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    2010

05.31

5月に買った書籍

単行本
エデンエデン
(2010/03)
近藤 史恵

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和菓子のアン和菓子のアン
(2010/04/20)
坂木 司

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早雲の軍配者早雲の軍配者
(2010/02)
富樫 倫太郎

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漫画
チーズスイートホーム(7) (KCデラックス)チーズスイートホーム(7) (KCデラックス)
(2010/04/23)
こなみ かなた

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    2010

05.29

「アネモネ探偵団  香港式ミルクティーの謎」近藤史恵

アネモネ探偵団 香港式ミルクティーの謎アネモネ探偵団 香港式ミルクティーの謎
(2010/03/17)
近藤史恵

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その学校の中には巨大な塀があった。百年以上続いた実生学園の歴史のなかで、この塀が作られたのはたった十年前。だが、コンクリートの壁は、確実に空間を分断する。東館は、男子校の私立実生中学校として。西館は、中高一貫のお嬢様学校・実生女学院として。

実生女学院に通う小沼智秋・細川巴・西野あけびの仲良しの三人。有名女優の母をもつ智秋。父が警視総監の巴。あけびの父は有名な賞をとった学者。ある日、智秋たちは、カツアゲをされている少年たちを助ける。少年らは隣の実生中学に通う中原光紀と桑原時生だった。

ある日、智秋をねらった謎の女による誘拐未遂事件が起きる。仕事から疲れて帰ってくるママにそのことを言えないまま、智秋はママの香港ロケに同行する。仲良しの巴とあけびを誘って。その一方で、光紀たちは、智秋の誘拐を企てているような会話を偶然聞いてしまった。

光紀の叔父はフリーのカメラマンで、女優・小沼ヨウコの香港撮影旅行に同行することになった。貯金のない光紀の思いは、航空券さえあれば。偶然再会したあけびから、商店街の福引券をもらった光紀らは、抽選の一等商品、香港往復ペアチケットを手に入れるのだった。

以前、光紀たちを助けてくれたのだから、今度はこちらから助けるのだ。重要な使命はたったひとつ。智秋が誘拐されるのを阻止することだ。もちろん自分たちの手で、智秋を守ることができればいちばんいい。だが、それにこだわって智秋を危険な目にあわせるわけにはいかない。光紀は自分に気合を入れるため、「よし」と小さくつぶやいた。

大人気ミステリ作家・近藤史恵が手がける、初の児童書! というような宣伝文句があるが、これは児童書というよりもミステリYAですな。児童書にありがちな教訓めいたものはなく、気楽に読めて楽しければそれでいいじゃん、という漫画に近い内容の作品だった。青山先生の「コナンくん」とかが好きで、絵がない本も好き!という方々に、おすすめです。

ただ近藤史恵ファンにとって、このピンクのかわいすぎる表紙は、手出しに躊躇するかも。

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近藤史恵
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    2010

05.25

「天国旅行」三浦しをん

天国旅行天国旅行
(2010/03)
三浦 しをん

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不謹慎だと思うが、時々、このまま楽に死ねたらいいのに、と思うことがある。それは、仕事の失敗であったり、プライベートなへこみであったり。でも結局それらは責任逃れの感情であり、現実逃避だったりする。実際に死ぬ勇気がないから、短絡的にふと思うだけだ。それは「死にたい」ではなく、「楽に死ねたら」と思っている時点で、本当に死ぬ気はないのだ。楽になりたい、逃げたい、これが正解なのかもしれない。

さて、それでは一緒に死のうとする心中はというと、これにはまったく縁がない。三浦しをんは何故、こんなにも共感しにくい心中というテーマを小説にしたのか。それは彼女の視線が、少女漫画や古典芸能に向いている故かもしれない。だが、これが中々読み応えある作品集なのだ。わかりやすい心中があれば、どこが心中?と首を傾げたくなる物語もある。でも心中なのだ。死が、人と人とを繋ぐからだ。

