きさせることなく、400ページ弱を一気に読ませる文章もさすがだ。まあ、その後の道尾さんの活躍を見れば明らかだけど。

本書に限っていえば、作家としての若さゆえか、作品のまとめ方に荒っぽさが感じられた。でも、それを差し引いても面白いんだけどね。

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道尾秀介
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    2007

12.29

「ブラック・ジャック・キッド」久保寺健彦

ブラック・ジャック・キッドブラック・ジャック・キッド
(2007/11)
久保寺 健彦

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手塚治虫のブラック・ジャックにはまりすぎて、和也はブラック・ジャックになりたかった。まずは同じ格好をしよう。全身黒づくめで統一し、ロングコートの代わりに黒のレインコートで代用。次は髪型だ。髪にシャギーを入れて、片目をおおい隠す。顔の傷まで再現しようとしたが、母親に見つかりこっぴどく叱られた。食卓の魚を解剖し、誕生日プレゼントに買ってもらった昆虫採集キットで、猫の死骸をオペしようとするが、さすがにこれは断念。少年は学校で一度は男女前面対決のきっかけを作ってしまうが、それ以降は目いっぱい毎日よく遊んだ。

だがそんな楽しい日は続かなかった。父親とけんかばかりしていた母親が突然失踪。その父も仕事を失敗して、父子は引越しすることになった。しかし、転校したクラスは、変わり者の少年を受け入れてくれなかった。そして夏休みが始まったころ、児童館内にある図書室で、同じクラスだった少女マンガ好きな宮内くんと、本が大好きなメガネ少女の泉さんと出会い、三人はいつも一緒に過ごすようになった。

子供らしい笑いが溢れていて、作品の出来は悪くはなかった。だけど、子供同士のなんでもありの対決で、とても過激な描写があったがあれは問題ありだろう。ちょっとやり過ぎで、笑って済ませられない。減点一。それと日本ファンタジーノベル大賞の応募作だからか、無理やりファンタジーをねじ込んでいるのが気になった。唐突に少年の前に現れて消えてしまう、かめはめ波を出す不思議な少女、めぐみのことだ。終盤のファンタジーで充分だと思うのだけど。無理にめぐみを出さなくてもいいような気がした。よって減点二。

とまあ、前半は減点があったものの、和也、宮内くん、泉さんの仲良しトリオが揃う中盤からはすごく面白かった。本について語りあったり、淡い恋心を持ったり、と子供らしい姿がかわいらしい。そして、運動会、学芸会のイベントを経験し、サンタに会いにいった泉さんの弟を追いかけて、三人は泉さんの作った物語の世界に入って冒険する。ここから先は自分で読んで確かめてください。

学校内でイジメがあって重苦しい描写もあるが、それを少年の能天気さで打ち消すぐらいのパワーがこの作品にはあった。ただ、惜しいのは先に挙げた減点二つ。それと三人で過ごす描写が少ない。もうちょっとページ数が欲しかったのだ。それゆえに絶賛出来ず。ほんと惜しい。

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久保寺健彦
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    2007

12.29

「ガールズファイル」柴崎友香

ガールズファイル―27人のはたらく女の子たちの報告書ガールズファイル―27人のはたらく女の子たちの報告書
(2007/11)
柴崎 友香

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作家の柴崎友香さんが、はたらく女の子たちにインタビュー。それと「毎日、寄り道」というショートストーリーを、一冊にまとめた本です。

今まで一度も彼氏ができたことがない女性。わがままを言って男を振り回す女性。チアガールが大好きな女性。出会い系サイトで知り合った男に騙された女性。外国人としか付き合ったことがない女性。付き合って三ヶ月の彼と遠距離恋愛をする女性。若さゆえの無謀に走る女性。転勤で大阪にやって来た関東出身の女性。モデルの仕事で上京するも東京が合わなかった女性。十年ぶりに再会した元バイト仲間と結婚した女性。思い込みの力がすごく強い女性。合コンのお姫様だがダメ男がすきな女性。パワフルでバイタリティが溢れる女性。直感を信じて行動する女性。英語を習得したことで道が開けた女性。物を作って売るという商売の喜びに病みつきになった女性。二十代で広報室長になったバリバリ働く女性。インドネシアで運命の出会いをした女性。母の希望でお見合い歴10年のキャリアを持つ女性。雑誌好きがこうじて雑誌を作る仕事を選んだ女性。やりたい事とは別にしっかり生活を考える女性。ドラマチックな生活が続く女性。弁護士を目指すメガネの似合う女性。四人姉妹で母も五人姉妹という女系に生まれた女性。夢も希望もないがなんとなく始めた仕事を続ける女性。

ざっと書いたけど、さまざまな女性が柴崎さんの言葉で紹介されてゆく。中にはめっちゃ可愛いと思う女の子や、絶対無理という女の子、自分とは無縁な女の子、魅力がある女の子などが紹介されている。個人的な男目線だけど、キャリアウーマンは苦手かも。嫉妬はないんだけど、そこまで仕事に打ち込めるのが何故か不思議。いい加減に生きている自分には理解が出来ないのだ。これって反省すべき点なんだろうけど。

「毎日、寄り道」
ランチに入ったお店で相席したOL、同じ職場のOL、偶然再会した友人たちと、仕事のこと、恋愛のこと、結婚についてなどを語り合う、働く女性たちの日常の会話を綴った作品。

女性同士のちょっと生々しい会話にどっきとするが、女性の方なら共感できる部分が多いと思う。特に20代後半から30代前半の未婚で働く女性なら、あるある、そうそう、と感じるはず。こういう女性の本音や悩み、なにげない日常を描くのが、柴崎さんはほんと上手い。それにタイトルの「毎日、寄り道」なんて、これまたセンスがいい。男性読者としては少し恥ずかしいものの、可愛い女性が読みたければ柴崎さんで決まりかも。

女性の香りがプンプン匂う一冊でした。

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柴崎友香
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    2007

12.28

「国境事変」誉田哲也

国境事変国境事変
(2007/11)
誉田 哲也

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刑事畑で働いてきた桑島だが、一体なんの仕打ちか、対馬南署の刑事生活安全課へ二年前に配属になった。ここ対馬は、九州本土までは百三十二キロ。対して韓国釜山までは四十九・五キロという国境の島。韓国人観光客との摩擦は、もはや日常風景になっているが、犯罪はというと、まったくといっていいほど発生していなかった。そんな対馬でゴムボートの残骸らしきものが発見され、不審な人物が目撃された。

新宿の片隅で、朝鮮籍の在日三世の会社社長が、何者かに暴行され撲殺死体で発見された。警視庁捜査一課第六係の東弘樹は、新宿署に設置された捜査本部に参加することになり、被害者の弟、呉英男の事情聴取を担当することになった。その呉英男は、以前から本庁公安部に席を置く、外事二課四係の川尻冬吾によって、兄が社長を勤める貿易会社の内部情報を調べる工作員をしていた。

捜査で得た情報を共用しない捜査一課と公安外事二課。なにやら影で動めく朝鮮人グループ。そして、アメリカから持ち込まれた何かを追って、男たちは国境の島へ向かう。

「ジウ」の姉妹編とも言える作品。警察小説、公安小説、これらがミックスされて、さらに、今の日本が置かれている現状や、北朝鮮までもがからんでくる。一言でいえば超大作。かつて美咲と共にジウを追った東警部補。公安の仕事に疑問を持ちながらもターゲットを監視し続ける川尻。平和な島できな臭いにおいを嗅いだ桑島。それぞれの人物が所属する組織がすごく深く掘り下げられ、読者に分かりやすく丁寧に描かれている。

そして在日と呼ばれている人たちが置かれている現状や、その人たちの中でも、祖国を知らない人たちの苦悩がひしひしと伝わってくる。日本で生まれ、民族学校に通わずに、日本の学校に通っても、外人登録証の携帯を義務づけられる在日の人。帰化すればいいのにという問題ではない。そういう人物を作品内に加えることで、ストーリーの幅をぐっと広げている。

それだけでなく、決して交わることのない警察と公安を、両サイドの目線で描くことで、よりいっそうスケールの大きな作品に仕上げている。それでいて、詰めすぎを感じさせることなく、尚且つ読者を疲れさすことなく読ませてしまうのだから、とにかくすごいのだ。

それに、あの壮絶なラストは読む価値ありだろう。誉田作品では簡単に人が死ぬのは当たり前だ。しかし、本書にはこれまでにはなかった、死の美があった。松田優作の有名な「なんじゃこら~」ではないが、すごくかっこよい死が描かれている。

普通の警察物では物足りないという方には、ぜひともお薦めしたい作品だ。はっきり言って、イケた作品。「ジウ」を知らなくても問題なく読める。本書をきっかけに「ジウ」を読むのもいいかも。お薦め!

