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    2010

11.27

「僕のエア」滝本竜彦

僕のエア僕のエア
(2010/09)
滝本 竜彦

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定職もなく、生き甲斐もなく、友もなく、恋人もいなく、当然のことながら貯金も少ない。おそらく地球が百人の村だとしてもトップクラスにクダラナイ生活を送っている二十四歳男子。孤独と引き替えに得た自由を満喫するフリーダムフリーター。それが俺こと田中翔。

バラ色結婚生活を夢見ていたスミレ姉ちゃんから来た結婚式招待状で幻覚妄想だったことを思い知らされ、同窓会で梢とのフォーリンラブ願望もゆめまぼろしに終わり、街で不良とケンカして暴行を受け、飛び出した車道でカローラに跳ね飛ばされ、俺は空中で臨死体験した。だがそのとき俺は気づいた。電信柱の陰から見つめているヤツに。

空気みたいに透明だった。彼女は俺にしか見えない。いつも側にいるエアです。恥ずかしかったから、いままでコッソリ隠れていました。でもこれからは二人で一緒に夢を見ようよ。どんな夢でも私があげます。素敵な希望を沢山あげます。希望や夢を俺に与えようとするヤツ。不思議少女エアが現れた。

奇跡の一冊でデビューしたものの、そこから新たな発展や成長ができずに、やむを得ずじたばたしてみました。まことに勝手で失礼を承知しつつ、そんな印象を受けた。萌え系不思議少女が意図不明な行動を取り、草食系のダメ男が幻覚妄想し絶望する。はっきり言って、この設定を繰り返しているだけでは読者は離れていく。

次回作が出れば読む作家リストに入っていたが、次もこうだとその次はない。ワンパターンのコンビも三作続くとさすがに飽きる。そこを卒業して、新たなひきこもり道を進んでもらいたい。設定も部屋や押入れだけではなく、天井や床下だってあるのだから。ファンだから一言物申す。突き抜けろ。

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    2010

11.23

「神様のカルテ 2」夏川草介

神様のカルテ 2神様のカルテ 2
(2010/09/28)
夏川 草介

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夏目漱石を敬愛する栗原一止は、相変わらず温厚篤実の一内科医として不眠不休で働いているし、本庄病院は、外来・病棟、昼夜を問わず満員御礼の大盛況だ。とれほど大繁盛でも玄関わきの「24時間、365日」の看板は下ろすつもりはないらしく、劣悪な労働環境は日ごとに威勢を増し、命を削って働く医師たちもそろそろ削る部分もなくなって、幽鬼のように院内をさまよい歩いている。

そんな本庄病院の内科病棟に、東京の有名病院から新任の医師が赴任してきた。進藤辰也。彼は一止にとって、学生時代の数少ない友人のひとりであった。進藤は、生来の努力家であり、応対は紳士的で頭脳は明晰という模範的医学生で、医学部の良心と呼ばれた男だ。ところが進藤の加入を喜ぶ一止に対し、同じく同期の砂山次郎は複雑な表情をする。進藤の評判はすごく悪かった。久しぶりに再会した友は、なぜかすっかり変わっていた。

進藤の不評判な態度は想像の範囲内だが、そのあと第二弾の激震が襲ってくる。今回は忙しい。そして死と向き合うことが度々だ。一止と進藤を繋ぐ言葉。良心に恥じぬということだけが、我々の確かな報酬だ。大狸先生と古狐先生の約束。この町に、誰もがいつでも診てもらえる病院を。医者が命を削り、家族を捨てて患者のために働くことを美徳とする世界。夜も眠らずぼろぼろになるまで働くことを正義とする世界。そんな中、彼らは、医師は医師である前に人間であろうとする。

前作にひきつづき目頭が熱くなるエピソードに事欠かない。また絵描きの男爵や屋久杉くんとのユーモアある会話も心憎い。進藤や次郎との友情も微笑ましい。もちろんイチさんとハルさんの甘い関係も健在だ。だけど、前作にはあった深い感動や、読了後の充実感は期待したほどではなかった。いいお話で、こんな医師がいる病院なら前作同様にかかりたいと思う。でも面白いと思いつつ、琴線に響いてこなかった。個人的な好みはあるだろうが、次回作に期待かな。

