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    2009

09.30

9月に買った本の代金

個人メモです。

総額12.873円

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自分への戒め
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    2009

09.30

9月に買った本

フリーター、家を買う。フリーター、家を買う。
(2009/08)
有川 浩

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あるキングあるキング
(2009/08/26)
伊坂 幸太郎

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オイアウエ漂流記オイアウエ漂流記
(2009/08/22)
荻原 浩

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ヘヴンヘヴン
(2009/09/02)
川上 未映子

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凍土の密約凍土の密約
(2009/09/12)
今野 敏

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漫才ギャング漫才ギャング
(2009/09/18)
品川 ヒロシ

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ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。
(2009/09/15)
辻村 深月

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神様のカルテ神様のカルテ
(2009/08/27)
夏川 草介

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さよならの次にくる<新学期編> (創元推理文庫)さよならの次にくる<新学期編> (創元推理文庫)
(2009/08/30)
似鳥 鶏

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単行本を買いすぎた^^;

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お買い物
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    2009

09.30

「左京区七夕通東入ル」瀧羽麻子

左京区七夕通東入ル左京区七夕通東入ル
(2009/07/23)
瀧羽 麻子

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七月七日にわたしたちは出会った。京都での学生生活も四年目。合コン、どう? 帰国子女でミッション系の女子大に在籍する友人のアリサから、代打を探していると合コンに誘われる。合コンは、七時から三条木屋町の居酒屋で行われた。ひとり遅れて現れた男子は、いかにも数あわせというのが明らかな、やる気のなさだった。花です。龍彦です。たっくんて呼んでいい? ひとめぼれというわけではなかった。でも、ひとつだけ確かなことがある。わたしはたっくんにめぐりあった。

文学部の花にとって数学嫌いの歴史は長い。発端は十年以上も前、まだそれを算数と呼んでいた頃にまでさかのぼる。数学嫌いの花にとって、理学部数学科のたっくんは謎に満ちていた。また彼の暮らす学生寮の友人たち、バイオを研究しているアンドウくん、爆薬専攻のヤマネくんという理系男子と知り合い、タコパ、花火、学祭など、花は文学部ではこれまで経験しなかったにぎやかなキャンパスライフを送ることになる。

どうしてこのひとなんだろうと思う。客観的に見て、異性にもてはやされるタイプとはいえそうにない。目を引くような美男ではないし、話がものすごく面白いわけでも、ことさら気がきくわけでもない。世間一般はさておき、わたしを惹きつけるということにしぼってみても、あまり思い当たる理由はない。しかも、食事も睡眠も極限まで削って数学に没頭するのが普通だとも、その結果体調をくずしてしまうのが別にたいしたことでないとも、その別次元に生きる彼の世界のへだたりが花を苦しめる。

児童書やYAの延長にあるような作品。登場人物たちがとにかくかわいくて、素敵な先輩たちが登場して、自分の決めた将来にちょっぴり不安を感じ、恋に心がときめくと同時に揺れる乙女心が瑞々しい。でも、じっくりと思い返すと、主人公の花は、ちょっと好きになれないタイプだった。交友関係の広さを大事にする余り、付き合っている彼氏をないがしろにして、自分にやましいことがないと反発して、喧嘩別れをしている。そんな考えでは、喧嘩になるのは当たり前。本当の恋をしていないのだから。

そんな彼女が始めて恋をした。自転車の二人乗りデートにわくわくドキドキ。女の影に一喜一憂し、彼が本当のことを打ち明けてくれないことに一途に悩む。そしてたかが数学に負けそうになる。自分自身で壁を作って、いい感じに苦しんでいる。でも周りにいる人の後押しもあって、結局は予定していた場所に落ち着く。甘酸っぱくて爽やか。これぞ青春という感じのハッピーエンドが好きな人には好まれるだろう。ただひとつ。たぶん著者は真面目な方なのでしょう。個人的な要望をいえば、学生らしくもう少し無茶をするぐらいの遊び心が欲しかった。

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瀧羽麻子
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    2009

09.29

「赤ずきん」いしいしんじ

赤ずきん (おはなしのたからばこ)赤ずきん (おはなしのたからばこ)
(2009/07)
いしい しんじ

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あたい赤ずきん。スカうまれのスカ育ち。
犬は飼っているけど、透明な犬であたいにも見えない。
透明な犬の名前はおおかみ。

あたいのずきんは、透明なのはおおかみと同じで
あたいの目、おおかみの目には真っ赤に見える。
それはジローにも真っ赤に見えた。

マグロ船ドンデコスタ丸で出ていったジローを想いつづけ待っている。
あたいはジローに手紙を書く。毎回いろんな思いついたコトを書く。

宇和島でファンタジーな海亀を助けたこと。
両端が見えないくらいバカ長い木が道路に転がっていたこと。
銭湯にいって、ずきんを忘れて帰ってきたこと。

おおかみとバスに乗って旅行にいったこと。
わさび園、日本そば屋、宿の裏の森で迷子になったこと。
ホダカ神社で交通安全祈願をしてもらったこと。

赤ずきんは船にいるジローに手紙を書く。
ジローが帰ってくる日を待ちながら。


文章は物語作家のいしいしんじ
絵は「きょうの猫村さん」のほしよりこ
二人によるコラボ絵本です。

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    2009

09.28

「看守眼」横山秀夫

看守眼看守眼
(2004/01/16)
横山 秀夫

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さまざまな職業の主人公が織り成すミステリ短篇集。ただ、ハズレはないものの、特別抜き出た作品もなかった。しかし安定感と上手さは楽しめる作品集だと思う。

近藤は若い頃から一貫して刑事志望だったが叶わず、三十八年の勤務のうち、実に二十九年間を留置場の看守として過ごした。結果として朝から晩まで多種多様な犯罪者と向き合っていれば、嫌でも刑事眼が養われる。定年を迎え、穴蔵刑事が穴蔵から出て、証拠不十分で釈放された「死体なき殺人」の容疑者を追う。(「看守眼」)

名もなきライターである只野が、大企業の会長の自伝を執筆することになった。老人は自らの殺人を告白する。わしは人を殺したことがある。二十八年前。道ならぬ恋だった。只野は五歳のときに母に捨てられていた。二十八年前という偶然を介して、頭の中で老人と母が繋がった。老人が母を殺し、だから母はあの日を境に忽然と姿を消した。(「自伝」)

家裁の調停委員であるゆき江は、離婚調停に訪れた申立人の顔に見覚えがあった。知人であるなら、規則に従ってこの調停から下りねばならない。だが、ゆき江が一方的に知っているだけのことなのだ。それは当事高校二年生だった娘を不登校に追い込んだ少女だった。仕返しではない。ただ、その後を覗き見たかった。(「口癖」)

県警のホームページがクラッカーに侵入され、ページを書き換えられた。画面が真っ暗で、そこに、フランス語の赤い文字が並んでいる。ホームページの責任者である立原は、侵入手口とアクセス経路を手がかりに、犯人を追う。その一方で、この不祥事がマスコミに嗅ぎつけられる前に、握り潰そうと奔走する。(「午前五時の侵入者」)

外勤記者から整理部に異動してまだ日が浅い高梨は、昨日終わった写真展を今日までやっていると新聞に載せてしまった。写真家は訂正記事を出すように求めてきた。謝罪のため、写真家の自宅を訪ねたが不在。翌朝の朝刊には訂正記事が掲載された。十日後だった。写真家が自宅居間で死体で発見された。(「静かな家」)

倉内は二年前に知事公室秘書課長に抜擢された。事実上、知事直轄部署の長となり、仕えることの醍醐味を骨の髄まで味わうことになった。県知事の権力は強大だ。その下で働く。自分はトップになれないが、トップである知事を補佐し、倉内は夢中で仕えた。だが、ここにきて、知事の信を若い桂木に奪われてしまった。(「秘書課の男」)

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横山秀夫
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    2009

09.27

「ドリーマーズ」柴崎友香

ドリーマーズドリーマーズ
(2009/08/21)
柴崎 友香

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目の前にある世界が、夢のように思える瞬間がある。いくつもの風景からあふれ出す、大切な誰かへのたしかな想い。現実と夢のあわいを流れる時間を絶妙に描く表題作ほか、ゆるやかな日常からふと外れた瞬間をヴィヴィッドに映し出す、読むたびに味わい深まる連作短篇集。《出版社より》

会社の入っているオフィスビルを抜け出し、斜め向かいのビルにあるカフェのいつものテーブル席で、仲間たちに今朝見た夢を語って聴かせる(「ハイポジション」)、引越し先には前に住んでいた人の気配が残っており、眠りそうになると必ず人が動いている音が聞こえてくる(「クラップ・ユア・ハンズ!」)、環状線の車中で友人が語り始めたのは、小学四年生のときに本当は死んでいたかもと疑うほどの不思議な体験(「夢見がち」)、過去の京都の年始と現在の東京の年末、移り行くそれぞれの風景と、交差する記憶(「束の間」)、高層ビルから見る空と地上、インスターレーションの光と闇、レストランの喧騒と静寂。台風近づくある日の出来事(「寝ても覚めても」)、わたしは現実とパラレルに進む、やけにリアルな夢をみる。そこにはいつも、死んだはずの父親が、じっとりと濡れた姿で現れる(「ドリーマーズ」)。

日常に生きる女の子の日々に、ちょっと不思議を加味しましたという短編集。柴崎さんの描く女の子は、ほとんどがちゃんと働いている。でも働くことの苦痛がまったく出てこない。上司の悪口などはあるが、それ以上に、お昼休みやアフターファイブを楽しんでいる。仕事をしている自分よりも、仕事以外の自分を大事にしているようだ。また昔からの友人だけでなく、最近出会ったばかりの友人とも距離感を等しく付き合っている。

同じ話を聞かされる人は、またぁ、という感じで引いているが、初めて聞く人は興味津々で聞こうとする。そこから話が転ぶことによって、距離を置いていた人が突然食いついてきたりする。その瞬間、それまで熱心に聞いていた人はぽかんとする。でも会話は続いている。主人公は楽しいと思ったことを語っているだけ。そのふつうの会話が心地良く、無機質ともいえる街中の描写と相まって、夢のようであっても、生きているということを強く感じる作品だった。

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柴崎友香
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    2009

09.26

「中学んとき」久保寺健彦

中学んとき中学んとき
(2009/07/31)
久保寺 健彦

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好きなんだ好きなんだ。君を思うと機械みたいに反応して鼻血が出ちゃうほど--初めての恋と慣れない性欲がダダモレの関根君に明日はあるか(「純粋恋愛機械」) ある日、何もかもがいやになった修は暗闇に一歩を踏み出す。(「逃げだした夜」) そろばん教室のライバル2人に芽生えた初々しい思い(「願いましては」) 日本一空気を読まない中学3年生鷹野。クラスに漲る負のパワーに彼は--?(「ハードボイルドなあいつ」)人生で一番スケベで、カッコ悪くてバッカみたいで愛おしい、中学3年生男子たちの必死な日々を描く連作集。《出版社より》

