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    2008

02.29

「ユングフラウ」芦原すなお

ユングフラウユングフラウ
(2008/01)
芦原 すなお

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学生時代からつづく恋人の優太との距離を感じ始めた編集者の沢井翠、26歳。そんな中、文芸誌から女性誌への出向を命じられる。新たに担当となったエッセイストの厚木には言い寄られ、前から担当の小説家の梨原先生には珍妙な相談を受け、カメラマンの岩下からも言い寄られ、恋人の優太には友達の真美と浮気され、男ってなんで自分勝手なんだと憤慨し、とまどいつつも、仕事に、恋に、自分なりの生き方を模索していく。

まず「ユングフラウ」という聞きなれない名詞だが、アルプス山脈の高峰の名称で、若い女性の意味もあるとのこと。それらを踏まえて表紙のイラストを見てみると、山脈に見えて、実は裸の女性がうつ伏せになっている姿に気付く。こういう凝り方は好きだ。

出版社に勤め出して初めてもらったボーナスで大学時代の友人と旅行して、陽光を受けて銀色に輝くユングフラウの頂を見上げて涙を流し、感動した翠。その時に撮ったユングフラウの写真をパネルにして部屋に飾り、あの感動を糧に日々を送る。時にイライラ、時にくよくよ、そしてイライラ、またもやイライラと、えーい、テメエは情緒不安定か、それとも大人になりきれない女子高生か、とこちらまでイライラする部分はあるが、それ以外は芦原節にぷぷっと笑えてしまう。主人公の脳内妄想にすごくユーモアがあって、これよ、これを期待していたのよ、とテンションが上がるのだ。

主人公の翠が持つ自分勝手な考え方や、すぐに抱かれてしまう尻軽さに、共感できる読者は少ないだろう。それに、恋人の優太、友達の真美、エッセイストの厚木、同僚のさよりと、身勝手で超個性的な人物がたんと登場するので、拒否反応が出る読者がいるかもしれない。しかし、こういう心持ちで読んでみてはどうだろうか。ダメな人は何をしてもダメだな、他人の振り見て我が振り直せではないが、エゴの強い喜劇を観るような大らかな気持ちで読む。そして翠が作中で漏らす、どいつもこいつも、……そして、わたしも……。という言葉の意味そのまま、なんて。

作中に出てくる作家の梨原先生って、自虐した芦原先生本人がモデルのように思えた。この梨原先生が本文の中でこう語っている。若い女性が主人公の作品を書きたいが、そういう女性が身近にいない。だからつき合いもない。だから何を考えているのかさっぱりわからない。しかし著者の芦原先生は、本書で若い女性を主人公に書きあげている。苦労したってことかしら。こういったちょいとしたユーモア部分にも、ぐふふと笑いがこみ上げてくる。そして本書のラストでは…。これだけは言えないか。芦原先生、いい役をあてすぎ。でもこんなのは大好きだ。だから梨原先生のファンになってしまい、翠とのやり取りが出てくるたびに期待して、そして爆笑してしまった。

そういえば、「ミミズクとオリーブ」の作家先生も、芦原先生がモデルだと思ったのだが。またどこかで自虐した芦原先生の影が登場してくれることを期待しつつ、満足してぱたりと本を閉じることが出来ました。面白かったです。

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芦原すなお
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    2008

02.29

2月に遣った書籍代

個人メモです。

合計13.232円


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自分への戒め
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    2008

02.29

2月に買った書籍

個人メモです。


TVJ (文春文庫 い 71-1)TVJ (文春文庫 い 71-1)
(2008/02/08)
五十嵐 貴久

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扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫 い 17-1)扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫 い 17-1)
(2008/02/08)
石持 浅海

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死神の精度 (文春文庫 (い70-1))死神の精度 (文春文庫 (い70-1))
(2008/02/08)
伊坂 幸太郎

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スモールトーク (角川文庫 い 63-1)スモールトーク (角川文庫 い 63-1)
(2008/02)
絲山 秋子

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てるてるあした (幻冬舎文庫 か 11-2)てるてるあした (幻冬舎文庫 か 11-2)
(2008/02)
加納 朋子

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先端で、さすわさされるわそらええわ先端で、さすわさされるわそらええわ
(2007/12)
川上 未映子

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ウェディング・ドレス (講談社文庫 く 62-1)ウェディング・ドレス (講談社文庫 く 62-1)
(2008/02/15)
黒田 研二

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桜姫 (角川文庫 こ 19-2)桜姫 (角川文庫 こ 19-2)
(2008/02)
近藤 史恵

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赤×ピンク―Sakuraba Kazuki Collection (角川文庫 さ 48-1)赤×ピンク―Sakuraba Kazuki Collection (角川文庫 さ 48-1)
(2008/02)
桜庭 一樹

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鎮火報―Fire’s Out (講談社文庫 た 101-2)鎮火報―Fire’s Out (講談社文庫 た 101-2)
(2008/02/15)
日明 恩

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こうふく みどりのこうふく みどりの
(2008/02/28)
西 加奈子

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完全犯罪に猫は何匹必要か? (光文社文庫)完全犯罪に猫は何匹必要か? (光文社文庫)
(2008/02/07)
東川 篤哉

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むかしのはなし (幻冬舎文庫 み 12-1)むかしのはなし (幻冬舎文庫 み 12-1)
(2008/02)
三浦 しをん

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乱暴と待機 (ダ・ヴィンチブックス)乱暴と待機 (ダ・ヴィンチブックス)
(2008/02/27)
本谷有希子

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犬はどこだ (創元推理文庫 M よ 1-4)犬はどこだ (創元推理文庫 M よ 1-4)
(2008/02)
米澤 穂信

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購入した古本。
ジェネラル・ルージュの凱旋ジェネラル・ルージュの凱旋
(2007/04/07)
海堂 尊

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ブラックペアン1988ブラックペアン1988
(2007/09/21)
海堂 尊

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    2008

02.28

「不良少女」樋口有介

不良少女 (創元推理文庫 M ひ 3-9)不良少女 (創元推理文庫 M ひ 3-9)
(2007/11)
樋口 有介

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柚木草平シリーズ第七弾。今回は短編集。

「秋の手紙」
吉島冴子の姪御に届けられた二ヶ月で八通のラブレター。高校二年生の彼女は送り主の歯医者は見に覚えがないと言い、一方の歯医者は彼女の方からしつこく電話をしてきて困っているし、手紙の筆跡も自分のものではないと言う。両者の意見が噛み合っていないので、柚木は調べてみることにする。

「薔薇虫」
担当編集者の小高直海に前借りを拒否されるが、死んだ元代議士宅で連続して起こった犬猫の怪死の謎というアルバイトを紹介された。乗り気ではなかったが、多額の謝礼に恥も外聞も捨ててその話に飛びついた柚木。犬猫の死因など簡単に調べがつくと思いきや、未亡人もひとり娘もとびきりのいい女で、元代議士の死因にも疑問が生じる。

「不良少女」
コンビニで万引きをしていた金髪少女を、何故か部屋に泊めることになった柚木。野良猫を一晩だけ拾ったと自分に言い聞かせるが、少女のペースに引きずられてしまう永遠の三十八歳。翌朝目覚めてみると彼女の姿はなく、財布から二万円だけ抜かれていた。その義理からか、事件に巻き込まれた彼女の身元引受人となり、その後も関わることになった。

「スペインの海」
バー・クロコダイルで意気投合した美女と一夜を共にした柚木だが、女性から近づいてきたのは、己のキャリアをねらってのことだと先刻承知だった。彼女は男と付き合うエスコート業、ありていに言えば売春をしていたのだが、トラブルが起こりそうなので、契約する男たちを調査して欲しいと依頼してきた。そしてそれ以来姿を消してしまった。

「名探偵の自筆調書」
これはオマケかな。柚木草平が自分を語っています。

一冊を読んでの感想になるが、「秋の手紙」は、依頼者があっさり系の冴子さんだからか、内容もあっさり系。ひねりも盛り上がりもないまま、ほんとにあっさり終わってしまった。次の「薔薇虫」は、前作でレギュラー入りした小高直海が出てくるのだが、すでに柚木の扱いをたくみにこなしていて、これだけでも笑えるのだが、元代議士の娘とのやり取りもむふふでいい感じ。そして表題作である「不良少女」は、柚木が少女に一杯食わされたり、翻弄されたりして、この先どうなっていくのだろうと興味を持った辺りで、ぷつんと前触れなく終わってしまった。はっきり言って消化不良。最後の「スペインの海」は、クロコダイルのマスターの武藤と柚木との毎度の会話が最高に面白い。夜明けのコーヒーを一度くらい一緒に飲んであげればいいのに、と無責任に思ったり、本当に飲んだらどうしよう、とビビッてみたり。オマケの「名探偵の自筆調書」は、柚木の自己紹介というか、読者のためにちょいと詳しい名刺を差し出したというか、そのようなもの。

雑誌連載で柚木シリーズは続いているみたいだが、これでシリーズ作は今のところ打ち止めになってしまった。とりあえずこの間に、シリーズ以外の作品でも読んでみようかしら。


柚木シリーズ
「彼女はたぶん魔法を使う」
「初恋よ、さよならのキスをしよう」
「探偵は今夜も憂鬱」
「刺青白書」
「夢の終わりとそのつづき」
「誰もわたしを愛さない」
「不良少女」
「捨て猫という名前の猫」

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樋口有介
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    2008

02.27

「難儀でござる」岩井三四二

難儀でござる難儀でござる
(2006/07/21)
岩井 三四二

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信長や秀吉といった戦国武将の派手な活躍があった中で、地味だけど難儀を背負い込んだ男たちがいた。日本史が好きな方なら知っている名だが、多くの方は知らない人物。そんな無名な人物や出来事にスポットを当てた八つの短編集。

「二千人返せ」
武田家の新米家老・甘利備前守は、駿河今川家の使者との和解交渉を主君に任された。これは暴君で有名な武田信虎に仕えるのはいかに大変か。なにがあっても主は主、逆らうわけにはいかぬ、という家臣の苦労話。信虎は後に甲斐から追放されている。その後継者が武田信玄。

「しょんべん小僧竹千代」
情勢不安定な三河領主が急死し、尾張で人質になっている後継者・竹千代の奪還を請け負った今川家の老師・雪斎。東海一の弓取りと呼ばれるまでになった今川家だが、その背景には、当主今川義元の信頼厚い政治・軍事に長けた太原雪斎がいた。その軍師ぶりが面白い。竹千代とは後の家康。

「信長を口説く七つの方法」
先帝の十三回忌を行うには二百貫文の儀式費用が必要。そこで織田信長に無心することにした権大納言山科言継。当時の禁裏は金なし実力なしで、あるのは名ばかりの権威と、したたかな権謀術。この狐狸か化け物かという公家の話を読むと吐き気がするのだが、これは新鮮で中々良い。

