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    2009

05.31

「アクエルタルハ1.2.3」風野潮

アクエルタルハ〈1〉森の少年 (カラフル文庫)アクエルタルハ〈1〉森の少年 (カラフル文庫)
(2004/11)
風野 潮

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密林の奥へと足を進める一行があった。彼らは、遥か南方にある黄金の都タルハ・タンブから来たタルハナール人たちだった。貴族学校を卒業したばかりのマイタは北方の地方長官に赴任することになった。その出発の朝、皇帝直々に道連れを紹介された。皇帝陛下一番のお気に入りの武人、近衛隊長のラサ・カクルハーだった。一方、カクルハーは十年前に、ミスマイの地を攻めたときのことを思い出していた。

タルハナールは太陽神を信仰する民族だ。そしてミスマイ人は精霊と共存する民だった。カクルハーを大将に迎え意気揚がるタルハナール軍は、少数のミスマイ軍を苦難の末、ようやく制圧することができた。その苦しめた奇襲戦法の指導者、精霊使いだという男をカクルハーは都へ連れ帰った。彼に精霊の話を詳しく聞くつもりだった。だが、そうとは知らぬ神官たちによって、精霊使いは戦勝祝いの生贄として殺されてしまう。

一行がカンテ村に着いた翌日、広場に十歳から十五歳までの子供たちが集められた。この中からヤナコー(奴隷)とタルヤーナ(巫女)が選ばれる。カクルハーが指名したのは、精霊使いの父を殺され、その名を受け継いだ少年キチェーと、災いをもたらす魔性の者として忌み嫌われていた、血の髪を持つ少女グラナだった。旅立った一行は、火の神を信仰するイサパたちトヒール団の襲撃を受け、魔の森では永遠の命を持つ女神シュルーと出会う。

太古の昔、都近くの湖にアクエルタルハと呼ばれる神殿が浮かんでいた。あるとき、アクエルタルハは湖底に沈んでしまった。それ以来、沈んだ神殿が封印となって、帝国の四方を囲む大海が閉じられてしまった。神官長のご神託に出たのは、「火の乙女」「水の乙女」「光る髑髏」この三つを手にいれ、「辺境の古き精霊の力」を求めれば、必ずや「アクエルタルハ」は甦るというお告げだった。カクルハーは、皇帝とは違う意思を持ち、この計画に沿って行動していた。


アクエルタルハ〈2〉風の都 (カラフル文庫)アクエルタルハ〈2〉風の都 (カラフル文庫)
(2005/03)
風野 潮

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地方の都チャルテの新長官に就任したマイタと別れたカクルハーたち一行は、再び街道を進み、風の都イマステに到着した。ところが、街の様子は一変していた。いたるところから灰色の煙のようなものがたちのぼり、大気の精霊グクマッツが祀られている神殿の像が破壊され、風が吹かずに、悪い気が浄化されることなく、民人の健康は蝕まれていた。意固地にタルハ神だけに固執する郡長官ヒカロの悪政が原因だった。


アクエルタルハ〈3〉砂漠を飛ぶ船 (カラフル文庫)アクエルタルハ〈3〉砂漠を飛ぶ船 (カラフル文庫)
(2005/11)
風野 潮

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風の都イスマテを旅立ったカクルハーたちは、砂漠の真ん中で気を失って死にかけた少女を発見。砂漠を縦断しカクルハーたちが辿り着いたのは、アスナ地方の都ツトゥハーだ。「花の咲く泉」という意味の名を持つ都は、この半年の干ばつのうえに、地下水路の水も尽き、畑に撒く水にも事欠くようになっていた。砂漠に置き去りにされていた少女ルリンは、雨乞いの儀式の生贄だった。一行は、水の神の祠がある地下水路の奥へ向かう。


歴戦の勇者ラサ・カクルハーだが、天下無双でめちゃめちゃ強いというわけではない。度々隙を突かれてポカミスをするという性格だけは豪胆なおっさんだ。その代わりというか、成長著しいのが精霊使いのキチェーだ。カクルハーに対して、いつか父の仇を討つため旅に出たはずなのに、一緒に過ごす時間が増えるにつれ、どんどん憎しみが薄れていく。その一方で、第一巻では大地の精霊カブラカンと契約を結び、第二巻では大気の精霊グクマッツ、第三巻では水の精霊パシールと、精霊使いのスキルを着実にレベルアップしていく。

そのキチェーと生まれてからずっと共に暮らしてきて、共に故郷を離れて帝都に行くことになった赤髪のグラナは、物怖じしない性格で、第三巻にきてその秘められた能力が開花する。そしてシュルーは、伝説の時代タルハナールを治めていた光り輝く不老不死の神族の姫で、まだ見ぬものを予知し、我が身を削って他人を癒す神の業を使うことができるのだ。マイタの奴隷だったミルパは、いつも無口で目立たないのにいざとなったら度胸がある。本人曰く、誰にでも秘密はあるものだ、だそうで。

読みやすい冒険ファンタジーであった。ただ、この三巻で第一部は終了だけど、第二部の予定が立たぬまま中断している。ここからは風野さんの談。『新刊を出したいし、書きたいのですが、出版社から「もう書かなくていい」と言われてしまっては、どうしようもありません。~中略~ 出版社さんが続きを出すことをOKしてくださるか、或いは、他の出版社さんが再版してくださって続きを出せるようになるか…でなければ、「アクエルタルハ」の続きが日の目を見ることはないと思います』(風野潮さんのブログより)

そこで、こんな案はどうだろう。同じジャイブのピュアフルで文庫化し、その勢いに乗って第二部を書き下ろしで出す。ジャイブさん、いかがですか? 続きがとても気になります。

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風野潮
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    2009

05.31

5月に買った本の代金

個人メモです。

総額8.621円


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自分への戒め
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    2009

05.31

5月に買った本

単行本
玩具の言い分玩具の言い分
(2009/05/14)
朝倉 かすみ

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訪問者訪問者
(2009/05/14)
恩田 陸

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ガール・ミーツ・ガールガール・ミーツ・ガール
(2009/04/21)
誉田哲也

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マーキングブルースマーキングブルース
(2009/03/17)
室井滋

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文庫本
スペース (創元推理文庫)スペース (創元推理文庫)
(2009/05/05)
加納 朋子

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マイナークラブハウスの森林生活―minor club house〈2〉 (ピュアフル文庫)マイナークラブハウスの森林生活―minor club house〈2〉 (ピュアフル文庫)
(2009/05/11)
木地 雅映子

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QED 神器封殺 (講談社文庫)QED 神器封殺 (講談社文庫)
(2009/05/15)
高田 崇史

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どがでもバンドやらいでか! (ピュアフル文庫)どがでもバンドやらいでか! (ピュアフル文庫)
(2009/05/11)
丁田 政二郎

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買ったものの、現時点では一冊も読んでいないのが、自分らしいといえばらしい。



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ほんだな  Image230_r1.jpg

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    2009

05.30

「秋期限定栗きんとん事件」米澤穂信

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)
(2009/02)
米澤 穂信

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小鳩常吾朗は、どこに出しても恥ずかしくない一介の小市民に過ぎない。クラスに溶け込み笑顔を振りまき、それでいて相手の名前も覚えていない、ただの船戸高校二年生。夏休みが終わったある日、放課後に呼び出された小鳩くんは、名も知らないクラスメートから告白され、断る必要もないので付き合うことにした。仲丸十希子さんに呼び出されて以降、小鳩くんの幸せな高校生活は始まった。それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまう。バスの停車ボタンを押したのはどちらか。何も取らなかった泥棒の目的とは。

新聞部一年生の瓜野高彦は、学外の話題を取り上げるべきだと主張するが、堂島部長の反論の前にあえなく敗退を繰り返していた。その日は、我ながら、度胸があった。初対面に近い小佐内に声をかけ、出会いがしらの事故のように二人は付き合うことになった。そんなある日、同じ新聞部員の提案でコラムのスペースが作られた。何の記事を書こうか悩んでいた瓜野は、友人の氷谷が持ってきた連続放火事件にある共通項を見つけた。当たれば大きい。犯罪の発生を見抜いたら、堂島部長にも胸が張れる。それになにより、小佐内の前で格好がつく。

三年になった堂島部長の引退により部長の座を手にした瓜野は、被害地予測だけでは飽き足らず、自分の手柄を立てたくて、連続放火の犯人を捕まえるべく、新入部員を動員して張り込みを始める。その一方で、小鳩くんは、ちょっと興味を持って堂島健吾と話をしたら、新聞部に小佐内さんが介入していたことに気づいた。そして連続放火を追っている新聞部員と付き合っていることや、彼の説の根拠などを聞いた。事件解決の道筋が見えた小鳩くんは、健吾に持ちかけ放火犯を焙り出す策を仕掛けることにした。そして、互恵関係を解消して一年、小鳩くんと小佐内さんは再会する。

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)
(2009/03/05)
米澤 穂信

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上下巻を一日で一気読みしてしまった。小鳩くんは、彼女が出来てもいつものようにマイペース。小市民になりきれずに謎解きばかりしている。彼女になった仲丸さんもあれだけど、二人のダメさはどっちもどっち。一方の小佐内さんは、何やら裏で動いているようだがその行動は見えてこない。その小佐内さんに代わって、彼女と付き合いはじめた瓜野が連続放火事件を必死に追いかけるが、途中から勘違い野郎になってしまいそこにイライラ。などと思っていたら、終盤に狼さんがその鼻をポキッと折り、そこで気持ちがす~っとしたら、前作の後味の悪さが消えてしまった。

しかしまあ、歪な人ばかりが登場したなあ。そして小鳩くんと小佐内さんの二人は予想通りに元の鞘に戻った。嘘つきで復讐の人である小佐内さんは到底好きになれないけれど、今回の小鳩くんはちょっとカッコよかった。この二人に関わることになった瓜野は、自分を過信して暴走した自業自得もあるけど、損な役割でご愁傷様としかいいようがない。そんな中での一番の功労者は堂島健吾かな。地味だけどほんといい奴だ。最終巻である「冬期限定」では、当然、小鳩くんと小佐内さんの高校卒業によるその行方に重点が置かれるであろうが、第三の人である堂島健吾もお忘れなく。もちろん面白かったです。

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    2009

05.29

「黄金旋律 旅立ちの荒野」村山早紀

黄金旋律  旅立ちの荒野 (カドカワ銀のさじシリーズ)黄金旋律 旅立ちの荒野 (カドカワ銀のさじシリーズ)
(2008/12/26)
村山 早紀

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今回は完全に自分のための備忘録です。続編を読むときのためのメモ。これ以降の長ったらしい文章はあらすじではなく、本一冊分を要約したもの。よって感想もナシ。だから未読の方は途中でストップしてください。結末を知ることになりますから。それでもいいという方は最後までどうぞ。