「純粋恋愛機械」
三年生になり六人でいるグループができた。ぼくと永島が話しているところへ、湯浅縫子はいつも一人の女子をつれてやって来た。それが森川加奈だった。そこにもう一組の男子と女子が加わるようになった。鈴木英明と、本条未央だ。でも、六人でいるうちに、見えてきた。湯浅が永島ばかりに話しかけるように、鈴木は森川に、本条は鈴木にばかり話しかけた。ぼくはそこに無関係だったけど、座席が森川の隣になってから、すっかり森川に夢中になっていた。

「逃げだした夜」
周は義母の行動のなにもかもが、気に入らなかった。義母にはなじめないけれど、義理の妹はかわいい。しかし、いやなものはいやだった。とりわけいやなのは、父親が変わってしまったことだった。なにかよくわからないけど、もっと激しいこと、もっとすごいことが、この世の中にはある気がする。そんな経験がしたい。いまみたいに、毎日ダラーッとしてるんじゃなく。つまんねえ。いまの状況を変えるために家出しよう。父親も義母も義妹も寝ており、家を抜け出すのは簡単だった。

「願いましては」
南そろばん塾から全関東珠算協議会に出場したのは、中学三年の吾郎、のぞみ、陵太郎。三人とも同じ中学に通っている。吾郎はいつものぞみたちと受験したが、慣れない会場だとひどく緊張した。集中できない。反対にのぞみは、本番に強かった。吾郎がそろばんを続けてこられたのは、のぞみがいたからだ。志望校はそれぞれ別々になるのは残念だが、塾で会えばいいと吾郎は考えていた。ところが、自分の思い違いに気づかされた。卒業したら、塾やめるよ。そろばん自体をやめる。あっさり言われて、二の句がつげなかった。

「ハードボイルドなあいつ」
中学三年生のときは、最悪だった。始まりは一年生の男子が自殺未遂したこと。同じクラスになった鷹野は、芝居がかったやつで変わり者だった。鷹野の位置づけは、クラスの最下位に決定した。事件以降、教師たちは、生徒に対してはれものに触るように腰が引けていた。鷹野に対するいじめが始まり、さらにどんどんエスカレートしていく。おれはずっと傍観してきた。ところが二学期が始まってみると、おれの位置づけは底辺になっていた。そんな中、おれと鷹野は修学旅行をきっかけにパートナーになった。


ウブな男子はかわいいけれど、マセた女子はかなり怖い。最初のグループ内の恋の行方からしてそうだった。一見、初恋にあわあわする男子を描いているようにみえて、実は女子の二面性を描いた作品である。またオチがきっつい。次の家出少年は尾崎豊の世界。漠然とイライラして、ふとしたきっかけでプツンと切れてしまう怖さでしょうか。三話目は一転して爽やか。一服の清涼剤になっている。そして最後はいじめ。嫌な感じだけど、鷹野の強烈な個性により中和されている。だけどやっぱり苦しさはある。今の中学生ってこんな感じなんでしょうか。そうだとしたら、無理して学校なんて行く必要ない、と思ってしまった。思っていたよりかなりグレーゾーンの作品でした。

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久保寺健彦
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    2009

09.25

「ヘヴン」川上未映子

ヘヴンヘヴン
(2009/09/02)
川上 未映子

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四月が終わりかけたある日、僕のふで箱に〈わたしたちは仲間です〉と書かれた手紙が小さく折りたたまれて入っていた。手紙はいやがらせ以外には考えられなかった。二ノ宮たちは僕の斜視を「ロンパリ」と嗤い、あたりまえのように蹴られ、殴られ、走らされたりする。手紙は彼らが見つけた新しい遊びかと暗い気持ちになっていた。ところが手紙の差出人はおなじクラスのコジマというもの静かな女生徒だった。彼女もまた、家が貧乏であること、不潔だということでクラスの女子から苛められている生徒だった。

友達になってほしいの。コジマがなにを言っているのかわからなかったけれど、僕は反射的に肯いていた。その日をさかいにしてぼくとコジマは手紙をやりとりするようになっていた。僕は当然のことながら以前とはまったく違う気持ちでコジマのことを意識するようになっていた。僕はコジマが女子たちに苛められているのを見たりきいたりすることが、どんどんつらくなっていった。僕が苛められているのを見られていると思うのもつらかった。でも僕はいつだってそこから目をそらして、見てみないふりをつづけているだけだった。

僕とコジマは夏休みの最初の日にヘヴンを見に行くことにする。ヘヴンがなんのことでどこに行くのかも気になったけれど、それよりもコジマとふたりで会って、どこかへでかけるということが僕にとっては一大事だった。その一日を過ごした後も、僕はコジマのこと、学校のこと、斜視のことを考える。そして、約一ヶ月ぶりに会うコジマは、両親の離婚のこと、神様のこと、自分が汚くしているのは生活苦にあるお父さんを忘れないためのしるしであることを語る。僕の世界に明るい面をくれたコジマとの友情は、永遠に続くはずだった――。

主人公の僕は日常的に暴力を受けている。暴力を受けるようなことはなにもしていない。なんで、君たちはこんなことができるんだ。どうして、あんな無意味なことができるんだ。誰であれ、誰かに対してこんな暴力をふるう権力はない。僕はいじめの首謀者と行動を共にする百瀬に言葉を投げかける。それに対する百瀬は、すべてのことに意味はないという。誰でも良かった。たまたまそこに君がいて、たまたま僕たちのムードみたいなのがあって、たまたまそれが一致しただけのことでしかないと。

いじめを受けたくないんだったら、首謀者の二ノ宮をどうにかすればいい。自分で身を守ればいいんじゃないか。単純なことじゃないか。殺せるんなら、殺せばいい。したいことをすればいい。誰も君を止める権利は持っていない。でも問題は、なぜ君は殺す動機とかタイミングがじゅうぶんあるのに、いま現在誰も殺していないことだ。とにかく、君はそういったことができないし、したくない。でも僕たちはどういうわけか、殺さないまでも、それができてしまう。そして僕はそれが楽しくて仕方がないという。

その対極にいるのがコジマだ。主人公を仲間と認識したコジマは、クラスのみんなは何もわかっていない、自分たちのしていることの意味がわかっていない、人の痛みなんて考えてないという。だから、わたしたちのこの弱さで、このありかたを引きうけて生きていくのは世界でいちばん大切な強さで、虐げられて、苦しめられて、それでも乗り越えようとする儀式なのだという。コジマはなにか得体の知れない殉教者のような信念を強く持つようになり、少しずつ遠い存在になっていく。やがて決定的な決別のときがくる。

そして僕はたったひとりになる。これまでいたひとつの世界が死をむかえたのだ。僕は新しい世界に一歩を進めるしかない。斜視の手術は成功し、僕が見たその光景は、それは終わりの場所であり、始まりの場所である。世界は見るものによって違う。同じ時を過ごしていても、わずか数十センチ隣にいても、見える光景が違う。倫理や思想、観念や善悪というフィルターを取り除いたとき、その目に映る光景はヘヴンなのだろうか。僕はヘヴンを見ることができたのだろうか。


川上未映子さんのサイン会に参加してきました。そして何かひとこと書いてくださいとお願いしてみました。すると、「うれぱみん」と、読んだ人にだけわかる言葉を頂きました。すごく素敵な言葉です。どういう意味か知りたい方は、48ページを参照してみて下さい。

川上2

他のサイン本はこちらをクリック。→「サイン本」

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川上未映子
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    2009

09.24

「床屋さんへちょっと」山本幸久

床屋さんへちょっと床屋さんへちょっと
(2009/08)
山本 幸久

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宍倉勲は二十代半ばで父が興した会社を引き継いだが、十五年後に敢えなく倒産させてしまった。罪悪感をぬぐえないまま再就職し定年まで働き、もうすぐ「人生の定年」も迎えようとしている。だが、そんな勲の働く姿こそが、娘の香を「会社」の面白さに目覚めさせて―「仕事」によって繋がった父と娘を、時間をさかのぼって描く連作長編。《出版社より》

勲は今年で七十三歳になる。ひとり娘の香が勇の手をひいて、勲の住まいに現れたのは一週間前だ。四十一にもなって子供がいて、自分のことしか考えられないとはどういうことだ。そう言ってやりたいのを勲はこらえた。勇の前でそれはできない。勲は孫の勇と一緒に自分のお墓の下見に出かけることになった。(「桜」)

勲は五年前に繊維会社を定年退職している。隠居の身といえばきこえはいいが失職したようなものだ。香は、十人弱の女性だけの会社を経営している。紹介したい男の人がいるの。娘のお相手は布田透。香より二つ年下の三十一歳、おもちゃメーカー勤務の男だ。勲はお義父さんとまとわり付く布田透とふたりきりで一夜を過ごすことになった。(「梳き鋏」)

海外工場への視察出張に訪れている勲に娘から電話があった。香は昨年、大手の広告会社に就職ができた。ところがボーナスをもらったあと、その会社を辞めてしまった。そして今度、自分で店を開こうかと思ったので、お金を貸して欲しいと言ってきたのだ。企画書を出させてみたところ、その内容は正気とは思えなかった。(「マスターと呼ばれた男」)

結婚したら女は会社を辞めるって決まっていることなの? 十七歳の香は勲に訪ねた。極端にいえばそうだ、と答えかけたが、極端でなくてもそうだった。結婚をして子供ができて、さらには会社で仕事をしている女性を勲は知らない。その後日、勲は既婚者で子供もいる働く女性に出会い、どうしてそれができるのかを教えてもらう。(「丈夫な藁」)

勲夫婦は家出をした娘を迎えに、雪深い田舎町へと列車に揺られやって来た。十四歳の香はなにが気に入らないで家出などしたのか。いつから娘のことがわからなくなったのだろう。あなたにはなにもわかっていない。勲には妻の睦子の目が、そう訴えているように見えた。娘のことも、そしてあたしのことも。(「テクノカットの里」)

今年十歳になる香が、お願いがあると言い出した。夏休みの宿題で、父親の職場を取材し、それについてレポートを提出するのだと言う。香の独占密着取材は本格的で、メモ帳を片手ににらむような視線でいる。これでは取材というより監視。ほとんど尋問である。さらに全体会議に、娘がでていいことになったとき、勲は怯んだ。(「ひさしぶりの日」)

社員達はなにかにつけ、勲を父と比較した。先代はそうなさらなかったでしょう。亡くなられた前社長の意向に逆らうことになります。会社や工場の中を父の亡霊がさまよっている気がしてならない。五年前から社長賞をはじめた。社員の士気をあげる名目であったが、勲にすればそれは父の亡霊をふりはらうための儀式だった。(「万能ナイフ」)

香の父は去年亡くなった。香が社長をつとめる会社は最大のピンチをむかえていた。社員は自分を含めて六人になり、さらに三人辞めてしまった。そこに、父の勲が三十年前に潰したシシクラ製菓の棒付きアイスキャンディを復活させ、限定販売をする企画が持ち込まれた。こうなったらなんだってやってやる。(「床屋さんへちょっと」)

