「僕僕先生」仁木英之
2008年04月21日 (月) | 編集 |
僕僕先生僕僕先生
(2006/11/21)
仁木 英之

商品詳細を見る

時は唐代。若き王弁は父の財産に寄りかかり、学ばず、働かず、娶らず、ひたすら安逸を貪っていた。そんなある日、父の命で黄土山へと出かけた王弁は、そこでひとりの美少女と出会う。自らを僕僕と名乗るその少女、なんと何千何万年も生き続ける仙人で…不老不死にも飽きた辛辣な美少女仙人と、まだ生きる意味を知らない弱気な道楽青年が、五色の雲と駿馬を走らせ天地陰陽を大冒険。第18回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。《本の帯より》

ファンタジーらしいファンタジー作品。この手にありがちな中国を舞台にしているのだが、そこがちょいと残念に思ったりもする。当然の如く漢字表記が多くて、父親の王滔(おうとう)とか、ページを捲ると読めなくなってしまうのだ。だからたぶん的な雰囲気読みをしてしまうのだ。こういう作品を出版するのなら、最後まで振り仮名を振るサービスがあって然るべきだと思う。でもそれらを差し引いても面白かった。

主人公の王弁は、父親の財産を当てにして、ただぼんやりと床に寝そべり、気が塞げば庭に出て、腹が減れば食うといった、ぐうたらな毎日を過ごしていた。そこにフトしたことがきっかけで、僕僕と名乗る美少女の仙人と親交を結ぶことになり、いつの間にか弟子になっている。

そして漠然と旅に憧れていた主人公は、先生の旅に同行することになり、都では当代きっての仙人の司馬承禎とともに玄宗皇帝に拝謁し、大原府では犬頭の商人と出会い、譲ってもらった死にかけた老馬が実は古今無双の名馬であったり、その吉良に乗って跳んだ不思議な世界では渾沌に飲み込まれ、帰り道では蝗(いなご)の大群を見事に撃退した人の技を目の当たりにする。そんな主人公の冒険にわくわくしっ放しだった。

それらのベースには史実を踏まえた時代設定があり、人間と仙人という身分違いの淡い恋があったり、無気力だった青年が前向きに生きようとする変化があったり、仙人ならこういう不思議をさらっと見せてくれる的な興味を満足させたりと、読ませ方としては抜群に上手いと思った。

また師匠である先生のキャラがとてもかわいらしかった。結構俗っぽかったり、その逆で何千年も生きてきた冷たさがあったり、本当の姿を中々見せない謎で惹かせたり、掴みどころのないしたたかさがあったり、男なら抱きつきたくなるような色気を感じさせたりと。そんな仙人の先生も、主人公と一緒に日々を過ごすことによって、少しずつ変わっていく姿も良かった。

そして続編が読みたいというあなた。仁木英之氏のブログに朗報が載っていたりする。こちらをクリックしてくれたまえ。「駆け出し物書き雑記」 あー、面白かった。そして続編も楽しみだ。次はぜひとも振り仮名を頼みまする。