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誉田哲也
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    2007

12.28

「私の男」桜庭一樹

私の男私の男
(2007/10/30)
桜庭 一樹

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腐野淳悟は、わたしの養父だ。彼がわたしを引き取って育て始めたのは十五年も前のことで、わたしは小学四年生で、震災でとつぜん家族をなくした。淳悟は遠縁に過ぎなかったけれど、養子縁組をし、養父になってくれた。八年前、淳悟が三十二歳のとき、わたしたちは東京にやってきた。そしてわたしは二十四歳になって、明日、結婚しようとする。ただ確信できていることは、今年四十歳になる養父こそが、私の男だということだけだった。

私の男。離れられない。そばにいたい。もう、離れないといけない。でも、できるだろうか。わたしと養父は、世間においていかれながら、二人きりで並んで歩き続けてきた。わたしが九歳のときから、二十四歳の今日まで。まだ時効になっていないあの八年前の事件からも、一緒に逃げ続けているのだった。

2008年の現在から、2005年、2000年、1996年、1993年と、過去にさかのぼってゆく。そこで徐々に明らかになっていく、花と淳悟の二人だけの秘密。血の繋がった絆。そして罪。

ちょっと凄いよこの作品は。ネタバレを恐れて萎縮してるけど、ほんと凄いの。読む前はドロドロを覚悟していたけど、まったく不愉快を感じなかった。この二人の関係は正しくない。歪んでいる。許せない方もいるだろう。だけど、二人の過去を辿ることで、何となく納得してしまう不思議な作品なのだ。

ざらざらとした世界で、覗いてはいけない過去を読んでいくのだが、すごく吸引力がある文章で、ページを捲る手を止めることが止められない。禁断の恋、禁忌の世界を描いているので、普通なら気持ちの悪さを感じるだろう。しかし、高校生、小学生の花を読む事で、そんなしこりが解けていく。

何故こんなにも依存するようになったのか。何故こんなにも安らぎを覚えるようになったのか。何故こんなにもかけがいのない存在になったのか。何故こんなに…。すべては二人の結びついた過去が紐解かれていくことで明らかになっていく。見えなかったざらりとした物が見えてきたとき、読者はどう感じるのか。何を思うのか。著者が問いかけてくるのだ。

哀しみや切なさ、愛おしさが溢れ、心臓がぎゅっと締め付けられるようで息苦しい。二人は生きるために、ずっと寄り添ってきた。生きるために罪を犯してきた。しかし悪い人とは思えない。むしろ可哀想な人たちだ。やるせなさを感じつつも、何ともいえぬ危うい美が、ここにあった。構成の妙が光る絶品の一冊だった。


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桜庭一樹
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    2007

12.27

「刺青白書」樋口有介

刺青(タトゥー)白書 (創元推理文庫)刺青(タトゥー)白書 (創元推理文庫)
(2007/02/21)
樋口 有介

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メガネ女子の大学生・三浦鈴女(スズメ)は、中学で同級だった伊藤牧歩と偶然街で出会う。テレビ局に内定が決まったと喜ぶ牧歩の隣には、かつて密かに憧れていた野球部のエースだった左近万吉の姿があった。彼女の内定祝いのパーティーを断ったスズメは、約束のあった父の勤める出版社へ向かう。そこで、無残な殺され方をした、人気上昇中のアイドル・神崎あみが、中学時代の同級だった小筆眞弓だったことを知る。その翌日、昨日再会したばかりの牧歩が、隅田川で水死体になって発見された。中学生時代の同級生が相ついで殺害されたことに衝撃を受けるが、少し変な気分になり、独自に調べてみることにする。

一方、編集者をしているスズメの父から、事件のレポートを依頼された、永遠の三十八歳、元刑事でフリーライターの柚木は、殺された二人の女性に注目する。すると二人には、かつて右肩に小さな薔薇の刺青を入れていた共通点が浮かびあがってくる。やがてスズメと柚木が辿りつく真相とは。

読む前から異色の作品だと聞いていたが、柚木の目線ではなく三人称の目線だったのですね。むむむっと腕組みをして妄想に浸るスズメ。そしてニヒルな中年の柚木。これまでのマンネリぎみな柚木中心ではなく、少しずれたスズメを加えたことで、新鮮に感じることができた。このスズメのキャラがすごく良かった。はっきり言ってオヤジ化した女性なんだけど、妙にかわいく思える部分がある。再会するたびに変わってないと言われ、そのたびにバストが3センチ大きくなったと思うあたりが、男心をくすぐる。

ストーリーもすごく面白かった。怪しい怪しいとある人物を引っぱり、なんだこっちかよと思わせ、え~、そんなとこから連れてくるのかよ、とあっちこっち振り回されるんだけど、こういうのは嫌いじゃなかった。ただ、作品の描き方がヒントを散りばめたミステリではなく、柚木の直感に頼る部分がほとんどなので、読者が犯人を指摘できるような物ではない。ジャンルで言えば、ミステリではなくサスペンスに近いのかも。

それに読後感も素晴らしい。読んだー、青春だー、という爽快感が気持ちいい。娘の加奈子ちゃんが登場しないのは残念だけど、それでも充分満足することができました。

このシリーズも気がつけば折り返し地点まで来てしまった。残すはあと三冊。そろそろシリーズ外も気になってきたな。


柚木シリーズ
「彼女はたぶん魔法を使う」
「初恋よ、さよならのキスをしよう」
「探偵は今夜も憂鬱」
「刺青白書」
「夢の終わりとそのつづき」
「誰もわたしを愛さない」
「不良少女」
「捨て猫という名前の猫」

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樋口有介
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    2007

12.26

「クローバー」島本理生

クローバークローバー
(2007/11)
島本 理生

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我が強くて思い込みが激しくて負けず嫌い。顔はそこそこだがモテる努力を惜しまない双子の姉、華子。地味で真面目で善意の人。姉に振り回されている双子の弟、冬治。双子の姉弟は大学に通うために両親の元を離れ、二人で暮らしていた。そこに現れたのが、華子にベタ惚れでとにかく打たれ強い公務員の熊野。そして、冬治に分りやすい好意を寄せる、非常に優秀だが挙動不審な大学で同じ研究班の雪村さん。冬治、華子、熊野、雪村のクローバー、彼らの四人の恋、絆、迷い、決断を描いた青春恋愛小説。

これって少女マンガというような双子のお話だと思って読み始めた。しかし、そんな思いをよそに、どうせ自分なんて、と思うそれぞれの人物たちが葛藤している。なんか分かるんだよ。自分に自信が持てず、かたくなに卑屈になってしまうんだ。傍から見ればそんなに思い込むことじゃない。だけど、自分って駄目だと自己嫌悪して、その場に立ち止まってしまう。そういう考えを持つのは若さですかね。しかし、双子を中心にして、とにかく明るくて賑やかで楽しいのが前半部分。

そして、雪村さんに好かれたものの、過去を引きずる弟くんが、雪村さんの好意にノーを言ってしまう。しかし、華子の仕業で垢抜けない雪村さんが、飛びっきりのいい女に変身。その結果、気になってあたふたする弟くん。しかし、ノーの意思表示をしてしまった手前、雪村さんには声をかけられない。過去の失恋経験を引きずる弟くんだが、やがてクローバーの葉っぱたちと話しをするうちに、自分の気持ちを正直に打ち明ける。これが中盤。

そんなあれこれがありつつも、結局は落ち着く場所に落ち着く。しかし、そのあと弟くんが自分の将来についてぐずぐず悩む重い話になっていく。これがすごくしんどい。一度は決断した進路だが、状況が変わって過酷な決断を迫られる。姉弟のこれまでの慣れた生活。長距離恋愛を覚悟した生活。お金がかかるが希望だった大学院に進む生活。夢を諦めて社会人になってお金を稼ぐ生活。弟くんが選んだ生活には触れませんが、こんな結末もありかな、と思ってみたりもする。

そんなこんなで、前半と後半で、内容も雰囲気もテーマも違う。よって評価がしにくいのである。前半の明るい雰囲気は好きだが、後半のぐずぐずは好みでない。あとがきで島本さんも触れていたが、途中で別物の作品に変わってゆく。その辺りがなんか不安定に感じてしまい、単純に好きと言い切れない。わりと好きだった雪村さんも、最後の方ではしんどい女になっていたし。自分にとっては少し期待ハズレだったかも。がつんとくるパンチ力がないし、中心になる人物もしぼれてない。かなり甘さが目立った作品だった。

もっとブラックに走ると思っていた島本さんが、「一千一秒の日々」に戻ったような作品。だけど、行き当たりばったりを感じてしまうまとまりがない作品だったと思う。


TBさせてもらいました。「今日何読んだ?どうだった??」

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島本理生
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    2007

12.26

「どろ」山本甲士

どろ (小学館文庫)どろ (小学館文庫)
(2004/11)
山本 甲士

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近隣住人は選べない。市役所勤務の岩室孝行とペット葬儀社で働く手原和範は、大阪南部の新興住宅街に居を構える隣人同士。しかし、庭からはみ出た雑草、犬をつなぐ鎖の音をきっかけに、小さな誤解が生まれ、お互いに嫌悪感をおぼえる。そしてムカついた男は犬の糞を敷地に投げ入れ、やってくれたなと花壇を荒らし、負けるものかと名を騙って出前を注文、と嫌がらせ合戦が、職場や家族までも巻き込んで、止まることなくエスカレートしていく。お互いに引くに引けず、誹謗中傷嫌がらせは、やがて泥仕合に。彼らに結末はやってくるのか。

黒い。とにかく黒い。そしてこのシュールな黒さはすごすぎる。役所仕事のいいかげんな人間関係にイライラし、傲慢で身勝手な上司にウンザリし、妻が躁鬱ぎみ、もう一方の妻とは家庭内別居中、そして息子や娘が口をきいてくれずに、何を考えているかがサッパリわからない。

