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    2009

10.31

10月に買った本

雪だるまの雪子ちゃん雪だるまの雪子ちゃん
(2009/09)
江國 香織山本 容子

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無理無理
(2009/09/29)
奥田 英朗

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同期同期
(2009/07/17)
今野 敏

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新参者新参者
(2009/09/18)
東野 圭吾

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太古の血脈太古の血脈
(2009/10/17)
藤木 稟

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はじめての麦わら帽子はじめての麦わら帽子
(2009/09/01)
本上 まなみ

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WILLWILL
(2009/10/05)
本多 孝好

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まほろ駅前番外地まほろ駅前番外地
(2009/10)
三浦 しをん

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よろこびの歌よろこびの歌
(2009/10/17)
宮下 奈都

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天才探偵Sen〈4〉神かくしドール (ポプラポケット文庫)天才探偵Sen〈4〉神かくしドール (ポプラポケット文庫)
(2009/10)
大崎 梢

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駐在刑事 (講談社文庫)駐在刑事 (講談社文庫)
(2009/09/15)
笹本 稜平

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僕たちの旅の話をしよう (MF文庫ダ・ヴィンチ)僕たちの旅の話をしよう (MF文庫ダ・ヴィンチ)
(2009/10)
小路 幸也

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八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
(2009/05)
高田 郁

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花散らしの雨 みをつくし料理帖



11月そして12月 (中公文庫)11月そして12月 (中公文庫)
(2009/10/24)
樋口 有介

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本が売れないと言われる時代を、ひとりで蹴散らした!



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    2009

10.31

10月に買った本の代金

個人メモです。


総額18.839円


↑こいつバカ?



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自分への戒め
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    2009

10.30

「狩眼」福田栄一

狩眼 (講談社ノベルス)狩眼 (講談社ノベルス)
(2009/09/08)
福田 栄一

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多摩川沿いの河川敷で死体が発見された。死体の身元は、世田谷区在住の野田孝良という医師。野田は死体で発見される四日前から行方不明になっていた。野田の死因は、鈍器による後頭部の打撲傷だったが、実際は頭部を滅多打ちにされていて頭蓋骨の原形をとどめていないほどの惨状となっていた。そして、この事件を奇異なものにしているのは、殺害後に犯人が死体の両目を刳り抜いているという点だった。

捜査本部の一員である若手刑事の伊瀬巡査部長は、所轄の南多摩署刑事課の同僚である杉内と共に、地取り捜査を担当していたが、何一つ有力な情報を得ていなかった。死体発見から二週間が経過しようとしている現在、捜査は完全な行き詰まりを見せていた。そんな中、伊勢は刑事課長の水野から今の担当を外れて、別の役割を与えられた。それは警視庁本部からきた戸垣巡査部長と組んだ、独自の“調査”だった。

戸垣は捜査本部の方針から逸脱した行動を取る。執拗に単独捜査へのこだわりを見せ、擁護者である水野にさえ情報を隠そうとする。伊勢は戸垣の捜査方針について意見するような真似はやめた。ただ、それは表向きだけのことであって、実際に唯々諾々と従うつもりはなかった。確かに、伊勢は戸垣の捜査姿勢に対して畏敬の念を抱くようになったが、それ以上に、水野課長に対する尊敬と信頼の力の方が強かったからだ。

福田栄一さんと言えば、ユーモアのあるパズラー小説の書き手だ。それが今回は真っ向から刑事小説に取り組んだ、というのが本書。まずは犯人に襲われる被害者の目線で始まり、本編では変人刑事に振り回される若手刑事という図で展開し、そこに白内障を患ったOLや深夜の倉庫番をする男の目線が加わり、中々捜査が進展しない捜査本部を他所に、ベテランと若手のコンビは少しずつ犯人に近づいてゆく。ところが、意見がわかれて唐突にコンビを解消。そこからが著者の真骨頂であるパズラーぶりが発揮されるのだ。

犯人はこいつだろう、と思わせては、ひっくりかえし、ようやく事件は解決か、でも残りのページ数はまだまだあるぞ、と思っていたら、またまたひっくりかえり、そして最後には意外な人物が浮上して…。著者にすれば、この謎の人物は王道なのかもしれない。しかし、一読者にとっては、思いもよらない展開だった。それともう一つ。いくら意味深であっても、プロローグとはそういうものだと読み飛ばしがちだ。そこにもひっかけがあって…。

やられました。少し読後感は悪いですが安心して読めると思います。ただ、刑事ものに重厚さを求める方には軽いかもしれません。でも、おっと驚く仕掛けは中々のものがあり、意外性も楽しめる作品でした。まだまだ名前の知られていない作家ですが、デビュー作からずっと注目しています。これからも読み続けたい作家だと、追いかけていきたい作家だと思っています。大きくなあれ。大好きな作家です。

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福田栄一
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    2009

10.28

「完全犯罪に猫は何匹必要か?」東川篤哉

完全犯罪に猫は何匹必要か? (光文社文庫)完全犯罪に猫は何匹必要か? (光文社文庫)
(2008/02/07)
東川 篤哉

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十年前、寿司店経営者、豪徳寺豊蔵の自宅のビニールハウスにて、男性の変死体が発見された。死亡推定時刻は前夜の午後八時から十一時までの三時間と断定された。この時間帯に犯人は被害者をビニールハウスの中ほどに連れ込み、その腹部を刃物によって刺し、凶器を持って逃走したものと考えられた。被害者の身元は豪徳寺家からほど近いところで開業医を営んでいる矢島洋一郎という医者だった。目撃者を捜していたところ、午前零時をすぎた時間に、ハウス内にて不届きにも立ち小便をしていたサラリーマンがいた。ところが、死体はなかったという。事件はものの見事に迷宮入りした。

そして現在。烏賊川市近辺において回転寿司といえば「招き寿司」をおいて他にない。有名といえばもうひとつ。「招き寿司」は店舗の前に巨大な招き猫が鎮座していることで、特に有名である。寿司チェーン社長・豪徳寺豊蔵が破格の金額で私立探偵・鵜飼杜夫に行方不明になった愛猫ミケ子の捜索を依頼した。捜索には弟子にあたる戸村流平と、若きビルオーナーの二宮朱美も協力した。その数日後、豊蔵は自宅のビニールハウスで遺体となって発見された。なぜか普段は門前にある等身大招き猫がハウスの裏口におかれ、表の入口には娘の真紀が座ったまま縛りつけられていた。

烏賊川暑の自称エースと自称ホープもすぐさま現場に駆けつけた。砂川刑事と志木刑事である。怪しげな一通の手紙に呼び出された真紀は、犯人の罠にかかって縛られ、猫のお面を被った犯人が、父親をナイフで刺し殺すところを目撃し、出口に置かれた等身大招き猫の足元のあたりに、ミケ子らしき三毛猫が並んで座っていたのを記憶した。豊蔵氏の葬儀には、ミケ子の捜索を依頼されていた鵜飼たち三人の姿もあった。その葬場のトイレ内で、なんでも屋の岩村が殺されているのを流平は見つけてしまう。猫、猫、猫。猫づくしのユーモアミステリ。烏賊川市シリーズ第三弾。

やはり東川篤哉はいい。450ページという長編にも関わらず、あっという間に読み上げてしまった。何がそうさせるのか。それは一重に、この作家特有の笑いにある。どこを読んでいても笑いがある。プロローグからエンディングに至るすべてにだ。そしてとにかく軽い。登場人物たちの行動が軽妙でコミカル。会話もボケとツッコミがテンポ良くからみ合い、厭きるということがまずない。それでいて、本格としての完成度も高く、淡々としがちな謎解きにも面白味が込められたものとなっている。そして動機にしても、それを持ってきたかと、つい感心してしまうものだった。今後も読んでいきたい。そう思わせる魅力がこの作家にはいつもある。

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東川篤哉
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    2009

10.26

「霊峰の門」谷甲州

霊峰の門霊峰の門
(2009/08/26)
谷 甲州

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山の民の天狗は、吉野の山を支配する一言主の呪術によって、韓国広足の命によって、葛城に住まいする役小角の謀殺を命じられた。天狗は呆然として童女をみていた。一見すると幼女のようだが、物腰は大人の女を思わせた。童女は皐月女と名乗った。既視感があった。そうだった。俺は天狗などという名ではない。俺の名は佐提比古。皐月女との離別をしいられ、ついには壬申の乱で敗れた大友皇子の死者の代理、尸者という影として葬られた。輪廻転生。成仏に縁遠い衆生は、迷いの中で何度も生と死をくり返すという。

河内に兵を挙げた楠木軍は追いつめられていた。多聞丸は父の死をきっかけに、自分がこの世に生まれてきた理由を思い出した。我が命と引きかえに、他人の死を肩代わりする。ほとんどの場合は追いつめられて非業の死を遂げた。汚名を着せられて誅殺されたことも一度ではない。死をまぬがれない者たちの尸者として、あるいは人々の恨みを一身に負って首級を差し出した。そのたびに影として転生し、あらたな運命にしたがって身代わりの死を受けてきた。多聞丸は比丘尼を通して皐月女と出会う。七百年ぶりの再会だった。

二百五十年後。熊野衆の忍び黒滝の半兵衛は、本能寺の織田信長を討った明智光秀を、輪廻した楠木正成を成仏させるべく、光秀が陣を構える山崎の地へと駆ける。そして時は流れ、天誅組と称する勤皇派志士の一団は、吉野を倒幕運動の拠点として、新政府を樹立しようと画策していた。楓は組織としての脆弱さを抱えている天誅組挙兵の真っ只中に連れ出される。生とは何か? 死とは何か?  輪廻転生を繰り返しながら奈良時代、鎌倉末期、戦国時代、幕末を生き、時代と戦乱に翻弄された男女の悲劇を描く歴史伝奇大作。

なんて無闇に長い作品なんでしょう。そして、歴史に名を残した人物を登場させながらも、なぜかそこは駆け足で通り過ぎて、それを活かさない方へ持っていこうとする。確かにページ数を一番割いていた天誅組の無謀な挙兵についてはあまり知られていない。これはこれで面白く読めた。しかし、表のテーマである輪廻転生とはかけ離れた歴史小説が長々と続くのには正直戸惑った。そのように、全体的にだらだらと間延びをし、何を一番に読ませたいのかが中々見えてこない。そして、奈良時代から幕末へと千年にも及んだ輪廻の輪は、ご都合な展開によってごくあっさりと絶たれる。天誅組の高取城攻めは濃いのに、ほんの少しの活劇で終焉をむかえるなんて、これには唖然とした。作品のバランスも悪く、もやもや感しか残らなかった。面白そうと思った勘はどうやらハズレ。自分とは合わない作品であった。

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その他の作家
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    2009

10.23

「さよならの次にくる〈新学期編〉」似鳥鶏

さよならの次にくる<新学期編> (創元推理文庫)さよならの次にくる<新学期編> (創元推理文庫)
(2009/08/30)
似鳥 鶏

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苦労性の高校生・葉山君の、山あり谷ありの学園探偵ライフ。「さよならの次にくる〈卒業式編〉」から続く、爽快なフィナーレまで一気呵成に突き進む学園ミステリ、後編。「ハムスターの騎士」「ミッションS」「春の日の不審な彼女」「And I’d give the world」「よろしく」の五編を収録。

