「忍びの国」和田竜
2008年07月12日 (土) | 編集 |
忍びの国忍びの国
(2008/05)
和田 竜

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人間離れした技ばかりが、忍びの術ではない。親兄弟すら欺き、ひたすら出し抜くこと。でなければ、生き残れぬ。戦国大名不在の国、伊賀国に織田軍一万余が攻め込んだ。「その腕、絶人の域」と言われる忍びの無門は想い女のお国を連れて敵前逃亡をはかるが……。歴史時代小説の枠を超えた面白さと圧倒的な感動に包まれる傑作長篇。《出版社より》

天正四年。この時期の伊賀の国では、戦国大名が不在の中、六十六人の地侍たちの間で、伊賀惣国一揆なる一種の同盟が結ばれていた。その第一条には、他国の者が当国に入った際は、惣国一味同心してこれを防ぐこと、と掲げられ、この六十六人の地侍から選出されたのが、十二家評定衆と呼ばれる十二人の地侍たちであった。

主人公は伊賀者の無門。上忍の命を受けて、忍び働きをする下忍。いわゆる忍者である。十二家評定衆の一員である百地家はおろか伊賀一国のうちでも「その腕絶人の域」と評された百地三大夫秘蔵の忍びである。他国の大名もこの男を雇うのに、三大夫に対して大金を支払った。ただ、非常ななまけものである。腕が良いのをいいことに、主の三大夫の下知もここのところ断りさえしていた。

無門には二年前に西国の安芸国から盗み出したお国という女がいた。ただ、お国は侍大将の娘という実家並みの生活にこだわり、彼女にとって関心があるのは無門の稼業ではなく、その稼ぐ額であった。そのお国の尻に敷かれた無門は、お国のご機嫌伺いのための小銭欲しさに、十二家評定衆の一員であり、小競り合いをする下山甲斐の次男を殺めた。そこには天正伊賀の乱に導く謀略が張り巡らされていた。

前作と同様にゆったりとした冒頭。中々動かない展開。そして何故か敵側の目線から物語は始まる。それともう一つ、史実の注釈が少しうるさい。気分は忍者なのに、たびたび説明が入るので、ずっと世界観に浸ることができない。しかし、一度物語が動き出せばその加速度はすごくはやいのである。

その伊賀対織田軍の戦闘シーンについては、一番盛り上がる場面なのであえて触れないが、伊賀者の尋常ではない働きに、わくわくドキドキが楽しめた。ただ、伊賀者という普通ではない感覚のない持ち主たちが集まる集団だからこそ、終盤には突然ゾッとさせられる。人を騙し、出し抜くことを至上とし、誰を犠牲にしようとも、金のために働く者たち。何度も前フリがあった言葉だが、一瞬で理解できてしまうと共に、その思想の怖さがはっきりとしたカタチとして見せられる。

評価としては面白かった。しかし、史実を大事にするのはいいが、エンタメ性を上げるならば、説明調の注釈は避けて、もっとさり気なく時代背景や薀蓄を織り込んでもらいたい。この著者の特色としてのねらいかもしれないが、現時点では浮いているのが気になってしまう。しかし、大阪人は大阪人を無条件に応援する不思議な民族である。今後もこの大阪出身の新人作家を応援し続けるぞ、とすでに大阪人である自分は決めている。次回作も買うぞ!できればまた、サイン本を。

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