--

--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

スポンサー広告
トラックバック(-)  コメント(-) 

    2009

11.30

11月に買った本

午前零時のサンドリヨン午前零時のサンドリヨン
(2009/10/10)
相沢 沙呼

商品詳細を見る

AnotherAnother
(2009/10/30)
綾辻 行人

商品詳細を見る

製鉄天使製鉄天使
(2009/10/29)
桜庭 一樹

商品詳細を見る

センゴク兄弟センゴク兄弟
(2009/10)
東郷 隆宮下 英樹

商品詳細を見る

掏摸掏摸
(2009/10/10)
中村 文則

商品詳細を見る

千里伝 五嶽真形図千里伝 五嶽真形図
(2009/10/28)
仁木 英之

商品詳細を見る

ダイナーダイナー
(2009/10/23)
平山夢明

商品詳細を見る

船に乗れ! (3)船に乗れ! (3)
(2009/11/05)
藤谷 治

商品詳細を見る

インビジブルレインインビジブルレイン
(2009/11/19)
誉田 哲也

商品詳細を見る

ニサッタ、ニサッタニサッタ、ニサッタ
(2009/10/21)
乃南 アサ

商品詳細を見る

オンエア 上オンエア 上
(2009/10/19)
柳 美里

商品詳細を見る

オンエア 下オンエア 下
(2009/10/19)
柳 美里

商品詳細を見る

横道世之介横道世之介
(2009/09/16)
吉田 修一

商品詳細を見る

小太郎の左腕小太郎の左腕
(2009/10/28)
和田 竜

商品詳細を見る

肝、焼ける (講談社文庫)肝、焼ける (講談社文庫)
(2009/05/15)
朝倉 かすみ

商品詳細を見る

オカメインコに雨坊主 (ポプラ文庫ピュアフル)オカメインコに雨坊主 (ポプラ文庫ピュアフル)
(2009/11/06)
芦原 すなお

商品詳細を見る

晩夏に捧ぐ (成風堂書店事件メモ(出張編)) (創元推理文庫)晩夏に捧ぐ (成風堂書店事件メモ(出張編)) (創元推理文庫)
(2009/11/10)
大崎 梢

商品詳細を見る

マイナークラブハウスは混線状態―minor club house〈3〉 (ポプラ文庫ピュアフル)マイナークラブハウスは混線状態―minor club house〈3〉 (ポプラ文庫ピュアフル)
(2009/11/06)
木地 雅映子

商品詳細を見る

QED~ventus~御霊将門 (講談社文庫)QED~ventus~御霊将門 (講談社文庫)
(2009/11/13)
高田 崇史

商品詳細を見る

ちんぷんかん (新潮文庫)ちんぷんかん (新潮文庫)
(2009/11/28)
畠中 恵

商品詳細を見る

スコーレNo.4 (光文社文庫)スコーレNo.4 (光文社文庫)
(2009/11/10)
宮下 奈都

商品詳細を見る

εに誓って―SWEARING ON SOLEMN ε (講談社文庫)εに誓って―SWEARING ON SOLEMN ε (講談社文庫)
(2009/11/13)
森 博嗣

商品詳細を見る

よつばと!  9 (電撃コミックス)よつばと! 9 (電撃コミックス)
(2009/11/27)
あずま きよひこ

商品詳細を見る


ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
スポンサーサイト

お買い物
トラックバック(0)  コメント(0) 

    2009

11.30

11月に買った本の代金

個人メモです。

総額28.839円

バカを通り越してバカバカ。
明らかに暴れすぎでしょう。


ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

自分への戒め
トラックバック(0)  コメント(0) 

    2009

11.29

「赤々煉恋」朱川湊人

1.jpg

赤々煉恋 朱川 湊人

人間の赤裸々な欲望、妄執を巧みな文章で書き綴った、直木賞作家・朱川湊人の新機軸。最愛の妹を亡くした女、雨の渋谷で死んだ同級生を思い出す男、街を彷徨う女子高生、満たされぬ思いから窃盗を繰り返す女、この世のものとは思えない美女と遭遇した少年……、赤々とした炎のように何かに身を焦がし、切望する者たちの行く末ははたして。切ない余韻の残る連作短編集。

「死体写真師」
やつれ果てた妹の死顔を見ながら、早苗は涙を止めることができなかった。高校の卒業間際に発病して以来、三年半、百合香は辛い病気によく耐えた。その苦痛が今、ようやく終わったのだ。看護師たちが、清拭してくれた百合香はまるで眠っているみたい。本当にきれいだ。できれば写真に撮っておきたいぐらい。その時、恋人の晴紀があることを思い出した。その葬儀会社には、死んだ人専門のカメラマンがいるという話だった。/死者を冒涜するような内容で嫌悪感しか持てなかった。

「レイニー・エレーン」
渋谷のラブホテルに入った佐原は、出会い系サイトで知り合ったありすから、雨の日になるとこの街に帰ってくるという「レイニー・エレーン」の話を聞き、大学の同級生のことを思い出す。その理華こそが五年前の冬、この街の狭い路地で絞殺死体となって発見された女だった。昼は一流企業の有能なOLとして働き、夜はこの街をさまよって、一晩のうちに何人もの男の相手をしていたという。まさかここで、その話題が出るとは思わなかった。/怖さの中に、忘れられない恋心の切なさがあった。

「アタシの、いちばん、ほしいもの」
ジョイフルタウンプラザと名付けられたマンション棟。このマンションには、アタシのお気に入りの場所があった。A棟の非常階段のすぐ脇にある、植え込みの中。その真ん中あたりに、いきなり何も植えられていない場所があって、実はそこがアタシの秘密基地。アタシはそこに坐って、ただ、じっとしているのが大好きなんだ。アタシは十二階から飛び降りて、自ら命を捨てた。だからここが、アタシの発生地点だ。それ以来、ずっと一人だ。/寂しいけれど、この無力感は好き。

「私はフランセス」
中学二年生の頃、同じクラスだったあなたに宛てたMDのお便り。私の家はある宗教団体に入っていた。私の悪癖はそんなストレスから生まれたのかもしれない。なぜか盗んでしまう盗癖。十六歳の時、万引きを見られた相手が悪く、罰を受けて妊娠。教義を尊重する親に縁を切られ、町から追い出されることになった。Mさんは、もともと売春のお客だった。それからまもなく、私は売春をやめて彼と暮らすようになった。Mさんには変わった嗜好があった。/理解しがたくて、頭の中は?マークでいっぱい。

「いつか、静かの海に」
克也にとって夜こそが安息であり、自由だった。生まれてすぐに母に捨てられ、その後、暴力的な父親に育てられた。あの不思議な男と出会ったのは、小学四年のことである。すべては必然だったように思える。克也と曾根さん、そしてお姫さまを出会わせたのだ。お姫様は、元々は鉱物で、月の水を飲んで成長する月星人だった。それからの夜は、いっそう特別なものになった。学校から帰ると、日が落ちるのを待って曾根さんの家に行く。お姫さまのための月の水集めを手伝うのだ。/魅せられた人の執着心が怖い。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

朱川湊人
トラックバック(0)  コメント(0) 

    2009

11.28

「天才探偵Sen4‐神かくしドール」大崎梢

天才探偵Sen〈4〉神かくしドール (ポプラポケット文庫)天才探偵Sen〈4〉神かくしドール (ポプラポケット文庫)
(2009/10)
大崎 梢

商品詳細を見る

渋井千、信太郎、香奈。いつもの三人は、放課後の教室で壁新聞を作っていた。そこに顔をのぞかせたのは、となりのクラスのコンタ。携帯にへんな画像が届いたと言うのだ。そこにあったのは人形の写真。金色の巻き毛にレースの髪かざり。フリルのついた昔っぽいドレス。このメアリードールはまずかった。ほんとうのメアリードールは、幸福を呼ぶ人形とされ、白い服を着ている。でもこの人形の着ている服は黒色。喪服をあらわしていて、災いをもたらす不幸の贈り物ということになる。

いろんな学校の生徒が集まる塾がうわさの中心地らく、他の町の生徒たちはすでに知っていた。人形を受け取ったら、その人が神かくしにあってしまう。ほんとうにいなくなった子もいる。携帯に画像が届くのは、もうすぐ本物の人形が届くという予告といわれていた。黒い服をまとった、不幸な贈り物。不吉をもたらす、災いのドール。怖がりの信太郎だけでなく、好奇心旺盛な香奈までめずらしく引いているのに、千の興味はどんどんふくらんでしまう。ぜひともこの目で、本物の人形を見てみたい。神かくしの真相が知りたい。

ドールズ。アンティークドールをつかい、小学生や中学生からお金をだましとっている集団ができていた。そこでつかわれているのは、決まって黒いメアリードール。黒幕らしき人はドールマスターと呼ばれ、さまざまな人間を手足のようにつかい、連絡方法は携帯ばかり。自分のメールに人形の画像をつけていた。その携帯も、さまざまなアドレスをつかいわけている。とても慎重で、徹底しているのだ。渋井千は、出会ったみんなに協力してもらい、ドールマスターにちょっとした罠をしかける。

