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    2010

09.30

「窓の外は向日葵の畑」樋口有介

窓の外は向日葵の畑窓の外は向日葵の畑
(2010/07)
樋口 有介

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舞台は東京の下町月島。松華学園高校二年生の青葉樹(シゲル)は江戸文化研究会に所属している。このクラブに入った理由は部長から「入りなさい」とスカウトされたからで、それ以下でもそれ以上でもない。相手は一年上級の高原明日奈。入学した直後から、随分綺麗な上級生がいるな、と思っていたことも事実で、その明日奈に直接命令されてしまったら、もう仕方ない。加えて親父さんが学校の理事長だというのだ。シゲルは、幼馴染の真夏にバカにされながらも、まずまず無難にクラブ員の務めを果たしていた。

シゲルの親父は三年前に、ミステリ作家を志して警察を辞め、その半年後には馬鹿につける薬のネット販売を開始した。親父に愛想をもクソも尽きはてたお袋は離婚後、隅田川の掘割をはさんだ向こうの実家へ戻っている。そんな夏休み、江戸文化研究会部長である明日奈と副部長の佐々木信幸が相次いで失踪した。それを聞いて乗り出してきたのが元刑事の親父。最近婚活に忙しい親父は、息子のクラブの事件以上に、顧問の美人教師・若宮先生に興味があるらしい。下心見え見えで探偵をはじめた親父に手を焼きつつ、シゲルもまたクラブの後輩である帰国子女の園藤紅亜に迫られ、自らも真相を追うことに。

従来の樋口ファンなら、ニヤリ笑い満載かも。親父の書く作品はいつも中年の私立探偵が活躍するハードボイルド。それも被害者やら容疑者やらの登場人物がみんな嘘みたいな美人で、そういう美人たちに主人公の私立探偵が、なぜかモテてしまうのだ。さらに主人公である探偵の唯一の趣味が洗濯。ファンなら思い浮かべるのはあの人しかいない! そして本書もまた、あの人を彷彿させる言動や態度のニヒルな親子が、なんとなく活躍する。そう、運まかせ、風まかせ、そこに加わるちょっとした勘働き。事件や謎に対して、ガツガツしていないのが樋口作品なのだ。

そして美少女、美人、中年女に至るまで、性別がメスなら、とことんスカしてキメるのが探偵を務めるオスの主人公、本書で言えば、親父のカンジだ。今回は、この親父とまだ目覚めていない息子による男同士の親子の会話も読みどころとなっている。ジャンルで言えばミステリ。でも、謎解きに挑む作品ではない。樋口作品は一貫してそうだ。キャラの魅力とユーモアある会話で読ませ、意外なところで繋がる男と女の危うさを感じつつ、気がつくとなんとなく事件の真相に繋がっている。東海道中のヤジさんキタさんじゃないけど、面白ければそれでいいじゃん。そんな匂いがぷんぷんする作品だった。

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樋口有介
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    2010

09.30

9月に買った書籍の代金

個人メモです。


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自分への戒め
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    2010

09.30

9月に買った書籍

単行本
ストーリー・セラーストーリー・セラー
(2010/08/20)
有川 浩

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本日は、お日柄もよく本日は、お日柄もよく
(2010/08/26)
原田 マハ

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完全恋愛完全恋愛
(2008/01/31)
牧 薩次

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扉守(とびらもり)扉守(とびらもり)
(2009/11/25)
光原 百合

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勝手にふるえてろ勝手にふるえてろ
(2010/08/27)
綿矢 りさ

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ミステリ・オールスターズミステリ・オールスターズ
(2010/09/25)
本格ミステリ作家クラブ

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文庫本
新装版 8の殺人 (講談社文庫)新装版 8の殺人 (講談社文庫)
(2008/04/15)
我孫子 武丸

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十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
(2007/10/16)
綾辻 行人

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街の灯 (文春文庫)街の灯 (文春文庫)
(2006/05)
北村 薫

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サクリファイス (新潮文庫)サクリファイス (新潮文庫)
(2010/01/28)
近藤 史恵

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頼子のために (講談社文庫)頼子のために (講談社文庫)
(1993/05/06)
法月 綸太郎

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お買い物
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    2010

09.26

「ヌれ手にアワ」藤谷治

ヌれ手にアワヌれ手にアワ
(2010/07/22)
藤谷 治

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渋谷駅周辺はとんでもないことになっていた。走っていたトラックが段ボール箱を道路に落とし、その真後ろを走っていた家畜運搬車がそれを踏み、振動で荷台の掛け金が外れて、積んでいた闘牛十五頭が逃げ出したのだ。平均体重五百二十キロの闘牛たちは、車道で自動車をぺしゃんこにしたりガードレールを捻じ曲げたりして暴れた挙句、フェンスを突き倒して線路に侵入し、事故から一時間たった現在も逃走中である。このため東京都内のJRがほとんど運転を見合わせ、主要な道路はどこもかしこも大渋滞だった。

そんな中、モヤイ像の前で一人の老人が「観音様の下に、凄いものを隠した。あれさえあれば、世界一の金持ちになれる」と言い残して昏倒した。偶然そこに居合わせた五人の男女は色めきたった。二十代の若い失業男、ギャル社長志望ギャルのアカネ、フィリップとグレースと呼び合う気取り屋の借金地獄夫婦、スキャンダル政治家秘書の剣菱など、負け組人生一直線のワケアリ連中だ。彼らは、人生一発逆転を夢見て、お宝を独り占めしようと、あの手この手を繰り出すが。