名探偵の伊神さんは卒業、美術部の葉山君は二年生、演劇部部長の柳瀬さんは三年生、そして迎えた新学期。「曲がり角でごつん」がきっかけで、葉山君は可愛い一年の眼鏡女子・佐藤希さんと知り合った。入学以来、怪しい男に後をつけられている。一年の教室にも不審者が侵入した。彼女の携帯には気味の悪いメールが届き、指定された場所には人形の首が入った紙袋。葉山君は柳瀬さん以下演劇部有志の力を借りてストーカー撃退に奔走することになる。(「ハムスターの騎士」)

部員総勢一名しかも男子だけの美術部に新入部員が一名入部した。佐藤希だった。ところがいざ美術部の活動をしようとすると、他の芸術部員からのヤボ用がすり寄ってくる。ミノが持ってきたミッションとは、職員室の教師の机に接近し、引き出しを開けてカードキーを摂取、偽造カードキーとすり替えた後素早く引き出しを閉める、というものだった。ミッションは成功。だが翌日、本物はまだ返していないにも関わらず、教師は何の問題もなくカードキーを使用し、システム管理室の扉を開けた。(「ミッションS」)

市が主催する文化祭から演劇部にお呼び出しがかかった。人手が足りないということで美術部の二人も借り出されることになった。今回は出張公演であり泊りがけになる。そして、事件が起こった。部屋のドアはオートロック。ドアを開けるべき鍵は身につけていた。窓には鍵がかかっていた。それなのに、朝起きたらテーブルの上にはマネキンのジェシカが横たわり、その下には脅迫状があった。葉山君は数日前から脅迫状めいた手紙を立て続けて受け取っていた。(「春の日の不審な彼女」)

愛心学園の中等部に謎の紳士が出現したらしい。その紳士が捜していたのは私のことではないか。作家の幻城影彦のシリーズに出てくる千堂愛は私がモデルなんです。そのせいで手紙を送ってくる人や、写真を勝手にサイトに上げる人も、中にはいるんです。これまで父には黙っていた。だが、その時は話してしまった。冗談めかして、日常の家族の会話として話した。それならば、父がたいした衝撃を受けることもない、と思っていた。しかし、父の反応はおかしかった。(「And I’d give the world」)

そして、後日談。(「よろしく」)


〈卒業式編〉と〈新学期編〉を続けて読んで思ったことは、これは二冊で一つの作品であるということ。各短編ではそれぞれに謎が提示され、名探偵の伊神さんの推理によって謎は解かれていく。葉山君のがんばりや、柳瀬さんのテンション高さといったキャラものとしては抜群に面白い。しかし、連作短編ミステリとしては若干物足りなさがある。そう思っていたら、本作の終盤にガツンとやられてしまった。意味不明であった断章や、人物がふともらした何気ない一言に意味があったと、その伏線の多さに驚愕する。そして現れてくる事実に…、これ以上はネタバレになるので言えません。読むときは是非とも二冊続けて読みましょう。これは二冊で一つの作品ですから。学園ミステリでは、今一番面白い作家だと思います。

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似鳥鶏
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    2009

10.22

「さよならの次にくる〈卒業式編〉」似鳥鶏

さよならの次にくる <卒業式編> (創元推理文庫)さよならの次にくる <卒業式編> (創元推理文庫)
(2009/06/20)
似鳥 鶏

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デビュー作『理由あって冬に出る』に続くコミカルな学園ミステリ、前編。「あの日の蜘蛛男」「中村コンプレックス」「猫にあたえるべからず」「卒業したらもういない」の四編を収録。

小学校を卒業するあの日。葉山君の渾身一滴ラブレターは、突風に吹き上げられ、ビルの屋上に消えてしまった。キムラビルは四階建てのビルだった。平べったくて何もない、のっぺりした屋上だった。手紙はない。隣の第二高橋ビルかもしれない。そう思い、出入り口に駆け戻ると、同級生によって屋上に閉じ込められていた。その後の葉山君は、けっこう凄かった。日が暮れる頃にはキムラビルの屋上を脱出し、六メートル離れた第二高橋ビルの同じく封鎖されていた屋上に立っていた。(「あの日の蜘蛛男」)

「東雅彦は嘘つきで女たらしです。二月一日、こんなことをしていました」愛心学園吹奏楽部の部室に貼られた怪文書。そして腕を組んで歩いている男女を撮影した写真。男性の顔に見覚えがあった。東だった。こんなものを貼ったのは誰だと部員たちが特定の人物を犯人扱いしそうになったとき、オーボエ首席奏者の渡会千尋が「私がやりました」と名乗り出た。渡会千尋。葉山君の初恋の人だ。初恋の人の無実を証明すべく、葉山君が犯人捜しに取り組むことになった。(「中村コンプレックス」)

庭園の小さな池のあたりの茂みに白い猫が一匹、棲み着いていた。ジャックという名前だと、最近知った。猫はどうでもよかった。どうでもよくないのは、その猫に会いに来るお姉さんの方だった。ジャックはお姉さんには懐いている。だがジャックはこちらには一向に寄ってこようとはしなかった。夜の庭園は立ち入り禁止になる。諦めきれずに持参した餌を、ジャックは警戒しながらも食べてくれた。驚くべきことに、ジャックがすり寄ってきた。翌日の朝、ジャックの死体が水面に浮かんでいた。(「猫にあたえるべからず」)

三月十二日。伊神さんは今日、卒業する。伊神さんが活躍して謎が解かれるシーンに、何度も立ち会っている。大事件が起こる時、いつも伊神さんがそこにいた。その伊神さんが卒業する。今後事件に遭遇しても、伊神さんはもういない。卒業おめでとうございます。卒業しても遊びに来てくださいね。それだけは言っておこう。卒業式は大盛況のうちに終わった。伊神さんを捜した。ところがつかまらない。本人はどこにもいないし、電話もメールもつながらない。伊神さんが消えた。(「卒業したらもういない」)

章の合間に意味不明の断章あり。後編を続けて読めということかしら。
「さよならの次にくる〈新学期編〉」に続く。

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    2009

10.21

「走れ!T校バスケット部3」松崎洋

走れ!T校バスケット部〈3〉走れ!T校バスケット部〈3〉
(2009/07)
松崎 洋

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陽一はW大、のぞき魔はA大、メガネはJ大、俊介はキリスト教大学、チビは家業の寿司屋。彼らT高バスケ部三年生の進路も決まり、卒業式の日をむかえていた。T校で三年間培ってきたことは、忘れるはずなどない。さまざまな出会いが人として大きく成長させてくれた。最高の友、最高の先生、素晴らしい対戦相手。すべてバスケットというスポーツのお陰だ。W大のスーパースター佐藤準や、全米ジュニア代表のトムに会えたのも貴重な体験だった。いまだに行方が分からない河原の住人蓮野賢司に勉強を教えてもらうようになったのも、バスケットの練習がきっかけであった。

台風による多摩川の氾濫で濁流に流された薄野賢司は、犬のタロウだけでも助けようと、川岸に向かって力の限り放り投げ、やがて完全に意識を失った。気がつくと、そこは病院だった。薄野は右腕と記憶を失っていた。病院から逃げ出した薄野は、その一帯を縄張りとするホームレス、通称ゴカイの哲次に声をかけられた。片腕ということで丹下左膳をもじって丹下と名づけられた薄野は、多摩川の河川敷で哲次とともに暮らすようになった。一方のタロウは陽一の家にひきとられた。タロウは河原で出会ったドッグスポーツ経験者の西尾老人から訓練を受けることになり、大会出場を目指すことになる。

陽一を中心とした元T高バスケ部のサイド。もう一つは、犬のタロウを中心とした大人たちのサイド。重点としては後者の方に偏っている。大まかに言えば、この両輪によってストーリーは展開してゆく。一作目は熱い青春バスケ小説。二作目はバスケ色が薄くなった中途半端な学園小説。そして三作目は、ええっ!と驚くぐらいバスケを横に追いやった出来すぎドラマ。この著者はどこを目指しているのだろう? 

読者はバスケの熱いシーンを期待して、このバスケと名の付いた本を手に取る。なのに、著者はその期待をあっさりと無視して、おもいっきり裏切っている。期待に答えるも答えないのもそれは作者の自由だ。それに対して、お金を出して買うか買わないかを決めるのは読者だ。バスケものを読みたい方は、無理して読む必要はありません。読んだ人の意見としてはまず、こう言わざるをえない。

しかし、人との出会いだけがすべてで、それで上手くいってしまうという完全無欠のハッピーエンドも思ったほど悪くはなかった。一作目で完結したと自分の中で思い込み、二作目からは安っぽい三文ドラマだと割り切れば、それなりに楽しめると思えるようになってきた。二作目で狙った「どじょう」は逃がしたかもしれないが、三作目では「なまず」が掛かったかもしれない。ここにあるのは絶対プラス思考オンリー。自分の好みをぶつけずに、気持ち良く本を閉じたい方にだけ、おすすめできます。

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    2009

10.20

「神様のカルテ」夏川草介

神様のカルテ神様のカルテ
(2009/08/27)
夏川 草介

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栗原一止は、本庄病院に勤務する五年目の内科医である。信濃大学医学部を卒業したあと、松本平の中ほどに位置するこの病院に我が身を投じた。本庄病院は病床四百床で、地方都市の一般病院としては相当に大きい。一般診療から救急医療まで、幅広い役割を果たす地域の基幹病院である。所属する消化器内科には、栗原を除けば部長の大狸先生と副部長の古狐先生しか医者がいない。これだけの戦力で、外来、病棟、内視鏡検査、夜間緊急処置などのことごとくに対応しなければならない。むろん病院も大々的に医師を募集しているが、そう簡単にこの地方都市の一病院に医師がやってくるはずもなく、仮に来てくれたとしても、そのあまりに劣悪な環境にあきれ果てて、じきに去るのが関の山である。

夜になると日中とは違う名札を渡される。「救急医」である。実に便利な名だ。もちろん名札がどんなに見事に変わっても、つけている人間は日中と同じ内科医である。慢性的医者不足のこの町では、外科でも内科でも耳鼻科でも皮膚科でも、ひとりの「救急医」が診療を行う。むろん良いわけがない。しかし、これも地方病院の現状なのだ。現場にとって重要なのは、医者か医者でないか、ということくらいであろう。救急車のサイレンは深夜でも途切れず、それを受け入れるのは、睡眠不足の医者と経験不足の研修医だ。睡眠を三日取れないことも日常茶飯事だ。「24時間、365日対応」などという看板は、むろん患者にとってみればありがたい看板であろうが、内側から見れば、まるっきり張り子の虎だ。