富山明男は、富士の樹海で首吊り自殺を試みるが失敗。気がつけば、青木を名乗る男に介抱されていた。男は笑っているようだ。この男は、樹海でなにをしているんだろう。怪訝に思いながらも、「コンパスだけで樹海を突っ切る」という男と共に歩くことにした明男は・・・。(「森の奥」)

「やっぱりあのとき死んでおけばよかったんですよ」きみの言うとおり、死んでおけば簡単だった。小言を浴びせることも浴びせられることもなく、今月の生活費に頭を悩ませることもなく、うつくしい思いだけを抱えていられただろう。しかし残念ながらわれわれは生きている。(「遺言」)

その男は、ウメおばあさんの初盆にやってきた。いままで存在すら知らなかった私のいとこだった。ウメおばあさんは辰造おじいさんと結婚するまえ、べつの男性と結婚していた。それが彼の祖父である石塚修一さんだった。石塚は、なんとも不思議な話を語りだす。ウメおばあさんの秘めた過去とは。(「初盆の客」)

子どものころから不思議な夢を見る。「夢」という言葉を使っているが、本当のところ、それは理紗にとって「もうひとつの生」だ。眠りにつけば、小平との生活がはじまる。小平は理紗をお吉と呼ぶ。江戸で小平と暮らすお吉は、自分の前世の姿ではないか。理紗は、小平と今生でまた会いたいと願っていた。(「君は夜」)

立木先輩をいつも見ていた。思いは私だけのもの。私の心のなかでだけ息づくもの。楢崎初音は化粧おばけの頭目のくせに、悔しいことに薄化粧だ。そんな初音が立木先輩とつきあっていることは、緑高生のほぼ全員が知っていたはずだ。立木先輩は夏休み最後の日に焼身自殺した。なぜ死んだ?「炎」

僕は香那が死んでしまったことにしばらく気づかなかった。どうやら香那は死んだらしく、しかもいま僕の隣にありありと存在する。香那は昼も夜も僕と一緒にいる。僕がご飯を食べ、勉強し、友人と話すのを、そばで見聞きしている。僕は幼いころから霊が見える体質だった。(「星くずドライブ」)

日高悦也は、一家心中の生き残りだ。悦也自身はよく覚えていない。どうやって自分だけ生きのびたのか、なぜ両親が我が子もろとも死ぬことを選んだのか、心中に及ぶまえ、家族でどんな暮らしを営んでいたのか。けれどもたまに、いつ見たのかも、本当に見たのかも定かでない情景が浮かびあがる。(「SINK」)

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三浦しをん
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    2010

05.19

「ダウンタウン」小路幸也

DOWN TOWN/ダウン タウンDOWN TOWN/ダウン タウン
(2010/02/19)
小路 幸也

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カウンターの端に座って、中にいるカオリさんにモカを注文したい。ユーミさんに特製ハムトーストを作ってほしい。隣に座ったりょうさんにからかわれたい、後の席のシオネさんと口げんかしたい、向こうで大笑いするアイコさんに、「よっ」と言いながら入ってくるカンさんに、苦笑いするケンゾーさんに、スケッチしているミーさんに、本を読んでいるくるみさんに、煙草を吹かすリサさんに、恥ずかしそうに微笑むモンちゃんに、静かに頷くバンビさんに。

〈ぶろっく〉の仲間と、ずっとこのまま楽しく過ごしていきたい。東京の大学に行くことを考え始めたときからずっとその思いは消えなかった。消えないけど、それを振り払って、行くことを決めた。行かなきゃダメだって、皆に教えられた。考生にも――。中学の二年先輩。生徒会長だったユーミさんと再会したのは、高校一年から二年生になる春休みの終わり頃。わたしね、今、ここで働いているんだ。いいお店だから、今度コーヒー飲みにおいでよ。そうして訪れたのが、男子禁制の噂がある、喫茶(ぶろっく)だった。