こういうテンション高い藤谷作品は久しぶりだ。「舟に乗れ」以降のファンはこれに驚いたかもしれない。だけど、自分はこういうポップな作品をずっと待っていた。腹立つぐらい欲の皮の突っ張った身勝手な連中が、自分のことのみを考えて、我が我がとわちゃわちゃ動いてる。はっきり言って醜い。でもその無様な様子が滑稽で笑えてくる。しかもこのドタバタ劇の展開が猛スピードでひと息つく間もなくエンディングへと流れ込む。また人を食ったようなオチにも半笑い。著者にはこういうエンタメ作品をもっと書いて欲しい。そう文学苦手の一読者は思った。面白かった。

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藤谷治
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    2010

09.22

「市立第二中学校2年C組  10月19日月曜日」椰月美智子

市立第二中学校2年C組市立第二中学校2年C組
(2010/08/04)
椰月 美智子

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中2の一日は、こんなにも厄介で輝いている。8時09分、瑞希は決まらない髪型に悩み、10時24分、貴大は里中さんを好きになる。クラス38名それぞれの顔と心の内がくっきりと見える、等身大の学級日誌のような物語。〈出版社より〉

なんか椰月さんらしからぬぼやけた作品だなあ。スポーツ少年や、片思いの相手をじっと観察する少女や、クラスの雰囲気がいやで保健室登校する女の子や、英語恐怖症の男の子や、クラスになじめずにイジメられている女の子や、気づいた恋にびくびくしている男子や、親友と溝ができてしまった女の子や、成績が落ちたガリ勉くんや、ダンスチームに熱中しているグループや、なんとなくイライラしている生徒たち。クラスの一人ひとりにスポットが当てられてリレーしていく。だけどその分印象に残らず全体的にあっさりしすぎている感じだった。

彼らクラスの中心にはイジメの問題がある。だがそこもぼやけたままさらっと流れていく。傍観している者、ちくちくいびる者、何もできない幼なじみ、頼りにならない担任教師。そして大げさに心配する素振りを見せて自分をアピールする偽善者。「嫌いな奴」と題された章で一人の生徒がその偽善者に毒を吐いているのが面白かった。なんでも屋で明るいふりしてるけど、けっこうチマチマ計算してるところがいや。本当の友達が一人もいないのは、もしかしてあの子かもしれない。一生本当の友達ができないタイプっぽい、と。あっさり風味だけど、こいつだけはほんとに嫌な奴なんだ。

僭越ながらひとつ言わせてもらうと、個人を一人ひとり追うのではなく、クラスにありがちなグループ単位で物事を見させた方が面白くなりそうに思った。昔の自分を思い返してあるあると思うことでも、次の生徒にリレーされてしまうと、そこで共感が途切れてしまうからだ。主人公になれる原石はいた。それを活かさず、埋もれさせてしまったような構成をとった著者の意図が読めない。ここ最近、出版ラッシュが続いている著者だが、「しずかな日々」のような味わいがあって匂いある作品をまた読みたい。こういう作品は最近ご無沙汰なので。

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椰月美智子
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    2010

09.21

「無頼無頼ッ!」矢野隆

無頼無頼ッ!無頼無頼ッ!
(2010/07/26)
矢野 隆

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大阪の戦で豊臣家が滅んでから五年。この世のすべてを己の目に焼きつける。そのために蜘蛛助は旅を続けている。蜘蛛助にとって、商人とは世過ぎのための御題目程度のものでしかない。各地を行商し、小金が貯まると蜘蛛助は珍奇な噂を得るため大きな町に行きたがる。用心棒を買って出たのは兵庫の方だった。道場主だった父を何者かに殺され、敵を討つために旅をしている武士だ。博多でひと稼ぎをして上機嫌の蜘蛛助は、行きずりの女から不可思議な噂を聞き、一枚の絵図を手に入れた。

阿蘇へ向かう山道を幾度も折れ、己がどこにいるのかもわからなくなったその果てに、この世のものとは思えぬ巨大な鉄の門がある。門を開いたその先には神代の武具、はたまた唐人がのこした財宝が眠っているという。なにがあるにせよ門を開きし者は、おおいなる力を得る。しかし門を見て戻ってきた者は誰もいないそうだ。絵図を頼りに歩き出したふたりに、いくつもの試練がふりかかる。門を守るのは自ら黄泉の民と呼ぶ、古い一族であった。そしてついに辿りついた場所には、長く悲しい歴史があった。

読みながら思ったことは、マンガの延長、あるいはゲームブック。軽~くサクサク読める一方で、まったく物語に深みがなかった。知恵を使う仕事は蜘蛛助の専売で、兵庫の仕事は荒事。二人の冒険は何とかなるのだろう。その通り、紆余曲折はあるが、少年マンガ的に何とかなってしまうのだ。また敵対するキャラたちが、狸、熊、小猿、猪、女狐、虎と、人をおちょくったような動物に見立てられている。これって西遊記を意識してる?

