2008年05月18日 (日) | 編集 |
![]() | ペンネームは夏目リュウ!―キミも物語が書ける (2008/02) 濱野 京子 商品詳細を見る |
夏目宏樹は、読書と野球が好きな小学生。新刊を楽しみにしていた探偵小説の最後の一冊を目前で買われ、図書館では借りようとした本をタッチの差で持って行かれてしまう。だれだよ、と思って見ると、三つ編みにした髪に、ピンクのフレームのメガネ、この間のあいつだった。
新学期が始って小学五年生になり、クラス替えにちょっとドキドキしていると、一番仲良くしている永井翔太とまた同じクラスだった。翔太はちょっと太めで、アニメとマンガが大好き。同じクラスになったメンバーを見回していた宏樹は、ひとりの女の子に目を止めた。ピンク色のフレームのメガネをかけている子。童話作家を目指す勝気な少女、それが島崎明日香だった。
いっしょに遊んだりするグループがだいたい固まってきたある日、宏樹は図書室で本を借りようと、その本に手をのばした。ところが、同時にもう一本の手がその本にのびていた。またもや、島崎明日香だった。明日香は物語を書いているので、どうしても今日読まなくてはいけないと言い、宏樹はそのときの勢いだけで、自分も探偵小説を書いている、と言ってしまう。それがきっかけで、宏樹は探偵物語を書き始めた。
見せ合いっこしたところ、実力には大きな開きがあった。宏樹は正直に初めて物語を書いたと告白し、明日香にいろいろとアドバイスをもらった。それを参考に、まずはホームズをもじったテームズという主人公を日本人探偵にしてみた。高校生探偵の七瀬リョウ。そのリョウはどんな人間なんだ? パソコンに向かって呼びかけたところ、想像していたリョウの姿が目前に現れた。このリョウと会話しながら、宏樹はリョウを活躍させる物語を考えていく。
児童書でありながら、文章を書くこと、お話を書くことができる人は、特別な人ではない。本が好きなら、やり方さえわかれば物語は書ける。誰でもやってみようと思えばできることだとこの本は説いている。この本の主人公たちも、何もないところから、最後には一冊の文集を作りあげる。そんな彼らの創作に対する試行錯誤を楽しむ本編と共に、「ミニミニ創作講座」「那須正幹先生へのインタビュー」「作家への七つの質問」などが収録されている。翔太がお話を楽しく書いているのを読んでいくうちに「ぼくにも書けるかも」「わたしも書いてみたい」そんな気持ちになれるかも。本が好き、そういう子供たちに読んで欲しい一冊だった。
2008年05月18日 (日) | 編集 |
![]() | カツラ美容室別室 (2007/12/07) 山崎 ナオコーラ 商品詳細を見る |
主人公は、二十七歳の佐藤淳之介。高円寺にある1DKのアパートへ引っ越してきて、梅田さんに「近くに引っ越してきました」と連絡した。梅田さんは、三十二歳で奥さんがいるのにも関わらずフリーターという自由人。梅田さんとオレは、友達の友達、という間柄で知り合い、なぜか意気投合して、だんだんと間の友だちの介在なしに二人で遊ぶようになった。その梅田さんから、美容院へ誘われた。それが、カツラ美容室別室だった。
梅田さんが紹介してくれた、店長のカツラさんは、カツラを被っていた。黒い七三のカツラだ。「カツラ美容室別室」は、四十七歳の桂孝蔵と、二十七歳の樺山エリコと二十四歳の桃井ゆかりの、三人で切り盛りしているのだった。髪を切ったあとに、店の慰労会を兼ねた花見へ参加することになった。美容院を舞台に、淳之介とエリ、梅田さんたちの交流を描いた作品。
この作家さんの作品を読めば、何かしら感じるものがあるのだが、本書に限っていえば残念ながら何も感じなかった。その要因を考えてみたら、ヒロインが結構しんどい女であったり、カツラさんが捉えどころなかったり、独りよがりな会話を聞かされたりと、登場人物たちに魅力を感じることができず、彼らの想いに共感できなかった。
しかしその一方で、ちょっとした描写に、おお、いいなぁと感じさせるセンスの良さは健在だった。例えば、しんどい女をアパートまで送ったあと、自分のアパートへ帰った場面を引用すると、「部屋へ戻ってから、牛乳を温めた。電子レンジへ入れ、スイッチをオンにしてから、中を覗くと、カップがくるくると回り始めた。このカップが耐熱かどうかオレにはわからなかったので、割れるんじゃないか、とドキドキして、オレンジに光る電子レンジの中をじっと見ていた。一分して音が鳴り、ドアを開けると、ホットミルクの匂い、すごい、出来上がっている。疲れる女といるよりも、アパートで牛乳を温める方がいい」とある。
こういうなに気ない一場面に、やはり作家さんは違うなー、と感心してしまう。自分の日常にもある場面のはずなのに、こういう一文はまず出てこない。耐熱かどうか心配しながらも、停止するまで見て、なおかつ出来上がりに感心した上で、しんどい女と対比する。こういうのを才能だと言うのだろうと、しみじみと思った。
乾ききった人間模様にはノレなかったが、作者のこういった物の捉え方や描写力は好きだ。本書は自分には合わなかったが、今後も注目はしていきたい。たぶん、何かを感じさせてくれるだろうから。
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