2008年05月02日 (金) | 編集 |
![]() | 戸村飯店青春100連発 (2008/03/20) 瀬尾 まいこ 商品詳細を見る |
戸村飯店はじいちゃんの代から始まった大阪の下町にある中華料理店だ。ラーメンやチャーハンが主なメニューの超庶民的なさえない店だけど、安くておいしいからそこそこはやっている。平日は常連客が集まり、土日は家族連れでにぎやかになる。どんなに忙しいときでも、戸村飯店を手伝うのは弟のコウスケだけ。小さいころは、食器洗いや料理を運ぶくらいしかさせてもらえなかったけど、今では簡単な調理もさせてもらえる。兄のヘイスケは長男のくせに、店に顔を出さない。自分の家の店のことをとことん避けている。
その兄は高校卒業の翌日に家を出た。なんでもそこそこだけど、昔から文章を書くのは得意だった。やりたいこともないくせに家を出る。そんなむちゃなことを通すのに、この特技は使えた。全ての人が阪神タイガースをこよなく愛し、吉本新喜劇で爆笑し、オチがない話をすると、それがどないしたんと戸惑われてしまう町。すべてのことが筒抜けで、みんなが身内の人情たっぷりの町に居心地が悪く、ただ家を出られさえすれば、なんでもよかった。そこで、とりあえず東京の小説講座の専門学校に入学した。
ハンサムで女の子にもてる兄と、アホなギャグを連発する1歳違いの弟。その戸村兄弟の進路も恋も迷走ばかり。要領よく見える兄が実は不器用で、弟は見た目通りの不器用。お互いのことが見えず、なにより自分のことが一番わからない。大阪と東京で別れて暮らすことになって初めて、今まで近すぎて見えなかった相手の良さが見えるようになる。
主人公である兄弟ふたりはもちろん魅力があるが、脇を固めるさまざまな人物たちも個性的で、インパクト大であった。弟サイドでは、片思いの岡野、頼りになる北島君、常連客の広瀬のおっさん、竹下の兄ちゃん、山田のじいちゃん。兄サイドでは、話が飛ぶアリさん、単純で見当違いで天然の古嶋、バイト先のオーナーの品村さん。そして兄弟の両親である親父とお袋。
高校生活満喫しまくんねん、というコウスケの高校生活や恋を楽しみつつ、東京で過ごす大阪人のヘイスケがまた面白い。関西弁をしゃべる、イコール、おもしろい人というイメージは、ヘイスケと同様にかなりヤだ。でもここにあった大阪と東京の違いは面白く読めた。例えば、千円のランチが安い、という感覚は大阪人なら絶対にない、とか、もんじゃ焼きの頼りなさというか、食い物としての中途半端さがいただけない、とか。そんな東京に竹下の兄ちゃんが現れるのだが、その場面は大爆笑だった。いるよー、確かにこういうアホな大阪人はいてる。でもこんな人に限って、めっちゃええ人やったりする。
戸村飯店を継ぐのだろうと漠然と思っていたコウスケと、なんやかんやと東京で経験するヘイスケやけど、彼ら兄弟のラストにはちょっとじーんときたし、がんばれーと応援したくなった。なんやめっちゃええ兄弟やんか。それに、大阪人は大阪が好き、という、ちょっと異常な地元愛も上手く織り込まれていて、ぎょうさん笑えたし、自分の将来が見えない若者の姿にも共感できた。この兄弟とは、また再会したい。そう思えたおもろい一冊だった。
なんや途中から悪ノリして大阪弁で書いてしもた。
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