そんな彼らの楽しみは、いつしか隣人への嫌がらせになった。くそ、やられた。あいつにどんな仕返しをしてやろう。お互いに警察には言わない、いや自分の行為があるから言えない。やがて彼らの行為は、器物損壊罪、偽計業務妨害罪、住居侵入罪、脅迫罪、威力業務妨害罪、とどんどんヒートアップしてゆく。それと共に家庭が壊れ、仕事にも影響が及ぶ。

タイトルの「どろ」なんていう生易しいものではない。どろどろ、ぐちゃぐちゃ、相手への醜い悪意がむき出し。そこへさらなる不幸が降りかかって、ますます泥沼に突入していく。これだけダメージを与えれば、いくらあいつでも諦めるだろう。お互いにそう思っているので、余計に始末が悪い。引き際なんてこれっぽっちも考えない。そんな二人に訪れる結末は、自分で読んで確かめてもらいたい。

初めて読んだ作家だけど、ほんとすごいね。読んでるうちに、次は何をするのだろう、と楽しみになってくる。黒好きにはたまんねえ一冊だった。

羽田圭介著「黒冷水」を思い出した。

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山本甲士
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    2007

12.26

2007年度の本代金

2007年の本に使った金額がでた。


総額136.066円也

これってどうよ。ヒクよな~。

来年はこうならないように気をつけなくては。
ほんとマジで。

コメントをもらっても困ります。
できれば、そっとさせておくれ。
ヘコんでます。

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自分への戒め
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    2007

12.26

12月の本代の合計金額

計14.369円也

しかし反省せいへんな。


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自分への戒め
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    2007

12.25

「秋の牢獄」恒川光太郎

秋の牢獄秋の牢獄
(2007/11)
恒川 光太郎

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「秋の牢獄」「神家没落」「幻は夜に成長する」の三編を収録。

「秋の牢獄」
学食のテーブルで由利江が日曜部に釣りに行った話しをはじめた。話を四分の一ほど聞いたところで、私は口を挟んだ。「ちょっと、それ、もう聞いた」 考えてみれば朝から妙な既視感がずっとあった。私は何故か、同じ十一月十七日の水曜日を繰り返していたのだ。そして同じ毎日を繰り返していたある日、自分と同じように同じ一日を過ごしている隆一と出会い、他にもたくさんの仲間がいたことを知る。

「神家没落」
この道こんなふうだっけ? 少し進むと開けた場所で、月光が一軒の民家を照らしていた。藁葺き屋根で縁側のある、この近辺では妙に場違いな建物だった。するとその民家から、翁の面をつけた男が現れ、「どうぞこちらへ、あなたが来るのを待っていたんですよ」と、ぼくに声をかけてきた。そして気付くと、ぼくは男の身代わりになって、世界の影に佇むこの家に縛りつけられていた。

「幻は夜に成長する」
外出は不可能。運ばれる食事は一日に二度。人に会うときは紫の法衣を着て、欲しいものは紙に書いて世話役に渡す。昼には客が来る。客は私に地獄を語り、私はその地獄を受け取って、我が怪物の餌とする。私を幽閉しているものたちは知らないが、私の心の中の小箱には大切な思い出をしまっている。そしてついに時は来た。幻術の使い手で霊狐のお力を持つリオの物語。

一番好きだったのは、ダントツで「幻は夜に成長する」だった。こういうラストにゾクッとくるホラーは好きだ。大きくわけるとホラーとは、血がドバッとでるスプラッター物(苦手)と、血は出ないが精神的に背筋をゾクゾクさせる物の、二種類に分類されると思う。恒川さんは後者タイプのホラーを描く作家だが、これまで上手いとは思っても、怖いとは感じたことがなかった。それがこの作品ではついにやってくれた。こういうのを期待していただけに嬉しく思う。

ただ、同じ日を繰り返してしまう「秋の牢獄」や、一種の神隠し的な「神家没落」は、読み物としては悪くないが、これをホラーと言えるのかは疑問に思う。表題作では異世界をわりと明るく楽しんで、その後、諦めというかすべてを委ねてしまう。次の作品では緊迫感のない男が流れに任せ、やがて自分なりの正義を示す。ホラーというよりも、幻想的な異世界に紛れ込んでしまった、人間の心の動きがメインに描かれている。

しかし、二作ともホラーっぽくはないが、面白くないわけではない。「秋の牢獄」は、自分なら何をしようか、というワクワクがあったし、「神家没落」は、目に浮かぶような情景描写がすごく素晴らしかった。ホラー作家という先入観がなければ、もっと楽しめたと思う。一作目、二作目も異世界の作品だったので、異世界作家という括りで読むと、一番楽しめるのかも。次回作はそういう心積もりで読んでみたいと思う。

ああ、次の作品で異世界から離れたらどうしょう。でもそれはないか。

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恒川光太郎
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    2007

12.25

「仏果を得ず」三浦しをん

仏果を得ず仏果を得ず
(2007/11)
三浦 しをん

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文楽の技芸員は、大夫、三味線、人形遣い、あわせて九十人弱だ。同じ顔ぶれで、何十年も一緒に公演の日々を過ごす。基本的には、一ヶ月ごとに東京都大阪の劇場を行き来し、合間には地方公演があるから旅もする。先輩と後輩。師匠と弟子。芸の道を行く同志でありながら、矜持のぶつかりあう好敵手。複雑で濃密な人間模様が繰り広げられているのが、文楽の裏舞台だ。

若手太夫の健大夫は、人間国宝でもある師匠の銀大夫から、三味線の兎一郎とコンビを組むことを命じられた。実力はあるが変人という噂のある兎一郎とは、ほとんど毎日顔を合わせているが、これまでにいっぺんも話したことがない健だった。主人公の健が文楽の修行を通じて、古典の登場人物をわかろう、つかもうと悩みながらも、成長していく物語です。

健の文楽への思い、コンビを組む兎一郎との切磋琢磨、真智さんへの恋、と読みどころが多い。メインは文楽なのだが、思っていたほど取っ付きにくさがなかった。主な舞台は大阪の国立文楽劇場だ。実はこの劇場には一度だけ行ったことがある。高校生の課外授業だったと思うが、文楽鑑賞を無理やり観せられたことがある。ふつうの高校生にとっては、苦痛でしかないと思うのだが、今となってはもったいなかったと反省する。これも年をとったからそう思うのでしょうか。

本書には、人間くさくて魅力ある人物たちがたくさん出てくる。主人公の健、コンビの兎一兄さん、銀師匠、師匠の相方の亀治さん、師匠の奥さんの福子さん、兄弟子の幸兄さん、一目惚れした真智さん、健の一番弟子を自認するミラちゃん、師匠の愛人のアケミさん、友達割引きでラブホの一室を住居に貸してくれる誠二。一癖も二癖もある人物たちが、伝統芸能に疎い読者を飽きさせずに、物語の世界に引き込んで読ませていく。ただ、真智さんの性格に若干難があるが。

こういうのを読むと、すぐに文楽に興味が出てくるのは、我ながらげんきんなもんだと思う。だけど、もう一度生で観てみたい。あの頃は若さゆえに、ケッ、何が面白いねん、と寝てしまったからねえ。そういえば、あの頃は人形浄瑠璃と言っていた記憶があるのだが、文楽とも呼ばれるのですね。これも今回改めて知りました。国立文楽劇場がわりと近くなので、ネットで劇場情報を調べてみたら、一等席5.800円、二等席2.300円だった。行って観てみようかしら。もちろん二等席で。


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三浦しをん
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    2007

12.24

「ネコのしんのすけ」いとうかずこ

ネコのしんのすけネコのしんのすけ
(2002/11)
いとう かずこ金井 久美子

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ヨシ子おばさんは、子ネコが捨てられる瞬間を見てしまった。おばさんがそっと近づいて抱き上げてみると、大きなきれいな目をした、手のひらに乗るくらいの小さいネコだった。子ネコの目を見てしまったおばさんは、その小さな子をそこにおいたまま帰ることができなかった。こうして、小さな子ネコはアパートの五階で住むことになり、ヨシ子おばさん、丹おじさん、草太くんの家族の一員になった。そして子ネコは「しんのすけ」という名前をもらった。メスなのに。アパートの部屋、連休や夏休みには雑木林の中の古い山小屋で過ごした、3人と1匹の家族のものがたり。

図書館で偶然見つけた本。それが我が家のニャンコとまったく同じ名前だったのだ。もう、これは借りるしかないでしょ。本書と違って、うちの「しんのすけ」はオスだけど、うちにやって来たときの大きさは同じくらい。手乗り文鳥ではなく、かつては手乗りネコだったのだ。ハンドルネームの「しんちゃん」も、我が家の「しんのすけ」からもらったモノだし。

本書に関してはあまり内容に触れたくない。ネコ好きなら、あるあると共感できるネコの行動や、明らかに親バカなのだが、そうそうと頷いてしまう飼い主なら経験する、さまざまなことが描かれている。それらを挙げてしまうと、読書の楽しみを奪ってしまうから、内容には触れたくないのである。

文章は小学生の作文風で少し拙いのだが、大きな違和感を感じなかったので、好しとするかな。各章が短くて簡潔だし、全ページにある金井久美子さんのイラストも可愛らしい。だけど一番は「しんのすけ」の存在に尽きる。もう、キューと抱きしめたくなる愛らしさで、ブチュっとチュウをしたくなってしまうネコさんだ。