夏目漱石を愛読し、その影響でいささか古風な話しぶりから変人扱いされている栗原は、有能で美人の看護師と、外科医としては優秀だが、アホウで黒い化け物の同僚と助け合いながら、日々の診療をなんとかこなしている。特段の志があって働き続けているわけではない。一握りの信念と吹けば飛ぶような使命感だけが、かろうじて我が身を支えている。また、もともとは旅館だった下宿「御嶽荘」にはたくさんの人間が住んでいる。住みついてすでに五年。帰らぬ日が多いとはいえ、これだけ長く住んでいると、さすがに親しい人間もできてくる。男爵や学士殿という誇り高き路傍の人と酒をくみ交わしては激論を戦わせ、居酒屋「九兵衛」ではゆっくりと名酒を味わう。

そんな栗原に、最近、しきりに母校の医局からお誘いの声が掛けられている。本庄病院などやめて、大学に来ないか、と。大学に戻れば休みも増え、山岳写真家として世界を飛び回っている愛しい細君のハルと過ごす時間が増える。大学でしか学べない高度医療というものもある。多くの医者に会い、技を磨き、知識を深め、さらに高みを目指すことができる。だが、目の前の患者たちを置いていくのはいやだ。大学病院や大病院に手遅れと見放された患者たちと、精一杯向き合う医者がいてもいいのではないか。治療だけが医者の仕事ではない。悩む栗原の背中を押してくれたのは、いつもすまなそうな顔をしている癌を患った高齢の患者さんからの思いがけない贈り物であった。

笑えるユーモアあり、泣ける感動あり、優しさに心が温かくなり、疲弊した地方医療の中で働く姿に応援したくなる。それにクセのある人ばかりだけど、みんないい人ばかりだ。細君とのラブもめちゃめちゃ可愛い。崩壊した医療をテーマにしておきながらも、そこに重さ感じさせず、とてもあたりがよかった。「である」調の話しぶりにしても、慣れれば心地良いリズム感を与えてくれる。最先端の医療機器を備えた大病院も必要だけど、こういう患者と向き合う先生がいる病院もあるべきだと思った。特に大きな事件が起きるわけでもなく、全体的にほのぼのなのに印象に残る作品。読んで良かったと素直に思える作品であった。


夏川草介さんのサイン。

夏川

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    2009

10.19

「壷空」平谷美樹

壺空 (カッパノベルス)壺空 (カッパノベルス)
(2004/06/19)
平谷 美樹

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岩手県胆沢郡日高町苫丑。この土地には遺跡が眠っている。田神幸利は埋蔵文化センターに勤務する調査員である。掘り返した土の中に、欠損のない土器があった。渦巻きや縄目の文様のついた蓋の三方に半円形の開口部がある。現在田神が掘っている場所は縄文時代晩期の祭祀場の跡と推定された円形広場だった。そこを取り囲むように弥生時代の土器が計十八個も発掘された。ぎっしり土が詰まった土器の中に、炭の断片が顔を出している。顔を近づけると、微かに甘い香の薫りがした気がした。気のせいだ。田神が思った瞬間、薫りは何処かへ消えてしまった。

倉田嘉世子は十数年、年金だけで慎ましく暮らしてきた。新聞記事の中にその名を見つけて、年老いた嘉世子の心臓はドキリと鳴った。羽田野建設。羽田野は、自分たちの手から不当に土地を取り上げた。嘉世子は新聞記事を読んだ。羽田野建設がスパリゾートの建設を予定していた土地で行った試掘調査の結果、予想以上に規模の大きな遺跡であることが判明し、本調査が必要と判断され、スパリゾートの完成予定延びる。羽田野が困ることなら大歓迎だ。発掘作業の補助員を募集していた。羽田野も現場に顔を出すだろう。殺してやる。必ず、復讐してやる。嘉世子は発掘作業補助員に応募した。

羽田野重明は発掘現場を見下ろしていた。馬鹿を相手に商売するには、なによりも評判を気にしなければならない。砂の山からそれは顔を覗かせていた。壷だろうか。それにしては口もない。中が空洞になっている。今までに見たことがない土器だ。密やかに邪気を放つそれを見て虜となった羽田野は、壷を密かに家に持ち帰った。凶悪にして奇怪な事件が起こり始めた。呪法が行われた太古の遺跡で、しかも儀式の準備が整った状態で地中に埋まった土製品。暗黒を孕んだ壷は、穢レや邪霊を吸い、亡霊を呼び、羽田野の体に宿った力は、羽田野の心を支配し、儀式を完了させようと行動する。

聖天神社は、蝦夷の族長、黒丸王の怨霊を封じるために建立された。聖天家の家系を辿れば、黒丸王に至るという。聖天家は巌と弓弦の二人暮らしである。凶兆を得て調査に載りだした聖天弓弦に、太古の秘儀と呪詛が現代に甦った大きな穢れを、祓うが出来るだろうか。弓弦の中に眠っている力は覚醒するのか。また聖天家と法印家は祖先から続く遺恨や因縁を持っていた。黒丸王の手首と蕨手刀は、蝦夷討伐軍の支援を行った法印家の祖先が切り落とし、都へ持ち帰ったものだ。呪術師の法印空木は、この代々伝わる《黒丸王手首付き蕨手刀》を、ライバルである弓弦に返そうと、凶事が動き出している北へ向かう。

知的好奇心をくすぐる遺跡発掘、未知の土製品、縄文の呪術。さらに幻視で見る縄文時代。気持ち悪さに心が怯んでしまう蝟集する穢レや邪霊、襲いくる亡者、エグい人の死、甦ったミイラ、そして、鬼。それらに対するのは、呪術や祈祷法を駆使する聖天弓弦と巌の親子、その親族の竜子と詳子、そして、異形の法印空木。最後は、痛快の活劇に胸がわくわくし、この続きをぜひとも読みたいと強く思った。しかし、このシリーズは今のところこの二作目で打ち止めだ。すごくもったいないと思う。大人の事情はあるだろうけど、もし出版社が某社なら、何らかの形で続いていただろう。ねえ、光文社さん。

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    2009

10.18

「法月綸太郎の功績」法月綸太郎

法月綸太郎の功績 (講談社文庫)法月綸太郎の功績 (講談社文庫)
(2005/06)
法月 綸太郎

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警視庁捜査一課の法月警視の息子で、推理作家の法月綸太郎が難解な事件の謎を紐解く、五つの本格ミステリー。「イコールYの悲劇」「中国蝸牛の謎」「都市伝説パズル」「ABCD包囲網」「縊心伝心」を収録。全体的な出来としては悪くないと思う。ただ、この著者には「頼子のために」と同等のレベルをつい期待してしまう。「頼子」は別格だとわかっていてもだ。それを思うと、まったくもって損な作家だ。

「イコールYの悲劇」
翠に連絡して明日の約束をしておかないと。ゆかりは電話の受話器を手に取った。三度のコール音の後、電話に出る声。姉は今、外出しておりまして。電話に出たのは翠の妹の茜だった。主人である坂崎氏は出張で家にいなくて、泊まりがけで遊びにきたままひとり留守番をしているということだった。その数時間後、帰宅した翠によって、遺体となった茜が発見される。現場には、「=Y」というダイイング・メッセージが書き残されていた。翠の供述から、夫の不倫相手なる容疑者が浮かび上がるのだが。そして事件翌日に起きた別件の被害者が翠の友人であったゆかりであることが判明した。

「中国蝸牛の謎」
綸太郎の許に、対談の依頼が舞い込んだ。相手は今年デビュー二十五周年を迎える人気作家の鹿沼隆宏。今でこそオールラウンドな作風で幅広い層の読者を獲得しているが、対談当日、鹿沼は初心に返って本格物を書くと宣言した。その小説は密室物で、カタツムリをモチーフとし、鏡に映った像がトリックを解明する重要なヒントになるという。対談から一ヶ月後、鹿沼が自宅の書斎から消失し、別の場所で死んでいるのを発見された。消失現場となった書斎は、密室状態で、部屋中の家具や調度類が、みんな上下あべこべの位置に動かされていた。

「都市伝説パズル」
大学生のA子はサークル仲間たちと飲み会を楽しんだ先輩のアパートを後にした。部屋に忘れ物をしたA子は先輩のアパートへ引き返すことにした。ところが、部屋の電気はすでに消えていて、チャイムを鳴らしても返事がない。試しにドアノブを回すと、ドアが開いた。部屋の中は真っ暗だが、先輩を起こすのもかわいそうと、電気をつけずに、忘れ物つかみ、そのまま部屋を立ち去った。翌日、先輩は遺体で発見された。そこには血染めの文字でこう記されていた。電気を付けないで命拾いしたな。この有名な都市伝説と、まるで瓜二つの事件が実際に起こった。

「ABCD包囲網」
出頭してきた鳥飼の自白は二度とも嘘だった。一件は真犯人が逮捕され、もう一件も明らかに自殺だった。それから半月後、鳥飼は例によって、性懲りもなく嘘の自白を重ねたが、これまでの二回とは違って、鳥飼と前後するように鳥飼の妻が姿を見せた。夫の様子がおかしいので、留守中に部屋を調べてみると、机の抽斗からこんなものが。地図に打たれた四つの×印のうち、三つはいずれも鳥飼が出頭して、虚偽の自白を行った事件の現場を示していた。それら三つの地点は、一直線上に並んでいた。そして、四番目の×印は鳥飼夫婦が住んでいるところだった。主人は、わたしを殺そうとしています。

「縊心伝心」
ひとり暮らしのOLが妻子持ちの不倫相手に、これから自殺すると予告電話をかけた。それから一時間後、男が女のマンションに駆けつけると、彼女は部屋で首を吊って死んでいた。ロフトベッドのスチールパイプに、荷造りロープをくくりつけて。男はすぐに警察を呼んだ。ところが、ロープを外して女の死体を調べてみると、死因は縊死ではなく、後頭部の打撲であることがわかった。最初はだれも、男の供述を真に受けたりはしなかった。ところが、男には非の打ちどころのないアリバイが成立した。さらに遡ること一ヶ月前、男の自宅に匿名の手紙が届いて、愛人との関係が奥さんに知らされていた。

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法月綸太郎
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    2009

10.17

「反撃」草野たき

反撃 (teens’ best selections)反撃 (teens’ best selections)
(2009/09)
草野 たき

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人生は思う通りにならないことがいっぱい! 一見くじけそうな状況を、しぶとく強く、しなやかに生き抜いていく、5人の少女たちのガールズファイトストーリー!