「守ってあげたい」
武田家との内通の噂が流れた稲葉家だが、世継ぎの彦六は右往左往するばかり。原因は未だ隠居をしない血気盛んな老父・一鉄だった。美濃三人衆の一人、稲葉一鉄の処世にうなってしまう。いつまでも元気な親父に翻弄される息子はちとかわいそう。でも最後は、ぽんぽんと肩を叩いてやりたくなった。

「山を返せ」
信濃国の小池村と内田村が山争いで訴訟するも、中々結論が下されない。亡き信玄公は良かったのに、と愚痴をこぼしながらも奮闘するが、そこに領主が横ヤリを入れてきた。こういった民衆に焦点をあてる作品はめずらしい。それだけに読み応えがある。これが一番のお気に入り作品だった。

「羽根をください」
高天神城で半年の城番のはずが、徳川軍に包囲されて篭城中、というわけで、上総介の単身赴任も二年なってしまった。そこへ武田本軍の救援が来ないと報告が来て。武田家末期の哀れさ、そして離ればなれの妻はその時何をしていたかというブラックさ。可哀想だけど好きかも。

「一句、言うてみい」
武田家が滅び、恵林寺にも風雲がやって来た。そんな最中でも、雲水の修行は日々送られる。湖南は悟りがよくわからず、師の快川老師の悟りもニセモノかも知れぬと疑っていた。そこへ織田軍が現れた。有名なエピソードのあれです。安禅必ずしも山水を須いず、心頭滅却すれば火も自ずから涼し。

「蛍と呼ぶな」
東軍についた京極高次だが、居城の大津城は落城寸前。頼みの救援である徳川軍はまだ来ない。姉が秀吉のお気に入り、妻が淀君・徳川秀忠夫人と姉妹。女のおかげで出世したと影口を言われるのは断固赦せない。ここが己は武士だという見せ所だが。まあ、こんな人生もあるわな。ここは潔く姉と妻に感謝しときなさい。

タイトルの一言がすべてを語っている。「難儀でござる」な、と。


TBさせてもらいました。「また楽しからずや」

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その他の作家
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    2008

02.27

「ダックスフントのワープ」藤原伊織

ダックスフントのワープ (文春文庫)ダックスフントのワープ (文春文庫)
(2000/11)
藤原 伊織

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「ダックスフントのワープ」「ネズミ焼きの贈り物」「ノエル」「ユーレイ」の四編を収録。

「ダックスフントのワープ」
自閉的な少女・下路マリの家庭教師をする大学の心理学科に通う僕。彼女の心の病を治すため、《邪悪の意思の地獄の砂漠》にワープしたダックスフントの物語を話し始める。マリは徐々にそのストーリーに興味を持ち、日々の対話を経て症状は快方に向かっていくのだが、口を聞かなかった新しいママが壊れはじめた。

寓話が少女を正しい道に導いていくのだが、この語られる寓話に心が挽かれた。そしてマリ、僕、女教師と、人物たちがすごくドライで、ラストの衝撃度も乾いているのだが、不思議な余韻が残った。

「ネズミ焼きの贈り物」
チャイナドレスの濃い化粧の女の子が、哲学書を万引きして補導員に捕まっていた。その彼女の顔に記憶のあった僕は、千代と声をかけながら男を階段から蹴落として、その場から二人で逃げた。そして千代の兄であり僕の友達だった男の死に様と、ネズミを焼くという奇行を繰り返していたことを聞かされる。

これは…何が言いたいのかよくわからなかった。年をとって普通は成長するのだが、それ以外にも変化はあるということかしら。ちょいと解釈が難しい。

「ノエル」
高校一年生の翔子は、フトしたことがきっかけで、弟ノエルの出生の秘密を知ってしまった。それと同時に、姉弟でかわいがっていたフランス人形が、ノエルの亡き姉の形見だとも知ってしまう。翔子は何も知らない弟と共に、その人形を海へ捨てに行くことにした。

弟に流れる血の汚れというか、信じていたものの裏切りによってわいた怒り。それを弟に告げられないが、その代償としてかわいがっていた人形を憎むようになる。知って何かを行動するのと、知らぬまま行動しなければならないのは、どっちがつらいのだろうか。

「ユーレイ」
叔父の骨董店の店番をする僕の前に、ある日、女性のユーレイが訪ねてきた。この店に届くはずのあるものを待ちたい。だからこれから通わせてもらいたいと。こうして僕とユーレイは親しくなった。そして彼女がなぜユーレイになったのか、そして彼女の目的を知るのだが。

報われることのない切ない恋ですかね。ユーレイになると欲望は後退するとあったが、こんなにもあっさりしたラストだとは思わなかった。

ハードボイルドで有名な藤原伊織氏だが、処女作がこのような文学作品だとは知らなかった。だけど、派手さがない枯れた主人公だけはそのまま同じ。そこにじっと留まること。自分から何かをしようとしない。しかし何かに影響を及ぼしてしまう存在。これが藤原氏の特徴なのだろうか。まだ未読の作品が多くあるので、今後も読んでいきたいと思う。

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藤原伊織
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    2008

02.26

「先生と僕」坂木司

先生と僕先生と僕
(2007/12)
坂木 司

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伊藤二葉、十八歳。人が殺される小説は読めない、極度のこわがり屋。大学に入学して最初に出来た友人山田から、推理小説研究会へ誘われ、ついうなずいてしまった。そんな四月の夕暮れ。公演のベンチに腰掛けた僕は、やはりこの類の小説は無理だ、とため息をついて本を閉じた。そこへ少年がアルバイトをしないかと声をかけてきた。それが僕と先生の、運命の出会いだった。

瀬川隼人、十三歳。ただいま家庭教師募集中。ぼくの母さんが、中学に上がったらすぐに塾に通うか家庭教師をつけるか二択を迫ってきた。勉強を教えてもらう気はない。結構勉強ができるので、そんな時間があったら好きな本を読んでいたい。そこで家庭教師のふりをする秘密の契約を、公園で見かけた大学生に持ちかけた。

隼人がミステリマニアだったので、一時間は勉強、残りの一時間はミステリを教えてもらう、という内容で二人の話し合いは決まった。そのミステリが大好きな隼人は、身近で起こる小さな事件に首を突っ込みたがる。そこで二葉の持つ能力、視界を写真に撮るみたいにして記憶できる、というのを生かして次々に謎を解いてゆく。

古典に近い坂木風の連作短編ミステリかな。作品の中にミステリ小説がたくさん出てくるのだが、翻訳ものが多くて未読なものばかりだった。唯一読んでいたのが「ホームズ」だけ。でもこういうので知ると読みたくなってしまうから不思議。でもカタカナが苦手なんだけど。

内容は少しあっさり気味かな。二人が首を突っ込む事件を簡単に書いておきまする。
書店のギャル系雑誌に携帯番号と援助交際希望の付箋が貼られていた。...「先生と僕」 
火災のあったビルから消えたと思しき女の子二人。...「消えた歌声」 
区民プールで見かけた暗号のようなメモを取る区役所の人。...「逃げ水のいるプール」 
ギャラリーで個展を開いている商業っぽさのない女性。...「額縁の裏」 
固有名詞がなく値段だけ表示された怪しいペットショップのサイト。...「見えない盗品」

物事を疑いすぎて、しかも悪に精通しすぎの中学生。しかも極端な二面性があって、かなり冷徹な側面を見せる。美少年スマイルで女性をたぶらかすって、タチが悪すぎでないかい。一方の大学生は、極度のビビリ症で恐怖に対する妄想癖がすごいのなんの。そんな二人が、おまえら他に友達はおらんのかい、とツッコミたくなるぐらい、中学生と大学生のコンビが一緒に街へ出かける。そこの部分が出来すぎのように思えたのだが、作品自体は嫌いじゃない。慣れてみるとこれが案外いけるのだが、「額縁の裏」の強引さだけは好きになれなかった。キャラに少し難ありってとこかな。


TBさせてもらいました。「今日何読んだ?どうだった??」

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坂木司
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    2008

02.25

「海神の晩餐」若竹七海

海神(ネプチューン)の晩餐 (講談社文庫)海神(ネプチューン)の晩餐 (講談社文庫)
(2000/01)
若竹 七海

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一九一二年。タイタニック号に乗り合わせた作家は、悲劇の船と共に海に消えてしまった。そして時代は飛び、二十年後、一九三二年。資産家の家に生まれた本山高一郎は、苦労知らずの三代目。かつては神童とまで呼ばれたものだが、身を立てようという気概もなく、日々ごろごろと探偵小説を読むことに明け暮れていた。そこへ親戚一同集まって協議の結果、ここは荒治療、米国は沙市(シヤトル)に住む貿易商の知り合いのもとへ修行に出されることになった。

横浜から氷川丸に乗り込んだ本山高一郎こともとさんは、幼なじみの牧野照嗣ことテディと船上で再会した。そして二人は、日系二世の美少女サラと知り合い仲良くなる。10日間の航路を共にする他の船客たちは、サラの弟でやんちゃなミチオ、リチャアドと名付けられた元貴族院議員をしていた武松翁、夫婦の危機を向かえているジョージとエディスのレモン夫妻、米国官憲になった中国人の張大人、妻に頭の上がらないエド、立教大学のラッシュ教授、謎の使命を持つ女性などなど。

タイタニック号で命を失った作家の遺作らしい原稿を持ち込んでいた本山だが、その原稿の一部を何者かに盗まれてしまう。だがその事件がきっかけで、隠された暗号が原稿に忍ばされていたことを知る。そんな最中に、金髪女性の幽霊出現、金髪女性の死体消失、殺人未遂騒動など、次々起こる怪事件。航海中の船上を舞台にした長編ミステリ。

がっつり読めるボリュームたっぷりの大長編。吹雪の山荘、絶海の孤島ではなく、逃げ場のない船上ミステリ。そのような閉鎖された舞台で起こる原稿を譲った人物の謎、原稿を盗んだ犯人の謎、盗まれた探偵小説の解答の謎、金髪女性にまつわる怪事件の謎、ある船客の不思議な行動の謎、と謎、謎、謎のオンパレード。

それでいて血生臭さはまったくない。これはネタバレになるのかな…。そして恋や友情、船客たちの抱えた悩み、不穏な時代背景などが加味されて、こいつはすげえ作品、とおもわず言葉を漏らしてしまうような重厚なミステリだった。

上海事変や満州建国。日中関係がピリピリして、世界から見たら日本が暴走をし始めた時代。物語は太平洋戦争が始まる寸前で終わる。そんな時代背景ゆえの動機に、こういうのもありかなと思った。それにしても、エピローグの一九四一年、戦争直前の強制引き揚げ船に乗せられた日本人は何を思ったのだろうか。小説を読んでだが、歴史に触れた、と思えたラストだった。

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若竹七海
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    2008

02.24

「砂漠」伊坂幸太郎

砂漠砂漠
(2005/12/10)
伊坂 幸太郎

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仙台の大学に入学して、クラスの懇親会という名目で開かれたコンパ。どこかさめた気持ちで、クラスメイトを眺める北村に、お調子者の鳥井が声をかけてきた。そこへ強烈な登場と演説をする男が現れた。その男西嶋が、ぱかっと口を開き、「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」と明晰に断言した。その言葉に何かを感じた大学生が数人だけいた。