主人公は中学二年生の臨。兄の律は交通事故で死んでしまった。その時、臨は小学二年生だった。その笑顔を思い出そうとすると、同時に臨は、自分の声を思い出す。兄の背中に向かって投げた、「大嫌い」という言葉を。律が生きていたころ、臨の家はいつも笑い声でいっぱいだったような気がする。賢くて明るい律、元気で少しわがままだけれど、家族のみんなから愛されている臨。おだやかでたくましい父と、かわいらしく優しい、少女のような母。律が死んだその日に、たぶん臨の家は、壊れてしまった。

臨は兄のように振舞って家族を守ろうとしていた。しかし父は家を出て行った。そして低い声で母はつぶやいた。臨じゃなく、律がここにいればよかったのに。臨は床を蹴飛ばしたつもりだった。でもその瞬間、身を寄せてきた飼猫のアルトが、はね飛ばされた。外へと飛び出たそこに、車とぶつかる鈍い音がした。ずっと変わらずに、臨を好きでいてくれた小さな命を、臨は殺してしまった。臨はアルトを抱えて歩いていくうちに、気がつくと、兄がはねられた場所にきていた。臨は、死んだアルトを抱いて、車道に飛び出した。

目を覚ますとそこは古びた病院だった。臨のお世話を担当していたのは、きしみながら動く看護師ロボットの佐藤ひまわり。事故後、意識が戻らなかった臨を、当時の医学は目覚めさせることが出来なかった。未来の医学が進歩することを信じて、この病院で冷凍保存されたと、ひまわりは静かに語った。街は廃墟と化していた。無残な灰色の荒野が続いているのだった。長く続いた戦争や、彗星の衝突による天変地異のために、地球の環境は大きくかわり、人類が持っていた文明は完全に途絶えていた。

臨は未来に戸惑いながらも、優しい看護師ロボットたちと共に生活をはじめる。そうして、一ヶ月の時が流れた。一方、その猫の名前はアルファといった。猫の背にはこうもりのような黒い翼があった。それから、その猫は人のように思考することができて、人のことが好きだった。その空飛ぶ猫は、廃墟にたどりついた。また、獣へと変身するソウタは、故郷の村の人々に嫌われ、村を出た。そして幼きチヒロと老人と出会い、ともに旅をしていた。この二人だけが、ソウタの家族だった。その老人が死んだ。廃墟のそばにある荒野だった。

その夜、ソウタたちは〈徘徊するもの〉たちに襲われた。異形の殺戮者は、たき火の熱に気づいてやって来たのだ。空飛ぶ猫のアルファは、明かりを追いかけて、やっとたどりついた。デモ、アソコニハ、嫌ナモノモイル。デモ、ヤサシイヒトモ、イルカモシレナイ。同じころ、臨は窓の外に明かりを発見した。あの炎はたき火だ。きっとあそこには人間がいる。臨は廃墟を走った。たき火の炎をめざして。生死をかけた戦いは、二人と一匹の友達の出会いだった。そして傷ついたチヒロを病院に残し、臨たちは医者を捜す旅に出る。

次巻に続く。

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    2009

05.28

「風の中のマリア」百田尚樹

風の中のマリア風の中のマリア
(2009/03/04)
百田 尚樹

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女だけの帝国が誇る最強のハンター。その名はマリア。疾風のマリアと呼ばれるオオスズメバチのワーカー(ハタラキバチ)だ。彼女たちの巣は一頭の女王バチと大勢のワーカーたちで構成されている。ワーカーはすべて女王バチから生まれた娘たち。オスは一頭もいない。大スズメバチの巣は女だけの帝国なのだ。ワーカーはメスだが卵を産むことはできない。産卵することができるのは女王バチだけで、ワーカーは妹たちを育てる役目を負う。

マリアたちの一番重要な仕事は幼虫たちにエサを与えることだ。妹たちは新鮮な肉しか食べない。そのためにマリアたちが虫を狩り、その肉を与える。だからマリアたちワーカーは一日中、獲物を狩りにいく。オオスズメバチは、幼虫時代は肉食だが、成虫になると逆に肉など固形物は一切食べられなくなる。そのために樹液や花粉が食物の代わりとなるが、最高の栄養源は幼虫の出す唾液だった。

オオスズメバチは昆虫界の食物連鎖の頂点に立っている。最大の体長を誇り、最強の戦闘能力を持つハチだ。どんな昆虫をも噛み殺すことのできる巨大な顎と固い牙。何度でも刺すことができる鋭い針。防御力も極めて高い。甲虫に匹敵するほどの強固さを持っている。飛翔力も桁外れだ。最高速度は時速三十キロを超える。そして無尽蔵とも言えるスタミナ。一日に百キロ以上も飛ぶ。まさしく戦闘マシンと呼ぶにふさわしいものだ。

ただ戦うために生まれ、その命はわずか三十日。本書は、そんなオオスズメバチの生態を伝えると共に、マリアたちの一生をかけた冒険譚として、さらに帝国の歴史絵巻としても読める作品だ。正直に言うと虫は苦手。というか怖い。そんな虫嫌いでも、読み始めてすぐに作品世界にのめり込んだ。とにかくすべてが壮絶だ。弱肉強食。食うか食われるかの戦いが残酷で凄まじい。

マリアは、「見逃してくれないか」と懇願する獲物を容赦なく殺す。わずか数頭の仲間とミツバチの巣箱を襲ったマリアは、「この敵を殲滅せよ!」という本能の声を聞き、何かに取り憑かれたようにミツバチを殺戮する。それは生まれた妹たちのためであり、偉大なる母のためであり、帝国の発展のためだ。マリアは心の中で強く言う。自分は一生戦い続ける女戦士だと。

その一方で、恋も知らず、子供も産めず、なぜ戦うのか、死とは何かと、マリアはふと気持ちをぐらつかせてしまう。そんなマリアだが、偉大なる母が次の世代の女王をこしらえるように命令した時、初めて自分たちの使命を理解する。来るべきこの時のために闘ってきたのだと。結末を言えばマリアは散る。でもマリアたちの遺伝子は次の世代に引き継がれていくのだ。

命の不思議を感じた。ハタラキバチの使命も理解できた。そして次の世代へのバトンタッチには、自然界のサイクルの激しさと、限られた時間しか生きることができないことや、女王の命令の下で一生を捧げ殉じる生き物がいて、それ以上に淘汰されていく生き物がいることを知った。「ボックス!」のわあっという勢いで読む作品も面白いが、じっくりと読むこの作品も面白かった。著者の百田尚樹さんに一言。ブラボー! 最高でした。


そして、前作に続いてまたもサイン本を。

百田2

他のサイン本はこちらをクリック。→「サイン本」

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    2009

05.27

「学ばない探偵たちの学園」東川篤哉

学ばない探偵たちの学園 (ジョイ・ノベルス)学ばない探偵たちの学園 (ジョイ・ノベルス)
(2004/01)
東川 篤哉

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おれこと赤坂通は私立鯉ケ窪学園の二年に転入を果たした。つまり転校生だ。あたらしい学園生活は、まずは無難に滑り出したといってよかった。しかし、順調に見えた学園生活に、微妙な影を指す出来事が起こった。文芸部に入ろうと部室の扉を叩いたところ、目の前に二人の上級生が現れた。そしてその二人に騙されて探偵部に入部してしまった。部長の多摩川流司と部員の八橋京介。本格素人のおれは、先輩たちに勧められた「クイーン」と「ホームズ」を読みながら四月を終え、五月中旬までを過ごした。部長は密室を、八橋はロジックを偏愛する本格マニアであった。

その日は、季節外れの台風の影響で、天気が目まぐるしく変わる一日だった。だが、豪雨の影響をモノともせず、沈む夕陽を眺めつつ屋上で部活動に励む若者たちの姿があった。部室を持たない流浪の民、探偵部の三人である。そこに用務員の堀内辰之助が現れ、そろそろ帰るようにいわれた。そのとき校舎に残っていたのは、放送室にいた島村先生、自習室で補修していた教師の本多と芸能クラスの西野エリカ、生徒会室には生徒会長の桜井あずさ、そして職員室の鶴間教頭と担任の兵藤先生。結局、探偵部の三人は、用務員室を借りてミステリ談義の続きに突入した。

時間も経ち、帰ろうとしたその時、改修工事中のプレハブ校舎の方から悲鳴が聞こえてきた。絶叫の主は音楽教師の小松崎律子。密室と化した保健室で死んでいたのは、芸能クラスのアイドル目当てで侵入した盗撮カメラマンだった。事件後には、祖師ヶ谷警部と烏山刑事という刑事コンビが揃って何かを探し、トリック好きの美術教師が勝手な推理を披露し、音楽教師は謎の言葉を言い残す。教師たちが事件をかき回すなか、芸能クラスのアイドル藤川美佐が行方不明に。さらに音楽教師の小松崎律子の死体が密室で発見された。我らが探偵部と顧問教師の石崎は犯人にたどり着くのか。

相変わらず緩い。でもこの緩さが著者の持ち味であり、すべりを恐れないユーモアが好きだ。一応ミステリの体裁は取ってはいるが、密室のトリックとか、謎解きの快感とか、そういうミステリな部分を期待すると、おもいっきり肩透かしを食らうだろう。これは学園を舞台にしたエンタメ作品。そう割り切って読んで欲しい。多摩川部長にしろ、八ツ橋先輩にしろ、顧問の石崎先生や、保険の真田先生と、みんなキャラ立ちしている。それもみんなが脱力系でボケている。ツッコミを入れるものは誰もいない。しいて言えば、読者が自分でツッコミを入れながら読み進める。こういう気軽に読める作品があってもいいと思う。この著者には、今後も漫画的な作品を量産してもらいたいものだ。こういうおバカ、好きです。

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東川篤哉
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    2009

05.26

「強運の持ち主」瀬尾まいこ

強運の持ち主強運の持ち主
(2006/05)
瀬尾 まいこ

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占い師になったのは三年前。短大を出て、初めは会社で営業の仕事をしていたが、上司と折り合いが悪くて半年で辞めてしまった。そんな時、アルバイト情報紙で見つけたのが、占い師の仕事だ。吉田幸子という名前が私の本名だ。だけど、それでは信憑性がないというので、師匠のジュリエ青柳からルイーズ吉田という名前をつけられた。慣れるに従って、自分の直感で占うようになった。

お客さんの話し方や容姿を見て判断し、性格を言い当てるのはいとも簡単だった。そして、営業で鍛えた話術を活かし、この先いいことがあるってことをほのめかしておけばいい。それで、お金がもらえて、相手だって気持ちよく帰っていく。そのうち、不思議なことに占いは当たると評判になり、人気が出てきた。そして、一年前に独り立ちし、ショッピングセンターの二階の奥のスペースを借りて、一人で占いをするようになった。

通彦はまだ真面目に占いをしていた頃に手に入れた恋人だ。彼女に連れられてやってきた通彦は、かつてない強運の持ち主だった。こっそりと通彦と自分の相性を見てみたが、これがまたばっちりだった。占いにかこつけて、彼女と別れることをすすめ、とにかく、いろんな手を尽くし、通彦を手に入れた。しかし、付き合い始めて二年、未だ通彦は何も成し遂げていない。公務員として、市役所でごく普通に働いている。

