2008年05月16日 (金) | 編集 |
![]() | 仔羊の巣 (創元推理文庫) (2006/06/17) 坂木 司 商品詳細を見る |
僕の名前は坂木司。外資系の保険会社に勤めている。僕はごく小さい頃から、自分が平凡だと知っていたから、異形の才を持つ人間に憧れた。僕は鳥井真一と出会った。彼は、僕にないものばかりを持っていた。まっすぐなまなざしと、まっすぐな言葉。僕が憧れ続けた、美しくも悲しいいびつさがそこにはあったのだ。僕はそんな彼が、一番精神的に追いつめられていた時期に手をさしのべた。それ以来、彼は僕を介してしか、外界と接触しなくなったのだ。だから僕は、彼のすべてを受け止める。いや、受け止めたいと思った。ときに幼く、ときに不安定で美しい彼の心を。ひきこもり探偵シリーズ第二弾。
いやー、すっかりご無沙汰をしてしまったこのシリーズ。二人の依存しあった関係が気持ち悪い、ということは覚えていたが、それ以外の記憶がスコンと抜け落ちていた。それにしても、やっぱり二人の関係が気持ち悪い。首筋がもぞもぞしてくるような感じかな。
町のお巡りさんになった友人の滝本の問いかけ。「鳥井はともかく、お前はあいつと世界のたった一つの窓口でいることに、納得してるのか? それとも、誰にもなつかない動物のオンリーワンであることを、杖にしてすがってるのか?」に対して、頬を濡らす坂木。その坂木を見た鳥井は、「さかきをなかせるやつは、ゆるさない」と怒る、さ、寒い。絶対零度のブリザードがビューっと吹き荒れる。この二人の依存具合が、ちいとキツイ。
この歪だ関係は苦手だ。しかし、著者のファンだから読むのだ。それに二人の関係さえ除けば、坂木のお人好しぶりはかわいらしいし、鳥井が吐く直線的な意見は好みだ。それにサブキャラに魅力がある。しかし、前作の「青空の卵」を紹介した記事でを読み返しても、ほとんどと言っていい程、サブキャラのことを書いていなかった。そこで、本書に登場したサブキャラを紹介しておくことにする。
町のお巡りさんになった滝本。その後輩の小宮くん。銘菓を送る寺田さん。盲目の塚田くん。デパートに勤める巣田さん。木工教室の先生になった栄三郎さん。その生徒になった利明くん。誤解で坂木を攻撃した女子高生の矢崎さん。歌舞伎役者の安藤さん。坂木の同僚の吉成と佐久間さん。駅員の下島さんと後輩の斉藤くん。「なか川」のご主人と奥さん。これって、役に立つのかな。。というわけで作品紹介。
「野生のチェシャ・キャット」
鳥井がひどい風邪をこじらせたある日、坂木は営業部の同僚である吉成哲夫から、同期の佐久間恭子の様子がおかしいと相談を持ちかけられた。性差別なく業績を評価してもらいたい。保険のおばちゃんにはならない。そう言っていた彼女の机の上に、同窓の名簿があった。営業方針がまんま保険のおばちゃん的に変わったとしか思えない。だから一緒に探ってくれという話だった。いつもならここで鳥井に頼むところだ。でも名探偵はベッドの中。さぁ、どうしよう?
「銀河鉄道を待ちながら」
手作り木工教室を開くようになった木村栄三郎さんから、遊びに来るように誘われた坂木と鳥井。視覚に障害がある塚田くんと合流した三人は、地下鉄の駅で、塚田くんが面倒になったという駅員の下島さんと知り合う。そして栄三郎さんの家で、彼の生徒だという土屋さんと一緒に木工作りを習う坂木たち。その後日、駅員の下島さんから、ホームの一番前で風船を持って立ち尽くす奇妙な少年が毎日いるので、鳥井の探偵力を貸して欲しいと声をかけられた。
「カキの中のサンタクロース」
坂木は最近、おかしな視線を感じる。すると、若い女性が持ったバッグから飛び出たラケットで腹部を強打され、石段に腰かけていた女子高生たちにエロオヤジ扱いをされ、そして、巣田香織さんと歩いていたところ、ワインの入った布袋でふくらはぎを直撃された。怒った巣田さんのとっさの行動で、ワインの瓶に砂が詰められていたことが分かった。攻撃してきた彼女たちは確信犯だと鳥井は言う。その一方で、前の事件で知り合った、利明少年がわだかまりを持っている父親の謎を解く。
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