その強烈な個性を持った西嶋の誘いで麻雀をすることになった。場所はブルジョア鳥井のマンション。面子は東西南北の四人。誰もが振り返る美人だが無愛想な東堂さん。どんなことにも真剣勝負で前進あるのみの西嶋。物を曲げたり物を移動させる超能力を持つ南さん。そして上から全体を眺める鳥瞰型の北村。これから大学生活を共に過ごす五人が集まった。

麻雀、合コン…、そして恋。気楽な大学生活を送りながら、何かできるんじゃないか、と考える大学生。そこに春夏秋冬それぞれの季節に起こる事件の数々。ホスト礼一とのボーリング対決。出くわした空き巣犯に傷つけられた鳥井。超能力を否定する高慢な学者の登場。通り魔プレジデントマンの終焉。空き巣犯との因縁の戦い。

いやー面白かった。青春小説としても読めるし、エンタメ小説としても楽しめる。北村の一人称で仲間たちを描いているのだが、本書の主人公は西嶋なのかもしれない、というぐらい、最初からインパクトありすぎで、彼のパワーでぐいぐい読まされてしまう。それに、いろいろと問題ありの発言するのだが、あそこまで言い切ってくれると気持ちが良い。それにちょいと共感してしまった。これって危険思想??「魔王」「ゴールデン」と関係あるかも。

この作品はミステリではないので複線は少し控えめ。それでも数ヶ所あるのだが、案の定予想したことが的中してしまった。前にもこんなことがあり、これはデジャヴかと思った。考えてみると、「陽気なギャング」と同じような複線使いをしていることに気づいた。そういえば作品の雰囲気も似ているかも。

この作品に関してはあまり書きたくない。というか、書きすぎて読書の楽しみを奪いたくない。よってこの辺で止めておきたいと思う。ラストが爽快であり、伊坂作品の中でも好き度が上位にきた作品だ。そして名言集でもあった。


作品間リンク
「ラッシュライフ」:黒澤
「チルドレン」:武藤

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伊坂幸太郎
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    2008

02.23

「ハミザベス」栗田有起

ハミザベス (集英社文庫)ハミザベス (集英社文庫)
(2005/07/20)
栗田 有起

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「ハミザベス」「豆姉妹」の二編を収録。

「ハミザベス」
はたちの誕生日を前にして、父が死に、不動産とハムスターを一匹もらうことになった。父とは一歳のときに別れていて、母が死んだのだと言っていたので、とっくに死んだのだと思っていた。相続したのはマンションの一室。まちるは、せっかくなので、贈られたマンションへ引っ越すことにした。元恋人であり幼なじみの彰や、父の同居人だった花野あかつきさんとの不思議な友情。ときどき更年期障害の母。観た映画に出てきた登場人物の名前がエリザベスだから、ハムスターの名前をハミザベスと名付けた。地上33階で静かにハムスターと重ねる日常を描いた作品。

「豆姉妹」
姉と私の顔はよく似ている。そして丸い。姉と私は七つ年が離れている。現在私は十六で、体の成長は止まったらしい。姉と並ぶと、そして裸になると、どちらがどちらだかわからなくなった。私たちは体を寄せ合い、くっつき合って暮らしている。まるで、ひとつのさやにおさまる豆のようだ。私たちは、豆ふたつぶの姉妹だった。それがある日、姉は看護師をやめてSM嬢になり、妹は何も考えないままアフロ頭にし、血の繋がらない弟が二人暮らしの部屋に転がりこんできた。日常に変化が起こる?いや、まったく変わらない。ほのぼのした日常を描いた作品。


登場人物たちの会話がユニークで、ポンポンとリズムよく、ほとんどそれらの会話だけで進むストーリーが新しい「ハミザベス」と、そっくりの姉妹の自立とイレギュラーの弟の思春期が瑞々しく、そしてこちらもリズム感抜群の「豆姉妹」の二作品。

どちらも現実から少しずれている。狸の玉々のような玉を持っていたという父や、卵を産むというあかつき。突然おかしな行動を取る姉妹。だけどこれが淡々としていて、どっこも悪くないじゃん、何かおかしなことでもありましたか、というような居直りをまったく感じさせずに、さらりと読ませてしまう。ありえないんだけど、これが面白い。それに人物たちも前へ出ない。主張をいっさいしない。干渉もしない。控えめの美学とでもいうのかしら。そういった部分も、軽いユーモアと混じって読んでいて気持ちが良かった。

ちょいと一風変わった日常の物語だが、こんなのもあり、というか、かなり好きな作風だった。
これからも栗田有起に注目して行きたい。そう思えた一冊でした。

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栗田有起
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    2008

02.22

「風に顔をあげて」平安寿子

風に顔をあげて風に顔をあげて
(2007/12)
平 安寿子

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二十五なら、女の子でなぜ悪いと言い張れる。でも、三十で女の子はまずいよなあ。主人公は二十五歳フリーターの風美。バイトの数はこなした。けれど、それが自分の中でどんな力に変換されているのか、不明なのだ。暗い先行きをどうするか、何も思いつかなくて途方に暮れているくせに、「ま、いーか」で見て見ぬふりをしている。彼氏の英一はボクサーの卵。なのに素人のパンチを食らって自信喪失。突然部屋に転がりこんできた弟の家出理由は、母にホモだとばれたから。父に逃げられた母は、弟の進路だけは自分の思い通りにしたいと子離れできず。サラリーマンの友達小池さんは、部長への昇進が原因でぐったり気味。他人の心配してるフリして、本当は、自分のことが一番心配だった。姉弟のままならない日常を描いた成長物語。

この本すげえ面白~い。そして好きだーー!大人の小池さんは、若いうちはそれでいいと言うが、このままではいられない。しかしどうすればいいか分からない。何をしたいのかもまったくない。だけどこのまま三十になるのはもっと嫌。けれど今が楽なのでそのまま流されてしまう。こういうダメな人には妙に共感できてしまう。そこに、輝いていたはずの彼氏が実はへたれのボーヤだとわかり、ホモをカミングアウトした弟の先行きや、自分勝手な母の問題がからんできて、ストーリーはより膨らんでいく。

弟がホモだと知った姉のあたふたぶりがすごく面白い。お互いに出方を探すようなやり取りから始まり、何か着たいのがあったら貸してあげるよ、という言葉をぐっと飲み込み、弟を理解したい応援したいと思う一方で、ホモへの偏見がある。自分の身の周りにはそういう人がいない。ひょっとしてあの人は、でも怖くて確かめられない、という人もいない。だから無責任に面白がれるのだが、実際のところはどうなのだろう。やっぱ笑ってはいられないだろうし、理解するまでの葛藤は大変なのだろうか。こればっかりは経験値がないのでよくわからない。

そして脇を固める人物たちにすごく魅力があった。ゲイバー・マスターの藤本さん。ミシン一筋三十年以上の三益さん、オーガニック惣菜の屋台をする林さんとパートナーのアッコさん。彼ら素敵な人たちと出会うことで、姉弟は前向きに頑張って生きていこうとなっていくのだ。社会に出て一番大切なのは、どれだけ素敵な人たちと出会えるか、ということかもしれない。尊敬や信頼はもちろんだが、自分の向上心を高めてくれる存在を得ることができるか。これら出会いは年をとってからでも変わらないと思う。気をおけずに付き合える人との出会いには、まったく年齢が関係ないからだ。ほんと人との出会いは大事にしたいものだ。

読後感は最高に清々しい。そしてタイトルの意味も、なるほどなあと腑に落ちる。この作品は今年のマイベストに入るだろう一冊だ。ほんとに気持ち良い作品で、おもわずにっこり。イチオシのお薦めです。


TBさせてもらいました。「今日何読んだ?どうだった??」

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平安寿子
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    2008

02.21

「ナイチンゲールの沈黙」海堂尊

ナイチンゲールの沈黙ナイチンゲールの沈黙
(2006/10/06)
海堂 尊

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東城大学医学部付属病院・小児科病棟に勤務する浜田小夜。担当は、眼球に発生する癌―網膜芽腫(レティノブラストーマ)の子供たち。眼球を摘出されてしまう彼らの運命に心を痛めた小夜は、子供たちのメンタルサポートを不定愁訴外来・田口公平に依頼する。その渦中に、患児の父親が殺され、警察庁から派遣された加納警視正は院内捜査を開始する。小児科病棟や救急センターのスタッフ、大量吐血で緊急入院した伝説の歌姫、そこに厚生労働省の変人・白鳥圭輔も加わり、事件は思いもかけない展開を見せていく…。《本の折り返しより》

最近内容紹介をよくサボっているが、まあ気にしないで。この作品に関しては言いたいことがたんとある。しかし、それらすべてを書けば悪口だらけになってしまう。それがみっともないことだと思っているし、ここは褒めるブログなので、趣旨が違ってしまうから、まずは順当に褒めてみる。

さて本書で良かった点だが、東城大学医学部開闢以来の横着者である猫田看護師長は外せない。千里眼の異名を持ち、彼女の老獪な策士ぶりから目が離せないのだ。そしてレギュラーである田口と影のドン藤原看護師や、同期でジェネラルの異名を持つ速水部長や、MRI研究分野では第一人者である島津とのやり取り、もちろん白鳥調査官とのアクティブな会話も楽しめる。今回はそれらにプラスアルファで、入院中の子供たちがからんでくるのだが、彼らの会話が愛おしかった。5歳のアツシくんが、熱中している特撮ヒーローのキャラについて熱く語るのだが、かわいいのなんの。それにカエル宇宙人(ケロロ?)の軍人口調を真似た話し方が、もうめちゃめちゃかわいーいのだ。それに自分の死を受け止めた16歳の由紀ちゃんなんてもう言葉が出なくなる。

もう一つ良い点は、短い章割りで読者を飽きさせないところ。場面はころころ変わるのだが、その都度、本館1F・不定愁訴外来やオレンジ新棟2F・小児科病棟などと、場面を親切に教えてくれている。だから、小児科病棟ならあの人たちが出るのだな、と人物が多くても混乱することはなかった。でもこれはシリーズ全作にも当てはまるのだが。

あとどうしても触れずにいられないのが、残念だった点。それは白鳥の存在が霞んでしまうキャラ萌え二号の登場である。デジタル・ハウンドドッグこと加納警視正のキャラは、どう考えても読者受けを狙った不必要なものだと思えてしまった。それに歌で映像を見せてしまうという非現実的な設定もナンセンスだし、コロンボもどきの探偵と犯人の対決はしょぼいし、相変わらず拙いミステリのできなどと、ちょいっとマイナスな部分もあった。

でもまあ読みやすさはそのままだし、人物の派手さも好みだし、終始イライラさせた女医にも鉄槌が下ったし、医療現場のあれこれも知ることができたし、なにより読後感が良かった。なんやかんや書いたけど、水色も面白く読むことができた。よーし、次はきらきらの青色だー。

