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    2010

10.31

「さよならドビュッシー」中山七里

さよならドビュッシーさよならドビュッシー
(2010/01/08)
中山 七里

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ピアニストを目指す十六歳の遥は、私立高校の音楽科特待生に選ばれ、資産家である祖父、銀行員の父親、ピアノに熱心な母親、無職の三十代独身の叔父、そして両親を大地震で亡くした従姉妹などに囲まれ、温かく幸せな生活を送っていた。ところがある日幸せは突然終わりを迎える。両親が親戚の法事にでかけ、叔父も仲間の集まりとかで家を空けることになり、遥は従姉妹と祖父の三人で留守番することになった。その夜、大火事が起こり、遥はただ一人奇跡的に生き残った。しかし全身大火傷の重体となった。

皮膚の移植手術は成功裏に終わり縫合後も綺麗なのだが、顔以外はモザイク模様の皮膚、声は野太くひび割れた掠れ声になってしまった。そんな遥に、法定相続人である父や叔父を差し置いて、祖父の遺産の大半が遺されたことが知らされる。条件は音楽で身を立てること。そのための援助資金だという。追い討ちをかけるように、入学した学校側は特待生としてのランクの実績、つまりコンクールでの入賞を求めてきた。まともに打鍵できない。鍵盤が途轍もなく重い。こんなの嫌だ。助けて。

またピアノを続けたいと思っているのか。今もピアニストになりたいのか。そう声をかけてきたのは新進気鋭のピアニスト岬洋介だった。遥は逆境に負けずピアニストになることを固く誓い、岬洋介の魔法のようなレッスンを受けて、コンクール優勝を目指して歩みだす。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり始める。遥を狙ったものと思われる度重なる事故、そして遥の母親が神社の石段から転げ落ちて死んでしまった。第8回「このミステリがすごい!」大賞受賞作。

ミステリ度は柔らかめ。というか、全体的にミステリ色が薄く、忘れた頃に古典的なトリックをポンッと持ってきてしまった、というような感じだった。とにかくスポコン。鬼コーチにピアノレッスンをしごかれつつ、歯を食いしばって必死についていく。一方学校では、わかりやすく嫌がらせを受けている。いわゆるひと昔前にあった少女漫画にありがちな展開だ。でもこれがおもしろい。そしてなにより音楽の描写が素晴らしく、文字から音楽が聞こえてきそうな、そんな迫力を感じた。ミステリうんぬんを抜きにして、青春音楽小説としては一級品。そういうエンターテイメント作品だと思った。


中山七里さんのサイン。

中山1

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    2010

10.31

10月に買った書籍の代金

個人メモです。


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自分への戒め
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    2010

10.31

10月に買った書籍

こめぐら (倉知淳作品集)こめぐら (倉知淳作品集)
(2010/09/29)
倉知 淳

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なぎなた (倉知淳作品集)なぎなた (倉知淳作品集)
(2010/09/29)
倉知 淳

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マイナークラブハウスの恋わずらい―minor club house Side-B  (ポプラ文庫ピュアフル)マイナークラブハウスの恋わずらい―minor club house Side-B (ポプラ文庫ピュアフル)
(2010/09/07)
木地 雅映子

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探偵ザンティピーの休暇 (幻冬舎文庫)探偵ザンティピーの休暇 (幻冬舎文庫)
(2010/10/08)
小路 幸也

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今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)
(2010/09)
高田 郁

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交換殺人には向かない夜 (光文社文庫)交換殺人には向かない夜 (光文社文庫)
(2010/09/09)
東川 篤哉

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イナイ×イナイ PEEKABOO (講談社文庫)イナイ×イナイ PEEKABOO (講談社文庫)
(2010/09/15)
森 博嗣

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    2010

10.30

「空想オルガン」初野晴

空想オルガン空想オルガン
(2010/09/01)
初野 晴

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吹奏楽の“甲子園”普門館を目指すハルタとチカ。ついに吹奏楽コンクール地区大会が始まった。だが、二人の前に難題がふりかかる。会場で出会った稀少犬の持ち主をめぐる暗号、ハルタの新居候補のアパートにまつわる幽霊の謎、県大会で遭遇したライバル女子校の秘密、そして不思議なオルガンリサイタル…。容姿端麗、頭脳明晰のハルタと、天然少女チカが織りなす迷推理、そしてコンクールの行方は?『退出ゲーム』『初恋ソムリエ』に続く“ハルチカ”シリーズ第3弾。青春×本格ミステリの決定版。

あれれ?このシリーズはいつ、ハルチカシリーズなんて名を付けられたんだ。これまでは、学園ミステリであり、全国大会の舞台、普門館を目指す仲間集めの冒険。そんな流れだった。それが今回は、無名の吹奏楽部がコンクールに出場。さらにその快進撃はどこまで続くのか。そのドタバタ騒ぎの中、事件が起こった、という内容。期待していたゲーム的なレベルアップはないものの、これはこれで面白かったと思う。

その要因のひとつは、魅力的なサブキャラの登場にあったように思う。フリーライターを名乗る男、ファンキーで危険な香りがするハルタの姉ちゃん、ギャルの女子高生たち、そして、おれおれ詐欺を働く男。一話完結の短編でありながら、長編連作形式なので、その効果は後に行くほど効果的だ。過ぎ去ったあの人もこの人も再登場する。しかもラストを読んで、「おおっ!」と驚き。こうきたか、と。

草壁先生の曰くありそうな過去もまだまだ引っぱるようで、今回もそれは明らかにされず。そしてあるひとりの仲間が加わることが確定し、また仲間集めに戻る予感が。今回はなかった音楽を奏でる場面も次回は復活するのでしょうか。個人的にはそちらの方が好みなので、草壁先生の語られざる空白の時間と共に、シリーズ四作目が待たれる。また噂だけが先行するハルタの二人の姉の登場にも期待したい。

