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    2010

12.29

「at Home」本多孝好

at Homeat Home
(2010/10/27)
本多 孝好

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第一話の「at Home」は、わきあいあいとした家庭ながら、父さんは空き巣、母さんは結婚詐欺師、長男の僕は偽造屋。小学生の弟はひきこもりで、家事を健気にこなす妹は中学三年生。高校受験を控えた妹の進学資金を稼ぐため、母さんは危ない橋を渡った。その結果、同じ穴の狢の罠に嵌まって、母さんは身代金目的に誘拐された。前半の楽しい家族の団欒と、後半の不足の事態に陥ったときの彼らの行動に、これこそほんとの家族の絆だと思った。

次の第二話「日曜日のヤドカリ」は、義理の父娘の同士愛のお話。三十二歳の俺は二つ年上の真澄にプロポーズをし、九歳の女の子の父親になった。一緒に暮らしてみれば、真澄の言う以上に弥生さんはいい子だった。真澄が同窓会にでかけたある日曜日、弥生さんと家でのんびり過ごしていると、そこに父親の行方を探す少年が訪ねてきた。まさか真澄が駆け落ち? 義父と弥生さんの関係が微笑ましい。そして健気さに胸キュン。

第三話の「リバイバル」は、外国人妻との偽装結婚。かつては仕事も家庭も持っていた。だが、失職をきっかけに離婚し、世捨て人のようになった。闇金に借金を返すために働く。働いて返す。それが繰り返される日常に慣れていた。ところが金貸しから借用書を返す代わりに、異国の女と結婚しろと迫られた。そして連れてこられた女はすでに妊娠していた。少しずつ芽生えてくる感情の変化と、それに対する切なくも温かなラストに感動。

最終話の「共犯者たち」は、大人になっても奔放なままの妹の幼児虐待を知った兄。意地悪だ、というのが、妹の茜に対する大方の同性の見方だ。産んだ母でさえそう言う。僕の妻もそう言う。五歳の僕の娘ですらそう言う。今の僕の心配はもっぱら茜の息子に向いている。こんな母親に育てられて、こいつの人生はいったいどうなるのだろうと。そんな四歳になった甥っこの身体に虐待の後があることに気づいてしまった。ばらばらになった家族によるザッツ・エンタメ。ラストを飾るのに相応しい作品だと思う。

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本多孝好
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    2010

12.24

「ツナグ」辻村深月

ツナグツナグ
(2010/10)
辻村 深月

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たった一人と一度だけ、死者と生者を再会させてくれる人がいるらしい。死んだ人間と生きた人間を会わせる窓口。それが、使者―ツナグと呼ばれる人たち。辿りつけるかどうかは、主に三点にかかっている。その存在を知っているかどうか、知って信じるかどうか、そしてそこからの運。都市伝説のような噂を頼り、会いたいと願って再会する人たち。

突然死したアイドルに憧れる冴えないOL。半信半疑ながら癌で逝った母に会いにいく本家の長男。喧嘩別れした親友を死に追いやってしまったのかもしれない女子高生。失踪した婚約者を七年間も待っているサラリーマン。そして使者―ツナグを祖母から引き継いだ少年。大切な人を失った後悔を抱えながら、どう生きればいいのか。誰もが直面する苦悩に挑んだ連作長篇ミステリ!

人付き合いが下手で、いつも一人ぼっち。常に憎まれ口をたたいて、高圧的に人を見下す。身勝手でわがまま、自分が一番でなければ許せない。あいた、た、た、たっ。辻村作品では痛い主人公に慣れっこだけど、今回の人たちは相当醜い。フィクションとわかって読んでいても、それでも腹が立つ人ばかりだ。そんな苛立たしい主人公たちも、望んだ死者に会えば…。

こうなってくれたらいいのに。その希望は概ね叶えてくれる。死者と会うことで、人生を先に進める人たちがいる。その一方で、必要なことを伝えなかったせいで、一生そのことを引きずらなきゃならなくなった人もいる。すべてをハッピーエンドにしないこのあたりの匙加減はさすがだった。安心して読める一冊。読んで損はないと思う。

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辻村深月
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    2010

12.21

「ラプソディ・イン・ラブ」小路幸也

ラプソディ・イン・ラブラプソディ・イン・ラブ
(2010/10/21)
小路 幸也

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それは久しぶりに家族全員が集まった際の、ごく普通の家族の過ごし方と変わらないものだった。日本の映画界を支えてきた名優笠松市朗と、前妻で伝説の女優四之宮睦子。長男で名脇役の園田準一。異母兄弟で人気俳優の岡本裕。その婚約者で人気女優の二品真里。この映画は、不思議な映画だ。確かに家族の日常を撮るものだ。そういう意味ではドキュメンタリーだ。だがしかし、家族を演じる、というドラマでもある。