補足。赤色も黒色も手に入れたどー。

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海堂尊
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    2008

02.20

「リリイの籠」豊島ミホ

リリイの籠リリイの籠
(2007/12/14)
豊島 ミホ

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仙台の女子高を舞台にした7つの連作短編集。

「銀杏泥棒は金色」
美術部に所属する春は、嫌いなものが人よりも多い。そんなある日、県展に出品する絵のモチーフを、自分の好きなものにするように木梨先生に勧められた。好きなもの、好きなもの、好きなもの、と考えるけれど思い浮かばない春。そこに銀杏の枝を折って盗む少女が視界に入ってきた。それが加菜との出会いだった。

「ポニーテール・ドリーム」
講師として学校に勤めだして一年が経ったえみ先生は、自分では気付いていないが、ファッションにはとてつもなく疎かった。そこへ生徒たちの行き過ぎたスカート丈には、先生たちが指導するようにという通達が来た。校則違反の要注意人物である由貴を呼び止めて注意するえみ先生だが、逆に先生の服装はおばさんくさいと説教されてしまった。

「忘れないでね」
不可解な作用で弾かれた輪の外にいる子と組んで、これまで転校というイベントを切り抜けてきた、転校少女の美奈。それが家も落ち着き転校はなくなったのに、これまでのクセで、虚勢を張ってはじゃぐオレンジ頭の真琴に声をかけたが最後、スッポンに噛み付かれたように懐かれてしまった。受験が近づき、真琴の存在が重くて逃げたく思う美奈だが。

「ながれるひめ」
姉の務め先であり、母校である私立校で教育実習をすることになった大学生の藍。まったく心構えがなかった藍は、モタモタしてしまってしょんぼり気味。そこに、ちゃんと先生をしている姉の姿を見て、自分の不甲斐なさにイライラ。しかも、背中を見てきた姉にツラク当ってしまった。学校では他人を装えと言っていたその姉が、昼食時に声をかけてきた。

「いちごとくま」
女の子を信用できない里加は、みんなから愛されている美枝の後ろへ着いてまわるポジションに落ち着くことにした。くまのような体格で、みなからくまっちと呼ばれて愛されている美枝だが、いつも自然体でなんか良いな、と思うようになった里加。その美枝に彼氏ができたことで、彼女が見せ物扱いをされていたことを知ってしまった。

「やさしい人」
落川歩は同級会の幹事をすることになり、案内状の返事の多さにうんざりしていた。そこへ、当時は遠くて近いという微妙な距離があった木田芙見から連絡があった。二人だけが知る一つの思い出を持った二人は会うことになるが、もっと仲良くなりたいと思っていた当時の思いを伝えられないまま、時間が来て別れてしまった。

「ゆうちゃんはレズ」
二年の新木結生はレズ、という噂は知っていた。しかし、明子はその噂の輪に入ることなく、輪の外にいるがゆえに結生へ声をかけるようになった。いつしか、「ゆうちゃん」「明子先輩」と呼び合うようになった二人だが、それが結果なのか、好きです、と生涯で一度目の愛の告白をゆうちゃんからされてしまった。

個人的に好きだったのは、「ポニーテール・ドリーム」「忘れないでね」「ながれるひめ」「いちごとくま」かな、ってほとんどやし。豊島さんの描く人物は、きらきらした表面上だけではなく、生っぽい人の嫌な部分が描かれているので好きだ。上辺の言葉でさらりと話し、実はあいつ嫌い、みたいなチクチクした声に出さない棘がリアルなのだ。

それに派手な子にスポットをあてるのではなく、クラスでも地味な子、野暮ったい先生などが、一瞬でパッと華咲く瞬間が美しい。それとは逆に、自分がと思っていた人物が、一気に立場が逆になって落ちしまうお話もある。人付き合いとは相手があって成り立つもの。そこら辺の描写がすごく長けていると、いつも読むたびに感心してしまうのである。

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豊島ミホ
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    2008

02.19

「誰もわたしを愛さない」樋口有介

誰もわたしを愛さない (創元推理文庫 M ひ 3-8)誰もわたしを愛さない (創元推理文庫 M ひ 3-8)
(2007/09/11)
樋口 有介

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桜の花びらが散りさわぐ春、月間EYESの担当編集者石田から、新担当の美女・小高直海を紹介され、渋谷のホテルで殺害された女子高生についてのルポを依頼された柚木草平は、行きずりの犯行と思われる殺人事件に気乗りがしないものの、原稿料を千円アップという誘惑にあっさり負けて、依頼を受けることにした。被害者の同級生である女子高生の今風に圧倒されつつ調査を進める柚木は、事件が怨恨によって引き起こされた事実に気づく。メガネ美女の新担当、美人エッセイスト、そしておなじみ吉島冴子や娘の加奈子、いつものごとくさまざまな女性に翻弄されながら、事件を追う。柚木シリーズ第六弾。

まず先に書いておくが、想像した犯人は予想通りだった。だけど、そんなこたあどうでも良いと、言い切ってしまえるのが本シリーズなのだ。男性読者が求めているのは、柚木とさまざまな女性とのやり取りであって、ミステリに多くを望んでいない。柚木が背中に冷や汗をかきながら、歯の浮くような会話をしてくれればそれで良い。

その点本書では、前作品群よりも女性とのやり取りがてんこ盛りだった。冒頭から娘の加奈子が登場して、やっぱ加奈子ちゃん最高となり、新たなメガネ美女の小高直海が新キャラとして加わるのだが、柚木の女性に関する噂を聞いたことによって、警戒しつつやり取りする姿も面白い。個人的には、前担当の石田の嫁にまつわるトークも好きだったけど。他にも、なかなか出ないぞと思っていた冴子さんや、価値観の違う女子高校生や、美人エッセイストが登場と、これが面白くないわけがない。

これまで触れることがなかった人物もこの際あげておこう。バー・クロコダイルのおかまマスターの武藤や、定年間近で昇格の点数が欲しい老刑事の山川。彼らサブキャラも、本シリーズの面白さの重要なファクターになっている。これら会話の妙が、また読みたいという欲望のもとになるのだ。

男とはスケベな人種なのだが、本書のある一文が言いえて妙だったので引用しておきます。

ミニスカートの足を眺めて、俺はしみじみ人生を忘れたくなる。背が高くても低くても、その差はせいぜい十センチ程度。細くても太くても黒くても白くてもみんな前進とバックの機能はそなえている。うっかり欲望をそそられる足があり、見ただけで後悔する足があり、体調が心配になる足がある。男が女の足に特別な感心をもつようになったのは、いつのことなのか。チンパンジーのオスがメスの太ももに欲情したという話は聞かないから、どうせ人間に分化して以降のことだろう。

女性の方はお怒りになるだろうが、男の本質を見事についていると思えた。本書で語られているのが、美人さんの定義や胸の大きさでもお尻のかたちでもなく、足というところがポイント高い。これ以上、足フェチについての発言は控えるが、なぜか足に目線がいってしまうのは自分と同じだった。

そういう描写にそうそうと頷き、柚木の女性との寒い会話にくすくす笑い、樋口ワールドを存分に楽しむことができました。これで未読の柚木シリーズはあと一冊。近いうちに読みたいと思ったところで、今日はここまで、おしまい。


柚木シリーズ
「彼女はたぶん魔法を使う」
「初恋よ、さよならのキスをしよう」
「探偵は今夜も憂鬱」
「刺青白書」
「夢の終わりとそのつづき」
「誰もわたしを愛さない」
「不良少女」
「捨て猫という名前の猫」


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樋口有介
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    2008

02.18

「プール」松久淳+田中渉

プールプール
(2002/11/28)
松久淳+田中渉

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七通の手紙が彼女のもとに届いた。差出人はすべて不明。手紙は決まって、縦書きの便せんに水性のボールペンで書かれ、最後のページがきれいに一部切り取られていた。やがて、八通目の手紙が託された。そして、それが最後の手紙だった。80年代前半・長野。90年代後半・東京、そしてアメリカ西部。ふたつの時代が出会い、そして、今、静かに響きあう。《本の帯より》

読み始めはなんじゃこりゃという展開なのですが、読んで行くと少しずつどうなっているのかが分かってくる。叶井瑞江、山崎幹子、沢崎真由美、吾妻久史、中田亘という広戸以外のいつものメンバー、そして余命数ヶ月の宣告を受けた斑目さんを加えて、よく集まって遊ぶ。その瑞江のもとへ、差出人不明、誰宛てかも不明の手紙が届く一場面あり。勤めていた会社を辞め、単身でアメリカ西部に渡って、ヒッチハイクの旅をする広戸壮一の旅の一場面あり。その広戸が高校生で、水泳部のエース佐伯薫に恋をする一場面あり。それと次々に送られて来る手紙を読者も一緒に読む。これら現在過去が入り乱れた三場面+手紙が交互に交錯して、ストーリーは進行してゆく。

わりと早い段階で、差出人と誰宛ての手紙を出したかは分かる。まあ、こう場面を書き出してみれば想像がついてしまうのだが、そこがメインじゃないのであえて書いてみた。作品の中に愛の温度という言葉がでてくるのだが、こんなに温度が低い恋愛小説は初めて読んだ。それゆえに、こんなのもあるのだと知って新鮮だった。個人的にはピュアやベタが好きなのだが、こういうのも好きかも。ザ・恋愛という感じではなく、わりと人物たちもドライだし、全体的に乾燥しているような雰囲気で、そこにある想いを読むという作品だろう。思いではなく、想いね。

本書はページ数も少なくサクサク読める。しかし心にしっかりと響く何かがある。例えばこの言葉。人がいなくなるということは、存在がなくなるのではなく、いないということが存在すること。ドキッとするが感銘を受ける言葉だ。残念ながら、ネタバレなしではこれ以上は書けません。とにかく静かな作品で、不思議な読後感が心地良い作品でした。面白かったです。

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松久淳+田中渉
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    2008

02.18

「夜のピクニック」恩田陸

夜のピクニック夜のピクニック
(2004/07/31)
恩田 陸

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夜を徹して八十キロを歩き通すという、高校生活最後の一大イベント「歩行祭」。朝の八時から翌朝の八時まで歩くというこの行事は、夜中に数時間の仮眠を挟んで前半が団体歩行、後半が自由歩行と決められていた。前半は文字通り、クラス毎に歩くのだが、自由歩行は、全校生徒が一斉にスタートし、母校のゴールを目指す。そして、ゴール到着が全校生徒中何番目かという順位がつく。もっとも、順位に命を懸けているのは上位を狙う運動部の生徒だけで、大部分の生徒は歩き通すのが最大の目標であった。

生徒たちは、親しい友人とよもやま話をしたり、想い人への気持ちを打ち明け合ったりして一夜を過ごす。そんななか、貴子は一つの賭けを胸に秘めていた。三年間わだかまった想いを清算するために。今まで誰にも話したことのない、とある秘密。折しも、行事の直前にはアメリカへ転校したかつてのクラスメイトから、奇妙な葉書が舞い込んでいた。去来する思い出、予期せぬ闖入者、積み重なる疲労。気ばかり焦り、何もできないままゴールは迫る。