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    2010

10.29

「月と蟹」道尾秀介

月と蟹月と蟹
(2010/09)
道尾 秀介

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鎌倉市にほど近い海辺の町で慎一が暮らしはじめたのは二年前、小学三年生の夏だった。父が働いていた商事会社が倒産し、祖父の暮らすこの町に越してきたのだ。その父も一年前に亡くなり、つましい借家に母親と祖父と三人で暮らしている。以来クラスメイトたちとも上手くやれていない。十年前、祖父の昭三が操縦する漁船に同乗し、冬の海に投げ出されて死んだのは鳴海の母親だった。事故のことはクラス中の生徒が知っている。事故で実際に母親を亡くした鳴海だけが仲良くしてくれて、ほかのクラスメイトたちが打ち解けてくれないところに、慎一はしばしば苛立ちをおぼえた。

鳴海を抜かせば、このクラスで慎一と仲良くしてくれるのは春也だけだ。転校してきた者同士ということもあるし、転校生である春也はあの事故のことを気にしていない。新しい何かが欲しかった。慎一も、春也も。「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」風が吹きすさぶ山の上の秘密の場所で、やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式。お金が欲しい。いじめっ子が不幸になるように。他愛ない儀式はいつしかより切実な願いへと変わり、子供たちの捻れた「祈り」が周囲の大人に、そして彼ら自身に暗い刃を向ける……。

子供ゆえの遊びやもやもやの捌け口による生物への大量虐殺はあるが、メインとなるのは子供たちの心理描描写。主人公の慎一は、母親が鳴海の父親と交際していることを疑い、不安を募らせイライラしている。親友の春也は、酒乱の父親から虐待を受けているみたいだ。そして彼らの仲間に加わる紅一点の鳴海は、事故で母親を亡くした原因は慎一の祖父だと未だに恨みを持っている。彼らは、胸の中にやっかいなものを蓄積しつつ耐えている。しかしそれもいつかはいっぱいになる。そうなった時の反動がとても怖い。誰もが想像しうる事態に突き進むのだ。

心の闇とか、閉塞感とか、ミステリ作家でここまで書ける作家は稀有の存在だと思う。でもファンとしては、ミステリが読みたい。「向日葵の咲かない夏」「龍神の雨」「球体の蛇」などの作品と雰囲気は似ているものの、やはり期待するのは見事な伏線と大ドンデンガエシであって、少年たちの哀しく切なくやりきれなさからくる捻れた心理描写が巧みでも、なんとなく物足りない。これぞトリックスターと唸らせる作品に戻って頂きたい。そういう点で言えば、ここ数冊は個人的にしっくりこない。以前のように、読む前から「何かあるぞ!」とドキドキさせて欲しい。わくわくしたい。

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道尾秀介
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    2010

10.28

「魔所 イタコ千歳のあやかし事件帖2」堀川アサコ

魔所―イタコ千歳のあやかし事件帖〈2〉魔所―イタコ千歳のあやかし事件帖〈2〉
(2010/08)
堀川 アサコ

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今年十九歳になったばかりの美しい娘、千歳は盲目だった。そんな不自由を一緒に背負うと誓ってくれた夫を二年前に亡くし、千歳は巫女になった。巫女とは死者の降霊をする霊媒であり、吉凶を占う占術師であり、時には病気治療の相談を受けることもある。けれども千歳は、ただ夫の声が聞きたいばかりに巫女になった。そんなせいか、千歳は巫女としてあまり優秀ではない。体が悪いと相談に来た人には医者にかかれと云って追い返すし、怪現象が起きたと泣きつかれれば警察に行けと勧める。何より千歳は幽霊相手の仕事に、あまり熱心ではなかった。

半年余り前に東京から越してきた安子は、年の離れた兄の子だ。姪の安子を挟んで、千歳と幸代はそれぞれ、父方と母方の叔母に当たる。目の悪い千歳が身の回りの手伝いを頼むという口実で、幸代と安子を引き取ったのはまだ雪の降る季節のことだった。東京の粋筋で働いていた幸代は、弘前のような田舎町では見付けられないようなモダン・ガールだが、大柳の本家からすれば彼女の立場は非常に微妙なところにあった。かつて娼妓までしたことのある幸代は、本来ならば敷居を跨がせたくもない筋目の女である。けれど、大柳家の若い連中は、彼女をやけに慕っていた。

津軽有数の林檎問屋を経営する七尾家の相談事を持ってきたのは、千歳の母だった。薫物御前は、良くねえ女だった。俺が見た訳じゃねえよ。もっと昔の話だ。尾沼さは今でも薫物御前の悪がたまって、悪いものが湧いてくるんだ。《薫物様》さは、近付けば駄目だ。悲しげな声で、老人の霊魂は語り続ける。相談を受けた巫女の千歳は、悲劇の連鎖を止めることができるのか? 超常現象をごく論理的に解釈する千歳と、おばけ嫌いなのになぜか霊の声を聞いてしまう家事手伝いの幸代が巻き込まれる猟奇的難事件の数々。イタコ千歳のあやかし事件帖シリーズ第二弾。

前作では、幸代にバランスが傾いていたようだが、今回はどちらかと言えば千歳寄り。というか、事件は仲の良い姉妹のような二人の外で起こっていることが多い。そしてオカルト色がより強く、一応、一話完結。途中で登場人物名を見て誰だっけ、と混乱はあるものの、この昭和初期の青森が舞台となった巫女を受け付けている雰囲気が好きだ。また安子や新志、高雄や松江ら脇を固める人物たちも健在。そこに加わる女中のシエも魅力的だ。そして千歳の亡き夫のこともちらほらと明らかにされはじめ、このエピソードがちょっと泣ける。そんな風にもう少し千歳たち自身のことも読みたかったが、第三弾にも期待。