いい加減な占いをしているルイーズだが、時折やっかいなお客がやってくる。お父さんかお母さんかどっちがいいか占ってくれという小学生男子(「ニベア」)、彼の気を引くためにはどうしたらいいのかと、何度外れても訪れる女子高生(「ファミリーセンター」)、押しかけアシスタントにやって来たのは、物事のおしまいが見えるという男の子(「おしまい予言」)、占い師のルイーズが占いに振り回されてしまう(「強運の持ち主」)。

師匠のジュリエ青柳さんのモットーが本質を突いていると思った。大事なことは正しく占うことじゃなくて、相手の背中を押すこと。人は誰かに物事を相談するとき、本人の中ではすでに答えが出ており、あとは誰かに背中を押して欲しいだけ。そう、その通りだ。人は、決断をするときに弱い。あと一押しが欲しい生き物なのだ。例えば女性の買い物などが分かりやすい。二つ掲げて「どっちがいい?」という問いかけ。誰もが覚えあるでしょ。

正直にいえば占いは信じていない。でも毛嫌いはしていない。あっても邪魔にならないからだ。適当な距離を置いて占いを目安にする人がいてもいいし、振り回されている人がいれば近づかないだけ。でも世の中にはどれだけの占いが氾濫しているのだろう。テレビでも雑誌でもフリーペーパーにも占いが溢れている。占いが好きな人はすべてに目を通しているのだろうか。それって当たっているのだろうか。

そんな疑問を持ちつつ、自分に子供ができたなら、姓名判断は見てもらうだろう。勝手やなあ~。

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瀬尾まいこ
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    2009

05.26

「ZOKURANGER」森博嗣

ZOKURANGERZOKURANGER
(2009/04/21)
森博嗣

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民間企業の研究所から転職し、大学の情報学科准教授に就任したロミ・品川は、研究環境改善委員会の委員を務めることになった。月に一、二回開催される、他の学内委員会と大きな違いはない役職だ。5人の委員全員にそれぞれの色違いのユニフォームとヘルメットがある以外は……。あなたはあなたの正義のために。アヴァンギャルドでハイブロウ。前代未聞の戦隊小説。《本の帯より》

「ZOKU」では、イタズラ組織のZOKUと正義のTAIによるどうでもいい対決を描き、「ZOKUDAM」では、ガンダムもどきのロボットを作っている地下秘密施設でのドタバタ劇を描き、シリーズ三作目の「ZOKURANGER」では、大学の研究環境改善委員会メンバーによる脱力系の戦隊モノというのが本書だ。

新たに委員会のメンバーになったロミ・品川は、この組織の概要がまったくわかっていない。無口な揖斐による説明を聞いてもわからない。突然ユニフォームのサイズを測りにやって来た野乃に危険信号を感じ、斎藤のねばっこいしつこさに走って逃げ出した。だが、品川は委員会のことをわからないまま、イエローのユニフォームとヘルメットを受け取った。メンバーの五人は、五色のユニフォームを着ることが決まっていたからだ。

そのイケてないメンバーとは、ロミ・品川准教授(イエロー)、永良野乃助教(ピンク)、ケン・十河助教(ブルー)、バーブ・斎藤准教授(グリーン)、揖斐純弥准教授(レッド)の五人に、委員長の木曽川大安教授(司令官?)、黒幕の黒古葉善三博士と、このシリーズでは、毎回設定は違えども、いつものメンバーが名を連ねている。そして第一章ではロミ・品川、次の章では永良野乃と、各章で主人公がリレーしていく。

その中身はというと、実に何もない。五色のユニフォームにしても、ただの小道具でしかない。大学の悪い慣習を淡々と並べてみたり、ずっと怒っていたり、妄想をし続けたり、ロールプレイングゲームに見立ててみたり、人の未来が見えると大騒ぎをしたりで、結局はなぜ委員会に集められたのかという疑問を持つに至るのだが、その答えにしたってどうでもいいことでしかない。

これは森博嗣風の娯楽作品でいいのかな。シュールから受ける面白味とは、波長が合えばツボに嵌る一方で、肌が合わなければ、ただ助長なだけのお話でしかない。本書はそういう点で好き嫌いが別れそう。自分は嫌いまではいかないがどちらかと言えば後者だった。これまでの二作が面白かっただけに、著者と感性のポイントがずれてしまったのかしら。森博嗣が好きならば、チャレンジしてみては?

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森博嗣
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    2009

05.25

「てのひらの闇」藤原伊織

てのひらの闇 (文春文庫)てのひらの闇 (文春文庫)
(2002/11)
藤原 伊織

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飲料会社宣伝部課長の堀江は、人員削減策の早期退職に応じ、サラリーマン生活も残すところあと二週間だった。その日、会長の石崎から呼び出されたのは宣伝部長と退職間際の製作担当課長。石崎は個人的な相談があるので意見を聞きたいという。そう言ってビデオカメラを操作すると、映像が流れはじめた。マンション五階のバルコニーから、幼児の上半身がはみだしている。直後、彼はバルコニーから転落した。次の一瞬、走りこんできた男はおちてきたものをキャッチし、両腕で抱きとめた。

石神が偶然ビデオに写したという人命救助の場面。この映像を、テレビCMにつかえないだろうかということだった。しかし、再度一人でビデオ映像を見た堀江は、それがCGで製作されたものだと気付き、そのことを石神に指摘する。その夜、石神は自宅の部屋で首を吊って自殺した。石神はなぜCGの偽造映像を製作したのか。しかもそれをなぜCMに使おうとしたのか。そして自らの命をなぜ絶たなければならなかったのか。堀江は二十年前に石崎から受けたある恩に報いるため、その死の謎を解明すべく動き出す。

ここまでならジャンルで言えば企業ものミステリーだ。しかし、ハードボイルドの藤原伊織はこのままでは終わらない。主人公の堀江はかつて暴力団組織の息子だった。それも、この時代なら広域暴力団に指定される組織の中核団体だ。そして、中学を出たころにはもういっぱしのやくざを気取っていた。なんてぶっ飛んだ設定なんだ。しかもこの事件の間、堀江は風邪の高熱でフラフラと朦朧状態。それでも喧嘩に強い。そして女にモテる。おまけにカッコいい。

そんなスーパー・サラリーマンを取り巻く脇役の人々にも当然だが魅力があった。女性部下の大原は堀江を慕う一方で行動力が抜群だし、上司で同僚の柿谷はエリートらしく切れ者で、バーの店長ナミちゃんは派手にバイクを暴走させて、その弟マイクはすべてを悟っているようだ。そして堀江と因縁のある亡き石神会長もまた、ストーリーが進むにつれて欠点が明らかになる一方で、奥の深い人物であることが分かり、堀江が事件に執着する傾倒ぶりに納得してしまった。

やり過ぎやご都合主義を指摘する方がいるかもしれない。だが、これはエンタメであって、藤原流のハードボイルドなのだ。楽しければいい。わくわくできればいい。さり気なくかわいくて、時おりカッコよければいい。ユーモアがあって、痺れさせてくれればいい。そして続編が読みたくなれば、それは藤原伊織の術中にはまっていることで間違いない。そういう方は、続編「名残り火 (てのひらの闇2)」へGO! 自分は寄り道をするだろうが絶対に読むし。とてもおもしろかったです。

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藤原伊織
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    2009

05.24

「RDG はじめてのお使い」荻原規子

RDG レッドデータガール  はじめてのお使い (銀のさじ)RDG レッドデータガール はじめてのお使い (銀のさじ)
(2008/07/04)
荻原 規子

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玉倉神社が接しているのは、吉野から熊野までを南北に貫く高所の道で、修験道の霊場となっている。玉倉山は古くからある霊山のひとつで、世界遺産にも認定されている。玉倉山の山頂をわずかに下ったところに玉倉神社が建ち、神社の境内に、泉水子の家や修行者の宿所が建てられていた。標高は千メートルほどあり、登るにつれて気温はみるみる下がっていく。

鈴原泉水子は、人見知りが激しく引っ込み思案の女の子。泉水子の母の勤め先は警視庁公安部なので、ときには身内でさえ居場所をつかめない、神出鬼没の人になってしまっている。コンピュータプログラマーを職とする父も、二年前に大手企業に引き抜かれ、カリフォルニアのシリコンバレーへ行ってしまった。泉水子は宮司を務める祖父と静かな二人暮らしを送っていた。

中学三年になった春、進路相談の時期だった。泉水子は数少ない友人と同じ地元の外津川高校への進学を希望する。そして、できたら高校の寮に入りたかった。しかし父の大成からは東京の鳳城学園高校への進学を進められた。それは、PC実習の授業中で、急にPC画面がテレビ電話に切り替わった不思議なやり取りだった。その次の瞬間、学校中のPCが壊れてしまった。

その非常事態に現れたのは、父の友人で後見人の相楽雪政。母にもそういう特異体質なところが少々あったらしい。それよりも、どうしても地元の高校に進学したいと言うなら、息子の深行もそこに進学することになるだろうと言い出した。さらに、人見知りな泉水子が慣れるには早ければ早いほうがいいと、突然、泉水子が通う中学校に深行が転校してきた。

相楽は山伏。その息子の深行も山伏として修行を積んできた。山伏には、代々秘め隠しながら守っている家系がある。その家系は女系で継ぐもので、泉水子はその血を引いていた。深行の一生は、泉水子につきそうためにあるらしい。だが深行がおもしろく思っていないことははた目にも明らかだった。状況を打破するために泉水子は母である紫子に連絡をとろうとするが......。

内向的な泉水子と強気キャラの深行の距離感は埋まるのか。なぜ不思議なことが泉水子の周りで起こるのか。彼女を守ることを運命づけられた山伏とは。彼女をつけねらう黒い影とは。そして彼女の血筋とは。そういった事柄が気になりつつ、作品世界に引き込まれた。でも物語はまだ始まったばかり。続編の「はじめてのお化粧」に続くようなので、今回は感想を抜きにして、自分のための備忘録風に書いてみた。あしからず。

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    2009

05.23

「真夏の島に咲く花は」垣根涼介

真夏の島に咲く花は真夏の島に咲く花は
(2006/10/13)
垣根 涼介

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ナンディ・タウンは、フィジー観光の玄関口として発展してきた町だ。ヨシこと織田吉昭は、両親の移住に伴い、十六歳でこの島にやってきた。八年前のことだ。日本食レストランの商売が軌道に乗った三年前、この国に帰化した。姿かたちは日本の若者でも、れっきとしたフィジー人だ。日系フィジー人ということになる。

茜は短大を出てすぐに文房具会社に勤めた。少しずつ、世界が煮詰まってきている。狭まってきている。そんなことを感じるようになっていた四年前、初めてこの島にやってきた。この国には、今までの人生で知らなかったものが、絶対にある。去年の春、ワーキング・ビザを取り、この島でしばらく暮らしてみようと決心した。

