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    2010

02.27

「製鉄天使」桜庭一樹

製鉄天使製鉄天使
(2009/10/29)
桜庭 一樹

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辺境の地、東海道を西へ西へ、山を分け入った先の寂しい土地、鳥取県赤珠村。この春から中学生になる赤緑豆小豆は、問題の多いことでつとに知られる少女だった。遅かれ早かれエドワード族には目をつけられ、闘う運命にあったのだろう。鳥取は、エドワード族の天下だった。エドワード族が一斉に飛びかかってきた。一年坊主の小豆は、エドワード族の顔や背中や腹に、彫刻刀を自在に操ってはおかしな漢字を掘りこんでいく。その姿はまさに、十二歳の女の子にして、鬼神。だが残念ながら、どれだけ倒しても減るどころかかえって増える一方だった。小豆はその戦いをきっかけにイチにーさんの鉄の武器の店を知った。鉄を支配し自在に操る。思えば物心ついてから、鉄と小豆はずっと内密の蜜月を過ごしてきた。

初めは、小豆一人で、無免許のバイクを乗り回していたのだが、そのうち仲間が増えた。その真っ赤なバイクの後に乗ってる中学で最初にできたシャンな友達スミレが叫ぶ。今日が楽しかったら明日死んだってかまやしないの。花火とハイウェイダンサーの二人と知り合ったのも、このころのことだ。丙午に生まれる女は気性が荒く天地を揺るがす、とされた。六十六年生まれの小豆達はまさに丙午の女どもだった。激情に任せて国道を走り、同じぐらい走るのが好きな仲間と知り合っては、一緒に風になる。しかし、目立つ存在になるにつれ、容赦なく状況は変わっていく。小豆はやがてレディース〈製鉄天使〉の初代総長として、中国地方全土の制圧に乗り出すのだった。

わずか四人から走り出した製鉄天使。特攻隊長の花火は、敵のチームとぶつかると、アスファルトに炎の線をつくって飛び込んでいく。一方、ハイウェイダンサーは盛り上げ役の親衛隊長だった。こいつにとっては、バイクは乗り物というよりむしろ踊りのパートナーだった。路肩の肥溜めをみつけて飛び込んでは路上にもどり、仲間を鼓舞する即興詩を書いた。二人の後から悠々と走ってくる、真っ赤なバイクとポニテが目印の女の子こそが、赤緑豆小豆。鉄の武器をじゃらじゃらひきずり、自在に動かしては敵をボコボコにしていく。その小豆の後で、頭脳派のマスコットのスミレがきゃらきゃら笑う。

鳥取の宿敵エドワード族を壊滅させた丙午の天使どもは、島根の虚無僧乙女連、岡山の薔薇薔薇子供に続き、広島の裸婦を配下に下す。このころ、製鉄天使は無敵だった。しかし、残す中国地方最大の勢力、下関トレンディクラブとの決戦を前に控え、子供の世界にいた小豆を一瞬にして大人へと変えてしまう事件が起きてしまう。そして冒頭で明かされている、一夜にして製鉄天使の突然の消失とは…。そこは自分で読んで確かめてください。本書を検索した方は、「赤朽葉家の伝説」のスピンオフという言葉を目にしたでしょう。確かにそうかもしれないが、これは別ものとして順番とか関係なく読めると思います。ぱらりらぱらりら。少女達の疾走する風を感じる一冊でした。

またまたまた、サイン会に参加してきました。これで三度目です。ファンはファンだけど、毎回違うシールを集めてるとか、桜庭さんにめっちゃ会いたくてとか、熱心なファンにしたらゴメンなさい。ただ、サイン会の日程と自分のオフが合ったので参加しました。つうか、本当のファンなら、こんなに出版から遅れて読むことないって。だけど、実際に本人を前にすると、緊張するな~! しかしその緊張はぶっ飛んだ。なぜなら、知っている人は知っている。著者が真っ赤な例の特高服で登場したからだ。その詳細はむふふ、サイン会に参加した人だけの特権かな~、と。内緒(笑)


桜庭一樹さんのサイン。

桜庭3

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桜庭一樹
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    2010