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    2010

10.26

「謎解きはディナーのあとで」東川篤哉

謎解きはディナーのあとで謎解きはディナーのあとで
(2010/09/02)
東川 篤哉

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宝生麗子は金融とエレクトロニクスと医薬品とミステリ出版物などで世界にその名を轟かせる宝生グループの総帥のひとり娘だ。蝶よ花よと育てられ、優秀な大学を優秀な成績で卒業した、要するになに不自由のない正真正銘のお嬢様。そんな彼女の選んだ仕事が結構堅い公務員。というか警察官。宝生麗子は東京多摩地区、国立署に所属する若き女刑事である。もっとも、同僚たちはみな、彼女がお嬢様であることを知らない。

宝生麗子は上司である風祭警部が苦手である。風祭警部は、ただの独身ではない。父親は中堅自動車メーカー風祭モータースの社長で、つまり彼はお金持ちの御曹司。腕にはローレックスを光らせ、愛車はシルバーメタリックのジャガー。風祭警部は国産車に乗らない。理由は「貧乏くさいから」。そんな警部は貧乏くさい国産車を製造販売する風祭モータースの御曹司である。自己矛盾も甚だしい。

景山という若い執事は、宝生家で働くようになってまだ一ヶ月にしかならない。執事景山は、彼なりの考えをストレートな言葉で伝えた。「失礼ながらお嬢様――この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか」「ひょっとしてお嬢様の目は節穴でございますか?」その男は、なるほど大口を叩くだけのことはあって大した推理力の持ち主だった。彼女の抱えていた事件を、話を聞いただけで見事解決してしまう。

東川氏といえば、ユーモアあふれるバカミス作品。そして長編作家。これまではセンスあるユーモアで読ませ、ミステリはおつりという感じだった。今回は初の連作短編集で、ミステリに重点をおき、ユーモアはその次。個人的な意見をいえば、期待するところを完全に裏切られた作品だった。笑える要素がまったくなく、そのワンパターンの構成に飽きがきた。まるで定型を約束された鯨統一郎作品のよう。なんかしっくりこなくて残念だった。ごめんなさい。

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東川篤哉
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    2010

10.23

「勝手にふるえてろ」綿矢りさ

勝手にふるえてろ勝手にふるえてろ
(2010/08/27)
綿矢 りさ

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どこにでもいそうなOLが主人公。江藤良香、二十六歳。元おたくで彼氏なし。この歳にして未だ男性との経験がない彼女であるが、目下のところ、二人の気になる男性がいる。一人は中学時代に片思いしていた同級生。もう一人は告白されたものの、まったく興味が持てない会社の同期。優先順位から、片思いの彼をイチ、片思いしてくれる彼をニと名付けた。

大人になったイチと会いたい。会おうと決めた良香は、同じクラスだった女友達の名前を騙って同窓会を開いた。イチとの再会を果たすものの、彼は良香の名前を憶えていなかった。さらに未だ男性との経験がないという事実を同僚の来留美がニに漏らしていたことを知った良香は、怒りにまかせ、会社に妊娠休暇を申請してしまうが・・・。

良香は相手に面と向かって言葉には出さないが、その実内心の口の悪さに笑えた。そして青くさくって、空回りして、暴走して、さらに突っ走るのは妄想だけではなく、ついにとんでもない行動を起こした結果、どん詰まりまで行き着いてしまうのだ。しかし笑ってばかりいられない。この痛さは自分と隣り合わせにあったのだ。口は災いの元とは、よく言ったものだ。

好きじゃなきゃ付き合えないし、自分を好きになってくれた人には無関心。とりあえず付き合ってみて、それでも好きになれないならしょうがない。この選択肢がないのは若さ故の純粋さなのか。こういう融通のきかない頑なさみたいなものも懐かしい。そして甘酸っぱい思い出ってどこかで美化されたものだと思う。それを同窓会で憧れの彼と再会って、思い出壊れる最悪のケースじゃん。

取る行動すべてが裏目に出るイジワルさ。片思いだけど好きな人と、好きになってくれたがまったく興味が持てない人との二択。そして全編にわたる毒舌。なんか「夢を与える」以前の二作に戻ったような、シニカルでニヒルな笑いがある作品だった。そして芥川賞受賞作家によく見られる句読点を無視した結果、リズミカルになる文章って流行? そんなことを考えつつ、つくづく男運ないな~と思いながら、そんな良香のすべてがかわいく思えた一冊だった。


綿矢りささんのサイン。

綿矢2

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綿矢りさ
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    2010

10.22

「さくらの丘で」小路幸也

さくらの丘でさくらの丘で
(2010/08/31)
小路 幸也

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祖母は、その西洋館を〈私たちの学校〉と呼んでいた。〈さくらの丘〉の古い古い建物。祖母の想い出が詰まった西洋館。祖母が語ってくれた、たくさんの古い時代のお話。それは、世界中が敵味方に分かれた大きな戦争が終わって、少し経った頃の話。山に挟まれた、谷あいの小さな田舎町で、わずか二年弱存在したという小さな学校で共に泣き、共に笑い。長い人生の中で、ほんのわずかしかない少女と大人の女性の狭間の時を過ごした、三人の祖母たちの物語。そして、その話を受け継いだ、わたしたちの物語。

祖母の遺書には、祖母が〈学校〉と呼んでいたあの西洋館と、〈さくらの丘〉の土地をわたしたちに譲ると書かれていた。一緒に渡されたのはひとりずつ一本の古びた鍵。それらを、わたしたち三人の孫たちに遺すと。はなちゃん、こと青山花恵さん。きりちゃん、こと兼原桐子さん。そして、祖母のミッちゃんこと、宇賀原ミツ。小さな村で一緒に育った幼馴染。まるで姉妹のようだった。その三人が〈さくらの丘〉の、そして西洋館の持ち主になっていた。そして、ロンさんとけい子さん。