できれば、毎日でも〈ぶろっく〉に通いたかった。どうしてそんなに通いたいのか、自分でもよくわからなかった。別にあそこにいる誰かを好きになったわけじゃない。確かにお世辞抜きできれいな人が多いけど、でも、そんなのじゃなかった。どうして通うのかと言われれば、居心地がいいから、としか答えようがなかった。僕の居場所は、自分の家と学校だけだ。その二つより、〈ぶろっく〉は遥かに居心地が良かった。あのカウンターに座っていると、楽に呼吸ができるような気がしていたんだ。

同じ軽音楽部で、組んで始めた孝生。中学校でも同じクラスで、いつの間にかつきあっていたやよい。孝生の彼女で、活発という言葉がとても似合う奈々美ちゃん。四人で過ごすときは、いつも楽しかった。この時間も大切だなって思っていた。どっちも大切なんだ。でも、何かのときにどっちかを優先しなきゃならないときは、僕は〈ぶろっく〉を優先していた。〈ぶろっく〉にいれば誰かに合わせる必要はない。ただ、僕自身としてそこにいればいいだけだから。

本当に気が合う仲間が過ごす〈ぶろっく〉という喫茶。大人の女性たちの集団になれば、おいそれと他人には話せない事情をお互いに知るようになる。〈ぶろっく〉の仲間は、そういうものを共有しているのだった。もっと知りたい。常連として認めてくれて仲間に入れてはいるけど、奥のほうまでは踏み込ませないほうがいいと思っている。そして少しずつ明らかにされていく様々な大人の事情に読ませどころがある。

そうして、そんな大げさなものじゃないんだけど、孝生と組むようになって、〈ぶろっく〉に通いだして、いろんなことを経験して、誰かのことを思うときの気持ちに幅がでるように感じていく。それは、単純に少し大人になった、なんてつまらない表現ではない。それまで会うこともなかったたくさんの人に会うようになって、その人たちの考えや生き方を感じるようになって、だから、自分で考えるときにもいろんなことを思えるようになるのだ。これは素晴らしい一冊だと思う。もちろん、おすすめです。

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小路幸也
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    2010

05.16

「さよならのためだけに」我孫子武丸

さよならのためだけにさよならのためだけに
(2010/03/18)
我孫子武丸

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ハネムーンから戻ってきた新居。二人ともしばらく口を利かなかった。水元くんと月(ルナ)は生まれ持った性格、生育環境などから最高の相性である特Aと判断されたのだから、何の問題もなく幸せな夫婦になれるに決まっていた。でも、なれなかった。何から何まで趣味は合わないし、この人と話していると、何だか苛々してくる。二人はお互いに全く愛情がないことを確認し、離婚を決断する。だが水元くんはPM社員だった。

PM社は、結婚仲介ビジネスの国内シェアを完全に独占しただけでなく、海外でも多くの支社を設立、順調に業績を伸ばし続けることとなった。もはやこれは単なる結婚仲介ビジネスではなく、「家族設計」であり、ひいては少子高齢化、晩婚化といった問題を抱える国の「国家設計」とも言える重要プロジェクトとなっていた。

DNAレベルでベストマッチングと判定された。特A判定の夫婦が百パーセント結婚して、離婚率はゼロ。PMのマッチングのおかげで、日本はここまで立ち直った。でも何かがおかしい。そうしたところ、PM社は、二人の家族や友人をダシに色んな手を使い、離婚を止める妨害工作を仕掛けてきた。夫婦は名実共に赤の他人になるために共闘する。

我孫子武丸らしからぬ内容だが、これが面白い。二人の視点が交互に語られる構成となって、お互いの言い分が披露される。この身勝手な罵倒合戦を繰り広げる新婚夫婦が、「別れる」ために共闘する。そこに都合よくお互いに惹かれあう人物が現れる。水元くんにはルナの同僚の深尋が、ルナには水元くんの先輩乾さんが。お互いに愛情のないパートナーにも関わらず、相手の仲睦まじげな姿を見て湧き上がってくるのは、嫉妬。

