「ジーン・ワルツ」海堂尊
2008年05月14日 (水) | 編集 |
ジーン・ワルツジーン・ワルツ
(2008/03)
海堂 尊

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桜宮市・東城大学医学部を卒業、東京・帝華大学に入局した32歳の美貌の産婦人科医、曾根崎理恵―― 人呼んで冷徹な魔女(クール・ウィッチ)。顕微鏡下人工授精のエキスパートである彼女のもとに、事情を抱えた五人の妊婦がおとずれる。一方、先輩の清川医師は理恵が代理母出産に手を染めたとの噂を聞きつけ、真相を追うが…。髪よりも細い硝子管で、彼女は生命を作り出す。それはただ、人間らしい望みのためだけに。生命の誕生を支配するのは神か、それとも医者なのか?《本の帯より》

まず内容紹介の補足をしておきます。産婦人科学教室の助教、曾根崎理恵の専門は不妊治療で、発生学の講義受け持っている。その一方で、郊外にあるマリアクリニックに週一回非常勤の医師として通っている。院長の三枝茉莉亜は末期の肺癌を患い、さらにある事件が関係して、クリニックはあと八ヶ月で閉院が決まっていた。そこで理恵は、古参の妙高助産師と共に、一児の母の甘利みね子三十四歳、堕ろおすか迷っているキャリアウーマンの神崎貴子二十八歳、オレンジ髪のヤンキー娘の青井ユミ十九歳、そして、人工授精が着床した足かけ五年の付き合いになる荒木浩子三十九歳、双子を着床した山崎みどり五十五歳、といった、たまごを宿した五人の妊婦を担当している。

さらっと書いてしまうが、五人の妊婦たちの妊娠経過は一筋縄ではいかない。ある者は残念ながら流産する。そして、高度な奇形が判明して出産後に胎児が死亡するケース。重篤な奇形である短肢症であることが判明するケース。それから、人工授精患者がふたり。ようやく待望の一子を授かった者。双胎妊娠のケースが代理母である可能性を疑われている者。まずは、母である彼女たちが決意を下す場面で、上を向いて涙が出ないように我慢をした。そして、ばたばたした出産場面にどきどきしながらも、生まれてきたことに対して、またもや涙を我慢する。そこで、冒頭で曾根崎理恵がもらしていた一言が脳裏を過ぎる。五体満足で生まれ落ちることがどれほどの奇跡か。

クリニック側はここまでで、次は大学医学部側に移りたい。陽気な部分では、曾根崎の講座を受けている男子学生の金田と眼鏡女子学生の鈴本が、ユーモアがあってかわいく思えた。彼らが受ける講義は、というか、読者が読まされることになる、妊娠とは、それに伴うさまざまな事柄など、これにはすごく勉強になった。専門用語がありながらも、理恵先生の授業は真面目に読むと、すごく分かりやすい。それに、旧弊な体質の屋敷教授との対決も、胸がすうっとする。

ただ、今回はもろもろの問題提起が前面に出ていてちょっと硬い。厚生労働省官僚のご都合主義、地域医療の崩壊、不妊治療、代理母問題など。それに伴ってか、全体的にエンタメ度が低く、さらに、代理母についてのミステリもパッとしない。実際のところ、140ページ辺りで理恵の狙いが読めてしまった。いつになったらミステリ部分を褒められるのだろう。

曾根崎理恵の過激な発言をすべて肯定できるかというと、これも難しいのだけど、官僚と現場の意識の違いなどは、なるほどと頷けるものがあった。それらと共に、妊婦さんの決意であったり、出産する姿であったり、神の降臨であったり、ヤンキー娘の変身ぶりであったり、誕生した薫くんのお父さんがアメリカ在住のゲーム理論者だったり…、おっと語りすぎたか。とにかく、海堂尊さんのラストだけは、毎回楽しく読めてしまうから不思議だ。これって、褒めになってるのか?? 出来ればそろそろ、東城大学医学部付属病院を読みたい。