何故、西洋館が祖母たちにとっての学校になったのか、そして二年弱で閉じてしまったのか。そもそも、終戦後というあの大変な時代に、あんな田舎町にアメリカの人がいて、どうして英語を教えていたのか。西洋館で、英語と洋裁を教えていたというロンさんとけい子さんというのは、何者なのか。その後、どういう人生を送っていたのか。祖母が少女時代だった戦後すぐの頃のお話と、彼女たちの孫である満ちる、紗代さん、香織さんたちが〈学校〉に訪れ、二つの時代が交差する感動の物語。

うーん。なんだ、このもやもやは。これは本書とはまったく関係なく、ただの読み合わせが悪かっただけだと思う。この前に読んだ綾辻氏の「Another」の余韻が消えぬまま読んだのが失敗の原因だった。「Another」を読んでいなければ、「感動!」と叫んでいたかもしれない。シンプル・イズ・ベスト。読者の期待に添う王道路線。まさしく、これは小路作品たる作品だ。でも「Another」を読んだあとに、このライトな作品は心に浸みてこなかった。普段なら好きだけど、今回はごめん!

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小路幸也
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    2010

10.19

「Another」綾辻行人

AnotherAnother
(2009/10/30)
綾辻 行人

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夜見山北中学校には、代々生徒たちのあいだで囁かれてきた、ひとつの伝説があった。二十六年前、三年三組にはミサキという名前の生徒がいた。一年のときからずっとみんなの人気者で、学力優秀スポーツ万能、絵を描かせてもうまいし音楽の才能もある。そのうえ容姿端麗。ところが三年に上がって、クラス替えで三組になったそのミサキが、急に死んでしまった。その死にショックを受け入れることができなかったクラスメイトは、全員で「ミサキは生きている」というふりをしつづける。おりに触れてミサキに話しかけ、一緒に遊び、下校する。そうした奇妙な行動は、卒業の日までつづけられたという。そして卒業式当日。撮影されたクラス集合写真の片隅には、そこにいるはずのないミサキが、蒼白い顔でみんなと同じように笑っていた。

一九九八年。榊原恒一は父の仕事の都合で、中学三年の一年間を祖母の暮らす夜見山市で過ごすことになった。新学期から夜見北中三年三組に転入する予定だったが、突然気胸を患い、入院生活を余儀なくされてしまう。ある日、恒一は病院のエレベーターで、左目に眼帯をした制服姿の少女に出会った。初登校した三年三組にはミサキ・メイと名乗ったその少女の姿があった。ミサキの伝説が伝えられる三年三組の生徒だったのだ。一方でクラスには妙な緊張感があり、教師も生徒もまるでミサキ・メイの存在を気にとめるふうもなかった。ミサキ・メイはいるのか、いないのか。そしてある日、クラス委員の桜木ゆかりが凄絶な死を遂げた。やがて、クラスの関係者には、突然の死が次々と降りかかりはじめる。

面白かった。それに本の分厚さも気にならない。第一部でWhat?...Why?...(何者、何事?...原因、理由?...) 第二部では、How?...Who?...(どうして、どうやって、どういうふうに?...だれ、どの人?...)と、次々とミステリの質が変化してゆく。また章の割り方や区切りが簡潔で、それがとにかく読みやすかった。ただ、読んで思ったことを易々と語ることができない。その一言がネタバレにつながる作品だからだ。600ページ以上の長さをまったく感じさせないホラーであり、青春小説であり、本格ミステリが存分に堪能できる重厚な作品であった。また読後に残る余韻がすごい。未読の方にはぜひともおすすめしたい一冊です。


綾辻行人さんのサイン。

綾辻

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綾辻行人
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    2010

10.16

「風の陣 裂心篇」高橋克彦

風の陣[裂心篇]風の陣[裂心篇]
(2010/09/08)
高橋 克彦

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もはや戦を防ぐ手立てはない―。蝦夷の雄・鮮麻呂に決起の秋が。陸奥の黄金を求め、牙を剥く朝廷に対し、蝦夷の首長・伊治鮮麻呂が起ち上がる。狙うは陸奥守の首ひとつ。北辺の部族の誇りを懸けた闘いを描くシリーズ、『火怨』へと連なる著者渾身の大河歴史ロマン。蝦夷たちの慟哭が胸に迫る歴史巨編、完結。(出版社より)

遠い陸奥では伊治鮮麻呂が、京の都では道嶋嶋足が、蝦夷の明日を信じて今を耐えていた。ともに蝦夷。そんな二人の思いを繋ぐのは物部家の要・物部天鈴。人はだれもが、明日こそはと望みを繋ぐ。ただ泣き暮らす今であってもいい。生きていればいつかは晴れ晴れとした朝を迎えることができよう。だが、蝦夷は人ではないのか。その命をないがしろにされればどうなる?

