「シンメトリー」誉田哲也
2008年04月12日 (土) | 編集 |
シンメトリーシンメトリー
(2008/02/21)
誉田 哲也

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警視庁刑事部捜査第一課殺人犯捜査第十係第二班、通称”姫川班”の主任を拝命している、姫川玲子警部補。彼女が活躍する「ストロベリーナイト」「ソウルケイジ」に次ぐ第三弾は、七編が収録された短編集。

「東京」
玲子がまだ品川署の強行犯捜査係にいて、同じ係のデカ長だった小暮に、刑事のイロハを叩き込まれていたころ、品川東高校の女子水泳部員が、プールのある屋上から飛び下りた。その女子が所属する水泳部にはいじめがあった。しかし、いじめの対象は被害者ではなかった。

「過ぎた正義」
三人の女子高生を誘拐、監禁、殺害し、心神喪失で無罪となった男。都合四人の女子中学生を強姦し、内二人を殺害、一年少々の禁固刑で出所した元少年。その二人が、交通事故、薬物中毒で、連続して死んだ。ベテラン監察医の國奥に教えられ、その話が玲子の心に引っかかって残った。

「右では殴らない」
覚醒剤使用の痕跡がある男性が、立て続けて劇症肝炎で死亡する症例が起こった。玲子がその話を國奥から聞いたわずか三日後、またしても同様の死者が出た。所轄所も覚醒剤取締法違反程度にしか認識していなかったが、玲子は連続殺害事件と定義して取り上げた。

「シンメトリー」
JR某線が乗用車に接触、脱線、横転した事故で、百人からの命を奪ったのに、車を運転していた米田は、たった懲役五年で出所してきた。その米田が、事故のあったその場所で、電車に轢かれて死んだ。復讐した犯人の目線で描いた異色作。そこに玲子が犯人の前に現れる。

「左から見た場合」
あれは超能力だと噂された手品師の男が、何者かに刺殺された。その死体の側に転がっていた携帯電話には、〇四五、六六六、とだけ入力されていた。そのマル害の所持していた携帯の電話帳に、たった一人だけ登録されていた渡辺姓の人物。渡辺繁とは一体、何者なのかと気になる玲子。

「悪しき実」
マンションの部屋で男が死んでいる、そう110番通報をして、同室賃借人の女が姿を消した。玲子は即座にその美津代の身柄を確保した。検死結果では他殺か自殺か判断がつかず、亡くなった人物について美津代に問うても、私の亭主で私が殺した、以外は答えない。玲子の勘では、彼女は殺していない。その死んだ男は誰なのか。

「手紙」
玲子が捜査一課に引っ張られることになった事件。今泉係長と出会うきっかけになった、デカ長時代の武勇伝を玲子が披露する。中目黒の児童公園内でOLが、胸部、腹部を三箇所刺され、失血死した事件が起こった。その当時交通課にいた玲子が、数合わせで呼ばれ、捜査本部に参加した事件だった。

おなじみの今泉係長、玲子に惚れている菊田和男、ベテランの石倉保、若手の湯田康平、ベテラン監察医で恋人気分の國奥定之助など、もちろん登場はしている。だけど、短編なのでそれらの人物とのじゃれ合いは少なく、ほとんどは玲子が単独で事件を追うストーリーになっている。理論立てて犯人を追うのではなく、玲子の勘に頼る部分が多いのはシリーズを通しての特徴だ。とにかく玲子のキャラで読む作品になっているので、ミステリやサスペンスを期待すると、肩透かしを食うかもしれない。まあシリーズの三冊目なので、それらをわかって読む人がほとんどだとは思うが。

そんな中で変わり種は、玲子が怒りまくっている「右では殴らない」と、表題作になっている「シンメトリー」だろう。この「シンメトリー」の冒頭にあったような、細切れに書かれた風景描写は好きだった。それと暗号ミステリの「左から見た場合」もそうだ。こういう茶目っ気あるユーモアは、誉田作品では初めて読んだことになるのかも。それぞれに派手さはないものの、バラエティにとんだ作品集になっている。姫ファンなら、もちろん読むしかないっしょ。