2008年04月20日 (日) | 編集 |
![]() | 少女ノイズ (2007/12/14) 三雲 岳斗 商品詳細を見る |
欠落した記憶を抱えた青年と心を閉ざした孤独な少女。彼らが出会った場所は無数の学生たちがすれ違う巨大な進学塾。夕陽に染まるビルの屋上から二人が見つめる恐ろしくも哀しい事件の真実とは――。気鋭の作家が送る青春ミステリーの傑作!《本の帯より》
猟奇的な殺人事件の現場を訪れて、その風景を写真に収めることが趣味という大学生。スカこと高須賀克志は、法科学の准教授であり異常犯罪マニアでもある皆瀬梨夏から、雙羽塾での奇妙なアルバイトを無理やり押し付けられた。登塾するなり行方をくらまし、立ち入り禁止の屋上や地下室など、誰も訪れるものがいない場所で、セーラー服に銀色の無骨なヘッドフォンという姿で、ぐったりと死んだように倒れて時間を過ごす少女、斎宮瞑のバイト講師という建前の世話係だった。少女は頭がよくて洞察力に鋭く、病的なまでの正義感を持っていた。しかし一方で、人並み以上に愛情に飢え、もろいほどに孤独で不安定な女子高生であった。
「Crumbling Sky」
小学生の頃、彫像の除幕式典に参列しているスカの目の前で、担任教師が突然死んだ。空はよく晴れていた。なんの前触れもなく、背広姿の男が苦しみ始め、そして不自然な形に首を曲げて倒れていた。空から降ってきた見えない何かが頭に当ったのか。それ以来、スカはだだっ広い開けた場所が怖くなるトラウマを抱えることになった。
「四番目の色が散る前に」
廃業したファミレスの駐車場で見つかった少女の死体には、右腕が欠損していた。その殺人現場に忍び込んで、その風景を写真に収めていたスカは、雙羽塾に通う納戸愛美と出会った。そして左腕が切断された高校生の死体が発見された。別れ際に瞑がぽつりと漏らした言葉、ABCでなければいい。その意味するところとは。
「Fallen Angel Falls」
浦澤華菜という少女が、机の中に仕込まれたガラス片によって手首を怪我した。その少女はつい先日にも、階段から突き落とされ救急車で運ばれていた。自分は呪われていると彼女は言う。その少女の袖口からのぞく白い手首には一条の傷跡が走り、一度自殺未遂をした噂があるのに、屋上で自殺の真似事をしていた。
「あなたを見ている」
スカをカウンセラーと勘違いして、森澤恵里という少女が相談に来た。ストーカー男を自宅で刺し殺してしまったが、警察が調べてもそのような痕跡は発見されなかった。その後もストーカーからの陰湿な嫌がらせが続く。彼女は本気で怯えているし、おそらく嘘ではない。少女が幽霊を刺した同じ日、姿なき者から刺されるという通り魔事件が起こっていた。
「静かな密室」
斎宮瞑という少女が、両親の離婚がきっかけでスカの前から姿を消して三ヶ月。試験監督のバイトをしている試験中の教室で、同僚の女性が何者かに頭を殴られて殺されていた。その翌日、大学の写真部の部室で火災事故に巻き込まれたスカは、現在病院で入院していた。そこに現れた警察官の二人は、スカを容疑者だと思い込んでいた。
ミステリの体裁はとっているが、これを読んで謎を解けるかたはいないだろう。論理やロジックを紐解こうとしても、斎宮瞑の飛躍した推理というか、こじ付けというか、著者の豪腕ぶりで無理やり解答にたどりつくような感があった。だからミステリを求めて読むと、肩透かしを食わされるだろう。
それよりも、優等生の仮面を被った少女の退廃的な弱さを上手く読ませる作品だと思った。変わった性癖を持つ主人公や、不思議系美少女のヒロインという、キャラで読ませる傾向が強いと感じていたが、読んだあとで他の著作を見てみると、この作家はラノベ作家であることを知った。そう、ラノベ作家なら納得できる。それを知ってからフト思い返すと、出てきた登場人物たちが女子高生ばかりだった。これは単行本の皮を被ったラノベ小説。この言葉が一番ぴたりと嵌まる作品だと思う。よって読み手の年代が若干絞られるかも。ふつうは表紙で気づくのだろうが、まったく気づかない天然ぶりを発揮してしまった。とほほ。
2008年04月20日 (日) | 編集 |
![]() | For You (2008/03) 五十嵐 貴久 商品詳細を見る |
冬子叔母が倒れた。彼女は私の母の妹に当たる。私を産んですぐ亡くなった母の代わりに、幼い私を育ててくれたのが叔母だった。母も叔母も身内の縁が薄い人で、冬子叔母自身も独身だったため、血縁で言えば、姉の子である私が最も近いことになる。私は急ぎ病院に駆けつけたが、叔母は四十四歳という若さで帰らぬ人になった。それが、ひと月前の出来事だった。
映画雑誌ジョイ・シネマ編集部で働く佐伯朝美は、謎に包まれた若手韓流スター、フィル・ウォンへのインタビューの質問事項に頭を悩ませていた。そしてつきあっている彼とも微妙ながら関係が続いている。バツイチ、子持ち、十二歳も年上で、しかも収入の安定しないフリーのカメラマン。その彼との関係について、冬子叔母と大きなケンカをし、それが彼女との最後の会話になってしまった。そんな後悔を思いだしながら遺品整理をしていると、三十年ほど前に書かれた叔母の日記帳を見つけてしまう。その日記には、叔母の高校二年生の頃からの純粋でまぶしいほどの青春の日々と、たった一度の恋が綴られていた。
高校二年生の吉野冬子が、Uこと柴田裕子、みかりん、ピータン、ナオら仲良しグループで、アイドルの話やファッションの話、現実に交際している人たちの噂で盛り上がる日々を過ごしていた。そんなある日、季節外れの転校生がやって来た。背が高く、低くてよく通る声。運動神経がよく、成績はトップクラス。無口で、静かな男の子。それが藤城篤志だった――。三十年前のいきいきとした冬子と、その冬子の一途な想いがこもった日記を読みながら、仕事に一生懸命になる佐伯朝美。そして…。
これはネタバレなしでは肝心な部分が書けない。ストーリーは、韓流スターのフィル・ウォンへのインタビューは難しい、というのが定評のインタビューを成功させようとする朝美と、八十年代を生きる冬子の青春が、交互に書かれている。片思いにしろ、仕事ものとしても、王道をそのままいく作品だ。とにかくすべてがベタな展開で、一昔前の少女マンガのようだった。読んだことないけど。
すべてが控えめで、今では考えられないような奥ゆかしい叔母の恋。日没を気にしたり、一緒に喫茶店に入ることが特別だった時代。視線が合うだけでドキドキし、グループデートにウキウキするが、二人きりになれば何を話してよいかわからない。このような一昔前の地方都市で過ごす純朴な高校生の青春だから、純粋さが漂っていて、ちょっとした出来事で甘さが匂い立つ。これにキュンとなるのだ。
一方で、現代に生きる朝美は過酷ともいえる忙しい毎日を送っている。そんな彼女が、叔母の日記と、自分の仕事を通して到達するラストは、まさにミラクルだった。出来すぎだとか、展開が唐突すぎるとか、そのように言うかたがいるかもしれない。だけどあえて言おう。とてもいい話だった。最高に面白かった。溢れる幸福感がどっと押し寄せてきて、気持ちよく本を閉じることができた。ベタ甘、最高! お薦めの一冊です。

図書館本を読んだあとで買っちゃった。
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