と言うわけで内容には触れなかったが、ネコ好きな方にはぜひともお薦めしたい作品であった。

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その他の作家
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    2007

12.23

「彩乃ちゃんのお告げ」橋本紡

彩乃ちゃんのお告げ彩乃ちゃんのお告げ
(2007/11/03)
橋本 紡

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彩乃ちゃんに関わった三人の人たちの物語。

「夜散歩」
智佳子はなぜだか教主さまを預かることになった。教主さまの名前は彩乃ちゃんといって、小学校五年生の女の子だ。真直ぐの髪の彩乃ちゃん。化粧品が大好きな彩乃ちゃん。智佳子の胸辺りまでしか背丈がない彩乃ちゃん。彼女は偉い偉い教主さまらしい。でも仲良くなってみると、拍子抜けするほど彼女は普通だった。テレビを観たがるし、ゲームをしたがるし、彼女が教主さまだなんて、どうにもピンと来ない。しかし。

「石階段」
四大への進学を希望している高校三年生の徹平は、NPO法人がやっている里山再生のボランティアに参加し、毎日土中に埋まった石階段を掘り出していた。そこに、山のすぐ横に住んでる石井さんが預かった子で、時折こちらにやって来る女の子がいた。彩乃ちゃんという少女だった。彼女が新興宗教の偉い教主さまだなんて、徹平はまったく信じられなかった。しかし。

「夏花火」
小学五年生の佳奈たち家族が、この町に引っ越してきたのは去年の春だった。新築の家を買ったのだ。その家に佳奈と同い年の彩乃がやって来た。事情があって、お父さんがしばらく面倒を見ることになったそうだ。彩乃は佳奈の部屋で一緒に過ごすことになった。

彩乃ちゃんが誰かの人生に関わって、ほんのちょっとだけ方向を変える。それでその人たちが少し幸せになる。なんか出来すぎのようなストーリーだけど、すごく良かった。出てくる人たちは淡白なんだけど、ちょっぴり悩んでいる。その人たちが彩乃ちゃんと出会い、ぽんと背中を押されるように、彼女の不思議な力に導かれて前進していく。愛ですね。友達愛とでも言うのでしょうか。それぞれの作品で味わえる余韻が素晴らしい。温かくて、優しくて、ほのぼの。いいな~。

この作品の続編を読みたいと思うのは、自分だけではないだろう。これは何としても橋本さんに頑張ってもらって、続きを書いてもらわなくては。すごく良いお話で、胸がキュンとなる素敵な作品でした。お薦め。


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橋本紡
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    2007

12.23

「日曜農園」松井雪子

日曜農園日曜農園
(2007/10/04)
松井 雪子

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萌は、ひとりで畑に立っている。5メートル四方に区切られた畑は、あるじの不在により、蔓と雑草が絡まり合い、歩くこともままならない。忽然と姿を消した父が残したものは、借りていた市民農園と、「みみずやちょろのすけの日曜農園」というホームページだけだった。

脱力系のHPと軽快な文章が読みやすいのだが、やはり芥川賞候補だけに変な匂いが漂っている。このツルタ一家は、壊れるべくして壊れたとしか思えないのだ。夫の失踪をきっかけに妻は筋トレに目覚め、好き勝手に自分中心の生活を送る。まるで子供のような考え方に、一読者はイラダチを覚えた。それに毎月10日に訪ねてくる祖母のハルエも身勝手な人物だ。子離れしていないような発言や、すでに息子がしんだようなことにしてみたり、とにかくいいかげん。まあ、家族に何もかも隠して失踪した父に一番原因があるのだが。

そんな変人の中で主人公の萌もまた、父を心配していない一人なのだ。萌は父の残した畑やHPを通じて、知らなかった父の姿を知っていく。父のハンドルネーム、ちょろのすけが農業について語っているのを参考に、萌はたった一人で畑を作っていく。その畑で出会う様々な人たちから、父のことを聞かされるのだが実感がわいてこない。それと共に、HPでもたくさんの人たちが、ちょろのすけの助言を頼りにしていたことを知る。

中途半端に畑作りにチャレンジしてみたり、ちょろのすけになりすまして降臨と称して遊んでみたり、萌の取る行動は確かに面白い。だけど、さすがに自分の鬼門だけあって、芥川賞関連は何がいいたいのかサッパリわからない。本書は、帯に書いてあったように、父探しの作品なのだろうか。そして再生の物語とあったように、再生しているのでしょうか。そこら辺がよく分からないのだが、分からないなりにも意外と面白く読めてしまった.。

文学ってムズカシイ。そして不思議な作品だったな。

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その他の作家
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    2007

12.22

「一千一秒の日々」島本理生

一千一秒の日々一千一秒の日々
(2005/06/16)
島本 理生

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「風光る」「七月の通り雨」「青い夜、緑のフェンス」「夏の終わる部屋」「屋根裏から海へ」「新しい旅の終わりに」「夏めく日」を収録した、生真面目だったり頑固だったり、どこかウカツで変に不器用な人たちの連作短編集。

「風光る」
半同棲のような生活をしている、付き合い四年目の男女がいる。哲の「晴れたら次の土曜日に遊園地へ行こう」の言葉に、女性の胸はなぜか嬉しさよりもざわざわと大量の虫が通り抜けていくような音をたてた。

別れの予感を覚えながら、お互いにそのことに触れずにデートする姿が切ない。島本さんのキレイな文章が、揺れる心を上手く表現していて、そこにリアルを感じた。

「七月の通り雨」
大学の劇団が週末に行った千秋楽の夜、「初日から毎日あなたを見たくて通ってました。俺と付き合ってください」と、面識のなかった遠山から突然告白された瑛子。彼女は高校時代からのたった一人の友人、真琴さえいれば、男の人を必要としていなかった。

女が女に惚れるってよく分からないが、瑛子と真琴ならありかなと思える。遠山の大人っぽい振る舞いはキザなのだが、嫌らしさがなくて好印象だった。ただ、こんな男は信用できない。

「青い夜、緑のフェンス」
ダイニングバー・蜂の巣で働く自分に自信のない針谷は、中学生の頃から知っている、生意気で失礼な一紗になぜかなつかれて、彼女の傍若無人な行動に振り回されることにウンザリしながらも、ほっとけなくて友達関係を続けている。

針谷君と一紗ちゃんの関係がもどかしいのだが、なんか雰囲気がいいのだ。それに一紗ちゃんがモロ好みだった。針谷君はアホだね~、と思いつつ、ラストの爽やかさにニヤリと笑ってしまった。


「夏の終わる部屋」
飲み会で出会った操と一夜を共にした長月は、彼女と付き合うようになった。だけど、異状に長月に執着したり、実家のことを頑なに隠したりする操に、ある日長月はひとりになりたい気分になる。その後、彼女は束縛する実家から逃れたくて、長月に黙ったまま、前の男の家で一緒に暮らしていたことを、長月は知ることになる。

操の意味不明な行動もラストを読めば納得できる。しかし長月の立場になれば、操の態度にイラついたり疲れるのもよくわかる。彼女は結局のところは長月のことを信頼していなかったのだろう。可哀想な女性だが、利用された長月はもっと可哀想。

「屋根裏から海へ」
生真面目が取り得の加納は、一年ぶりの電話をきっかけに元彼女の真琴と友達関係になった。一方で加納は、沙紀という家庭教師をする少女の姉が、遠距離恋愛の男と上手くいかずに苦しんでいるのを知る。精神的に弱ってるときに甘えたくないという真琴と、まったく逆の沙紀。二人の女性と関わりながらも、加納は自分を大事にしようとする。

やぼったい加納くんだけどすごくいいヤツだ。それに真琴もしっかりと自分を持っているので魅力的。それに引き換え、沙紀さんの精神的な病は読むのがしんどい。こういうタイプの女性はいつまでたっても、同じような浮気性の男と付き合い、同じように悩んでいそう。

「新しい旅の終わりに」
かつて恋人だった加納君と、成り行きから二人で旅行することになった真琴。一度付き合ったと言っても、デートの後で真面目に家まで送ってもらう関係だった二人。しかし、いろんな杞憂をよそに、真琴の口からでるのは、ふられた哲の話ばかりだった。

ネタバレになるからあまり言えないけど、すごく良かった。こういう関係って実際は無理だと思うけど、この二人ならあってもおかしくない。なんてったって相手が加納君だし。

「夏めく日」
高校時代の瑛子と、先生同士の結婚ゆえに移動が決まった石田先生との、放課後のひと時。

単純に女って怖いと思った。とてもいい雰囲気だと思っていたら、最後の1ページでゾッとさせられた。最近の島本さんにあるブラックさの原点だろうか。こういうのは大好きだ。

ちょっと変わった連作短編集だった。各編によって主人公は違うのだが、それぞれのお話で何らかの形で登場しているのだ。こういう設定の作品は、あまり読んだことがないが、結構面白いと思う。まず第一に飽きない。それに人物の性格がわかりやすいし、交友関係も捉えやすい。それにストーリーの膨らみかたも変わっていて面白い。最近の島本さんと比べると、文章に若い部分があるし、パンチの効きも弱いのだが、これはこれで良かったんじゃないでしょうか。個人的には「青い夜、緑のフェンス」が一番好きだったかな。次いで異質な「夏めく日」が良かった。

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島本理生
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    2007

12.22

12月22日 書店でお買い物

12月に買った本をまとめてみた。
買いすぎたかも。


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お買い物
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    2007