「神様の祝福」
バドミントン部では、アドバイスをしていた後輩が自分をさしおいてレギューラーになり、ためしに退部届を出してみたら誰も引きともてくれなかった。次の演劇部では、がんばるつもりでいたのに、みんなからは一回の芝居のための臨時部員としか認知されていなかった。塾の夏期講習では、彼氏ゲットのつもりが、相手の男子に体よく遊ばれて、ストーカー疑惑が学校中に広まった。気がつくと、なかよしの友だちというのがいなかった。中学生活は、味気ないものだった。卒業後、森田真奈美の反撃が始まる。

「ヒーロー」
学級崩壊を経験したのは、六年のときだった。もう学級崩壊なんて、絶対にイヤ。いじめや仲間はずれやグループ同士の紛争もイヤ。そういうのにまきこまれることはもちろん、目撃するのさえイヤ。だから、私が守る。クラス平和は、私が保ってみせる。そうして河上里美は、デブでブサイクなのを気にしておとなしく生きてきた自分のキャラを変えた。自虐ネタ、しかもおもしろいエピソードつき、そして話すときは猛烈に高いテンションで。それなのに、ラブレターをもらい、いつもの調子がでない。

「いつかふたりで」
毎年八月の半ばに、お母さんの実家である新潟のおばあちゃんの家に遊びにいく。おばあちゃんに会うのも、おばさんも、おじさんのことも嫌いじゃない。ただ、一つ年下のいとこの千絵ちゃんに会うのがイヤだった。わがままで、自分勝手で、いじわるで、そしてなにより私に対する態度は、最悪だった。格好よく働くお母さんが悪くいわれないために、おばあちゃんたちの前では、いい子でいるようにしてきた。千絵ちゃんにムカつくことをいわれても、佐々木有里はじっとたえてきた。だけど、もう我慢するのはイヤ。

「ランチタイム」
手にはいらないものというのがある。私は日本の秋田県じゃなくてフランスのパリに生まれたかった。それがダメなら、ロンドンでもいい。北欧でもいい。これは、努力と根性とかじゃどうにもならない。もう、ここにいるのはうんざりだ。この日本じゃ、秋田のド田舎じゃ、こんな典型的な日本家屋じゃイヤ。スカートの下にジャージをはいて寒さをしのぐ友だちや、鼻水をたらした弟や、六人目を妊娠しているような母親じゃ、イヤ! こんな名前もイヤ。私は山田明子なんかじゃイヤなのだ。

「さつきさん」
たかしちゃんと私は年が二十歳もはなれたいとこ同士だ。親子でもおかしくない年の差だけど、たかしちゃんが半年前まで、うちに居候していたこともあって、私たちは仲良しだった。そのたかしちゃんが、結婚するという。うちにきた婚約者のさつきさんは、おとなしいお姉さんという感じで、たかしちゃんのとなりで幸せそうにくすくす笑っていた。ところが、ふたりきりで会ったさつきさんは、はじけたメイクと服装でケラケラ笑う。私の前でだけ本性を見せるこの女の目的は、いったいなんなのだろう。佐竹瑞穂は困惑する。


主人公の女の子たちは、何をしても上手くいかない。思い通りにならない。そして、痛々しくて、イケていない。もちろん、自分の価値観だけで精一杯だから、物事の判断基準は狭くなりがちだ。折り合いのつけかたも下手。でも、誰だって不器用で、子どもだからという無力感を味わう年代を過ごして、少しずつ大人になっていく。そうして、純粋さや真直ぐ思いつめる根気を失っていく。諦めるということを自然に身につけてしまう。物分りだけの面白くない大人になっていく。彼女たちはブサイクだけど、大人が失ってしまった輝きを持っており、そのいじらしさにキュンとくる。そんな一冊だった。

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草野たき
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    2009

10.16

「いっぺんさん」朱川湊人

いっぺんさんいっぺんさん
(2007/08/17)
朱川 湊人

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田舎で出合った8つの不思議ストーリー。

「いっぺんさん」
百葉箱より小さい祠は、昼間でも薄暗い森の中では、ただひっそりとあった。繁った木々に半分飲まれかけていて、友だちのしーちゃんが目ざとく見つけなければ、私たちは気づかずに通り過ぎてしまっていただろう。これでしーちゃんの願いを叶えることができると、小学四年生だった私は単純に信じた。なぜならその祠こそ、どんなお願いでも一回だけなら叶えてくれる神様。いっぺんさんだったからだ。早く大人になって、白バイ警官になりたいという、しーちゃんの夢。

「コドモノクニ」
お母さんは、和子を産んですぐに、出ていってしまった。お母さんはきっと雪女だったので、お兄さんと自分を置いて、東京に行ってしまった(「ゆきおんな」)。どうしよう。隆志はよく行く文房具家さんでドロボウしてしまった。その時、お母さんが帰ってきた(「いっすんぼうし」)。なんという生き物なのか、純一にはわからなかった。動物に悪戯するのは、楽しいもの(「くらげのおつかい」)。お母さんと新しいお父さんと暮らすより、やっぱりお父さんと弟いた方が、真理恵はずっと幸せだった(「かぐやひめ」)。

「小さなふしぎ」
大黒柱の父が大病を患って、私たちにはアメ玉一つを買うお金もなかった。幼い弟や妹を不憫に感じることがあり、私が考えたのは、空き瓶を集めて酒屋さんに持って行き、換金してもらうことだった。ある時、遠い街に集めに行って、迷子になってしまった。そんな私に手を差しのべてくれたのが、近所に住んでいる「鳥使い」の中山さんだった。中山さんはヤマガラに芸をさせる“小鳥のおみくじ”を商いにしていた。商売に使う小鳥は三羽いたが、中でもチュンスケはどの鳥よりも元気で、仕事熱心だった。

「逆井戸」
俺は今年、ちょうど三十歳になった。会社をリストラされ、彼女にもふられ、自分を鍛えるつもりで、バイクで西へと旅に出た。ある日、俺は奇妙な女に出会った。場所は、小汚い食堂だった。その数時間後、俺は女に誘われて、近くのラブホテルにチェックインした。私の妹のところにも行ってみない。そこは若い女の子しかいない面白い村だという。でも、二日以上いてはだめ。女の言葉通り、その村は若い女ばかりだった。女たちは入れ替わり立ち替わり、俺の元にやってきた。完全ハーレム状態だった。

「蛇霊憑き」
あの子が、アケミが、もうこの世にいないなんて。まだ二十歳の妹が、どうしてあんなむごたらしい死に方をしないといけないのか。辛い病気も克服して、ようやく元気になったというのに。田舎というのは、ただでさえ刺激が少ないところ。他人の噂話に興じることが、娯楽のひとつになってしまうのは仕方のないこと。きっとアケミのことも、さんざん言われていたことだろう。頭がおかしくなっているとか、誰とでもすぐに寝る女とか。今さら隠そうとは思わない。確かに妹は、自分が蛇女だと吹聴していた。

「山から来るもの」
自分がいるばかりに、母親はバツイチ同士の恋を楽しめない。中学生の阿佐美は、母の人生を邪魔したくないという気持ちだけで、叔父夫婦と同居している祖母の家で正月を過ごすことにした。田舎の夜は怖くなるほど静かだった。その足音は、少しばかり奇妙だった。阿佐美は窓を少し開けて、外を見た。麦藁帽子の男は、門の前にあった白いものを拾い上げた。夕食の後片付けの時に、祖母が残飯をまとめていたのを思い出した。だとしたら祖母は、わざわざ残飯を用意していたことになる。あの奇妙な人間のために。

「磯幽霊」
私はかなりの時間、その浜で過ごした。やはり気になるのは、病床にある叔母のことだった。覚悟しておかなければならない。そう思いながら後を振り向いた時、背後に若い女性が一人、いつのまにか立っていた。女性は落としてしまったイヤリングを探していた。その次の瞬間である。ヒステリックな声で叫んだのである。今にも噛み付いてきそうな犬のような顔つきに変わっていたのだ。彼女に背を向けた。その瞬間だ。何かが私の両腕をガッチリつかんだ。どういうわけか私は海に落ちていた。

「八十八姫」
君を思うと、今でも辛くなる。あの日、連れ去られていく君を追って、僕は夜の山を走った。八十八姫さま。村に生まれ育った者は、その名を自分の親の名前より先に覚える。八十八姫さまが村を守ってくださる。その頃、僕らは十一歳だった。僕は君のことが大好きだった。だからこそ、僕は思う。あの櫛を僕が拾わなければ。君に渡さなければ。その櫛こそが、山の中にいる八十八姫さまからの“お知らせ”だったのだ。姫さまが八十八年に一度、まさか本当に村の女性の中から後継者を選ぶだなんて。

表題作の「いっぺんさん」は、一作目から泣きそうになったほど秀逸だった。「コドモノクニ」は、子供の頃を思い出した。悪いことをすると、ちんどん屋さんに連れていかれると、親に脅されたものだ。「小さなふしぎ」は、全然怖さはない。とにかく切なくて、いじらしい。「逆井戸」は、女性がひくような男のさが。逆バージョンはどうでしょうか? えっ、ありえないって。「蛇霊憑き」は、結末が見えてしまうが、生臭い匂いが、かなり怖かった。「山から来るもの」は、得体の知れないものより、人の心の方が怖かった。「磯幽霊」は、薄味で後に残らない。「八十八姫」は、あふれる切なさにグッときた。そして、ラストが美しい。

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朱川湊人
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    2009

10.15

「プラスチック・ラブ」樋口有介

プラスチック・ラブ (創元推理文庫)プラスチック・ラブ (創元推理文庫)
(2009/06/20)
樋口 有介

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明日から冬休み。高校二年生の木村時郎は、久々に会った中学の同級生である南生子から頼み事を持ちかけられた。同じく同級生だった水江が義理の父親と折り合いが悪く、家を出て、学校へも行かなくなって、ライブハウスで知り合った男と同棲を始めて、自分でもそのうちパンクのロッカーになるというのだ。水江と会い、家に戻り高校にも行くように言って欲しいというのだ。「雪のふる前の日は」

五月の連休が終わった春。つき合っている糸織から相談される時郎。彼女の父親の不倫が発覚し、それにより離婚した母親と新潟に引越すことになりそうであること。不倫相手の女に興味があると聞かされても、時郎の心は動かない。そのとき時郎は、いつまでも花壇の白い花を見つめている年上女性のことを考えていた。以前どこかで会っているはずなのに、場所と日にちが、どうしても思い出せなかった。「春はいつも」

庭の紫陽花が咲いた。親父の浮気をきっかけにお袋が家を出て行ってから一ヶ月。妹の令子が学校へ行かなくなってから、もう二週間がすぎていた。釉香とは高校は別になったが、中学まではずっと同じ学校にかよっていた。同じく同級だった吉田の様子がおかしくなったので会って欲しいという。つき合ったわけではなく、二度だけデートをした釉香につきまとうようになり、その上、下着を盗んだという。「川トンボ」

夏が最後の意地を見せる。玲香さんが意図的にいなくなった。バンドができたきっかけは、吉野さんがアルバイトをしていたスナックに玲香さんが客に来て、そこで話が決まったという。夏帆のお兄さんが吉野さんと同級生だったことから夏帆が入り、その夏帆の命令で仕方なく、時郎がメンバーに加わった。考えてみたら、玲香さんのことは、なにも知らなかった。時郎は夏帆とともに、失踪した玲香さんを探す。「ヴォーカル」

もう夏休みも終わり。祖父の家にはすでに叔母が来ていた。音葉は同じ高校二年生らしいが、なぜか時郎の、叔母さんだという。祖父の娘がお袋。そして祖父の無茶が、お袋と音葉を、母親違いの姉妹にした。お袋は失踪した祖父を許さず、病院から連絡があったときも、無難だからいうだけの理由で時郎が派遣された。音葉も経緯は似たようなものだろう。その家を辞した後、祖父について、叔母と甥は語り合う。「夏色流し」