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    2010

11.20

「マイナークラブハウスは混線状態」木地雅映子

マイナークラブハウスは混線状態―minor club house〈3〉 (ポプラ文庫ピュアフル)マイナークラブハウスは混線状態―minor club house〈3〉 (ポプラ文庫ピュアフル)
(2009/11/06)
木地 雅映子

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桃李大学付属、那賀市桃李学園。 文武両道の有名私立大学に付属する中高一貫校である。その高等部の一角に、部員5人未満のため非公式な存在の文化部ばかりが集い、「マイナークラブハウス」と通称される古ぼけた洋館があった。
ウクレレ部、園芸部、演劇部、思想研究会、歴史研究会、和琴部――の部員たちは、自由気ままに青春を謳歌……しているように見えるが、一筋縄でいかぬのが思春期というもの。帰国子女で喋り方のおかしな演劇部長・畠山ぴりか、理知的で「女友達いないタイプ」ながらぴりかと心を通じさせる福岡滝、不気味な容貌でぴりかを「敵視」する園芸部長・天野晴一郎、軽音楽部と演劇部をかけもちし二面性を持つイケメンの八雲業平、バレー部でいじめられ不本意ながら演劇部に転部した内田紗鳥といった面々は、それぞれの胸に複雑な想いを抱えながら、学園での日々を生きている。
思春期を旅する「普通じゃない」少年少女たちの日常を描き、面白いのに不思議とジンとくる最先端の学園小説。微妙な均衡のうえに成り立っていた関係性がほころび始め、恋が恋を呼ぶ新局面に突入!?

なんか違和感ありありな理事長の過去回顧で始まる「桃園惣一郎、扉の向こうを垣間見る縁」は、辛気臭くて面倒だけれど、読者なら知っている新入生部活勧誘会の裏側が面白い。おれ病んでます的な「遠野史惟、生身で箱庭に捕われる縁」は、えげつなく嫌な奴だけれど、ぴりかの天然に史惟共々癒された。「内田紗鳥、青春の内側から出自を観照する縁」も家庭に問題があるお話。類似した設定が続く意図は何? でも筋肉少女隊はウケた。「本宮祐介、少年時代の終わりの鐘を聞く縁」は、とにかく飢えた田舎の男どもがかわいいの。「高杢海斗、為す術もなく渦中に佇む縁」は、クラブの面々の胸の内が明らかにされると結構重いことがわかって。「おまけ・マイナークラブハウスの縁談」は、恋、恋、恋。でも一方通行の恋で。

タイトルは混線だけど、迷走、暴走? 前作までのわちゃわちゃした楽しさは影をひそめ、本来の木地作品にある暗い色が濃くなってきたように思う。元々個性派が集まったマイナークラブハウスの住人たちも、よりカオスな雰囲気が漂うようになり、そして次回作は「恋わずらい」ってまだまだこのカオスが続きそう。ちょっとしんどいかも。ぴりかには着ぐるみできゅうり泥棒を。天野はそんなぴりかを追いかけていて欲しい。期待する物語のテンションと違うベクトルへ進み始めたが、でも続きが気になる終わり方だった。さて、どこへ行くのか。

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木地雅映子
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    2010

11.18

「寝ても覚めても」柴崎友香

寝ても覚めても寝ても覚めても
(2010/09/17)
柴崎 友香

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一九九九年、大阪。二十二歳の朝子は、一目惚れした彼と同じ日に二度会って付き合い始めた。彼は、麦(ばく)、という名前だった。どこか現実感に希薄な人。時々ふらりと行方不明になってしまう癖がある。そして上海に行ったきり、麦からの連絡は途絶えた。二〇〇五年、朝子が東京に引っ越して二年以上が経ったある日、目の前に麦と同じ顔の人が現れた。麦は、麦と同じ顔をした亮平だった。朝子はやがて亮平と付き合うようになる。ところが二〇〇七年、テレビ画面の中に一人の男の顔が大きく映った。すぐにわかった。麦だった。テレビの中、街頭のポスター、広告のサイトのCM、麦の顔を見ては朝子の気持ちが揺れていく。そして、朝子は麦と再会する。

