2008年06月28日 (土) | 編集 |
![]() | ぶたぶたの食卓 (光文社文庫) (2005/07/12) 矢崎 存美 商品詳細を見る |
薄ピンク色のバレーボールくらいの大きさで、右側がそっくり返った大きな耳と突き出た鼻。手足の先は濃いピンク色をしている。しっぽもちゃんとついていて、しかもぎゅっと結んである。そんな見た目は愛らしいぶたのぬいぐるみだが、中身は心優しき中年男。名前は、山崎ぶたぶた。彼と出会った人々が新たな一歩を踏み出す。シリーズ第六弾。
「十三年目の再会」
祖母がよく話していたこの街に引っ越して二ヶ月。いつもシャッターが閉まっていた中華料理店にのれんがかかっているのを見て、小池由香はその店に入った。その店で食べたチャーハンの味が、祖母の作ってくれたチャーハンとそっくりだった。由香は思い出す。十三年前に死んでしまった祖母とは、二年間ふたりで暮らしていた。その祖母が作ってくれたチャーハンが大好きだった。あの懐かしい味がなぜ、ここにあるのか。その答えは、常連客の山崎ぶたぶたから語られる。
「嘘の効用」
谷萩琢己は実家の農業を継ぐことが嫌だった。家を出よう。東京に行こう。会社に入って働こう。そうして勤めた会社を十年目にして辞めた。一月近くぷらぷらした琢己は、とりあえず何かを始めようと思い、男性のみの料理教室に通うことにした。その料理教室の講師として現れたのは山崎ぶたぶた。何だか雰囲気がほわんと明るくて、教え方も丁寧。リストラされたと嘘をついて料理を習う日々が半年ほど過ぎたある日、講師の仕事で食べていると思っていたぶたぶたが、会社をリストラされていたことを知った。
「ここにいてくれる人」
刈屋美澄は何をするにも億劫になり、夫に内緒で、診察を受けてみると軽い鬱だと診断された。その同じクリニックに通う久美子と知り合いになり、彼女が最近アルバイトを始めたというカフェに行き、彼女のすすめるクレープを食べてみた。美澄はこれを食べたことがない。まぎれもなく初めての味だ。それでもこれは、思い出の味だ。美澄が子供の頃に思い描いていた理想のお菓子の味だった。これを作ったのは、このカフェのマスターである山崎ぶたぶただった。
「最後の夏休み」
吹成一司は二十年ぶりにこの街にやってきた。小学五年生の一年間を過ごした街だ。一司が生まれてすぐに父親が家を出た。母親は親戚に一司を預け、住み込みで働き始めた。これまで親とは一度も暮らしたことがない。ずっと一人ぼっちだった一司だが、この街で初めて友達ができた。ぶたのぬいぐるみが親という彼女。好きなだけカキ氷を作って食べさせてくれたぶたぶた。ひどいことをしてしまった彼女に謝りたい。優しくしてくれたぶたぶたにお礼が言いたい。母の会いたいという手紙を読んで、一司はこの街にやってきたのだった。
このシリーズについてはもう語ることがない。お薦めです。
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