吹く風には冬の匂いが混じっている。貴代の葬儀や法要に関係なく、真弓に会うなんて、時郎は思ってもいなかった。中学のとき五人グループでよく遊んだ貴代は、その日に知り合った男のバイクに乗り、そのバイクが転倒して投げ出され、対向車線を走ってきたタクシーに轢かれた。死んだのは貴代だけだという。事故を起こしたのがプロのライダーということに不審感をもった時郎は、真弓とともに、事故について探り始める。「団子坂」

枯れた公孫樹の葉がふりそそぐ。中学で同級生だった竹田寛子がラブホテルで絞殺されているのが発見された。中学以来二年間つき合い続けている美波から事件を知った時郎は、かつて一度だけデートをしたことがある寛子が、なにをやっていたのか気にかかり、彼女の高校の同級生を訪ねる。すると寛子は、彼氏との関係をプラスチック・ラブと答えていた。その帰り、時郎は事件を調査している柚木草平と出会う。「プラスチック・ラブ」

山茶花は蕾。明確に喧嘩をしたわけではないけれど、ここ三ヶ月、時郎と里菜子はデートをしなくなっていた。そのあいだに、里菜子の親父は不倫相手の元に去り、お袋がヒステリーを起こし、茶髪に染めた里菜子は知らないオヤジと話をして五千円を巻きあげ、彼女の妹はアルパカを家で飼うまでは学校に行かないと言いだした。時郎はアルパカを諦めるよう、妹を説得することになった。「クリスマスの前の日には」


時系列はばらばらだけど、時郎はどれだけの恋をしているのだ。まったくもって羨ましすぎる。しかも、各編の女子のタイプがすべて違う。これは著者の樋口氏による男性読者へのサービスなのか。個人的には、スポーツ少女の美波ちゃんが好みだった。それと強気な夏帆ちゃん。樋口作品の青春ミステリには、こういう楽しみ方もあるのだ。男子だけに限らず、女子にしても、女の子って好きでしょ。

そういう彼女たちから見た主人公の時郎は、薄情、いい加減な性格、つかれる生き方、面倒くさい、鈍感、陰険、ネクラ、傲慢、生意気、屈折する、気難しい、協調性がない、etcなど、散々な言われぶりだが、ちょっと老成した感じで斜めに構えてはいるが、基本的に憎めない奴だ。この主人公とヒロインが織り成す会話がとにかく楽しい。毎度毎度同じだという人もいるかもしれないが、これが樋口作品。読者の期待するところも、そこにあるのだ。

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樋口有介
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    2009

10.14

「白夜街道」今野敏

白夜街道白夜街道
(2006/07)
今野 敏

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それまで、倉島は公安の仕事に熱意を持てずにいた。ヴィクトル・タケオビッチ・オキタ。そのロシアから来た元KGBの暗殺者と敵対したとき、倉島は本当の恐怖を味わった。そして、公安部の警察官として覚醒した。そのヴィクトルが日本に入国した。しかも、今回は本名で堂々と入国しているという。一方のヴィクトルは、現在、モスクワにある警備会社に勤めていた。そして、クライアントである貿易商ペデルスキーのボディーガードとして日本に入国。そのペデルスキーが帰国前日に密会していた日本の外務官僚が三日後に謎の死を遂げた。

外務省の職員が変死した。それはおそらく毒物による殺人で、かつて、KGBが使っていたような道具が使われた。だが、外務官僚はヴィクトルよりも、ペデルスキーのほうに興味を持っていた。公安主導の捜査本部が本庁内に置かれ、容疑者であるヴィクトルたちを追い、倉島はモスクワに飛ぶ。その頃、ヴィクトルと同居するエレーナが誘拐されていた。ペデルスキーをハーロフスクという街につれて来い。交渉が無事に終わったら、エレーナを無事に戻す。ヴィクトルはペデルスキーと共にハーロフスクへ車を走らせる。そのヴィクトル追う倉島もまた、ハーロフスクを目指す。

シリーズ二作目となる本書「白夜街道」は、前作「曙光の光」と比べるとおとなしいい展開になっていた。主人公たちの緊迫度、日本とロシア間の外交関係に関わるあれこれ、パズラーとしての緻密さ、派手なアクション、残虐な描写。小さくまとまることは映画の二作目と同じで、これは宿命なのか。今回はロシアに遠征と舞台は広がっているが、スケールダウンは否めない。しかも、ヴィクトルであれ倉島であれ、アクションや精神面での主人公としての格好良さ、しびれるようなセリフもなかった。より公安の色は濃くなっていたが、そこはそれなりに面白い。でもそれだけでしかなかった。

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今野敏
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    2009

10.13

「芙蓉千里」須賀しのぶ

芙蓉千里芙蓉千里
(2009/07/01)
須賀 しのぶ

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明治四十年、十二歳のフミは、吉原の花魁でお職だったいう顔も知らぬ母親への憧れから、女郎になって一旗揚げるべく、人買いについて自ら満州はハルピンにやってきた。天性の愛嬌と記憶力、辻芸人だった父にたたきこまれた角兵衛獅子で培われた身の軽さで、本人も思いもよらない運命を引き寄せる。フミと一緒にハルピンにやってきたひとつ年上のタエは、旅の間ずっと姉のように面倒を見てくれた。この百姓娘のタエは、男を知らぬが故に、女郎になることを嫌っており、後々フミとある策略をめぐらす。

娼館「酔芙蓉」は、遣り手の女将、芳子が芸妓から身を起こした遊郭で、ほとんどの客は支那人だった。やや古風な美貌に、儚いながら一本芯が通った凛とした気品を持つ蘭花は、素性も何もかも、謎に包まれている看板女郎。そろそろ三十路に手が届く年齢だが、伝法な口調がよく似合い、艶やかな美貌を持つ千代は、最古参の姉女郎。酔芙蓉に入ったフミとタエは、まずは下働きから始める。フミは自分で考えて、自分で選んで、やって来た新天地。そしていつか必ず、大陸一の女郎になってみせる。

ところが、十七歳になったフミは、女郎ではなく芸妓の蕾になっていた。私の舞を見たさに、大陸中、内地からも客が押し寄せるような、芙蓉になってみせる。芙蓉ことフミはいつだって、あらゆることを知って、身につけようとした。この世界を渡っていくために、人並み外れた特技や、正確な情報といった武器が必要だと信じた。それにひきかえ女郎の二番手にのぼりつめたタエは、いつも同じ場所にいる。フミより閉じた世界に住んでいるはずなのに、フミが見落としてしまうものを、いつも見ていた。

本の帯にあったのは、「ガールズ大河小説」と銘打った聞きなれないジャンル。でもまさにそれ。明治後期の混沌とした大陸を舞台に、女であることをしたたかに売って生きていく女子の小説。女の戦いは、少女から、女になったとき、突然はじまる。女がなりふりかまわずに相手を叩き潰そうとするのは、必ず嫉妬からだ。だが、どろどろとしているようで、苦労がつきまとっているようで、全体の雰囲気は、どこか爽やか。美しく着飾り、望まれるままにお客の相手をしても、女の内側に少女でいた自分がいるからだ。

舞は好きだ。芸妓の仕事も好きだ。芙蓉としての誇りもある。しかし、それだけでは埋められないものもある。むしろ、芙蓉としての自分が大きくなればなるほど、虚ろな穴は広がっていく。そして、フミは、自身の人生に大きく関わってきた二人の男性の間で揺れることになる。十二歳のフミが二度ほど話しただけの素性を明かそうとしない山村か。パトロンとしてあらゆるものを与えてくれる黒谷のもとで芸妓芙蓉であり続けるか。はたしてフミの選択は……。第二部は10月中旬から『小説屋sari-sari』にて連載開始だそうです。今後がさらに気になった一冊でした。おすすめ。

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    2009

10.12

「首挽村の殺人」大村友貴美

首挽村の殺人首挽村の殺人
(2007/07)
大村 友貴美

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鷲尻村は岩手県と秋田県境に位置し、雪が多いのは奥羽山脈の麓に村があるせいだ。その九十パーセント以上が山で、わずかな平地に人家が密集していた。北国の山谷に囲まれた自然条件の厳しい土地ゆえに、昔は狩りで生活するしか自活の方法がなかった。だが村で昔ながらのマタギは少なくなり、現役なのは村でひとりだけだという。無医村の状態が続いていたこの村に、東京からの待望の医師・滝本志門がやってきた。滝本は、昔マタギ宿をしていたという桜田家で下宿をすることになる。

しかし、滝本の着任以後、村では謎の変死が立て続けに起こる。第一の被害者は雪に埋もれて熊捕り用のワナにはまって圧死していた。第二の被害者は橋の欄干に首を吊るされた状態で発見された。第三の被害者は熊に殺されたように偽装されて殺されていた。第四の被害者は滝に逆さ吊りのまま氷柱の一部と化していた。どのケースも異様な死、非業の最期。それは、殺害後の遺体を異様な形で人目に触れさせるという、前代未聞の連続猟奇殺人事件だった。そして赤熊と呼ばれる二メートルは超える巨大な人食い熊が暴れている。

診療所は丸々二年の間閉鎖状態だった。前任の杉聡一郎は村人にとっては神さまだった。杉がまもなく結婚し、ここに新居を構えると聞いて、村人はそのまま定住してくれることを期待した。しかし、赴任して五ヶ月で杉は不慮の転落死を遂げていた。その死に不審はありながらも、死因は事故として処理されていた。この村が「首挽村」という不吉な名前で呼ばれる理由とは?村人すら忘れかけていた忌まわしい過去が、事件の真相を浮かび上がらせる――。

書店で「霧の塔の殺人」という作品に目が行き、それが本書の第三作目にあたることを知った。そこでまずは順番通りこちらから読むことにした。過疎や少子高齢化、無医村や町村合併など、寒村が抱えているであろう深刻な問題と、昔から語り継がれた土俗的な村の歴史がからみあい、人の足が二本とも雪の中から突き出るなど、遺体の異様な発見からして、横溝正史ミステリ大賞らしい作品だった。

ただ描写不足が至るところにあって、この横溝風の世界にどっぷり浸かるということはなかった。連続殺人と人食い熊が混同するわりに、明確な探偵役がいないこともあって、時系列や事件の整理がなされず、とにかく区切りが悪い。それと語り部と場面が終始変わるので、視野が分散しすぎて集中しづらい。また多くの人物が登場するのだが、個性が欠けているためか、人物を把握しにくいという難点もあった。それに謎解きも後付のような印象があり、見立て殺人にした理由や必然性も思ったより薄い。

これらは書き慣れることで解消されることだが、一冊の本になったという作品の評価でいえば、厳しいようだがまだまだ。二作目以降では、本書にも登場した藤田警部補が探偵役になっているようで、それだけでも本書よりはマシになっているだろうと予想する。次回作に期待してもいいのかな。でも現時点では、すぐにでも読みたいと思わせる何かがここにはなかった。今、自分の中で民俗学ミステリがブームなだけに残念である。