先に読んだ著者のエッセイ集「よそ見津々」と、主人公の朝子の行動や彼女が見る風景とがダブることに気づく。常にカメラを構えて、季節感ある都会の街並を繊細に見て、著者がテレビっ子を宣言する通り朝子もテレビをいつもつけている。著者の小説の作り方みたいなものが何となく見えてとても面白かった。

読み始めはいつものように淡々とした日常を描いた作品だけど、途中からめずらしく恋愛がからんでくる。しかもこの恋愛がやっかいなもので、爽やかでもなく、ネチャネチャもしてないし、ドロドロもしていない。一言でいえば、これが柴崎風の恋愛なのか、とにかく淡々としている。友達や仕事を失うような、まことに身勝手な恋愛なのにだ。

そんな朝子や麦を好きになれるかは別にして、これが予想に反してぐっときた。ラストが近付くにつれ泣きそうになった。これまで読んだ中で一番心に残る作品。でも内容が人としてどうなの的な内容なだけに、読者の好き嫌いが分かれるだろうなと思っていたら、本書で第32回野間文芸新人賞を受賞という情報が飛び込んできた。この作品に胸を詰まらせた読者にとってはグッドニュース。そして、野間文芸新人賞受賞おめでとうございます。

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柴崎友香
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    2010

11.16

「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」万城目学

かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)
(2010/01/27)
万城目 学

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半年前、ふらりと家にやってきたアカトラの猫に、「マドレーヌ」と名前をつけた女の子は、六年前、お父さんとお母さんから、「かのこ」という素敵な名前を与えられた。かのこちゃんは小学一年生の元気な女の子。かのこちゃんの知恵は突然、啓かれた。急に「これは何?」「あれは何?」と大きな声で、お父さんとお母さんに疑問をぶつけ始めた。

言葉を知ると、新たな世界が照らし出される。「ふんけーの友」という言葉を知った一週間後のこと、かのこちゃんは本物の「ふんけーの友」に出会うチャンスを得た。相手はクラスメイトの女の子だった。ひと目見たときからその子のことを、「こやつはできる」とかのこちゃんは確信した。それが、すずちゃんだった。

いつの日から、一匹のメスのアカトラが、その名前に「夫人」と添えて呼ばれるようになったのか、今となっては定かでない。だが、その理由の一つが、「外国語を話すことができる」という点にあったことだけは疑いない。猫のマドレーヌ夫人の夫は玄三郎。かのこちゃんのうちに飼われている老いた柴犬だ。犬の言葉は、猫の世界で「外国語」だった。

なんかふつうと思っていたら、途中から笑える要素がたっぷり。人と猫の組み合わせはよくあるパターンで猫好きの作家にとってはおはこと言えるコンビだ。だけど、こういう描き合わせを読むのははじめてだ。やったな!万城目。ありそうでなかった展開だ。しかも女の子目線と猫目線の両方ともがおもしろい。

そこに混じってくるのがファンタジックな要素。はじめは嫌な感じ。なんでこんなものを導入したんだと疑問。だけど、この不思議要素が後にくればくるほど効果的だったことに読者は気づく。ミステリでいう伏線だったのだ。そして気になるのは、かのこちゃんのお父さん。鹿語が話せるってあの人? おすすめの一冊です。


万城目学さんのサイン。

万城目3

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万城目学
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    2010

11.14

「背表紙は歌う」大崎梢

背表紙は歌う (創元クライム・クラブ)背表紙は歌う (創元クライム・クラブ)
(2010/09/11)
大崎 梢

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井辻智紀の勤める明林書房は規模としては中の中。文芸書を扱う出版社の中では一応、老舗と呼ばれている。往年のファンは多く、最近では若い読者の取り込みにも力を入れ、毎月の新刊点数は文庫を入れて二十点前後。いっこうに上向かない出版不況の中にあって、なんとか荒波をしのいでいる。学生時代のアルバイトを経て、卒業と同時に正社員として採用された配属先は営業。個性的な面々に囲まれつつ奮闘する出版社の新人営業マンの活躍を描いたシリーズ第二弾。