02.23

「美しき天然 嘉仁皇太子の修学旅行」田中聡

美しき天然美しき天然
(2009/12/04)
田中 聡

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大正天皇は皇太子時代に日本国内をくまなく旅した。旅先では、厳しいスケジュールにも関わらず、一人で散歩にでたり、人々に話しかけたり、思いがけない言動で人々を驚かせた。その史実を下敷きとして、皇太子のお伴をしていた有栖川宮威仁、新聞記者だった「電通」の創設者のひとり権藤震二、同じく新聞記者の山路愛山、ときの政治家・山県有朋、小説家・江見水蔭、人類学者・坪井正五郎、そして日本の山を守っているという謎の民スクナ衆…その巫女であるサワ、スクナ衆から離れて今は都会に住んでいる笙吉など、さまざまな登場人物の暗躍を描く。皇太子といっしょに鉄道に乗って、高崎、軽井沢、長野、新潟、長岡、柏崎、高田、桐生、水戸など、近代化に沸き揺れていた、明治の日本を巡る歴史伝奇小説。

スクナ衆とは、少彦名命に由来する氏族で、藩政の境界をこえて歩いて山々や川筋の全体を見渡し、天地の動向をとらえてきた者たちだ。山河が安らいでさえいれば、誰が国を治めようともかまわない。山に暮らして山河を守ることがスクナたる所以である。山県有朋はスクナについて知っており、今度の皇太子の巡啓中にスクナが皇太子に接触するといって警戒していた。そこで山県が寄こしたスクナの事情通というのが沼部笙吉だった。笙吉はスクナとはすっかり縁を切ったつもりでいた。ところが、皇太子の巡啓についてスクナの姿を追ううちに心が揺れてくる。サワに会いたい。恋しいサワに。

日本は殖産興業と富国強兵を推し進めるべく国民を励ましていた。ところが、山林の乱伐や河川の分水工事、石油の採掘と、新しい文明がかつてあった自然を破壊していた。銅山事業では鉱毒問題が起きていた。皇太子は旅先で荒れた禿山の風景を眺める。ふと皇太子の眼に、木々に深く包まれた山の姿が見えた。ふいに「山へお帰り」という声が脳裏に奔る。それはスクナによる術なのか。スクナは皇室の権威を使って日本を破壊から守ろうと術を使って暗躍する。笙吉は自分の無力さを実感する。実際にスクナの術を止められる自信などない。それでもここにいた。

笙吉は何のために旅を続けるのだろう。皇太子の心に何が去来するのだろう。スクナ衆のいうシラベとは何か。そして近代国家への道を突き進む日本という国の行く末とは。山とは文明にとって妨げなのか。山にはいくつもトンネルが開かれる。石油で走る車が広がればトンネルもより多く必要になる。石油はその工事のための機械をも進歩させる。河川工事などもそれで確実にできる。民の命を守り、交通を盛んにし、産業を発展させる。そうして国はいっそう栄える。

読者は、大阪と奈良を往来するとき自動車で生駒山を越えている。そこでいつも見る風景は、広がっていく茶色い山肌。見るたびに茶色の面積が増え、なんだか悲しい気持ちになる。そこは確実に緑が減っているのだ。これは生駒山の一部分であるが、そういう場所が全国にあると思うと恐ろしく思う。だけど、そこで働いて、利益をあげて、家族を食べさせている人がいて、ぐるぐる回ってその恩恵を受ける自分もいて…。実感のない自分も、茶色い山肌を作っている原因の一人だと気づかせてくれる一冊だった。

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    2010

02.20

「心霊特捜」今野敏

心霊特捜心霊特捜
(2008/08/19)
今野 敏

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神奈川県警刑事部の総務課に所属する岩切大悟は、捜査課とR特捜班の連絡係を仰せつかっていた。R特捜班のRが何の略であるか知っている者は少ない。実は、「霊」のRなのだ。R特捜班の別名は心霊特捜班。心霊現象が絡む事件を担当する特捜班だ。いつ誰が作った組織なのか、誰も教えてくれない。ただ、はっきり言えるのは、R特捜班のメンバーはたしかにクセのある連中だが、単なる落ちこぼれではないということだった。

班長の番匠は、茫洋としていて何を考えているのかさっぱりわからない。主任の数馬は人付き合いがへたくそだし、パンクロッカーのような格好の鹿毛は皮肉家だ。紅一点の里美は、桁外れにマイペースだ。だが、数馬、鹿毛、里美の三人には本当に霊感があるらしい。数馬は、古い神道の伝承者の家柄で、神社神道には失伝してしまった秘法がたくさんあるのだという。鹿毛の実家は、密教系の寺だ。鹿毛自身も密教の修行を積んだらしい。里美は、ノロの家系だ。ノロというのは、沖縄の神事に関わる女性霊能者だ。