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    2009

10.11

「フリーター、家を買う。」有川浩

フリーター、家を買う。フリーター、家を買う。
(2009/08)
有川 浩

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武誠治は、そこそこの高校へ行って、一浪したがそこそこの私大へ行って、そこそこの会社へ就職して、入社三ヶ月で「ここは俺の場所じゃない」と親には何も相談せずに辞表を出した。父の誠一はもちろん激怒し、母の寿美子はただおろおろと青ざめていた。父はくどくどと説教しながら酒を流し込む。会社では「経理の鬼」などと呼ばれる父だが、酒癖の悪さは最大の欠点であり、誠治が父を軽蔑して忌避する拠り所だった。

誠治の再就職は巧くいかず、比べてバイトは気楽で良かった。嫌なことがあればすぐに辞められるし、いくらでも代わりのバイト先は見つかる。ある日、名古屋の病院に嫁いだ姉の亜矢子にどつかれて、はじめて尋常ではない母の状態に気づいた。ごめんなさい早く死なないといけないのに今日も死ねませんでした。母は精神を重く病んでいた。そんな母を、気が塞ぐのは心が弱いからだ、と父は責め立てた。

この家に引越してきた二十年前から、母は町内で嫌がらせを受け続けていた。高いローンでみんな苦労しているけど、うちは社宅だから家賃が安いこと。そして酒癖の悪いクソ親父の醜態。分不相応な家に破格の家賃で住んでいる酒癖の悪い変人。一瞬で村八分になったという。そして誠治自身は気づいていなかったが、自分たち姉弟もいじめを受けていた。そこにだらだらバイトに逃げて家庭内別居をした誠治が、さらに母を追い詰めてしまった。

今の家にいる限りある一定のレベル以上に回復することはないだろう、と医師は言った。家自体が最大のストレスだからだ。この家を出てどこか違う町に、中古でいいから二世代ローンで家を買おうよ。母さんのために。誠治はその言葉を呑んだまま、昼間は母の世話をしつつ就職活動を続け、夜間工事のバイトで金を貯め始める。そしてプライドの高い父を扱っていく。崩壊しかかった家族の再生と、主人公の成長過程を優しく描く長編小説。

出だしが予想以上に重くて、ダメ主人公とクソ親父にいらいらさせられる。しかし母の病気を認めてからは、第二段階に突入し、就職活動小説、お仕事小説、社内ラブ小説へと発展していく。読み始めてうへーとなった方は、とりあえず我慢してください。第二章になると雰囲気が変わって面白くなるので。それに終盤にはベタ甘ラブも待っている。それでも時たま親父はウザいけど、親父って元々そんなものだから。そして読み終わった時には、明日も一日頑張ろう、と勇気が湧いてくる一冊でした。


有川浩さんのサインは文庫を入れて五冊目に……。持ちすぎか^^;

有川4

他のサイン本はこちらをクリック。→「サイン本」

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有川浩
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    2009

10.10

「呪海」平谷美樹

呪海―聖天神社怪異縁起 (カッパ・ノベルス)呪海―聖天神社怪異縁起 (カッパ・ノベルス)
(2002/09)
平谷 美樹

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岩手県南部にある聖天神社の新米神職の聖天弓弦は、下津町神島地区の神嶋神社宮司である安東英俊に頼まれて、百年に一度の大祭を手伝うことになる。土地の老人以外を締め出して行われる、供養した人形の“穢レ”を祓う秘祭だ。百年前の大祭で、神嶋神社の先々代の宮司は大きな失敗をしたと聞く。大津波が起きて集落一つが全滅してしまうほどの失敗だったらしい。たかが人形供養の儀式で、なぜ。その惨事の原因を知るものはわずか数名になっていた。しかし、今の神職の安東英俊は、その時の顛末を語らずに、ただ手伝えと言う。

一方、少女マンガ家の坂上苑から、堕胎した子供の身代わりとして作らせた市松人形“薫子”の処分を命じられたアシスタントの山田頼子は、引き寄せられるようにして神嶋神社へと向かう。まるで何ものかが“薫子”を呼んでいるように……。内陸の胆沢地方で蝦夷の頭領、アテルイが捕らえられ、京で首をはねられてから千二百年がたつ。いったい神嶋神社で何が起ころうとしているのか。太古に造られた“復讐の機構”に挑む若き神職・聖天弓弦。奇想溢れる壮大な伝奇ホラー作品。

先に謝っておく。ごめんなさい。まったく知らなかった作家です。個人的に好きな「伝奇」というキーワードに引っかかり、読むことにした。しかし、リアル書店を探したものの売っていない。古本店を数件回っても在庫なし。ひょっとして人気ないの?と不安を覚えるが、それでも気になった。幸いにも地域外の図書館が所蔵しており、取り寄せで借りて読むことができた。東北の伝奇といえば、大好きな高橋克彦さんを想像する。しかし近いようで少し遠い作風だった。

まず土俗的なものは思ったほどの濃さはない。神社の由来にしてもわりとあっさりとしている。祖先との因果にしてもそれほど重要視していない。神職の神秘性にしても弱い。歴史の謎にしても深く追求していない。いうならば、独自性の想像力をわざと発揮していないのだ。でも予想以上におもしろかった。それはひとえに人形に対する怖さが大きかった。こちらを見られているような日本人形は怖い。髪の毛がのびる日本人形も怖い。その日本人形の言葉が聞こえてきたら、意思を持って勝手に動いたら……。

そして好き勝手に蠢く穢レた亡者たち。人の心の弱さこそが禍を引き起こす。また、特別な力を秘めた主人公・弓弦と、そのライバルらしい憑き物落しの法印空木の活躍もまた、中々派手なもので、迫力ある死闘も存分に楽しむことができた。ただ惜しいのは、法印空木の登場場面が少なく、彼自身の謎が残されたまま終わっていたところだ。そこは二冊目となる「壺空」で明らかにされるのだろうか。今後そちらを読むのも楽しみだ。

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    2009

10.09

「曙光の街」今野敏

曙光の街曙光の街
(2001/11)
今野 敏

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ヴィクトル・オキタの父親は日本人だ。父のおかげである程度日本語を話したヴィクトルは、陸軍にいるときKGBの特殊部隊にスカウトされた。モスクワ大学で日本語の専門教育を受けさせられ、さらに在日ソ連大使館に赴任して、しばらく日本で暮らした。ソ連崩壊前には、彼は日本人と身分をいつわってスパイ活動をしていたことがある。人間というのは、金に弱い。困窮していればなおさらだ。日本のヤクザ組長を殺す。ヴィクトルは再び日本に潜入した。金で雇われることは屈辱だが、戦いの世界に戻ったことは重要だった。

倉島警部補は、公安部外事一課の仕事そのものに、飽き飽きしていた。来る日も来る日も書類仕事だ。情報収集という名目で、誰かと会うと、その話の内容をすべて書類にしなければならない。ノンキャリアの中では出世頭と言われる警視庁の公安部に所属している。これで、不満を言ったら罰が当たる。だが、仕事は面白くなかった。そこに暗殺が計画されているとの情報が入った。ヤクザを暗殺しにロシアから殺し屋がやってくる。口は災いのもとだ。簡単なことだと言ったばかりに、倉島ひとりに押しつけられることになった。

兵藤はかつて、プロ野球の選手だった。極道とプロスポーツ選手の付き合いは珍しいことではない。傷害事件を起こし、球界を追放された兵藤は、津久茂に拾われた。兵藤は、津久茂が一家を構える前からずっと彼につき従っている。どこの組も火の車の世の中だというのに、この事務所には活気があった。今の立場は、営業部長だった。悪い冗談だと思った。極道にサラリーマンになれというのだ。事実上津久茂興業を取り仕切っているのは、大学出の経済ヤクザたちだ。兵藤のような武闘派は、隅っこに追いやられていた。

元KGBの殺し屋、警視庁公安部外事課警部補、武闘派ヤクザ幹部。立場の違う男たちが三つ巴の戦いを展開するうちに、彼らが関わるのはロシア人美少女のエレーナ。やがて明らかになる日ソ時代の驚くべき秘密。そして三人の男が見いだしたものとは。男たちの挫折と再生を描くネオ・アクション作品だ。右翼の男は言った。お前の弱点は、不遇な育ち方をした若者に情けをかけてしまうことだ。冷静で冷徹な殺し屋でありながら、深い情を持つヴィクトルという男。それは半分日本人の血を持った故なのか。

全編に暴力と血が満ちているが、生きるか死ぬかの状況が、男たちの血を沸きたたせる。物語の展開はスピーディーで、交錯する会話が秀逸。時間が過ぎるのを忘れて一気に読ませてしまう吸引力がここにはあった。運命に呼び寄せられた男たちはまた、それぞれの持ち場へと帰って行くのだが、もとの世界とは異なる新しい自分へと歩を進める。曙光とは、物事の前途に見えはじめた明るいきざしを指す言葉である。三人それぞれに射した曙光が微笑ましかった。

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今野敏
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    2009

10.08

「園芸少年」魚住直子

園芸少年園芸少年
(2009/08/08)
魚住 直子

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高校の入学式はさすがに少し緊張したものの、次の日からすぐに力が抜けた。クラスメイトや学校の雰囲気からして、楽そうだと確信できた。それに、この学校は部活が盛んではなく、帰宅部が多いことも、楽そうだと思う所以だ。四月半ばの昼休み、自販機でコーラを買って、倉庫の裏に出てみると、そこには小さな空き地があった。いや、植木鉢が地面に無造作に置いてある。ビニールのやぶけたプレハブもあって、どちらの鉢も枯れかけた草が生えていたり、からっぽでふたをするように地面に伏せられていたりする。

そこでひとりの生徒と出会った。次の瞬間、あっと声が出そうになった。春休みにドミノのように倒してしまった自転車を起こしてくれた不良じゃないか。そのとき、校舎からチャイムが聞こえ、そいつは慌てたように立ち上がった。自分もいこうとしたが、紙コップに残った氷がとけた水を、一番近くにあったしおれた草に水をかけ、校舎に戻った。次の日、その鉢だけが元気になっていた。「すげ」不良も本気で驚いたらしい。二人で競い合うように、鉢の全部に水をやった。篠崎達也。大和田一平。二人ははじめて名乗りあう。

二人はタチのわるい部活の勧誘をかわすべく、いきがかり上、部員のいない園芸部に入部してしまった。活動内容は、枯れた鉢を元気にすること、新しく育てること。そうやって、花壇を緑と花でいっぱいにすること。植物は生き物だから、毎日見ることだった。さらに予想もできないことが起きたのは、四月の終わりだ。いつものように倉庫の裏にいくと、段ボールを頭にかぶったそいつがいた。相談室に登校している庄司善男。園芸部員に新しく加わった三人目は、草花の名前も育て方もよく調べる秀才だった。

有川浩さんの「植物図鑑」を読んで雑草を摘んで食べたくなり、魚住直子さんの本書「園芸少年」を読んでガーデニングに興味を持つ。なんて自分は単純な思考回路しか持ち合わせていないのだ。でも作家にとってはいいお客さんであるのかもしれない。そして不器用な少年たちの成長がとても清々しい。おとなしい性質の篠崎。脱不良を決意した大和田。段ボール箱をかぶらないと外に出られない庄司。彼らは、花壇に花を咲かせるという園芸を通してお互いを理解し合い、絆を強めていく。そして自分の殻を破っていく。いい話です。

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魚住直子
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    2009

10.07

「理由あって冬に出る」似鳥鶏

理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫)理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫)
(2007/10)
似鳥 鶏

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某市立高校の芸術棟には幽霊が出るっていう噂がある。ひとつは、壁の中に引きずって帰ろうとする壁男。もうひとつは、行方不明になったというフルートを吹く立花さんの幽霊。壁男にフルートを吹く幽霊。芸術棟は魑魅魍魎の巣窟らしい。なんだか妙な噂だ。吹奏楽部は毎年、卒業式の前に三年生を送る演奏会をやる。本当は幽霊だ何だと言っていないで練習しなくてはならないのだが、幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまった。部長の高島先輩としては困った状況である。

かくなる上は幽霊など出ないことを証明するため、責任感の強い高島先輩は部員の秋野麻衣とともに夜の芸術棟を見張ることを決意。しかし第三者の立会いがないと信憑性に欠けてしまう。そこで白羽の矢を立てられたのは美術部の葉山君。その話を聞きつけたのは、演劇部のミノこと三野小次郎。四人は夜の芸術棟へと足を運ぶが、予想に反して幽霊は本当に現れた。フルートの音が聞こえて、人影があった。明かりが点いていて消えた。なのに、鍵のかかった部屋から人間はどこに消えた?