鮮麻呂が耐える。堪えて、堪えて、堪えて尽くす。鎮守府将軍を兼ねた陸奥守の紀広純。その広純の口から出るのは蝦夷討伐の企てばかり。さらに蝦夷を売る嶋足の腹違いの弟・大楯が暗躍する。鮮麻呂は襲い掛かる試練のたびに追いつめられていく。堪えるだけ蝦夷は堪えてきた。その蝦夷は、自分でもある。これ以上は堪えられない。陸奥守の圧政に対し、鮮麻呂がついに決起する。

「風の陣」シリーズはここで完結するが、これは前九年の役・後三年の役を描いた「火怨」の序章でしかない。そして「炎立つ」「天を衝く」と、蝦夷の誇りを懸けた壮絶な闘いはさらに続く。中央からの蔑視と搾取へ反抗する男たち。彼らの思いと行動に、胸を熱くし、悲しさや絶望感、あるいは明日への希望に泣けること間違いなし。これら作品も共におすすめしたい。これは高橋克彦作品を読みすすめる新たな機軸になるかもしれない。

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高橋克彦
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    2010

10.15

「空色メモリ」越谷オサム

空色メモリ空色メモリ
(2009/11/27)
越谷 オサム

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ただひとりの県立坂越高校文芸部部員、ハカセこと河本博士に春が来た。なんと、新入生の女子が入部してきたのだ。だが、我が文芸部唯一の新入部員・野村愛美さんとは毎日のように顔を合せてはいるが、おれの違和感は大きくなるばかりだ。入学したてで右も左もわからない女の子が、一人で部活見学なんかに来るものだろうか。普通そういうのって、クラスで席がたまたま近いとか、そういう仮押さえの友達なんかと二、三人で覗きに来るものだと思うのだが。

思えば、一年前のおれとハカセがまさしくそのパターンだった。中学違いでも自宅が近いことから仲良くなり、当時の文芸部先輩たちに泣きつかれ、お人好しのハカセは抵抗する暇も与えられず入部届に名前を書かされ、勧誘をのらりくらりとかわし続けたおれは「部員じゃないけどなぜか部室に入り浸っている奴」という位置を獲得することに成功した。そんな具合に一人で部活見学に行くのは躊躇するものなのに、野村さんは単身やってきて入部を決めた。

そんなある日、ファーストフードで野村さんが男と楽しげに食事しているのを目撃してしまった。相手は、無愛想ながらバスケ部ホープの超イケメン。地味な野村さんとはまったく釣り合いがとれないと思うモテない二人。そんな中、超イケメンが暴力事件を起こし停学になった。その日から野村さんはクラブを休む。また登校すれば、靴を隠されるという嫌がらせを受けていた。そんな日々をおれはおもしろおかしく空色のUSBメモリに綴っていた。その空色メモリが思わぬ騒動を巻き起こして―。

デブとメガネのモテない男子二人の会話に若干ひく部分はあるものの、大概は笑うことができた。そして途中から後輩女子のサキが加わることにより、自虐とダメさに限定された笑いから、ユーモアの幅が二倍三倍に膨らんだ。それと共に、あくまで第三者という立場に余裕をぶっこいていた主人公だが、いわゆる事件の当事者になって、突然あたふたするのも面白かった。その延長で気づく、主人公の淡い恋心も乙なもの。惜しいのは、そこですべてが終わっていたところ。ページをめくって白紙。これには落丁を疑ったほどだし。

そういう残念を踏まえた上でも、とてもとても面白かった。「ボーナス・トラック」「階段途中のビッグ・ノイズ」「陽だまりの彼女」「金曜のバカ」と全作品を読んでいるけど、これまでハズレは一切なし。ちょいとベタなユーモアで、笑えるぐらいのほろ苦さで、熱い思いが暴走させる勢いが清々しくて、ひと昔まえの甘酸っぱさが堪能できて、今も継承される若さゆえの青さが嘘くさくない。もっと読まれてしかるべき作家だと強く思う。というわけで、全作品、おすすめ!


越谷オサムさんのサイン。

越谷1

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越谷オサム
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    2010

10.13

「世界でいちばん長い写真」誉田哲也

世界でいちばん長い写真世界でいちばん長い写真
(2010/08/19)
誉田 哲也

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主人公は中学三年生の内藤宏伸。幼なじみで去年まで大の仲良しだった洋輔が転校したことで、なんとなく無気力な日々を送っていた。やりたいことも、話したい相手もみつからず、すべてがつまらない。写真部にはいちおう籍をおく幽霊部員でいるけれど、同級生で鬼部長の三好奈々恵に厳しく作品提出を迫られ、けれど、撮りたいものもみつからない。

そんなある日、宏伸は、祖父の経営する古道具屋(リサイクルショップ)で、一台の奇妙なカメラを見つける。それは、台座が一回転して、三六〇度すべてを一枚の長い写真に納められるという風変わりなものだった。そのグレートなカメラとの出会いをきっかけに、宏伸は「世界で一番長い写真」を撮りたいという思いを抱き始める。

今回は、人が死なない誉田作品。読み始めは、主人公の宏伸と去る洋輔がごちゃ混ぜになり、それが原因でページをめくる手が進まなかった。また覇気のない気弱で物言えない主人公にイラっとくることしばし。その一方で、すごくキャラ立っている人たちが次々と登場する。とりあえず、この人たちが出揃うまで辛抱しよう。

メカには強いが放浪癖のあるお祖父ちゃん。超美人だけど言葉遣いが超悪い従妹のあっちゃんこと温子さん。足癖がとにかく悪い写真部部長でクラス委員の三好奈々恵。女子に敵が多い憧れの美少女安藤エリカ。商売を抜きにして応援してくれる写真館の宮本さん。そして、三六〇度パノラマ写真を撮影するための専用カメラ「グレート・マミヤ」。

物語は、宏伸がグレート・マミヤと出会ってから文句なしの面白さを発揮する。宏伸のセリフにならない独り言。強い女性陣のあっちゃんや三好との押され気味の会話。ふにゃふにゃ骨抜き状態の安藤エリカとの接近。そして、何かを成し遂げたいと思うようになる成長。へなちょこだった主人公が熱くなっていく姿におのずと読書スピードが上がっていく。

その結果、読了後はいい気分。笑えたし、爽やかだし、清々しいし、恋の行方も気になるし、感動するし、当然カメラにも興味がでるし。中でも一番興味あるのは、三六〇度すべてがヒマワリの写真でしょうか。http://www.katch.ne.jp/~shin9007/ ここにあった。作中で興味を持った方は、このリンク先へ。写真も最高。本書も最高!