12.22

「2005年のロケットボーイズ」五十嵐貴久

2005年のロケットボーイズ2005年のロケットボーイズ
(2005/07)
五十嵐 貴久

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高校受験を一週間後に控えたある朝、トラックに撥ねられ、都立高校の受験を受けられなくなった。その結果、文系なのに私立の工業高校に通うことになってしまった梶屋信介ことカジシン。彼はあろうことか、急性アルコール中毒で倒れたところを、教師に現行犯で捕まり、超小型の人工衛星を設計するコンテストに参加することを強制される。そこで数少ないダチのゴタンダに相談したところ、ある男を紹介された。学年でもっとも成績が良いのだが、態度が太々しく協調性の欠片もない大先生と呼ばれる偏屈な男だった。その大先生をおだてて設計図を丸投げで任せてしまうが、その設計図が優秀賞を取ってしまう。カジシンはゴタンダたちと賞金を使って豪遊するが、それが悪夢の始まりだった。

先のコンテストの賞金は、次のコンテストの課題である実物を作るための、材料費、製作費などの準備資金の意味合いがあるものだった。カジシンはもちろん何を作るのかも理解していないし、資金である賞金もほぼ使い果たしていた。そこで頼りにするのはまたもや大先生。なんとか大先生なだめすかして、彼の言うまま人手を集め、自宅である町工場を提供することになり、何かわからないままキューブサットを作ることになる。

「今日何読んだ?どうだった??」のまみみさんからお薦めをもらいました。読んでみたら、めちゃめちゃ面白かった。もちろん理系なところは主人公同様さっぱりだけど、なんか物を作るのってワクワクするのだ。年齢的にもガンプラ世代だし。それにたくさんの人たちの協力で、一つの物を作ろうとすることがすごく楽しそう。主人公は嫌がっていたけど、肉体労働でもいいから参加してみたい。買出しでもいい。

そんな彼らチームを紹介しておこう。理系がからっきしなカジシンと悪友のゴタンダの、役に立たないコンビ。カースト制のトップに立つ大先生。秋葉原の電気屋の娘であり、中学時代の同級生の彩子。その子分のオーチャン。カジシンたちの幼稚園からの同級生のドラゴン。あることで恩を感じているダブリの翔さん。引退したが腕は確かなカジシンのジイチャン。という面々だ。

そんな彼らはコンテストで惨敗はするが、新たな仲間を加えて、さらなる高みを目指していく。それは、自分たちで作ったキューブサット(10センチ立方体の人工衛星)を、本物のロケットに積んで宇宙に打ち上げる。そのキューブサットを宇宙空間に放出して、地球の周回軌道に乗せる。そして双方向通信を使って、自分たちで撮影した地球を見る、という壮大な計画だった。

ロマンやね~。男の子なら誰もが一度は憧れる宇宙飛行士。そして男の子だけでなく、誰もが思ったことがあるだろう希望が、宇宙から地球を見ること。地球は青かったってほんとに言いた~い。そんなワクワクが詰まっていたので、子供の頃の幼き夢を思い出した。

少し話がずれるけど、ガンダムを観ると、パイロットは確かにかっこいい。だけど、ガンダムを整備するメカニックもかっこいいんだ。そんなかっこいいメカニックも理系だということ。計算が苦手な自分には、算数の時点ですべての夢が早い段階で閉ざされてしまった。そんなかつての夢を本書はくすぐり、ラストのドキドキは少し疲れるものの、スカしたオチが息抜きになっていて、適度な余韻を味わうことができた。

最後に一言だけ言っておきたい。「2005年のロケットボーイズ」最高!

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五十嵐貴久
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    2007

12.21

「イママン」本谷有希子

イママン 本谷有希子マンガ家インタビュウ&対談集イママン 本谷有希子マンガ家インタビュウ&対談集
(2007/11/21)
本谷 有希子

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本谷有希子がマンガ家の仕事場を遍路する「オールナイトニッポン」の人気コーナーがまさかの書籍化! 新録の二ノ宮知子ロングインタビューや、とり・みき、瀧波ユカリ、しりあがり寿との対談も併録。雑談から創作論まで、マンガ家との濃密なトークが詰まった本谷有希子、初のインタビュウ&対談集。~本の帯より~

本谷さん目当てで買ったのだが、読み始めてから気付いたことがある。自分ってマンガをほとんど読まへん人だった。だから本谷さんとマンガ家さんが楽しそうに話していても、そのマンガ家さんのマンガを一冊も読んだことがないので、イメージがまったくわいてこない。二ノ宮知子さんは「のだめ」が有名なのだが、それ以外のたくさんのマンガ家さんは、名前すら知らなかった。もちろんマンガも。

なもんで、ザックリと内容紹介をしておこう。

まずは二ノ宮知子ロングインタビュー。二ノ宮宅を訪問した本谷さんと二ノ宮さんが、「のだめ」や、酒について、交友関係、仕事について語りあっています。少し旦那さんも登場。すごく有名なのは知っているが、マンガもドラマも縁がなかった。チッ、一度くらいテレビを見ておくべきだった。

次がラジオに出演したマンガ家のインタビュウ集。登場するのは、山本直樹、河井克夫、三家本礼、唐沢なをき、星里もちる、陽気婢、有馬啓太郎、赤松健、西本英雄、とだ勝之、杜野亜希、こうの史代、南ひろこ、みずしな孝之、おおひなたごう、山本直樹?、という方たち。山本直樹氏とのエロ話は笑えた。この方が単行本版「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の表紙イラストを描いていたのね。へ~。そして、陽気婢氏の絵は好きかも。内容はソフトエロマンガ。う~ん、どういうのを想像すればいいのだろう。赤松健氏の「ラブひな」「ネギま」は聞いたことがある。書店で表紙を見ている可能性があるかも。南ひろこさんの「ひなちゃん」は産経新聞でちらっと見てた。じっと内容を追ったことはないが。

最後に「モノをつくるということ」という対談集。とり・みき、瀧波ユカリ、しりあがり寿、という面々。しりあがり寿の名前は、見たことがあるぐらいだけど、二人の創作論は熱くて面白かった

ほんと不勉強で申し訳ない。こなみかなた、北条司、八神ひろきぐらいしか、最近はマンガを読まないんでねえ。本谷ファン必読というわけではないが、本谷さんの丸投げな質問の仕方や、話の飛びっぷりなど、わけの分からんパワーがあったし、盛り上がる論点が人と違うのも面白かった。それになにより、本谷さんが可愛らしい。それと、各マンガ家による「本谷さんへのひとこと」が、彼女の素が見れたような気がしてお得でした。マンガを知っていると、もっと楽しめるんじゃないでしょうか。マンガ家のインタビュウって少ないと思うし。

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本谷有希子
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    2007

12.21

「エバーグリーン」豊島ミホ

エバーグリーンエバーグリーン
(2006/07)
豊島 ミホ

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自分が組んだのがワンマンバンドだとわかっていた。しかし、学祭まで一週間という日に突然バンドは解散してしまった。そこへ偶然現れた、見覚えはあるけれども、名前が出てこないクラスメイトの「シン君、通学路でうたってんのに、もったいないよ」という一言で、なんでもできるような気がした。その少女がアヤコだった。

シン君のことを好きだと気付くと同時に、この感情をシン君以外の誰にも打ち明けないことを決めていた。飛べない自分と違って、何かをしてくれる人だと思っていた。そんなアヤコが勇気を出して声をかけたのが、シン君のバンドが壊れてすぐのことだった。それから時々話すようになるが、アヤコは自分の描くマンガが恥ずかしくて見せることができなかった。

そして中学卒業式の帰り道。今はマンガを見せられないけど、十年経ったら見せられるかも、とアヤコは宣言。別々の高校に通うことになったシンとアヤコは、シンは超有名ミュージシャンになって、アヤコは漫画家になって、十年後の今日、ここで再会することを約束して別れた。そして時が経って約束の十年まであと二ヶ月。二人は再会するまでそれぞれの日々を過ごし、やがて約束の場所へと向かう。

すごく良かった。いわゆる感動とは少し違って、琴線にビンビン触れるような感じかな。大人になるということは、「絶対になる」が「なりたい」になり、「できるならやってみたい」になっていく。そしていつかは「そんな事を思っていたな」となる。妥協というか、現実の壁にぶち当たって、夢を諦めてしまう。主人公の男性は、高校を卒業すると地元の会社に勤め始め、ほとんどがそうであるように、普通の大人になった。一方の女性は、夢をかなえてマンガ家になるも、彼がミュージシャンになることを疑わずに、ずっとシン君への思いを引きずったまま、大人になりきれずに過ごしてきた。

そんな二人が持つ、焦燥、不安、期待といった感情がすごく瑞々しかった。ネタバレになるからあまり書けないが、男性の足掻く姿や、女性の痛さが、豊島さんらしい若さの表現のしかたで、焦る姿に共感できたり、成長する姿にほっと安心したり。二人が約束のことをずっと覚えていて、過去のあの瞬間を大事にしている心、温かさ、というか、人のよさが滲みでてくるようで、都会人にはないような純朴さが微笑ましかった。

そして二人が特別にキレイな思い出と再会する場面はもったいないので語らない。あれは読んだ人だけの特権にしておきたい。読んだみなさん、そう思いませんか??