チョネの働くガソリンスタンドは、ナンディ・タウンの南のとっつきにある。本来はガソリンを入れに来るのが目的の場所が、簡単な故障なら直してくれる修理屋へと様変わりしている。他のインド人経営の店で、修理に出すと必ず正規の工賃を取られる。チョネを含めたフィジー人の大半が貧乏人なので、チョネの善意を頼って持ち込むようになった。

父のお土産物屋を手伝うインド人のサティー。父親は日本人が大好きだ。お土産物を大量に買い、金払いがよく、クレームをつけることもない。でも、好意の理由はそれだけではない。努力と勤勉によって、経済大国になった日本人のイメージと、苦労して現在の経済的地位にまで登りつめてきたインド系フィジー人を重ねるのだろう。

日系フィジー人のヨシは、インド系フィジー人のサティーと付き合い、彼らと高校時代からの友人である生粋のフィジアンのチョネは、日本人女性の茜と付き合っている。のんびりした南国の日常の風景。その日、ラジオから臨時ニュースが流れてきた。国会議事堂が武装集団によって占拠されました。フィジー系住民によるクーデターだった。

イギリスの植民地だったフィジー。まったく働く意欲のないフィジー人にイギリス人は業を煮やし、同じ植民地だったインドから大量の労働者を半強制的に連れてきた。そういうバックグラウンドがあってクーデターが起こり、人種の違う四人の若者は、民族的な価値観の違いがより顕著になり、時の流れに呑まれていく。

日本人やインド系フィジー人が持つ勤労勤勉とは程遠い民族性のフィジー人。その特有の無邪気さがある一方で、自分は働かないのに働いて儲ける人を嫉妬するというような、経済主義に馴染みきれない国民性からくる考えは理解の範疇を超えていた。また短絡的に暴動へと走る姿に背筋がぞっとした。そして中国人の拝金主義もまたお尻のあたりがもぞもぞとする。

しかし、そう思ってしまう日本人的な思考が必ずしも正しいとは思わない。彼らは経済という感覚がなくても生きてこられた。そう、経済は後から持ち込まれたものでしかない。山に入れば食べるものがあり、魚もふんだんに採れるので、何もしなくてもとりあえずは食べていくことができる。彼らはそれで幸せであり、その生活こそが楽園だったんじゃないだろうか。そのようなことを読んで感じました。


垣根涼介さんのサイン。

垣根


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垣根涼介
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    2009

05.22

「ランウェイ☆ビート」maha

ランウェイ☆ビートランウェイ☆ビート
(2008/01/16)
maha

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原田マハによるmaha名義のケータイ小説を書籍化。だから本のつくりは左開きで文章は横文字。分かりやすく言えば英語のテキスト風。読み始めはそこに引っかかったけど、いつの間にやらまったく気にならないようになっていた。そして今ドキな若者ことば。

きのう会って心奪われた見ず知らずの男の子が、今日、自分のクラスに転校してきた。溝呂木美糸(ミゾロギ・ビート)。メイは自分のラッキーぶりを喜ぶのと同時に、クラスの3分の2以上の女子がビートに関心を持ったと確信して、落ち込んだ。友人のアンナもほっぺたを桃色にして、耳打ちしてくる。メイはクラスの女子の誰よりも熱い視線を、彼の背中にビームした。

メイちゃん、やわらかそうな髪の毛だから、きっちりまとめないで、少し後れ毛を散らしたほうがいいかも。おっさんだったらセクハラぎりぎりの発言。でもビートの場合かなり的確。ショッピングセンターで見かけたときの着こなし、制服なのにカッコよく見せるテク。なにより、ちっちゃいことをマイナスに感じさせない、堂々とした感じ。思ったとおり、ほかの男の子とぜんぜん違う。

天才的なファッションセンスを持ったビートが言ってくれた。人はそれぞれにポテンシャルを秘めている。ファッションに興味がなかったメイも、クラスの飼い犬だったワンダも、人気モデルで女王様のミキも、若手デザイナーのミナモも、クラスの誰もが彼にアシストしてもらって自分のポテンシャルを全開にする。学園祭でのファッションショー。自分たちのファッションブランドを作る。現役高校生デザイナーvsカリスマデザイナー。そして東京コレクションでデビュー。

ひきこもりがイケメンに変身したり、片思いにきゅうっとなったり、バカップルが誕生したり、みんながファッションに目覚めてみたり、分かりやすいライバルが登場したり、想像通りのエンディングだったり。はっきり言ってベタな展開で捻りなんて一切ない。だけど、みんな素直で、誰もが輝けて、淡い恋心が初々しくて、真直ぐ前に向かっている姿が清々しくて、時には止まることはあってもそこにはいつも大事な仲間がいる。そして未来を信じている。大人にはキラキラが眩しすぎる、そんなピュアな一冊でした。

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原田マハ
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    2009

05.21

「ガーデン」近藤史恵

ガーデン (創元推理文庫)ガーデン (創元推理文庫)
(2002/12)
近藤 史恵

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燃える火に夜と書いて、カヤ。赤い髪に華奢な身体、大きな眸をした捉えどころのない娘。行く夏の海で火夜に遭った真波は、何の違和感もなく一緒に住むようになっていた。その火夜が不意に姿を消してしまう。そして二週間、真波の許へ火夜と同じエナメルを塗った小指が届く。動顚した真波は同じマンション内の今泉文吾探偵事務所を訪ね、火夜を捜してほしいと依頼する。謎めいた娘を求めて、植物園と見紛うばかりの庭苑に足を踏み入れた探偵。血を欲するかのように幾たりもの死を招き寄せる庭で、今泉が見出したものは?

本書は「ねむりねずみ」より二年前の事件となり、今泉文吾最初の事件である。正直に言えば梨園シリーズの今泉文吾は苦手だった。でもこれは作風自体が別ものであった。作品全体に漂う妖しげで儚げな雰囲気。心の何かが欠けたような人々。危うい小道具の数々。そして不精な今泉が行動的で、何が起こっているのか分からないまま突き進むストーリー。

好きな人がいる。だから殺さなくてはならない。火夜はそう言い残し、拳銃を持って姿を消した。探偵の今泉は、助手の山本と共に彼女の残した痕跡を追う。かつて死ぬことしか考えていなかった真波、麻薬中毒者の諏訪、心はもう死んでしまっている飴井。彼らも失踪した火夜の捜索に協力するが、それは全面的な協力ではなかった。

その一方で、火夜の刹那的な日々が披露される。彼女は何を思って生きているのか。また彼女の過去に何があったのか。そうしたところに、火夜と一緒にいたと思われる人物が遺体となって発見される。それは藤枝老人が管理する庭園で、その後も、諏訪、真波と、火夜に魅了された人々が次々に殺されていく。

これだけ死人が出ても、まだ何が起こっているのか分からない。犯人の動機も見えてこない。それでも読ませてしまう作者の筆はすごいとしか言いようがない。それに妖艶で耽美的な世界観は個人的に好みだった。また今泉探偵事務所の誕生秘話も意外なものだった。忙しく駆け回るモップ犬のモンモランシィもかわいかった。

だけど今泉がたどり着いた真相は、自分の感覚では理解できなかった。人物たちが勝手に動いていたのは提示されていたが、その行動理由にリアリティを感じなかった。歯車が狂ったとか、何を望んでいただとか、イマイチこちらに伝わってこない。それが残念だった。途中までは面白かったけれど。すいません。

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近藤史恵
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    2009

05.20

「もうすぐ」橋本紡

もうすぐもうすぐ
(2009/03)
橋本 紡

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産婦人科医が逮捕された。事件が起きたのは三年前。ひとりの妊婦の帝王切開の手術が行われた。子供は助かったものの、母親は戻ってこなかった。医師の不手際が問題になり、警察が動いた結果、なぜか一年以上もたってから逮捕という事態に至った。妊婦のたらいまわしや、医師不足が問題になっているが、原因のひとつがこの事件だった。しかし、その構図を描くだけでは、読者に伝わらない。ネット新聞記者の由佳子は、現代において女性が子供を産むということが、求めるということがどういうことなのか、妊娠と出産の現場を集中取材することにした。

まずは、読者の体験が綴られる。ある女性は流産し、ある女性はタイムリミットに焦り、ある男女は子供に対するずれを感じ、ある男女は生む場所探しに奔走し、ある男女は不妊治療を受けて女は病的になり、男はそれが重くなる。いい意味でも悪い意味でもそこにある感情が生々しかった。子を持つということは、男女共通の営みのはず。しかし男はいつだって子供を作れるが、女の体はそうではない。どちらも子供は欲しいという思いは同じだが、女は何としてもと強迫観念にとらわれ、男はそこまでの思いはない。そこからくる意識のズレが居心地悪く、ちょっと引いてしまった。

その一方で、由佳子は医療事故の裁判を傍聴し続ける。妊婦も、その家族も、当然のように子供が産まれてくると思っている。母親もまた健常な状態で帰ってくると。しかし必ずしもそうではない。医師の努力によって危険性を取り除き、その努力した結果、お産とは安全なものだと、みんなが思うようになった。しかし今もお産が危険なものであることに変わりはない。それに加えて、医師の人手不足や、無理な勤務体制に、産院の圧倒的な不足。このままでは医療が崩壊すると、某作家と同じことを説いている。

由佳子は記者という立場でずっと傍観しているが、友人の出産に立ち会うことで、自分の身近にある問題であったことに気づく。同じ女性なのに、由佳子はどこか他人事なのが気になっていたが、ここでやっと納得することができた。実感がなかったのだと。でもここは友人を助ける美談ではあるが、その一方で、産気づく当日までに産院を探さなかった友人は、母親の自覚が足りないとしか言いようがない。

医師や産院の不足は現実問題であり、妊婦のたらいまわしによる死亡事故は記憶にも新しい。しかしここにある問題に対しての明確な解答はない。でも一人ひとりが考えて向き合っていかなければならないと思う。医療を受ける側からすれば、先生は神様かもしれないが、先生だってひとりの人間だ。お上は現場に目を向けていない現状で、この先どうなってしまうのだろう。産院だけでなく医療全体が不安だ。そして子供を産むということは奇跡だと、あらためて思った。

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橋本紡
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    2009

05.19

「幻惑密室」西澤保彦

幻惑密室―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)幻惑密室―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)
(2003/06)
西澤 保彦

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ウルトラ・ワンマンで精力絶倫の社長宅で開かれた新年会。招待された社員は、社長秘書の古明地友美、受付嬢の山部千絵、総務の羽原譲、そして営業の岡松治夫の四人。奇妙な顔ぶれに戸惑う四人だったが、それぞれ社長に対する思惑を抱えていた。そして気がつけば社長宅から出られなくなっていた。電話も携帯も通じない閉じられた異空間の中で、今度は社長の死体が発見された。