そうした複雑な心情を抱えつつ、二人はPM社の卑怯なあの手この手の妨害に立ち向かうのだった。ちょっぴりハードボイルド。でも我孫子節の基本はユーモア。それらが絶妙に絡み合って、読者は壮大な仮想近代国家像に違和感なく溶け込んでいることだろう。最初は苦手だった気の強いルナにしても、いつの間にか受け入れている自分がいた。最後はやや予想通りの結末だが、それらを含めても、面白かった。グッドな一冊です。

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我孫子武丸
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    2010

05.13

「南の子供が夜いくところ」恒川光太郎

南の子供が夜いくところ南の子供が夜いくところ
(2010/02/27)
恒川 光太郎

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南国の島、トロンバス島を舞台にした連作集。異界は異界でも、すぐ隣にありそうな冷ややかな緊張感はなく、これまでとは違うゆるやかな世界だ。現在、沖縄在住の著者からすれば、こちらがホームであるのかもしれない。でもこれまでのファンからすれば、もっと和のテイストが濃いほうがより好みだ。待ちに待った新刊だったが、これはちょっと…。カムバック!!って感じかな。

「南の子供が夜いくところ」
海沿いのホテルにタカシと家族は四日ほどの予定で宿泊していた。ホテルの近くの駐車場に移動店舗の露店が出ていた。露店の店員は茶色い肌に黄色い髪のおねえさんだった。気がついたとき、タカシは別の場所にいた。両親の頼みで、「今年で120歳」というおねえさん、呪術師ユナに連れられ、南の島にある教授の家に預けられたのだ。

「紫焔樹の島」
一本の樹になる赤い実は食べてよいが、白い果実は食べてはならないといわれていた。その紫焔樹の生えている森の奥の聖域は、不思議なことに足を踏み入れるものを選別するのだ。聖域に入ることができるのは果樹の巫女と呼ばれた女だけだった。幼いユナは巫女に。その後、異国から一人の漂流者を受け入れ、やがて疫病が広がり…。

「十字路のピンクの廟」
トロンバス島を訪れたヴェルレーヌは小さな町ティアムで、妙なものを見つけた。町の十字路に、小さな廟がたっているのである。廟全体がピンク色に塗られ、廟の中を覗いてみると、ご神体が一柱納められていた。ペンキで彩色され、顔が描かれた木彫りの像だ。いったいこれはなんなのだろう? 住民への聞き込みを開始した。

「雲の眠る海」
シシマデウさんは、ペライアの酋長の甥である。ペライアは宿敵コラに制圧された。未知の武器を持つスペイン人が背後についていたのだ。偉大なる〈大海蛇の一族〉。脈絡もなく唐突に、シシマデウさんの頭にその言葉が浮かんだ。海の彼方に棲むとされている精霊の血を引く一族だった。シシマデウさんは船出をした。ただ一人だった。

「蛸漁師」
十八になった息子は、友人のつてで仕事を紹介してもらったので、数日帰らないといって家を出た。息子は戻ってくることなく、一週間後、セントマリー岬の崖の下で発見された。ヤニューの仕業だ。そう言ったのは、ふと現れた老人だった。俺は崖下で蛸漁をする老人と出会い、その後を継いだ。その岬の崖の中には部屋があった。そこで暮らし始めた。

「まどろみのティユルさん」
ずっと永い眠りの中にいた。どうもおれは野原に身を横たえているらしい。立ち上がろうとしたが、体は動かなかった。首から下の大部分は土に埋まっていた。男は同じ場所にずっといた。半分植物になっているようだ。テュユルは海賊船の船長だった。ある日、襲い掛かった船に、不思議な男が乗っていた。友となるソノバだった。

「夜の果樹園」
夜が明けた。妙な夢を見ていたような気がする。バスを乗り間違え、ついた先で助けを求めて屋敷のドアを叩く夢だ。そこの住人は果物頭の変な奴らで私は犬となり……。夢ではなかったのだ。相手の話していることはわかるものの、こちらの言葉はまったく通じない。姿見には犬が写っていた。私が首をふると、鏡の中の犬も首をふる。私は家を脱出した。