目を輝かせて身を乗り出したのは、物識りの文芸部長、伊神さんである。物識りゆえに好奇心を刺激されるのか好奇心旺盛ゆえに物識りになったのか、おそらくはその両方であろうと思えるこの人はまた、謎とか怪奇とかいった言葉にはなはだ弱い。伊神さんは喜色満面で葉山君を見る。放課後探偵団をやってみない? 伊神さんは面白がっているわりに自分が動くつもりはないらしい。トリックについて考えてみるから、と言って安楽椅子探偵を決めこみ、動かなくなってしまった。にわか放課後探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは?

この作家はおもしろい、たぶん好みの作家だと思う。ある本ブロガーさんにおすすめを貰い、勢い余って既刊三冊を大人買い。デビュー作であり、シリーズ第一弾である本書は、文化系クラブの部員たちが学校の幽霊の謎を追う学園ミステリでした。おすすめを頂いた甲斐あってか、好きな雰囲気を持った作品で、予想以上におもしろかったです。もともとこういった学園ミステリは好きなので、すでにキープし、これから読む予定の続編も楽しみになりました。

異質なプロローグに若干戸惑ったものの、お決まりの学生たちによるドタバタ劇が愉快で、しかもライトな当たりだけでなく、プロローグに関連した意表をつく黒いエピソードがからんできたりして、最後までメリハリをつけるあたり、この作家は只者じゃないと思わせる力量を感じました。また芸術棟や部屋の見取り図などが随時挿入されており、読者に対してとても親切でした。この作家は、間違いなく近いうちに人気作家になるでしょう。先物買いなら今です。そしておすすめです。

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似鳥鶏
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    2009

10.06

「女中譚」中島京子

女中譚女中譚
(2009/08/07)
中島 京子

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昭和初期の林芙美子、吉屋信子、永井荷風による女中小説があの『FUTON』の気鋭作家によって現代に甦る。失業男とカフェメイドの悪だくみ、麹町の洋館で独逸帰りのお嬢様につかえる女中、麻布の変人文士先生をお世話しながら舞踏練習所に通った踊り子……。レトロでリアルな時代風俗を背景に、うらぶれた老婆が女中奉公のウラオモテを懐かしく物語る連作小説集。《出版社より》

九十歳をはるかに超えている、そのばあさんは、けっして店に相応しくはなかった。「いつもの」と、注文し、エプロン姿の女の子の、「お帰りなさいませ、お嬢様」という決まり文句に悠然と会釈する。なんで、メイド喫茶にいるのか。強いていえば、女中つながりだと、ばあさんは昔語りを始める。ばあさんは、かつて新宿の裏町にあるカフェーで女給をしていた。そのうち、客とすったもんだの恋愛沙汰を繰り返し、気がつけば、得体の知れない男とも平気で関わりを持ち、純朴な田舎娘から金を搾り取ろうと手紙の代筆をするようになっていた。(「ヒモの手紙」)

若い娘は二十歳を超えたばかりで、仲間内では「りほっち」、と呼ばれていた。老婆の名前は「すみ」だった。二人は友人同士で、同じアパートに暮らす住人なのだ。すみはりほっちの願い通り、独逸と日本人の、ハーフの女の子の話を語って聞かせる。伊牟田先生の家は、見たこともないような立派な洋館で、最初に引き合わされたのが、独逸帰りの萬里子というお嬢様だった。ところが、このお嬢様が、とんだタマだった。萬里子は、不思議なお嬢さんで、どこか一本、ネジが外れたような娘だったのだけど、そのネジの外れ方がどうも、妙に時節に合っていた。(「すみの話」)

娘は、制服を着てコーヒーや軽食を供する喫茶店で働いている。週末になると店の宣伝を兼ねて、娘と同僚はその不思議なデモンストレーションをするのだった。歩行者天国の、往来の真ん中で立ったり座ったり。かつてはばあさんも踊ったものだ。麻布の珍奇な洋館に住んでいる変わり者の物書き先生のところへ女中に出た。奇人先生は夜出かけ、朝帰り、昼に起きる生活だった。始めは気楽だと思って喜んでいる中、あまりにも用がなさ過ぎて退屈だった。そのうち、あんまり暇なので、先生のお墨付きを貰って夜に舞踏の練習に通うようになった。(「文士のはなし」)

昭和初期の女中が主人公ということで、堅苦しいお話を想像していた。それがこのばあさんの若い頃って、結構黒い女なのだ。一つのところに落ち着きがなく、飽きっぽくて、いい加減で、流れ流れて、どこまでも流れて、現代の秋葉原のメイド喫茶の常連客になっている。その紆余変転の中で、人間の業と欲が鮮やかに浮かび上がってくる。そして、その黒さのなかに、ユーモアがある。決してかわいくはない。しかし、そのしたたかさは見習うべきものがあるのかもしれない。元ネタはひとつも知らないけれど、でも面白かったです。

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    2009

10.05

「brother sun 早坂家のこと」小路幸也

brother sun 早坂家のことbrother sun 早坂家のこと
(2009/08/26)
小路幸也

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お父さんが再婚して家を出ていったのが三年前。出ていったと言っても、そこの角を曲がった二軒目に住んでいて、距離的にはほんの二十メートルも離れていない。そして、この家に残されたのは三人の姉妹。この家にはおじいちゃんとおばあちゃんとお父さんとお母さんと三姉妹、一家七人が暮らしていた。三姉妹がみんなに見守られて育っていく中で、おじいちゃんが死んで、おばあちゃんも後を追うように天国に召されて、お母さんも病気で死んでしまった。それから、お父さんは、三姉妹を男手ひとつで育て上げてくれた。

あんず姉が大学を卒業して社会人をやりはじめたころに、お父さんは十九も年下の真理奈さんと出会って恋をして年がいもなくできちゃった結婚をしたのは、かりんが高校生で、なつめも中三になって、さすがに手も掛からなくなって家のこともちゃんとやるようになっていた頃だった。新婚の二人はあんず姉の提案に頷いてすぐ近くの空き家だったところを借りて住みはじめた。お互いの家を行き来しながら新しい家族の絆を深めていった。そうやって日々が流れて、お父さんと真理奈さんの間に生まれたのが、二歳になった陽ちゃんだ。

存在すら知らなかった伯父さんが突然現れた。伯父さんは、お母さんが、つまり義理の妹が死んだことさえ知らなかった。お父さんと伯父さんは二十年以上も会っていないというのは、かなりの事情や理由がありそうだ。伯父さんが来たことを、お父さんには伝えていない。そう伯父さんが望んだからだ。そして大きい賞を受けた画家だと美術雑誌に載っていた。伯父さんの登場をきっかけに、いろいろと早坂家周辺で起こる事柄を、社会人のあんず、短大生のかりん、高校生のなつめの三姉妹それぞれの視点で語る家族小説。

いい意味で小路さんらしい作品。あんず姉、かりん、なつめ、あんずの婚約者同然の向坂さん、かりんの恋人の惇史くん、なつめの彼氏のマーくんと、みんないい人で、嘘のようにかわいい人ばかり。波乱を予感させるが、すべてが大団円の方向に向かって一直線。これを物足りないという人もいるかと思うが、これが小路作品。メルヘンに不幸があってはいけないのだ。いいお話を、安心して読む。変に黒いものや難しい展開を求めちゃダメ。これが小路作品を読む秘訣でしょうか。作品に自分の好みをぶつぶつと要求する方には向きません。素直なこころを持って楽しみましょう。

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小路幸也
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    2009

10.04

「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」辻村深月

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。
(2009/09/15)
辻村 深月

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“30歳”という岐路の年齢に立つ、かつて幼馴染だった二人の女性。都会でフリーライターとして活躍しながら幸せな結婚生活をも手に入れたみずほと、地元企業で契約社員として勤め、両親と暮らす未婚のOLチエミ。少しずつ隔たってきた互いの人生が、重なることはもうないと思っていた。あの“殺人事件”が起こるまでは……。 何かに突き動かされるように、警察の手を逃れ今なお失踪を続けるチエミと、彼女の居所をつきとめようと奔走するみずほ。行方を追う中、二人の友達、恩師、同僚、同窓生、さまざまな女性の口から語られる、容疑者・チエミの姿と彼女たちの人生。やがて、不可解な事件とその真相が明らかに……!!《出版社より》

とても女子力の濃い作品でした。女性の三十歳という年齢からくる切迫感と、地方で生きていく閉塞感が生んだ悲劇。チエミは地方に生まれ、家を出たことは一度もなく、高校卒業後も地元の短大に進み、そのまま県内で就職する。彼女たちの持つ夢や欲望は、職業や環境に由来するような「外の世界」にはなく、「ここ」で「幸せ」になるというシンプルなものがすべてだ。手取り十万ちょっとの契約社員として勤め、都会の独身の子はほとんどが一人暮らしだが、地元ではパラサイトシングルすることが不可避の前提で、彼女たちの人生プランは、誰かと結婚しなければ先に進むことがない。「自立」は、結婚して初めて実現する。

結婚することが人生の前提にあり、未来に能力を繋げる仕事なんか望みもしない。結婚は間違いなく唯一の成果であり、その価値観しかないから、周辺の多くが、傷ついたようにやがて来る三十代の影にますます怯える結果になる。チエミは、両親から誰よりも愛を注がれ、彼女もまたそれに答える娘だった。チエミは、母親を刺し殺した容疑で指名手配されている。彼女はなぜ、違う場所へ行ってしまったのか。唯一の親友であるみずほは、共通の知人たちと再会し、チエミの居所をつきとめようと奔走する。

そこに出てくる会話の内容を一言でいえば、居心地が悪い。狭い価値観を大事にし、お互い何でも話せる関係を装っていながら、実は相手に対して興味がない。適当に話をあわせ、言葉の最後を甘くごまかす。これは悪口ではない、心配なのだとすりかえる。他の女を笑いものにして嘲る。そういう窮屈で面倒な女性同士の人間関係にうんざりしているはずなのに、そういう関係性の中から抜け出そうとしない。楽しそうに会話をしている女性たちの姿をよく見かけるけど、裏では何を思っているのかと想像すると怖くなる。女子ってすごい生き物だ。

そうして見えてくるチエミの全体像はといえば、どこかずれている。その根源がどこにあるのかというと、彼女の両親にあったことが明らかにされる。そしてチエミを追うみずほ自身にも、母親に対する根深い思いを抱えていることが判明する。本書では、もう一つ、娘と母の関係がテーマになっているのだ。子は親の持ち物ではないし、子は親を選べない。親の言うことすべてが正しくなくても、子にとってはそれが絶対になりもする。そこは深く考えるべき事柄だと思った。親の愛って難しい。

本作は、女子力全開だけど、毒ある人も、そうでない人も、みんなどこにでもいそうな人たちだ。自分の弱さを隠しつつ、なんとか生きていこうと頑張っている。人の精一杯の見栄とか、必死にしがみ付いているプライドなどに気づいてしまうと、それを壊して愉悦に浸りたくなってしまう小さな自分がいる。それを軽く流していたみずほの大人ぶりは格好良かった。そんな大人のみずほですら持っている黒い感情も理解できた。いつ何時、チエミのようになってしまうか分からない。結末は切ないけれど、自分の人生も考えさせられる一冊だった。


辻村深月さんのサイン会に参加しました。そしておねだりをして“kiss“を頂きました。やったね!