シリーズも四作目となれば、キャラの性格や立ち居地にしても「天才探偵Sen」というカタチが完成されている。そういうわけで、読者として書くことは何一つない。渋井千、信太郎、香奈の小学生トリオ。あこがれの万希先生。フリーライターの和人さん。また会えましたね。そして、また会いましょう。定番となったシリーズ作の醍醐味は、この繰り返しにあるのかもしれない。安心して読める。今後もそういう作品を提供して頂きたいと思う。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

大崎梢
トラックバック(0)  コメント(0) 

    2009

11.26

「闇鏡」堀川アサコ

闇鏡闇鏡
(2006/11/21)
堀川 アサコ

商品詳細を見る

時は室町初期。舞台は京の都。清原龍雪は、検非違使の少志である。検非違使の役人たちは、犯罪捜査や追跡を任務とするに相応しく、官位などあっても粗暴な者が多い。使庁では指折りの乱暴者として知られる龍雪だが、実は一番の怖がりでもある。妖怪幽霊譚の類が何より怖いのだ。清輔は、龍雪の手先として働いている放免である。放免とは、罪を許された凶状持ちだ。乱暴な者が多い中、清輔は腕っ節も弱ければ体も痩せている。その反面、下手人を捜したりの段になると、人一倍に活躍する。加えて、何の足しになるのか判らない様々なことを、実によく知っていた。

清輔は五条河原で傀儡女の死骸を見つける。女は毒を盛られて死んだらしい。その女の手には絵が握られていた。東風の桃源郷と名付けたその絵は、十年近くも前に清輔自身が描いた物であった。それから半月後、なにやら気配がするという夜の鬼殿で、龍雪と清輔は鬼の謡う唄を耳にする。その戯れ唄は予言であったのか、京洛でも評判の遊女が惨殺された。現場には白拍子の着草と〈割菱の君〉と呼ばれる貴人がいたという。尤も、〈割菱の君〉の正体は誰も知らない。けれど、着草の方は何処へ行ったのか。その着草という白拍子こそは、半月前に毒殺されたはずの傀儡女で。

室町時代の京が舞台という雰囲気作りなのか、読みにくい漢字が至るところで多用されている。一度目はふりがなが振られているが、それ以降はない。その部分は不親切としかいいようがない。わざわざ前のページに戻るのも面倒なので、たぶんこうだろうという雰囲気読みで誤魔化すしかなかった。そこを除けば読みやすく、登場人物の魅力で引っぱる作品だと思う。腕っ節は強いが妖怪幽霊が怖いという主人公の龍雪。何やら過去にありそうな理屈屋の放免・清輔。掏摸上がりの無邪気な放免・蚕児。龍雪の幼馴染で女装癖のある漏刻博士の義時。何かしら隙を持った人物たちだからこそ好ましい。

一方で、何が起こっているのかという事件自体は中々見えてこない。生身の人間の仕業なのか、はたまた龍雪の嫌う鬼や邪による怪事なのか。その辺りは読者をじらせながら、少しずつ提示されていく。また、謎の多い着草という女の前から姿を消したという夫の猪四郎は何処にいるのか。猪四郎は何やら人の世界とは違う幻想的な光景を見ているようで、その部分でも読者の好奇心を煽るような仕掛けが施されている。そうして現実の世界と危うい世界が交錯したとき、一つの真実を浮かび上がってくる。

と言っても、早いうちから読者には手の内が明かされているので、察しのいい方なら気づくかも。また、巻末の著者紹介に室町時代の風俗文化に魅了されたとあるが、時代を室町初期に設定したのは、北畠顕家という南朝の英雄を持ち出したためとしか思えない。その設定だけを外せば、別に平安時代でも構わなかったのでは。そう思える弱さを感じた。第18回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。大賞じゃないのは、その辺りが関係あるのかないのか。ちなみにこの時の大賞作は、仁木英之著「僕僕先生」だそうで。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

その他の作家
トラックバック(1)  コメント(0) 

    2009

11.25

「永遠の出口」森絵都

永遠の出口 (集英社文庫(日本))永遠の出口 (集英社文庫(日本))
(2006/02/17)
森 絵都

商品詳細を見る

私は、〈永遠〉という響きにめっぽう弱い子供だった。すべてを見届け、大事に記憶して生きていきたいのに、この世界には目の届かないものたちが多すぎた。いろいろなものをあきらめた末、ようやくたどりついた永遠の出口。日々の小さな出来事に一喜一憂し、悩んだり迷ったりをくりかえしながら世界の大きさを知って、大人への入り口に通じているかもしれないその出口へと、一歩一歩、近づいていく。時には一人で。時には誰かと。

誕生会はビッグイベントだ。好恵は誰がどう見ても普通の小学四年生だった。その好恵の家に、「誕生会だから」と招かれ、私たちはいそいそとプレゼントを持参した。しかしそこにはケーキもごちそうもお菓子もなく、もちろんプレゼントのお返しもなかった。しまいには「帰れ」とおばさんに追い払われて帰ってきた。私たちは全員一致で好恵を今後の誕生会から締め出すことを決議した。(「第一章 永遠の出口」)

小学生の頃、学校の先生は、神様だった。実際、敵は手強かった。五年一組の教育熱心な女教師は、落ちこぼれには容赦をしない一方、成績の良い教え子には賛美を惜しまなかった。成績至上主義。えこひいき。しかし、これぐらいならまだどこの学校にも一人や二人はいる「やりすぎな人」といったところかもしれない。黒魔女は生贄を必要とした。彼女は自分に意見した生徒を断じて許しはしなかった。(「第二章 黒い魔法とコッペパン」)

十二歳の春休み。数日後には中学生になる私と春子とクー子にとって、これはちょっとした卒業旅行の始まりだった。子供同士で千葉なんて、と渋い顔をする母には、「いつまでも子供と思っていても、もう中学生なんだよ」と静かに諭して説きふせた。そのくせ電車賃は、ちゃっかり子供料金ですませた。が、実際問題、中学校の入学式を数日後に控えた小学生というのは、そうそう浮ついてもいられなかった。(「第三章 春のあなぼこ」)

中学生になって、席が近いというだけで同じグループになった彼女たちがみな善人であることに安堵しながらも、私は時折なんともいえない居心地の悪さに襲われた。母子喧嘩をして、葡萄酒を飲んで、悪い噂をきく茅野勇介のパクッた自転車に揺られ、誰だか知らない先輩の家へむかっている。普段の日常からかけはなれた一時が、きゅうきゅうになっていた私を解き放ってくれた。(「第四章 DREAD RED WINE」)

夜遊びと外泊と宿酔いの毎日が始まった。酔って騒いでいるうちに中一は去って、中二になると周辺にはあきらめの色が漂いはじめた。以前はかなりの比重を占めていた家族にも無関心で、母がなぜ私に執着するのかふしぎなくらいだった。いつも一緒にいたのはヒロ、瑞穂、モンちゃんの三人だ。三人とも先輩のアパートで親しくなった同級生で、クラスはちがったものの、そのクラスで浮いている点では共通していた。(「第五章 遠い瞳」)

唐突に計画された大分県別府温泉二泊三日の旅。大学受験を控えていた姉と同様、私はその頃、中三の受験生だった。中一のある時期から始まった暴走もようやく勢いを弱めつつあって、私はある意味では柔軟に、ある意味では軟弱になっていたのだろう。関サバ関アジ。温泉でリラックス。うーん、いいかも、と単純に思ってしまった。ところが、両親は離婚の危機を迎えるほどの、静かな喧嘩をしていた。(「第六章 時の雨」)

高校生になり、アルバイトを始めた。ラ・ルーシュ。フランス語で〈蜜蜂の巣〉を意味する小さな欧風レストランだ。バイトを始めて三ヶ月が過ぎると、ようやくウエイトレスも板についてきた。〈ラ・ルーシュ〉での時間にかつてない充実を感じ、制服ひとつで生まれ変わった気になって没頭し、没頭しすぎて不穏な影も目に入らずにいた。不穏な影。今にして思えば、それは店内の至るところにあったのに。(「第七章 放課後の巣」)

保田くんとはたくさんデートをした。一日の終わりには疲労困憊していた。デートなんてまったく楽しいものじゃない。なのに、またすぐに会いたくなった。次のデートが待ちきれないほどに。翌朝、学校で顔を逢わせるまでの時間さえもどかしいほどに。さっき別れたばかりの彼からの電話を息を殺して待つほどに。それくらい、保田くんが好きだった。十七歳。恋さえしなければ、ずっと楽しいままでいられたのに。(「第八章 恋」)