一方、ミステリ作家の保科宅のインタホンを鳴らす人物がいた。きものに袴姿の、三つ編の女の子。超能力者問題秘密対策委員会出張相談員(見習)の肩書を持つ可愛い娘、神麻嗣子だった。略して〈チョーモンイン〉は、超常能力を不正使用して不当な個人的利益を得ようとする超能力者たちを補導するのが、その主な主命なのだ。神麻嗣子と作家の保科は、美人警部の能解とともに、前代未聞の密室の謎に挑戦する。

毎回奇妙なSF設定によって読者を楽しませ困惑させる西澤作品であるが、今回は通称ハイヒップと呼ばれる催眠術のような暗示を扱ったミステリだ。要するに、本来は幻覚でしかない出来事を、いかにも事実であるかのように思わせる能力。社長宅からどうしても出ることができない。電話が全部通じない。そして時間が異常に速く流れるという暗示。これらを仕掛けた超能力者は誰か。その目的は何か。そして犯人は誰か。というSFミステリが物語の本筋になっている。

その一方で、作家の保科を挟む形になるのは、少し天然で萌えキャラの神麻嗣子と、美貌と才能をあわせ持ったクールビューティーの能解警部という対照的な女性陣だ。本書は彼らの会話主体でストーリが展開してゆく。ぶっちゃけてハイヒップなる超能力を理解できないまま読んだ。いろいろとルールが決められていて、推理する側もそのルールに沿って謎解きをしているが、何が起こってそれがどうなったのかもよく分からなかった。でも何の問題もなくするすると読めてしまう。それはひとえに三人の人物造形や会話にあったと思う。

神麻嗣子は少々狙いすぎではあるが、そのずれた必死さが失笑を誘い、能解警部は気の強い女のようでいてほんのりと温かみがあり、保科は巻き込まれキャラでひたすら振り回され続けている。一人ひとりではそんなに魅力があるわけではないのだが、それが二人になり、三人が集まれば一気にユーモアが融合し、明るく軽快な雰囲気を醸しだしてくれるのだ。ミステリ部分では頭が混乱しても、彼らの会話だけで十分に楽しめる作品。そんな一冊だったと思う。

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西澤保彦
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    2009

05.18

「君と一緒に生きよう」森絵都

君と一緒に生きよう君と一緒に生きよう
(2009/03/27)
森 絵都

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ブリーダー崩壊の現場を前に決意した島田さんは、ただちに救出を開始した。持参したケージに次々と犬を入れ、ワゴン車へと運びこむ。島田さん宅ではボランティアスタッフが53頭の到着を待っていた。知り合いのトリマーや獣医師も応援に駆けつけてくれた。痛みと、痒みと、空腹と、悪臭と―苦痛のなかでのみ生きてきた犬たちの、幸福への一歩がはじまった。人と犬のあいだで呼応する命の声―。犬と暮らす喜びと厳しさを描く、森絵都初のノンフィクション。

捨て犬、野良犬、迷い犬、保健所から救出された犬。さまざまな境遇の犬たちを保護して、希望者に譲渡する人々がいる。しかし運よく保護されるのはほんのひと握り。多くの犬が捨てられ、毎日、保健所で殺されている。一頭でも多くの命を救おうと奔走している人々がいる一方、軽い気持ちで飼った犬猫を軽い気持ちで放棄する人々がわんさといる。

命を引き受ける。それは覚悟のいることだ。本書は、犬を保護して譲渡するボランティアの人々、厄難から救われた犬たち、彼らを受け入れる新しい飼い主という、犬を中心に据えたエピソード群で、そのええ話に泣ける。でもその一方で、犬をこういう境遇に陥れた人々がいるということを忘れてはならない。

近所に俄か繁殖屋がいる。いったい何頭いるのだろう。犬を散歩をさせている姿を見たことがないし、その犬の鳴き声が朝から晩まで聞こえてくる。その犬をうるさい!と怒鳴る飼い主の声も聞こえてくる。近隣住人としては大変迷惑な話だ。しかしこれをアホ犬と呼ぶのはお門違いで、ちゃんと躾をほどこさない人こそがアホなのだ。犬に責任はない。だけど、うるさい。何とかならないのでしょうか。犬だけじゃなく責任者も。

うちでも犬を飼っていたことがある。世界的に有名なアニメ制作会社の映画にも登場した種類の犬で、白と黒のブチで耳が垂れた犬。どこかの家では101匹も飼っているらしい。子犬の頃はわんぱくで可愛かった。しかし元々が猟犬なので成犬になると力が強い。散歩に行くと飼い主はぐいぐい振り回されることになった。散歩の時に犬が喜ぶので飼い主は走り、犬は散歩イコール走ると思い込んだからだ。ただ単に飼い主がアホだったのだ。

そんな元気な犬にもやがて衰えがやってくる。歩けなくなり、寝たきりになって、ついには何も食べられなくなった。そして眠るように息を引き取った。あれもしてあげれば良かったとたくさんの後悔をした。うちに来て幸せだったかのかを延々と考えた。だが、ベストではなかったかもしれないが、命を引き受けたその責任は果たしたと思った。その悲しさを経験して、もう犬は飼わないと思った。

しかし、現在の我が家には猫さまが二人いるのである。懲りない人だ。彼らは、拾われて、そして迷い込んできた。昨年までもう一人先輩がいたが、無事に看取ることができた。その時にも思った。もう飼わないと。自分には、人と犬猫の良縁があればいいなと出会いを願うことしかできない。今はこの二人で精一杯。たくさんの愛情をいっぱい注いであげよう。そして時々ぷにぷにした肉球をさわらせてもらおう。亡くなってから後悔しないように。

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森絵都
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    2009

05.17

「ほんじょの天日干」本上まなみ

ほんじょの天日干。ほんじょの天日干。
(2001/09)
本上 まなみ

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今度のほんじょはカメラでGO!女優・本上まなみカメラマンになる。月刊誌・BOMB連載『ほんじょのピンボケ主義。』のほか、撮り下ろし写真&書き下ろしエッセイを収録。《本の帯より》

ふだんエッセイは読まないし、どちらかといえば苦手だし、ましてやタレント本なんてまったく興味がない。でも彼女だけは別。それは本上まなみ。その存在自体が癒し効果バツグンで、文章もかわいらしい。今回は、友達に薦められて買った一台のカメラをきっかけに、「へもカメラマン」となってあちらこちらを写し、その写真に文章を添えたフォト・エッセイになっている。

そういう一冊なので本の紹介がしにくい。まずメインのフォト・エッセイ。テトラ水槽を乗っ取った肉食魚、ネコおばさんとネコ、作った料理、大好きなシロフクロウ、季節の植物、そして、猫、猫、猫。写真のことはよく分らないけれど、被写体を見る目線がどこかずれていて、それが本上まなみらしくって、癒されてなごんでしまう。その後は、世界の名所を背景にマイグッズの数々をパシャリ。撮影場所は東武ワールドスクウェアだそうで。

そして彼女のエッセイでは御なじみの旅行記。今回はタイごはんとバリ料理教室。辛い料理を食べて「からっ!」と言うだけではなく、素材の表現が瑞々しくて美味しそう。例えば、ひょろひょろやまんまるのナス、うぶ毛の生えたトマト、ピンクや赤の不思議なフルーツなど、野菜やフルーツを見てもなかなかこういう元気さが伝わる言葉は浮かんでこない。その表現力に羨望の目を向けてしまう。そしてまた、次の本へと手が伸びてしまう。

ふわふわした時間が心地良く、ほのぼのとした文章に癒される。そんな一冊です。


本上まなみさんのサイン

本上まなみ

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    2009

05.16

「こいしり」畠中恵

こいしりこいしり
(2009/03/27)
畠中 恵

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「あのね、この子猫達、化けるんですって」お気楽跡取り息子・麻之助に託された三匹の子猫。巷に流れる化け猫の噂は、じつは怪しい江戸の錬金術へとつながっていた!?町名主名代ぶりも板につき、絶妙の玄関捌きがいっそう冴えながらも、淡い想いの行方は皆目見当つきかねる麻之助。両国の危ないおニイさんたちも活躍するまんまことワールド第二弾。《本の帯より》

「こいしり」
名主高橋家の一人息子でお気楽者の麻之助は、なんと祝言をあげることになった。お相手は野崎寿々。武家の出であった。その婚礼当日、悪友・清十郎の父にして隣町の名主源兵衛が卒中で倒れてしまった。その寝ついた源兵衛が後妻のお由有と六つの幸太以外に気に掛かること。それは昔訳ありだったふたりの女のことだった。元筆屋の娘お鶴の消息は、同じく悪友で同心見習いの吉五郎に頼み、元奉公人のお伊予は、麻之助と清十郎が探すことになった。

他に、「みけとらふに」では、化けるという子猫三匹の噂を探ると、まったく別のものが三つ飛び出してきて、「百物語の後」では、百物語の会に出席した全員が掏りにあったと、吉五郎が麻之助と清十郎に語り、「清十郎の問い」では、落とし物ひとつに対し落とし主がふたり、よりによって同じお守りを二人が無くし、「今日の先」では、大岩屋は不治の病なので遊び倒したいといい、姪は仮病で伯父が遊ぼうとしているといい、甥で店の手代は主人の病を口実に親戚が店を乗っ取ろうとしていると、三者三様の思いが交錯し、「せなかあわせ」では、麻之助とお寿々の元に、迷惑な手紙が舞い込んできて。

お由有への気持ちを心に秘めた麻之助。そこに源兵衛が亡くなり、後妻のお由有は若くして寡婦になった。その少し前に、麻之助はお寿々という伴侶を迎えた。夫のいたお由有が独り身になったとき、独り身であった麻之助には連れ合いができた。不穏な気配?と善からぬことを期待したが、あったのはお寿々の思い違いのみ。麻之助とお寿々は夫婦円満。これにちぇっ!とガッカリしている自分がいた。

そういうことがあったからか、前半の作品はまったり気味で少々退屈だった。しかし中盤の「百物語の後」という毛色の変わった作品が箸休めになったのか、続く「清十郎の問い」はとても面白く、次の「今日の先」でも面白さは継続し、最後の「せなかあわせ」でまた、なんだかな~と最初に思ったところに戻ってしまった。ここにきて麻之助の今の気持ちをわざわざ確認する必要ってある?前作であれだけ引っぱった麻之助とお由有の関係を無視したことに対して、作者としても疚しさがあったのではと想像を逞しくしてしまう。

それに前作では影が薄かった吉五郎が今回は前に出たと思ったら、今度は清十郎が影を薄めている。悪友トリオのバランスが悪いな~。さらに麻之助が可愛がっていた出自に曰くありげな幸太に至っては、ほとんど登場もせずに、猫のふにがその居場所を乗っ取っている。確かにふには可愛いけれど、前作をなかったことにしているようで、そこに違和感をすごく感じてしまった。

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畠中恵
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    2009

