「遠まわりする雛」米澤穂信
2008年06月08日 (日) | 編集 |
遠まわりする雛遠まわりする雛
(2007/10)
米澤 穂信

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やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に。この信条を堅く守っている折木奉太郎は、なにがなんだかわからない間に、現在までの友人、福部里志と知り合い、なぜか、小学生の頃はずっとクラスが同じだった伊原摩耶花は、里志に思いを寄せ、広大な農地を擁する旧家の娘である千反田えるは、「わたし、気になります」という言葉とともに大きな瞳で詰め寄って、奉太郎の省エネ主義を揺るがしてくる。神山高校に入学し、入部直後から春休みまで、古典部を過ぎ行く一年を描いた短編集。

入学から一ヶ月、音楽室でピアノがひとりでに音楽を奏でだしたという学校の怪談。初夏、授業進度を教科書にメモしていた先生が、進んだページから間違えて授業してしまった謎。夏休み、自殺のあったというその部屋に、首吊りの影を見たという千反田と摩耶花。十一月のはじめの日、放課後の教室に流れてきた奇妙な校内放送はどういう意味で行われたのかという推理ゲーム。元日、荒楠神社の納屋に閉じ込められてしまった奉太郎と千反田の脱出劇。二月二十四日、摩耶花が里志のために作ったチョコが盗まれた行方を追う。春休み、千反田の頼みで生き雛祭の行列に参加する奉太郎だが、長久橋の工事が突然始まってルートが変更になってしまった。

前作のカンヤ祭が楽しかっただけに、短編集ということもあってどれも小粒だった。奉太郎と里志、奉太郎と千反田というペアはあるが、四人でわいわい騒ぐという作品が少ない。そんな中で一番好きだったのは、「あきましておめでとう」というわいわい騒ぐ系の作品だった。

元日に巫女のバイトをする伊原摩耶花を見に行こうと、千反田えるに誘われて奉太郎は初詣に行く。おみくじと迷子、落し物の担当をする摩耶花に会って、二人はおみくじを引いていると、社務所内がなにやら忙しそう。そこで二人は手伝うことにして、言われたとおり蔵へ向かう。しかし、そこは蔵ではなく納屋で、酔っ払ったおっさんに外から閂をかけられてしまった。暗闇の中に閉じ込められてしまった二人。その頃、福部里志は「新春ドラマスペシャル 風雲小谷城」を見終わって、のらくらと摩耶花のもとにやって来た。豪農千反田家の一人娘が男と二人でいるところを発見され、あらぬ噂を立てられたくない。そこで奉太郎は、落し物の担当をしている摩耶花、その側にいる里志に、閉じ込められたことに気づいてもらおうと、あれこれ知恵を絞ってわざと物を落とす。

こういう日常のミステリでありながら、古典部の四人が別行動しながらも繋がろうとする作品が好きだ。前作もこのパターンで、本書でもこの系統を期待していたが、収録されていた作品の中では、「正体見たり」「あきましておめでとう」の二編だけ。なもんで、もっと四人をからませてくれよ、ともどかしい短編集だった。次は古典部四人の個性が生きた、がっつり読める長編を期待したいのである。