班長の番匠自身には霊能力はないが、彼らはその霊感によってこれまで幾多のトラブルを解決している。もちろん、心霊がらみのトラブルは、ほとんど事件にならない。検察が認めないし、第一、裁判にできないケースがほとんどだ。幽霊を訴えることはできない。だから、公式にはR特捜班の働きが評価されることはない。大悟は霊だのお化けだのというのが大の苦手だ。それが、R特捜班専属の連絡係をやっているのだ。悪い冗談としか言いようがなかった。

乗ってはいけない呪いのエレベーターで、一人の中年男が死んだ。巡査は行ったこともない場所の夢を何度も見てしまう。殺人事件の参考人は狐憑きで、しかも祈祷師とともに土蔵にこもっていたというアリバイがあった。人気ミュージカルのヒロイン予定者が事故死、そしてヒロインに抜擢された人が公演中に事故で怪我をした。魔方陣を使って悪魔を呼び出した女子高生たちが、相次いで病院に入院することになった。新興住宅地のあるT字路で頻繁に事故が起きていた。

今野作品初心者である自分が云うのもなんだが、めっちゃ軽すぎないか。心霊現象が絡む事件を担当するR特捜班も、その方針によって捜査を進展させる捜査課も薄っぺらい。それらが相まって出る結果もまた薄い。だから、本を閉じても読んだぞ!という充足感を得られなかった。まだまだ今野作品は読めていないが、警察ものなら今野作品という評価が定着しつつある。そんな中、この作品をどういう位置づけにすればいいのなのかその判断が難しい。気張らずに軽く読める。確信を持って言えるのは、それだけであった。

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今野敏
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    2010

02.18

「たましくる イタコ千歳のあやかし事件帖」堀川アサコ

たましくる イタコ千歳のあやかし事件帖たましくる イタコ千歳のあやかし事件帖
(2009/10/23)
堀川 アサコ

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昭和六年。島田幸代は、幼い姪の手を握って汽車に乗った。旅の目的地は、弘前だった。幸代の姉である雪子が死んだのは、先月のことだった。雪子は一緒に暮らしていた男を刺し殺し、遺書めいた文句を書き殴ってから、自分も首を吊った。雪子には心中の前科があった。その一度目の顛末はお笑い芝居さながらとなった。男は、死なない代わりに精神を病んだ。そのまま遠い故郷に連れ戻され、雪子は一人東京に残されて女の赤ん坊を産んだ。生き延びた子供は、今度はたった六歳でこの世に置き去りにされた。その娘の安子の父親が弘前に住んでいた。その大柳家の祖母は世間体ばかりが理由で孫の安子を引き取ることを決めた。

その大柳家の末っ子の千歳は巫女(イタコ)であった。イタコなら姉の声を聞かせることは出来ないかしら。姉が無理心中したなんて、やっぱり納得できない。幸代は千歳に問いかけた。姉さんは今、あんたに憑いている。そう云ったら、怖い? 私は本家から離れた田舎の家で、一人で暮らしている。だけど、盲目なので人を探していた。何するにしても不自由だから、手伝いしてくれると助かる。そうすれば、幼い安子も本家に預けないで、この家であんたが育てればいい。我が身のことさえ決められないでいた幸代は、姉の事件の解決をきっかけに、弘前の千歳が住む家に暮らすことにした。

産後の経過が悪く寝たきりの嫁が、花街に住む堕胎専門の産婆を殺したと云い、その一方で故郷に錦を飾った音楽家が自殺未遂した騒動。自分が誰だか判らない、幽霊かも知れないと云う名無しの男が現れ、たびたび火事が続いて呪われているなんて曰く付きの土地の真相。十年前に何の前触れもなく蒸発した幸代とそっくりだった蝶子という女の子と、同じ頃に剣術道場で道場主が刺殺された事件の顛末。イタコを生業とするにも関わらず超常現象をごく論理的に解明する千歳と、幽霊の類が大嫌いなのに霊の声を聞いてしまう家事手伝いの幸代。一風変わった美女探偵コンビは、次々と起こる猟奇事件の謎に挑むことになる。

