2008年05月28日 (水) | 編集 |
![]() | 王国は星空の下 (ミステリーYA!―北斗学園七不思議) (2007/03) 篠田 真由美 商品詳細を見る |
深い森にかこまれた幼稚園から大学院まで揃う全寮制の私立北斗学園。その広大な敷地の一画には戦前からの建物が点在し、異空間をつくりあげている。その学園には、やたらと具体的な、それでいて不気味な不思議、つまり北斗学園には七不思議があった。
一、北斗なのに星が八つの円になっている学校の校章の不思議。二、ときどき勝手に動き回る大理石像の不思議。三、書庫の迷路で人が消え、黒魔術の本が隠されているという旧図書館の不思議。四、壊れたパイプオルガンが鳴り出す旧音楽堂の不思議。五、実際のところ元はなにに使われていたのかわからない開かずの礼拝堂の不思議。六、海外で盗難に遭ったまま行方不明の有名な絵が隠されているという記念博物館の不思議。七、北斗学園を作った「喜多泰山」という人の正体がわからない学園創立者の不思議。
その七不思議のうち一と七は学校自体に関わる謎で、それ以外が足を踏み入れるのはタブーという暗黙のルールがある旧ブロックがらみの謎だった。中等部二年で新聞部の三人、行動派のアキ、慎重派のハル、知性派のタモツは、それらの謎を暴き出して白日の下に晒してやろうと、夜の寮を抜け出して調査を続けるが、それを邪魔しようとする何者かがその前に立ちはだかる。やがて、とんでもない事件が起きた……。
冒険的要素があるので、わくわくするのかと思った。しかし、そういうノリはあまりなかったように思う。その要因のひとつとして、少年たちの幼稚な会話が邪魔していたように感じた。万事がせっかちのあわて者で、走り出してからどこへ行くか考える、しゃべり出してから内容を決めるオレことアキ。そのアキといつも対立する慎重派で、物知りで、照れ屋の恥ずかしがりだけど実はかなり友達思いのハル。アキとハルがぶつかると冷静に意見を調整する、楽観的で前向きなタモツ。そのアキの直線的な行動や物言い、無邪気すぎる語り手ぶりが、中学生としては無理がある。ここにちょっと引っかかってしまった。
それともう一つ。学園の総長派と理事長派の対立や、見つけてしまった首つり死体に、殺し屋の存在。そして、隠されたある物の在り処。これらをミステリと言ってしまっていいのだろうか。ちょっと違うように思うんだが。でも、サブキャラはYAものらしくわかりやすい色づけをされていたと思う。北斗学園を王国だと言った正体不明のJ。旧図書館の魔法使いこと淵野先生。ゴジラの異名を持つクラス委員の森下静香。高飛車なクラスメイトの宍戸万梨菜。ミス北斗学園と呼ばれるスーパー高校生の不破宙美女史。学園の乗っ取りを企む東城理事長。死神のような危ない小沼。
唯一とも言えるミステリ部分の星座にまつわる謎解きは、そんなアホなという展開だが、個人的には嫌いじゃなかった。しかし、これを読んだ子供に理解できるのかは、はなはだ疑問が残るところだ。七不思議と銘打っているのにも関わらず、次巻に持ち越しているのも減点ポイント。しかし、すでに発売されている続編を読ませようとする企みと捉えるのなら、成功なのかもしれない。悪い点ばかりを抽出してしまったが、当たりハズレのあるミステリーYAとしての評価をするとなれば、可もなく不可もなくという普通の作品だった。
2008年05月28日 (水) | 編集 |
![]() | ショートソング (集英社文庫) (2006/11) 枡野 浩一 商品詳細を見る |
ハーフの美男子なのに内気で、いまだチェリーボーイの大学生、克夫。憧れの先輩、舞子にデートに誘われたが、連れていかれたのはなんと短歌の会!?しかも舞子のそばには、メガネの似合うプレイボーイ、天才歌人の伊賀がいた。そして、彼らの騒々しい日々が始まった―。カフェの街、吉祥寺を舞台に、克夫と伊賀、2つの視点で描かれる青春ストーリー。人気歌人による初の長編小説。文庫オリジナル。《背表紙より》
内気で自分に自身がない国友克夫。モテ男でサドっ気がある天才歌人の伊賀寛介。この二人の男が、須之内舞子を通して出会い、互いに影響し合っていく。その二人は、お互いに勘違いをするのだが、そのすれ違いぶりは読者にしかわからない。そういった手法は中々上手いと思った。
克夫は舞子先輩ラブで、伊賀さんという恋人がいるのがわかっていても、呼び出されるとほいほい出かけて玩具にされている。ちょっと性格が真面目すぎて、克夫は面白味が少ないのかもしれない。しかし、短歌の素人である克夫の才能に伊賀は注目し、嫉妬し、親切をしながらも、からかったりイジワルをする。その克夫のことをかわいいと思ってしまう自分に、ホモの可能性があるのではないかとビビッたり、というユーモアは結構好きだった。
読み始めは、伊賀のだらしない下半身に辟易しながらも、読んで行くと彼の印象がどんどん変わっていく。その伊賀の彼女であり克夫の憧れの舞子先輩は、どんな人物なのか先に進むにつれよくわからなくなっていく。二人の男に好かれるのだから魅力があるのだろうが、伊賀の性の捌け口であり、ただ一方的に奉仕する女であったりと、どうも道具的にしか描かれていなかったように思った。そんな彼女は、はたして伊賀のことが好きだったのだろうか、それとも伊賀の才能にただ惚れていただけなのか。深読みすると、伊賀に群がる女たちは、彼のどの部分に惹かれて寄ってくるのか。そこに伊賀の本質があったように思った。
そんな二人の成長の傍らには、いつも短歌がある。克夫が詠んだ歌。伊賀の歌。舞子やそれ以外の登場人物の歌。それらがストーリーと上手く絡み合って、作品のかわいらしさを演出している。さすがに著者は歌人だけあって、そのときの物語の状況に合った歌がピタっと嵌まっている。この作品は下系の描写が多いので、短歌もそっち系が多いのは失笑してしまうが。
それと最後にもう一つだけ。なにやら部屋に閉じこもっていた克夫の妹。彼女の謎だった行動が明るみ出るラストには、おもわず吹き出してしまった。これはあえて語らず。気軽に読めて、日頃縁のない短歌にも触れることができて、クスクス笑える作品だった。作家である枡野浩一の作品をまた、読みたいと思った。
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