2008年06月23日 (月) | 編集 |
![]() | 天国の本屋 (新潮文庫) (2004/04) 松久 淳田中 渉 商品詳細を見る |
さとしは就職が決まらなかった。何をしたいわけでもない。そもそも大学だってみんなが進学するからなんとなく行っただけで、そのうちやりたいことも見つかるだろうとタカをくくっていた。さとしは深夜のコンビニで大きなため息をついていたら、派手なアロハシャツを着た初老の男に声をかけられた。なんか急に倒れたような気がした。次にさとしが目覚めると、そこは本屋だった。どこの商店街にでもあるようなごく普通の本屋だ。
アロハのおっさんはヤマキと名乗り、ここは天国の本屋だと言った。さらにヤマキは言う。人間の現世での寿命というのは、実は百歳ジャストに設定されている。もちろん誰もが百歳まで生きられるわけではない。二十歳で死ぬ者もいれば八十歳で死ぬ者もいる。つまり、二十歳で死んだ者は天国で八十年、八十歳で死んだ者は天国で二十年、残りの人生を生きることになる。そして、百歳という天寿をまっとうすると、人は天国での記憶をすべて消去され、赤ん坊として現世に再び生まれてくる。そう言い残してヤマキはバカンスに行ってしまった。
突然、天国の本屋でヤマキの代理としてバイトすることになったさとしだが、いざ働き始めてみると、自分でも不思議なくらいこの仕事が性に合っていることに気づいた。さらにこの店のサービスである朗読を担当することにもなるが、さとしが本を読めば読むほど朗読目当ての客がどんどん増えた。ついには店の一角に朗読専用のコーナーまで設けてしまった。誰もがさとしの朗読に耳を傾けるというのに、ユイだけは決してそれをきこうとしない。ユイとは本屋のレジを担当する若い女性で、減らず口だけど、けっこう可愛い顔。必要以上に髪をショートにしてノーメイク。その薄いグリーンの瞳を持つユイに、さとしは恋心を抱いていることに気づいた。
すぐに読み終えてしまう短い物語だけど、長々と内容紹介をしてしまった。ようするに、さとしが自分の性に合った仕事を見つけ、ユイに恋をするが、そのユイの心には闇があって、という、わかりやすい王道を行く作品だ。でもこれが、優しく温かな気持ちになれて、幸福感がどっと押し寄せてくる。それに加えて、本屋さんが舞台なので、さまざまな本が紹介されている。ページの後にある引用・参考文献の本はネタバレしていたが、ちょっと心憎い演出だと思う。気軽に読めて、いい気持ちになれる。本好きさんなら、さらにプラスαがある。これはすごくいい本だと思った。
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