父の事業を潰したという負い目を背負い続ける勲は、誠実に真面目に働きつづけている。そんな父の姿をずっと見つめていたのが、娘の香。結婚したら女は会社を辞めるって決まっていることなの? そう問いかけた少女は、小さい頃から会社で働くことに関心と憧れを持っている。しかし大人になった娘は、何を考えているのかワガママ娘でしかななかった。

尊敬するにせよ、ああいう人になりたくないと嫌悪するにせよ、そこには父の働く背中があったはず。だが、いつの時代の彼女にしても、それが伝わっていないのがもどかしい。さらに大人になるにつれ益々現実離れした痛い女性になっていく。でもいつか気づくことがあるのかもしれない。たとえそのとき分かっていなくても、親の働く姿を見ていたのだから。

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山本幸久
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    2009

09.23

「人類は衰退しました(2)」田中ロミオ

人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫)人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫)
(2007/12/19)
田中 ロミオ

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わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は“妖精さん”のものだったりします。そんな妖精さんと人間との間を取り持つのが、国際公務員の“調停官”であるわたしのお仕事。…なんですが。高い知能を持つ妖精さんのまわりは不思議なことだらけ。理解不能なおかしな道具を創って、わたしの身体を小さくしたり。現場復帰する祖父の助手さんのお迎えに、何度も何度も行かせたり。…そんなこと、報告書には書けません!えっ?わたしが一因?ではないですよ!?お疲れの人類の脳に刺激と安らぎを…。《出版社より》

「人間さんのじゃくにくきょうしょく」
最近、里で奇妙な品が出回っているようだ。投書も来ていることだし、クスノキの里に存在する調停事務所の所長でもある祖父から、わたしは調査するよう命じられた。履くと水がたまる長靴、引いた線が生きているパステル等、妖精道具はどれも不条理・意味不明・不可解なものばかり。そんな中、その計量スプーン違った。そのスプーンのせいで、わたしの身体は小さく妖精サイズになり、妖精的本能が理性を侵食していく。こうなったら、本当に妖精さん自身にあたるしかない。妖精さんに、会いにいかねば。だが辿り着いたところは、絶滅の危機に直面したハムスター村だった。

「妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ」
金缶が郵送されてきた。いつぞや妖精さんたちにかわり応募していた。金なら一枚、銀なら五枚。妖精さんたちの入手したキャラメルは、金の方だった。これは妖精さんのもの。まずは彼らに届けてあげないと。そう思い、おじいさんに外出を告げたところ、今日から現場復帰する祖父の助手を出迎えるよう頼まれた。まだ時間に余裕がありすぎるくらいなので、午前中のうちにいったん妖精さんのところに金缶を届けに行こうと、わたしは事務所を出発した。妖精さんは金缶のお礼にバナナをくれた。さて、助手さんを迎えに行くと、何故か同じところをぐるぐる巡って…。

まず先に謝っておくと、二作目の時間ループものは苦手なジャンル。よって、ついていけなかった。お菓子を食べたいだけのために自らの技術力で特殊なバナナを作り、それをお菓子作りを得意とするわたしに食べさせて、時間がループする妖精の世界に閉じ込めてお菓子を作らせようとする。たぶんこういう内容だと思うのだが、妖精さんの考えていることはよくわからない。それと比べ、一作目の妖精さんになってしまうお話は面白かった。妖精さん言葉がかわいかったし、結構黒い人格を持っているわたしも笑えた。命の危機のたびに現れる「FIN」も小粋だった。二作収録の本書。勝敗でいうと、1勝1負という感じかしら。

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    2009

09.22

「あした咲く蕾」朱川湊人

あした咲く蕾あした咲く蕾
(2009/08)
朱川 湊人

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僕の家に、母の妹がやって来た。二十五歳の美人だ。けれど口を開けばバリバリの関西弁で、のべつまくなしに煙草を吸い、何かにつけて人の神経を逆撫でることを言うのが好きだった。それでも彼女は天使なのだ。美知恵おばさんの不思議な才能。それは僕と母しか知らない秘密。おばさんは自分の“命”を分けてあげることができる人だった。人は誰でも、自分の命を人にあげられたら……と思う時がある。実際にできないからこそ、それを口に出したりする。けれど、おばさんのように、実際にできる力を持っていたら。「あした咲く蕾」

ほかに、雨が降った時だけ、人の寂しさの声が聞こえてくる超能力を持った少女「雨つぶ通信」、その中華料理屋の中華鍋は、人に元気を与える魔法の料理を作る「カンカン軒怪異譚」、この世で一度も会う機会の持てなかった親子は、不思議な形で合わせてもらえるのかもしれない「空のひと」、十歳の夏に彼女がいなければ、きっと氷のような心を持つ人間になっていただろう「虹とのら犬」、退院してから一月もしないうちに、母は奇妙な人変わりをしていた「湯呑の月」、フカシマンの異名を取った彼が、絶対にウソだと思われたくないと親友の私にまで秘密にしていた思い出「花、散ったあと」など、ファンタジックで心暖まる全七編を収録。

別れを根底に据えた作品群だが、読後感の良い作品ばかりだ。自分だけのものにしたかったおばさん、元気をくれた中華料理店の女主人、永遠に愛しているといっておきながら、さっさと逝ってしまった彼、孤独で蔑まれていた自分との訣別、どんな時でも見守ってくれた大好きなおばちゃま、兄弟同然に育ってきた幼なじみ。ふつう別れでイメージするのは、切なさや消失感だと思う。だけど朱川湊人の手に掛かれば、悲しさを一切感じさせず、生前のその人のほがらかな人柄が伝わってくる物語になっているのだ。そして主人公たちは別れを経験し成長してゆく。佳作です。

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朱川湊人
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    2009

09.21

「はむ・はたる」西條奈加

はむ・はたるはむ・はたる
(2009/08/20)
西條 奈加

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孤児ばかりのすり集団の一味だった、勝平、三治、登美たちは、深川三軒町の金貸し・お吟との縁で、今では御家人の長谷部家に見受けされる身。稲荷鮨売りやお吟の手伝いをしながら、次第に働くことの意味を学び始める中、長谷部家の次男で”ふらふら病”と揶揄される、旅暮らしの柾さまが帰ってきた。柾さまは得意の似顔絵で商いをしながら、子供たちと知恵を合わせて様々な事件を解決していくのだが、そのうちに柾さまには忘れられない男女の仇がいることが明らかになる――《出版社より》

勝平ら子供たちは、仲間十五人で掏請やかっぱらいをして食いつないできたが、ちゃんとお上の裁きを受けて、長屋に住めるようになった。それも長谷部の婆さまのおかげだ。御家人の母上で、嫁のご新造ともども手内職に稲荷鮨をつくっている。子供らはその稲荷を商っている。婆さまは十五人の身元引受人でもあるし、大恩人ではあるのだが、口うるさくて厳しくて、しょっちゅう雷をおとす。この世に怖いもんなしの勝平が、唯一頭の上がらないのがこの婆さまだ。

昔の過ちはなにかと後をひく。長屋の大人たちは含みのある目つきで遠くから彼らをうかがって、こそこそと陰口を交わす。それとは逆に子供連中は、からかったり意地悪をしたりする。中でも長治だけは律儀な奴で、毎朝判を押したように悪態をついてくる。その長治がいなくなった。当然、勝平らは疑われる。だが勝平は、子供に弱い。困っている小さなものは、己が守るべき子供だと思っている。勝平は長治を探そうと言い出した「あやめ長屋の長治」。

盗人の子だからと少女は疑われ、神棚から盗まれた猫神さまを探す「猫神さま」、長谷部家の跡取り息子が武士をやめて町人になると言い出し、御家人は町人から金を騙しとっていた「百両の壺」、仕出し屋に新しくきた内儀はならず者に脅されていて、内儀は誰よりも倅に知られたくないと耐えている「子持稲荷」、言葉がしゃべれずに知恵が足りないと思われていた花だが、聡明だと分かった時と前後して、行方がわからなくなってしまった「花童」、かつて柾さまの剣術の師匠を謀って殺し、一切の財をうばって逃亡した男女を見つける「はむ・はたる」。

前作「鳥金」の続編になる本書だけど、連作短編になったためか全体的に薄味になっている。各編によって主人公が次々とバトンし、孤児の一人ひとりにスポットが当たるものの、代わり映えのしないエピソードばかりで、設定が生かされていないような気がした。またスーパーバイザー役の柾さまにしても、扱いがぞんざいで、小出ししては引っぱっていた敵討ちですら、あっさりと片付けてしまう。ええっ!と、こちらが驚くほどに。しかもエンディングが前作とほとんど同じって、これにはさすがに呆れてしまった。前作の出来が良かっただけに、残念な第二作だった。

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西條奈加
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    2009

09.20

「ここに死体を捨てないでください!」東川篤哉

ここに死体を捨てないでください!ここに死体を捨てないでください!
(2009/08/20)
東川 篤哉

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見知らぬ人間が突然有坂春佳の部屋に飛び込んできた。謎の女は無言のまま春佳のほうを目掛けて突進した。恐怖にかられた春佳は手元にあったナイフを突き出した。なにが起こったのか。謎の女はナイフで刺されて死んでいた。「死んじゃった…あたしが殺したの」有坂香織の元に妹の春佳から連絡があった。しかも妹は動揺のあまり仙台に逃亡していた。事情はどうあれ、妹の電話を受けた直後から、香織の中で答えは決まっている。死体を、妹の部屋に置いておくわけにはいかない。問題はその先だ。死体を捨てにいくのは、女ひとりでできる作業ではない。それから、死体の入れ物も必要だ。香織はたまたま路上で廃品回収をしていた馬場鉄男を巻き込むことにした。

一方、隣のビルで探偵事務所の看板を掲げる鵜飼杜夫も悩んでいた。約束の時間になっても依頼人が姿を見せない。それもそのはず。依頼人の女性は死体となって香織たちに捨てられるべく車に積み込まれていた。鵜飼に判ることは、相手の名前が山田慶子ということ。彼女は猪鹿村のクレセント荘というペンションで事件発生の予感を覚えていること。彼女はそのことを警察ではなく探偵の力を借りて処理したいと考えていること。とりあえず鵜飼は弟子の戸村流平とビルオーナーの二宮朱美と共にクレセント荘へ向かう。この三人組と、死体と一緒に車も処分してしまったために帰る車をなくした香織たちは、当のペンションで顔を合わせてしまう。そして殺人事件が発生する。

これは「烏賊川市シリーズ」の何冊目にあたるのでしょうか。でも順番に読む必要はありません。どこから読んでも一級品のユーモア・ミステリですから。ベタな笑いあり、吹き出してしまうような笑いあり、ツボにはまって笑いすぎて涙が出るような笑いあり、とにかく作品の中核にあるのは、とっておきのお笑い。作品はミステリなので、登場人物たちはさまざまな思惑を持って自由勝手に動き回る。利己的とか、自分勝手とか、義憤に駆られてとか、流されてとか、そういうあらゆる状況で見せる等身大、あるいは無知の上塗り。こいつ馬鹿?という一言で片付けられない、自分にもありそうな失態が笑えるのだ。