本書を読んだ結果、自分の場合、次回作を読むかどうかはその時に考える。としか言いようがない。「蛇集」のような系譜なら読むと思うし、本作のように軽めのマンガ的な作品なら敬遠するかも。要するに個人の好みかな。ごめん。これは幼稚すぎてあんまり好きじゃなかった。マンガを馬鹿にしているわけではないが、ちょっと安易すぎる展開は否めない。ライトな作品が好き。そういう方はぜひどうぞ。

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その他の作家
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    2010

09.18

「あんじゅう 三島屋変調百物語事続」宮部みゆき

あんじゅう―三島屋変調百物語事続あんじゅう―三島屋変調百物語事続
(2010/07)
宮部 みゆき

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袋物屋の三島屋は、江戸は神田、筋違御門先の三島町の一角にある。主人の伊兵衛が振り売りから一代で興した店だ。店舗こそ小ぶりなものの、市中の粋人たちにはよく知られる店となった。この繁多な店に、伊兵衛の姪のおちかという娘がやってきた。歳は十七、伊兵衛の兄の一人娘で、実家である川崎宿の旅籠から、行儀見習いの名目で、伊兵衛と彼の女房お民のもとへ託されてきたのである。

おちかの身に起こった事件は不幸としか言いようがなかった。おちかは心を閉ざしていた。そんな折、伊兵衛の招いた客を、おちかがもてなさなければならぬことがあった。「黒白の間」で対した客は古い打ち明け話をしてくださった。それは哀しく恐ろしく、また妖しく不可思議な話であった。それをきっかけにして、おちかは伊兵衛の趣向で、変わり百物語の聞き集めをすることに。黒白の間でそっと明かされる秘密が、彼女を少しずつ変えていく。

馬飼いの少年が山奥で出会ったのは、おかっぱ頭をした寂しがり屋の神様お旱さん。少年に憑いたお旱さんは行く先々で水を枯らすのだった。話を聞いたおちかは、少年を三島屋で預かることにしたのだが(「逃げ水」)。平太とお旱さんってかわいい。ある意味でメルヘンだよね。お旱さんは、おひでりさんと読むのだけど、自分はおばつさんで読み通した。

隣の針問屋住吉屋の娘が嫁ぐことになった。おちかは駕籠に乗り込む花嫁が別人であることに気づき、奇妙に思う。後日聞かされる住吉屋の奥方の話によれば、住吉屋には亡き姑の呪いがかけられているという(「藪から千本」)。本家分家をあわせた住吉屋の面々はややこしい。つうかめんどくさい。それにあんまり面白くなかった。

手習所の若先生の青野利一郎が語ったのは、古い借家にまつわる物語だった。空き家になっていた紫陽花屋敷と呼ばれるその家には、人ならぬモノが棲んでいた。家を借りた老夫婦は、それに〈くろすけ〉という名を与え、それと少しずつ心を通わせてゆくが(「暗獣」)。くろすけがとてもかわいらしい。でもどんどん切なくなる。そして泣ける。

巨漢の偽坊主・行然坊が流浪の旅の途中で行き着いた山奥の村の話。一見平穏で幸せそうに見えるその村には、残酷なしきたりがあった。やがて、村人たちは奇怪な木仏を崇めはじめる。その木仏は、里の皆が正気を失うほどの霊験を示し続け、村は狂気に覆われていく。(「吼える仏」)。人の恨みって怖い。だけどそれ以上に怖いのは人が集団になったとき。

最後はオールキャストでお祭り。楽しい~(「変調百物語事続」)。お嬢さんのおちか。主人の伊兵衛と女房お民。女中のおしか。丁稚小僧の新太。そこに新たに加わる女中のお勝。いたずら三人組の坊主たち。若先生の青野利一郎と偽坊主の行然坊。新太をはじめとする子どもたちに魅力があるのはもちろん、新加入の大人たちにも今後の期待が湧く。中でも目が離せないのは、若先生とおちかの行く末。次回作ももちろん楽しみだ。

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宮部みゆき
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    2010

09.16

「ひそやかな花園」角田光代

ひそやかな花園ひそやかな花園
(2010/07/24)
角田 光代

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毎年夏になると、ある別荘地でキャンプに集まっていた七組の親子。背の高い木々に囲まれた一本道。刈り揃えられた芝生敷きの庭、部屋のいくつもあるウッドハウス、年齢の近い子どもたち。樹里、紗有美、波留、弾、雄一郎、賢人、紀子。輝く夏の思い出は誰にとっても大切な記憶だった。しかし、いつしかキャンプは取り止められ、その存在自体も親から否定されるようになってしまった。彼らは疑問を抱くようになる。あの子たちはだれだったのか。あれはどこだったのか。私はなぜ、そこに参加していたのか。あの集まりはいったい何だったのか?