小学校の卒業式は、物心ついて初めての大がかりな別れにすっかりあてられて、二週間後には同じ中学で再会する友達とまで抱き合って号泣した。中学校の卒業式では、長い刑期を勤めあげた囚人みたいな気分で、明日から無関係になるすべてのものと訣別した。そして、高校。私はこの段になってようやく落ち着いた心持ちで、ごくまっとうな、卒業らしい卒業を迎えようとしていた。こう、門出のような気分で。(「第九章 卒業」)

男女の違いはあれど、身に覚えのあることばかりだ。友だち同士で開く誕生会や、生徒を支配したい先生。小学生時代は、友だちと同じであることが重要で、親にも素直に甘えていられた。中学生になると、悪い遊びを覚え、親はただ口うるさい存在に落ちる。そして高校生になると、バイトをすることで社会がぐっと広がり、親との関係も少しは改善され、本当の恋の苦しみを知る。たびたび訪れる世界の終わりに、その都度、きゅうっと心が締め付けられた。今はもう感じることがないその痛みが、懐かしい。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

森絵都
トラックバック(1)  コメント(5) 

    2009

11.24

「未成年儀式」彩坂美月

未成年儀式 (Style‐F)未成年儀式 (Style‐F)
(2009/08/06)
彩坂 美月

商品詳細を見る

渡辺七瀬たちが卒業する春に、老朽化を理由に取り壊されることが決まっている桜ヶ丘寮は、光陵学院高等部の女子専用の学生寮だ。夏休み初日でほとんどの寮生が帰省し、女子寮に残ったのは小説家を志望する七瀬ほか、さばさばした性格と持ち前の面倒見の良さで常に周囲から頼られることの多い友人の叶久美、ワンマンプレイでバスケ部を全国大会まで導いた関西出身の穂積あきら、悪気のない言動が同性から反感を買ってしまう一年の伊吹薫、何か特殊な電波を受信しているのではないかと憶測が飛び交っている同じく一年の坂本海、という物好きな五人の少女たちだった。

実月と日向の双子姉妹は、山の中にいた。妹は勝ち続ける姉を殺すつもりでいた。ところが、姉妹は教師が事務員を殺害する現場を偶然に目撃する。そこに起こった突然の大地震。とんでもない事件を目撃したと姉妹は混乱する女子寮に駆け込み、そこに問題の教師も口を封じようと追いかけてきた。女子寮を内部から封鎖する寮生たち。そこに現れた見知らぬ少女。元々身体が弱く、帰省中の自宅で亡くなった元寮生の清水繭。彼女の親友を名乗る沢村あかりだった。迫る大人の暴力。しかも地震の影響で外部との連絡が完全に断たれてしまっている極限状態のなかで、さらなる土砂崩れが少女たちを追いつめる。

デビュー作ということもあって、文章が硬く、少し世界観に入りにくい。狂った教師に、大地震。その結果、いつ二次災害で倒壊するかもしれない女子寮に閉じ込められた少女たち。彼女たちは打ち解けることなく反発しあう。それは何故か。彼女らは、何かしかの屈託を心の中に秘めていて、自己防衛のために見えない壁を作っているからだ。一見パニックものと思われる作品だけど、実質は、ここだけは触れられたくないという弱みを突かれ、突き返す感情のぶつかり合い。勝手に人格を決めつけるなという反発。自分にないものに憧れてするお節介。それをわずらわしく思う気持ち。あるある。わかる。

ただ友達になりたいだけ。実の兄を好きになってしまったどうにもならない感情。周りの悪意に対抗するための虚勢。波風を立てない同調を選ぶことの愚かしさは嫌だという上昇志向。そして、幼馴染みのことを好きだと気づいてしまった想い。素直って言葉は簡単だけど、自分の面子を大事にする高校生にとって、それに対する行動はとても勇気のいること。それぞれが抱える闇は読ませどころだ。だが、他の要素を詰め込みすぎて、うまく消化しきれないまま終えたところは惜しい。でもこの雰囲気は買いたい。今後のお手並み拝見という感じでしょうか。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

その他の作家
トラックバック(0)  コメント(0) 

    2009

11.23

「ガミガミ女とスーダラ男」椰月美智子

ガミガミ女とスーダラ男ガミガミ女とスーダラ男
(2009/09)
椰月 美智子

商品詳細を見る

ガミガミ女とは児童小説家である著者の椰月美智子さん。スーダラ男とは著者の旦那さま。彼らの間には一歳二ヶ月のこども・ポポジ(仮名)がおり、ガミガミ女のお腹には第二子が。そして家族は黒ださんと名付けられたメス猫と暮らしている。近所にはガミガミ女のお母様・通称きわちゃんが住んでいる。本書はwebちくまで連載されたエッセイを一冊の本としてまとめたものだ。

スーダラ男は、無意識のうちにとんでもないことを口走る性癖がある。筑摩書房の「ちくま」を「ちくび」と表現し、放送禁止用語を連発するシモネタ好きで、それに付随したおちゃらけ者だ。そのスーダラ男のおふざけに、「ふざけんな!殺す!」と眉間にグーでパンチを食らわすガミガミ女。一読者はすべての椰月作品を読むファン。よって、ここにある攻撃的な行動のすべてにビックリ。

始まりから終わりまで、毎回、痴話げんかをしている。他所さまの旦那さまをこういっては失礼だが、大人になりきれていない子供。弁が立つだけに厄介なお子さま。そんなスーダラ男にイライラして、キレるガミガミ女。自分が関わらないケンカって楽しい。所詮、人事(ひとごと)だから、余裕を持って読める。どっちに軍杯をあげるかで、また楽しい。でもスーダラ男の不利は明らかだが。自分を含め、男ってスーダラです(苦笑)。ごめん。

収録作は、「就寝前の甘いひととき」「シアサッテの人」「出血!」「出血!その後」「watching movies」「保育園」「にっくき百日咳」「痛みについての考察」「夏!」「新車購入」「屁についての考察」「♂」「忍野八海」「性的人間」「ペペジ誕生1」「ペペジ誕生2」「ママ友」「ゆく年くる年の過ごし方」「ママはテンパリスト」「陰毛についての考察」「ポポジ&ペペジ」「最低の日曜日」「黒ださんのこと」「スーダラ男とは」の二十四編。

さまざまなケンカを繰り返すガミガミ女とスーダラ男だが、これはこれでバランスが取れているようにも思えてくる。ケンカを繰り返しても、なんだかんだで許しあい、仲直りをする夫婦。言葉を覚えはじめた子どものことは心配だけど、この父の子なら、愛されるひょうきんな子として認知され、人気者になれるかも知れない。ほんと、無責任だけど、楽しいお家だと思う。わたし、この夫婦を応援します。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

椰月美智子
トラックバック(0)  コメント(10) 

    2009

11.22

「無理」奥田英朗

無理無理
(2009/09/29)
奥田 英朗

商品詳細を見る

ゆめの市は、「湯田」「目方」「野方」という三つの町が合併して一年前に誕生した。それぞれの頭の文字を取って「ゆめの市」となった。人口十二万人の、だだっ広い地方都市だ。美しい田園風景だった国道沿いは、今では量販店とファミリーレストランとパチンコ店の激戦区だ。中でもドリームタウンはゆめので唯一の複合商業施設。市民は略してドリタンと呼ぶ。ドリタンができたおかげですべての駅前商店街が寂れ、シャッター通りと化していた。本数の少ないバス乗り場にいるのは中高年と老人ばかりだ。家族連れや若者はみんな自家用車でドリタンに来る。ゆめの市は車がないと買い物にも行けない町になった。

このゆめの市で暮らす主人公の五人。相原友則は、県庁職員だが、出向してケースワーカーとしてゆめの市の社会福祉事務所に勤務する三十二歳。生活保護の不正受給者や、弱者を主張する身勝手な市民に嫌気がさしている。妻の浮気が原因で一年前に離婚。主婦売春の現場を偶然目撃し、思わぬ深みにはまっていく。県立向田高校二年の久保史恵は、両親と弟の四人家族。退屈なゆめのを出て大学は東京へ行き、イケメンで金持ちの彼氏をつくろうと親友の和美と誓い合った。同じ予備校に通う北高の山本春樹にほのかな想いを抱いているが、ある日突然、予備校の帰りに何者かに拉致される。

加藤裕也は、詐欺まがいの漏電遮断器を売りつける二十三歳の訪問セールスマン。共に地元の商業高校を中退し、同じ暴走族で走り回った先輩の柴田に触発されて仕事が面白くなりつつある。そんな中、父親に収入があると生活保護が打ち切られると、離婚した妻から一歳二ヶ月になる息子・翔太を引き取るはめになった。堀部妙子は、子供が独立したのを機に、夫と離婚した一人暮らしの四十八歳。昼間はドリームタウンの地下にあるスーパーで保安員として働いているが、手取り十六万の生活は苦しい。仏教系の宗教団体「沙修会」の会員で、「万心教」の信者を引き抜いたのをきっかけに妨害行為を受け始めた。