それプラス、探偵の鵜飼と刑事の砂川警部による張り合いと、奇妙な友情が作品の絶妙なコントラストになっている。どちらも人の迷惑を顧みない似た者同士なのだ。悲惨なのは、鵜飼の弟子の戸村流平と砂川警部の部下の志木刑事にある。こちらは定番と言えるやられキャラだ。彼らを襲う悲惨な出来事のあれやこれについては、突然くると判っていてもついつい笑ってしまう。そのように同じタイプが登場するにも関わらず、ちゃんと共存できるところがこの著者の巧みなところだ。東川篤哉という作家は毎回期待に答えてくれる。肩肘張らずに読めて、おおいに楽しめる。たくさんのユーモア系作家がいる中でも、貴重な存在だと思う。

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東川篤哉
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    2009

09.19

「ダブル・ジョーカー」柳広司

ダブル・ジョーカーダブル・ジョーカー
(2009/08/25)
柳 広司

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風戸中佐は、陸軍参謀本部から極秘の呼び出しを受けた。風戸は陸軍内における秘密機関の必要性を説いていた。わが帝国陸軍内には、秘密諜報員養成所並びに秘密諜報機関がすでに存在している。陸軍ナンバー2である阿久津中将は、前置きもなく、直截にそう言った。通称〈D機関〉。実質的には発案者である結城中佐が一人で立ち上げた。それゆえに極めて独立性、機密性の高い組織である。だがD機関は軍の外の者たちを従事させている日本陸軍の鬼子であった。風戸は直ちに上層部の肝煎りで、通称〈風機関〉を設立した。風戸の脳裏に、阿久津中将の言葉が浮かんでいた。ダブル・ジョーカーを使うつもりはない。風機関か、D機関。どちらか一方が不要になるということだ「ダブル・ジョーカー」

表題作ほか、亡き兄の共産主義思想を継ぐべく自らモスクワのスパイとなった脇坂と、笑わぬ男の暗号名を持つスパイ・ハンターが暗躍する「蝉の王」、ハノイに赴任している民間人の通信士・高林は、暴漢から救ってくれた軍関係者を名乗る長瀬から極秘の任務を引き受けることになる「仏印作戦」、ナチス政権下のドイツで対外防諜活動を担当するヴォルフ大佐は、列車事故で亡くなった日本人から、長年追い求めてきたある男と同じ匂いを嗅いだ。二十二年前、魔術師のコードネームで暗躍したスパイ時代の結城を描く「柩」、中根はアメリカ西海岸で協力者の組織を網の目のように張り巡らせる。そこに東海岸の情報を持って接触場所に現れたのは腹違いの兄だった「ブラックバード」など、全五編を収録。

前作「ジョーカー・ゲーム」は、これは傑作と世間で高評価が溢れる中、イマイチという烙印を捺してしまった。それは単に格好良すぎたことが原因だ。スタイリッシュなスパイの活躍に胸躍らせることなく、それをマンガっぽく感じてしまい、リアル感をまったく得られなかったからだ。隙のなさや出来すぎに、上手く乗ることができずにいた。それが第二作となる本書では、完璧すぎるD機関の視点ではなく、その裏側から、敗者となる側の目線で物事を見ることになるので、より人間らしさが伝わる作品になっていた。ぎゃふんと言わせるつもりが、ぎゃふんと言わされる。最初から騙しあいに勝利すると分かっているより、こちらの方が面白い。そう思うのは少数派意見でしょうか。

最終話で日本軍が真珠湾に奇襲攻撃を仕掛ける。これは同時にスパイ活動停止を意味している。戦争が始まれば、スパイが見えない存在であり続けることは不可能だからだ。その後の経過は日本人の皆が知っている。そこはあえて触れない。だが焼け野原となった戦後の復興は以外にもはやい。生き残った結城中佐率いるD機関の見えない気づかない活躍があったのではないか。それに負けっぱなしはD機関らしくない。敗戦のどん底の中でも、GHQを相手に戦っていると思いたい。はたして第三弾はあるのか。一読者としてはある方に期待したい。

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    2009

09.18

「とっても不幸な幸運」畠中恵

とっても不幸な幸運 (双葉文庫 は 18-1)とっても不幸な幸運 (双葉文庫 は 18-1)
(2008/03/13)
畠中 恵

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「酒場」という名の酒場は新宿に古くからある店だった。オーナー店長は、客に店長とだけ呼ばれている。店長は店長であって、それ以外の名を必要としていないからだ。だが酒場ではどういうわけか、店長の本名を知っている客だけが、常連として残ってゆく。客は古参が多い。結構広い店内に、むさ苦しい男たちの顔が並んでいる。店長のバーテンダーとしての腕には、文句がない。先代にきっちり仕込まれたそうで、カクテルを作るのが実に巧い。酒にぴったり合うつまみは上等の品で、けちったことはないし、その気になったときは、驚くほど美味い一皿を作る料理人でもあった。そして腕っ節も一級品であった。

酒場のテーブルに向かって、中学生の小牧のり子は、制服姿でちょこんと座っていた。ただし客ではなく、店長である小牧洋介の義理の娘だ。母を幼い頃に亡くしたあと、のり子は祖母に育てられたので、養父と一緒に暮らし始めて、まだひと月半だった。のり子が「とっても不幸な幸運」の缶を買ったのは偶然だ。学校帰りによく行く百円ショップに顔を出すと、他では見たことのない品があった。のり子は勝手に、面白グッズだと思って買った。開ける気になったのは、今朝の食事のときだった。何気なく缶を開けると死んだ母親の幻影が見えた(「第一話 のり子は缶を買う」)。

「とっても不幸な幸運」の缶を開けると幻影が見え、どうやら缶を手にした者が抱える問題が、よくも悪くも明らかになり、予想外の話に繋がっていく。店長も常連客も、缶が巻き起こす厄介ごとを経験している。それにも関わらず、不思議な缶は次々と酒場に持ち込まれる。懲りない酒場の面々は、災いにも幸せにも転じるエピソードを酒の肴に、夜ごと賭けをして謎解きを楽しむ。いわゆるミステリー・バーものだ。最近この手の作品が増えている。ひとつ、幻影を見せる不思議な缶というファンタジックなスパイスを加えているが、その印象は曖昧であった。

だが頭の切れる店長とその娘ののり子をはじめ、登場する人物たちの魅力は中々のものがあった。その酒場に集う人々が、次々と主人公の座をバトンしていく。「第二話 飯田はベートーベンを聴く」の飯田医師、「第三話 健也は友の名を知る」のウェイターの健也、「第四話 花立は新宿を走る」の警察関係者の花立、「第五話 天野はマジックを見せる」のマジシャン天野、「第六話 敬二郎は恋をする」の先代マスターとみずき、そして古い常連の阿久根。どれもこれもが読後感は良い。だけど、家族のような常連客で謎談義に花を咲かせて、その上おいしいお料理が出されるのって、やはりありきたりなんだよな~。他に何かこれが売りというものが欲しかった。

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畠中恵
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    2009

09.17

「ここに消えない会話がある」山崎ナオコーラ

ここに消えない会話があるここに消えない会話がある
(2009/07/24)
山崎ナオコーラ

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夕日テレビ班は、六人になった。二十七歳の津留崎と魚住、二十六歳の別所、二十五歳の広田と岸と佐々木だ。それぞれ、局ごとにラテ欄を作る。新聞によって、大きさが異なるので、何パターンか作る。それを、各新聞者に配信する。番組表を作るのが仕事だ。一応、新聞に載る文章なので、間違いが起こると、大変なことになる。漢字の間違い、おかしな表現、差別用語、規定外のカタカナ表記などが交じらないよう、みんなで何度も確認してから、新聞社へ送るのだ。ラテ欄の部署は若年労働者がひしめいていて、その中で、なぜかリーダー役を二十五歳の佐々木が担っている。肩書があるのではなくて、雰囲気としてのリーダーだ。

入社四年目の別所は、各班を転々としたあとに、夕日テレビ班に半年前に来たばかりだ。五年目の魚住さんは仕事がすごくできる人だが、毎日ものすごく遅刻をしてくる。二年目の広田も岸も、立場をわきまえているので、自分から何か意見を言うことは皆無で、佐々木の言う通りに仕事をしていた。入ったばかりの津留崎は、魚住と並んで一番年上で、しかも美人であるのにもかかわらず、一番下っ端であるかのように、こつこつと仕事をしている。入社三年目の佐々木は弁が立ち、クレバーであったが、仕事好きが過ぎて帰りたがらず、そのせいで、夕日テレビ班は、他局の班に比べ、ずば抜けて帰りの遅い班になっていた。

家族でもなく、友人でもなく、恋人でもない。それぞれの意志など関係なく、たまたま集まった男性四人、女性二人の職場の同僚たち。こうやって私たちは新聞のラテ欄を作っているわけですが、広田さんは新聞をとっていますか? 僕は、三紙とっています。なんか、新聞の販売店の人がよく来るんですよ。いりませんって言えなくて、それで、新聞の人が、洗剤をたくさんくれるから、うちには洗剤もたくさんあるんです。そこに人々が集まる限り、会話が生まれる。他愛のないやり取りが、泡のように生まれ続ける。彼らは仕事仲間として会話を交わし笑いあう。事件や大恋愛は起きない。しかし、このふつうが何より心地良い。

同時収録の「ああ、懐かしの肌色クレヨン」は、切なくも優しいショートストーリー。鈴木は、パン工場で働いている。工場長、同僚、周りの人にものすごく良くしてもらっているのに、ずっしりと寂しさを浴びている。鈴木はこの年まで、男からぎゅっと手を握ってもらったことがない。お遊戯のときも、フォークダンスのときも、男の子はやんわりとした握り方をしてきた。山田さんは三十二歳の男の人で、鈴木の入社時から、何かと世話を焼いてくれた。仕事も教えてくれたし、休み時間になると雑談をしかけてきたり、からかってきたりしてくれる。その山田さんは三ヵ月後に工場を辞めるという。ずっと好きだった山田さんの退職前、最初で最後の二人きりのデートで、鈴木は自分の気持ちを口にする。


山崎ナオコーラさんのサイン。

山崎ナオコーラ2

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山崎ナオコーラ
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    2009

09.16

「骸骨ビルの庭」宮本輝

骸骨ビル 骸骨ビル2
骸骨ビルの庭(上) 骸骨ビルの庭(下)

物語の舞台は大阪の十三。その堅牢な三階建てのビルは、昭和十六年に英国人の設計家によって建てられた。正しくは杉山ビルヂング。屋上に何本も物干し竿を突き出し、それが人間の骨のようにも見える杉山ビルは、いつしか十三界隈に住む人々から骸骨ビルと呼ばれるようになった。その骸骨ビルの住人を立ち退かせるため、八木沢省三郎は管理人として赴任した。四十七歳の八木沢は、大手家電メーカーを依願退職し、上司のすすめで住宅開発会社に再就職した。そして最初に与えられた仕事が、この骸骨ビルだった。