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誉田哲也
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    2010

10.12

「100km!」片川優子

100km!100km!
(2010/08/26)
片川 優子

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知らないうちに参加の申し込みをされて、100km歩くという大会に出場する羽目になってしまった、高校1年生のみちる。「なんでこんなことしてるんだろう、私」と、歩きはじめて早々に思いながらも、ほかの参加者との出会いの中で、みちるは少しずつ前に進んでいく。あの日からすっかり変わってしまった、ママのことを考えながら。

みちるのママは、自信家で弱みを見せない強い人で、離婚するときだって弱音一つはかなかった。失敗なんてする人じゃなかった。がんばりなさい。全力を尽くしなさい。そうなんどもなんども言われ続けたけれど、ママがみちるのしたことをほめてくれることはほとんどなかった。ママの思うような結果を残せないみちるに、ママはいつも憐れむような、あきらめのようなため息をつくだけ。

だからこそ、ママが事故のあと、あきらめたのがなによりショックだった。ママは仕事で出先に向かう途中に交通事故にあって、病院に運ばれたのだ。後遺症は残った。歩けなくなったのだ。お医者さんの話だと、リハビリをすれば激しい運動はできないまでも、元のようにはなれるらしい。それなのに、ママはリハビリを拒否した。いつも自信満々なママが、ママ自身をあきらめて努力しなくなったことが悲しかった。

早く昔のママに戻ってほしい。戻って、全力でチャレンジしなさいと、あのいつだってなぜか自信たっぷりの表情で言ってほしい。百キロ歩いたら、ママが元のママに戻るかもしれない。そんなのだれにもわからない。そんな簡単なもんじゃないと思う。でも歩くと決めたから、せめてそう信じたい。みちるは、ただひたすら歩く。歩き続ける。何度もあきらめそうになりながら、「ゴールで会いましょう」という他人の言葉に元気をもらいながら。

とってもいいお話だった。百キロウォークにしろ、フルマラソンにせよ、それは成し遂げた人にしかわからない得るものもあると思うし、感動があると思う。気づくこともあると思う。でもそれには何かをはじめなければならない。まずは目標を見つけること。そして目標に向かって歩き続けること。そういう一歩を踏み出すことに対して、ぽんと背中を押してくれるような一冊で、感動のおすそ分けを頂いた作品だった。

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片川優子
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    2010

10.10

「鏡の偽乙女 薄紅雪華紋様」朱川湊人

鏡の偽乙女 ─薄紅雪華紋様─鏡の偽乙女 ─薄紅雪華紋様─
(2010/08/26)
朱川 湊人

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大正三年、東京。どうしても絵で身を立てたいと願う槇島風波と、くだらぬ夢を見るなと諭す貿易会社を経営する父と、むろん折り合いはつかず、風波は結局家を出て、一人でやっていくと決めた。穂村江雪華は、まったくもって奇妙な男である。無縁坂で初めて出会った時から薄々と察していたことであるが、同じ下宿館、磁場の狂いを感じさせる怪異に満ちた「蟋蟀館」に住むようになってから、その思いは弥が上にも強められた。

本人は二十歳を自称し、見かけも確かに若々しいが、その言葉には、どこか老成したものを感じることがしばしばであった。また美術はもちろん諸事に関して博学で、何を尋ねても立て板に水の回答が返ってくる秀才ぶりも、敬服に値した。そして何より、彼と関わるようになったがゆえに、この世ならぬ不思議を目にするのだった。未練を残して死んだ者の魂を鎮める。また、生きている死者、未練者(みれいじゃ)とも関わることに。

主人公は芸術家の卵らしいが、そういう設定を大事にしているわけでもなく、時代は大正というわりにモダンでもなく、ノスタルジックでもなく、ホラーのようでホラーでもなく、幻想というほど幻想的でもない。不可思議自体があっさりしすぎている。実在の人物も登場するがそれで盛り上がるわけでもない。はっきり言って、ぼやけた作品だと思った。

また謎が多い雪華にしても、その正体は明かされぬまま終わっていたが、読んでいれば何となくその正体が想像できてしまう。たぶん続編はあるのでしょう。いち朱川ファンとして出れば読むとは思うが、他シリーズほどの期待はしない。残念ながら、面白味を感じないまま本を閉じる結果となった一冊だった。ごめんなさい。

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朱川湊人
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    2010

10.09

「紅葉する夏の出来事」拓未司

紅葉する夏の出来事紅葉する夏の出来事
(2010/08/09)
拓未 司

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俺のような駄馬になるなと教育熱心な父親と、口やかましいが八方美人の母親に、プレッシャーをかけられ続けた息子、草壁悠馬は私立の高校受験に失敗した。その夜、悠馬は生々しい両親の本音を盗み聞きし、不快なうねりに圧迫された。始まりは、興味本位から手に入れた煙草だった。その日を境に、悠馬は高校デビューして不良仲間と付き合いはじめる。

伊東邦夫が「救急水道サービス」に転職してから、三年の月日が経った。十年間勤務した食品メーカーを辞め、念願だったラーメン店を独立開業したのも、今となっては苦い思いで、遠い記憶になりつつある。苦しいだけだった夢が散ったあとには、金に追われる人生が待っていた。だが小心者の伊東にとって、会社から求められる強引な手口は苦手で。

安田晴美は、老女は老女でも普通の老女ではなかった。赤いクレヨンを塗りたくったようなまぶた。紅で真っ赤に染まった唇。これまた真っ赤に塗られた頬。頭には真っ赤なニット帽を被っている。全身真っ赤な人間。全てが真っ赤に染まっていた。ゴミ屋敷に住む赤い婆さんはRB(レッドばあさん)と呼ばれることになる。