ゆめの市議会議員の山本順一は、町会議員だった父親の地盤を引き継ぎ、現在二期目の四十五歳。地元の山本土地開発社長でもある。妻・友代の浪費と飲酒が頭痛の種だが、自分も愛人を囲っているので目をつむっている。いつまでも住民エゴの相手はうんざりだと、県議会に打って出る腹積もりだ。ところが先代の築いた牙城がどんどん崩れていく。そんな五人の主人公たちは鬱屈を抱えたまま日々を送り、やがて思いがけない事態に陥っていく。本来なら関わることのない五人。だが、何の因果か、五人の人生は引き寄せられ、交錯することになる。出口のないこの地方都市で、彼らに未来は開けるのか。

久しぶりに読ませる作品。なので今回はあえて語らず。ご自分で感じて下さい。


奥田英朗さんのサイン。

奥田2

他のサイン本はこちらをクリック。→「サイン本」

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

奥田英朗
トラックバック(4)  コメント(2) 

    2009

11.20

「コイカツ-恋活」坂井希久子

コイカツ―恋活コイカツ―恋活
(2009/07)
坂井 希久子

商品詳細を見る

柿崎教授の、ソフトな命令口調が好きだ。さあ、お踏みなさい。最初は、シュークリームだった。今、私の足元にはゴカイの山がある。釣りのエサに使う、ムカデの子分みたいな虫だ。えいやと踏み潰す。サンダルを通して、弾力のある柔らかいものが弾ける感触が伝わった。後はもう無我夢中だった。ぐちゃり、ぐちゃり。教授は床に頬をつけて、至近距離でゴカイの大虐殺を観察していた。小さな生き物が踏み潰される瞬間に性的興奮を得る。そういう世間様に認められがたい性癖を、柿崎教授は持っていた。フェチ教授と女子大生の崇高な関係。(「かげろう稲妻水の月」)

香織は専門学校に通うかたわら、チャットレディのアルバイトをして学費を稼いでいた。音声と動画つきのチャットサービス。バーチャルなキャバクラか、映像つきのテレクラみたいなものだ。きららちゃん。呼びかけられて背筋が凍った。それは源氏名だった。香織は声を震わせながらその名を呼んだ。冷凍まぐろ…。冷凍まぐろは独占状態でログインしてくれるヘビーユーザーだった。おびき寄せて捕まえる。彼氏の秀樹は自信満々にそう提案した。ところが血判つきの誓約書を書かされたにも関わらず、冷凍まぐろは香織の前に姿を現し続ける。ネット美女に恋をしたオタク青年の純情。(「チャット・ガール」)

裸主義に目覚めた同僚の藤原は喋り通しだった。だが俺は俺で大変だった。かれこれ五年も同棲している佳苗との仲がこじれて、彼女が実家に帰ってしまった。でも結婚となると話は別。俺は筋金入りの独身主義者だ。佳苗も昔は同じ意見だった。かつては、子供なんて一生産まないと宣言していた。仕事にブランクができるし、それ以前に子供にあまり興味がない。俺の考えもまったくその通りだ。どうして子供なんてほしくなったんだ、と聞くと、佳苗はこう答えたものだ。子宮が呼ぶんだわ。女の性っていうやつ? 独身主義が一転、彼女に子供が欲しいと言われ。(「素っ裸の王様」)

冴子が仕事から帰ると、同棲相手の崇が玄関に飛び出して来た。花粉症が寄生虫で治る。健康番組でやっていたらしい。その教授は寄生虫学を専門にしていて、自らも腹にサナダムシを飼って喜んでいる、一風変わった名物教授だ。冴子は健康雑誌の編集をしている。その番組も毎日録画していた。崇は強くて逞しくて、風邪なんかひいたこともないってタイプだ。その崇が突然花粉症を発症したのは二年前。かなり重症だった。だからといって寄生虫を飼いたいと言われても、賛成できるはずがない。同じ風呂やトイレを使う身にもなってくれと言いたい。彼氏が突然お腹のなかに寄生虫を飼いだした。(「虫のいどころ」)


こういう変テコな性癖や恋愛の作品は普段なら好きだ。しかし、どうも乗りにくい。著者のユーモア感覚と自分のそれとが合わないのだ。全体的にチョイスは面白そうなのに、題材が生かし切れていない。作品の面白さを左右する起承転結も平坦。執筆当時「SMクラブの女王様」だったかもしれないが、それとは作品の評価は別。なぜこんなしょうもないことを公表しているのかが疑問でしかない。もっと練ってから書いていれば、違ったものになっていた可能性がある。そこが惜しい。

個別の感想を短くあげてみると、まず「かげろう稲妻水の月」は、虫嫌いにとってはおぞましいだけで、踏み潰す場面は鳥肌しかでてこない。でもこれは個人的な嫌悪なので気にしない頂きたい。途中でぷっと笑える場面もあったからだ。次の「チャット・ガール」は、某大賞受賞作と似た内容で、パクリ疑惑は別にしても、比べるのも某作品に対し失礼になるほどのお粗末。「素っ裸の王様」は、一番マシな作品だった。裸思想に染まっていくこのバカっぷりは突き抜けていた。バカになるのに理由はいらない。最後の「虫のいどころ」は、女性の心の内面なのか、寄生虫嫌いなのか、読ませたい焦点がぼやけていた。もっと早くに寄生虫を飼いだしても良かったのでは。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

その他の作家
トラックバック(0)  コメント(0) 

    2009

11.18

「WILL」本多孝好

WILLWILL
(2009/10/05)
本多 孝好

商品詳細を見る

「MOMENT」の姉妹編。葬儀屋を営んでいた両親が事故で死んだのは、森野が高校を卒業する間際だった。誰かに任せるのもおかしなものだから、両親の残した店で葬儀をした。喪主とも葬儀屋ともつかない立場で、どちらの立場にも立てないまま、彼女の目の前で葬儀は淡々と進み、気づいたときには終わっていた。それ以来、何となく店を継ぐ流れになり、森野は両親が残した葬儀店の社長となっていた。二十九歳になった現在も、親の代から働いている古株の竹井と新人の桑田、二人の従業員とともに、古ぼけた商店街の片隅でちっぽけな森野葬儀店を経営している。

月に一、二度ほどのペースで、神田は電話をくれる。森野と同じ年に、同じ商店街に生まれた幼馴染だ。同じような環境で高校まで一緒だった彼とは、十八から違う道を歩き始めた。森野は葬儀店を継ぎ、そのときとさして変わらない今を過ごしている。神田は大学を卒業したあとアメリカに渡り、今は出版物を翻訳して出版することで生計を立てている。彼はもう幼馴染ではなかった。一緒に暮らそう。その言葉は涙が出るくらい嬉しかった。けれど森野は行けなかった。あのとき以来、神田の態度は変わらない。動けない彼女を、せかないし、なじりもしない。今後については、森野自身が結論を先送りにしたままだ。

そんな森野のもとに、仕事で関わった「死者」を媒介にした、数々の不思議な話が持ち込まれる。高校時代の同級生・佐伯杏奈の父親の葬儀。その故人が幽霊になって現れたと甥っ子は告げ、死者の描いた絵が突然送られてくる(「空に描く」)、一度執り行われた老人の葬儀を、喪主を代えてやり直したいと要求する愛人を名乗る女(「爪痕」)、故人の生まれ変わりだと主張する少年が現れ、本人じゃなければ知らないことをいっぱい知っている(「想い人」)。死者は一人で起きたりはしない。生き残ったものが死者を起こすもの。死者を眠らせるのが森野の仕事。それぞれに潜む「真実」を、森野は探っていく…。

死を扱った作品であることはいつもと同じだが、今回はよりオーソドックスなミステリとなっている。森野葬儀店が関わった故人の周辺で起こる不思議な謎。それを探偵役となる森野が聞き込み調査をし、真相を明らかにしていく。そして、神田との遠距離恋愛の気になる行方と、森野としか明かされていないヒロインの名前の謎とが相まって、三編の連作集でありながら、実は一つの長編作品であるという構成になっている。作品として無駄な部分はなく、綺麗にまとまっている。しかし、本多作品って、こんなにもスマートだったかしら。悪意ある人物が若干一名登場するが、そういう心の暗い部分をぐいっと突いてくる作家であると思っていた。そこは少し拍子抜けの感があった。でも、優しい作品であった。


本多孝好さんのサイン。

Image236_r1.jpg

他のサイン本はこちらをクリック。→「サイン本」

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

本多孝好
トラックバック(1)  コメント(2) 

    2009

11.17

「ほんじょの眼鏡日和。」本上まなみ

ほんじょの眼鏡日和。ほんじょの眼鏡日和。
(2005/11/16)
本上 まなみ

商品詳細を見る

庄内平野の四季を感じた祖父母の家でのお泊まり。人生でいっとう最初に見聞を広げはじめた幼稚園のときの断片的な記憶。春に思い出す小学校入学にまつわる文房具。妹と二人だけで山形に行くはじめての夜行列車。乗組員のペットが行方不明になるロングドライブ。子どもの楽園だった先生には入らないようにと注意されていた場所。お弁当で思い出す運動会のへもい記憶。強くてたのもしいおかん。