敗戦後、奇跡的に焼け残った骸骨ビルはGHQに接収される。その後、施主の杉山轍太郎の妾腹の子であり、正当な相続人である阿部轍正が引き継いだ。復員後、骸骨ビルに居を定めた阿部と友人の茂木泰造は、食料にも事欠き、庭で野菜を作りながら、共に親代わりになって戦災孤児たちを育てた。だが阿部はそのうちのひとりである女性から、かつて性的暴行を受けたと訴えられ、その騒ぎの渦中に、心筋梗塞によって息を引き取った。平成元年のことだった。阿部の死によって、それまでなりをひそめていた杉山の甥たちが、ビルの相続権を主張してきた。

ところが思わぬ事実が判明した。何度も性的暴行を受けたと訴え出た桐田夏美と杉山の甥が裏でつながっていたのだ。事件としては時効が成立しているにもかかわらず、それでもあえて訴え出たのは、骸骨ビル乗っ取り計画の筋書き添ったのに違いない。茂木泰造とかつての孤児たち住民は、この骸骨ビルを我が物としたいがために、ここに居座っているのではない。阿部轍正に着せられた冤罪と汚名を晴らすまでは、夏美が自らの口で真実を明かすまではこの骸骨ビルを出ないと茂木は主張する。

クセのある住民たちが視点となる主人公のヤギショウこと八木沢を迎える。育ての親のひとりで好々爺然とした茂木泰造。彫金師を生業とするチャッピー。大型トレーラーの運転手をするトシ坊。おかまバーでオーナーをしているナナちゃん。SM雑誌の編集をしているヒデトくん。人材派遣会社を営む木下のマコちゃん。探偵事務所を経営しているサクラちゃん。ダッチワイフの開発研究をしている市田の峰ちゃん。女手ひとつで食堂を経営する比呂子。日本粉新聞社という謎の出版社で社主をしている菊田の幸ちゃん。暴力団の若頭をしているヨネスケ。

ヤギショウは何もしない。ただ第二の人生を自問自答し、ずっと暮らし続けている。自分の意志でそうしている。立ち退き交渉をしようとはせず、比呂子の店でキャベツを刻み、料理を教えてもらい、ナナちゃんに教えてもらった本を読み、畑仕事をして骸骨ビルの庭に野菜を復活させようとしている。それどころか、みんなと仲良くなって、骸骨ビルの住人たちは訊かれてもいないのに自分の来歴をヤギショウに話して聞かせている。いつのまにか、阿部轍正と茂木泰造に育てられた戦争孤児のひとりみたいに溶け込んでいる。

まだ当時二十代だった阿部轍正と茂木泰造という前途ある青年は、なぜ一度も結婚せずに血のつながりのないたくさんの孤児たちのために一生を費やそうと決めたのか。ヤギショウに脅迫状を書いたのは誰か。意固地に骸骨ビルに居座る茂木のたくらみとは。かつて阿部と茂木と子供たちの生活空間であった金属の壁で密閉された一階の幾つかの部屋の謎。そうした小さな謎が解かれることによって、大きな謎が解けていく。上下巻二冊を読み終えた時、心地良い余韻が胸に広がってきた。


宮本輝さんのサイン。

宮本

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    2009

09.14

「船に乗れ!2独奏」藤谷治

船に乗れ!(2) 独奏船に乗れ!(2) 独奏
(2009/07/02)
藤谷 治

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音楽一家に生まれたものの、芸高受験に失敗し三流音楽高校に入学した津島サトルは、オーケストラ合宿、市民オケでの初舞台、文化祭などを通じて、チェロに悩み、恋と友情を知った。オーケストラの発表会後、ピアノの北島先生を交えたトリオで臨んだホーム・コンサートを経て、南枝里子との距離感をグッと縮めた。津島と南は、はっきりと親しくなった。学校の近くにある喫茶店でお喋りしたり、クリスマス・プレゼントを交換したりした。一緒にいればいるほど好きになった。

一月のある日曜日、南とともにオペラ「魔笛」を観劇して、信じられないほどの幸福感を味わう。高校二年生になり、さらに音楽漬けの毎日が続く。新一年生は、自分たちより技術的にはっきりと高度で、津島と南は焦燥感をつのらせる。突き上げられてる感じだ。そんな中、オーケストラ発表会に向けての練習が、また始まった。南は第二ヴァイオリンの、津島はチェロの、それぞれ〈トップ〉となる。だが荷が重過ぎる演目は前途多難で、やっかいで出口の見えない苦行だった。けれどもそれはほんの一部でしかなかった。

佐伯先生のレッスンは与えられる課題がさらに高度になり、分量も多くなった。さらに、フルートの天才・伊藤慧から、十月の文化祭で一緒に演らないかと誘われた。そのすぐあとに、今度はピアノを教わっている北島先生からも楽譜を渡された。十二月の生演奏のパートナーに指名されたのだ。二年生になったばかりだというのに、この忙しさはなんだろう。津島は焦りつつも嬉しかった。しかしこの時期に向けられたお誘いは、これだけで終わらなかった。夏休みを利用してドイツに短期留学することが決まったのだが――。

本作の副タイトルは「独奏」。その不吉なタイトルが物指す通り、ストーリーは独りの方向へと突き進んでいく。南の音楽に対する熱情、貪欲な向上心、芸術への挑戦する心は、あふれかえるほどだった。それは、常軌を逸してあふれるがゆえに、南という人間を飲みこんでしまうほどだった。津島君の家がお金持ちだから。はっきりいって、津島君のチェロより私のヴァイオリンのほうが、絶対才能ある。努力だって人の何倍もしている。それなのにどうして私じゃないの? どうして私は留学にいかれないの? これは彼女の本音であり、深い闇への第一歩だった。

前作の「合奏と協奏」では音楽を楽しんでいた。音楽のすばらしさが溢れていた。それが音楽を楽しむことを忘れた「独奏」では、急転直下の展開に。これ以上はネタばれになるので書けません。なんとも後を引く終わり方で、早く続きが読みたいです。まだ途中だけど、すごい大作になる予感がぷんぷんと匂ってくる。最終巻で、光は見えるのでしょうか。音楽は闇から救ってくれるのでしょうか。それとも……。そして第一巻だけでなく、第二巻でもサイン本をゲット。第三巻もサイン本で揃えたいなぁ~。


藤谷治さんのサイン。

ふじたに2

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藤谷治
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    2009

09.13

「天山の巫女ソニン(五)」菅野雪虫

天山の巫女ソニン(5) 大地の翼天山の巫女ソニン(5) 大地の翼
(2009/06/27)
菅野 雪虫

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天山で育てられたソニンは、十二歳の春に落ちこぼれの巫女と言いわたされ、里に帰された。温かい家族のもとでソニンは普通の娘としての生活を始めるが、沙維の末王子イウォルの落し物を届けたことから、城で働くことになった。生まれつき口がきけない王子の手に触れると、その「声」が聞こえたからだ。ソニンがイウォル王子の侍女となってからは、沙維の二つの隣国、江南の民に絶大な人気のある第二王子クワン、巨山の王の一人娘イェラ王女とも関わりを持つことになり、何故か気に入られた。

ほんの二年前まで戦をしていた巨山と江南だが、イェラ王女の江南訪問以来、二つの国に平和がおとずれているのはいいことに違いないのだが、江南でイェラ王女の評判がよくなるのと平行して、沙維の人気が落ちていた。それと平行して沙維でも、江南の人々に対する不信感のようなものが芽生え始めていた。恩知らずな国だ。こちらが援軍を送らなければ、巨山に制服されていたくせに。援助をもらって、かつての敵に尻尾を振っている。城の人々や鶴亀亭の客たちがそんな話をするのを、ソニンは何度も聞いていた。

江南は王妃とキノ一族が富を独占し、人望あるクワンは軽んじられている。イェラの立場も複雑だ。国の方針とは別に確固たる自分なりの考えがあり、今や他国では父王と並ぶほどの影響力を持ちながら、本国ではあくまで王の娘でしかない。片や沙維の兄王子たちは最近仲が悪い。そんな最中、イェラが沙維を訪問。帰国間際に、ソニンに向かってこう告げた。次に兵を挙げるのは冬だ。イェラの残した言葉は真実だった。三つの国の王子や王女は戦など望んでいないというのに、沙維は巨山だけでなく江南を加えた二つの国と闘うことになった。

これで「天山の巫女ソニン」は完結。三国それぞれに膿があって、それがこの最終巻で一度に吹き出てくる。それも戦争という形でだ。戦は避けたい。だが起こってしまった。三つの国の王子や王女は、被害を最小限に抑えようと各々奔走する。腹黒かったあの人たちが成長している。それがなんとも格好いい。それとイルギが語っていた「七割の法則」が印象的だった。人間のうち七割は流されやすい。まわりの動きや噂、自分の欲に流される。残りの三割の人は、それはおかしいと思っている。でも、三割の人も、自分たちの倍以上もいる七割の人たちに、口出しすることが出来ない。まるで日本人に対する警告だ。

シリーズの途中では、残念ながらぼやけてしまったところもあったけれど、ソニンをはじめとした主要な人物たちの成長に喝采をあげたい。そして、自分の目で見て、自分の頭で考え、せめて三割の人になれるよう頑張りたいと思う。次回作では、児童書の壁を越えた作品にもチャレンジして欲しいと期待する。とりあえず大長編の完結お疲れさま。

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菅野雪虫
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    2009

09.12

「文化祭オクロック」竹内真

文化祭オクロック文化祭オクロック
(2009/07/23)
竹内 真

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県立東天高校の文化祭が開幕した。今年は、開幕という言葉にふさわしい演出も用意されていた。演壇のステージ後方の引き幕が、開幕宣言と共に一気に開かれた。幕裏にはブラスバンド部の有志によって結成されたマーチングバンドが待機していて、始まりにふさわしい陽気な演奏を響かせ始めた。ブラスバンド部のオープニング曲終了とともに、突如校内放送から謎の男の声が流れてきた。

こちらは放送部・物理部・弁論部・写真部・ブラスバンド部、そして文化祭実行委員会と生徒会の合同共同企画でお届けするラジオ放送、FM東天です。今日と明日の二日間、一時間ごとに現れてはトークと音楽満載の番組を放送することになっています。二回目からは本当にラジオ放送になります。DJネガポジと名乗る正体不明の男は、リクエスト曲を流しつつ携帯電話でのリレーインタビュー企画を進めていく。

第一回目のゲストに選ばれたのは三年生の山則之。野球部の元エースだった山則之は、DJに乗せられて、壊れた時計塔に硬球をぶつけ始めた。山則之の恋の相手として名前を放送された同じく三年の斉藤優里(ユーリ)は怒り心頭。DJの奴を捕まえて引っぱたいてやる、と校内を駆けずり回る。このラジオ企画の放送システムを作ったのは、三年のメカオこと寺沢祐馬だ。メカオとは、機械いじりが好きなことからついた呼び名だった。

物理教室の窓ガラスが割れた。容疑をかけられたのは山則之。時計塔に当たってはね返ったボールがガラスを割ったと体育教師に連行された。文芸部員二年生の古浦久留美(探偵コーラ)は、好奇心旺盛なミステリーマニア。コーラはラジオのトークコーナーで山則之の冤罪を推理してみせた。それを知ったユーリは、DJネガポジの正体を推理するようコーラに依頼する。華やかな文化祭の裏で静かに進行する陰謀と、謎のDJの目的とは?