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恒川光太郎
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    2010

05.11

「うさぎ幻化行」北森鴻

うさぎ幻化行 (創元クライム・クラブ)うさぎ幻化行 (創元クライム・クラブ)
(2010/02/24)
北森 鴻

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美月リツ子の父親と最上圭一の母親が再婚したのは、リツ子が小学四年生のときだった。美月の家の中で圭一がただ一人、最上を名乗っていたのは、それが母方の実家の姓であり、しかも他に最上の家を継ぐもののない身の上だったからだ。父親は四年前に他界してすでにこの世の人ではない。義母は二年ほどまえから痴呆症の症状が現れ、今はリツ子とは違う世界で生きている。リツ子に不意の知らせが届けられたのは、テレビのニュース速報だった。義兄の圭一が乗った旅客機が突然の墜落事故に遭ったのだ。

圭一から「うさぎ」と可愛がられたリツ子に遺されたのは、うさぎ宛の遺書と、うさぎと名づけられたハードディスクだった。優秀な音響技術者だった圭一が遺したうさぎフォルダ。それは環境庁が選定した、日本の音風景百選を録音したものと思われるが、その音には奇妙な仕掛けが施されていた。違う。これはわたしにあてたメッセージではない。ならば、うさぎはもう一人いる。リツ子は、圭一が残した音風景の音源を求める旅にでた。それは同時にもう一人のうさぎを捜す旅でもあった。

遺作に対して、こんなことを言っていいのだろうか。ごちゃっ、としている。視点が章ごとにころころと変わり、人々は様々な場所で出会い、小さな謎が提示される。美濃市旧今井家の裏手で発見された少女凍死事件、ホラー映画「エリカ」の試写会直後に姿を消した男の詳細、SLやまぐち号の運転手だった要介護の祖父を看取った女の子、会社を退社して四国八十八箇所巡礼に出た男、上野発札幌行きの北斗星一号を取材する鉄オタ専門のフリーライターの男、そして、もう一人のうさぎ。

それらのほとんどが後味の悪い物語であることは別にして、謎の解答への導き方が理路整然ではなく、想像という点はどうなのだろうか。それに音風景という聞きなれない情景描写もイマイチ伝わってこなかった。そして札幌市時計台の鐘の音に引き寄せられて明かされる結末。終わり方自体は嫌いではないが、ミステリに騙されたぞという快感はなく、あの始まりは何だったのだろうと腑に落ちないモヤモヤ感が残った。残念。

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北森鴻
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    2010

05.08

「銀河に口笛」朱川湊人

銀河に口笛銀河に口笛
(2010/03/05)
朱川 湊人

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昭和四十年代。小学三年生の夏休み、あの奇妙な流れ星を一緒に見なければ、僕らは友だちになっていなかったような気がする。それを見たのは、区役所前の歩道橋の上からだ。モッチばかりじゃなく、ニシもエムイチもムー坊も見た。時間にすれば二秒もなかったと思うけど、みんな同じようにハッキリと見ている。その落っこちたらしい場所で、僕らは不思議な感じのキミと出会った。二学期からの転校生リンダだった。

モッチ、ニシ、エムイチ、ムー坊、不思議な力を持つリンダ、そして後から仲間に加わったミハル。仲良しウルトラマリン隊のメンバーは、一躍有名人になった一件をきっかけにして、探偵業をはじめた。飼い猫失踪事件、自転車紛失事件、怪奇風鈴男事件、魔法のマコちゃん事件、銀行通帳捜索、記憶障害のおばあちゃん。彼らウルトラマリン隊は町の事件を解決していく。

ノスタルジックでありながら、朱川作品にいつも流れているしっとりさはない。いや少年探偵団だから陽気だ。でも無邪気さばかりがあるのではない。ウルトラマリン隊の活躍は、喜びと悲しみが表裏一体になった出来事だ。家庭の問題や性障害の問題…。乗り越えられるものがある一方で、いろいろがんばってみても、結局苦味を噛み締める他はない時が、この世界にはあるんだ。そうして少年たちは少しずつ大人の階段を登っていく。