おかんの手作りよりもお肉屋さんの揚げたてメンチカツ。ふーふーしながら食べるのがうれしいあつあつのごちそう。伝授する鮎の一夜干しの作り方。心温まるゆるゆるのひとときはお茶の時間。はじめて調理する注文品のナマコ。鍋の人生について考察するお鍋の不思議。眼鏡がこわれた瞬間のマヌケ面を他人に見られたくない恐怖症。誕生日のサプライズパーティー。六月といえば苦手な衣替え。はじめての声優はおでんくん。「ハウルの動く城」を見て。

他に、毎回発見がある小さな旅と遠い旅行の風景、大好きな動物のはなし、本のことなど、記憶を掘り起こしたエピソードや、日常の中で見つけた大切に思うこと、疑問などを書き連ねたエッセイ集だ。意外な視点が新鮮で、あたたかく親近感のわく文章は、彼女が見た風景そのままを読者にも届けてくれるような錯覚を与えてくれる。そして、ふつうの人なら嫌がるような事柄でも、彼女にとってそれはおいしいネタになる。意外とたくましいのだ。さらに、鶯まなみ名義の短歌にも独特な味がある。人とは違う側面から見ることのできる感性。それは才能だと思う。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

その他の作家
トラックバック(0)  コメント(0) 

    2009

11.16

「凍土の密約」今野敏

凍土の密約凍土の密約
(2009/09/12)
今野 敏

商品詳細を見る

警視庁公安部外事一課に所属する倉島達夫は、登庁したときにはまず、自販機のコーヒーを飲む。明日は、もう味わうことなどできないかもしれない。それが公安の仕事だ。そう腹をくくったときから、朝のコーヒーは、倉島にとって神聖な儀式となっていた。その日、上田係長からなぜか特捜本部に行くように命じられた。警備企画課は、倉島を名指しだったという。ゼロというのは、警視庁の警備企画課内にある情報集約のための組織だ。かつて、ゼロは、サクラ、その後はチヨダと呼ばれていた。全国の公安捜査官からの情報を吸い上げ、それを分析し集積している。

被害者はロシア大使館周辺で街宣活動をやっていた行動右翼の幹部。公安三課によると、ロシア大使館から右翼団体に金が流れていたようだ。二日後、ロシアとの密貿易を資金源にしていた暴力団の組員が殺害された。二つの事案は凶器が同一であることが明らかになり、その手口から同一犯人で、間違いなく殺しプロの犯行と思われた。プロということは、雇った者がいるはずだ。さらに、第三の事件ではロシア人の経済スパイ、第四の被害者は公安捜査員に協力していたロシア語の教授が殺害された。

刑事VS公安という図式はよくあるパターンだが、刑事視点による公安は不気味だというものがほとんどだ。ところが、本シリーズでは一貫して公安側の視点で事件を追っている。警察が国家権力を守るために存在するのに対し、公安は日本という国家を守るのが仕事。諜報機関であり、スパイなのだ。扱う事案の性格がまるで違うので、捜査の方法も違ってくる。刑事に必要なのは、証拠だ。そこが、公安とは違う。公安は事実だと納得できる情報があればそれでいい。そして組織捜査よりも、単独行動が多い。また必要とあれば事件そのものに蓋をする。まっとうなもの読みたい人にはおすすめできない。でもおもしろい。

そしてもうひとつ特徴的なのが、ロシアという国を知れば知るほど嫌いになっていく点だ。ロシアは、社会主義国ではなくなった。だが、それは表面上のことで、巨大エネルギー産業やマスコミはどんどん国の管理下に置かれている。反政府的なジャーナリストが政府によって暗殺されている。それが政府によるものかどうか、明らかにされたわけではない。また自分たちの国益のためなら、何をしてもいいと、ロシア人が常にそう考えている。そういうキナ臭い部分を、著者は題材にし続けている。大丈夫なのか。そんな心配をしつつ、さらなる成長を重ねていくだろう倉島の今後も期待できそうだ。


今野敏さんのサイン。

今野

他のサイン本はこちらをクリック。→「サイン本」

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

今野敏
トラックバック(0)  コメント(0) 

    2009

11.14

「ラストダンス」堂場瞬一

ラストダンスラストダンス
(2009/09/18)
堂場 瞬一

商品詳細を見る

ドラフト二位で即戦力と期待された樋口のプロ入りしてからの十八年間は、タイトル争いに絡むどころか、一軍の準レギュラーレベルだった。主な仕事は守備固めと、レギュラーのキャッチャーを休ませる日の先発。年間百試合以上出場したシーズンは四回しかないし、規定打席に達したことは一度もない。打撃では何も期待されていない選手だった。そして今、四十歳になって二軍落ちしている。怪我もあったが、一軍にもう居場所がないのは明らかだった。

真田誠。ドラフト五位でプロ入りしてからはあっという間にのし上がった。稀代のトリックスター、ショーマン、そして大エース。最多勝三回、最優秀防御率三回、最多奪三振二回。唯一二十勝ラインに達した年には、この三つのタイトルを揃えて投手三冠に輝いている。一方で、その四年後にカムバック賞を獲得したのは、頻繁な怪我で苦労している証である。何回かの大きな故障がなければ、とうに二百勝ラインに達していただろう。今年も怪我で出遅れ、八月に入ってまだ二勝六敗。

プロ野球「スターズ」の同期、真田誠と樋口孝明。今季、球界最年長・四十歳の二人に引き際が訪れた。二軍監督要請という形で引退勧告を受けた樋口に対し、真田はシーズン半ばで突然引退会見を行う。ところが引退宣言以降の登板で真田は連勝。球団上層部も巻きこんだ真田劇場が開幕し、低迷していたチームも優勝争いにからむ快進撃を始めた。シーズン終盤、正捕手の負傷で一軍に昇格した樋口と真田にあの日以来となる十七年ぶりのバッテリーを組む日が到来する…。

この作家のスポーツ小説は安心して読むことができる。いや、それどころか、対照的なタイプの二人が引退を目前に控え、十七年前にただ一度だけバッテリーを組んで大敗をしたことで避けあっていた二人が、お互いを認め合うようになっていくところに引き込まれ、そこに快感がもたらされた。また試合の中で選手同士が繰り広げる駆け引きと、しんと静まった臨場感がたまらない。手に汗握るとはまさにこのこと。野球に興味がなくても、夢中に読ませてしまう吸引力がここにはあった。


ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

その他の作家
トラックバック(0)  コメント(0) 

    2009

11.13

「雪だるまの雪子ちゃん」江國香織

雪だるまの雪子ちゃん雪だるまの雪子ちゃん
(2009/09)
江國 香織山本 容子

商品詳細を見る

山のふもとの、小さなしずかな村のはずれに、雪だるまの雪子ちゃんはひとりで住んでいる。雪子ちゃんは雪だるまですから、雪でできている。でも雪子ちゃんは正真正銘、野生の雪だるまだった。そして、そのことをたいへん誇りに思っている。じっさい、雪子ちゃんがはじめてふつうの雪だるまを見たときの驚きようといったらなかった。こわいと心も体も凍りついたようになって、一歩も動けなかった。そんな雪子ちゃんの性質を、誰よりも心配していたのは雪子ちゃんのお父さんであった。野生の雪だるまはみんな、そもそもひとりでこの世に生まれてくるのだが、家族の記憶を抱いて、雪だるまたちは生まれる。

「こわいと思ったら、力いっぱいにらみなさい」記憶の中の雪子ちゃんのお父さんは、まだ小さかった雪子ちゃんに、たびたびそう言いきかせたものだった。そういうわけで、雪子ちゃんはこわかったので、すこしはなれた場所から、でも、力いっぱい――。ややよごれた雪でできたその巨大な雪だるまは、にらみかえしてこなかった。ところで、お父さんの助言にはつづきがあった。世の中には、にらみつけるまでもなく危険なものもある。火とか、のどをかわかした動物とか、わるい人間とか。そういうものには近づいちゃいけない。いまのところ、雪子ちゃんの知っている人間たちはぜんぶいい人だった。

お友だちの百合子さんは、もうずいぶん年をとっていて、しわしわですが、元気で陽気な女の人。彼女は画家で、雪子ちゃんの家のお隣さんである。たるさんは百合子さんのお友だちで、雪子ちゃんともお友だち。三人は、夜おそくまで、おしゃべりしながらトランプに興じる。家の天井うらや壁のすきまに住んでいたねずみたちは、雪子ちゃんがあとからやってきて家をとってしまったようで、すこし気がとがめ、おわびと友好のしるしにごちそうする。ちなみとりゅうは家が隣どうしで、同じ小学校の、おなじ組。雪子ちゃんは気がむいたときだけ、ちなみとりゅうのいる小学校にかよいはじめた。