一度は解体した家族がもう一度映画を撮るために集まり、その家族を演じる。それが市朗と睦子と準一だ。さらに、家族にならなかった血を分けた者同士が集まり、新しい家族を演じる。それが、市朗と準一と裕だ。加えて、新しく身内となる者同士が互いにその絆を深めるドラマが、父と準一と裕と真理ちゃんだ。

準一と裕は、お互いに父に捨てられた子供同士だ。同じ境遇同士の、しかし決定的な違いは、準一はかつて父を憎んだ時期があり、裕はずっと憧れ続けていたということ。準一が俳優になったのは、ある意味父に意趣返しをするような気持ちがあり、裕は憧れから同じ場所に行きたかったという理由。

新しい家族を演じる。それが可能なのは、全員が役者だったという偶然だ。そして紺田監督は言った。それぞれに、それぞれの事情の中にある、この家族の平和な日常に投下される爆弾を胸の内に秘めておくこと。そしてそれを自由なタイミングで投下させる。この仕事で唯一、監督権限で、しなければならない約束事。これは俳優笠松市朗の最後の映画。家族で過ごす、最後の時間。

演技と素が交じり合う家族の時間。そしてそれぞれが秘めている爆弾。変則的な設定だが、これも家族愛なのだろう。知らず知らずのうちにこの摩訶不思議な世界観に引き込まれていた。しかしどこがどう面白かったとか、そういう具体的な指摘はできそうにない。ただ漠然と面白かった。そして彼ら家族の日常の情景が目に浮かんだ。惜しいのは、真理ちゃんの爆弾が処理されずに終わったことぐらいか。

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小路幸也
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    2010

12.16

「おやすみラフマニノフ」中山七里

おやすみラフマニノフ (『このミス』大賞シリーズ)おやすみラフマニノフ (『このミス』大賞シリーズ)
(2010/10/12)
中山 七里

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柘植彰良は愛知音大の理事長・学長であると共に、稀代のラフマニノフ弾きと呼ばれる名ピアンストだ。学長の参加する演奏曲は定期演奏会の目玉だ。しかも今回は選抜メンバーではなくオーディションで決定するという。つまり国内外の音楽関係者が一同に会する場で、才能ある若き演奏家たちが腕前を披露する。事実、過去の定期演奏会で学長のバックを務めた者の多くがプロオケに入団している。さらにコンサート・マスターに任命されれば準奨学生という扱いを受けて後期授業料が丸々免除される。しかも名器ストラディバリウスを奏でることができる。

定期演奏会を控え、ヴァイオリンを専攻する貧乏音大生の晶は、学長の孫娘でありチェリストの初音とともに、プロへの切符をつかむために練習に励んでいた。しかし時価二億円のチェロが完全密室の部屋から忽然と姿を消した。さらに学長専用のピアノを破損された。そして大学の公式サイトに柘植学長の殺人予告が舞い込んだ。メンバーたちは、果たして無事に演奏会を迎えることができるのか。ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」がコンサート・ホールに響くとき、驚愕の真実が明かされる。

前作と同様にミステリとしては弱い。だけどその部分を差し引いても音楽青春小説としてすごく面白かった。その鍵となるのは、天才ピアニストにして臨時講師・岬洋介。彼が関わりだすと一気に枯れ木に花が咲き乱れる。しかもこういうマジックを持つ人物にありがちな小賢しさを感じさせない。さらにそれ以上に秀逸なのが音楽のシーン。クラッシクに疎くても、読者はその音楽を奏でる文章、言葉のひとつひとつに、胸が躍らされていく。極端だけど、これだけでも読む価値ありだと思う。

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その他の作家
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    2010

12.13

「往復書簡」湊かなえ

往復書簡往復書簡
(2010/09/21)
湊 かなえ

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手紙だからつける嘘。手紙だから許せる罪。手紙だからできる告白。過去の残酷な事件の真相が、手紙のやりとりによって明かされていく。衝撃の結末と温かい感動。書簡形式の連作ミステリ。

「十年後の卒業文集」
あれは本当に事故だったのだと、私に納得させてください。高校卒業以来十年ぶりに放送部の同級生が集まった地元での結婚式。女子四人のうち一人だけ欠けた千秋は、行方不明だという。そこには五年前の「事故」が影を落としていた。真実を知りたい悦子は、式の後日、事故現場にいたというあずみと静香に手紙を送る。

「二十年後の宿題」
小学校時代の担任の先生と、今は自分も高校の教師となった元教え子との往復書簡。大場は入院中の竹沢先生から、六人の教え子の現在の様子を見てきてほしいと依頼された。その六人とは、ある事故が起きた日に一緒に出かけていた子どもたちで、彼らはその後の二十年間、それぞれの想いを抱いていた。