前半部分はミステリ要素が強い物語だ。そして別々の人生を歩んで大人になった彼らは、何年ぶりかに再会を果たし、出生に纏わる衝撃の事実を突如突きつけられる。戸惑う者、我を忘れ呆然とする者、すんなり受け入れる者など、彼らはそれぞれの性格やこれまでの家庭環境に応じた様々な受け入れ方をする。そして始まるひとりひとりの群像劇。彼ら自身の問題や、現在の生活、知らされていなかった過去と向き合うことになる。「ひそやかな花園」とは、彼らにとってパンドラの箱だったのか!? それとも…。

登場人物それぞれの心理描写が巧みで、彼らの想いに共感も反発できる。特に紗有美に対しては思うことがたくさんあった。読者をイライラさせることにかけては天才的だ。何をしていいのかわからず、それなのに、何かしたいと焦っている。ならば自分で動くしかないのに、だれかが何かをしてくれると信じて疑っていない。ほしいものが手にはいらないと、人のせいにして、地団駄踏んで怒って泣いてくやしがる。それなのにまだ、自分の足では動き出さない。

自分が不幸なのは自分のせいじゃない。誰かのせい。上手くいかない理由を他人に見つけて、そうやっていつも自分の逃げ道を作っていると楽だ。でもそれではいつまで経っても何もかわらない。こういう負のスパイラルってありがちだ。自分にも思い当たるふしがある。だれだってちっぽけだと思う自分を見せられると居心地が悪い。見たくない。目をつぶっていたい。それを大々的に具現化したような存在の彼女だからこそ、必要以上に腹が立つし嫌悪感が沸いてくるのかなと思った。

そんなどうしようもない彼女にも関わらず、最後には明るい未来へと踏み出すことになる。驚きなのは、彼女に救いの手を差しだしたのが一番ドライで人に興味がないと思っていた人物だったからだ。仲間、家族のありよう、生きるということ。テーマとしてはかなり重い。だが「ひそやかな花園」で出会った彼女らは、無敵な気分で明日に向かって歩み続けるのだろう。なぜなら自分の足で動き出す意味を、意義を知ったのだから。

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角田光代
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    2010

09.14

「結婚相手は抽選で」垣谷美雨

結婚相手は抽選で結婚相手は抽選で
(2010/07/14)
垣谷 美雨

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抽選見合い法案が、来年四月一日より施行されることが決まった。対象は、二十五歳から三十五歳までの男女で、前科や離婚歴がなく、子どものいない独身者である。抽選方法は、本人の年齢プラスマイナス五歳の範囲内で無作為とされている。相手が気に入らなければ、三人までは断ることができる。しかし、どうしても気に入らずに三人断った場合は、テロ対策活動後方支援隊に二年間従事しなければならない。政府は、同法を設定した目的を、少子化の最大限因とされる晩婚化を打開するためと発表した。

鈴掛好美は三十一歳の看護師。母がどういう考えであろうと、もはや関係ない。法律によって半ば強制的に結婚させられるということは、母であっても阻止できないということだ。都会ならいざ知らず、田舎では嫁き遅れの部類だから、結婚はほぼあきらかけていたが、政府がチャンスをもたらしてくれるのならば、是非それを利用させてもらいたいと思う。この閉鎖的な城下町から一日も早く脱出しなければ。いや、本当は・・・母から逃れたい。

冬村奈々は三十歳。ラジオ局に勤めて七年目になる。入社以来ずっと、制作スタッフを務めている。といっても、ハガキの仕分けが主な仕事だ。母はこの世でもっとも頼りになる親友だ。母は、働く娘をバックアップしようと懸命だ。それはありがたいことではあるけど、自分の本音は専業主婦になりたいと思っている。そんな中、快楽的な生活の女は好みじゃないと、二年近く交際していた銀林嵐望から別れを告げられた。

宮坂龍彦はコンピューターソフト会社で働いている。パソコンオタクの龍彦にとってシステムエンジニアという職業は性に合っていた。彼女いない歴は年齢と同じで二十七年。自分には恋愛する自信がないという、ただその一点が原因で、すべてに自信が持てないでいた。二十代後半にもなって、いまだに彼女ができないとなると、さすがに最近は恋愛すること自体をあきらめ始めていた。そんなところへ、この妙な法案が降って湧いたのだ。

設定は面白そうだけど内容にイマイチ広がりがなかったのが残念だ。子離れできない母親に管理されている好美、母親離れできていない奈々。ルックスや性格は対極に位置する二人だけど、共に母親をネックにしたところの作者の意図は何? モテない龍彦にしても想定内の地味キャラでしかなかった。どこにでもいるという点では等身大かもしれないが、全体的にちょっと大人しすぎやしないか。モテないのにはモテない理由があって、同性から受けが悪いのはその計算が見えているからのはず。そういうところをもっと深く掘り下げて、そこからさらに広げて欲しかった。

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垣谷美雨
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    2010

09.12

お知らせ

コメントをくれた方はシステム不具合を疑ったかもしれません。ですがそれは当方の意思で、コメント受付を拒否させてもらったことが原因です。以前からスパムコメントはありました。しかし、もう限界!

言いたい放題の某掲示板と勘違いした本読み以外の輩がきて、読んだ本の感想を言いあう場を一方的に汚され続けました。名を残さず、悪意だけを置き去りにして喜んでいる馬鹿がいる。それらを駆除することはたやすいです。でも、見るのもうんざり、一々削除するのもうんざり。よって、コメント機能をストップすることにしました。

これまで良心的なコメントをくれた方、およびマイリンクのお友達の人々。そういうわけで、勝手ながらコメント機能を閉鎖させてもらいます。それとは別に、頂いたTBは随時、返させてもらいますので。


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お知らせ
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    2010