高校の文化祭というお祭り騒ぎを巧みに煽る謎のDJネガポジ。彼の正体を、居場所を突き止めようとする青春ミステリ。読み進めて行くと、少々ビターな方面が見えてくるのだが、文化祭の高揚感がそれよりも上回っている。現実の文化祭って、やる気のない生徒が押し付けあって済ませようとすることが多く、グダグダのつまらない退屈な一日になりがちだ。でもここではすごく楽しそうだ。こういう文化祭なら参加してみたい。

ただミステリとしては、途中で先が見えてしまった。そもそも竹内真という作家にミステリのイメージはない。竹内真で一番に思うのは、青春ロードノベルというジャンルだ。何故慣れないミステリの要素を持ち込んだのか、そこが腑に落ちない。学校内の地図も載っていたが、役立ったとは言い切れない。そういった推理ものとしてよりも、学園祭の一日で突っ切った方が断然に良かったように思う。楽しく読めたけれど、そこが少し残念だった。


竹内真さんのサイン。

竹内真

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竹内真
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    2009

09.11

「水銀虫」朱川湊人

水銀虫水銀虫
(2006/09)
朱川 湊人

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人の魂の中に入り込んで這いずり回り、やがて無数の穴をあけてしまうという、「水銀虫」。惨劇の陰には、人の心を蝕む「水銀虫」の存在が。首筋に奇妙な蟻走感を覚えた。臍下のあたりで何か足の速い甲虫が神経の上を走っている。頭の中で何千何万もの小さな虫が蠢いている。何か小さな虫のようなものが首筋を這っていた。指先でつまんでみる。体長五ミリ程度の、金属のような質感を持った甲虫だった。「水銀虫」に取りつかれ、罪を犯した人々の、悪夢のような一日を描いた七つのホラー短編集。

「枯葉の日」
その女との出会いは、狭苦しいコーヒーショップだった。女のほうから話しかけてくる。たまたま相席になっただけの人間に、馴れ馴れし過ぎないか。以前の自分は、得体の知れない人間に話しかけられたら、なるべく相手にならずに、さっさとその場から離れるようにしていた。だが今日は、なぜかそうする気にはならなかった。少なくとも今の自分には、恐れるものはない。失って困るものはなかった。いったい自分の何が悪かったのだろう。なぜ妻は、他の男に心を移したのだろう。

「しぐれの日」
突然降ってきた雨から逃れるために、見知らぬ家の軒先を借りていた。父が私と母を捨てて他の女性に走ることがなければ、そして母がアルコールに溺れて身を持ち崩さなければ、もし家に居場所があったなら、私はこんな雨の日にも家にいることができたはずだ。どこからか、聞き覚えのない女の人の声がした。斜向かいにあるアパートの二階から、女の人が、私に向かってほほ笑みかけていた。こっちに来ない? 見知らぬ人の誘いに戸惑いはしたが、お姉さんは私を部屋に迎え入れてくれた。

「はだれの日」
十七歳を目前に自殺した姉。明るく優しい性格で、直前までそんな素振りはなかったのに、なぜ。背後には、死神のような女生徒の姿があった。あの女がいなければ、姉さんは死なずに済んだ。世の中には、ただ生きているだけで害悪を振りまいている人間が、確かに存在する。母があんな風になってしまったのも、間違いなくあの女のせい。あいつのために、僕の家はメチャメチャになった。僕があの女を殺したのは間違いない事実。もちろん、殺すつもりで刺した。

「虎落の日」
健斗は長男夫婦の子供だが、半分は富士子が育てているようなもので、健斗には二つ家があるようなものだ。二つ年上の遼平とよく遊んだのも、富士子の家だ。その遼平が亡くなってから、雅恵の精神が不安定になっているという。最愛の孫を亡くした祖母が、まともな精神状態でいられるはずがないのだ。富士子と雅恵の付き合いは三十年近くなる。顔を合わせるのは、二ヶ月ぶりだ。玄関を開けると、妙に生臭い風が中から吹いてきた。このまま帰ったほうが。その匂いをかいだ瞬間、なぜか唐突に富士子は思った。

「薄氷の日」
通りはきらめくイルミネーションに満ちていた。今日はクリスマス・イブだ。けれど、きっと自分より幸福な人間はいないだろう、と奈央は思った。良輔はまだ三十歳だが、ITビジネスで一山当てた若き経営者ということになるだろう。つまり良輔は、結婚相手としては超一級品なのだ。奈央は玉の輿に乗る権利を獲得したようなものだ。ふと、雑踏が怖く思えた。何せ、今日はクルスマス・イブ。年に一度、あの怪物が姿を現す日だからだ。秀美は、奈央の中学の同級生である。彼女こそが、クリスマスの怪物だった。

「微熱の日」
今日、学校の帰り道に、基地に行こうと誘われた。何でもお兄さんの車から、すごいヤツを見つけたらしい。体調が十分でない慎也はパスしたい気分だったが、そうも行かなかった。子供の世界にも見栄だの付き合いだの、いろいろあるのだ。信也は一真の後ろについて、薄暗い山道を登っていた。二人が登っていたのは、村のはずれにある草深い山だ。山道を登り続けた途中、東京から越してきた転校生と出会った。山ウロを祀っているお堂の調査に行くという。実はそここそが、信也たちの秘密基地なのだ。

「病猫の日」
八重樫が大学の図書館に籍を置いて、すでに十年が過ぎようとしている。三十代半ばで、総合部長という風変わりな肩書を得ていた。自宅マンションに着いて、エレベーターに乗る。毎日、この瞬間には、必ず同じことを考える。今日も妻の綾子は、ちゃんと生きているんだろうか。綾子は重度のうつ病だった。すべてが八重樫の肩にのしかかった。がんばったつもりだ。いつのまにか八重樫は、部下の会田奈緒子に心の安らぎを見出すようになっていた。その奇妙な男の姿を見たのは、それから数日後のことだった。

身体に這う水銀虫を想像して、身体のあちこちが痒くなってしまう。同じように読後感も悪い。だがこういうホラー作品は嫌いではない。面白かったのは、「枯葉の日」「はだれの日」「薄氷の日」「微熱の日」「病猫の日」という理性を失った主人公が狂気に身を委ねる作品だった。どうしても受け付けられないのは「虎落の日」という作品。ホラーではよくあるパターンだけど、これは絶対無理。人肉を食っちゃダメでしょう。

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朱川湊人
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    2009

09.10

「4つの初めての物語」さとうまきこ

4つの初めての物語 (ピュアフル文庫)4つの初めての物語 (ピュアフル文庫)
(2008/01/10)
さとう まきこ

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キーワードは、初めての冒険。同じクラスの小学六年生4人がそれぞれの場所で体験する初めての出来事。「初めてのブラジャー 綾子の場合」では、だれにも内緒でブラジャーを買いにいく。胸がどきどきした。だれにも会いませんように。そればっかり、呪文のようにくりかえしていた。苦労して買ったブラジャーは、サイズが大きすぎた。隠していたら、母親に見つけられ、父親だけでなく、友達のお母さんにまでばらされる。そうして、恥ずかしさから泣きさけんだ綾子は、親に対する苛立ちを覚える。

まさか、自分のお父さんがバツイチだなんて。しかも、子どもが、お兄さんがいたなんて。明日、家に来るのは「初めてのお兄さん 真理奈の場合」。頭の中が真っ白になった。でも雄介に臆病者だと思われるのは、絶対にいやだった。親友に誘われてする「初めてのチャリパク 省吾の場合」。ぽつんと古びた二階建ての家が、見捨てられたように残されていた。この空き家を、オレたちのかくれ家にしたらどうかな。仲間だけで手に入れた「初めてのマイホーム 亮平の場合」。

主人公の小学六年生の男子と女子は、成長期の初期段階ともいえる年代を迎えている。体育の授業で着替えることが苦痛だ。友達に弱いところを見せたくない。口うるさい母親が面倒臭い。親は年の離れた妹ばかりひいきする。自由が欲しい。要するにお年頃ってやつだ。むずかしい時期だ。しかし、誰もが身に覚えのあることではないだろうか。同じことを経験してきたはずだ。彼らが抱えている問題自体は、今となってはどうってことはない。でも、当時は人生の一大事で、くやしくて、頭にきて、振り上げた拳のやり場がなくて、涙がでそうになったと思う。

ちょっと前なら、これが当たり前だった。今の子って、基地作りの経験はあるのだろうか。チャリに乗って遠出する楽しさを知っているのか。わくわくドキドキするようなことを経験しているのだろうか。だが、外で自由に遊べる場所がなくなり、ランドセルには防犯ブザーをぶらさげて、放課後は友達とゲームをして、塾通いの小学生は携帯を持ち、あらゆる情報はネットに氾濫し、出会い系サイトや援助交際に手を出す子もいるという。そして、みんなと合わせることが出来ないと、ハズされる。それといやにドライな子が増えた。書き出しただけで、全然楽しそうじゃない。

でもだからこそ、シビアな問題を抱えているのかも知れない。それと関係があるのか分からないが、一人で電車に乗っている顔色の悪いメガネっ子をよく見かける。首に定期券をぶらさげ、かわいそうだと思うが、全然かわいくない。子どもに責任があるわけではなく、みんな親のエゴなんだろうけど。そういう点でいえば、本書は健全な部類にはいるだろう。今の子はどう思うか判断できないが、昭和生まれには郷愁を誘う風景がここにはあった。子どもたち、がんばれ。

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    2009

09.09

「青嵐の譜」天野純希

青嵐の譜青嵐の譜
(2009/08/05)
天野 純希

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文永の役と弘安の役。この二度にわたる元軍の日本襲来をあわせて、元寇という。元は属国の高麗を通して服属を求める国書をたびたび送ってきた。鎌倉幕府はこれを無視。蒙古軍の侵攻は避けがたいものとなった。商人の子、二郎。武士の子、宋三郎。高麗から逃れてきた麗花。二郎と宋三郎は、無人島に流れ着いた麗花を発見。二郎と麗花は義理の兄妹として育てられる。壱岐島に暮らす三人は境遇の違いを超えて深い絆で結ばれる。

二郎は、幼い頃から絵を描くのが好きだった。できることなら、絵を生業としたかった。なんでも、南宋には宮廷に仕える画家の他にも、庶民を相手に絵を売る町絵師がいくらでもいるという。それなら、しっかりと技巧を学べば、自分も絵師として暮らしていけるのではないか。二郎は絵師になる夢を抱いて父とともに南宋に渡るが、嵐のために船は難破。三年後の再会を約束したまま行方知れずとなった。

宋三郎の母は博多唐人街の遊女で、宋の生まれだった。父親は誰なのか知らない。宋三郎は、わけもわからないまま壱岐へと連れて行かれ、養父のもとに引き取られて武士の子になった。武芸に秀で、二郎には剣の稽古をつけてやった。壱岐は蒙古勢の非道な襲撃を受け、宋三郎は完膚無きまでに蹂躙された地獄を目の当たりにした。元への復讐心に燃える宋三郎は、松浦党に身を投じ、元軍の再襲来に備える。

