「株式会社ネバーラ北関東支社」瀧羽麻子
2008年04月16日 (水) | 編集 |
株式会社ネバーラ北関東支社 (ダ・ヴィンチブックス)株式会社ネバーラ北関東支社 (ダ・ヴィンチブックス)
(2008/02)
瀧羽 麻子

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東京の外資系証券会社では、日付が変わるまで働くのがあたりまえだった。上司はインド人、社長はドイツ人。弥生の肩書きはマネージャーで、さまざまな国籍を持つ六人の部下がいた。その七年間務めた会社を退社して選んだ転職先は、北関東にある納豆会社ネバーラだった。通勤バスは一時間に一本。部屋の家賃はそれまでの三分の一。朝は簡単な朝礼とラジオ体操で始まり、三時にはおやつタイム、仕事はだいたい六時頃に終わる。しかしいったん慣れてしまえば、ぬるい生活はゆとりがあって快適だった。

自分がなにをしたいのか、なにが欲しいのか。いろんなことがよくわからなくなって、一度リセットするために、東京を離れた転職をした主人公。彼女がのんびりした休息を経て、やがて道を選ぶときが来る。お仕事小説であり、納豆小説でもある作品。

配属された経営企画部のスタッフは、弥生を入れて五人。カタカナ語が多い杉本課長、ひとつ歳下で一言多い沢森くん、パートで四十代後半の西川さん、事務員で東京に憧れるマユミちゃん。そこに後ほど本社から研修にやって来る佐久間さん。そんな彼らの憩いの場は、町で唯一の居酒屋であるなにわ。屋号そのままでおかみは関西人の桃子さん。彼らが主な登場人物たちだ。桃子さんはいい味をだしていたが、みんないい人すぎて、もう少しクセがあればなぁ。ちょっと人物が淡白だったかも。

ある出来事がきっかけで自分を見失った主人公が、馬鹿にできないローカル町の情報ネットワークに驚きながらも、気のいい同僚たちや桃子さんとゆっくり過ごす中で、自分のペースを取り戻していく。他人から見れば、逃げているだけかもしれない。自分の居場所ではないかもしれない。だけど長い人生なんだから、ちょっとぐらい休んでもいい。そう思えた読後感のいい作品だった。だけど、ここでも立ち直るきっかけがぼやけていて、もう少しメリハリがあればいいのにと思った。

作中でどこにも触れていなかったが、この町って納豆王国の水戸でしょ。ここに出てくる人たちの食事にはもちろん納豆、冷蔵庫の中も納豆だらけ、スーパーで売っている納豆も種類が豊富、納豆の自動販売機まであり、納豆の食べ方にも独自のこだわりがある。健康法はすべて納豆という、納豆信仰が蔓延する不思議な町だ。

最近は納豆嫌いで有名な大阪でも、食べる方が増えている。だけどその一方で、非常に嫌悪している方もいる。そういうおいらは後者のタイプ。臭いがダメ、糸がダメ、ぐるぐる混ぜて異臭を撒き散らすな、といいたい。存在自体を目の前に出さないでくれ的に毛嫌いをしている。

たぶん一生食べない物体だが、本書はふつうに面白かった。もったいないと思う部分はあったが、オチも悪くなかったし、けちょんに貶すほどでもなかった。ただ飛びぬけてどうこうという作品でもない。ふつうという言葉が、一番ぴたりとくる作品だった。でもこういうのんびりは、わりと好きだ。