雪だるまの雪子ちゃんにとっては、毎日が冒険。学校にいくことも、字が読めるようになったことも、お友だちができたことも、こわがるあまり凍りついてしまわないように気をつけることも、お散歩も、夜のドライブも、たき火も、雪合戦も、なわとびも、よその家からのおまねきも、野性動物を見つけることも、毎日が新しい発見の連続。雪子ちゃんはいつか「とけちゃう前に」たくさんのものを見る。ささやかな喜びを見つけて一日を大事に生きることは、すなわち命のきらめき。一見かわいらしさに目がいきがちだけど、楽しく生きることに貪欲な雪子ちゃんは、立派な野性の雪だるまであった。


江國香織さんのサイン。

江國

他のサイン本はこちらをクリック。→「サイン本」

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

江國香織
トラックバック(0)  コメント(0) 

    2009

11.12

「初恋ソムリエ」初野晴

初恋ソムリエ初恋ソムリエ
(2009/10/02)
初野 晴

商品詳細を見る

穂村チカは高校の入学祝いに買ってもらったフルートを片手に吹奏楽部の門を叩いた。そこで幼なじみのホルン奏者・上条ハルタと再会した。吹奏楽部は部員不足のため廃部寸前の崖っぷちにあった。二人は恋する草壁先生と部員集めに奔走して、秋にはオーボエ奏者の成島さん、冬にはサックス奏者のマレンという素晴らしい仲間が加わった。しかし現実問題として部員は十七人。チカとハルタも二年生になる今年度の新入部員獲得は重要だ。吹奏楽部の甲子園「普門館」につながるコンクールに出場できるバンド編成になれるかどうかの正念場でもある。しかし、気づけば不可解な謎にまきこまれて……。高校の吹奏楽部を舞台に繰り広げられる青春ミステリ「退出ゲーム」の続編。

その痕跡が見られるようになったのは春休みの初日からだった。春休みの間の音楽室は、午前中は吹奏楽部、午後は合唱部に割り当てられている。ゆえに音楽室の鍵を開けるのは、一番早くきた吹奏楽部の部員の役目だ。音楽室の鍵は職員室にあり、鍵開け当番の先生にひと言いってから鍵を取って向かう。ところが音楽室の鍵がない日が何日かあった。先にだれかがきているのかと思って音楽室に向かうと、鍵がかかって入れない。首を傾げながら職員室に戻ると、あるはずの鍵がある、といった具合。犯人はプロ志望のクラリネット奏者・芹澤直子だった(「スプリングラフィ」)

チカはラジオが持つ魅力にはまってしまった。ローカル局FMはごろも。カイユという素人のパーソナリティが、お爺さんやお婆さんを七人集めて、リスナーの人生相談に答える。吹奏楽部は部活動の予算に頭を悩めていた。楽器の維持費や、合同練習や発表会にもお金がかかる。そこに生徒会長の前に地学研究会の部長を連れてくれば、地学研究会が辞退した予算をスライドしてくれるという。彼女の名前は麻生美里。地学研究会は昨年大学と活動を共にして実績をあげた。ところが今年になって麻生たちは途中下車した。(「周波数は77.4MHz」)

草壁先生が過労で倒れて入院した。藤が咲高校吹奏楽部からのヘルプ要請を断り切れずに掛け持ちしたのだ。彼らの部活の顧問が突如自宅謹慎の身になった。処分を下したのは校長先生。教員にもクラスの生徒にも事情の説明はなかった。そして理由がいっさい伏せられた謎の席替え。一ヶ月の間に席替えが三回もあった。鍵を握るクラスの生徒たちは沈黙しているし、当事者の先生も真相を語らない。ハルタとチカ、そして新たに入部したカイユの三人は、流しの生徒となって藤が咲高校に乗り込んで、謎の席替えと自宅謹慎の真相を突き止める。(「アスモデウスの視線」)

初恋研究会代表初恋ソムリエ・朝霧亨。興信所の三代目を継ぐ予定の朝霧が部長を務める文化部で、初恋は嗅覚によって生まれた感情だと仮説を立て、初恋当時の状況を正確に再現し、記憶から、誇張や歪曲という要素を取り除いた、純粋な情報のみを抽出して鑑定するらしい。どうやら芹澤直子の叔母は初恋の人捜しを彼の父に依頼したところから、その胡散臭い朝霧と会っているそうだ。芹澤に泣きつかれた吹奏楽部は、選抜隊ふたりを選び、初恋研究会に送ることになった。チカとハルタは、成り行きで叔母の初恋の真相を解明することに。(「初恋ソムリエ」)

ミステリとしては若干トーンダウンしたところが見受けられるが、新入部員の勧誘という前作にあった要素を引き継ぎ、また発明部のような他の怪しげな文化部が登場し、その部長がとても個性的で魅力ある人たちで、チカとハルタの漫才のようなやり取りも健在だった。「退出ゲーム」と比べても遜色ないぐらいの水準を保った点は評価したい。どうしても二作目となると、狙いすぎが裏目に出てしまうからだ。そして彼らの部員集めのその後が気になるように仕向けてあるところも巧い。今回は入部するまでに至らなかった芹澤直子は、三冊目に突入して仲間になるのか。さらに同じ人を想うチカとハルタの恋の行方は?(笑) おもしろかったです。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

その他の作家
トラックバック(1)  コメント(2) 

    2009

11.11

「新参者」東野圭吾

新参者新参者
(2009/09/18)
東野 圭吾

商品詳細を見る

日本橋人形町。都営新宿線を降りると、明治座の前を通り、清洲橋通りを渡ると人形町に向かう。反対側から、脱いだ上着を肩に担いだワイシャツ姿の男性が何人も歩いてくる。都営浅草線の人形町駅に行くまでの小さな商店街が甘酒横丁だ。お世辞にも、最先端の街とはいえない。洋服店に飾ってあるのは中高年女性をターゲットにした商品ばかりだし、昼間は爪楊枝で歯を掃除しながら歩くサラリーマンが歩道を占拠する。唯一の取り柄は、昔ながらの江戸情緒が残っている点だ。

人形町にほど近い小伝馬町で殺人事件が起こった。独り暮らしの四十五歳の女性が、自宅マンションで首を絞められて死んでいるのが発見された。部屋は荒らされておらず、顔見知りの犯行の可能性が高いらしい。被害者の女性は最近夫と別れて、自立した生活を始めたばかりだった。息子とも殆ど会っておらず、なぜ縁もゆかりもない日本橋にやってきたのかも不明。この街にとっては謎の新参者というわけだ。そして新参者がもう一人。練馬署から日本橋署に赴任して間もない刑事の加賀恭一郎だ。

被害者の部屋を訪れていた保険屋のアリバイを証明する煎餅屋「あまから」、被害社宅にあった人形焼きと同じものを買っていた小僧が働く料亭「まつ矢」、被害者が立ち寄っていた嫁姑問題に悩む瀬戸物屋「柳沢商店」、犬の散歩の途中でよく顔を合わせていた「寺田時計店」……。加賀はふらりとそれらの店を訪ねて事件について聞き込み、人々の家族間で抱えている秘密の苦しみから解放し、なおかつ殺人事件の真相に少しずつ迫ってゆく。全九章で構成された連作短篇でありながら長編でもある巧い作品。

なんと言っても加賀刑事が格好良すぎ。飄々とした表情で人々と紳士に向き合い、手柄を上げようと焦らずに、いつも冷静に鋭い洞察力を駆使し、人情味溢れる自分だけの信念を強く持ち、そして、いつの間にか住人に認められ街に溶け込んでいる。空気のような存在でありながら、その存在感はとても印象的だ。だが本書の主人公はあくまでも被害者の関係者や人形町の住人たちだ。そんな彼らの一時の潤滑油となるのが加賀刑事である。下町の家族小説としても読め、上質なミステリとしても堪能できて、満足感を存分に得る作品であった。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

東野圭吾
トラックバック(14)  コメント(8) 

    2009

11.10

「ハング」誉田哲也

ハングハング
(2009/09/16)
誉田 哲也

商品詳細を見る

警視庁捜査一課第五強行犯特捜一係は、重要未解決事件の継続捜査や、強行犯に係わる特命捜査を手掛ける部署である。津原英太巡査部長が所属する通称「堀田班」は、主任の堀田次郎警部を筆頭に、冷静沈着な先輩刑事の植草利巳、馬鹿を演じ続ける同期の小沢駿介、できの悪い弟のような後輩の大河内守の五人で編成されている。堀田班の若いメンバー四人は、休暇になると植草の妹・遥を誘って何度も飲み会を続けていた。大河内は遥のことを想っている。それを承知の上で、同じく遥に想いを寄せている津原には、彼を指し置くような真似はできなかった。彼はあらゆることを津原に相談し、また津原もそれに答えてきた。