人気作家である恩田陸が苦手だ。これまでに、「六番目の小夜子」「球形の季節」「月の裏側」「上と外」「図書室の海」を読んだ。「上と外」は冒険ものでわくわく読めたが、それ以外の作品はどこが面白いのかさっぱり分からなかった。しかし、「図書室の海」に収録されていた本書の前日譚である「ピクニックの準備」を読んで、その後の展開は気になっていた。偶然図書館の棚で見つけ、世間での評判がいいみたいだしと理由をこねて、今更だが「夜のピクニック」にチャレンジしてみた。これが面白~いのである。実に困った。恩田陸が苦手な読者としては、褒める言葉を用意していなかった。

ストーリーは、ただ歩きながら友達と他愛もないことを話すだけ。主人公は甲田貴子と西脇融の二人。この二人は実は腹違いのきょうだいで、誰にもそのことを打ち明けないまま、お互いをビンビン意識しあっている。まあ、お互いにどう思っているかは、読めばわかるので省くが、これが読ませてしまうのだ。それと共に、貴子は、前半に梨香、千秋のクラスメイトと歩き、後半は親友の美和子と歩く。融は親友の忍と最後まで歩く。時にはニアミスをする内緒のきょうだい。そこにイレギュラーの内堀亮子や、勘違いしたロックスターの高見光一郎が飛び込んできて、作品を盛り上げる。

ミステリ要素っぽい杏奈のおまじないは、早い段階で想像がついた。しかし、これもベタな感じで中々よろしい。八十キロを歩くなんて無謀なことも、自分なら仮病を装って休んでいただろうけど、成し遂げたことによって一生の思い出になりそう。ただ歩くだけなのに、登場人物が愛おしくなり、風景が目に浮かんできて、彼らの息遣いが伝わってくる。人生の中のほんの一瞬を捉えた良作だと思った。この作品だけは恩田陸のすごさが理解できた。これの続編がでたなら、また恩田陸を読んでもいいかな。

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恩田陸
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    2008

02.17

「みどりと黒いシロ」路人

みどりと黒いシロ (ピュアフル文庫 ろ 1-1)みどりと黒いシロ (ピュアフル文庫 ろ 1-1)
(2007/07)
路人

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「野良猫でもいい、家猫になってもいい。素敵な人間と出遭いなさい。もしもずっと野良猫でも、その一生の中で素敵な人間と一度でも出遭えたら、それは幸せなことだと思うの」ワタシの母はこう語り、「純白な心・・・大切にしなさい」と囁いて、翌朝ワタシ達の前から姿を消した。

弟妹達が新しい世界へ旅立ち、最後に残ったのはワタシと一番下の妹だった。「アタシ、どんな人に拾われるのかなぁ?」少し成長した彼女は自分の夢を嬉しそうに語ってくれた。それなのに……彼女は人間に殺された。彼女の命を悪戯に弄んだ人間が許せなかったワタシは、人間が嫌いになった。どんなに目を閉じて、耳をすませても、もう母の言葉は聞こえなかった。

ある夏の日、ワタシはみどりと藍子の姉妹と出会った。みどりは夏休みの宿題でワタシの絵を描くことにするが、人間が信用できないワタシは、みどりに心を開く気はまったくなかった。しかし、心優しいみどりと接するうちに、消えてしまった母の言葉をワタシは思い出した。そして、ワタシはみどりからシロという名前をもらった。

ピュアフル文庫だ~い好き、と予備知識のないまま買って積んでいた。そして読むぞとなって、ここで初めて携帯小説だったことを知った。へ~、横書きなのね、などとお気楽に読み始めたが、本を閉じたときには号泣していた。涙がぶわ~っと出るし、嗚咽が止まらない。三十を超えたいい大人が、シロちゃん良かったね~、とマジ泣き。

携帯小説おそるべし。これは認識を改めなくてはならないかも。とにかくすべてがストレートに飛び込んでくる。変化球がいっさいなく、胸元のど真ん中に球が投げられてくるのだ。それに余計な枝葉がなく、シンプルでわかりやしいストーリーが淡々と描かれている。若者に人気があって受け入れられているのもわかる気がした。でもだからと言って、流行の恋愛ものは読む気はないけど。

だけど、路人氏の次回作なら進んで読んでみたいと思った。ポエジーな文章に惹きつけられ、読んだあとに表紙のイラストの謎が解け、ページ下にあるパラパラ漫画で一人遊びができる。そして、気持ちいいぐらいに泣ける。何も知らずに買った本だったけれど、これが掘り出し本だった。もうけーーという感じかな。これは読まなきゃ損、とお薦めしたい作品であった。

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    2008

02.16

「キトキト!」吉田康弘

キトキト!キトキト!
(2007/03)
吉田 康弘

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俺の名前は斎藤優介。十八歳。富山県高岡市に住んでいる。父ちゃんは俺が三歳のときに病気であっさり逝ってしまった。俺にとって悩みの種が、どんな仕事でもやって、誰にでも馴れなれしくてお節介焼きで、負けず嫌いな母ちゃん。いつごろからか、近所でついた仇名は「スーパー智子ちゃん」。そんな気の強い母ちゃんと俺は二人暮らし。ヤンキーの姉ちゃんは愛用しているキティちゃんの旅行バックを持って、東京に駆け落ちして行方不明。同じ高岡に住むじいちゃんはギャンブルが好きなヤンチャなじいさん。

あるイタズラがきっかけで、俺は高校を自首退学したあと、原チャリ暴走族にバイトにと俺の道を探したが、この町にはなにもなかった。そこで親友の眞人と東京に出た俺は、手っ取り早くホストを始めたが…。

本書は、映画「キトキト!」の原作であり、作者の吉田康弘氏は映画「キトキト!」の監督兼脚本だそうだ。だから、ずっと映画畑にいた人なので、文章はあまりよろしくない。しかし、展開のはやさや、ちょっとしたユーモアや、ドラマちっくな演出や、魅力ある人物の造形などは、きらりと光るものがあった。やはり映画の人は、コマ割りやらなんやらで見えている世界が違うのかも。

読み始めは作風になれるまで少し時間がかかった。しかし、俺が上京するあたりから、すごく面白く読めるようになった。新人ホストの修行中に、ホテトル嬢の藍ちゃんと出会い、行方不明だった姉ちゃんとも再会する。一方で、母ちゃんは地元でスナックを開店し、恋人の佐川とよろしくやっている。その母ちゃんが東京にやって来るのだが、これが笑えて、そのあと泣けそうになった。

他にもいろいろとゴタゴタがあるのだが、それは読んでのお楽しみ。別に映画を観ても構わないけど。というよりも、むしろこの作品は映画を観るほうがいいのかもしれない。特にラストの場面などは、拙い文章ながらも号泣してしまった。それを実写で観るとより泣けそうな気がする。母ちゃんが大竹しのぶだし。

本書は、何をしたらいいか分からない悪ガキの苦悩と成長であり、家族の強い絆のお話でもある。本の帯に書いてあった、笑えて泣けるという文句。これは本当にその通りだった。吉田康弘氏の本職である映画「キトキト!」を、ぜひ観てみたい。そう思えた作品でした。

補足。「キトキト」とは、富山県の方言で「新鮮な」「活きがいい」という意味らしい。

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    2008

02.15

「恋の休日」藤野千夜

恋の休日 (講談社文庫)恋の休日 (講談社文庫)
(2002/08)
藤野 千夜

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「恋の休日」「秘密の熱帯魚」の二編を収録。

中年の化学教師の肩をポンと叩いたら、勝手に階段から転落した。単なる不幸なアクシデントで、そんなつもりはなかった。女子高生のフィンこと山口佐和子は、その出来事がきっかけで高校を退学になった。父は体調を崩し、愛人に看病されている。母親は娘かえり。気弱になった父の進めがあって、山梨の別荘にやって来たフィン。恋人樫山とは大喧嘩の末別れたばかりなのに、その軽薄な元カレはフィンの前に現れた。「恋の休日」

ミサキは漫画家でトモナリユキオは編集者だった。トモナリとは十六ヶ月一緒に暮らした。離婚の理由は誰にも言わなかったが、トモナリには豊満な体格の恋人(男)がいたのだ。そのトモナリの使っていた部屋が空っぽのままになっていたので、アサオカ君の引越し荷物を三週間ほど預かることになった。友人のアサオカ君はマゾ、その彼女のオカザキは女好き。ミサキのアシスタントをするハシモトには暴力彼氏がいる。そのオザキがいなくなり、ハシモトとも連絡が取れなくなった。「秘密の熱帯魚」

二作品とも、状況としてはかなり悲惨だ。高校中退になり家族が崩壊寸前の「恋の休日」はまだまし。離婚して心にポカリと穴があいた上に身近な人が消えてしまう「秘密の熱帯魚」は、このあともっと悲惨なことになる。ところが二作品とも、まったく悲惨さがない。主人公たちが、さらっとしていて、とても無邪気に日常を送っている。しかも、さらにこちらを笑わせもして、とても可愛らしく思えてくるのだ。

各々に問題はあるのだが、両者ともそれについてまったく向き合おうとしない。というよりも、わざと目をそらして、見なかったことにしよう、聞かなかったことにしよう、とドアをパタンと閉じてしまうのだ。だけどこれがドライで冷たい感じではなく、やっぱりちょっと気になる、とドアの向こうに聞き耳を立てているのだが、ドアスコープを覗くまではいかない。これがこの作品の乙な味わいどころだ。

この素材を使えば、ドロドロになって疲れた展開になるはず。それがこんなに愛らしい作品になるなんて、藤野千夜は只者ではない。重くなりがちなお話なのに、軽妙な会話でサクサク読ませ、さらに読後には清涼感さえ残ってしまう。余計な感傷をそぎ落としたところに面白さがあり、淡々とした中に想いが隠された、ピュアな一冊でした。

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    2008

02.14

「リボン」草野たき

リボン (teens’ best selections 11)リボン (teens’ best selections 11)
(2007/11)
草野 たき

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「先輩、リボンくださぁ~い」 卓球部女子には、卒業式に先輩から制服のリボンを貰う伝統がある。試合で勝つ人と彼氏持ちなら、だんぜん彼氏持ちの先輩のほうが後輩の憧れの的だ。たかがリボンのことで、ケンカになって雰囲気がわるくなるのもなんだし、ジャンケンで決めておこう。負けた子たちは、ほかの先輩のリボンをもらう。リボンをほしがってもらえない、かわいそうな先輩が、ひとりもいないように。試合も勝てず、彼氏もいない池橋先輩に、亜樹はなぜかリボンを断られてしまった。部活も家族も友達も「波風を立てないこと」をモットーに生きてきた亜樹の中で、今、何かが変わりつつある。うつりゆく十五歳の気持ちをリアルに描いた一年間の物語。