「ビターな挑戦者」
大手取次会社の一階ロビーで、まったくの初対面の相手から、ありえないほど露骨な暴言を浴びせかけられた。「売れない本をちまちま作るんじゃねーよ」と。異端児であり、変人である通称デビル大越。先輩たちによれば、デビル大越とやらは二年前まで書店と直にやりとりする仕事に就いていたらしい。そのデビルの素性とは。

「新刊ナイト」
新人作家の白瀬みずきの新刊はどこに行っても期待の声を聞く。舞台は高校、内容はダークでダーティ。かなりの問題作であり、自伝的要素が強いとも聞いた。今回書店員さんに会うだけならと、書店への挨拶まわりとサイン本作りの了解をもらった。そこに、まさか、かつての同級生が書店員になっているなんて。

「背表紙は歌う」
ベテラン営業ウーマンの久保田さんは、同好の趣味の相談相手であり、本業である営業職においても大先輩だ。その久保田さんから、新潟に出張中の真柴に頼んで欲しい事があると言われた。元旦那が経営する老舗書店のまわりに不穏な噂が流れているので、店の雰囲気だけでも見てきてもらいたいということだった。

「君とぼくの待機会」
日本有数の文学賞の候補作が発表になり、明林書房の本もこのたび初めて候補に入り、社内は華やかに浮き立っていた。今回の受賞作はすでに決まっている。そんな噂が書店員たちに流れていた。それだけならまだしも、当の先生方の耳にも入ってしまった。ありえないデマの真相を究明することになり。

「プローモーション・クイズ」
明林書房の主宰する新人賞に輝いた作家の受賞第一作が発売される。そこでにぎやかに並べたいのが推薦コメントだ。今どきは書店員さん。強い発言力がある上に、じっさいの売り場でも積極的な販促活動が期待できる。コメントを寄せてくれたのは成風堂。一枚は普通の推薦文だが、もう一枚はなぞかけみたいな文。なぜこんなものを書いたのか。

出てくる人物たちが魅力的で、書店や出版社の裏側も興味深く、どれもがちょっといいお話で、とにかく本への愛が溢れた作品。やっぱり大崎さんは、児童書のような冒険談よりも、本にまつわる作品の方が生き生きしているように感じた。そして読むほうにとってもそれは言える。楽しくて楽しくてワクワクしっぱなしなのだ。本好きなら絶対に外せないシリーズ作品。もちろん成風堂もネ。

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大崎梢
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    2010

11.13

「桜石探検隊」風野潮

カドカワ学芸児童名作  桜石探検隊カドカワ学芸児童名作 桜石探検隊
(2010/09/22)
風野 潮

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主人公は小学五年生の金石剛。すごく強そうな名前なのに、剛は小さいころからとても内気で気が弱かった。だから、仲良くしゃべる友だちもほとんどいない。性格が暗いわけではない。いろいろ頭の中では考えているのだけれど、それを口に出して人に話すことがどうも苦手なのだ。趣味は石集め。毎日のように近くの河原で石探しをしていた。心がホッとするようなきれいな石たちが、剛は大好きだった。

だから、石をつないだブレスレットをうれしそうにながめる鮎川さんを見て、剛はふっといい考えを思いついた。お守りのようにいつも持ち歩いていた赤い石を、鮎川さんにあげよう。ところが、河原の石なんてきたない、鮎川さんは赤い石を放りだした。そこへ転校生が教室の中に入ってきた。丹羽あずりです。公園通りに鉱物と化石のお店「ストーン・ガーデン」がオープンしましたので、よろしくお願いします。