赤坂の宝飾店の経営者が刺殺されたが、犯人を逮捕するには至らず、捜査本部は解散。捜査は打ち切りとなっていた。ところが被害者の長女が遺品を整理したところ、店内の様子を撮影したビデオテープを発見。監視カメラの映像には犯行の九日前に起きた強盗未遂の場面が録画されていた。再捜査にあたった堀田班は一気に犯人にたどり着き、自供も得るが、突然メンバー五人に移動の辞令が出た。そして迎えた初公判で犯人は、植草に自供を強要されたと言い出し、名指された植草は首を吊った。これには裏があると睨んだ津原は、警察をやめて雑誌記者になった小沢とともに、植草の身に起こったことを調べ始める。

そうして津原は巨大な闇に足を踏み出し、一人、また一人と大事に思う人を次々と失っていく。その闇に蠢いているのは、国の政治を裏側から操る謎の大物、元警察庁長官で財団法人の理事、元警視庁刑事部長で現在は関東管区警察局長、彼らの手足となって動く現役の警視庁捜査一課主任、そして、殺しによって世間と繋がっている「吊るし屋」と異名をとる殺し屋。気がつけば正義感を通り越し、怒りで突き進んだ津原自身も、深い闇に呑み込まれ、後戻りできないところにまで到達していた。その危うい結末とは。

刑事小説と思いながら読んでいると、いつの間にか悪漢小説へと変貌していた。これにはちょっとビックリ。誉田作品といえば刑事もの。それを知っている読者を巧く裏切った感じの作品だ。また、剣道を扱った青春小説しか知らない読者にとっては、尚ビックリの作品内容だろう。いったい何人の死者がでるのか。実はこれが誉田作品の本性なのだ。死人がでない「武士道」シリーズの方が異色作だったのだ。元々ホラー出身だけあって、容赦なく人を殺す。それも無残に。趣味悪いだろうが好き!

最近、人気が出だした誉田作品だが、無事に受け止められるのだろうか。そこが心配。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

誉田哲也
トラックバック(2)  コメント(4) 

    2009

11.08

「殺気!」雫井脩介

殺気!殺気!
(2009/09/16)
雫井脩介

商品詳細を見る

何か変だ。殺気……。大学生の佐々木ましろがアルバイトをしている健康食品ショップに客を装った男が強盗に入るが、ましろのお手柄で犯人は逮捕された。ましろには予感があった。犯人の攻撃的な感情の起伏が手に取るように分かった。もちろん、だからこそ怖かったという面もあった。ましろは小六のとき、連れ去り事件に遭ったことがある。空きビルに監禁されていたところ無事に保護されたが、犯人は不明のままだ。ひどいPTSDに陥るほどのショックを受けたましろは、心理カウンセラーの催眠療法で記憶を封印されて、事件のことを思い出せなくなった。そのためか、警戒心が研ぎ澄まされて、周囲の「殺気」を敏感に感じ取ってしまうのだ。鮒田店長の彼女だというタウン誌記者の丸山次美は、ましろの不思議な力に興味を持つが、記事にはしないと約束してくれた。

成人式の夜、ましろは野辺理美子と小学六年生以来の旧交を温めあった。小学四年生のましろが鹿児島から多摩が丘に引っ越してきたとき、最初に声をかけてくれ、友達になってくれたのは理美子だった。小学六年生のとき、父親を事故で亡くしてから、理美子は変わった。そして、ましろも拉致・監禁された事件があり、当時は自分のことで精一杯だった。中学生の頃の理美子はいわゆる不良グループとつるみ、いつも不機嫌な顔を見せていた。ましろも荒んだ理美子を敬遠していた。それから月日が経ち、二十歳になった理美子は有名な建築デザイナーと付き合い始め、すっかり幸せになっていた。一方でましろは過去の事件の真相が気になりだす。理美子の父親が崖から転落死したのも、ましろが拉致・監禁に遭い、救助されたのも同じ日の出来事だったからだ。

こう書いていると陰湿な作品に思われるかもしれないが、作風は真逆である。バイト先で店長と無駄口を叩き合い、同じ大学に通う坊ちゃんタイプの友部やいとこの深紅姉とバカを言い合ったり、ファッションコンテストのイベントに友人の仁美と参加したりと、今風の大学生活を日々エンジョイしている。とにかく意図的に軽いタッチの物語を心がけているようだ。そうしたところに突然かつての同級生が事件を起こし、そこから沈痛モードに突入する。封印された記憶、拉致・監禁の真相が明らかになるとき、不快な殺気を放つ人物と向き合うことになる。この結末がほろ苦い。そして、カッとするたびに行動してしまう人物がひとりいるのだが、いつか本当に殺人者になってしまうと確信。自分がましろの立場ならとても許せない。そこだけが読後感を悪くしていた。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

雫井脩介
トラックバック(3)  コメント(2) 

    2009

11.07

「ねずみ石」大崎梢

ねずみ石ねずみ石
(2009/09/18)
大崎 梢

商品詳細を見る

サトとセイは中学に入学して間もなく親しくなったクラスメイトだ。セイは話題が豊富でボケと突っ込みの合間が抜群。勉強はけっこうできるのに優等生らしさがまったくなく、つきあいがめっぽういい。ただ、好奇心旺盛で無頼の知りたがり屋だった。セイにはサトの住んでいる神支村の祭りについて教えることを約束した。山間の小さな集落にある神支神社の祭りには、恒例の子供向けイベント「ねずみ石さがし」がある。

祭りの夜には、ねずみ石と呼ばれる「子」という漢字が入った七つの石が、お祓いをうけた後にありがたいご利益を授かり、村のあちこちにこっそり隠される。それを子供たちが探す。石を見つけたら願い託す特別な石だ。一生に一度とも言われている。サトには、四年前のお祭りの記憶がない。ねずみ石を探して迷子になり、翌朝山の中で見つけられた。熱を出して寝込み、元気になったら、夜の記憶がごっそり抜けていた。

同じ夜、村では尾ヶ滝という小さな滝のそばに住んでいた女子高校生とお母さんが惨殺されていた。事件は未解決で、犯人はまだ捕まっていない。事件を担当する刑事は、犯人を見てるんじゃないかと、サトにしつこく会いにくる。サトにとっては胸のざわつく相手で気に食わない。セイはその殺人事件に興味を持ったらしい。そして四年前に殺された三島理恵と同級生で、事件にこだわっていた顔なじみのタマさんが殺された。

なんか微妙に引っかかる部分があって、うまく乗り切れなかった。まずサトが一番大好きな近所のおにいちゃんの修ちゃんに嫉妬をしたりと、サトに対するセイの執着が理解できなかった。そのセイや修ちゃんも、サトに何やら隠したまま自分本位に行動を命じてきたりと、イライラを感じさせるところが多々ある。それには後に明らかにされる理由があるのだが、サトにとっては知ったことではない。そういう自分勝手が鼻についた。

中盤になってからは幾分読みやすくなるのだが、「ねずみ石」などの土俗的な魅力が生かされていたとは思えず、セイや修ちゃんのことはサト目線で語られているけれど、サト自身は四年前の一夜の記憶がないとだけしか提示されておらず、どういう性格の少年なのかわからないままでは感情移入がしづらい。そうして途中から一人で行動することになる主人公サトの人物像が見えてこないまま、気がつけば犯人と向き合っている。

そういうわけで、美点を見つけられないまま読み終えてしまった。書店ものは新シリーズがスタートしてまんねり気味をひょいと避けた。ミステリ色が薄い「夏のくじら」では、よさこい祭りの熱気にわくわくした。ただ「片耳うさぎ」に系譜する作風はまだまだ問題点がある。これからもっと頑張れという感じでしょうか。というか、光文社の編集者よ、しっかりせい。他社は、この作家を育てているぞ。なんてね。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

大崎梢
トラックバック(2)  コメント(2) 

    2009

11.06

「八朔の雪―みをつくし料理帖」高田郁

八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
(2009/05)
高田 郁

商品詳細を見る

大阪で生まれた十八歳の澪は、両親を水害で亡くし、天涯孤独の身であった。大阪でも名の知れた料理屋「天満一兆庵」に拾われて奉公に上がり、女でありながら板場へ入ることを許され、主人の嘉兵衛に厳しく料理を仕込まれた。その天満一兆庵が火事に遭い、江戸店を任された若旦那の佐兵衛を頼って江戸に来てみると、江戸店はつぶれていた。佐兵衛が吉原通いに明け暮れて莫大な散財を負い、挙句、江戸店を手放して消息を絶ったということだった。そんな話を信じる嘉兵衛ではなかったが、度重なる心労がたたって落命した。

残された女将さんの芳は身体を悪くし、奉公人に過ぎない澪と二人で裏長屋に暮らしていた。神田同胞町には小さな稲荷がある。化け物稲荷という名前で知られた、つい先頃まで荒れ放題だった稲荷神社だ。澪が草を引き、お社に手を入れ、何とかお参りできるようにしたのは三月ほど前のことである。その働きぶりを見られて、蕎麦屋をしている種市に、店を手伝ってもらえないだろうかと声をかけられた。つる屋に雇われて三月。澪は大阪と江戸の味の違いに戸惑いながらも、医師の源斉先生の指摘に目から鱗が落ちる思いをする。