強く自分を主張したり、はっきりと自分の意見をいうのは、あまりよくないことだと思っていた亜樹。家ではおとなしい子でいるようにし、学校ではなるべくあわせるようにしてきた。それが三年生の新クラスになると、今回はちょっと様子がちがった。

どんどんグループができる中で、休み時間にいつも本を読んでいる藤本さんと一緒にいることにした亜樹。ひとりぼっちになったわけじゃないからいいや、という妥協。まだ自分がどうなりたいかわからない。将来なんて考えたことがない。試合で勝つことがすべてだった卓球部も卒業する一学期。

たったひとりでだらだら暮らす夏休み。新学期がはじまると、じわじわと迫ってくる受験のこと。そんなある日、藤本さんが自分とよく似た女の子だとわかり急接近。本当の親友をえた亜樹。そして、どうしても行きたい高校が見つかった二学期。

ふたつ上のお姉ちゃんの特訓に、必死でくらいついていく亜樹。高校受験の一般入試へのカウントダウンが始まった。それと人を好きになるという感情も知った。そして、卒業式恒例のリボンの儀式。後輩から「リボンがください」と声をかけられ、亜樹の答えは。

とまどい、挫折、迷い、失敗。落ちこんでる亜樹を救った、はげまし、やさしい言葉、うれしいできごと。本当に大変な一年だけど、だからこそ大事な一年になった。少女が少しずつかわっていき、大人への階段を一歩のぼる。不安定に揺れる少女の心。いっぱい真剣に悩む。先が見えないあせり。中学三年間何をしてきたんだという自分への問いかけ。少女の瑞々しい描写に、爽やかなラスト。とっても好きな作品でした。お薦め!

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草野たき
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    2008

02.13

「なみだ研究所へようこそ!」鯨統一郎

なみだ研究所へようこそ!―サイコセラピスト探偵波田煌子 (祥伝社文庫)なみだ研究所へようこそ!―サイコセラピスト探偵波田煌子 (祥伝社文庫)
(2004/01)
鯨 統一郎

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ここはメンタル・クリニック「なみだ研究所」。新米臨床心理士として働くぼくこと松本清は、最近目眩に悩んでいる。あいつ、波田煌子のせいだ。貧相な知識にトボけた会話。こっちが病気になりそうなのに、なぜか患者の心の悩みをズバリと言い当て、その病を治してしまう。本当に彼女は伝説のセラピストなんだろうか。そして今日もあの不思議な診療が始まった。ユーモア溢れる連作短編集。

そこら中に動物が見えるというクライエント。幻覚を見ているだけでなく、自分自身が猫になっている。...「アニマル色の涙」 女房に襲われたというクライエント。寝ていたところパンツを脱がされた。しかも痴漢騒ぎまでおこした。...「ニンフォマニアの涙」 腹話術でしか話すことができなくなったクライエント。まるで周囲の人形に魂が憑依したよう。...「憑依する男の涙」 子供がおかしくなったというクライエント。時計を異常に嫌って捨ててしまう。...「時計恐怖症の涙」 夢と現実の区別がつかなくなったクライエント。今が現実なのか夢の中なのかわからない。...「夢うつつの涙」 ざぶとんなら全部が怖いというクライエント。笑点を見るだけで頭痛がする。...「ざぶとん恐怖症の涙」 人の失敗を見ると拍手してしまう松本の元担任。自分の意識とは関係なく勝手に手が動く。...「拍手する教師の涙」 自分でもわからずに何かを捜してしまうクライエント。続編への布石になっている最後を飾る短編。...「捜す男の涙」

ざっと内容紹介をしてみたが補足をしておくと、鯨作品お得意のワンパターンな構成になっている。まず営業前の時間、なんの資格も持っていない波田煌子のための勉強会を、波田先生、臨床心理士の松本清、美人会計士の小野寺さんで開く。そこで得たフロイトやアロマテラピーや心理学を元に、訪れたクライエントに臨機応変(その都度違う)な診療をする。ちゃんと専門的なことを学んでいる松本が診断するが、そのとき波田先生の目から、ひとすじの涙がきらりと頬をつたう。先生。判ったんですね。会計士の小野寺さんが問いかけると、波田煌子は頷いた。名前が《なみだきらこ》だけに、彼女の涙で謎がすべて解ける。というワンパターンな作品たち。

これはミステリというよりも、ユーモアとギャグが詰まったコメディ作品だ。波田煌子と松本清の噛み合わない会話に、微妙な三角関係に、臨機応変という名の適当な診療に、おいおいとツッコミを入れてしまうオチ。この作品は、難しく読まずに軽~く流して読む。それだけで十分楽しめる作品だと思う。それに個人的だが、鯨作品の中で一番好きなシリーズだ。。それなのに記事にしていなかったので、あらためて再読してみました。

お薦め!

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鯨統一郎
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    2008

02.13

「陰陽屋へようこそ」天野頌子

陰陽屋へようこそ陰陽屋へようこそ
(2007/09)
天野 頌子

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狐と桜と都電の町である東京都北区王子。そこに鎮座する王子稲荷に見守られるのんきな商店街に、ある日現れたあやしい店、陰陽屋。お品書きには、各種占い(恋愛、縁談、商売、引越し、失せ物、探し人)、加持祈祷、命名相談、霊障相談、護符販売などの文字がずらりと並ぶ。店主は美青年だが嘘つきでぐうたらなニセ陰陽師の阿部祥明。その店に偶然入ってきたのは、見た目はごくふつうの中学生男子だが、実は妖狐の沢崎瞬太。その瞬太はある出来事がきっかけで式神のアルバイトをすることになった。店主とアルバイトのへっぽこコンビが、街の小さなやっかいごとに立ち向かう、ご近所ほのぼのミステリ。

ミステリとしては日常系の部類に入るのだが、そこを期待すると肩透かしを食らう。そんな小難しい読み方をするのではなく、単純にキャラ読みすれば普通以上に楽しめると思う。単行本だけど、中身はラノベ。この認識で読めばまず間違いない。たぶん。

店主の阿部祥明は、薄紫の着物の上に白い狩衣をまとい、足首をしぼった藍青の袴をはいている。まるで漫画から抜け出してきた陰陽師だ。頭には烏帽子も冠もつけず、長くまっすぐな黒髪を肩から背中に流している。完全にカタチから入ったあやしい匂いがぷんぷんするニセ陰陽師。

アルバイトの瞬太は、山吹色の着物に膝丈の赤い袴、足には草履という牛若丸のような童水干姿で、頭には自前の大きな三角の耳。袴の後ろには、これも自前のふさふさした長い尻尾が垂れている。こてこての格好のせいか、耳や尻尾が本物であると誰も思わないのがご愛嬌な陰陽師に使える式神役。

これだけでキャラ読みの要素がたっぷり。それに正確も真反対で、祥明はいいかげんで楽して儲けたいと公言して憚らない、瞬太は生真面目で思考力の足りない直情型、と彼らのへっぽこコンビぶりも中々よく出来ている。さらに、瞬太の過保護な両親、瞬太の同級生の高坂委員長に憧れの三井さん、祥明の幼なじみの槙原など、おもいっきりキャラ読みして下さいという脇の人物たち。それに本書のラストを飾る書き下ろし作品では、この中の人物がさらに面白い。

軽~く読めて、ほのぼのとした気持ちになれて、瞬太に萌える、そんな一冊でした。
続編がでたら読みたいなっ。


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その他の作家
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    2008

02.12

「チーム・バチスタの栄光」海堂尊

チーム・バチスタの栄光チーム・バチスタの栄光
(2006/01)
海堂 尊

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バチスタ手術とは、学術的な正式名称を「左心室縮小形成術」という。一般的には、正式名称より創始者R・バチスタ博士の名を冠した俗称の方が通りがよい。拡張型心筋症に対する手術術の一つである。肥大した心臓を切り取り小さく作り直すという、単純な発想による大胆な手術。手技は難しくリスクは高い。成功率平均六割。

舞台は東城大学医学部付属病院。鳴り物入りで招聘された米国帰り、周囲の期待と予想をはるかに超えた成果を収めたスーパー・スター桐生恭一。彼が構築した外科チームは、心臓移植の代替手術であるバチスタ手術の専門の、通称“チーム・バチスタ”として、その勇名を轟かせている。ところが、3例立て続けに失敗。原因不明の術中死と、メディアの注目を集める手術が重なる事態に危機感を抱いた病院長・高階は、神経内科教室の窓際万年講師で、不定愁訴外来責任者・田口公平に内部調査を依頼した。そしてもう一人。厚生労働省の変人役人・白鳥圭輔が派遣されてやって来た。

評判がいいのを知っていたので、黄色、水色、きらりの青色を買って積んでいた。そして買って満足したまま、あろうことか放置していた。そこへ黄色の文庫化。ほんまにあせった。それでも知らないふりをしていたが、これじゃあいかんと掘り出してきて、ほこりをフーっと吹き飛ばし読んでみた。むう、面白いではないか。売れているのも納得。映画化も納得。

上昇志向がない田口が、なんで自分が、と思いながらチーム・バチスタのメンバーに聞き込みをし、実際に手術室に入ってその目で手術を見る。だが手術は無事成功。ほっとしたのもつかの間で、次の手術で患者の心肺機能が戻ってこない。まさかの四度目の術中死。桐生の手技は完璧で手術ミスとは思えない。手に余った田口は病院長の高階の元へ報告に行く。

ここまでが前半部分でひじょうに長い。助長すぎると言ってもお釣りがくるぐらい。でもこれは医療のことがよくわからない読者のためのサービス。血を見るのが苦手で、手術のない神経科に逃げ込んだ田口。彼の目線でバチスタ手術とは何かを分かりやすく説いているのだ。おまけで言えば、自分も田口と同様に血が苦手で、血を見ると貧血をおこす。だけど、この作品はそういった貧血をおこすような描写がなかった。これはめずらしい。だから血が苦手な方にも大丈夫。安心して読んでくれたまえ。

本書の内容に戻るが、そこで登場するのがロジカル・モンスターの白鳥。はっきり言って、登場シーンはちょっと苦手だった。思考回路のぶっ飛びぶりについて行けないし、白鳥が語るカタカナ用語に拒否反応が少しでた。田口の聞き取りがパッシブ・フェーズで、これから白鳥主導でするのがアクティブ・フェース。なんだかよく分からないが、ここから停滞ムードから一気に動き出し、スピード感あふれる展開になっていく。この白鳥のキャラが読者受けするのだとよーく分かった。慣れると魅力的なのだ、こいつが。白鳥曰く、アクティブ・フェースの極意を田口に説きつつ、はちゃめちゃな聞き込み方法で病院内を荒らしていく。これが何故か図にあたって事件解決に到達するのだが、そこは読んで確かめて欲しい。

