2008年04月05日 (土) | 編集 |
![]() | もっと、わたしを (2004/01) 平 安寿子 商品詳細を見る |
イケてない五人五様の人生を、リレー形式で描いた作品集。
「いけないあなた」
ご飯食べに来ない。二つ返事で馳せ参じたら、監禁された。監禁場所は理佐所有のマンション一室、トイレ内。二股がバレる覚悟はしていたが、言い訳は準備していなかった。そこに二股相手の広子が現れた。ドアの外で二人の女が言い争う修羅場の中、口べた堅太り優柔不断でモテない前半生を送ってきた江口真佐彦は、いったい何を思う。
「ノー・プロブレム」
自分は仕事ができる。頭だっていい。売れっ子コーディネーター篠さおりの鞄持ちをやらされ、篠の鼻を明かしてやりたくて、出しゃばってみた。社内のOLからは、人の言う事を聞かない、子供だ、いいのは顔だけ、筋金入りの自己中心人間のレッテルを貼られ、総スカンを食うが、吉村有樹は鼻で嗤う。そんな中で、ブスで少女趣味の有馬富貴だけは応援してくる。
「なりゆきくん」
クロス職人の親娘のもとで働くようになって一年の清原正太は、でかくて無骨で無口だから女にモテない。そんな正太だが、社長の娘であるしのぶから食事に誘われ、濃厚なキスまでされるようになった。だけど自分からは前進することは出来ない。そんなある日、ただの従業員、としのぶが自分のことを言ったのを聞いてしまった正太は、キスで確かめようとするが。
「愛はちょっとだけ」
瀬戸朝香似と言われる太田絵真にとって、物心ついたときから、男の子に構われるのは宿命みたいなものだった。そんな絵真だが、いやらしい顔をしている、男をその気にさせる顔だ、とかつて言われてショックを引きずっていた。仕切り屋花子が幹事を務める合コンに、サクラとして参加した絵真は、そこで絵真を傷つけた言葉を吐いたかつての親友、麻衣子と偶然再会した。
「涙を飾って」
女手ひとつで健気に子育てするシングルマザー、それが売りだった行田薫子だが、一年で段違いに無口になった小学五年生の息子、進が何を考えているのか分からずに怖い。肉体的成長もさることながら、進学問題も迫ってきた。そこで進の父親候補として、務める会社の社長ジュニアに目を付け、周囲の同性の白い目も気にせずに、媚へつらい、女として売り込みをかける。
人間の嫌な部分、不遜な部分、屈折感などを、さらっと書いて、それを嫌味にあまり感じさせないのは、さすがに平安寿子だと思う。それに深刻ぶったり、ネチネチ妬んだり、イライラ嫉妬することもない。どこかカラッとした部分があって、ドロドロの泥沼になることもない。読んでいて不快になることはまずなく、何かが欠けた人物たちが憎めないのだ。むしろ愛すべきキャラクタに思えてしまうのだから、これがほんとに不思議だ。中でもお気に入りだったのは、「ノー・プロブレム」「愛はちょっとだけ」に登場した、漫才師の宮川花子似の仕切り屋花子こと有馬富貴だった。サブキャラなのに、この存在感はすごい。こんなに面白い平安寿子だけど、中々メジャーにならない。そこが少しもどかしく思う。
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