05.15

「待ってる 橘屋草子」あさのあつこ

待ってる 橘屋草子待ってる 橘屋草子
(2009/02/05)
あさの あつこ

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深川元町にある料理茶屋「橘屋」への奉公が決まったのは、おふくが十二歳になったばかりの春だった。奉公の話が持ちあがったとき、おふくは心底、嬉しかった。無給同然の住み込みとなるが、三年を過ぎれば働きに応じた給金を与えられる。自分が家族の生活を支えられる。気働きには自信がある。身体を動かすことを厭う気はさらさらない。それに橘屋は名の知れた料理茶屋ではあるし、家族の住む裏店に近い。一度奉公に出てしまえば、薮入りの日にしか帰ることはできない。それでも、帰る家があるということは心強かった。

本の帯を見て、これは十二歳の少女、おふくの物語だと思い込んでいた。だがすべてがそうとは違った。子を亡くしたおしのは、隣に住む虐待を受けている少女に我が子を重ねるという「小さな背中」、亭主が倒れて金がいるお啓に言い寄ってきたのは元許嫁の若旦那という「仄明り」、おそのが再会したのは、逃げるように長屋を去った幼馴染の弐吉でという「残雪のころに」、不自由な脚と小さな身体、三太の母は去り、父は酒に溺れてしまった「桜、時雨れる」、待ってるおふくに、待ち人が見つかったと幼馴染が駆けつけてくる「雀色時の風」、病に伏せたお多代と、立派に成長したおふく「残り葉」。

一見ばらばらの作品のようだけど共通する部分がひとつだけある。それは「橘屋」の仲居頭お多代が関わってくるということ。お多代の叱咤や注意は、いつも的を射て、納得できることばかり。優しくはない。温かくもない。だけど底意地が悪いわけでも陰険なわけでもない。各編の主人公たちは、待っていたり、代わりにしたり、流されかけたりする。そうして心がぶれて危ういところにお多代が現れ、そのお多代の言葉に現実と向き合う勇気をもらっていく。

他人のせいにするんじゃない。自分で生きていくしかない。甘えてはいけない。もたれかかってはいけない。頼り切ってはいけない。前に進むしかない。考えてもせんない。生き場所はここにしかない。誰かを待ちながら生きたりしない。生きることで精一杯の人たちは、それぞれに決意していく。十二歳だったおふくもまた、「橘屋」に拾ってもらった恩を背負って生きていくことを誓う。

今では考えられないような悲壮な決意だけど、この時代の弱者は何もしなければ飢えるしかない。働かない者は食べていけないし、働いてもギリギリの生活。病に伏せれば休業手当がでるはずがなく、失業保険も年金もない。一寸先は闇。だから必死に毎日を生きる。しかし、実際の江戸っ子は、宵越しの銭は持たないという言葉があるように、真面目に働かなかったと江戸時代の考察関連の本で読んだことがある。それはそれとして、これはフィクションであって粋な作品であることは間違い。面白かったです。


あさのあつこさんのサイン。

あさのあつこ

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あさのあつこ
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    2009

05.14

「風をつかまえて」高嶋哲夫

風をつかまえて風をつかまえて
(2009/03)
高嶋 哲夫

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緑の丘、紺碧の海、青空に燦々と輝く太陽。極めつきは、丘の上で回っている白い風車。印象的な絵だ。町立小学校四年生の女子児童が、ふるさとを描こうという文部科学省主催の絵画コンクールで、文部科学大臣賞を受賞した。この絵が全国紙に紹介されてから、東京にある数社の観光会社から、町の観光課に問い合わせがあった。しかし問題は、この町に風車がないことだ。なんとしても風車を造りたい。町長の言葉に議会は動いた。

母親の葬儀の日に父親と大喧嘩をして、優輝は家を飛び出した。それから七年がすぎている。幼なじみの由紀子と久しぶりに再会したことをきっかけに、優輝は家に帰ってみることにした。北海道南西部、日本海に面する内知町。土地は広いが、これといった産業はなく、若者の多くは高校卒業と同時に町を出て行く。典型的な、高齢化の進む過疎の町だ。この町で、優輝の父、東間真二郎は鉄工所を経営していた。バブル期は従業員が十名以上いたが、現在は優輝の姉を含め、三人で細々とやっている。

財政破綻寸前の内知町は、起死回生の町おこしとして、風車を造ることになった。白羽の矢が立ったのは、町に一つだけある鉄工所。東間鉄工所だった。技術的にも難しいし、なにより予算に問題があった。だが、町の鉄工所が風車を造ったなんて、聞いたことがない。町が造る風車の制作は、東間鉄工所がやることになった。しかし、人手不足は決定的になっていた。そこにかつて造船所で働いていた優輝が帰ってきた。

ちゃんと回ったし、発電も出来た。しかし台風の通過で、タワーは土台のコンクリートを掘り起こすように倒れ、下敷きになった姉は片足を失った。町議会も尻込みした。だが、東間鉄工所で、再び風車造りが始まった。今度は、観光用なんかじゃなく、事業として成り立つ風車を造る。電力会社に電気を売って、将来的に内知町に数十基単位で風車を設置する。東間鉄工所は失敗を経験地として、町に頼らずに独自の風車造りに乗り出した。

町おこしだとか、物造りだとか、地味で退屈になりがちなテーマーを扱っているが、本書はそのラインを見事にクリアしていたと思う。ただ、一度目の失敗までは少し長かったけれど、勉強期間と捉えれば後の再挑戦に生きる布石にはなっている。それと作品の性質上、設計や資金集めなど、そんなに上手く行くはずないというご都合な部分は多々あった。でもこれは仕方がないと割り切るしかない。そういう作品なのだからと。

それよりも、父と子であったり、姉と弟であったり、恋人や助けてくれる人、足をひっぱる町議会の人たちといった人間関係で読ませる作品だ。そんな優輝たちは、はたして国内初の風車造りに成功したのか。それは自分で読んで確かめて欲しい。とても面白く、町工場も捨てたものじゃないと思わせる作品だった。なんたって、今では町工場が人工衛星まで打ち上げようとしているのだから。

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    2009

05.13

「ヨコハマB-side」加藤実秋

ヨコハマB-sideヨコハマB-side
(2009/03/24)
加藤実秋

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街頭ティッシュ配り、カラオケボックスの店員、見習い美容師、屋台のサンドイッチ屋にお笑い芸人の卵…横浜駅西口繁華街・ビブレ前広場には、さまざまな人が行き交い、出会う。ささいなトラブルは起きても、刺激的で熱気に溢れた空間として愛されている。近頃、“住人”たちが夢中なのは「パニッシャー」と呼ばれるプチ・テロリストの噂。さらに、広場での日常の根本を揺るがす大問題が勃発した…。自分たちの居場所を守るため、若者たちが立ち上がる。とびきりクールでちょっぴりトホホな若者たちが突っ走る…いまが“旬”の青春群像ミステリー。《出版社より》

パニッシャー。横浜の街のあちこちで謎めいた事件が起きていた。被害者は不良少年、主婦、ホストと職業、年齢、性別ともバラバラ。失神させられて拉致され公園や動物園などに運ばれ、数時間後に発見されるというパターンが多く、ケガはないが、意図不明の笑える、被害者にとっては屈辱的なポーズを取らされることが特徴だ。さらに、必ず手首にアルミ製のおもちゃの手錠がはめられている。警察は容疑者さえ見つけることができず、犯人はいつしかパニッシャーと呼ばれるようになった。ビブレ前広場の常連たちは、パニッシャーの話題で賑わい、各編で登場する主人公たちはリンクしてリレーしてゆく。

ティッシュ配りのチハルは、使えない山田を助手に失踪した沙織捜しを始め(「女王様、どうよ?」)、サンドイッチとハンバーガーの屋台をしている隼人は、夫婦同然に生活していた友美に出ていかれてソースのレシピが分からなくて困り(「OTL」)、美容師見習いのユカリは、カットモデルになった真悠子このことで気づけば突っ走っており(「ブリンカー」)、カラオケ店でバイトする航平は、いつも一人で通ってくる女子高生の亜衣が気になり(「一名様、二時間六百円」)、漫才コンビを組んで三年目になるミチルと朝子は、メジャーになりたくてテレビ番組のやらせに協力してしまい(「走れ空気椅子」)、配送スタッフの光治は、パニッシャーの被害者を発見し、事件検証サイトの管理人たちから突撃取材を受ける(「ヨコハマフィスト」)。

安易な展開だとか、ミステリとしては物足りないとか、欠点をあげれば目に付くところはあった。しかしそれを差し引いても面白かった。実際にこれまで読んだ加藤作品の中で一番好きだった。開花した才能がティッシュ配りだった女の子や、同棲相手に頼りすぎている男や、集中すると周りが見えなくなる女の子と、みんなトホホな若者たちだけど、憎めなくて、底に熱いものを持った人たちだ。その熱いものがほとばしる瞬間が好ましかったし、いい加減な生活をしているように見えても、まだ捨てたものではないという救いに希望が持てた。

チャラチャラした若者でもお年寄りに席をゆずる人はいるし、階段の登り降りに困るママがいれば、ベビーカーをそっと持ち上げる人もいる。大人の方が見て見ぬ振りしているんじゃないの。確かに見た目はおっかないし、大概はマナーのなっていないやつらが多いけど、そういう優しい風景は若者の方が多いような気がするのは自分だけでしょうか。お礼を言われて、照れくさそうに去っていく若者に拍手を送りたい。そして自分もまたそういう人であり続けていたい。

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加藤実秋
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    2009

05.12

「ロミオとインディアナ」永瀬直矢

ロミオとインディアナロミオとインディアナ
(2009/03)
永瀬 直矢

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真理はB級アイドル系の女子高生。真理の部屋からの見晴らしは抜群だ。窓の外に遮るものがなにもない。窓の外、水を湛えた濠の向こうの古墳。千五百年前から変わらない風景。真理はブログをやっていた。そこにインディアナというハンドルネームで、自分が見られているかのようなコメントが書き込まれた。ひょっとしてストーカー? そのインディアナは、古墳の森から光でかちかち合図を送ってきた。一体そこで何をしているのか。彼は歴史を書き換えることになるかもしれない発掘をしているという。

真理のことが好きな倉内とともに、古墳に入れるのかを調べてみた。その形跡はあった。さらに、夜中に不審者が目撃されたと警察がやって来た。ブログを介してやり取りを続ける真理とインディアナ。その間に、友人の真樹は中絶するし、倉内は告白してくるし、インディアナらしき人物と道ですれ違うし、今更インディー・ジョーンズに嵌るし。そうしたところに、今夜ここを出るので見つけた副葬品を確認して欲しいとコメントが寄せられた。

ネイティブな大阪弁の会話文で読ませる女子高生の日常。古代史の謎に期待したが、それとは違う内容の作品だった。それと自分も大阪人だけど、この大阪弁は若干読みにくかった。でも先行きが読めない展開で、今風だけど、いい意味で裏切られた作品だとも思った。高校生の頃って、親や先生のような大人たちと若者はどこか歯車が噛み合っていない。思い込みで勝手に納得されたり、必要のない余計な注意をしてきたりで、それがとても面倒臭いし腹が立つ。そのズレが巧く表現されていたように感じた。