剛の赤い石の名前はジャスパー。鉱物に詳しい丹羽さんに教えてもらった。さらにジャスパーを見つけた河原に案内してほしいとお願いされた。集まったのは、丹羽さん、小林一郎くん、秋山ルリさん。みんなで拾い集めた石を持って帰るころには、いつのまにか剛、あずり、一郎、ルリと、下の名前で呼び合う友達になっていた。それと共に、石探しはクラスのブームになって。登場する子どもたちがひと昔まえの子どもタイプで、児童書らしい児童書かなと思う。

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風野潮
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    2010

11.11

「ガーデン・ロスト」紅玉いづき

ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)
(2010/01/25)
紅玉 いづき

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誰にでも、失いたくない楽園がある。息苦しいほどに幸せな安住の地。しかしだからこそ、それを失うときの痛みは耐え難いほどに切ない。誰にでも優しいお人好しのエカ、漫画のキャラや俳優をダーリンと呼ぶマル、男装が似合いそうなオズ、毒舌家でどこか大人びているシバ。花園に生きる女子高生4人が過ごす青春のリアルな一瞬を、四季の移り変わりとともに鮮やかに切り取っていく。壊れやすく繊細な少女たちが、楽園に見るものは―。

愛の作家も学生時代はひりひりした環境に置かれていたのか。お人好しゆえに文通相手や周囲のウソにだまされたふりをし続けるエカこと草野江香、寂しさゆえに誰かと一緒にいたいマルこと加藤満、女に生まれたことにコンプレックスを抱いているオズこと小津梨々花、母親からの過剰な期待に縛られ心も体も痛めているシバこと芝奈保子。四人だけの放送部員たちが、春、夏、秋、冬と、季節ごとにバトンリレーしてゆく連作短編集。

男子には到底わからない、女子ならではのひりひりした世界が描かれている。優しいわけじゃない。優しくされたいだけ。私は、私ではない誰かになりたかった。その、殺人的なほどの無神経さはいっそ笑えた。未来が途方もない先に見えるように、過去もまた取り返しがつかないくらい後ろに見えた。このように時々ドキリとするような表現があって、その度にページをめくる手を止め考える。

そんな彼女たちが安心する場所、無意識のうちに足を向けてしまう場所。それが四人だけの放送部の部室であって、三年間の間に築いたのは、他の人が入る余地もない四人だけの絆。共感できる女子はいなかったけれど、こうして関係を磨耗して、疲弊して、嫌悪して、それでもくっ付いて、離れて、仲直りして。男子にはない、女子ならではの、許しあう友情に泣けた。

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紅玉いづき
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    2010

11.09

「光待つ場所へ」辻村深月

光待つ場所へ光待つ場所へ
(2010/06/24)
辻村 深月

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「しあわせのこみち」「チハラトーコの物語」「樹氷の街」 この三編を収録したスピンオフ短編集。辻村作品の持ち味のひとつ、それは作品間の繋がり。つまり登場人物のリンクにある。見つけた時には、キタ!という感じだろうか。前回の「ロードムービー」では、わかりにくいリンクだったけれど、今回の作品はわかりやすい。

「しあわせのこみち」では、「冷たい校舎の時は止まる」に登場した清水あやめと鷹野博嗣。「チハラトーコの物語」では、「スロウハイツの神様」に登場した加々美莉々亜と赤羽環。「樹氷の街」では、「名前探しの放課後」に登場した天木や秀人や椿、「凍りのくじら」に登場した松永くんと家政婦の多恵さん、そして芹沢理帆子さん、と。

「しあわせのこみち」
世界を強く見るのには、能力がいる。感性という武器がいる。そしてその武器を持っている人間は選ばれた一握りの人間たちだけだろうと思っていた。清水あやめ、T大学文学部二年生。感性を武器に絵を描いてきたという自負があった。たった三分間のフィルムが見せた世界は美しかった。生まれて初めて味わう、圧倒的な敗北感だった。田辺颯也。それが彼の名前だった。

「チハラトーコの物語」
チハラトーコは芸名。本名の千原冬子をカタカナにしてある。ガチに美形でスタイルよくて、ガチに博識でオタク。そして千原冬子は、嘘つきだ。自分を嘘のプロだと自負している。観客のいない嘘はつまらない。話した相手を楽しませることができてこそ、嘘話には初めて意味が宿る。恩師、モデル仲間、強気な脚本家との出会いが彼女にもたらすものとは?

