「福袋」角田光代
2008年06月22日 (日) | 編集 |
福袋福袋
(2008/02/15)
角田光代

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人生に“当たり、ハズレ”なんてない!? 謎で不可解な届け物や依頼、または同僚や夫など身近な人の不可解さに出くわしたら、あなたならどうする? 8編の短篇をとおして、直木賞作家が開く、人生のブラックボックス。《アマゾンより》

角田さんの作品は、大きく別けるとしんどい系とありがとう系の二種類がある。しんどい系とは、読むとへとへとに疲れる作品だ。ありがとう系とは、よくぞ書いてくれた、ありがとう、となる作品だ。そのありがとう系の代表作が、「この本が、世界に存在することに」「Presents」の二作品だ。本書のジャケを見て、ありがとう系を予想して手を出すことにした。これが微妙だ。読みやすいし、かわいらしいユーモアもある。でも、人間の嫌な部分も描かれている。これに疲れるかといえば疲れはこない。どちらかの系統でいうと中間にあたる作品だ。ではさらっと内容紹介を。

「箱おばさん」
駅ビルの地下にある洋菓子屋で働いている私。そこへずいぶん大きな段ボール箱を抱えたおばさんがやって来て、すぐに戻るからと強引に段ボール箱を置いていった。いつまで待っても箱おばさんは帰ってこない。店長にぐちぐち嫌味は言われるし、それに箱の中身はいったい何だろう。

「イギー・ポップを聴いていますか」
それはどう見たって、捨ててあるのではなく、届けられたもののように見えた。家の真ん前には電信柱があり、そこはゴミ集積場になっているから、ごくふつうに考えれば、それはゴミだ。そのきちんとした紙袋を、拾いものではなく、届けものだと思うことにして、そっと家に持ち帰った。

「白っていうより銀」
二人ではじめたことを二人で終わらせる。そんな必要もないのに二人で離婚届を出してきた。それから、握手することもなく礼を述べ合うこともなく、互いに背を向けて、駅のホームへと続く階段を駆け上がった。すると、トイレに行く間だけと言って、若い母親が赤ん坊を押しつけて走り去ってしまった。

「フシギちゃん」
恋人が女とメール交換をしていることを年上の同じ派遣社員に言うと、一緒にごはんを食べようと誘われた。その長谷川さんはかつて、恋人の部屋で居候していたと言う。そして、彼の留守の間に、引き出しを開け、箱という箱を開け、棚という棚をのぞいて見た。すると、ついにパンドラボックスを見つけてしまった。

「母の遺言」
母の四十九日に集まった四人の兄妹。母にずっと付き添っていたのは、実家を離れたことがない長女だった。その長女から、形見分けと遺言状が遺されていることを知らされる。まとまったお金があることが分かり、兄はいかがわしい店のオープン資金、姉は悲劇のヒロインを演じて苦労の報酬、まじめな妹はユニセフに寄付、私はわけのわからない借金を抱えている。はたして遺言状の中身は。

「カリソメ」
二つ年上の友彦とは、出身大学や学部が同じというだけで親近感を覚え結婚したが、三年半、夫だった友彦は、二週間前に出ていった。本気の相手は、二十四歳のフリーターだった。もうここにはいない友彦宛の郵便物の中に、同窓会の通知があった。交際中も結婚後も、友彦の友人に会うこと、名前も聞いたことがない。何ひとつ知らないことが薄気味悪くなったので、同窓会の代理出席を決めた。友彦がどんな男だったのか、訊いてみようと思ったのだ。

「犬」
珠子とはお見合いパーティーで出会い、結婚前にはお試し期間が必要というわけで、同棲することにした。新居に一軒家を見つけて引っ越してきたら、前に住んでいた人の飼い犬が玄関前にいたので、犬を飼い主のもとへ届けに行った。すると、その女は感謝の言葉もなく、再会を喜ぶ気配も見せない。それ以降、珠子は犬の様子を毎日見張りに行くようになった。

「福袋」
炎天下、私はさっき会ったばかりの女性と大阪の街を歩いていた。私よりひとつ年下の彼女は、兄の恋人ということだった。その三重子の情報では、兄はこの繁華街の一角にあるラーメン屋で働いているという。中学高校とあがるにつれ、どうしようもない男になってしまった兄だが、ついに犯罪者にまでなってしまった。私は亡くなった母の言葉を言ってやるつもりで、兄に会いにきたのだ。

開けてびっくり、何がでてくるのかな、といった作品集だ。モノであったり、記録であったり、理由であったり、猜疑心であったり、思わぬものであったり、借りの姿であったり、本当の姿であったり、本心であったりと、実際に読んでみないと中身がわからない。そこにいろんな意味があって、それを知ることで、それ以前とそれ以後の関係性や見えてくる風景が変わってくる。それはいい方向に向かうばかりではない。見ない方が良かった場合もある。それを開けるかどうかは本人次第。あなたならどうしますか?