その一方で、同時収録の姉妹編「ジュダイの福音」は、先のインディアナ側の視点で描かれた作品になっている。そこに古墳があるからと、柵を乗り越え、壕をカヤックで渡り、古墳に侵入した若き考古学の徒の大冒険。こちらはインディー・ジョーンズとスター・ウォーズのミックスで、古代遺跡である前方後円墳の横穴式石室に入り、そこには副葬品があって、突然危機訪れるというドキドキとワクワクの手に汗握る作品だ。

若い頃って多くの人が大なり小なり冒険に憧れる。廃屋や潰れた工場跡に侵入した経験のある人もいるだろう。廃墟巡りも流行っていると聞いたことがある。さすがに古墳はダメだけど、そういうものに興味があればきっと楽しめる作品だと思う。そこに古代史の謎というスパイスを散りばめ、若者の青さもブレンドされて、面白くほろ苦い冒険譚になっている。個人的には、表題作よりもこちらの方が好みだった。ただひとつだけ注文が許されるなら、真理との繋がりが欲しかったな~。でも面白かったです。そしてラノベを読まれる方におすすめ。

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    2009

05.11

「極北クレイマー」海堂尊

極北クレイマー極北クレイマー
(2009/04/07)
海堂 尊

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北海道の極北市は巨大赤字にあえいでいた。土日祝日しか動かない遊園地。雪が積もるとリフトが埋まり閉鎖するスキー場。そして極北市民病院である。その赤字の市民病院に、外科医八年目の今中は非常勤としてやってきた。この市民病院は計四人の医師で患者を診ることになる。外科は今中がひとり。内科が室町院長と研修医の後藤。市民から頼りにされる産婦人科の三枝だけが、この市民病院の最後の砦だった。

というのも、院内は不衛生でカルテもずさん、後藤は不良研修医、人望のない赤鬼院長とコマネズミの事務長は犬猿の仲、薬局の団子三兄弟はテレビのお守り、市役所の赤鼻加藤課長は話にならない。きんきん声の角田師長、不機嫌な香川主任、百キロ近いカーラー娘亀井看護師の外科病棟三役は、「ここにはここのやり方がある」を崩さない。鼻っぱしらの強い並木看護師だけがまともな存在か。

今中は病院を改革しようと意気込むが、病棟批判並びに看護師批判を酔って喋ったため、病棟中のナースから総スカンを食らってしまった。病院のマドンナ事務員、松田美代子も好意的だった態度を微妙に変化させた。そこに厚生労働省から派遣された皮膚科の姫宮がやって来た。姫宮の滞在は三日でしかなかったが、旧弊だったり悪弊だったいくつかの問題が、跡形もなく消え去った。

その一方で、良心的な産婦人科医の三枝が担当した手術中の不幸な事故を、医療事故にしようとする意図的な動きがあった。病院側と遺族とは話がついていた。だが、医療ジャーナリストの西園寺さやかは、その遺族を訴訟へと導こうと巧みに誘う。そして三枝部長は逮捕された。この黒幕の狙いとは何か。破綻した市民病院の医療崩壊を再生できるのか。

という内容なんだけど、ぼやけた印象を受けた。破綻した地方の現状や、崩壊しつつある医療の現場としては分かりやすい。だけど元が雑誌連載の影響なのか、エピソードを繋げたようなばらついた構成になっており、全体のバランスが悪かったように思う。西園寺さやかの暗躍場面や、厚労省の天下り団体の病院評価の場面など、場面展開の飛び方が唐突すぎてそこにも違和感があった。

それに投げっぱなしになったまま終わっている部分があるのも気になった。三枝逮捕に対しては清川の反論があり、元が誤認逮捕だから結末は想像できる。この清川の登場もまた唐突で違和感はあったがまだ納得できる。しかし偽装された役所の内部文書の行方や、警察権力の横暴、螺鈿迷宮で生き残った人物だろう西園寺さやかの謎の行動など、どうなったのだろうともやもやが残った。

どうでもいいことだけど、頼りなかった世良さん偉くなったのね。速水も極北救命救急センターにいるし、極北市監察医務院の南雲という怪しげな人物も登場した。これは北海道でも舞台が広がりつつあるのでしょうか。その詳細が知りたいと一番思った。田口&白鳥コンビがベストだけど、すっきりしないのは嫌なので、終わっていない事件を早く解決しておくれって感じでした。

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海堂尊
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    2009

05.10

「C&Y 地球最強姉妹キャンディ」山本弘

C&Y 地球最強姉妹キャンディ  大怪盗をやっつけろ! (カドカワ銀のさじシリーズ)C&Y 地球最強姉妹キャンディ 大怪盗をやっつけろ! (カドカワ銀のさじシリーズ)
(2008/12/26)
山本 弘

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竜崎知絵と虎ノ門夕姫が出会ったのは、六月の晴れた日だった。その日、新しいパパに会いたくなくて、公園で遊んでいた知絵を、怪盗アラジンの部下が誘拐した。車で逃走する犯人たち―追いかけてくるやつなどいないと思っていたのに、窓の外を見ると、ローラースケートに乗る女の子の姿があった!!「逃げるってことは…よーし、悪人と決定!」信じられないほど元気で、このちょっと変わった話し方をする夕姫こそが新しいパパの娘、知絵の新しい妹だった。《本の折り返しより》

冒険家の父と世界中を旅してきた野生児の夕姫の活躍により、知絵誘拐は未遂に終わった。誘拐しようとしたのは、少し前まで世界一の怪盗と呼ばれていたアラジン三世の手下、髪を赤に染めた女ピクルス、金髪で背の低い太った男オニオン、髪を緑に染めて逆立てている男ピクルスの三人組。これってヤッターマンのドロンジョ一味? さらに、世界一の怪盗の名声をあっさりうばった怪盗シュヴァルツシュターもまた、知絵の誘拐に加わった。

竜崎知絵は、十一歳にして大学の先生をしている天才少女。世界平和のことを考え、極秘裏にパラライズ(麻痺)光線、略してP光線を発明していた。だが、これを悪用すれば、武器として戦争に使われるかもしれない。悪人たちの目的は、このP光線にあった。世界一頭のいい女の子という姉の知絵と世界一強い女の子という妹の夕姫。知絵の新発明が怪盗に狙われてしまったことから、地球最強の姉妹の大冒険が始まる。

自動車VS未来型ローラースケート。ステルス機と戦闘機〈ナッター〉による海の上の空中戦。空飛ぶ要塞〈トリプル・ベルーガ〉の出現。パワーアシスト機構を内蔵したタヌキスーツ。世界最大の翼竜を再現したロボット。空飛ぶ潜水艦。児童向けとあって、夢のある小道具がぽんぽん登場する。そして怪盗シュヴァルツシュターの驚きの正体。さらにチーム・キャンディの結成。そして、宇宙へ。

正義の味方は悪に勝つけれど、自分たちで裁くことはしない。わたしたちは警察じゃない。ここがこの作品の美点だと思う。また悪人たちにも「人を殺したりしない」という自分の信念があって、アラジン三世は別として、ドロンジョ一味?の負けに対する潔さも好感が持てた。また最新の発明にしても使い方によっては戦争の道具になる。いわゆる児童書だけどメッセージ性があり、大人も十分に楽しめる娯楽作品だと思った。

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    2009

05.09

「優しい音楽」瀬尾まいこ

優しい音楽 (双葉文庫 せ 8-1)優しい音楽 (双葉文庫 せ 8-1)
(2008/04/10)
瀬尾 まいこ

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表題作「優しい音楽」
長居タケルは、見知らぬ女の子から駅でいきなり声をかけられた。鈴木千波です。翌日も、その翌日も、彼女は駅で僕を探していた。僕に興味があって、僕に近づきたいと思っているのは分かる。だけど、恋している様子はない。いまいちわからないけれど、なんとなく話すようになり、いつの間にか僕の方が好きになっていた。そして、僕は千波と恋人になった。だが千波は、タケルをなかなか家族に紹介しない。

千波は、そんな気がないのに、今日から恋人っていうのは初めてのことだった。だけど、タケルと恋人になるのが一番適切だということはわかる。存在だけを確かめていたいなんて甘い話が通るわけないし、恋愛感情なしに、ずっと一緒にいてくれというのはとても虫のいい話だから。会うほどに、仲良くはなったし、気心は知れていった。だけど、恋人になるのは思った以上に困難だった。

「タイムラグ」
平太は深雪の恋人だ。だけど、平太には奥さんと八歳になる娘がいる。奥さんと旅行に行くからって、子どもを恋人に預ける? いくらなんでも、これはないだろう。しかし、深雪が平太の頼みを断れたことは一度としてない。いろんな手段を以てして、平太は諸々のことを深雪に押し付けてきた。結局押し切られて恋人の娘を預かることになったけど、大丈夫だろうか。その佐菜は一回も行ったことがない祖父の家に行きたいと言い出した。

「がらくた効果」
拾ってきちゃった。はな子が、章太郎の姿を見るなり言った。はな子と一緒に暮らしはじめて、一年以上になる。付き合っている時には気づかなかったけれど、はな子はものすごく物好きだということがわかった。次から次へといろんなものに手を出したがる。今回はなんだろう。はな子の呼びかけに和室から出てきたのは、まったく知らないホームレスのおじさん、元大学教授の佐々木さんだった。

千波がタケルに近づいた動機はナンデスカ? 「優しい音楽」は、ここにミソがあるラブで優しい作品。確かにあそこに薬を塗ってもらうのは親や兄弟には無理がある。恋人ならではのやり取りに、でへへとなった。親子揃ってものを頼むのが上手い「タイムラグ」は、胸がきゅうと締め付けられた。娘ちゃんが健気だ。愛人もいい人すぎる。それと比べて親父はよう。「がらくた効果」は、絶対におかしなシチュエーションがふつうという変な作品。でも佐々木効果はてきめんで、不思議系のはな子もいつの間にか気にならなくなった。三話とも不思議な設定の物語だけど、温かな気持ちにさせてくれる一冊だった。

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瀬尾まいこ
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    2009

05.08

「くまちゃん」角田光代

くまちゃんくまちゃん
(2009/03)
角田 光代

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10人いれば10通りの恋があり、10通りの失恋がある。それが恋なのだ。四回ふられても、私はまた、恋をした。五回ふられたって、また恋をするのだろう。なんてことだろう。あんなに手痛い思いをしたというのに――。ある恋が、人生をがらりと変えることもある。こっぴどくふられても、どんなに散々な目に遭っても、いつか立ち直って、仕事に、恋に、真っ直ぐに生きるあなたのための傑作恋愛小説。《出版社より》