「樹氷の街」
中学校最後の合唱コンクール。天木が指揮をやることはすぐに決まった。その後決めた伴奏者に、倉田梢は自分から立候補した。合唱練習が始まって数日しても、倉田梢のピアノは途中で止まり、歌声もバラバラ。クラスメイトたちの関係もギクシャク。そんな時、天木は友人の秀人や椿から、同じクラスの松永郁也が天才的なピアノの腕を持つことを知らされる。

自分は特別だという自意識ゆえの傲慢さや挫折感。飾るためについているはずの嘘が、自分をしばって身動きできなくしていく。「しあわせのこみち」「チハラトーコの物語」に共通するのは痛さ。これら痛さには共感なんてできないが、自分の感情と向き合って、今から一歩踏み出す姿に救われる。それにしても、ここ最近の辻村作品はひりひりした感情描写に凄味が増したように思う。その一方「樹氷の街」はオールキャストによる青春小説。こういうのもいい。というか、久しぶりに泣かされた。


辻村深月さんのサイン。

辻村3

二度目のサイン会に参加したならではのおまけは、月印がふたつ。次は月みっつ、もらおう。

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辻村深月
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    2010

11.07

「和菓子のアン」坂木司

和菓子のアン和菓子のアン
(2010/04/20)
坂木 司

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手に職はない。かといって専門学校に行くほど好きなことも見つかっていない。でも、大学に行きたいって思うほど勉強が好きじゃないし、いきなり就職っていうのもピンとこなかった。せめてバイトでもしながら「ピンとくる何か」を探した方がいいと思った。梅本杏子、十八歳。身長百五十センチ。体重五十七キログラム。小学校の頃のあだ名は「コロちゃん」。才能も彼氏も身長もないくせに、贅肉だけは売るほどある。そんな彼女がふと目にしたのは、デパ地下の和菓子屋の求人募集。杏子は、和菓子舗・みつ屋でアルバイトを始めた。

みつ屋の面々が個性的だ。いかにも上品そうな見かけの椿店長の中にはおっさんが住み、満面の笑みで接客しながらも、株価が気になってしょうがない。職人志望のイケメン立花さんには乙女が住んでおり、きりりとした表情の後で、両手をもじもじ組み合わせている。女子大生の桜井さんは元ヤンで、言葉遣いがおかしくなる時がある。そうした人たちに囲まれ、少しずつ仕事に慣れていく杏子だが、お客様もなかなか個性的で。杏子の成長と、季節の和菓子にまつわるミステリ。

女性に好かれるライトノベル的な作品かな。そして甘い食べ物ばかりが登場するので、甘党の方が読むとよだれ垂涎かも。また和菓子のひとつひとつに物語があったなんて、ここではじめて知った。甘いものが食べられない人なので、これまではショーケースをじっと見ることなど皆無だったけれど、今度見てみようかなと思ったぐらいだもの。でも買わないし、食べません(笑)

ミステリとしては、読者が謎を推理するような参加型ではなく、椿店長の頭の切れを愉しむような展開で、それよりもその奥に秘められた人間ドラマを読ませるような作品だったと思う。でも一番の魅力はキャラの濃さにあった。彼女たちの言葉のやり取りに何度笑わされたかことか。また和菓子屋さんだけでなく、百貨店の事情も興味深くて堪能できた。そして過去作「切れない糸」とのリンクを見つけた時には、おもわずニヤリ。


坂木司さんのサイン。

坂木アン

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坂木司
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    2010

11.04

「よそ見津々」柴崎友香

よそ見津々よそ見津々
(2010/09/23)
柴崎 友香

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地図を片手に、カメラを提げて、よそ見は、めっちゃおもしろいことに出会える。ファッション、料理、映画、本、友人とのおしゃべり、そしてよく見てみるとヘンな人…… 注目の女性作家による初の本格的エッセイ集!!

