2008年07月14日 (月) | 編集 |
![]() | 生まれる森 (講談社文庫 し 75-3) (2007/05/15) 島本 理生 商品詳細を見る |
主人公のわたしは、同じ学科の加代ちゃんが夏休みの間は実家に帰っているというので、彼女の一人暮らしの部屋を借りることにした。深い森に落とされたような予備校の先生だったサイトウさんとの恋に、一方的に別れを告げられ、心のどこかで、新しい生活が始まれば彼のことなんてあっという間に忘れてしまうだろうとタカを括っていた。けれど実際は、未だにあのころの夢に捕まったまま途方に暮れていた。
そんなある日、だれにも話さなかった秘密を唯一打ち明けた高校時代の友人、キクちゃんからキャンプに行かないかという誘いを受けた。そのキクちゃん一家は、ガテン系のお父さん、バンドでボーカルをしているという中学生の弟の夏生君、区役所勤めの公務員だという兄の雪生さん、そして、同級生のキクちゃん。彼ら兄妹との関わりを通じて、わたしは少しだけ前へと一歩を歩み出す。
サイトウさんとの関係がよくわからない。離婚した四十歳の予備校講師が、高校生の生徒に優しくされたからといって、同じ部屋に泊まったり、抱き合ったり、一緒にお風呂に入ったりするけれど、体の関係はもたない。野獣になれとはいわないが、この男の精神構造が理解できなかった。いや、理解なんてしたくもないけど。とにかく最低な男だということだけはわかった。
その最低男との失恋で壊れてしまって、ぐちゃぐちゃになってという回想場面をまじえつつ、キクちゃんの兄の雪生さんが静かに温かく優しく主人公を見守る。その雪生さんが主人公を思う姿には恋心があると見え見えなのだが、このじれったさがたまんない。その弟の夏生君も、主人公のバイト先に顔を出したり、バンドのテープを渡したり、という距離感をキープしつつ、さり気なく姉の友人の前に現れる。中々愛いヤツなのだ。
そして、キクちゃん。高校時代にはあまり接点はなかったが、何故か突然仲良くなったという唐突感はあるものの、彼女がすごくかわいかった。どこか飛んでいるようで、私には友達が野田ちゃん(主人公)しかいないと言っているが、根っこの部分がすごく真面目で、男遊びも激しいようでいて、主人公にまっとうな意見を語ったりする。アンバランスなようでいて、主人公のことを本心から心配している。それに彼女の兄弟を見る目が、すごく仲良しなんだとこちらに伝わってくる。
主人公が捕われた森から脱出するという作品なんだろうが、途中からは、キクちゃんしか眼中になくなってしまった。「キクちゃん、わたし、どうすればいいんだろう」「私の胸で泣く?」 こういう男前なキクちゃんのような女の子は、どこかにいないかな。おっとっと、話が大きくずれてしまった。作品としても面白かったし、そしてなにより、キクちゃんがかわいかった。やはりそっちかよ(ヲイ)
| ホーム |




