「陽だまりの彼女」越谷オサム
2008年06月03日 (火) | 編集 |
陽だまりの彼女陽だまりの彼女
(2008/04)
越谷 オサム

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何度確かめても、受け取った名刺には渡来真緒とある。僕は名刺とテーブルの向こうの人物の顔を繰り返し見比べてしまった。相手も目を丸くし、こちらをまっすぐに見つめ返してくる。やっぱり、真緒だ。あの渡来真緒だ。交通広告代理店に就職して二年目の奥田浩介は、学年有数のバカと謳われ、チビで、いじめられっ子で、注意力が散漫で、すばしっこさだけが取り柄だった真緒と再会した。彼女は二十五歳になって、なんだかとんでもなく成長している。彼女は美しくて魅力的で、知性と落ち着きが漂っていて、しかも、デキる女だった。

真緒をいじめたクラスメイトに憤慨したことで、キレる子、薄気味悪い人間という偏見をもたれた浩介の中学時代。真緒だけがそういう空気をまったく意に介さず話かけてきた。キレる子、学年有数のバカ、と二人は孤立するが中身の濃い時間だった。あのときなついてきた彼女との関係に戻るのは、二人にとってそう時間はかからない。取引先の担当者という垣根を超えて、公私混同は甚だしいが親密になっていく二人。やがて、付き合いを始めるが、真緒の両親はなぜか認めてくれない。二人は勢いで駆け落ちし、そのまま結婚する。しかし、真緒は浩介に対して大きな秘密を隠していたのだ。

浩介のことを追いかけてきただけだよ、と真緒は言うが、どこまで成長すれば気が済むんだ、というぐらい仕事ができる女になっていた真緒。その真緒の仕事モードとプライベートのギャップがすごく良い。本質は中学生時代と少しも変わっていないのだ。その真緒と浩介は、あれよあれよという間にゴールイン。自分のペースで行動する真緒に引っぱられながらも、二人は甘甘新婚生活にどっぷり浸る。この仲睦まじい二人にはあてられっぱなしで、ヨダレが出そうだった。

お姫様だっこ。これは男女ともに憧れると思う。そう思っているのは自分だけかもしれない。でもいいよね。機嫌がいいと鼻歌を歌う癖もかわいい。ちょっとキーを外すぐらいが、かわいいさアップに繋がるかも。なにより二人の甘いやり取りにキュンとくる。こんなのに憧れてしまうのは子供っぽいのかなぁ。

そんな中で時折、ちょっとしたざわざわ感が漂う。何かあるぞ、何かあるぞ、と警戒音が鳴り響くのだが、そのざわざわ感はすぐに消えてしまう。安心して甘いモードを読んでいると、忘れた頃にまた、ざわざわしてくる。それを繰り返した末にくる結末は…。忘れていました。越谷オサムさんが、日本ファンタジーノベル大賞の出身だったということを。

そうきたか。こうきたか。これについて触れることは出来ないが、切なくて、ほんのりと温かくて、そして、複線の巧みさに気づいて、上手い、とおもわず声を出してしまった。今後もこの作家さんから、目が離せなくなってしまった(=^・^=)にゃん。