2008年06月13日 (金) | 編集 |
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里美は卓哉の恋人である。三年ほど前から、卓哉と恋愛をしている。卓哉とは同僚で、卓哉の五年後に入社した。里美と卓哉のそういう関係を、匿名の電話で、のゆりは知らされた。電話があった日の夜、のゆりは卓哉に電話のことを報告した。里美との関係の有無を問いただそうとしたわけではない。ただ、どうしていいかわからなくて、かといって腹に溜めておくほどの決意もつかず、ともかく報告したのである。卓哉は里美との関係を否定せず、あまつさえ、離婚のことまでほのめかした。
翌日の昼、里美から電話があり、のゆりは里美と直接会うことになった。里美はてきぱきとした女だった。卓哉のことは好きである。でも卓哉とのゆりが離婚することは望んでいない。たとえ離婚しても卓哉と結婚する意志はない。どうしてものゆりが卓哉との恋愛をやめてほしいと希望するならそれも可能だが、いくばくかの時間が必要である。ごく事務的に説明され、のゆりは圧倒された。結論はそちらに預けます、と、取引先とのやりとりのような言葉を残し、里美はさっさと席を立った。
卓哉はその後だんまりを決めこんで口を閉ざしているばかり。その沈黙が、事態を膠着させてしまった。里美からその後連絡はない。のゆりからも、里美に連絡をしていない。里美からゆだねられた結論を、のゆり自身もどうやって出していいかわからないまま、二ヶ月という時間が、ゆるやかに過ぎていった。
ほわんとしたのゆりが夫の浮気を知り、離婚した方がいいのか、どうしたらいいのか、という自分の心がわからないまま、はんぶん兄のような叔父の真人に心配され、医療事務の講座で知り合った年下の瑛二と食事をしたり、大学の先輩だった唐沢知子と沖縄旅行へ行ったり、夫の転勤で神戸へ一緒に移ったりと、月日がどんどん流れていく。
こちらを向くことのない夫との生活の中で、そのときの風景だったり、こうだと思っていた夫の違う一面に気づくことや、漠然と感じて揺れる心が淡々と綴られている。何故のゆりがこんな生活を続けられるのかわからない。執着しているようでもないし、意地になっているわけでもない。本気の浮気をした夫や、夫の不倫相手に怒ることもない。でもこれがのゆりという女性なのだろう。
のゆりがどういう答えを出すのか、というのが作品の結末になる。これにはもちろん触れることはしないが、結婚って何だろう、結婚するきっかけとは、みたいなことを考えた。のゆりの微かな息遣いのような考えるという行為が、読み手であるこちらにじわっと伝わってくる。上手く言葉にできない。伝えようとすると、するっと言葉が逃げていく。パソコンに向かう今の自分は、まるで本作の「のゆり」のようだ。何を書きたいのか、よくわからなくなってしまった。それにしても、男って馬鹿だなぁ。女って……。

またサインに釣られた。
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