術中死だと思われていたのが実は殺人で、真相と犯人が浮かび上がってくる。この動機があれれという感じだった。こんなのでいいの、とこちらが心配してしまうほど現実離れしている。それに密室のミステリもまったく驚きがなかった。でもその後の展開は、上手くまとめられていて、エンタメとしては充分楽しめた。よって、キャラ系エンタメとしては二重丸。ミステリとしてはサンカク。自分はキャラ読みするタイプなので二重丸をあげたい。この勢いで水色の本も読まねばー。あわわっ、赤色が抜けたままだ。買いに行かねばー。

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海堂尊
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    2008

02.11

「あやつられ文楽鑑賞」三浦しをん

あやつられ文楽鑑賞あやつられ文楽鑑賞
(2007/05)
三浦 しをん

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まずお断りですが、文楽についての説明は省きます。気になる方はここ「仏果を得ず」をどうぞ。

今まで読んだエッセイの中で一番面白かったです。これは先に「仏果を得ず」を読んでいたのが関係あると思う。先に小説という媒体を通して文楽の世界に触れていたので、ふつうなら取っ付きにくいだろう古典にも、す~っと入っていくことができた。

演者さんと呼んでいいのかわからないが、三味線、人形、太夫さんたちのインタビューは、銀大夫師匠や兎一兄さんのインタビューとして読めるし、「仏果を得ず」のモデルになったあれこれが書かれていたり、「仮名手本忠臣蔵」や「女殺油地獄」という演目の、三浦版の解釈やツッコミが入った指摘が楽しめる。なにより三浦さんの乙女度全開のテンションの高さに、こちらまで楽しくなってくる。

まるでアイドルに会ったようなインタビューだが、三味線の鶴澤燕二郎さんこと六世鶴澤燕三さんって、絶対に兎一兄さんのモデルですよね。それに愛媛県の内子座では、出演者のみなさんが楽屋から出て、屋外の縁台で開演前のひとときを過ごしているなんて、そのまま小説内に同じ描写があったし。と一つの作品ができるまでの取材としても、楽しんで読むことができた。これらは「仏果を得ず」→「あやつられ文楽鑑賞」の順に読むと楽しめる。出版順に「あやつられ文楽鑑賞」→「仏果を得ず」と読んだ方はさぞ残念なことだろう。

「仮名手本忠臣蔵」に関連した本は井沢元彦で読んでいたが、三浦版の解釈はすごくわかりやすかった。ノリノリの文章でストーリーをなぞり、三浦さんにツッコミを入れられた江戸時代の風習や人物たちに親近感がわき、ある程度は知っていた内容けど、こんなお話だったのかとあらためて知ることができた。これだけでもお得でした。

とにかく文楽愛がぎっしり詰まり、読者にも文楽への愛をわけてくれる。「仏果を得ず」で文楽に興味を持ち、さらに文楽鑑賞に行きたいと思うようになった。せっかく文楽の聖地である大阪に住んでいるのだから、今年は絶対に見に行くぞう。前にも同じことを言ったような記憶があるが…温かくなったら必ず行くぞー。おーう!

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三浦しをん
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    2008

02.10

「夢の終わりとそのつづき」樋口有介

夢の終わりとそのつづき (創元推理文庫 M ひ 3-7)夢の終わりとそのつづき (創元推理文庫 M ひ 3-7)
(2007/07)
樋口 有介

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警視庁捜査一課を辞めて八ヶ月。知人のつてで雑誌への雑文を寄稿して食いつないでいた柚木草平を、たった今「ヴォーグ」から抜け出してきたような絶世の美女が訪ねてきた。久我山のある家に出入りする男を一週間尾行してほしいという。それだけで二百万円もの報酬。どこか胡散臭さを感じつつも、柚木は早速久我山へ向かう。目的の男はキャラメルをなめ、ビールを飲み散らし、東京じゅうを歩きまわるのみ。しかし三日目、死の直前まで飲み食いしていたはずなのに、男は謎の餓死。死因は典型的な行き倒れ。男の身に何が起こったのか。永遠の三十八歳、柚木草平三十五歳の事件簿。

読む前に問題作だと聞いていたが、たしかにこれは問題作だろう。まあエイリアンにビビる柚木は見物ではあったが。本書のあとがきで触れているが、デビュー前に書いた作品を、柚木草平シリーズとして全面改稿した、めずらしいSF風の作品だ。内容的にこれで好しとするわけではないが、普通に面白く読むことができた。

今回のいい女は二人。依頼を持ってきた謎の美女と、いきつけのスナックの経営者である夢子。前者はネタバレになるので触れることはできないが、後者の夢子がちょいと面白かった。探偵小説に凝っている見た目が男の子のような女性で、やぼったいメガネのせいか当初は柚木も魅力を感じていない。しかし実はすごい美女で、しかも素人探偵モードに入ってしまって柚木が振りまわされる。さらにいつの間にか柚木に惚れているというお決まりの展開になる。彼女の存在が、この作品を面白くさせる一つの要因になっていただろう。

それとちらっとだが、加奈子ちゃんが電話にでてきた。その娘が三歳にして柚木をぎゃふんと言わせる場面はニヤリものだった。これを待っていたんだよなー。いいよ。やっぱ加奈子ちゃんは最高にいい。できればもっと登場場面を増やしてもらいたいものだ。そう思っている加奈子ファンは多いと思う。

今回は柚木が三十五歳ということもあってか、若さが目だっていたと思う。あの柚木が逃げるし、及び腰になるし、早とちりをするし、なによりも女性とやっちゃう。キャーーッ!?ってオマエは乙女か、つうの。そして先に少し触れたが、作品自体もかなり若い。少々荒削りな部分もあったが、作品の雰囲気はいつものまま。だから安心して読むことができた。そしてラストはむふふな展開で、うっしっし。モテ男には天罰を、です。


柚木シリーズ
「彼女はたぶん魔法を使う」
「初恋よ、さよならのキスをしよう」
「探偵は今夜も憂鬱」
「刺青白書」
「夢の終わりとそのつづき」
「誰もわたしを愛さない」
「不良少女」
「捨て猫という名前の猫」


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樋口有介
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    2008

02.09

「星空放送局」中村航

星空放送局星空放送局
(2007/11/01)
中村 航

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手紙・月・星をそれぞれモチーフにした3話構成のイラスト+ショートストーリーです。共通している部分は、「祈り」=「願い」をこちら側から向こう側へ届ける、というピュアな思いです。《アマゾンより》

とても可愛らしくて素敵な大人のための絵本でしょうか。全ページにイラストがあるので、絵本と呼ぶけど。図書館で知らずに予約したので、こういった内容の本だとは知りませんでした。だけど、これがすごくキュート。欲しくなっちゃいました。

牛乳が好きな女の子が、ある人へのありがとうと思う…「出さない手紙」
仲良しになったウサギが元気をなくし、カラスがウサギのために月へ向かって飛び立つ。…「カラスは月へ」
DJサトザキ・宇宙の元に、おばあちゃんを大事に思うリスナーからリクエストが届いた。むかしむかしに、おばあちゃんが、おじいちゃんと見たという、夜空の半分にかかるほうき星を、最近なんだか元気がないおばあちゃんに見せてあげたい。リクエストに応えて天体ショーを始めよう。バーッド!そこに緊急事態が発生。この放送を聴いているみんなの善意で、さあ、奇跡を起こせ。…「星空放送局」

三編とも、優しさがあふれてとってもよいお話です。また、宮尾和孝氏のイラストをじっくり堪能しながら読むと、よりいっそう幸せを味わうことができる。本の紹介で初めて気付いたが、中村作品のカバーイラストはすべて宮尾氏が手がけていた。彼のイラストは素敵すぎる。例えばこんなのがそう。

3.jpg 4.jpg


特に文庫版「夏休み」のイラストは色気たっぷりで大好き。これだけでご飯が食える。いや、無理か…。この絵を額に入れて飾っておきたいぐらいに惚れている。大阪でギャラリーが開催されれば絶対に行きたい。つうか、「夏休み」のポスターが欲し~い。

なんか作者の中村航さんより、宮尾和孝氏について熱く語ってしまったが、自分としては嬉しいコラボ作品だった。ほんとにこの本が欲しい。えーい、買っちゃおう。


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中村航
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    2008

02.08

「MAMA」紅玉いづき

MAMA (電撃文庫 こ 10-2)MAMA (電撃文庫 こ 10-2)
(2008/02/10)
紅玉 いづき

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「ミミズクと夜の王」で鮮烈なデビューを飾った紅玉いづきさん。待望の新作です。
「MAMA」「AND」の二編が収録。そしてカラス氏のイラストがカッコ良すぎ。

「MAMA」
海沿いの王国ガーダルシア。トトと呼ばれる少女は、確かな魔力を持つ魔術師の血筋サルバドールに生まれた。しかし、生まれつき魔術の才には恵まれなかった。ある日トトは、神殿の書庫の奥に迷い込んだ。扉の奥から呼ばれているようなそんな気がしたから。果たしてそこには、数百年前に封印されたという人喰いの魔物が眠っていた。トトは魔物の誘いにのった。魔物はその封印から解き放たれ、トトは両耳を失った。そして強い魔力を手に入れた―。これは、孤独な人喰いの魔物と、彼のママになろうとした少女の、儚くも愛しい歪んだ愛の物語。《本の折り返しより》

読み始めてすぐに作品の世界にスルリと入ることができた。魔術師のおちこぼれの少女トトが可愛らしくて、すぐに彼女を応援したくなる。そのトトが、フトしたことがきっかけで、不完全な身体とアベルダインの名を封じられた人喰いの魔物と出会い、少女は自分の耳を食べられたのだが、ひとりになることが怖くて魔物に会いにいく。封じられた魔物は気まぐれで、ボクに名前をつけてみろと言う。その日、耳なし芳一の物語を聞いて感激していたトトは、魔物にホーイチと名付けた。それが封印を解く鍵で、少女はママに恋い焦れていた魔物のママになってあげることにした。ひとりぼっちの魔術師の少女トトと、ひとりぼっちの魔物ホーイチは親子になり、お互いに依存した生活が始まる。

ホーイチに耳を食べられたことで得た能力。どんな言語も聞き分け、その言葉を話すことができる。その能力があるがゆえに、成長したトトは外交官になる。そこで現国王の末姫ティーランと出会い、やがて天国の耳とまで呼ばれる外交官になったトトは、武者修行中のゼクンと出会う。そして絶大な力を持つホーイチを使い魔にしていることで、暗殺者に狙われ続けるようになるのだが、そこから先はご自分で読んでください。

ずっとひとり。自分にはホーイチだけだと、目を背けていたトト。彼女がひとりぼっちではなかったと気付くラストにはぐっときた。それとは別に、ホーイチの戦闘シーンにはカッコいいー!と少年マンガ読みをし、ティーランの強さに男前~となり、ゼクンの想いの強さにキャーーッすてきーと乙女になったようにトキめいた。