大人になってみると、楽しかったことも、辛かったことも、悲しみでさえも、一つの思い出として振り返ることができる。たった二年に満たない時間しか一緒に過ごさなくても、それはとても濃い時間の共有であったと。そして、突然くる別れの日。大人になるということは、別れを経験していくことでもあるのだ。楽しくて、懐かしくって、切なくて、ほろ苦い。朱川マジックが堪能できる一冊だった。

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朱川湊人
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    2010

05.05

「失恋延長戦」山本幸久

失恋延長戦失恋延長戦
(2010/03/11)
山本 幸久

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高1の夏、真弓子は片思いに気づいた。大河原くんは同学年でもクラスはちがう。それでもお互い放送部だし、学級委員なので、会う機会は多かった。クラスの男の子のだれよりも長く大河原くんと話している。好きだという気持ちは日を追って増していった。自ら持て余すほどだ。そんな真弓子を見守っているのは犬らしくない和風犬のベンジャミン。人と犬の垣根を越えた二人だ。そして何故か、他人とズレている同じクラスのゲロサキこと藤枝美咲がライバル視してくる。

地元のFM局でアシスタントをすることになった高2の真弓子は、突然大河原くんに激怒されて落ち込み、高3の真弓子は、東京からやって来た可愛いお嬢様・蔦岡に彼を奪われ、大学受験に失敗した真弓子は、何故か蔦岡からの恋の相談に乗ってしまい、二浪中で海の家でバイトを始めた真弓子は、蔦岡の浮気現場を目撃してしまう。そして一番の親友の代役で金粉塗れで舞台に立ち、大河原くんへの長い長い失恋を終える。翌年大学生になった真弓子は……。

面白かったし、最後には泣けた。だけど、何か既視感を覚える内容だった。それは、最近読んだ越谷オサムさんの新刊、「金曜のバカ」に収録されている「ゴンとナナ」にそっくりだったからだ。不器用な女子高生の主人公が自分探しをしており、一方的にライバル視をしてくる女子、メスの臭いを撒き散らしている同性がいて、そして、愛犬がしゃべる。全部が同じ設定という訳ではないが、偶然にせよ、ここまで似ていると後塵は損をする。読み始めてすぐは、著者が違うにも関わらず、「ゴンとナナ」の続編と勘違いしてしまったのだ。

そんな本書だけど、キーポイントとなるのはやはり、個性的すぎるゲロサキと、犬のベンジャミンにあったと思う。絶対に相容れない存在のゲロサキだけど、だからこそ、彼女の頑張りに刺激を受けるし、彼女のダメさをも含めてという自分の中途半端さのバロメータになっている。そしていつも見守ってくれる存在であり、何でも話してしまえる心の友、犬のベンジャミンとの会話がすごく自然体で、これが主人公の内面を判りやすくし、刺激される外圧からの程よいクッション材になっていたように思う。

ただ先にも書いた通り、類似作が先に出ていたのは著者にとっては不幸かもしれない。それともう一つ。動物が登場する作品にありがちなエンディングをもって来たところは残念だと思った。確かに泣ける。でもこういうのは個人的に好きではない。読者を泣かせようとするには卑怯な手法だと思う。その点は評価を下げざるを得ない。まったくな動物好きな一個人の好みだけど、そこは違う方向で勝負して欲しかった。この展開はもういいよ!