さすがにファンタジーノベル賞の出身だけあって、現実と非現実のバランスが絶妙な具合で融合されている。さらに読者の想像する内容を見事に裏切って、イタコの千歳は自らの能力を封印し、幸代が幽霊を見てしまうという意表を突く設定も面白い。かつては娼婦だった幸代は終始内心では毒づいており、盲目というハンデを抱える千歳は根っから明るい。名家の世間体に縛られている大柳家の婆様にしても、読み進めるにつれ滑稽な存在になっていく。人が良いだけの大柳家分家の高雄もいい味出している。そして精神を病んで座敷牢に閉じ込められていた本家の新志も加わり、物語は続きを匂わせたところで終焉を迎える。これは続編があると見た。ですよね、堀川アサコさん。次回作にも期待しちゃいます。

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    2010

02.16

「ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント」朱川湊人

ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾントウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント
(2009/12/17)
朱川 湊人

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その青銅の肌を持つ巨大生物の姿を目にした時、誰もが嘆いた。怪獣。間近に迫り来る破滅の運命を実感した。防衛組織GUYSが総力を挙げて怪獣撃退に当たったが、実践経験のない軍隊と暴力的な来訪者との戦力差は圧倒的で、数分のうちに壊滅へと追いやられた。人々は絶望した。その時。夕映えに染まる都市上空に、不可思議な光の帯が出現した。まばゆい光が消えると、そこにあったのは身長五十メートル前後の巨人の姿であった。「ウルトラマン」その姿を見た人々は、我を忘れて叫んだ。

後付を見ると、著者はテレビドラマの脚本の三話を担当しており、その担当した脚本をもとに、新たに書き起こされた外伝らしいことを知る。ぶっちゃけ、テレビでここ何十年とウルトラマンを見たことがない。子どもの頃に見た記憶をたどれば、セブン、帰ってきたウルトラマン、エース、タロウ、までだ。著者のファンという理由だけで、本書の元になったウルトラマンメビウスを知らないまま読んだことになる。これが以外とおもしろかった。人間ドラマとしてよくできた作品なのだ。

GUYSは二十五年前に当時の防衛隊が解散した後、新たに作られた防衛組織である。各国に支部があり、その中でも行動舞台に属するメンバーを、CREW GUYSと呼称しているのだ。ハルザキカナタはCREW GUYSでの研修の後、研修隊員としてCREW GUYS JAPANの一員になった。隊長はサコミズ。他に、アイハラリュウ隊員、カザママリナ隊員、イカルガジョージ隊員、クゼテッペイ隊員、アマガイコノミ隊員、そして、ヒビノミライ隊員がいる。カナタは彼らを見て、自分だけがエリートで、他のメンバーはただの寄せ集めだと馬鹿にしているところがある。

それと、かつてカナタの父の乗る宇宙船は、謎の飛行物体の攻撃を受けて消息不明になっている。それ故に、カナタはウルトラマンと言えども、単純に信じることができない。何の損得勘定もなしに他人に施せる者など、この世にいない。ましてや、それが異星人であるなら、絶対に油断してはいけないと思っている。だが早々に、ウルトラマンの正体がヒビノ隊員であることを知ることになる。しかもGUYSのメンバーはその秘密を共有していたのだ。

はっきり言って読み始めのカナタはいけ好かない奴だ。それでも、隊員たちと一緒に行動するうちに、このクルーは集まるべくして集められたスタッフなのではないかと気づいていくのだ。またヒビノと接していく上で、異性人であるウルトラマンへの心境の変化が読ませどころだ。ヒーローものって、善対悪と括ってしまうところがある。これはそういう単純な公式では計りきれない深みがある。新しいウルトラマンの誕生。そう言い切っても過言ではないだろう。ウルトラマンを離れた大人でも面白かったです。そして、泣ける。

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朱川湊人
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    2010

02.11

「やさぐれるには、まだ早い!」豊島ミホ

やさぐれるには、まだ早い! (ダ・ヴィンチブックス)やさぐれるには、まだ早い! (ダ・ヴィンチブックス)
(2009/12/02)
豊島ミホ

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大学入学を機に秋田から上京して、20歳で作家になった豊島ミホの東京っぽくない東京暮らし。初めて彼氏の居るクリスマス、AV鑑賞入門、ひとり花火大会、同棲問題……。“底辺女子高生”だった彼女は、ここで何を見つけたのか。それとも、何も見つからなかったのか。《出版社より》