09.12

「ブレイズメス1990」海堂尊

ブレイズメス1990ブレイズメス1990
(2010/07/16)
海堂 尊

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東城大医学部総合外科教室、通称佐伯外科の外科医三年目の世良雅志は、国際学会でシンポジウムの発表をする垣谷講師のお供に選ばれ、ニース空港に降り立った。そんな彼に命じられた秘密のミッションは、伝説の天才外科医・天城雪彦に佐伯教授からのメッセージを渡すことだった。そこで偶然一緒になった総合外科教室の新一年生駒井を加えた三人は、モナコのモンテカルロ・ハートセンターで働く天城を訪ねるのだった。

患者のオペを受けるかどうかは患者のギャンブルの結果次第。カネのために医療を行うと断言する優秀な外科医。どうしてこんな人が、モンテカルロのエトワールという称号を得て、国際学会でもてはやされる技術を持ちえるのか。だが世良は、初めて目にした天城のバイパス手術の新しい手技に酔うのだった。しかも、一筋縄ではいかないクセモノの天城を相手に、カジノで一世一代の賭けをした結果、無事日本に連れ帰ることにする成功する。

帰国した世良は、佐伯と天城が計画する、新しい心臓専門病院スリジエ・ハートセンター設立を手伝うことになる。しかし、それは大学病院内での激しい戦いの始まりだった。佐伯病院長が言う。天城の構想は、当教室の心臓血管グループといずれ衝突する。だからこそ、垣谷も反発したのだし、反対派の急先鋒は黒崎助教授だろう。だが最後に天城の前に立ちふさがるのは、黒崎や垣谷ではない。それは小天狗だ。

ぶっちゃけ「ブラックペアン1988」の世良くんって影薄かったよね。若き日の田口たち三人衆とのからみが一瞬のきらめきで、これといった目立った活躍もなかった。手術職人の渡海と新兵器を持ち込んだ高階。彼ら派手な人たちを側で見ている人という傍観者を位置づけられた主人公でしょうか。でも、さまざまな劇的な瞬間を目にする恵まれた稀有な人であることは確かだ。今回もその立ち位置はまったく同じだ。

旧弊で保守的な東城大医学部総合病院のお歴々VS世界の最先端を走る天城。矢面に立ちたくないし、面倒ごとはごめんだと思っている世良くん。いわゆるミスター中立の世良くんだけど、天城の駒として働くことを強要されてしまうのだ。そんな世良くん以外にもお馴染みの人物が登場する。藤原婦長、猫田主任、花房看護師、みんな好きだ。一方で、偉い人ほど、読者をイラッとさせるのは何? これが現実の本質なのか。

天城の強烈な個性でぐいぐい読ませる本書だが、しかしドラマは突然中途半端に終わってしまう。しかも、何のひねりもなくあっさりとだ。たぶんこの後続きがあるのだろうけど、一冊の本に仕立てるには急ぎすぎたような気がした。尻切れ状態はストレス溜まるんですよねえ。というわけで、もやもやだけが残る読書となった。いち早い続きをプリーズ。

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海堂尊
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    2010

09.11

「ふたりの距離の概算」米澤穂信

ふたりの距離の概算ふたりの距離の概算
(2010/06/26)
米澤 穂信

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やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に。この言葉をモットーに、折木奉太郎は全てにおいて省エネを目指していた。わたし、気になります。千反田えるの尽きない好奇心は古典部に、ひいては省エネ主義者の奉太郎にいくつもの厄介事をもたらしてきた。それらの多くは冷静に考えて、解決されなかったとしても奉太郎自身に不利益ではなかった。それでもほとんどの場合で最後まで付き合うはめになってきたのはなぜなのか。たぶん千反田の大きな瞳のせいなのだと思う。

一年が過ぎ、奉太郎たちは二年生になり新入生が入ってきた。古典部も新入部員を募集した。紆余曲折はあったけれど、一人の部員を確保した。大日向友子は仮入部届を出し、あとは本入部届を出すだけになっていた。彼女は伊原摩耶花になついていたし、千反田ともよく笑って話をしていた。誰もが大日向は何事もなく本入部するものだと思っていた。それがいきなり入部しないと言ってきた。どうやら部室での千反田との会話が原因のようだが、奉太郎は納得できなかった。千反田は他人を傷つけるような性格ではない――。

奉太郎には少しだけ心あたりがあった。大日向が仮入部してからこちら、妙だと思ったことが一つ二つないわけではない。もしかしたらその辺りのことをつつけば何か出てくるかもしれない。それすら思い違いかもしれないが、まあ、やってみようかという気にはなっている。何しろ二〇キロだ。ただ走るには長すぎる。奉太郎は、入部締め切り日に開催されたマラソン大会を走りながら、大日向の心変わりの真相を推理する。それには伊原と千反田に話を聞かなければならない。一方で大日向には今日中に接触しなければならない。

そうそう、この気だるい雰囲気が古典部シリーズの持ち味だった。第五弾は、マラソン大会当日の奉太郎たちと、大日向との出会いなど過去の回想シーンとが交互になって進んでいく。入部しないと突然告げた大日向の心変わりがメインにあって、それとは別に章ごとの回想シーンにも日常の謎解きがあるという構成。新入生を勧誘する新勧祭で見つけた少し違っている感じの正体、突然開催されることになった奉太郎の誕生会での困ったアイテムなど、長編のかたちを取った連作短編形式であるのが本書だ。

