2008年06月09日 (月) | 編集 |
![]() | 後宮小説 (新潮文庫) (1993/04) 酒見 賢一 商品詳細を見る |
時は槐暦元年、帝王が腹上死で急逝。彼には正妃が一人、后妃が二人、夫人が四人……その他多数の女官を入れて約五百五十人からなる後宮があった。いわゆる、日本でいうところの大奥である。嫡子が王位を継ぐにあたって、定めにより、この後宮は解散させられる。若干十七歳の皇太子のために、まず、宦官がやった仕事は後宮作り。そこで早急に新しい後宮を作るべく、宦官の格チームが広い国土を飛び回る。ここで緒陀地方の一田舎娘である銀河が、素乾国の後宮に入宮することになる。
宮殿に着くと、他の宮女候補たちと後宮に入るにあたっての研修を受けなければならない。普通の山出し庶民である銀河は、明らかに敵意があって話にならないセシャーミン、別世界の人のような玉遥樹、極端に無口な江葉らと共に、角先生による後宮哲学、一番弟子の菊凶による性技術、つまるところ、女大学での房中術の実技を教えられる。そしてついに新後宮の官職が発表されてみると、銀河はなんと正妃、つまり皇帝の第一夫人の職に任ぜられたのである。
一方、平勝と厄駘の二人は自警団のような頭領をしていた。そこに、農民一揆の鎮圧に助力してもらいたいと使者が来て、その際、二人は幻影達と渾沌と名乗ることにし、あれよあれよという間に、三万の州兵の実質上の指揮官になってしまう。その幻影達は、あろうことか、退屈を紛らわせるためという理由で挙兵する。世にいう幻影達の乱(渾沌の役)である。
やがて、幻軍が北盤関破るの報が宮廷にもたらされた。慌てふためく役人たち。そこで帝王が尻を叩いて北師営軍を出すが、圧倒的な兵力差を持ちながらも、臆病風に吹かれた北軍はあっけなく壊走してしまう。このような急を告げる情勢の下、後宮に珍妙な軍隊ができあがる。発起人は銀正妃、銀河である。ともあれ、この女百人ほどの奇妙な軍隊が幻軍を最終的に苦しめる。さて、後宮の行方は。銀河の運命やいかに……。
第一回ファンタジーノベル大賞受賞作である本書だが、この本は妹のもので、かつてどうせ読まないだろうと、後ろのページだけ読んでしまった本である。だから、結末をばっちり知りながら読んだことになる。アホです。いくらその時に読むつもりがなくても、ラストは読んではいけない。しかし、それを差し引いても面白かった。
架空の文献に記された架空の王朝を紐解くという手法がよく出来ていて、いかにも歴史小説と読めてしまうが、実際は完全な作り物。そういった錯覚を起こすがこれは完全なファンタジーである。そのホラ吹きぶりが絶妙で、悪者である反乱軍までもが、憎めなくて、愛嬌があって、最後まで無邪気だ。よって、大団円ではない結末なのに、どこか爽快さがあり、小気味よい余韻を持って、本を閉じることができる。でも、アホをしなければもっと…ねぇ。
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