麗花の祖父と母は亡くなり、会ったことのない高麗の武臣である父に引き取られた。その直後、政変が起こった。父に乗せられた船旅は追っ手に襲われ、麗花一人だけが無人島に流れ着いた。その矢先、養父の喜平次と二郎の乗った船が沈み、麗花の前から姿を消した。その後博多の豪商・謝国明に引き取られて娘同然に育てられた。女座頭の桔梗に母譲りの笛の才が認められ、桔梗率いる田楽踊りの一座に誘われ、加わることを決意した。

動乱の時代に生きた三人の、成長と再会の物語である。彼らはスーパーヒーローではない。日々の些細なことで喜んだり悩んだり哀しんだりしている。今を生きる若者たちとまったく変わりはない。その三人はそれぞれに違う立場で、元寇という荒波に翻弄されることになる。元の拡大政策による日本侵攻や、鎌倉幕府の無能を問うているのではない。元軍の襲来の中、そこには確かに人間が生きて生活していたことが描かれているのだ。

これまでに元寇を扱った作品は何度か読んだことがある。しかし本書のような、庶民や一兵士、元軍の兵士の目線で描かれたものははじめて読んだ。すごく新鮮だった。もちろん大局的な俯瞰もある。でも国と国の争いとはいえ、闘っているのは一人ひとりの兵士であって、故郷を蹂躙された恨みや復讐心、あるいは倒れていく仲間を思うなど、そこには何かを思う感情がある。そういうのを丁寧に描いているのは著者の力量の確かさだと思う。さすが、すばる新人賞受賞者といえる。今後も益々楽しみな作家が出たものだ。

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    2009

09.08

「あの子の考えることは変」本谷有希子

あの子の考えることは変あの子の考えることは変
(2009/07/30)
本谷 有希子

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巨大な清掃工場が見える高井戸のボロアパートで、高校の元同級生の巡谷と日田はルームシェアをしている。二十三歳にして処女で、自分は臭いと信じながらも不潔な日田は、ゴミ処理場から出るダイオキシンが「自分の臭さと手記の書けなさ」の原因だと思い込んでいる。日田が手記を書き始めたのは中学一年の頃からで、十年のあいだに仕上がったのは、結局十枚くらいが三本しかない。そして彼女はアパートの隣室のゲシュタポおばさんと仁義なき騒音合戦を繰り広げている。さらに日田はとんでもないことを言い出した。ダイオキシンのせいで、性欲がすごい勢いで強くなってきて、このまま性欲が抑えきれなくなったら、乞食を犯しちゃう、と。

同じく二十三歳のフリーターの巡谷は、日田ワールドを炸裂させる友人を、「あの子の考えることは変」とつねづね思い、適度な距離で見守っている。そう思う巡谷自身も、なかなかどうして変な女だ。セフレの横ちんの彼女は海外に渡っており、その彼女と別れさせるために横ちんをデブの怪物へと変貌させ、さらにそそのかして無理やりマッシュルームカットにさせて、モテない男に仕立て上げている。Gカップのおっぱいを自分のアイデンティティとし、おっぱい至上主義を豪語。裏を返せば巡谷にはおっぱい以外に何もない。そして時々感情が剥き出しになってしまう。そのどうにもならない状態を、日田は「グルーヴしてる。」と命名している。

とにかく主人公たちの生々しいガールズトークが過激だ。笑えるけれど、危険すぎて書けない。例えを出そうと頭をひねるが、どうしたって下ネタになってしまう。ともかく、どちらも性的なコンプレックスに悩んでいる。そんな彼女たちは、自分自身を守るため「変」にしがみ付いている。だが彼女たちは必死で生きているだけだ。このぎりぎりアウトな感じの二人の痛さを見て、読者は少し安心するかもしれない。誰だって、悩みの一つや二つはある。性の悩みだってあるだろう。でも、こういう話は、同性同士で、酒でも入れてわいわい騒ぎながら盛り上がる話であって、シラフでは理性のブレーキが邪魔をする。気になる方は、この変な友情小説を読んでください。それが一番。

これが二冊目となる本谷有希子さんのサイン。

本谷2

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本谷有希子
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    2009

09.07

「悪党」薬丸岳

悪党悪党
(2009/07/31)
薬丸 岳

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細谷夫婦が佐伯修一の勤める探偵事務所を訪ねてきたのは十日前のことだった。依頼は、坂上洋一という男が今どこにいて、どんな生活をおくっているかを調査してほしいというものだった。さっそく坂上の足取りを調査していくと、依頼人と坂上との関係がくっきりと浮かび上がってきた。坂上は十一年前に細谷夫婦の一人息子である健太を殺していたのだ。坂上は事件から二年後に少年院を出ていた。昔の悪い仲間たちとはいまだに交遊を持ち、新手の振り込み詐欺をやっていた。調査はこれでお終りのはずだった。だが依頼者はさらなる調査を依頼してきた。あの男を赦すべきか、赦すべきでないのかが知りたい。赦すべきならばその判断材料を見つけて欲しいというのだ。

赦せる材料。佐伯の心の中には犯罪者に対する激しい憎悪が渦巻いている。佐伯自身も、かつて身内を殺された犯罪被害者遺族なのだ。そんな自分には赦せる材料など見つけられるはずがないのだ。気が乗らない仕事だが、所長の小暮に逆らうことはできない。警察を懲戒免職になり、前科がついて自暴自棄になって荒れた生活をしていたところを、小暮はこの探偵事務所に迎えてくれた。小さな探偵事務所だ。常勤しているのは佐伯と事務仕事をやっている染谷というおばさんと、所長の小暮だけだ。とても難しい依頼だ。だが、やるしかなかった。犯罪者と犯罪被害者遺族の心の葛藤を描いた「悪党」「復讐」「形見」「盲目」「慟哭」「帰郷」「今際」の七章で構成された一話完結の連作社会派ミステリ。

どんなことがあっても赦せない。たとえ刑務所で罪を償ってきたとしても、遺族の前で自分の愚かな行為に涙を流したとしても、社会的にまっとうな生活を送っていたとしても、赦すことなどできない。遺族感情としてはもっともなことだ。その一方で、犯罪の被害に遭った者にとって、もっとも苦しいのは、加害者が幸せに暮らしていると知ったときだ。加害者が自分の犯した罪をこれっぽっちも反省しないと悟ったときだ。そんなときは、憎しみの焔にさらに油を注がれたように、心の中が激しく暴れ出す。この主人公の佐伯のようにだ。

十五年前に彼の姉はレイプをされた挙句、首を絞められ殺された。当時未成年だった犯人の男三人は実刑を受けた。その者たちはすでに刑務所を出て社会に戻っている。佐伯は仕事の合間に姉を殺した奴らの行方を捜している。見つけてどうするのか。これがこの作品の縦軸であり、もうひとつ横軸となるのは、探偵事務所に依頼してきた被害者遺族と、追跡調査をされる犯罪前歴者たちだ。彼らは何を背負って今を生きているのか。また、依頼を受けざるをえない佐伯の憂鬱と、憎んでいると言っていい犯罪者と接触して何を思うのか。犯罪者の家族向けられる憎悪や糾弾を知ってどう感じるのか。

何か重大な殺害事件が起こると、メディアは一斉に犯人のことを取り上げる。何かおかしくないですか、と言いたい。被害者遺族の感情がおざなりにされすぎているように思うからだ。一番つらい思いをしているのは被害者や被害者の家族であるはず。その人たちの感情をまるで逆なでしているとしか思えない報道の仕方にイラッとくるのだ。本書は、事件当事者でないと決して知ることのできない被害者遺族の心の痛みや苦しみ、どうにもならない怒りと正面から取り組んでいる。犯罪被害者遺族は、何をもって罪を赦すことができるのか? 決まった答えなどない。決して消えることのない傷だ。これを面白いと言えば御幣があるだろうが、期待通りの満足を得られる作品だった。

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薬丸岳
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    2009

09.06

「IN」桐野夏生

ININ
(2009/05/26)
桐野 夏生

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作家のタマキは「淫」という小説を書こうとしていた。テーマは、恋愛における抹殺である。本物の死ではない。無視、放置、逐電など、自分の都合で相手との関係を断ち、相手の心を「殺す」ことと規定した。主人公は、緑川未来男が書いた「無垢人」という小説の中に登場する「○子」である。緑川には愛人がいて、その存在を知った妻は激しく嫉妬する。「無垢人」は、その修羅の日々を赤裸々に書いた小説なのだ。緑川は、愛人を「○子」という記号で登場させ、あくまで緑川家の平和を侵す者として描いた。「○子」とされて、相手の女はどう思ったのか。タマキは、まず「○子」を特定し、彼女がどんな生涯を送ったのか、取材を進めている最中だった。

タマキと阿部青司が再会したのは、あの激烈に別れた日の一年四ヶ月後であった。阿部青司は、タマキの担当編集者だった。何冊か本を作るうちに、二人とも家庭があるにも拘わらず、愛し合うようになった。タマキが書き、青司が編集する。いい気なもんだと言われても、至福だった。二人は誰にも知られないように心を配ったが、恋愛の最後の頃は誰もが知っていた。互いの家族でさえも。皆に呆れられ、軽蔑され、憎まれた。それでも、二人は付き合いをやめることができなかった。互いに世界中の誰よりもよく似た二人で、最も近しい人間、誰よりも信頼できる相手、と感じていたはずだった。結果、二人は別れた。再会した青司は、かつての面影はなく、自分の見知らぬ人間になっていた。

タマキは「無垢人」に激しく引き付けられると共に、その素直さ、愚直さに嫌悪も感じる。が、その嫌悪は、小説そのものに対してだった。緑川も何かに突き動かされて書いているのだ。小説という虚構が、次々と人を吸い上げ、血祭りに上げていく。つまりタマキは、青司と自分の、相手への怒りや憎しみが消えたかどうか知りたいのだった。「恋愛の抹殺」について考えることは、とにもかくにも恋愛の「涯て」を見たい、というオブセッションに他ならないのだ。だから「無垢人」に書かれた「○子」は、その後どうしたのかが気になった。やがて「○子」は、書く人と書かれた人と書かれなかった人々の蠢く小説の此岸の涯へ、タマキを誘っていく。

本作を一言で表せば、人間の業の深さでしょうか。また、タマキが取材で会う人みんなが、気持ち悪い。業に縛られているのか、それを拠り所にしているのか。緑川未来男に関わった人たちは過去のその時を振り返り、異様に饒舌になる。それはただの思い出懐古ではない。妄執といえるものだ。ちっぽけといえば御幣になるが、でもそこには女たちの並々ならぬ思いの強さがある。そして、時間が解決するというありふれた言葉自体を著者は逆手に取っている。そんな簡単に忘れるものか。酷い仕打ちはずっと記憶に残る。その負の感情にどう自分は折り合いを付ければいいのか。最後の1ページ、めっちゃ怖かったです。