ふとしたきっかけで、悠馬たち不良仲間は、RBハウスのRBの子供らしき人物が昔使っていたらしい部屋にたむろするようになる。伊東は詰まったトイレの修理でRBハウスを訪れ、便器に詰まっていた物の正体を知り、見て見ぬ振りができなくなった。ある日、高校生による両親殺傷事件が起こって…。社会の底辺を生きる三人の運命が交錯する。

ああ、ここまで先が予見できてしまうミステリは久しぶりだ。伏線がわかりやすくて、すぐにトラップだと気づいてしまった。その結果、三人の群像劇にしても中途半端に思えてしまう。こういうジャンルの場合、三人のそこに至るまでの過程や、やがて突然繋がる接点、パズルの完成に興奮する。しかし早い段階から完成図が見えているのだから、なんだかな~。面白くないわけじゃないけど、残念だった。

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    2010

10.07

「ばら色タイムカプセル」大沼紀子

ばら色タイムカプセルばら色タイムカプセル
(2010/08/07)
大沼紀子

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十三歳ながら頭が白い。つまりは天然総白髪。医者によれば、過度のストレスによるものらしい。森山奏は、一身上の都合により家出した。転々とした結果、いつの間にか房総半島に足を踏み入れていた。そうして辿り着いたのが、千葉の端っこ、寂れた感じの小さな港町にある女性専用の老人ホーム「ラヴィアンローズ」だった。狂おしいほど咲き誇る薔薇が自慢のこの施設で、年齢を二十歳と詐称して働きはじめたそこには、人生の余暇を謳歌する老女たちがいた。

歌舞伎役者を偏愛しているプロの乙女で仲良し三人組の万理さんと佐和子と千恵さん。昔取った杵柄で歓談室にてクラブを営業している元ママの登紀子さん。食に対して強いこだわりを持つ偏屈者の長子さん。薔薇の手入れに命を燃やすオーナー代理の遥さん。ここの入居者たちときたら、みんなすべからく人遣いは荒く、自分の欲望に忠実で、自分本位で遠慮がないときている。老人というのは、人柄が丸く穏やかで、煩悩なき人たちだと思っていた。でもそれは、大きな勘違いだったことを知る。

一癖も二癖もあるお年寄りたちとのにぎやかな共同生活で忙しく働く日々の中、苦節十三年、どうやら奏にも、友達なるものができたらしい。家出を計画している同い年の山崎和臣だ。山崎和臣は、こともなげに言った。ラヴィアンローズの薔薇の庭には、死体が埋まっている。地元の子供たちの間で囁かれているその噂は、山崎和臣の母親が子供だった頃から、語り継がれているものだという。奏と山崎和臣は、ひょんなことから噂の真相を調べることに。

デビュー作「ゆくとし くるとし」から月日が経つこと五年ですか。それでも待ち続けた甲斐はあったというもの。いい。すごくいい。老いや病、認知症や家族、自分を含めた死など、老女たちは重いテーマを軽やかに語る。そして人生を持て余している若い二人は、まだ知らない、色んなことや、色んな気持ちを、知って、学んでいく。本書で繰り返し語られる諺は、禍福は糾える縄の如し。大好きなロックバンドの曲が頭にリフレインする。グッドタイムス・バットタイムス。人生にはいい時も悪い時もあるさ、と。

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    2010

10.05

「おとうとの木」宮ノ川顕

おとうとの木おとうとの木
(2010/07/27)
宮ノ川 顕

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小さな平屋建ての家は、すっかり古びてしまっていて、空き家というより廃屋然とした様子だ。早いもので、母が亡くなってからもう三年が経とうとしていた。貧しい家庭で楽しい思い出は少なかった。それでも少年時代を過ごした場所であり、来る度にそれなりの感慨はあった。酒好きで癇癪持ちだった父は、たいした理由もなく母や子どもだった私に手を上げるような男だった。亡くなってからもう二十年近くなるというのに、嫌な記憶の方が多いのは、そのことに多くの原因がある。

第二子誕生を控え、この土地に新しく家を建てる計画が進んでいた。良くも悪くも、様々な想い出が詰まったこの家も、計画通りに進めば今年中に取り壊すことになる。せめて、庭くらいはかつての姿に近い状態にしておいてやりたいものである。庭の中心には懐かしいクヌギの木が真っ直ぐ立っていた。庭木と呼べるのは、子供の頃からこの一本だけだった。ふと子ども時代のクワガタ捕りを思い出した私は、木肌に三箇所の傷を付けた。なんだか人の顔に見える。やがて、木は彼に語りかけはじめる。―兄さん。アキオだよ。

本当にアキオなのだろうか。私は彼の言葉を聞きながら、幼くして亡くなったという弟のことを思い出していた。彼の名前がアキオだった。弟が亡くなったのは私が二歳になったばかりの秋のことである。まだ小さかったとはいえ、断片的にその顔や声、あるいは気配くらい覚えていてもいいはずなのに、なぜかまるで記憶にないのは、両親がそのことに触れないようにしていたためだろう。アキオに関することで、両親が私に語ったことはとても少なかった。そのアキオがここにいた。

なんかごめんよ。始まりからすべてが助長ですぐに飽きがきた。おやじの話って、やたらと長くて、しきりと同じ昔話を繰り返して、これらって意味がないものばかり。病気自慢と同じような自己満足だ。本書もこれと同じとは言い切れないが、似たような印象を受けた。そんなおやじ語りが長々と続くものだから、肝心のホラー部分が取って付けたもののように思えて、ただ必要以上に文字を追わされた感がある。要するに、これを長編にした甲斐が生かされていないと思った。前作が良かっただけに肩透かしをくらったようだ。ほんとごめん。