なんか、この作品を読んだら、久しぶりにブルーハーツの「トレイントレイン」が聞きたくなった。主人公の男性とモロに年代が被るんだよな~。同じ元バンドマンだし。それに、一度熱く語りすぎたので、書き直したし。二回も書いたので疲れたよ。ほんと、マジで。

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豊島ミホ
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    2007

12.20

「クドリャフカの順番」米澤穂信

クドリャフカの順番―「十文字」事件クドリャフカの順番―「十文字」事件
(2005/07)
米澤 穂信

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神山高校文化祭ことカンヤ祭があしたから始まる。だが古典部で大問題が発生。手違いで文集「氷菓」を作りすぎたのだ。千反田えるは、幸運がありますように、と八百万の神々に祈りを捧げ、福部里志は、乗り越えるトラブルがあるなんて、なんて素敵なことだろうと楽しみにし、伊原摩耶花は、自分のミスに腹を立てるが、当日は漫研から抜けることができず、折木奉太郎は、見通しを悲観せず、かといって楽観もせず、省エネ的にどう過ごそうかと考える。

そして始まったカンヤ祭では、学内で奇妙な連続盗難事件が起きていた。占い研究会のタロットカード、囲碁部の碁石、アカペラ部からはドリンク、お料理研ではおたまなどが盗まれた。そして、犯人は十文字と名乗る犯行声明を残していた。そこで、千反田の遂に出た「わたし、気になります」の一言。この事件を解決して古典部の知名度を上げよう! 目指すは二〇〇部の文集を完売だ! 千載一遇のチャンスを前に盛り上がる仲間たちに後押しされて、ホータローは「十文字」事件の謎に挑むはめに。

記憶が危ういのだが、今回が始めての試みだったのだろうか。古典部メンバー四人の目線で、各々のカンヤ祭を体験している。千反田は文集の販路を探して学内をうろうろし、里志は宣伝という名目でイベント参加を楽しみ、摩耶花は漫研で先輩と対立しながらも自分の仕事をこなし、ホータローは部室で文集の店番と言いながら省エネ。バラバラに過ごす古典部員たちが、やがて事件の欠片を部室に持ち帰り、それによって「十文字」事件が浮かび上がる。

様々に行動する部員たちだが、イベントを楽しむ里志が面白いのだ。クイズ大会で活躍したかと思えば、千反田と摩耶花を誘って料理ファイトに参戦。これら里志の行動が学園物の魅力ぐぐっと盛り上げる。そして省エネ待機中のホータローの前には変わった客が登場し、書けない万年筆からワッペン、ワッペンから水鉄砲と、何故かわらしべ長者をしていく。その結果、訪れた姉が残していった同人漫画が、「十文字」事件の鍵となる。

ミステリについては触れることをしないが、これまで読んだシリーズ作品の中で本書が一番好きかも。摩耶花の目線は少しだるかったが、古典部員たちの各々に興味をもつ事柄の違いや、個性がみごとに表現されていて、読んでいて楽しかった。これまで陰の薄かった里志や、千反田の天然ぶりが強調されていて、まったく飽きがこずに最後まで読むことができた。惜しかったのは、登場しないホータローの姉の影響力が、今回はちょっと小さかったことだけ。あの姉ちゃんが今回は何をやらかしてくれるのか、と楽しみにしていただけに、その部分のインパクトが弱かった。だけど、作品自体はすっごく面白かったのだ。

この作品は好きだーー!

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米澤穂信
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    2007

12.20

「キャベツ」石井睦美

キャベツキャベツ
(2007/11/01)
石井 睦美

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中学二年のときにおやじが死んで、これまで外で働いたことがないおふくろが、会社勤めを始めた。その勤め初日に帰ってきたときの、瀕死のおふくろと幼い妹の眠り込む姿を見て、二人を守らなくてはと強く思った兄は、家族のためにごはんの仕度をするようになった。そしてお兄ちゃんは大学生になり、料理だけでなく、掃除、洗濯、と家事全般をこなす主婦もどきになり、妹の美沙は生意気で口うるさい高校二年生になった。そんなある日、美沙が恋人のいないお兄ちゃんに、いちばんの友達を紹介し、デートまでお膳立てしてきた。肩よりすこし長い髪で、目の大きなきれいな子、かこちゃんだった。

薀蓄野郎で妄想癖のあるお兄ちゃんと、食いしん坊で言葉知らずな妹が、とにかく仲が良い。自分にも妹という妙ないきものがいるので、兄と妹のやり取りや、妹の身勝手な行動は笑えた。生意気で、口が達者で、兄を便利な道具のように上手く操縦するのだ。そのくせ何も手伝いをしてくれない。うちの妹もそうだが、兄は妹に何も求めてはいけないし、やってくれるだろうと期待を持つとバカをみる。とにかく妹とは、常識では計り知れない変ないきものなのだ。うちの場合、ここまでべったりの兄妹ではないが、兄が妹に気遣うものの、妹はそれに気付かないという兄妹の関係に、ウンウンその通り、とすごく共感できて親近感がわいた。未だに便利屋をしてしまう自分が、少し情けないのだが。

しかし、本書の妹は家のことは手伝わないが、すごく兄思いのいい子。かこちゃんを紹介して、さらにくっ付けようとする。すごく感じのいい子で、きれいな女の子だから、かこちゃんに惹かれるんだけど、兄としては、妹の友達とどうにかなってしまうのは、やっぱよくないんじゃないか、と抵抗を感じるのはよくわかる。実際に家に帰って「今日のデートはどうだった?」なんてことを聞かれても、恥ずかしくて答えられないし、友達だから、「お兄ちゃん、どうだった?」なんて会話されてしまうのを想像すると、変な汗がたっぷりでそう。でもかこちゃんは勿体無いよなあ。

そんな仲の良い兄妹でも喧嘩はある。それが過去から引きずっている思いだから、自分たちではどうしようもない。父が生きていた頃の幸せだった風景を思い出し、あのままがよかった、なんて言われるとつらいよ。だけど、この兄妹なら仲良しのままずっと過ごしていきそう。お互いに依存しすぎだとも言えるけど。

お兄ちゃんが成長しないのは少しはがゆいのだが、気持ちの良い兄妹でかわいらしかった。うちの妹もこれぐらい可愛げがあればなあ。ちょっと無いものねだりをしてみたくなった。そういえば兄妹のお話ってめずらしいよな。とってもキュートですごく面白かったです。

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石井睦美
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    2007

12.19

「凸凹デイズ」山本幸久

凸凹デイズ凸凹デイズ
(2005/10/25)
山本 幸久

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和室1Kのボロアパートが事務所で、大滝、黒川、凪海のたった3人という弱小デザイン事務所の凹組は、閑古鳥が鳴く慈極園遊園地のリニューアルプラン・コンペに参加し、新人の凪海が描いたキャラクター、デビゾーとオニノスケが採用されるも、メインロゴは新進気鋭のデザイン事務所QQQが担当することになった。そのQQQの女社長というのは、10年前に凹組を立ち上げたときの創設メンバーの1人で、大きな仕事がしたいと凹組を去った醐宮だった。そして凪海は出向という形でQQQに通うことに。大滝、黒川、凪海たち現在の凹組と、クロ、ゴミヤ、オータキたち10年前の凹組の青春物語が描かれたお仕事小説です。

いやー、面白かった。絶賛しちゃっていいですかね。

まずは現在の凹組は、おじさまたちに頼りきった凪海が、自分が子供の頃から大事にしていた自作のデビゾーとオニノスケを世に出すために、醐宮さんとコンビを組んで毎日を過ごすことになる。そこで、大滝先輩たちと醐宮が何故反発しているのかを知り、さらに自分が知らなかった凹組男ふたりのことを知る醐宮さんに嫉妬しながらも、同年代の人たちと一緒に働くことでこれまでにない楽しさを味わう。そして、女社長として頑張る醐宮さんの本音を少しずつ知っていく。少しずつ成長していく凪海は、醐宮さんの引き抜きの話に心が揺れながらも、おじさまたちに会うたびに、自分の居場所は凹組だという思いを強める。

一方過去の凹組は、オータキがバイトすることになったデザイン事務所で、すでに働いていたクロやゴミヤさんと出会う。そしてシャチョーと喧嘩して事務所を辞めてしまったオータキと、後に辞めた二人が、3人でやっていこうと凹組を起こす。そして地道な営業で仕事を少しずつ増やすが、上昇志向の強いゴミヤさんの勧めで、大きな賞をとって大きな仕事をしようとコンクールに応募する。クロの才能を嫉妬したり、ゴミヤさんへの下心を必死に押さえながら、オータキは自分に出来ることを精一杯して、毎日を過ごしていく。

単純な主人公の成長物語ではなく、現在の立場や過去の因果をからめて、それぞれの人間ドラマを読ませてゆく。ただ、読み始めは少し戸惑った。凪海に優しくて頼られる現在の大滝と、不安を抱える青臭い過去のオータキが、同じ人物とは思えないほど違うのだ。しかし読み進めていくと、3人で夢を追いかけて何かを成そうと結束したがゆえに、男ふたりから離れていったゴミヤとの微妙な関係やら、地味な仕事を続ける凹組と、社員を多数抱えて派手に仕事する醐宮との対比が面白いし、その地味な仕事しか知らなかった凪海が、派手な醐宮のもとで働く姿も面白い。