新刊と思い、手に取ったら、あれれ?これってエッセイだったんだ。しかもエッセイとしては、本が分厚い。エッセイが苦手なので、若干身構えつつ読み始めたところ、とても自然体で、意見の押し付けもなく、すごく読みやすい。そう、まるで柴崎小説の中の主人公の目線のようだ。そんな何気ない日常の中に共感があり、一方で、独自の視点で見ているところに新鮮さを感じる。

柴崎作品の主人公たちは捉えどころがない。ふわふわしている。また変てこな友人たちに囲まれている。でてくる男友達はまるで宇宙人のよう。このエッセイを読むと、そのネタが著者自身の周辺にあったことに気づく。また複雑な街並みを器用に見ている。地図を見るのが好き。そう語る著者の作品は、なるほど街の目印があふれている。そんな彼らの関西弁で語られる軽妙な会話と、季節感あふれる都会の風景。そんなふつうを読ませるのが柴崎作品で、このエッセイでも同様だった。

そしてどこにでも転がっているものを面白いと見つける観察眼をうらやましく思った。それは違うと、隣の見ず知らずの人の会話に、勇気をだして話しかけることができるのか。このエピソードひとつを取っても、誰もが経験することだと思う。でもふつうはそこで自然とストップする。しかし著者はそこからさらに話題を広げる。読者は、あるあると共感し、そのうえ面白味を感じることになるのだ。

そして読み応えがあるのは、作家としての書評や映画評や自作解説。読んだことがある本やまだ未読の本たち。好きな作家の読書って、気になる分野だ。また個人的に、同年代の同じ大阪人なので、大阪ローカルのネタや同じ時代を見てきたことなどは特に共感することができた。エッセイは苦手だけど、これはふつうに楽しかった。でもやっぱり読みたいのは小説。エッセイで綴るのもいいけれど、小説の執筆もよろしく。

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柴崎友香
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    2010

11.02

「吉祥寺の朝日奈くん」中田永一

吉祥寺の朝日奈くん吉祥寺の朝日奈くん
(2009/12/11)
中田 永一

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「交換日記始めました!」
恋人同士の圭太と遥が内緒で交わしていた交換日記。二人だけの秘密だったはずが…。

「ラクガキをめぐる冒険」
高校二年のときにクラスメイトだった遠山真之介。五年後の今、不思議なことに同級生の誰も彼のことを憶えていないのだ。

「三角形はこわさないでおく」
ツトムと小山内さんと、俺。ツトムは小山内さんが気になり、小山内さんは…? 微妙なバランスの三角関係の物語。

「うるさいおなか」 私のおなかは、とてもひんぱんに、鳴る。そのせいでどうしても積極的になれなかった私の前に、春日井君があらわれて…。

「吉祥寺の朝日奈くん」
山田真野。上から読んでも下から読んでも、ヤマダマヤ。吉祥寺に住んでいる僕と、山田さんの、永遠の愛を巡る物語。

ずっと前に買って読まずにいた本。読んで思ったことはひとつ。やっぱ中田永一の恋愛小説はすごい。この構成力はハンパじゃない。恋愛小説としては、すごくカタチが歪んでいる。だが一編を読むたびに、何かしらの想いに胸がドキドキし、じわじわと心が疼く。そして、恋愛らしからぬ展開が繰り広げられていても、ラストを読むと、これは恋愛小説だった、と気づかされるのだ。

まったく先が見えてこない交換日記の行方に、おお!こうきたか。落書きをきっかけにした結果の繋がりで、おおお!こんな展開は予想外。もどかしい三角関係に気づいた結果に、おおおお!でもさもありなん。そんな風に、作品を読みすすめる度に期待度が高まる。おなかの音がうるさい少女にいたっては大爆笑。ラストのあれは、読み始めは抵抗あるけど、最後まで読むと、とってもいい作品だったと気づく。

読む人によって好きな作品は違うかも。でもトータルのレベルは高い。誰もが、おおお!と一度は驚きながら感心する。変則的だけど、こんな恋もあるなー、読んで良かった、と納得する格別の一冊だった。


中田永一さんのサイン。

中田1


おまけ。

乙一

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