「ふたりの距離の概算」。それはふたりの物理的な距離だけではなく、人と人との心の距離でもあるのだ。そして、その距離を概算するということは、他人の心の中にまで踏み込んでしまうということに。これが結構ほろ苦い。どちらかといえば古典部シリーズよりも小市民シリーズに近い結末かも。そうはいっても、がちゃがちゃしている新勧祭も楽しいし、秘め事にそわそわしている誕生会もニヤリと笑える。いろんな要素が堪能できる一冊じゃないでしょうか。それにしても迷惑な勘違いだけはごめんだ。

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米澤穂信
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    2010

09.08

「長弓戯画  うさ・かめ事件簿」滝田務雄

長弓戯画 (うさ・かめ事件簿) (ミステリ・フロンティア)長弓戯画 (うさ・かめ事件簿) (ミステリ・フロンティア)
(2010/06/29)
滝田 務雄

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雑踏の中、和弓で射殺された男性。誰が、どうしてそんな目立つ凶器で殺人を行ったのか? しかも、日本有数の弓の名手でもなければ犯行が困難な状況で……。美男子なれどヘナチョコな少女漫画家マーチ宇佐輝先生と、ドSの編集者カメちゃんこと小亀ミドリは心ならずも事件に巻き込まれる。次々現れる新事実、その度に繰り返される推理の構築と否定。どこまで行っても五里霧中、謎多き和弓殺人事件の真相は? 《田舎の刑事》シリーズで既にお馴染み、第三回ミステリーズ!新人賞受賞作家が満を持して贈る新シリーズ第一弾。長編本格コメディ・ミステリ。

ミステリとしては、今ひとつ物足りない。そもそも和弓で射殺されたというネタだけで延々と引っぱるのに無理がある。また新事実が出てくるたびに繰り返される推理の積み重ねが、イラチの読者にとっては面倒臭い。丁寧といえば丁寧だけど、同じことを何度も読まされるのは苦痛でしかないのだ。じゃあ、つまらなかったのかといえば、それがそうではなかった。これが、まあまあイケたのだ。その大きな要因は、個性的なキャラの猿回しにあったと思う。

読み始めは、宇佐輝大先生に対するカメちゃんのサドスティックな攻撃が狙いすぎのように思えて違和感ありありだったけれど、それもいつしか慣れてしまって、気がつけばテンポ良く読める一因になっていたのだ。またカメちゃんが嫌悪する宇佐輝の二重人格もユーモアがあって程よい潤滑油になっていたと思う。さらに、娘のカメちゃんにも同僚のデカにも少女漫画愛好家であることを隠している小亀上月刑事の存在も大きい。そして、セキセイインコも。

だけど個人的な意見をいえば、ブラック度の濃い「田舎の刑事」の方が好みだった。

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その他の作家
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    2010

09.06

「トッカン 特別国税徴収官」高殿円

トッカン―特別国税徴収官―トッカン―特別国税徴収官―
(2010/06/24)
高殿 円

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東京国税局、京橋地区税務署。築地橋のたもとにあるこの所轄は、京橋地区の納税を一手にとりしきる地域派出所だ。そして、わたしこと鈴宮深樹二十五歳は、そこの特別国税徴収官(略してトッカン)付き職員である。徴収官。―それは、税金を滞納するあらゆる納税者に対して、問答無用で取り立てる、この世で一番嫌われている存在…。だが、ほかでもないその嫌われものこそ、わたしの仕事なのだった。税金泥棒、悪魔などの罵詈雑言を浴びせかけられることなど日常茶飯事だった。徴収官は、決して泥棒ではない。あくまで、わたしたちは公務員だ。税金滞納者の徴収は、法律で決められたことだ。わたしたちは悪人ではない。ないはずなのだ。…たぶん。

鏡雅愛、三十四歳。身分は東京国税局、京橋税務署特別国税徴収官。つまり、わたしの上司だ。しかも国税局からの出向組である。わたしは、このエリートの男が嫌いだ。わたしは、言いたいことをうまく言葉にできずに、「ぐ」と呑み込んでしまうことが多々ある。この男はあろうことかわたしの口癖をもじって、勝手にぐー子というあだ名を付けたのだ。この男は、まさに徴収の申し子だ。鏡の手にかかると、どんな頑固な滞納者もまたたくまに尻尾をたれて降参し、どんなに抵抗しても、家にある物を差し押さえられてしまう。だからこそ、彼はこう呼ばれているのだ。京橋署の死に神と。

章割りの加減がいまいち不明だが、これが思っていたよりも面白かった。税金泥棒と叫びたい人種の自分がそう思ったのだ。公務員の怠慢に関しては、誰もが不満を持っているだろう。某役所の受付カウンターに列が出来ていても、その中ではのんびり談笑。民間ではありえない光景を堂々と見せてくれるのが彼らだ。しかも休憩時間はテコでも動かない。だから突っ込まれるのに。そんな公務員。さらに敵になりがちな国税徴収官が主人公。誰だって身構えるよね。でも、そのキャラの性質でするっとかわして読ませるのが本書だ。

だけど、敵であるスタンスは変えたくない。それが読んでいる内に変わってしまうから不思議だ。納税を拒む資産家マダムを卒倒させるエピソードにうっしゃ。カフェの二重帳簿を暴く潜入捜査にドキドキ。銀座の高級クラブのママと闘って、強烈な人間不信に陥るような反撃を喰らって、でもそこから過去の自分、いまの自分と向き合うことでさらに成長して。なんだか最後は有川浩作品を読んでいるような錯覚をするが、読後感は最高に良かった。なんだかんだ言っても、徴収官も仕事なのだ。要は税金の使い道に納得できればねぇ。我が国は、自分で身内の敵を作っているとしか思えないのが現状で。