本書の主人公は凪海という体裁を取っているが、本当は違う道を歩むことになった、オータキとクロ、ゴミヤの旧凹組の面々が主人公だと思う。彼らが違う素質を持ちながら、やがて一緒の夢を持ち、そして決別するが同じデザインという仕事を続ける。そこに凪海という新しい風が加わることで、決別した昔の仲間が・・・。むう、これ以上は言えない。

とにかくラストがめっちゃ面白かった。最後はものすごいベタなのだが、あのケータイを奪い合う場面は、何度も読み返してしまうほどの魅力があった。ネタバレを恐れて書いたので、この作品の面白さを充分に引き出せない、というか自分の文章力の無さに減滅する。山本作品のマイベストを度々更新したが、現時点で本書が最高に面白かった。これを超える作品を今後の山本さんに期待したい。これの続編もありだーー!(希望)

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山本幸久
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    2007

12.19

「春を嫌いになった理由」誉田哲也

春を嫌いになった理由(わけ)春を嫌いになった理由(わけ)
(2005/01)
誉田 哲也

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通訳者志望のプ-タロー・秋川瑞希は、テレビ番組「解決! 超能力捜査班」のプロデューサーである叔母の名倉織江から、初来日する霊能力者・エステラの通訳兼世話役を無理やり押し付けられた。そして収録日、若い男の幽霊が相次いで目撃されている現場で、エステラの霊視通りに行動した番組スタッフは、廃墟ビルの最上階から白骨死体を発見する。十六年前のあの悪夢から霊能力を毛嫌いしている瑞希は「霊視も死体もヤラセなのでは?」と疑いを抱きつつ、生放送本番に挑むがエステラが突然トランス状態になり、驚くべき言葉を語りだした。

一方、蛇頭に金を払って密入国してきた中国人の兄妹がいた。大金持ちを夢見て昼夜一生懸命働くものの、差別のこもった目線を浴びるうちに、日本人から金をかすめ取ってやる、とすれていく兄。そんな時に妹が入管に摘発され行方がわからなくなる。その妹を助けるにはさらなる大金が必要になった兄は、ある日本人の保険証や運転免許証の入ったカバンを偶然手に入れ、サラ金から身分を偽って金を引き出す悪事に走ってしまう。その事によって、人を殺すことなど何とも思わない裏世界の住人、台湾流氓の月(ユエ)という人物に兄は追われることになる。

上手い。そして面白い。イマドキの女性と霊能力者のコンビがおくるストーリーと、密入国した中国人男性がたどる悲劇が、各々平行して進み、やがてある一点で交わる。誉田さんが本書のようなパズラー小説を描いていたなんて驚き。しかもデビュー二作目なのに結構イケてるではないか。こういうのは個人的に大好きなのだ。

甘ったれなとこがあるが、瑞希ちゃんがとにかく可愛くてラブ。(男受けするタイプ) その瑞希のおばちゃんも個性的で面白いし、エステラさんの持つ温かな雰囲気も良かった。ただ中国人サイドの読み始めは日本人ゆえに反感を感じた。密入国に至る経緯や海路の苦労、しだいに密入国という立場を忘れてヒガむようになる姿などは、可哀想とは思えないし、勝手な逆恨みをしてくれるなと言いたい。

あまり思い出したくないのだが、以前出会った中国人の物の考え方や判断基準にすごく振り回されたことがある。とにかく意思の疎通が合わないし、あらゆることが癇に障ったのだ。それ以降に出会った人たちも、似たり寄ったりで好きになれなかった。その出会った人たち=中国人、という見方はしたくないが、もう関わりたくない、というのが個人的な本音だ。ジェット・リーは好きだけど。ワン・チャイ、最高!

本書の話に戻るが、中国人男性が自分のした悪事を反省しないまま、余儀なく逃亡生活を送ることになる。この辺りから、中国人のストーリーもだんだん面白くなってきて、ちらほらと瑞希たちの生放送番組とからんで、事実が少しずつ見えてくる。その生放送の進行とともに、ある家族が視聴者の目線でテレビを観ているのだが、これが無責任で自由な観かたをしている。これがすごく良い雰囲気を醸し出していた。

やがて生放送も終盤に差し掛かり、エステラさんの透視、逃げる中国人、第三者だった視聴者たちが結びつき、ある人物が隠していた仕掛けが浮かび上がってくる。それによって残りのピースがバシッバシッと埋まっていくのだが、それがブラボーとしか言いようのない大掛かりなモノで、一読者はまんまと誉田さんにしてやられてしまった。それにラストのオチがまた爽やかで、ほんわかした温かな余韻を与えてくれた。先にも書いたが、構成やら、トリックやら、人物造詣が、とにかく上手いのだ。こういう誉田作品ならまた読みたいもんだ。

最後には瑞希ちゃんのトラウマも克服できて良かったね。本人は嬉しくないかもしれないが。しかし、中国人は自分が悪いことをしたと反省の念があったのだろうか。そこが抜けていたのが、少し残念。だけど大変面白い作品であることは間違いない。

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誉田哲也
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    2007

12.18

「図書館の水脈」竹内真

図書館の水脈 (ダ・ヴィンチ・ブックス)図書館の水脈 (ダ・ヴィンチ・ブックス)
(2004/04)
竹内 真

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売れない作家の甲町岳人は、喜多見駅前の本屋で買った、「海辺のカフカ」という物語に導かれるように行く当てのない旅に出た。そして電車に揺られ、かつて図書館に泊まって、雑著コーナーで見つけた、世界の森羅万象を紐解くトンデモ本を読み漁ったことなどを思いだしながら、読書中の「海辺のカフカ」に出てくる鰻重が食べたくなって浜松へ行き、讃岐うどんが食べたくなって四国を目指す。

勘違いから恋が始まったナズナとワタルは、読書好きのナズナの影響で、ワタルも読書が好きになり、読んだ本について語り合うのが二人の楽しみになる。そして二人は村上春樹のHPに寄せられたファンのコメントで、「海辺のカフカ」を読んで四国に行く人がいることを知り、本の主人公のように、高速バスに乗って高松まで讃岐うどんを食べに行く旅に出る。

そして同じ物語に導かれた二組は、高松のある讃岐うどん屋で偶然に巡り合い、旅は道連れと一緒に行動するようになる。そこでワタルが持つ「海辺のカフカ」を特集したタウン誌の中に、三ツ木美和の名前を見つけた甲町は、自分が作家になるきっかけになった、深夜の図書館で読んだ美羽水月という著者をダブらせ、三人は彼女を訪ねてみることにした。

村上春樹の「海辺のカフカ」をオマージュした作品らしいのだが、実は村上春樹を読んだことがない。だからどこまでネタバレしているのかも分からないし、主人公たちのように思い入れもない。しかし未読でも充分に楽しむことができた。作家先生の原点回顧するストーリーと、カップルの青春ロードノベルとの融合が上手く絡み合って、スマートな作品に仕上がっている。

特に高松や徳島に住んでいる方や縁がある方には喜ばれるだろう。その他にはユースケ・サンタマリア主演の映画「UDON」などが好きな方にはお薦め。それに本好きならナズナとワタルのようなカップルにはすごく憧れると思う。自分も二人の会話や何気ない部屋での場面に憧れたクチだ。カップルが同じ部屋に居て、男性が本を読む事に集中していても、そんな男性にかまって欲しいという不満を覚えずに優しく見守る女性。お互いに読書が好きという相手だからこそ、こんな風景が成り立つのだ。

こんな関係は恋人同士だけではなく、気の合う友達にも当てはまる。自分の部屋もしくは友達の部屋で一緒に居るのだが、二人は別々に漫画を読むだけでまったく会話をしない。しかし、何故かその時間というか空間が妙に居心地が良いのだ。お互いの気配というか一緒にいる安心感というか、なんともいえぬ安らぎが生まれるのだ。こんな関係が築けるのは極まれで、それが友達を親友と呼べる基準なのかは分からないが、中々築けるものではない。そんな環境を彼女で作ることができたワタルがすごく羨ましい。

そして物語を読むことで、世代を超えて人と人が繋がることができる。こういう本がもたらす縁ってなんか良い。今だったらブログやSNSがそう。唐突ですが、いつもお世話になっております。今後ともよろしくお願いします。 

本書にはたくさんの作品名や作家名が出てきたが、芦原すなおさんとパーマンぐらいしか読んでいない。これを機会に、村上春樹にもチャレンジしたくなった。何故かベストセラーって読む気にならない天邪鬼をこの際に返上してみるか。だけど、その前に竹内真さんの他の作品を読まねばならぬ。なぜなら竹内真が好きだから。ぽっ。

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竹内真
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    2007

12.18

「魔王」伊坂幸太郎

魔王魔王
(2005/10/20)
伊坂 幸太郎

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「魔王」と「呼吸」の姉妹篇二作を収録。

「魔王」
子供の頃に両親を交通事故で亡くし、安藤は弟の潤也とその彼女の詩織ちゃんと三人で暮らしている。《考えろ》と昔から頭の中で言葉を繰り返す安藤は、衆議院解散がほぼ確実になり、急激に人気が膨らんだ野党の党首・犬養に独裁者の匂いを感じ、その犬養に簡単に踊らされていく国民を見て、このままではこの国がファシズムに向うのではないか、と危機感を募らせる。そして、国内でアメリカへの反感が異状に高まってゆく中、安藤だけが魔王の存在に気づいてしまう。恐れを感じた安藤は、突然身に備わった特殊な能力である腹話術を使って、一人立ち向かおうとする。