「十五年後の補習」
遠距離恋愛をすることになった恋人同士の文通。国際ボランティア隊として辺境の国に赴任した純一と、日本に残された万里子。遠く離れたことでお互いへの思いやりが深まり、ふだん書けない想い、聞けないことが書けて、その中で明らかになっていく、二人の中学時代に起きた切ない事件の真相。

女同士のヒリヒリした駆け引きや、モラルの狭間で試される究極の選択や、悪意に対する罪など、湊作品らしい黒色ぶりがほどよく出ていたように思う。手紙のやりとりだけで綴られた三編だが、距離や時間差など、手紙ならではの特性が盛り込まれたミステリで、それぞれに違う読後感があったり、違う見せ方があったりと、ミステリの幅を感じさせる作品集だった。

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湊かなえ
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    2010

12.10

「アリアドネの弾丸」海堂尊

アリアドネの弾丸アリアドネの弾丸
(2010/09/10)
海堂 尊

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東城大にエーアイセンターを作ろうという試みは、すでに一年前に始動していた。提案者は厚労省の火喰い鳥こと白鳥圭介。神経内科の万年講師、そして、不定愁訴外来の担当者である田口公平が、同期で放射線科准教授の島津吾郎と一緒に仕事をすることになった理由は、高階病院長による辞令。田口は死後画像診断センター(エーアイセンター)センター長に任命される。

法医学教室の笹井教授の要望で、元極北市監察医務院院長の南雲忠義、元警視庁刑事局局長の北山錠一郎が副センター長に、オブザーバーとして宇佐美警視が加わった。第一回エーアイセンター運営連絡会議は、これら司法関係者の面々によって議論は座礁。田口はその打開策として、副センター長に房総救命救急センターの彦根真吾、オブザーバーに厚生労働省技官の白鳥を招聘。

そんな最中、東城大に導入された新型MRIコロンブスエッグを調整していた技術者が死因不明の異状死体で発見された。さらに院内から銃声が響く。コロンブスエッグ撮影室で殺害されたのは北山元局長。容疑者として逮捕されたのは、収賄疑惑を噂される高階病院長だった。田口&白鳥コンビが完璧に仕組まれた偽装殺人のアリバイトリックに挑むシリーズ第六弾。

相変わらずキャラでぐいぐい読ませる。その一方で、原点に戻ったようなバカミス色の濃い作品だから、トリックとか、ロジックとか、荒っぽさが目立った。それに今回の内容は司法と医療の対決。エーアイセンターを潰すために、警察が高階病院長を冤罪で逮捕しようとするなんて、とんでもない豪腕ぶりを発揮している。また悪役もわかりやすいぐらいムカツク野郎だ。だからミステリ部分は目を瞑って、エンタメとして読めば、そこそこ面白いかも。

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海堂尊
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    2010

12.07

「人生の使い方」平安寿子

人生の使い方人生の使い方
(2010/10/14)
平 安寿子

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文具の会社に勤続三十余年の轟洋介は、五十四歳。妻の佳織、四十八歳。初美は、洋介の兄にして轟家の長男、輝明の嫁だ。お人好しの輝明を尻に敷く強情ぶりを洋介は嫌っているが、認知症を発症した轟の舅を引き取って、五年間在宅介護しおおせたのだから、家族は誰も初美に頭が上がらない。その舅が脳梗塞で逝き、葬式後の後始末の手伝いで足繁く轟家に通った佳美は、初美からみっちり、定年を控えた亭主教育の必然性を説かれた。定年で気難しくなった亭主にずーっとくっつかれるストレスは、想像を絶するよ。

発端は佳織からの質問だった。定年後になにをするか。スポーツジムにカルチャーセンターの講座めぐり、自分にぴったりの趣味はいずこに。しかし、不足の事態は突然訪れる。娘の進路変更により、家族全員で協力する家計の全面的な見直し。轟家の長男輝明が脳梗塞で倒れ、弟の洋介は、仕事にも集中できず、身体も心もぐったりして、悪いことばかりが思い浮かぶ。洋介、佳織の夫婦が、右往左往する日常生活の中、自分たちの人生の使い方を模索する。

仕事が趣味と言うのも、たいがい男だ。そして、それを言うとき、自慢げだ。でも、仕事ができなくなったり、うまくいかなくなったら、どうするの? そのとき、仕事が趣味で、つまり、仕事以外にすること、したいことがなかったら……。趣味って大事だ。次に何をすればいいか、考えておいたほうがいいかもしれない。まったくおっしゃる通りだ。定年ボケした親父ぐらい惨めなものはない。そうならないための夫婦の趣味さがし。夫目線、妻目線。互いにすれ違う思惑や言い分が妙に滑稽であり、そしてリアルだ。