エッセイといえば、自虐ネタの連発で衝撃的だった「底辺女子高生」を思い出す。だが、本書では、思ったほど攻撃的ではなかった。どちらかというと、著者のブログに近い。初めての東京ひとり暮らしからはじまる日常。基本インドア派ゆえのひとり遊び。お約束の赤裸々な告白。彼氏のこと。大人しくなったとはいえ、作家のエッセイとしては、これらだけで十分おもしろい。

まず笑ったのは、理想の彼氏の条件を書き出してみるという、根暗っぽいひとり遊び。最高!となる男の子の条件を、ひたすら挙げ連ねていく。こんな遊び、ふつうはしないって。またAV鑑賞デビューしたときの所感。おいおい、そこまで書くのかよ、と思わずツッコミをいれた。そして気に食わない作家の名前をググる黒い豊島ミホ。これには噴き出してしまった。やはり豊島ミホのエッセイはそこらのものと一味違う。

そして、まったく自分と同じところを発見。なにかを好きと言うことが好きじゃなかった。小さい時から、嫌いなことは嫌だと言える子どもだったけれど、その逆、気に入ったものを好きだとあらわすことが苦手だった。好きと発言すること、これらに対して本能的に抵抗してしまう。小さな変化が積み重なり、著者は小説を執筆するようになり、自分はブログを書くようになった。でも基本は変わっていない。好きなものを隠してしまうクセは。

そうした日常の中で、さまざまな事に気づいていく。そして環境も変われば、歳を重ねることで自分自身の中にも変化が訪れる。終盤には彼氏とも別れ、実家の田舎へと帰っていく描写がある。人って変わる。また変われる。ご存知のとおり、休筆宣言した著者だけど、またひとつ変化して、いつかみんなの前に帰ってくるのでしょう。だって、彼女は物書きに向いている人だから。読者の心を揺さぶる力を持った人だから。

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    2010

02.09

「太古の血脈」藤木稟

太古の血脈太古の血脈
(2009/10/17)
藤木 稟

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祖父の名は、酒井勝軍。歴史を齧った人間であれば、その名を目にしたことがあるはずだ。酒井勝軍は、明治から大正、昭和にかけて常に日本軍の要職にあり、当時流行した日本人とユダヤ人が同祖であるとする説を唱えた先駆け的存在である。さらに世界を駆けめぐって、ピラミッド日本起源説等を提唱したという、異端の歴史研究家であった。酒井勝一が歴史を志したのは、大いに祖父の影響によるものだ。しかし、祖父が亡くなり、長ずるにつれ、勝一は祖父の異説に否定的な意見を持つようになった。

勝一は、大学の講師を辞め、大阪で進学塾の講師をして二十五年が経つ。祖父の残した手帳に、丹後の伊根に百五十五年に一度だけ海上に現れる島があるとの記述を見つけた勝一は、妻との結婚記念日に旅行を計画していた。だが、その直前に妻が殺されてしまう。戸惑う勝一の前に、自分はサンカ(幻の漂白民)だという男、当麻カヤキが現れる。祖父から託された手帳には、当麻を名乗る者が現れたらその言葉に従うことが明言されていた。勝一は当麻に導かれて、妻と行くはずだった浦島伝説発祥の地に向かう。

この著者のことはまったく知らなかった。大好きな高橋克彦氏による帯の推薦文を見て、高橋氏の「竜の柩」の系譜かな、と手にすることにした。日ユ同祖説、歴史ある寺社仏閣、浦島伝説、秦氏、弥勒信仰、ヒヒイロカネという金属、フリーメーソン、三種の神器、聖徳太子、弘法大師空海、天皇家、キリストの墓、日本ピラミッド。これらのキーワードは、酒井勝軍や竹内文書を齧ったことがある人ならピンとくるだろう。そして彼らを追う狂信的な帝国陸軍に、待ち受ける様々な仕掛けの数々。解釈がつけられていく裏歴史の謎。