辻村深月2

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辻村深月
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    2009

10.03

「追想五断章」米澤穂信

追想五断章追想五断章
(2009/08)
米澤 穂信

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主人公は、菅生芳光。伯父の古書店で居候しながらアルバイトをしている。店主の菅生広一郎は、甥の芳光よりもアルバイトの笙子に仕事を教えた。芳光はそのことで伯父を悪く思ったりはしていない。ここにいるのは、大学をやめても東京にへばりつく、そのためだけだからだ。そのお客、北里可南子は、亡くなった父が生前に書いた、結末の伏せられた五つの小説(リドルストーリー)を探していた。彼女は父の遺品の中から、小説の結末らしき五つの原稿を見つけた。創作や創造にはまるで無縁な父がなぜ、小説を書いていたのか。報酬は一篇につき十万円。報酬に惹かれた芳光は、伯父に内緒でその依頼を請け負う。

芳光は調査を続けるうちに、未解決のままに終わった「アントワープの銃声」と呼ばれた事件に行きあたる。昭和四十五年。北里参吾の妻、斗満子が、ベルギーのアントワープで首を吊った状態で発見された。北里氏に疑いがかかったのは、亡くなる前後に、隣室の客に銃声を聞かれていたからだ。北里氏は妻を銃で脅し、自殺に見せかけて殺したのではないかと取調べを受けた。しかし起訴には至らず、釈放された。北里氏は「アントワープの銃声」との関係をほのめかすような小説を書いていた。二十二年前のその夜何があったのか? 遺された小説から推理推測し、彼の過去に何があったかを解き明かす。

本書は、亡き北里参吾の遺した作中作が土台となっている。古書店員の菅生芳光がその小説を探す体になっているが、遺作は章がかわると同時にあっさりと発見されてゆく。その作中作の内容自体は目を引くものはない。心踊るものでもない。どちらかと言えば、退屈。眠気を誘うものもあった。だが後半になってから、この地味な作中作の内容と、別に添えられた結末が重要になってくる。それはいつしか依頼者である可南子の父についてだけではなく、彼女たち北里家の過去そのものが関係あったことを指し示す。

そしてページ数が少なくなればなるほど、緊張感が高まっていく。北里可南子は、父親の追想のために五つの断章を探している。菅生芳光自身はどうなのか。突然父が亡くなり、菅生家は生活の手段を失った。学費を払えなくなった芳光は大学を休学し、年老いた母は、芳光の帰郷を一途に望んでいる。目下の最大の問題は、帰ってきてほしい母親と帰りたくない息子の、腹の探り合い。主人公の芳光は、この答えに対し、どういった解答を出すのか。過去を振り返る話であり、一方で自分の将来についてヴィジョンを持っていない青年の、青春去りし後の物語である。

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米澤穂信
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    2009

10.02

「花と流れ星」道尾秀介

花と流れ星花と流れ星
(2009/08)
道尾 秀介

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「背の眼」「骸の爪」に続く真備シリーズの第三弾であり、シリーズ初の短編集。真備庄介は死んだ妻に会いたくて霊現象探求所などというもものを構えたが、真の超常現象にはなかなか会えず、助手である北見凛、友人のホラー作家・道尾とともに、奇怪な事件ばかりに巻き込まれて、霊現象共々事件を解決している。

「流れ星のつくり方」
海辺の宿に一泊旅行にきた真備、凛、道尾。星空の下ひとり散歩に出た凛に、民家の窓越しに謎めいた少年が声をかけてきた。流れ星のつくり方、教えてあげようか。そして少年は問題を出してきた。少年の「友達」の両親が密室状態となった自宅で殺され、その犯人は家から消えてしまった。どうやって逃げたのか。/トリック自体はさほど目新しくないが、最後の文章二行が鳥肌ものだった。さらに哀切な情感も素晴らしい。

「モルグ街の奇術」
真備の行きつけのバーで飲んでいた道尾と真備に対し、霊現象の存在を公言しているのは我慢ならないと、マジシャンを名乗る男が、自分の右手を失った際の真相を看破しろと挑戦してきた。男がいた小屋の外には終始目撃者がおり、小屋の中には切断されたはずの右腕はなかった。男の右腕はいったいどこへ消失したのか。/マジックに添えられた手品的な誤導の技法が面白い。また何とも言えない不気味な幕切れが余韻をひく。それと柿ピーのピーって邪魔(苦笑)

「オディ&デコ」
真備が風邪で臥せているところに、小学生の女の子が相談事を持ち込んできた。自分の不注意で捨てられた子猫を殺してしまい、その子猫の幽霊が携帯の動画に映っていると言うのだ。真備は寝室でぶっ倒れているので、実際の調査には凛と道尾が当たる。事件の本質はすぐにわかるが、そこから道尾が奇跡を起こす。/これはさすがにすべてが見えた。妬みとか、嫌がらせとか、胸の中に募る黒い気持ちって、いつから芽生えるのだろう。その一方で、もの凄い鼻声で言葉が不明瞭な真備が癒しかな。

「箱の中の隼」
真備は来月発行の本の直しに追われ、凛は確定申告の提出期限が明日で余裕がない。そこに現れたのは暇で退屈している道尾。そのとき美人の面会者が現れた。真備にそそのかされ、なりゆきで偽の真備になりすました道尾は、美人に魅入られ、宗教法人の教団本部へと運ばれて、おかしな騒動に巻き込まれる。/新興宗教のすべてを、怪しい、おかしい、理解の範疇にないと疑っている道尾が面白い。ただ作品の性格上、ミステリとしてのやられた感は薄くなっている。それと「もなか」のダジャレは寒すぎる。

「花と氷」
薪岡という老人が事務所にやってきた。自分の不注意で孫娘が死に、その孫娘に、どうしても謝罪がしたいのだと薪岡は言った。日々の暮らしを発明に費やしてきた。その発明の趣味が、あの子を殺したようなものだと言う。あの子に殺して欲しい。死んだあの子に謝る方法か、私を殺してもらう方法、どちらかを教えてください。/展開は安易なものだが、老人の慟哭に対する真備の気づきや、それをぶち壊す道尾に愛嬌が。でも最後がこれでは若干物足りない。次に繋がる何かが欲しかった。

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道尾秀介
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    2009

10.01

「あるキング」伊坂幸太郎

あるキングあるキング
(2009/08/26)
伊坂 幸太郎

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仙醍キングスは、地元仙醍市の製菓会社が運営しているプロ野球球団だ。負けて当たり前、連勝すればよくやったと感心されるチームだった。仙醍市に住むからといって、誰もが仙醍キングスのファンだ、ということはない。むしろ地元の汚点である、と憎んでいる者も少なくなかった。それでもファンはいる。山田亮は仙醍市で生まれ、それから三十二年間仙醍市から出て生活をしたことは一度もない。妻の山田桐子も同様だった。二人は、地元球団である仙醍キングスのファンであり、その熱意は一般のファンの程度をはるかに超えていた。

山田王求。「王が求め、王に求められる」ようにと名づけられたひとりの少年は、名将・南雲慎平太監督と死と同じ日に生を受け、仙醍キングスに入団して球団再生の大活躍をするという、両親の期待を一身に背負わされて育っていく。王求はわずか三歳で天性の才能を開花させる。ピッチャーが投げた球がストライクかボールかの判断を直感的に行えるのだ。さらにたゆまぬ努力で身体能力を向上させた彼は、リトルリーグ、高校野球を経て、プロ野球のスカウトが注目するほどの才能と力が備わった凄い選手になっていた。

突然、高校を中退した王求だが、仙醍キングスのプロテストにその姿を現わした。万年最下位の仙醍キングスのプロテストなど、落ちこぼれも落ちこぼれ、箸にも棒にも引っかからず、そのくせプロ野球選手への夢を捨てられなくて、もはやどの球団でもかまわないと思うような人間が集まってくるだけなのだ。王求は打撃でホームランを打ち続けた。球団オーナーの一言で、仙醍キングスに入団が決まった。そんな彼の周りには、黒衣装の三人の女、咆哮する緑色の獣、背番号5のユニフォーム姿の男が、いつの時代にもあった。

無機質のように淡々と進むストーリーは、これまでの伊坂作品とはあきらかに違う。全てが混沌としていて、「王」になることを定められた王求の生まれる瞬間から、三歳、十歳、十二歳……、二十三歳と、王求の周囲の者によって語られてゆく。なにか人間では計り知れない大きな力が動いている。運命とはまた違う。王様すらコントロールしていく大きな力だ。その象徴としてたびたび登場するのが、三人の魔女であり、咆哮する獣である。

天気のようにすべてを受け入れる王求、両親の王求に求める狂気、理不尽にも王求に悪意を持つ人物のように、痛い人とか、人の困惑や妬みなど、人の嫌な部分や負の感情が渦巻いている。内面をまったく見せない王求だが、最後の最後に、胸の内をそっと打ち明ける。俺がいることで、野球はつまらなくなっていないだろうか。いつもヒットかホームランを打ち、それ以外はフォアボールかデッドボールという天才にも、胸に悲しみや不安を抱えていたことを読者は知る。

はたして王求は王の力を超えた神から解放されることができたのか。それともすべては輪廻する? 賛否でいえば、どうやら否の意見のほうが多いようだ。だが個人的には、淡々とした口調が心地良く、言い訳のない感情の直球も好みで、すごく満足感を得られた作品だった。不思議な説得力があり、今までの伊坂作品にはない傑作だと思う。


二冊目となる伊坂幸太郎さんのサイン。

伊坂2

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伊坂幸太郎
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