桐野夏生さんのサイン。
桐野

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    2009

09.05

「スペース」加納朋子

スペース (創元推理文庫)スペース (創元推理文庫)
(2009/05/05)
加納 朋子

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シリーズ三作目の本書を読んでから、失った記憶を再生するために「ななつのこ」と「魔法飛行」を再読するはめに陥るのか。それとも、前もって「ななつのこ」と「魔法飛行」を再読しておくべきか。自分は後者を選んだ。こちらが正解だったと思う。いや、そう思いたい。シリーズの始まりはすべて、前作の終わりを引きずったまま新たに始まっている。「ななつのこ」のラストで駒子は本を書こうかなと思い、「魔法飛行」の冒頭では物語を書き始めている。「魔法飛行」のラストで大事件に振り回され、その余韻を引きずったまま本書「スペース」に突入する。

大晦日。年末の買出しに出かけたデパートで駒子は思いがけない人と再会する。警備員のアルバイトをしている瀬尾さんだった。ニュージーランドに旅行していた瀬尾さんからのお土産を手渡されたのは、たまたまクリスマス・イブだった。そのとき、ふと思ったのだ。いずれどこかへ旅行したときに、お返しをすればいい。けれど、クリスマス・プレゼントなら、すぐにでもお返しをするべきではないか。瀬尾さんが欲しがりそうなものを駒子はひとつだけ知っていた。それは〈謎〉だった。駒子は、十数通の手紙を瀬尾さんに読んでもらうことにした。瀬尾さんはどんな風に打ち返してくるだろう? 胸がどきどきしていた。

本書「スペース」は、全編のほとんどが手紙という「スペース」と、もう一つの「バックスペース」という中編の連作となっている。「スペース」の方は、これが思った以上に淡々とした手紙が続いており、その変化の乏しさ故に、途中、何度か睡魔に襲われてしまった。ごめんなさい。その手紙には書かれていないスペース(空間)があり、後に続く「バックスペース」でその空間を埋めていく。それと同時に、自分の居場所というスペースを探している。これは二つで一つ、表裏一体となった物語である。ただ駒子のシリーズとしては異質だ。これでは駒子のシリーズじゃないという方がいるかもしれない。

そう。どちらかと言えば、番外編と呼ぶ方がしっくりきたりする。ではどう違うのか。これまでは無縁であった恋の風景が登場する。その忍びやかに飛び込んでくる恋が劇的で、加納作品ではめずらしく胸がキュウンとなった。そしてこれまでは駒子の視点が当たり前であったが、今回は別の人の視線で駒子が描かれている。駒子は想像通りの女の子だった。ただ問題は、愛ちゃんにあった。見る人が違えば愛ちゃんって、こんなにも意地の悪い人なの? そこがショックだった。それと一番は、瀬尾さんってものすごく人が悪い。そう思った方は多いでしょう(笑) ネタバレを避けて書けるのはこれぐらいかな。さて、シリーズ四冊目が出たときはどうしようか。

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加納朋子
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    2009

09.04

「魔法飛行」加納朋子

魔法飛行 (創元推理文庫)魔法飛行 (創元推理文庫)
(2000/02)
加納 朋子

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入江駒子がついうっかり、「私も、物語を書いてみようかな」なんて口をすべらせたとき、瀬尾さんはやけに軽い口調で言ってくれた。「じゃあ書いてごらんよ。よかったら読んであげるから」と。本当にあった出来事なら何とか書ける。手紙で近況報告するように綴られていく駒子自身の物語。幾つも名前を持っている不可解な女の子との遭遇。美容院で耳にした噂に端を発する幽霊の一件。学園祭で出逢った〈魔法飛行〉のエピソード。クリスマス・イブを駆け抜けた大事件。駒子の物語は、いずれも大きな謎が解かれないままに終わっていた。

ややあって届く瀬尾さんの感想文には、駒子の首を傾げさせた出来事に対する一つの形が示されている。そして今回は瀬尾さんの他にもうひとり、謎の人物から、駒子宛に手紙が届けられる。これは一種の次元を超えた通信です。私は一人の読者です。私はあなたの周囲の出来事について、もしかしたらあなた以上に詳しいかもしれません。私はあなたの物語の日常を愛します。私という人間がどこかにいて、ページを繰っている。日常の物語を書き続けることで、耐えがたい現実から、ほんの少しの間だけでも逃れさせてほしい。手紙にはそう綴ってあった。

短大生の駒子はもちろん、彼女の友だちにもすごく魅力がある。資産家のお姫様ながら、周囲の度肝を抜くようなことだって、平気な顔でやってしまう愛ちゃん。間違いなく自分の足でしゃんと立ち、ちゃんと目的を持って、それにずんずん歩いてゆけるふみさん。歯に着せるだとか、日本人的歪曲な言い回しだとかとは、完璧に縁のないたまちゃん。そう、今回も女の子のガールズトークが楽しめるのだ。彼女たちの会話がとにかく楽しい。特に愛ちゃんの少しずれた天然には男はあっさりとやられてしまう。また、ツンツン系のふみさんにもMっ気を刺激される。個人的にSだけど。

駒子には見えない部分、あるいは見ようとしない部分が、瀬尾さんにはあっさりと見えてしまう。駒子はそれを「推理力」と呼び、彼は「空想力」と言い直す。空を想う力、と。なるほど、その通りだ。瀬尾さんは謎の絵解きはするものの、それが正解だと結論が出ないままに終わっている。分かっていることから想像して、可能性のひとつを提示しているのにすぎないのだ。駒子は続けて三つの物語を書き上げる。そして最終章で、駒子の元に届いた謎の手紙の差出人の正体が明らかにされる。そこで「空想力」という言葉にもう一度向き合うことになる。そこに込められた大きな仕掛けに巧いと唸ってしまった。と同時に、卑怯と叫んでしまった。

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加納朋子
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    2009

09.03

「ななつのこ」加納朋子

ななつのこ (創元推理文庫)ななつのこ (創元推理文庫)
(1999/08)
加納 朋子

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短大に通う十九歳の入江駒子は、この前、生まれて初めてファンレターなるものを書いた。原因は偶然手にした一冊の本にある。書店の新刊本コーナーで見つけたそれは、「ななつのこ」というタイトルの短編集だった。まず、その表紙に惹かれた。主人公は「はやて」という名の少年だ。彼がすいか畑の寝ずの番を命ぜられたところから、物語は始まる。与えられた仕事を、彼は無事にやり遂げた。でも、すいかは盗まれていた。苦悶に耐えていた少年は一人の女の人に出会う。「あやめさん」は想像でしかないと断りを入れてから、ひとつの解答を話し始めた。どうやらこの本に一目惚れしてしまったらしい。

ファンレターを書こう。そう思い立ったのは、「ななつのこ」を読み終えた直後だった。とにかく駒子はこの物語を書いた佐伯綾乃という人に、直接語りかけてみたい、という強い欲求に駆られてしまったのだ。それには手紙が一番手っ取り早かった。先ごろ身辺を騒がせた「スイカジュース事件」のことをまじえて長い手紙を綴ったところ、思いがけなく「お手紙、楽しく拝見致しました」との返事が届いた。さらには、件の事件に対する、想像という名の解決編が添えられていた。駒子が語る折節の出来事に打てば響くよう絵解きをする作家の佐伯綾乃。二人の文通めいたやりとりは次第に回を重ねていく。

そう、「はやて」と「あやめさん」の物語と平行して、「駒子」と「綾乃さん」の文通のやり取りが重なっている。読者はふたつの日常に起こる謎解き一度に味わうことになるのだ。まさに構成の妙。さらに全編を通じて読むと、全体を包み込んでいる謎にまで解決が及んでいる。一つひとつの物語は、決してハートウォーミングなものばかりではない。現実にある悪意をひやりと実感させるものもある。だが全体を包み込む優しい雰囲気に読者は癒される。今回は文庫化された「スペース」を読むための再読だけど、初読のときと変わらない新鮮な感動に打ち震えた。「ささら さや」と並ぶ代表作だと思います。読んで損なし。おすすめです。

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加納朋子
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    2009

09.02

「サッカーボーイズ14歳 蝉時雨のグラウンド」はらだみずき

サッカーボーイズ 14歳  蝉時雨のグラウンドサッカーボーイズ 14歳 蝉時雨のグラウンド
(2009/07/28)
はらだ みずき

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部室に残っていたのは、いつもの顔ぶれだった。キャプテンの武井遼介。Jリーグの下部組織を離れて入部した星川良。眉毛の濃いシゲこと山崎繁和。実力は折り紙つきのテクニシャン青山巧。ラーメン屋の一人息子でアツシと呼ばれるようになった浅野篤。部室にいる五人は、背中に「SAKURAGAOKA FOOTBALL CLUB」のロゴ入りのサッカー部揃いのブルージャージを着ていた。その時、部室のドアがノックされた。野球部のユニフォーム姿の、通称・オッサが、暗がりに立っていた。元ゴールキーパーが帰ってきたのだ。

桜ヶ丘中サッカー部は、噂されていた新しいコーチの赴任は見送られ、サッカー経験のない理科の教員である湯浅が顧問を務めていた。星川は満身創痍で、別メニューでの自主トレモードに入っていた。怪我を負ったゴールキーパーの西牧哲也は、復帰に二ヶ月かかりそうだった。それもあって野球部をやめて入部したオッサには期待がかかった。大会が始まってみれば、ゴールキーパーとして哲也より上と見込まれていたオッサが、安定感を欠いていた。シュートが飛んでくる。オッサはゴール前でボールウォッチャーになった。

新一年生の中では、やはり輝志のプレーが際立っていた。輝志は遼介たちがかつて所属した桜ヶ丘FCで監督をしていた小暮の息子だ。もうひとりは、女子部員の蜂谷麻奈。女子ながら男子を翻弄するような技術の高さを見せた。桜ヶ丘中サッカー部に新しい風が吹き始めていた。ただ、遼介には気がかりになっていることがあった。サッカーのことに詳しいコーチの不在に、危機感を抱いていた。そして、オッサはつまらないミスの連続で、チームに不協和音を生じさせてしまった。

シリーズ第三弾は、なんと言っても、オッサは立ち直ることが出来るのか、というところが読みどころ。再起するのはわかっている。でも読ませてしまう。感動もするのだ。そして、ゴールキーパーは、一度のミスで致命的な結果を招く。そういう特殊なポジションを掘り下げているところが目新しい。また、フォーメーションやポジションチェンジといった、サッカー経験者や通の人たちを喜ばせるような手も加えられている。

目立つのは得点を取る人。確かに点が入らないと勝てないスポーツだ。でもサッカーは十一人でする団体競技で、ひとり一人に役割があって、ボールが繋がっていかないと、ゴールに結びつかない。ディフェンダーが相手の得点チャンスを防ぎ、最後の砦となる守護神のゴールキーパーいて、ゲームとなる。そこがしっかりと描かれているし、試合に勝って優勝することだけが感動じゃないことも教えてくれている。面白かったです。これぞサッカー小説です。サッカーのファンで、まだ読んでいないという方は、「サッカーボーイズ13歳 雨上がりのグラウンド」から、ぜひどうぞ。

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はらだみずき
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