こういう伝奇小説は好きだ。でも高橋作品なら必ず場の雰囲気を変えるユーモア系の人物がいる。そういう人物がいない分、全体的に硬い。敵方の組織にしても作りすぎが胡散臭い。だが、それでも知的好奇心をくすぐる内容だった。ただ惜しいのは、独自の解釈に押しが足りないところだ。例え、その説が無茶苦茶であっても、自分の説はこうだ、と言い切って欲しかった。そうすることによって、その可能性は…、と読者の妄想力が働くからだ。「竜の柩」には、ひょっとすると思わせる力があった。冒険にもワクワクした。それと比べると、本書はカタルシスを得るまでには至らなかった。しかし嫌いではない。惜しいの一言だ。

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    2010

02.06

「パパはロクデナシ」上村佑

パパはロクデナシパパはロクデナシ
(2009/12/10)
上村 佑

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ふすまの向こうには、僕の部屋がある。お気に入りのベッド、オーディオ、テレビ、ゲーム機、パソコン、コミック、カード。小さいながら、僕の王国がある。いや、あった。そうだ、僕は王国を追われた。僕を王国から追い出した張本人は、イビキまでとてつもなく迷惑で、このまま呼吸が止まってしまえと本気で念じたが、通じなかったらしい。なにしろコイツは犯罪者なのだ。しかも凶悪部類の人殺しだ。そしていまだに信じ難いけれど、僕の父親なのだ。ずっと今まで死んだと思っていた。十二年ぶりに帰ってきたコイツの第一声は、「ヒトゴロシで刑務所に入っていた」だった。

本物のヒトゴロシのロクデナシで、極めつけのヒトデナシでカイショナシだ。そう思ったが、不思議と嫌悪感が湧いてこなかった。ホントに訳の分からない人だ。なんで母親がこのろくでも無い人と別れずにいるのか、さっぱり理解ができない。引きこもりの僕を見たアイツは、修行場に行くぞと、男の修行に引きずり回す。今日は競馬で、僕の十二年分の貯金を一秒で無にした。風俗デビューもした。ネトゲに夢中になって、人助けのためにオフ会に参加した。草野球の試合中にアーチェリーで狙われた。父と息子の笑ってホロッとする痛快ドタバタ劇。

少年マンガにありそうな設定をぎゅっと詰め込んだような作品だ。ケンカが強く、ギャンブル好きで、女が好きで、やってることは無茶苦茶だけど、何故か人に好かれる。こち亀の両さんに似てる? 何も考えずに、ぱ~っと本を読みたい人にはもってこいかも。キャラ読みできて、展開もスピーディーで、もちろん読みやすい。ただ、さらっと読めてしまう分、あとに何も残らないかもしれない。そういう本があってもいいと思う。楽しく読めて、おもしろかったと本を閉じる。エンタメの基本はこれでしょう。続編が出るようなら、ぜひ読みたい。その時に内容を覚えているかは不安だけど。

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    2010

02.04

「お稲荷さんが通る」叶泉

お稲荷さんが通るお稲荷さんが通る
(2009/11)
叶 泉

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「名前は?」「リリカ!」なんて、答えてはみたけど大嘘。あたしの名前は桐之宮稲荷だ。稲荷山の高層スラムに住み、アゴに貼った絆創膏の下には、「ウガ」という役立たずの自称神さまも住まわせている。あたしはそんな生き方をしている可愛い十八歳の女の子!…でも娼婦なの。ここはかつて、経済大国なんて呼ばれていた日本の古都があった場所、中華人民共和国、日本省特別行政自治区。あたしたち日本族は最下層の民族と成り果て、過去の栄光が埋もれた世界で、なんとか生きぬいていかなければならない。衝撃の未来を舞台に、健気に生きる娼婦の姿をユーモラスな一人称で描く鮮烈なデビュー作!第9回ボイルドエッグズ新人賞受賞作。《出版社より》

ふいの事故から、あたしの中に変なものが住み着きだした。自称は宇迦之御霊神(うがのみたまのかみ)。主人公のあたしはウガと呼んでいる。まったく、高貴な血が泣いているわ。しかも、神聖な巫女が処女ではないとは、まったく嘆かわしい。とり憑かれてからウガのこの言葉は何度も聞かされている。あたしの職業が娼婦だからだ。ときおり、お祓いの依頼がくる。昔、日本には「わび・さび」なんてもんがあったらしい。ウガと一緒にお祓いする瞬間は、そんな「いとおしい」って気持ちがあたしにも少しだけわかる気がする。

