「スメラギの国」朱川湊人
2008年04月28日 (月) | 編集 |
スメラギの国スメラギの国
(2008/03)
朱川 湊人

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きっつーぅ。このホラーは、猫好きをどん底まで突き落とす作品だ。

大手事務機メーカーに勤める二十六歳の営業マンである香坂志郎は、そう遠くない将来、その部屋に恋人の麗子を迎えるつもりで新築のアパートへ引っ越すことにした。その引越しの当日、新居のベランダには、かなり大きいブス顔の野良猫が丸くなって寝ていた。そのアカトラ猫にジンゴローと名付け、客分として付き合うことにする。そして引越しの挨拶に大家宅を訪ねると、アパートのすぐ前にある広大な空き地の真ん中にある、ひょっこりひょうたん島のような林のところに近づかないこと、白い猫を見かけても絶対にかまわないように、と奇妙な忠告を受けた。その後、ヨアヒムというもう一匹を加え、志郎の生活にはいつの間にか猫二匹が溶け込んでいた。やがて、同僚から車を安く手に入れた志郎だが、車を駐車しようとしたところで、プリンスと名付けた子猫を轢いてしまう。これが猫たちとの壮絶な戦いの始まりであった。

一方、もうすぐ七十に手が届く佳代は、孫娘が拾ってきたチョコとアイスというキジ白の兄弟猫と同居していた。そのチョコとアイスの二匹は、空き地の林で白い猫と出会い、そのオウさまの歌声を聴いたことで、新しい猫としてのさまざまな能力と心を手に入れていた。そしてもう一方で、志郎の上司である村上は、一人息子を交通事故で亡くし、周囲に馴染もうとせずにいた。生前の息子と約束した百機の模型戦闘機が完成した時、息子を轢き殺した犯人を殺し、自分も死ぬ。彼の目的はただひとつ。息子の復讐だった、

恋人との熱々ぶりや猫たちとの微笑ましい新生活を読んでいる分には楽しかった。それが170ベージと長く続くのだが、不幸な事故をきっかけにして、人間と猫のどろ沼の戦いに突入していく。主人公が運転ミスで子猫を轢き殺してしまい、なぜあんな所に猫がいたんだ。エンジンの音に驚いて、逃げるのが普通だろう。大きな音がしていたはずなのに、何で怖がらないんだ。何で逃げてくれないんだ。と罪悪感に襲われながらも、自己保身に逃避してしまう人間の臆病さはわかる。そこに子猫の復讐に、問答無用という感じで一丸になって襲い掛かる猫たち。これがとてつもなく恐ろしい。

その轢かれた子猫は実は不思議な力を持った白い猫の子供で、猫たちにはオウさまと呼ばれ、主人公にはスメラギと名付けられた白い猫の子供だった。スメラギの歌に導かれて心を持ち、スメラギを頂点としながらも、実際は知恵の働くルイが築いた猫の集団が、執拗に主人公や周辺のもろもろに攻撃してくる。これがどっちが悪だとはっきりすれば感情移入しやすいのだが、人間と猫の両方に非があり、そのままお互いに引き返せないところまで突き進んでいく。これがすごくしんどい。

その一方で、猫のチョコが体験する冒険や悲劇や喪失、救われた恩返しなど、作品としての救いは少々ある。それに新たに誕生したラッキーや、ヒロインの持つ天性の明るさに救われるけれど、やはり半端じゃなく気が滅入る。特に猫ちゃんと一緒に暮らす方たちには酷な作品だ。うちのニャンズは、進化した猫じゃなく、古い猫で良かった。などと安心しつつ、やはり多くの猫たちが死んでいくのは、読むのがツラかった(=^・^=)にゃん。