2008年07月09日 (水) | 編集 |
![]() | 動物園の鳥 (創元推理文庫) (2006/10/11) 坂木 司 商品詳細を見る |
外資系の保険会社に勤める坂木司はいつもの友人の部屋にいた。鳥井真一。ひきこもり気味のコンピュータ・プログラマーで、最近では探偵のようなことをちらほらやっている。というのも、坂木が外出嫌いの彼をなんとかして外へ引っ張り出そうとしているうちに、いくつかの事件に巻き込まれ、それを鳥井が持ち前の頭脳で解決した結果、他人の相談事が持ち込まれるようになったからだ。
春が近づくある日、鳥井の部屋へ二人のお年寄りが訪ねてきた。坂木のお得意さんであり、今となってはもう年上の友人と呼んでも差し支えはないだろう木村栄三郎さん。もう一人は、栄三郎さんの幼なじみの高田安次朗さん。その安次朗さんは動物園にボランティアとして通っているが、松谷明子さんという二十三歳のボランティアも通っていて、最近の彼女はどことなく元気がない。原因は動物園に住み着いた野良猫が虐待される事件があいついで起こり、その野良猫の姿を見て心を痛めているという。
さっそく動物園に向かった坂木たちだが、その帰りに坂木は一人の男に声をかけられた。名前は、谷越淳三郎。坂木と鳥井が中学校のときのクラスメートで、鳥井を苛めていた奴だった。そう、思い出したくない人物。坂木の人生で唯一、存在を消したいとまで考えた人物。それが谷越淳三郎という男だった。シリーズ三冊目にして完結編。
苦手な部類に入るこのシリーズも終わってしまった。そして、三冊目にして、やっとしっくりきた。鳥井が引きこもる原因になったイジメや、坂木が鳥井に依存するようになった理由が明らかにされている。この原因や理由がわからなかったので、二人のべったり具合が気持ち悪かったのだとここにきてわかった。それと合わせて、二人をそっと見守ってきた友人の滝本にも、心の傷があったことが明かされる。その滝本には妹がいて、今回はたまたま上京していたので坂木たちと行動を共にする。この美月ちゃんがかわいくて、さらにミニ鳥井みたいで笑えた。
その一方で、イジメのことや、肩書きで人物を判断することや、ぶりっこで壁を作っていることなど、読んでいて重くなる場面がある。一番名の知れたものを選ぶブランド信仰と、それによる他者への世間体の押し付け。そして、同調しないものを排除するというイジメへの流れには、おもわずほほうと唸ってしまった。そういうイジメのパターンは確かにある。人と人は違うことが当たり前なのに、同類じゃばければハブをする。こんなことをするやつは小せえ。それに乗っかるやつも小せえ。そんな男をぐうの音が出ないほど理論攻めする場面は、ツッカエが取れたように胸がすうっとした。
本書は単独のミステリとしては物足りない。だけど、これまでの謎だった事柄が解けたというシリーズを通してのミステリとしてはアリだった。それに完結編としても、この内容なら納得できたし、心憎いオマケも巻末にあった。でも、これで終わってしまったことは、少しは寂しいかも。それに、坂木作品をすべて読んだことになるので、次に読む本がないことも寂しい。新刊をプリーズ。
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