「カフーを待ちわびて」原田マハ
2008年06月16日 (月) | 編集 |
カフーを待ちわびてカフーを待ちわびて
(2006/03/20)
原田 マハ

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舞台は沖縄の離島、人口八百人の与那喜島。友寄明青の日課は、砂浜で暗くなるまで黒いラブラドール犬のカフーと遊ぶこと。そのあと、裏のおばあのところで夕餉を食べる。同居していた祖母が他界して七年、家業の雑貨商をひとりで切り盛りする明青の食事の面倒を見てくれていた。その夜、おばあは大切なことを思い出したように訪ねた。ウシラシ(お知らせ)、あったかね。おばあは島にいる唯一の巫女で、そして、何よりその霊感は神がかっていた。

おばあのところから戻った明青が郵便受けを開けに行くと、青い封筒が一通、ひらりと足元に落ちた。北陸の孤島へ島民一行と出かけたとき、ウケ狙いで「嫁に来ないか」と絵馬に書いた。その絵馬を見て「私をあなたのお嫁さんにしてくださいませんか」と幸という女性が応えてきた手紙だった。これがさっきおばあが言っていたウシラシなのか。

そして三週間後、夕方の散歩の帰り道、「友寄明青さんのお宅はどこでしょうか」と明青はひとりの女性に声をかけられた。それが幸だった。こんな美しい人には会ったことがない。しかも、これからお世話になります、と一方的に宣言し、明青の家に住み込んでしまう。どこから来たのか、どういう理由でここまで来たのか、いつまでいるつもりなのか、大事なことは何ひとつ聞けないまま、溌溂とした幸に明青は惹かれていく。折しも島では、幼なじみが勧めるリゾート開発計画の波に、小さな島は静かに揺れていた。第1回日本ラブストーリー大賞受賞作。

思っていたより面白かった。出来すぎかなと思うところはあるが、こういうピュアなのは好きだ。主人公は右手にハンデを持つ朴訥な男。そこにやって来たのは、白い帽子とワンピースが似合ういい女。一見お嬢様のように見えるが、実際のところは、大飯食らいで、寝ぼすけで、わんぱくで、料理を含む家事全般が苦手でというアンバランスな女。男って意外とこういう一面に弱いかも。一方的な偏見だけど、得意料理は肉じゃが、とか言う女は信じられない。

じれったくて、甘酸っぱくて、切なくて、いなくなるかもしれないという不安があって、どこまでもピュアだ。かといって、単純な男女の恋愛ものかと言うと、そう簡単ではいかない。ちょっとミステリっぽいところがあるし、カタチの違う家族の物語であったりする。

でも作品としては惜しい部分がある。リゾート開発に住民の意思が流れ込むこと、それにからんで反対派の子供がイジメられること、それがきっかけでその家族が島を離れてしまうこと。これが作品の雰囲気をぶち壊していたように思えた。ここはのんびりな沖縄モードで一貫して欲しかった。

だけど、友寄明青というぶきっちょな男の物語としては面白かった。犬のカフー、裏のおばあ、そして謎の多い幸。友寄明青の生活すべてをしめることになる人たち。ここの三角プラス犬はすごくいい雰囲気で、この先どうなるのだろうと興味を持って読むことができたし、気持ち良く本を閉じることができた。しかし、ほんと惜しい。好みの問題だけど。