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山本幸久
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    2010

05.03

「冥談」京極夏彦

冥談 (幽BOOKS)冥談 (幽BOOKS)
(2010/03/03)
京極夏彦

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前作「幽談」に連なるシリーズ第二弾「冥談」は、生者と死者の狭間を、現実と現実でない怪しげが混じり合い、霞がかかったかのような不穏な空気感が心地良く、どこか懐かしく、それでいてゾッとする。そんな幽かな8つの物語で構成されている。個人的な好みをあげてみると、その怖さに鳥肌が出まくった「冬」、民俗学が色濃い「凮の橋」、黒さに突っ伏すしかない「空き地のおんな」、廃屋に対する薀蓄が著者らしい「予感」、作品の締めくくりに相応しい「先輩の話」だった。そして「幽談」より「冥談」の方が好き!

「庭のある家」
庭には椿が咲いていて、その横の植木鉢を置く木製の台は燻んだ灰色だ。その部屋は暗かった。三年ぶりに古い友人を見舞いに訪れたところ、留守居をしては貰えないかと頼まれた。妹が十分前くらいに死んでしまった。診断書を書いて貰わなくてはならないので、医者を呼びに行きたい。勿論だよと答えた。僕は、佐弥子さんが好きだったのだから。

「冬」
藺草の香りは僕には寒い。僕にとって畳は冬なのだ。その冷たさは、頬の冷たさである。更に云うなら右頬だ。時に、皮膚がちりちりするような錯覚があるほどだ。その記憶はまた、とても朦朧とした視覚的記憶と、聴覚的記憶をも伴っている。それは、少女の顔だ。そして、少女の声だ。その顔は誰にも似ていない。声も同じである。それだけは断言できる。

「凮の橋」
橋を渡らねば其処には行けない。その橋を渡る時は風のようになる。口を利いてはならない。擦れ違った者と目を合わせてもならない。言葉を耳にしても理解してはならない。それが決まりだ。私は二十年以上前に、一度渡った。渡ったような気がする。渡っている筈だ。その頃私は子供で、祖母に手を引かれていた。そこは、死者の声が聞こえる魔所だった。

「遠野物語より」
水野君が連れてきてくれた若者は、とても興味深い譚を聞かせてくれる。ややもすると嘘に聞こえる。それなのに。繁君の口調が真面目なものだから、どうにも信じそうになる。否、これは信じる信じないと云う類の話ではないだろう。信じられていると云うことを先ず驚くべきで、驚きが驚きでなくなるまで突き詰めて、内省すべきなのだ。繁君は語る。

「柿」
柿をひとつ貰った。喰ってみるかと、手に取って裏返したらば、にょろりと虫が出て来た。気持ちが悪いので捨てた。昔のことを思い出した。柿の木があった。ぼろい家の庭だ。最初に板塀を潜り抜けたのは、飛蝗を追いかけていた時だったと思う。そして僕は、大きな柿の木を観た。見蕩れていたんだ。でも。その記憶は怖い。どこか怖い。

「空き地のおんな」
アイツが悪い。気がついたら外を歩いていた。多分、もうイイとか叫んで私は部屋を飛び出したんだと思う。この空き地を最初に見たのはいつのことだったのか。五年くらいは経っているだろう。じゃあ五年もあんな男とずるずる付き合っているのか。そしてこの空き地は、そんなに放置されているのか。おんなが居た。どうやら私を見ている。何?

「予感」
谷崎さんは、廃屋に住んでいる。谷崎さんはその家を、三年前に中古で買い取った。売りに出ていたのは土地で、建物は要撤去の物件だった。で、壊さなかった。人が住まなければ家は死ぬ。その一度死んだ家に、谷崎さんは住んでいる。理屈から言えば、谷崎さんが住んでいるならその家は死んでいない。でも、谷崎さんは廃屋に住んでいる。

「先輩の話」
先輩は言った。記憶というのは、今の幽霊のこと。昔のことはいつも遠眼鏡で覗いた景色のようにぼんやりもしている。でも、ぼんやりしているんだけど、ホンモノじゃないんだけど、それは嘘じゃないから。其処に昔がある。幽霊が見える。遠眼鏡で見たように。おじさんは立派な人だった。おばあちゃんにとっても、自慢の息子だった。


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その他の作家
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    2010

05.01

4月に買った書籍の代金

個人メモです。


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自分への戒め
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