そんなあたしの前に、八咫烏を宿した漢族の少女が現れた。日本族を毛嫌いする少女の怒りもあって、とつぜん神々のバトルに巻き込まれてしまう。その一方で、好きな人の友達に言い寄られて困り、その友達というのが娼婦仲間の華が想いを寄せる人で、あたしが好きな人は華に対して熱い眼差しで見つめている。嫉妬のせいか、華を邪険にあしらってしまう。そうしたところ、華は悪霊にとり憑かれてしまった。あたしの力では祓えないほどの強いやつ。かつて平安の都を震え上がらせていた最強の御霊、菅原道真だった。

未来の京都。しかも日本は中国の属領で、日本族は大陸から来た漢族によって差別の対象になっている。そして廃神毀釈と呼ばれたものが、神社と日本特有の文化を徹底的に破壊した。だから日本族は神々を信仰していたことを忘れ、そして貧しくて、主人公は食っていくために娼婦をしている。こういうユニークな設定はありだと思う。しかしストーリーが進むにつれ、何かで読んだことがある既視感が続く。そんなありきたりな展開になっていくのはもったいないと思った。

それと作品の構成はあっちに振られ、こっちに振られ、とにかくバランスが悪い。主人公の一日を追ったと言われると確かにそうではあるが、そこはもっとすっきりさせるべきだと思った。好きっぽい感じはある。だけど、独自性があるようで、実際のところはなかった。キャラの特色も、それ以外の要素も、もっと膨らますことができたであろう。一本の筋さえ通してもらえれば、さらなる突飛な発想や展開があっても、読者を世界観に引き付ける力はありそう。次に期待かな。その価値はあると思った。

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    2010

02.01

「シャボン玉同盟」梨屋アリエ

シャボン玉同盟シャボン玉同盟
(2009/11)
梨屋 アリエ

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あぁ、梨屋アリエだ。

「ジグソー・スイッチ」
あたしがそれを見つけたのは、偶然だった。おへそから一本、ひもが垂れていた。ひもは、わずかな抵抗のあと、プチッ、と音を立てて抜けたのだった。あたしのからだは、まるで立体パズルのように、分離してしまった。復元はおもったよりも簡単だった。あたしは理想的な人物になりたくて、いらない部分をどんどんはずして自分を改造していった。すると、いらない部分だけで作られた、もう一人の嫌なあたしが動きだした。

「シャボン玉同盟」
女、女、女。世の中、女のことばっかりだ。ぼくだって興味がないわけじゃないけれど、安直すぎじゃないか。ぼくは大多数の軽薄な連中とは違う。ぼくが求めているのは、もっと尊くて美しくて完璧なものだ。そんな時にぼくは萌え缶を手に入れた。フワフワ浮かんだシャボン玉の中にはハルカがいた。シャボン玉のハルカは、どんなときでもぼくを受け入れてくれた。ぼくにはハルカしかいない。

「世界を征服する前に」
足もとに、なにかがあった。でも、それは目に見えない。なのに明らかに存在する。段の上に重心を移動しようとしたとたん、段は、足の下からするっと逃げた。見えない段は、錯覚だったのだろう。と、都合よく考えることにしたそばから、強い違和感を持つ。クラスの連中が、でこぼこしていた。みんなの足もとが浮いていたり沈んでいたりして、めちゃくちゃになってしまっている。教室のみんなには、この異変が見えていないようだ。

「連れ恋」
ぼくの心の中にタマゴがある。心の中でタマゴの中身が動いていると、ぼくは落ち着いていられなくなる。近頃、タマゴの中身は、新たな動きをするようになってきた。どうやら、そいつは殻の外にでたいようで。親友に見知らぬ女の子からメールが来た。いたずらでなければ、ぼくのところにも送ってくれたってかまわないのに。そのとき、ぼくは動きを感じた。心の中のタマゴの殻に、ピシッと亀裂が走ったのだ。ひよこが孵った。

不可思議な現象のそれら自体を見ると、とても奇妙なものだ。しかし違和感はない。なぜなら思春期の彼らは持て余した感情を心に抱えているからだ。清潔になりたくてやましい気持ちを捨てたい。二次元の女の子に夢中になる。同級生に対して上とか下とかレベルを意識する。ほのかな初恋にドキドキする。そんなもやもやをカタチとして表現したのが本書だ。これを面白いと思ったかたは、「プラネタリウム」「プラネタリウムのあとで」をどうぞ。梨屋アリエの不思議世界が堪能できると思います。

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梨屋アリエ
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