つる屋は、吟味した材料を使い、とびきりの蕎麦を出す。しかし値は安い。幾ら売れても材料費に食われ、儲けは知れている。蕎麦が苦手な者にもつる屋に足を運んでもらえるような、お客の幅を広げるような肴を作ることが、種市への何よりの恩返しではないだろうか。澪は上等な鰹節の出汁がらを捨ててしまうのは何とも惜しいと、天性の味覚と負けん気で日々試行錯誤を重ね、常連客で一刻者の浪人・小松原をも味方につけ、ぴりから鰹田麩(かつおでんぶ)という一品を作りあげた。これが巷の評判を取った。

どんなに辛くても、落ち込んでも、常に前向きな澪に、自分も頑張ろうと励みをもらえる素敵な作品。また大阪と江戸の食の違いも詳しく並べられていて、そこも興味深く楽しむことができた。大阪人である読者が東京へ旅したとき、まず一番に確認したのはうどんの汁。濃いとは聞いていたが、その黒さは予想以上。驚きながらも、美味しく頂きましたとも。でも西と東ではその常識が二つにわかれ、某カップ麺では、西はW、東はEと側面に印字され、地域によってスープの濃さが違う商品が実際に販売されている。これ、ほんと。

そうした食文化だけでなく、風土の違いにも毎回驚きながら、澪はやがて店そのものを任されるようになり、種一や芳に深い愛を持って見守られ、源斉や小松原の一言をヒントにし、おりょうら長屋の住人の人情にも助けられ、両の眉を下げながら健気に頑張り通した結果、つる屋はついに料理番付に載るほどの人気店になっていく。人気がでれば、澪の腕を妬み嫉み、料理番付で最高位の料理屋「登龍楼」が非道な妨害をしかけてくるが、料理については一切の妥協を許さない澪にとって、それは乗り越えられない苦難ではない。

全四編が収録されていて、各編を読み終えるたびに、なんとも言えぬ幸福感が押し寄せてきた。今回シリーズ第二弾「花散らしの雨」の発売があって、たまたまどど~んと書店の棚に積まれているのを発見し、そこに店内放送で著者自身による販促テープが流れてきて、なんとなく二冊を手に取ることにした。これが大当たりだった。今からでも遅くありません。美味しそうな料理の数々と温かな人情に癒されること間違いなし。文庫書き下ろしなのでぜひ買って、これからのシリーズを一緒に揃えていきましょう。おすすめです。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

その他の作家
トラックバック(1)  コメント(2) 

    2009

11.05

「翼をください」原田マハ

翼をください翼をください
(2009/09/16)
原田 マハ

商品詳細を見る

二〇〇七年、アメリカのカンザス州アチソン。新聞記者の青山翔子は、山田順平がこの町に住んでいるところまでは突き止めた。そして必ず会って、真実を聞き出す。山田は暁星新聞社の純国産飛行機「ニッポン」号が世界初の世界一周を成し遂げた時に随行したカメラマンだったのだ。しかしこの史実はGHQによって歴史の闇に葬られていた。色あせた古い写真には塗りつぶされた謎の人物が写りこんでいた。第二次世界大戦の直前に世界一周したという飛行機に、外国人女性が同乗していた? そして見つけた、エイミー・イーグルウィングのポートレイト。アメリカ、カンザス州アチソン。この辺鄙な町に生まれ、世界へとはばたいていった有翼の女神。

二十一歳のエイミーが、女性パイロットとして初の大西洋横断飛行に成功したのは一九二八年。ビル、ボビーの二人の乗組員、魔法の言葉と呼んでいる通信士のトビアスに支えられての快挙だった。そして一九三三年、エイミーは、ついに大西洋横断単独飛行に成功した。エイミーは大西洋を横断して感じた。世界はひとつ。国境というのは人間が作り上げたもので、物理的には存在しない。自分は世界平和のために飛んでいる。しかし、知己を得た博士は反論する。民族の違い、国家の違い、個人の違いはどうしたってある。それを認めて、受け入れること。それが共存共栄への第一歩だと。エイミーは自分がぼんやりと憧れていた「日本に向かって飛ぶ」と予感していた。

暁星新聞の宿年のライバル新聞社社用機が東京―ロンドン間の渡欧飛行に成功した。ただ日本での主流は目で確認し方向を定めるというもので、これに対してアメリカでは無線と計器を利用した飛行法が取り入れられていた。優れた計器をわが国の工場で作って、純国産機につけて、日本人の飛行士を乗せれば…、理論上は、世界一周飛行ができる。一九三九年、暁星新聞社は海軍の全面協力を得て、世界一周大飛行を決行することになった。「ニッポン」乗組員には、機長の中尾、副操縦士の吉田、操縦士・機関士の八百川、整備士の下川、技師の佐伯、通信士の佐藤、そして、カメラマンの山田が選ばれた。飛び立った「ニッポン」には、もうひとり、極秘の乗組員がいた。エイミーだった。

二十世紀の戦争は、もはや軍人同士の殺し合いではなく、力も名もない人々を空から徹底的に殺戮する地獄と化していた。飛行機は武器ではなく平和の使者である。この世界はひとつ。そう信じるエイミーと、純国産機「ニッポン」の乗組員一同が心を一つにして、世界一周飛行にチャレンジする。この大冒険に幾度となく涙腺が緩んでくる。粋な計らいで再会するエミリーと母親。エイミーをずっと待ち続けているビルとボビーと出会う山田。モールス信号を通したエミリーとトビアスの二人だけにわかる会話。操縦席についたエイミーの勇姿。日本に帰還した山田の演説。世界一周を成し遂げた八人の乗組員の大冒険と、切なくて深いラブストーリーに拍手。涙なくして読めない感動の一冊だった。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

原田マハ
トラックバック(2)  コメント(4) 

    2009

11.02

「オイアウエ漂流記」荻原浩

オイアウエ漂流記オイアウエ漂流記
(2009/08/22)
荻原 浩

商品詳細を見る

おんぼろプロペラ機がトンガ沖の海に墜落。乗り合わせていたのは日本人会社員ら八人と外国人一人、そして犬一匹。リゾート開発会社勤務で上司にコキ使われる二十八歳の塚本賢司。うるさ型であだ名は「パワ原」という河原部長。その部長の最大の標的になっている温厚な安田課長。氷の女王と畏怖をこめて呼ばれる菅原主任。ただの馬鹿でしかないスポンサー企業御曹司の野々村副社長。そして結婚を後悔している早織と頼りなさそうな薮内というお見合いパーティーで出会った新婚カップル。小学四年生の仁太と夢の中にいるじっちゃん。ジョー・サイモンという謎の外国人。機長が連れていたセントバーナード犬。彼らが流れ着いたのは小さな無人島だった。

火も水もなく食べ物にも困るポリネシアの無人島でサバイバルが始まった。塚本賢司はひとり忙しく走りまわされ、菅原主任は現実主義者となって裁定し、安田課長は何をやってんだか右往左往し、河原部長は下の者には威張って怒鳴りながら御曹司にお追従。その御曹司はというと能天気な大馬鹿野郎。新婚の早織は夫を含めた男の品定めばかりして、夫の薮内はすべてがとろくさく、仁太は冒険に胸をわくわくさせて、じっちゃんは寝てるか突然元気になるかで、サイモンは外人らしい陽気なトラブルメーカーぶりを発揮する。しばらくはすぐに救助がやってくるという希望を捨てきれず、これまでの人間関係が維持される。

ところが、いくら待っても船影も飛行機の姿も全く見えない。救助が期待できないとなると、十人の関係性は徐々に変化し、これまで貯めていた黒い本音も、秘密にしていた過去も晒し、一触即発の仲たがいを何度もした結果、無人島で生きていくための知恵を絞るようになる。塚本はわずか三ヶ月だがボーイスカウトの経験者で、菅原主任はフリークライミングの経験をいかし、薮内は陸での行動はダメでも魚や海に詳しく、早織の持つバックは四次元ポケットで、じっちゃんは南国で戦争をしたサバイバル経験者で、仁太は子どもなりに頑張る。みんな必死になる。行動しなければ死ぬ。まだ死ねない。さらに口うるさいだけだった河原部長までもが山生まれであったことが役に立ち……。

長かったけれど、面白かった。回収し切れていないエピソードがあったことや、あっさりしすぎたエンディングを迎えるところは少し寂しかったけれど、墜落場面からサバイバル生活のすべてにユーモアがあって、初期の荻原作品を思い出した。いつの頃からか読まないようになった荻原さんだが、こういう作風ならまた読んでみたい。早織だけはホラーの人だけど、基本みんないい人ばかりだ。楽しく、気持ちよく、ほのぼのと読めるサバイバル。そういう一冊だった。


荻原浩さんのサイン。

荻原1

他のサイン本はこちらをクリック。→「サイン本」

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

その他の作家
トラックバック(6)  コメント(4) 

 |TOP
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。