ここまでは、「電撃MAGAZINE」に掲載された作品を読んで書き溜めていた。一部は書き直したけれど。そして書き下ろしである「AND」が、本書には加えられている。

「AND」
ダミアンには血の繋がらない妹がいた。妖精のような美貌もった彼の妹ミレイニアには、小さな頃から不思議な能力があった。人に見えないものが見え、人の聞こえないものが聞こえるという力。二人は一時同じ孤児院に暮らし、そして同時に孤児院を出て、兄妹になった。兄は盗人になり、妹は街角で占い師の看板を掲げた。

すでに王母とさえ呼ばれるティーラン。彼女の部屋に忍び込んだダミアンは、ティーランに見つけられるが、赤く光る耳飾りを本当の持ち主に返すように依頼され、彼女によって逃がされた。この赤い秘宝は、ガーダルシアの人喰いの、最初の犠牲者が身につけていたものだった。ダミアンは赤い耳飾りが見せる夢をたどり、その赤い耳飾りの記憶に導かれて、ダミアンとミレイニアの兄妹は、東へ旅立つ。「MAMA」のそれ以前でありその後である物語。そして家族ではない家族の物語でもある。

この「AND」を読むことで、「MAMA」は完結する。そして両作を続けて読むことで、より作品世界がぐっと広がっていく。これを絶妙な相乗効果というのだろう。「MAMA」は偽の親子、「AND」は偽の兄妹を描いているのだが、そこには両方とも愛がある。ひとりぼっちの寂しさを埋める愛、自分の心を救ってくれる愛と、愛のカタチは歪だが、その愛の結末がどうなるのだろう、と興味をもって読むことができた。そして読者は、トトを愛し、ホーイチを愛し、ダミアンとミレイニアを愛することができる。紅玉いづきさんが書く愛の物語に、どっぷり浸ることができるのだ。

新刊を読んだばっかりで、彼女に次ぎを求めるのは早すぎるのかもしれない。
しかし、次なる愛の物語が、とても待ち遠しいのである。

紅玉1

名前入りでサインを頂いちゃいました。
紅玉センセイ、あ・り・が・と・う!

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紅玉いづき
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    2008

02.07

「カクレカラクリ」森博嗣

カクレカラクリ?An Automaton in Long Sleepカクレカラクリ?An Automaton in Long Sleep
(2006/08)
森 博嗣

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廃墟マニアの郡司朋成と栗城洋輔は、同じ大学に通う真知花梨に招かれて鈴嶋村にやって来た。その地にある廃墟施設を探検するためだ。だが彼らを待ち受けていたのは奇妙な伝説だった。鈴嶋村にはかつて天才絡繰り師が住んでいたが、120年後に作動するという絡繰りを遺してこの世を去った。今年はまさに絡繰りが作動するその年にあたるというのだ。2人は花梨と妹の玲奈の協力を得て、隠された絡繰りを探し始めた。コカ・コーラ120周年記念×森博嗣のコラボレーション作品

放送されたテレビドラマは観ていたが、やっぱり原作の方が面白い。ドラマを観て物足りなかったので、これまで本の方は放置したままだった。比べてみるといろいろ違う部分はあるが、その違いはあえて書かない。なぜかというと、まったくの別物と捉えた方がいいと思うからだ。

廃墟マニアの二人が廃工場に興奮するのだが、彼らの興奮はすごくわかる。ちょっと霊的な怖さはあるものの、もし近くにあれば彼らと同じように探検してみたい。それにトロッコがあるのなら、もちろん乗ってみたい。それに入り組んだトンネルがあるのなら、益々わくわくする。廃線なんかも一度歩いてみたいと時々写真を見て思っている。こういう小さな冒険って少年時代の血が騒ぐのだ。この描写は確かドラマにはなかったような気がする。あれば良かったのに。

主人公の郡司と相棒の栗城は普通なのだが、花梨と玲奈のお嬢様姉妹が面白かった。郡司たちと人前では接する態度が激変するしっかり者の長女である花梨に、無邪気で甘ったれな次女の玲奈。この玲奈が男性読者のハートをぐっとつかむ萌え系少女。いつも首からコカ・コーラのペットボトルをぶら下げ、ときどきゴクリと飲む。これが旨そうなのだが、それってぬるくなってない? でもコーラの宣伝にはしっかとなっている。炭酸飲料が苦手だけど飲みたくなったもの。

さてミステリとして本書はどうだろう。石碑に印された暗号から、隠されたカラクリを探すのだが、その解答が理系すぎてお手上げ状態。もう好きにしてくれって感じだった。だけど、そのカラクリの在処までたどり着く行程は、鍵の隠された場所を探ったり、地下通路をたどったり、と冒険心をくすぐる楽しいものだった。それに森作品では初の民族学風の試みも面白かった。

それと本来なら、真知家と山添家の対立のことも書かないといけないのだが、あいにくとドラマの記憶が色濃く残っていて、オチもめずらしく記憶にあった。だから知っていたことについて、どうも書く気にならない。先に違いは書かないと発言したが、そこに触れずに書くのは難しい。でも比較を書けば本の感想にならない。などとジレンマを存分に味わった。

テレビの方が普通は派手になりそうだが、原作である本の方が派手な部分が多かったように思う。それは原作者である森博嗣の世界が、いかに映像向きでないかという証であるのかもしれない。映像観るより本を読め。これ我が教訓なり。

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森博嗣
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    2008

02.06

「さよなら妖精」米澤穂信

さよなら妖精 (創元推理文庫)さよなら妖精 (創元推理文庫)
(2006/06/10)
米澤 穂信

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一九九一年四月。藤柴高校に通う守屋路行(おれ)は、女友達の太刀洗万智(センドー)とともに帰宅していた。その途中、守屋たちは雨宿りをしていた少女と出会った。マーヤと名乗るその少女は、日本のことを学ぶためにユーゴスラヴィアからやって来たという。行くあてがなくなっていたマーヤは、守屋の紹介で白河いずるの家でホームステイすることになった。見慣れぬものごとに出会うたびに、「哲学的意味がありますか?」と友人たちに問いかけるマーヤ。いずれも日常に転がる他愛のない謎ばかり。そして彼女が帰国したあと、おれたちの最大の謎解きが始まった。マーヤがやって来た(帰った)六つの共和国で成り立つという複雑な背景のあるユーゴスラヴィア。彼女の祖国とはどこなのか。謎を解く鍵は、マーヤとのやり取りをした記憶の中にあるはず…。

千反田えるの「わたし気になります」と同じように、マーヤは「哲学的意味がありますか?」と次々と疑問を持つ。それはまあいいのだが、その小さな日常ミステリーの回答が、うんざりする年配者の薀蓄めいていて、これがありえなさすぎてリアルに欠けていると思った。とても高校生の知識で答えが導けるものではないんだよ。

でも異国からきた文化の違う同年代の友達ができたことで、マーヤが見てきた世界や、どんな国で生まれたのか興味をもって調べようとする意気はわかる。何かをしなくては、したいという衝動もわかる。そう思うけどなにゆえにそう思うに至ったかわからない、という自分の感情の答えが、どこからくるのかわからないやるせなさもわかる。これを若者の青さで片付けるのは簡単だが、こういう熱さはいつまでも持っていたいと思った。人間は枯れたら味気ないからねえ。

自分は文庫版を読んだのだが、ある一点が気になって気になってしょうがなかった。それは「ユーゴスラヴィア」「ユーゴスラヴィヤ」と表記が統一されていなかったこと。同じページ内で「ア」と「ヤ」が同居していたので、これは複線?などと思っていが、最後まで読んでも明らかにされない。結局はただの誤植だったのかな。

それと元ラノベ作家の本で、まさかユーゴの歴史を勉強するとは思わなかった。個人的なことだが、世界のスポーツが好きでよくサッカーやバスケのゲームを観ている。そこで活躍した有名な選手も、旧ユーゴの紛争の犠牲者としてニュースで取り上げられていた。

そんなユーゴスラヴィアも現在は、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、マケドニアと現在それぞれが単一国家として存続している。そんな祖国が消滅の兆しがあった国から来ていたマーヤを思うと、日本人にはない祖国への愛をよりいっそう感じた。

しかしこの作品は、前半部分と中盤以降のバランスが悪かったと思う。日常系でいくのか、マーヤの謎でいくのか、どちらかに絞ったほうが良かったのでは…。そう思ったのは自分だけでしょうか。そこのところが少し残念でした。

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米澤穂信
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    2008

02.05

「フルタイムライフ」柴崎友香

フルタイムライフフルタイムライフ
(2005/04/14)
柴崎 友香

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美術系の大学のデザイン科に入った。だけど、自分にはこういう仕事はできないと思うようになった。だから当然、厳しい就職活動で勝ち抜けるなんてことはなくて、このままだとアルバイト生活かなと思っていた。そんなところに、担当の先生に見せられた求人票の会社が、仕事内容は社内報の編集・デザインと書いてあって、場所も心斎橋だったので、受けてみた。喜多川春子22歳。思いがけず包装機器会社の事務職についた。

軽妙な大阪弁が踊る踊る踊る。はたらく生活をはじめて体験する女の子のゆるやかな毎日、恋を描いた長編小説。新入社員の10ヶ月の物語。

「おもしろいで。会社。おっちゃんばっかりで、ほんまにコピーしたりお茶入れたりするねん。なんか、まだ、そういう役をやってみてるっていう感じ」「セクハラとかあんの」「話では気持ち悪いこと言うてくるおっちゃんのことも聞くけど、わたしの周りは温厚な人ばっかり揃てるんか、まだない。でも、いかにもおっちゃんの社会やなとは思う。うーん、けど、思ったより楽しいで。知らんことばっかりやから」「仕事、慣れた?」「まあまあ。今日は、三時間ひたすらシュレッターしてた」

上に書いたしゃべりだけで、なんかすべてが伝わりそうやな。そやからこの本の感想はパスしよっかな~。やっぱりあかんかな。なんて大阪弁で書いてまう影響力がこの本にはあるねん。もうちょっとこのまま書こうかと思ったが大阪弁はここまで。

本書はこれまでと同じで、ふつうの日常を淡々と描いただけで、なにも大きなことが起こらない。お局の小言もないし、いがみあう派閥もないし、スケベな上司もいない。そんな派手なイベントはまったくないのだが、巧みな文章にぐいぐいと読ませるパワーがある。

それとこれまでは風景が浮かぶような描写が多かったけど、この本はほとんどが会話中心になっていて、ずーっと春子が3コ先輩の桜井さんや友達の樹里たちと、だらだら話しているだけ。それもべたべたの大阪弁で。よその地域の方はどうかわからないが、この大阪弁の文章が大阪人のじぶんにはすーっと入ってくる。これは大阪人だけの特権だと思う。ええやろ。と自慢してみるのも大阪人っぽいかな。

普通のことにわくわくできて、恋がしたいと思えて、仕事に慣れていく姿が微笑ましくて、こんな会社で働けるっていいなと思えて、きらきら輝くユーモアセンスに笑えて、お仕事小説としても読めて、とにかくすごく波長があって、めちゃめちゃ好きだー、となった作品やった。これまで読んだ柴崎友香の中で一番好きな作品でした。

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柴崎友香
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