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平安寿子
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    2010

12.03

「オルゴォル」朱川湊人

オルゴォルオルゴォル
(2010/10/08)
朱川 湊人

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主人公は、もうすぐ小学五年生になるハヤト。トンダじいさんは、ハヤトと同じ東京の公団住宅に住んでいる。いわゆる顔馴染みでしかない。ところが、鹿児島に住んでいる友だちにオルゴールを届けてもらいたいと、一生に一度のお願いをされ、ハヤトは引き受けてしまう。届けに行くのは大人になってからでもいいと、トンダじいさんはいった。けれど、トンダじいさんが死んでしまっては、話は別だ。トンダじいさんは、団地の自分の部屋でひっそり亡くなっているのを発見された。例のオルゴールのことが、ズシリとハヤトの肩にのしかかってきた。当のトンダじいさんが死んでしまった以上、もう返すこともできなくなった。

後戻りできなくなったハヤトは、春休みの間、大阪に住む父さんのところに行きたいと母のヒトミさんに思い切って告げ、初めての一人旅に出るのだった。だが到着した大阪では、父さんは新しい奥さんのミチコさんと暮らし、おまけにお腹の中には自分の弟か妹にあたる子がいて、帰ろうかと思った。それを助けてくれたのが、同じマンションに住む電撃ガールことサエさんだった。広島と長崎に旅行する予定だったサエさんが、一緒に鹿児島までついてきてくれることになるのだ。ハヤトは、トンダじいさんの想い出のオルゴールを届けるため、あらためて一路西へ旅立つ。


読んでいて何度も錯覚することがあった。これって小路幸也さんじゃないかと。それくらい普段の朱川作品とは縁遠い、ふつうの現代で、ふつうの日常で、ふつうの子どもが旅をする。クラスのいじめとか、生徒になめられた先生とか、離婚した夫をけなす母とか、そんな大人たちの顔色を見て、その時々の空気を読んで対処する今風の子ども。そんな子どもが、福知山線の事故や、原爆ドーム、阪神淡路大震災と、実際にあった悲劇と向き合う旅の中で、見るものすべてに価値観を揺さぶられ、少しずつ成長してゆく。

すごくいいお話だ。児童書の王道をいくような作品だ。だからこそ、朱川さんっぽくなくて、小路さんだと錯覚する。主人公のハヤト、同級生のシンジロウ、ハヤトと同行するサエさん、ハヤトを大事に思うヒトミさんや父さんやミチコさん。基本的にいい人ばかりが登場する。しかし一番納得しがたいのが、オルゴールをハヤトに託して死んだトンダじいさんだ。するかなぁ、そんなこと。でも、微笑ましくて、温かい作品だった。

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    2010

12.01

「線の波紋」長岡弘樹

線の波紋線の波紋
(2010/09/29)
長岡 弘樹

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事件の陰にある「救い」を描いた連作長編

一人娘・真由が誘拐されて一か月、安否のわからないまま、白石千賀は役場の仕事に復帰、溜池工事の請負業者決定を控えていた。そんな千賀にかかってくる「おたくの真由ちゃんが死体で発見されました」といういたずら電話の主とは・・・・(第一話「談合」)。

真由ちゃん誘拐事件から2か月後、同じ町内に住む24歳の会社員・鈴木航介が死体で発見された。同僚の久保和弘はその1週間前、経理部員である航介から不正を指摘されていた。そして、航介の携帯にいまも届くメールの中に衝撃的な一文を発見する(第二話「追悼」)。

渡亜矢子は真由ちゃん事件の犯人を追っている刑事。無事に戻ってきた幼児から証言を引き出すのは容易ではなかったが、工夫を重ねて聞き出した犯人像に近い人物を探し当て、ついに逮捕にこぎ着けるが・・・・(第三話「波紋」)。

そして最終話、すべてのエピソードが1つの線になり、事件の背景にさまざまな「救い」があったことを知る(「再現」)。一つの事件が起こした波紋は「別の新しい事件を引き起こし、その新しい事件がまた波を立てる。波は当事者のみならず、周りの人々までをも飲み込み、翻弄していく」──

連作の振りをした長編作品。ひとつひとつの事件、特に第一話の真相に若干こじつけ臭いところがあるものの、全体像で見ればこれがすごいパズルであることに気づく。この構成の凝りようには脱帽だ。しかしいくら構成が優れていても、それだけで面白い作品になるわけではない。第一話から第二話、第三話から第四話と「線の波紋」が広がるのと共に、次々バトンしていく歪んだ主人公たちの心情が少し気持ち悪くて、それ故にこの先どうなるのかと好奇心を刺激された。後味はあまりよろしくない作品ではあるが、読んで損はないと思う。

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