くまちゃんに会ったそのとき古平苑子は二十三歳だった。出会いは学生時代の友だちで集まったお花見。モチダヒデユキです、と挨拶した男に見覚えがなかった。実は、くまちゃんはただ酒が飲みたくて見知らない人たちに混じっていた。酔いが進むにつれ席が入り乱れ、気がつけば苑子は彼をくまちゃんと呼んで会話していた。彼がくまの絵のついたトレーナーを着ていたからだ。就職した苑子からすれば、くまちゃんはまだ幼稚で無責任でいいんだ、馬鹿なことで笑っていられるんだと思わせてくれた。苑子はくまちゃんに一方的な愛情を注ぐ。だが、くまちゃんは突然姿を消してしまった。

へらへらしたいい加減な奴で、自分でどうしようもないと言い、何ものにもなれなくて、重いなと思った途端逃げ出してしまうようなダサ男。そんなくまちゃんの本当の姿が作品のラストで明かされ、次の作品ではそのくまちゃんこと英之が主人公となって登場し、次の相手と出会って恋に落ちる。そして今度は英之が失恋する。ふった人が、次の作品ではふられてしまう。そんな失恋がリレーする七つの連作短編集。ふられた主人公を可哀相と思い、次はふられてざまあみやがれと思い、なんか忙しい作品だ。

人を好きになる瞬間ってこれまで意識したことがないけれど、作品を読んで思い出したことがいくつもあった。必ずしも好きなタイプを好きになるわけではなく、ないでしょと思う人を好きになることもある。ふとした仕草にやばいと惚れてしまう恋もある。その人のようになりたくてはじまる恋もあれば、人恋しいときに優しい声をかけられて勘違いしてはじまる恋もある。好きだと言われてその気になる恋もある。そのように始まりはひとつではないように、終わり方もまた幾通りもある。そして恋と共に仕事のことや年齢のこと、自分の将来が同時にある。

ここには二十代前半から三十代半ばのいろんな人が登場するので、自分に似たダメさに共感できる人、それは明らかに間違いでしょとツッコミを入れたくなる人、生理的に受け付けない人、応援したくなる人など、様々な人に出会えるだろう。でもまあ、角田ワールドはフリーター文学でもあるから、いい加減に生きている人の方が圧倒的に多い。そこは頑張って働いている人からすればどうなんでしょうね。でも面白かったです。

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    2009

05.07

「さよならの扉」平安寿子

さよならの扉さよならの扉
(2009/03)
平 安寿子

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仁恵は夫の卓巳からメモを渡された。女の名前と携帯電話番号が書いてある。これを渡されたのは、末期のガンと告知された日の夜だった。五年前から付き合っていたそうだ。仁恵に隠したまま、逝きたくない。自分のことは許さなくてもいいが、彼女のことは恨まないでやってほしい。自分は家族を捨てるつもりはなかったし、彼女もそのことは承知していた。

父親の運命を知って後の娘たちは、何かというと涙ぐんだ。だが、仁恵は卓巳と一緒に宣告を聞いたときから一度も泣いていない。ぴんと来ないのだ。卓巳はいなくなったあと家族が困らないように、金を残していく。各種生命保険。死亡による退職金。遺族年金。合計すると、八千万を超えた。でも、志生子には何が残るのだろう。

原口志生子。しおこと読むんだ。卓巳は言いにくそうに低い声で教えた。仁恵のことは、「ママ」「お母さん」それから一番多かったのが「おーい」だったのに。しおこ。卓巳が甘い声で、この名を呼ぶところを想像できない。卓巳はこの人と、どんな風に過ごしてたんだろ。この人、独身なのかな。志生子。あなたは、誰?

それから、卓巳は意識混濁状態になった。仁恵は、何もしなかった。現実から逃げ込み、志生子のことを考え続けた。通夜も告別式も夢の中だった。娘たちも葬式の二日後にはそれぞれの生活に戻り、仁恵だけが取り残された。一人きりの夜、仁恵は志生子に電話をかけた。仁恵は知らずしらず、笑みを浮かべた。そして、友達のように話かけた。

社会経験まるでなしの本妻(48歳)と、デキる独身OLにして夫の愛人(45歳)が、夫の死をきっかけに対面。この本妻のウザさは何だろう。厚顔で不快感なエピソードを一つひとつあげるようなことはしないが、まともな人じゃない。その一方で、愛人の方が遥かにまっとうな人のようだ。本妻の嫌がらせに耐える愛人という図でしょうか。

読んでいると気づくのが、この本妻は常識知らずな子供だということ。当てこすりを愛人に言ってはそのことでハイになり、責め立てている自分に酔って気持ちよくなっている。愛人は本妻の行動の目的がわからなくて、変わった形の復讐だと思いながらも、不倫していた負い目があるので、つい身勝手に押し切られてしまう。

本妻の嬉々とはしゃぐ浮かれっぷりに嫌悪感を覚えるが、次第に麻痺してくるのだろうか、その痛さが滑稽に思えてくるから不思議だ。でも共感なんてものはひとつもない。この人、変。この人、ウザすぎ。はた迷惑な存在で、お近づきになりたくないけど、しかし自分と関わりがないからその無茶が面白くなってくる。でも読む人によっては嫌悪が別れるだろうな~。自分はマルでした。

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平安寿子
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    2009

05.06

「遠くの声に耳を澄ませて」宮下奈都

遠くの声に耳を澄ませて遠くの声に耳を澄ませて
(2009/03)
宮下 奈都

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前作の長編「スコーレNO.4」はそのすべてに惚れてしまった。そんな注目の第二作品は、旅をテーマにした12の短編集。作家によって長編向き短編向きはあるが、この作家は長編も短編もすごくいい。普通の人たちの日常におとずれるある出来事。ある者は、悩み、迷い、戸惑い、煩い、気を揉み、屈託し……、そこで主人公たちはふと気づく。その一瞬に感動がじわっと膨らんでくる。言葉にできない想いに共感する。

専業農家の祖父は、お盆とお正月にしか休まない。その祖父が倒れたと、祖母から知らせを受けたとき、目の前にぱっと広がった光景があった。青い空をバックに高い山がそびえ、湖の畔には赤い花が咲き乱れ、そこに群がるように虫や小さな鳥が羽ばたいている。その鮮やかな映像は、浮かんだときと同じくらい唐突に姿を消した。どこだろう。いつか、確かに見た景色だった――。ラジオにじっと耳を傾けている祖父母の姿を想像すると泣けてくる。一作目の「アンデスの声」からやられてしまった。

他にもいいなと思う作品がいっぱいあった。旅人をじっと待つ「どこにでも猫がいる」は読み進めるうちに切なさがどんどん深まり、方言を聞いてふと初恋を思い出す「秋の転校生」は淡い回想場面が印象深く、衝動で旅に出る「部屋から始まった」は未練との訣別が爽快で、友人の様子が気になる女同士の温泉旅行「初めての雪」とまさかにドキドキする「足の速いおじさん」はその後を想像して微笑み、何かをしてあげたいという気持ちを思い出す「ミルクティー」と「白い足袋」ではその姿と自分を合わせてハッとする。

どこにでもある光景。しかしこの作者にかかるとそれが瑞々しい光景に一変する。どの物語も何気ない日々の出来事をつづっているのに、なぜか一つひとつが優しくて、温かくて、静謐で、真直ぐで、そしてまるで自分のことのように胸にしみ入ってくる。自分も頑張らなくてはと、背中をぽんっと押してくれるようなそういう前向きな気持ちにさせてくれる作品だ。また、瑞穂ってあの瑞穂? 梨香ってあの梨香? 蔵原やみのりや濱岡など、忘れた頃にひょっこり再登場、なんてリンクしているところを見つける楽しさもこの作品には仕掛けられている。

この作品というか、作家・宮下奈都に贈る言葉はただ一つ。ブラボー!

収録作。「アンデスの声」「転がる小石」「どこにでも猫がいる」「秋の転校生」「うなぎを追いかけた男」「部屋から始まった」「初めての雪」「足の速いおじさん」「クックブックの五日間」「ミルクティー」「白い足袋」「夕焼けの犬」

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宮下奈都
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    2009

05.05

「図書館の女王を捜して」新井千裕

図書館の女王を捜して図書館の女王を捜して
(2009/03/24)
新井 千裕

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妻は一年前に他界し、その後、人の世の無常を感じたせいなのか、働く気がしなくなり、会社を辞めた。そして世捨て人みたいな暮らしを始めたが、気紛れに何でも屋を始めた。依頼人の美人はミチエと名乗った。依頼内容はデッサンのモデルになって欲しいというもの。だが、彼女は電話をしてきた時から様子が変で、自分が描くのではなく、初対面らしい画家を連れてきていた。

画家のヤガミが描いたデッサン。それは霊の似顔絵で、ミチエの亡くなった夫が自分に憑いていると言われた。ヒロミチという絵の男とは何度か会った覚えがある。ヒロミチの遺言には、こんなふうにも書いてあったそうだ。取り憑いたその人の心に働きかけて、君のことを好きになるように仕向けてやる。だからその人に面倒を見てもらいなさい、と。

明にその奇妙な体験を話した。借家人の明は目が見えない。その散歩のエスコートもまた何でも屋の仕事で、妻が可愛がっていた犬のパピの散歩に明が加わっただけだった。その明と同居している伊藤という老人がそっと教えてくれた。未亡人の夫の霊が大家さんに憑いていることはないそうです。実は坊ちゃんは霊能者なんです。

読書家だった妻は、図書館は花畑みたいだと言っていた。本が花で、自分は蝶。本から本へ、本棚から本棚へひらひらと舞っていた。書架にある全集を読破すると、ホワイト・ローズという香水の香を付けた白い蝶の栞を挟んでいた。妻は自分のことを図書館の女王だと言ったことがあった。妻の作った白い蝶の栞が、人と人、人と死者を繋いでいく。

本の帯にはミステリと銘打っているが、これをミステリと言えるのかどうか。たぶん、妻を亡くした主人公の喪失感と新しい一歩を読者に読ませたい作品だと想像するが、正直これは一体何なのでしょう。人物造形は浅く、どの人物にも魅力を感じないのに、でも時々くすっと笑わせて、読了後には悪い印象を与えない。ほんわかしてのほほんとした作品だ。

その一方で、主人公を誘惑してくるサチエとの攻防で読ませるのか、霊の存在というファンタジーで読ませるのか、亡き妻のことで読ませるのか、すべてが行き当たりばったりで一本の柱となる太い筋がない。一言でいえば中途半端。一つひとつのエピソードがすぐに弾切れになり、そうすると、違う銃に持ち替える。その繰り返しで気がつけば読み終わっていた。

ただふらふらと彷徨うだけで、後に何も残らない。そんな変てこな作品だった。そして記憶にも残ることはないだろう。あとがきの意図も意味不明。でもこちらは印象に残るんだな。「図書館」というタイトルが気になって手に取ったのだが、これは本好きが「図書館」というキーワードに反応して期待する本ではなかった。みなさま、その点はご注意を。

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