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    2010

09.05

「ダリアの笑顔」椰月美智子

ダリアの笑顔ダリアの笑顔
(2010/07/17)
椰月美智子

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綿貫さんちは四人家族。長女の綿貫真美は架空の綿貫真美を想像する。その子はきっと明るくて、ダリアみたいに笑う、クラスで人気者の女の子だ。自分の意見をはきはき言って、弱いものいじめは許さなくて、いつだって正々堂々としている。勉強ができてスポーツもできて、先生からの信頼も厚い。家族からも愛されて、いつだって笑顔の女の子。綿貫真美は架空の綿貫真美をうらやましく思う。いいなあ、そういう子になりたかったなあ。「ダリアの笑顔」

このいつもビクビク怯えている真美から見た両親は喧嘩が絶えない。とくにヒステリックな母の春子にムカッとくることしばしだが、ところが次の章「いいんじゃないの、40代」を読むと、働く母の春子に対してまた違った感情が芽生えてくるから不思議だ。春子はガラじゃなかった生命保険の外交員を辞めて、小さな設備会社の事務員におさまることができた。それがきっかけなのかどうなのか、次々と小学生時代の同窓生と再会する。

その春子から見た長男の健介は、我が腹を痛めたとは思えない理解不能の行動で悩ませる。ところがやはり次の「転校生」を読むと、子供は子供なりに面白くないことがあるのだと明かされる。それと時を同じくして、対照的な双子の姉弟が転校してくる。小泉姉が兄貴で、弟が妹みたいなのだ。しかも小泉姉は同じリトルリーグに入団してきて、健介よりも速い球を投げるのだから驚きだ。

さて最後は父の登場だ。総務部経理課係長、綿貫明弘。他人から見た明弘は、いつも笑顔を絶やさない穏やかな人柄で、そのくせどこか飄々としているらしいが、実は非常に気が小さいのであった。最近まったく仕事が手につかない。やる気がおこらない。妻の春子にうつじゃないかと打ち明けてみると、ただのやる気なしこちゃんでしょ、と答えが返ってくる始末だ。そんな時、あるポスターにふと目がいくのだった。「オタ繊、綿貫係長」

家族のそれぞれが悩みと不安な日々を過ごす中で、さまざまな出会いを通して、一人ひとりが元気になっていく。そして家族を支えあっている。どこにでもいそうな綿貫さんちだが、なんかいい。うまく言葉で表現できないのがもどかしいが、優しい気持ちになれるのは確かだ。特に表題作の「ダリアの笑顔」は良かった。いや、あの小道具を持ってくること自体が卑怯かもしれない。あのエピソードは何度読んでも泣けてしまうのだから。

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    2010

09.03

「ビターシュガー」大島真寿美

ビターシュガービターシュガー
(2010/06/28)
大島 真寿美

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「アラフォー」世代のまっただなかにいる奈津、まり、市子は中学・高校時代からの幼馴染み。元モデルの奈津は、突然失踪騒ぎを起こした夫の憲吾と別居状態で、ひとり娘の美月と暮している。インテリアコーディネーターとして働くキャリアウーマンのまりは、年下のカメラマン・旭との耐えることばかりの恋愛に疲れて、別れを選んだ。ある日、執筆業をこなす市子の家に、ひょんなことからその旭が居候することになってしまい、奈津、まり、市子の3人の関係に新しい局面が。長い道のりを経て、人は変わっていく。おそらく死ぬまで私たちは変化し続けていく――。おとなの女性に贈りたい極上の恋愛&友情小説。

「虹色天気雨」の姉妹編。前作の内容をとんと思い出せないが、これ面白いぞ。主人公の市子をよそに、夏子、まりたち、みんながそれぞれに、じたばたじたばた、いまだに、くっついたり、離れたり。いつまでもごちゃごちゃ、やっている。そこに加わるのが、夏子の娘で中学二年生になった美月であり、夏子と別居中の憲吾であり、市子んちに居候をしている旭くんであり、ゲイの三宅ちゃんだったり、夏美の新恋人である内藤さんであったり。いい大人が、みんな分別しない。流れのままに流されている。そこが妙に面白い。

まりが言ったのかな。私たちのように、十代の頃から長く付き合っていると、変化の著しい成長期を目の当たりにしてきただけに、その後のゆるやかな変化にはなかなか目が行かないものだが、それで高を括ってしまって、この子のことはもうよく知っている、だいたいわかっている、そんなふうに油断してしまうものなのだが、でもそれは違うのだ。劇的に変化しなくても、ゆるやかな変化はまだ続いている。おそらく、死ぬまで、私たちは変化し続けていく。友人関係の落とし穴の本質を突いていると思った。

いつまでもわちゃわちゃしているいい大人の人間関係の妙を存分に楽しむことができた。そしてまた、彼女たちに再会したいと切に祈る。久しぶりに大島真寿美さんらしい一冊。こういうゆるくてぬるくてほのぼのした作品は大好きだ。

