「カウントダウンノベルズ」豊島ミホ
2008年07月10日 (木) | 編集 |
カウントダウンノベルズカウントダウンノベルズ
(2008/05)
豊島 ミホ

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J-POP TOP10チャートから生まれるドラマ。トップを走り続ける歌姫の恐れ、人気アイドルグループの輝きの秘密、解散直前バンドの悲哀、話題の新人のデビューの経緯――トシマミホが音楽シーンで生きる若者達の光と影を描いた小説集。《出版社より》

チャートにランクインしたアーティストたち。そのアーティストたちのそれぞれの内面を描いた作品だ。カウントダウンならば、順位が下から上がっていくのが当たり前だが、これはまったく逆で、一位から順番にひとつずつ下りていく。その手法によって、ランク下位にいるアーティストたちの上辺だけでない悩みや葛藤を掘り下げていく。

伊藤ありさ、二十五歳。女性アーティストでシングルチャート一位を最多獲得している歌姫。この歌姫の地位はいつか譲ることになるなんて、最初からわかっている。でも、ずっと欲しがられていたい。「あたしはいい子」

相葉ミリ、二十二歳。しっかり歌って踊ってみんなをアゲて、そして自分も楽しい思いして恋もして幸せになりたい。あたしには、帰るところがちゃんとある。だから、手にしたものを、ちゃんと持っていかなくちゃいけない。「ぜんぶあげる、なんでもあげる」

スモール・ロンドン。Vo.智、G.伊勢谷、B.ムチP、Dr.アタル。七年前の高校時代にバンドを結成し、デビューから二年目。このスピードは怖い。速すぎて、真正面すら見えていない気がする。戸惑いから、バンドは崩れてしまうんじゃないか。「話があるよ」

コンペイトウスパーク。DJ.マリモ、MC.かっぺと相良。自分の頭の中にある音楽という楽園を他の人にも見せてやりたい。忙しい日々の中で、自分の楽園がなおも育ち続けると思われたある日、楽園が聞こえなくなった。「楽園が聞こえる」

シュガフル。景、ミーミーたちによる六人組のアイドルグループ。とっても尊い一瞬を生きている。高校生くらいじゃわかんないソレが、アイドルをやったおかげではっきりと見える。普通の子に戻るなるなんて、一度も考えたことがなかった。「きらめくさだめ」

浅田真樹。自分が歌ってる。聴いてくれる人がいる。路上ライブでCD手売り一千枚という目標を達成してデビュー。私の歌がみんなに届いて売れているんだと思った。なのに、この声が、正味の形で届いてはいないなんて。「きたない涙」

英怐子。音楽家の両親の才能を継いで生まれ、音楽家の道を踏み外してやったつもりで、ポップスの道に進んだ。わたしは、あの子守唄を、たったひとりの我が子のための歌を、結局リリースしてしまった。でも、馬鹿なわたしはやめられない。「ピクニック」

ウィンド・オア・ソングス。篤史は周とデュオを組んでデビューを果たした。それから二十年以上やってきた。今年四十三になる篤史は、声が出なくなった。若いときの曲を思うように歌えない。だけど、ステージの上で再現し続けたい。「永遠でなくもないだろう」

アライブ・オン・ザ・エッジ。オーディションからデビューまで放送された企画ものバンド。後ろ盾がなくなって、気づいたら、売れないバンドになっていた。ベースの江島、ドラムの名取、ボーカル&ギターのトモに、事務所から解雇が告げられた。「ラストシングル」

沼倉雄介。学校で日常的に行われるイジメ。ラジオから流れる曲のどれもが、自分を救ってくれなかった。沼倉は歌い始めた。ただ絶望を歌いあげる、自分だけのための歌を。なんら救いも励ましもない歌詞を、適当なコードに乗せてギターを弾く。「絶望ソング大全集」

この歌姫はあの売れっ子で、セクシー系の関西弁の女の子はあの人で、アイドルグループは娘かな。などと、想像しながら読んだ。流行り廃りの激しいJ-POPはほとんど聴かない。聴いても心に残る歌や曲がないからだ。しかし、そんな彼らにも、長いか短いかは別にして、一瞬の輝かしいスポットがあたる。その輝きを努力で継続しようともがく者、何も考えずに自分の勢いを信じる者、余裕がなくなる者、自分の才能だけに頼る者、仲間に自分にないものを見つける者、大人の世界に翻弄される者、世間の期待に自分の好きの反対を行く者、衰えを認めたくない者、ブームが終わった惨めな者、これからの可能性に生きる者など、華やかな世界であるがゆえに、そこに生まれる影も濃いわけで、さまざまな人間模様がここにはある。

読み物としての試みは面白いとは思うが、アーティスト十組の人間ドラマに拡散した結果、少し小さくまとまっていたように思った。十人十色のいろんなパターンが読めるという点では面白いのだけれど、ガツンとくるものがなかったように感じた。よって、個人的には、本書はもうちょっとだったかな。

TBさせてもらいました。「まったり読書日記」