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    2010

10.03

「アルバトロスは羽ばたかない」七河迦南

アルバトロスは羽ばたかないアルバトロスは羽ばたかない
(2010/07/27)
七河 迦南

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鮎川哲也賞受賞作「七つの海を照らす星」に続く第二弾。北沢春菜は二十五歳。養護施設「七海学園」で働き出して三年目の保育士だ。春菜は多忙な仕事に追われながらも、学園の日常に起きる不可思議な事件の解明に励んでいる。物語の縦軸となるのは転落事件。そして横軸となるのは、春から秋にかけての四つの小さな事件である。その四つの事件の顛末にはそれ程驚きはなかった。しかし最後に解き明かされる転落事件の真相には意表を突かれた。唖然とした。前作も好きだったけど、今回もものすごくいい。どういいのかは、本書を読んでくださいまし。

七海西高校の文化祭。その最中に彼女は西校舎屋上の破れたフェンスから抜け出て、そして地上に転落した。その瞬間を見た者はいない。でも屋上には人の気配があった。彼女は一人じゃなかった。警察の見解通り、これは単なる不慮の事故なのか? だが、この件に先立つ春から晩秋にかけて春菜が奔走した、学園の子どもたちに関わる四つの事件に、意外な真相に繋がる重要な手掛かりが隠されていた。「冬の章」

一之瀬界は小学六年生。四年前、県境の崖下の道路に倒れているのを発見された。幸い彼は気を失っているだけだったが、当時二十六歳の母親はもともと病気だったらしく、崖の途中で倒れたまま亡くなっていた。彼らは二人家族だったが、住む家もない状態だったらしい。そんな状態で母親がどうしようとしていたのか、どこへ行こうとしていたのかはわからない。界は静かに言った。母さんに殺されそうになった。「春の章-ハナミズキの咲く頃」

養護施設の合同行事であるサッカー大会が開催された。城青学園の男の子たちがかっこいい。女の子たちの黄色い声が飛び交い、やがて試合終了のホイッスルが吹かれた。彼らはグラウンドからベンチ奥の通路に向かった。通路の外では女の子たちが何重にも人垣を作っていたし、グラウンドに戻れば観客の目があった。会場の出入り口にも職員がいた。なのに、更衣室、トイレ、倉庫、順に見ていくが、城青の少年たちの姿はなかった。「夏の章-夏の少年たち」

夏休みの終わりにひばり寮に入所してきた新顔がいる。中一女子の樹里亜は多くの子と違い、初めから堂々として不安な様子も見せず、すぐに周りに溶け込んでいるように見えた。その樹里亜が持ってきた寄せ書きがなくなった。犯人は学園の中一女子をリードしているエリカだった。エリカは「捨てた」「場所は忘れた」と言うだけで、居直って、自分を追い込んで、他の子からも見捨てられそうで。そして、データーが読めないCD-R事件。「初秋の章-シルバー」

つばめ寮に入っている望は七海学園に来て三年目、五歳の女の子だ。二歳までは普通に育てられてきたが、水商売をしていた母親が望を置いて家出。原因はDVとされている。父親はヤクザで、ストーカー的な資質があったようだ。父親はいなくなった母親の行方を執念深く追う過程で傷害事件を犯し逮捕された。その父親が刑務所を出所したことがわかった。そこに見るからに剣呑な人物が「娘に合せろ」と刃物を持って乗り込んできた「晩秋の章-それは光より速く」

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    2010

10.01

「Nのために」湊かなえ

NのためにNのために
(2010/01/27)
湊 かなえ

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タワーマンションで起きた悲劇的な殺人事件。会社員の野口貴弘さん宅で、野口さんと妻奈央子さんが死亡していると通報が入った。警察は現場に居合わせた四名から事情を聞く。夫妻の知人である大学生の杉下希は血の付いた凶器を握ったアパートの隣人・西崎を見たと証言し、西崎真人は夫に刃物で刺された浮気相手を目撃して夫に復讐したと自供し、フレンチの出張サービスに訪れた成瀬慎司は二人に事情を聞いてから警察に通報した。その直後に現れた杉下らの友人であり野口の部下でもある安藤望は、玄関前で警察官や救急隊と鉢合わせをした。西崎に言い渡された判決は懲役十年。

事件から十年が経った。その人のためなら自分を犠牲にしてもかまわない。その人のためならどんな嘘でもつける。その人のためなら何でもできる。その人のためなら殺人者にもなれる。みんな一番大切な人のことだけを考えた。一番大切な人が一番傷つかない方法を考えた。自分が守ってあげたことを、相手は知らない。知らせたいとは思わない。あの事件に関わった人たちが、誰のために、何をやったのか。どうしてそんなことができたのか。事件の真相は別の所に隠されていた。すべては「N」のために。

これは叙述ミステリの形式をとった群像劇でしょうか。エリート夫婦が殺された事件は関係者の証言によって終止符が打たれた。しかしそれは嘘で捻じ曲げられた結末だった。十年後、関係者の一人ひとりがその当時を回想し、各々がついた嘘が原因で、見えなくなった本当の真相が見えてくる。そこには各人物の育った家庭環境や、今も引きずる過去のトラウマなどがあいまみれ、語るべによって何が真実なのかが揺れ動く。要するに小さなドンデン返しの連続が起こる。また視点が変わることによって、各々の人物像も変化していく。

読み終えた時点の感想を言えば、よくできた作品だった。しかし「告白」のように心が震える作品ではなかった。彼らが計画して実行したあれこれ。仕掛けとしては面白かった。だが悪意を含めて、全体的にあっさり風味で、期待していたほどの満足感を得ることができなかった。これが湊作品でなければよしとするかもしれないが、オチのインパクトも控え目で、らしくない作品であったように思う。しかし今後も追い続けたい作家であることに変わりはない。

湊かなえさんのサインもこれで四冊目。

湊Nのために

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湊かなえ
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