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    2010

09.02

「バイバイ、ブラックバード」伊坂幸太郎

バイバイ、ブラックバードバイバイ、ブラックバード
(2010/06/30)
伊坂 幸太郎

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星野一彦が罪悪感を覚える理由はシンプルだった。彼女以外にも交際している女性がいたためだ。浮気とは違う。どの女性が一番大切なのかが分かっていないのだから、浮気よりも悪質だろう。二股か、といえばそれも正確ではなく、五股だった。好きでこのような状態を作り上げたわけでもなく、親しくなりたい女性と自然と交際をしていったところ、五人と付き合っていただけである。

繭美は、身体もでかければ、腕も脚も太く、何から何まで規格外で、おまけに態度も大きく肝も据わっている。僕には、彼女が別の生き物にしか見えなかった。出会ってから毎日行動を共にしているものの、一緒にいる時間が長くなればなるほど、理解ができなくなった。心から嬉しそうな笑い声が、繭美の口から聞こえてくる。彼女の思いは想像できた。ああ楽しい、とでも思っているのだろう。

借金の沼に沈み、〈あのバス〉で連れて行かれる前に、付き合っている女性たちに会わせてほしい、と頼んだ時、繭美は、「お別れの挨拶なんか意味ねえよ」と断言した。それでもいいから別れを言わせてくれ、と僕は頼んだ。バスに乗るまでの二週間、僕が逃げないように、と監視しているのが繭美の役割だ。わたしと結婚すると言えば、みんな納得するだろうよ、と繭美は言った。星野一彦は、繭美を婚約者として紹介し、五人の女性に別れを告げる。

一人目、ある男性との不倫関係に嫌気が差していた廣瀬あかりの場合。二人目、夫と離婚して以降、子育てと仕事に専念してきた霜月りさ子。三人目、奇妙な発想と突飛な思考回路で行動する如月ユミ。四人目、生真面目に税理事務所で仕事をこなし、数字でものを考えるのが好きな神田那美子の場合。五人目、女優になるべくして生まれてきた本格派女優の有須睦子の場合。そして、〈あのバス〉に乗る日。

この作品の魅力は、なんと言っても繭美という強烈なキャラクターの存在にあると思う。常に不愉快そうで、絶えず不満を抱えている様子で、いつも何かに怒っているように見えるのが繭美という人間なのだ。そして人を追いつめて、どうにもならないと困り果てているのを、上から見下すのが趣味なのだ。読み始めは単に嫌な女だが、読み進めて行くうちに味が出てくるから不思議だ。そう、「砂漠」に登場した西嶋のような異質なキャラだ。

また、繭美を除いて五人の女性が登場するので、男性諸氏にとっては人気投票的な楽しみもあると思った。個人的な好みを言えば、一位はキャッツアイ志望の不思議ちゃん、二位は物わかりのいいお母さん、三位は美人すぎるあの人。そして四位は恐竜に近い生き物だったりして。五股の星野一彦にしても、母性本能をくすぐる存在で。。最近、読者の期待をことごとく裏切っていた伊坂作品だが、本書はちょっと前に戻ったのか。ミステリではないが、世間に毒吐くこれぞ伊坂、という読書が堪能できた一冊だった。

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伊坂幸太郎
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    2010

09.01

「来来来来来」本谷有希子

来来来来来来来来来来
(2010/06/29)
本谷 有希子

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山間の小さな集落。元自衛官の蓉子が嫁いだ先は、山奥の村で麩揚げ工場を営む夏目家。しかし、新婚わずか1ヶ月で夫のヤスオは彼女を捨てて失踪した。村では義母の面倒をみる嫁を身代わりにして失踪した、と噂が広まる。蓉子は旦那を信じて待っている。蓉子が残された嫁ぎ先には野鳥狂いの姑・光代にいじわるな長男の嫁・千鶴子がいた。息子が逃げた事で光代は千鶴子に冷たく当たり、千鶴子は蓉子に鬱憤をぶつけ続けた。

働き者の蓉子は義母に命じられ、鳥を世話し、食事の支度をし、麩を揚げ続ける。鳥の世話をして旦那を待ち続ける蓉子の夢は、鳥園のつがいの孔雀がいつか羽を広げるところをみることだった。前に一度だけ羽を広げたところを夫と眺めたことがあり、その時が幸せだと感じたのだ。その一方、光代の仕打ちが我慢の限界に達した兄嫁の千鶴子は、ある陰惨な復讐を思いつく。

今回は少々大人しい目かも。それも試練と健気に自分磨きの旅を続ける蓉子と、かつて夫に逃げられ、かわいがった息子にも去られた光代に、夫の暴力に苦しんでいる千鶴子。女たちは、それぞれ悩み苦しみながらも家に縛りつけられている。そんな彼女たちのまわりには、野鳥園に遊びに来る女子高生のみちる、麩揚げ場で働く従業員のアキとヒロ子がいる。アキは義理の父に想いを寄せ、ヒロ子は村中の男と寝てあげている。

それぞれが常軌を逸した曲者であることはこれまでと同じだ。だけど、感情の振れ方が想定内というか、カタルシスを得るほどの無茶パワーを感じることができなかった。もっとやってくれてもいい。いや、やってくれ。体が震えるような快感を与えてくれ。そういう点で、黒は黒でも、さっぱりしていたように思った作品だった。次に期待かな。ごめんなさい。

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