「呼吸」
先の「魔王」から五年がたち、詩織と潤也も結婚して仙台に移ってきた。詩織はプラスチック製品のメーカーで派遣社員として働き、潤也は知り合いのツテで環境調査をする会社で働いている。そして潤也は昔からくじ運が良かったのだが、何かと運が良くなりはじめ、一番顕著だったのはじゃんけんだった。その潤也の能力がどれぐらいの力なのか、二人は探ってゆく。その頃世間では、国民投票による憲法改正が話題を占めていた。

これは異色な作品だ。まず兄妹が持った能力から触れていこう。安藤の名づけた腹話術とは、安藤が内心で唱えた台詞を、標的にした人物に念を送ると、その人物は同じ台詞を叫んでしまう、という代物。その能力を発動するには条件があって、まず安藤が見ている人物で、有効距離が歩幅で三十歩程度、そして人間限定という、よく考えれば少ししょぼい能力だ。弟の潤也の能力は無敵のじゃんけんと、ある確率まで的中させる運の良さ。こちらの能力の方が身近で実用的な能力だ。

「魔王」でのメディアを使った大衆に対する誘導や、簡単に操られていつの間にか乗ってしまう人々。植え付けられた思想や、人が集まったときの群集心理と、かなり怖かった。これと似たことが数年前にあって、チルドレンなんて呼ばれる人たちが誕生した。他にも名前は出さないがボクシング関連でも数ヶ月前に一斉バッシングがあった。これらニュースに対して、我が物顔で発言する厚顔な人物たちが、自分は大嫌いだ。当然のように意見を押し付けるテレビも大嫌い。だからと言うわけではないが、自分はテレビをほとんど観ない。そんなメディアに伊坂さんが警笛を鳴らしたメッセージだと、自分は受け取ったのだが、このような読み方をしたのは自分だけだろうか。

「呼吸」での潤也と詩織がテレビを観なくなったので本を読むようなったとあったが、自分も同じように本ばかりを読む。テレビなんてほんといらねえ。他にも政治や住民投票のずるさなどが詳しく語られていたが、目からウロコとはまさにこれらのことだろう。ストーリー的には中途半端に終わったように思ったが、雑誌「ダ・ヴィンチ1月号」によると、来年夏に、五十年後が描かれた続編が出るらしい。よってそちらを楽しみに待つことにしよう。

伊坂さんの本だからという理由で予備知識なく手に取ったが、簡単に流される日本人の有様がリアルで、日頃思っていたことと重なる部分が多々あったので、共感しながら読むことができた。そして、こつこつ溜めたお金を潤也はどのように使うのだろうか、来年の夏が待ち遠しいのである。


作品リンク
「死神の精度」:千葉
「グラスホッパー」:ガブリエル・カッソ

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伊坂幸太郎
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    2007

12.17

「予知夢」東野圭吾

予知夢 (文春文庫)予知夢 (文春文庫)
(2003/08)
東野 圭吾

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現代のオカルトとしか思えない事件が起こると、警視庁捜査一課の草薙刑事は、大学時代からの友人である物理学者の湯川のもとへ駆け込む。ガリレオ先生こと湯川が事件を解決するシリーズ二作目です。

「夢想る」
ストーカー男が逮捕された。しかし、犯人がなぜあの娘を狙ったのかという動機が理解できない。二十七歳の犯人は、彼女と自分は結ばれる運命にあり、十七年前から決まっていたという。それを証拠付けるように、男は小学校四年生の時に、将来結婚する女の子の夢をみて、作文に女の子の名前まで書いていた。

「霊視る」
大学時代の同級生が惚れた女性を男は横取りをし、二人は恋人関係になった。そんな事とは知らない同級生は女性に交際を申し出るが、たがの外れたような女性の罵倒にあい、気がついたら首を絞めていた。その事件が発覚したきっかけは、遠く離れた場所にいた恋人だった男が、いるはずのない女性の姿を見たことだった。

「騒霊ぐ」
失踪した夫を探して妻はある家に行き当たった。その家に住んでいたおばあさんは最近亡くなり、身内だという男女四人が暮らし始めたが、彼らは毎晩同じ時刻にどこかへ出かける。その隙に妻が家に近寄ると、中から何やら物音が聞こえた。そのことを相談された草薙と妻が留守をねらって忍び込んでみると、突然家が揺れるポルダーガイストが起こった。

「絞殺る」
町工場を経営する男が、貸した金を返してもらうと家を出たまま、翌日ビジネスホテルの部屋で、絞殺死体で発見された。その部屋に敷かれたカーペットには、小さな焦げたあとがあり、死体にはふつうの絞殺ではつかない擦過傷があった。そして男には多額の保険金が掛けられ、奥さんにはアリバイがなかった。

「予知る」
不倫中の男が住むマンションと、向かいあうマンションで暮らす女。その女が妻と別れない男への当てつけに、電話で脅迫しながら目前で首つり自殺をとげた。その後、不倫していた男が住む部屋の、隣の住人である少女が、事件発生の三日前の深夜に、自殺のあった部屋で首つり自殺をする女を見ていたことが明らかになる。

前作よりも派手さはないが、理系な描写がおさえられたことによって、読みやすかったし、こちらの方が面白かった。それに湯川の変人ぶりも控えめで、すんなりと世界に入っていくことができた。ただ、トリックの謎解きはやっぱりお手上げ状態で、これだけは諦めるしかない。しかし、シリーズの二作目だからか、それとも筆力が増したのか、前作よりも小奇麗にまとまっているように思えた。続編の場合、質が落ちてしまうことがよくありがちなのだが、その点本書は面白さがアップしていたのは、さすがは東野さんと言えるのだ。

テレビの放送終了までになんとか読むことができた。やるじゃん、自分。だけど、テレビ放送はほとんど観てないんだよなあ。何を競争してるんだか、全然意味がないし。

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東野圭吾
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    2007

12.17

「ラブかストーリー」松久淳+田中渉

ラブかストーリーラブかストーリー
(2007/08/30)
松久 淳/田中 渉

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内容紹介が難しいと判断しましたので、帯の文句を借ります。

おそらく500メートル、いや1キロを見渡しても「一番かっこいい❤」と思われること間違いなしの超美形男子高校生・永峰達也は、ある日、通学途中に清楚な美少女を見かける。「か、かわいい・・・」しかし、そこは、120%妄想男の達也。「告白」→「メアドの交換」→「初デート」→「それから・・・」の脳内シミュレーションのみが日々バージョン・アップされ、声をかけるまでに1年半経過。さらに、そこから手を繋ぐこともできない状態が1年も続いた。(ああ、もう、じれったい!!!)。ところが、ひょんなことから、ふたりは「ともに物語を書く」という共通の趣味があることに気付く―。

見た目は「ちょーかっこいい」のだが、内面は人には言えない趣味趣向を多数もつ、いわゆるオタク少年で、将来の夢は小説を書く作家になりたいという、私立男子校に通う三年生の永峰達也。ある日、読書に夢中な清楚な美少女を、駅のホームで見かけて一目惚れ。それが、轟未来だった。

断トツのルックスを誇る男という、勝手に乗せられた神輿から降り方がわからずに、逆にいまさら女の子をどうやって誘っていいのかすらわからない。いわゆるイケメンなのに奥手で、おまけに童貞くん。しかし、友達には本当の自分を隠して、モテキャラの仮面を被り続けている。だから、女の子との接し方なんて相談すら出来ずに、もんもんと妄想ばかりが膨らむ危ないヤツ。

そんな彼と真逆なのが、達也の家族たち。両親にしろ姉夫婦にしろ、性について砕けすぎるオープンな家族たち。達也曰く淫乱な人たちの、はちゃめちゃぶりがすごく面白かった。自分の家族がこんなのだったら困ってしまうが、他所のおうちなら笑っていられる。それに義兄に連れられて行った、バーアモーレ・ザ・サードの三兄弟が個性強烈でぶっ飛んでいる。かなり下品で疲れる部分もあるが、これも傍から見る分なら許容範囲。決してお友達にはなりたくないがね。

ただ、達也の目線で語られるので、未来の印象が若干薄い。自分からメアドを渡してくるのだが、何を考えているのかが中々見えてこない。積極的な女の子なのか、達也をからかっているのか、とずっと半信半疑で読んでいくしかないのだ。

それとは逆に、中学時代の同級生だった伸子は、乙女心が分かりやすくて好印象だった。好き光線を出しまくっているのだが、鈍感な達也には通じない。こんないい子の存在に気付かない達也ってバカバカと言いたいところだが、達也がポロリと漏らした本音は同感だった。「自分と好きなことが一緒だったりすると嬉しい。同じ小説が好きだったり、同じ作家が好きだったり」というセリフ。年のわりには青い考えか、ははっ。

ただ、主人公の妄想が暴走しまくっているので、好き嫌いが別れるかもしれない。わかると共感するか、キモいと嫌悪するか、面白いと第三者の目線を持てるか、それらは読者の好みによるところ。自分は妄想系が好きなので面白く読めた。けっして万人受けはしないだろうが、他の作品も読んでみたいと思えた。この人たちって、「天国の本屋」の作家だったのね。ぜひ、読まなくては。遅い?? とにかく笑えたー!

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松久淳+田中渉
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