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    2011

02.26

「マリアビートル」伊坂幸太郎

マリアビートルマリアビートル
(2010/09/23)
伊坂 幸太郎

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元殺し屋の「木村」は、中学生の少年に六歳の息子をデパートの屋上から突き落とされ、息子の仇を討つために東京発盛岡行きの新幹線はやてに乗り込む。まさか、こんな状態に置かれるとは予想外だった。その少年の罠に嵌まり、逆に拘束されてしまうのだ。

文学好きの「蜜柑」と機関車トーマスが大好きな「檸檬」の果物コンビは、闇社会の大物に依頼され、その息子を奪還し、彼と身代金を新幹線で運ぶ途中だった。しかし、息子は殺されてしまい、身代金が入ったトランクまでも行方不明に。

業界の中では天道虫と呼ばれ、いつも不幸に満ちている「七尾」は、指示を出すだけで現場には出ない仲介役の真莉亜の指示で、車内通路からあるトランクを盗みだしてくる仕事を遂行中だった。しかし因縁ある同業者と鉢合わせ、降りる駅を乗り過ごすはめに。

梃子の原理と同じで、欲求のボタンをうまく押せば、中学生でも人間は動かせる。人を殺してはどうしていけないのか。木村の息子をデパートの屋上に連れ出したのは、「王子慧」だった。ぜんぜん怖くないよと嘘をつき、突き飛ばしたのは痛快だった。

木村、果物、天道虫、王子。一癖も二癖もある殺し屋たちが、密室と化した新幹線の車内で、丁々発止の渡り合いを演じてゆく。彼らの視点がリレーしていく様は、前作グラスホッパーと同じ形式で、ノンストップで繰り広げられる殺し屋どもの狂想曲から目が離せない。

ここ最近、賛否両輪ある文学寄りの作品続きで、その行く末に、昔からのファンをやきもきさせていた。それが今回は原点回帰。軽妙ながら自分勝手な論理の会話で読ませ、散りばめられた伏線があり、それを見事に回収していく様に、「これこそ伊坂」と、満足した作品だった。

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伊坂幸太郎
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    2011

02.21

「アンダスタンド・メイビー」島本理生

アンダスタンド・メイビー〈上〉アンダスタンド・メイビー〈上〉
(2010/12)
島本 理生

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アンダスタンド・メイビー〈下〉アンダスタンド・メイビー〈下〉
(2010/12)
島本 理生

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主人公の藤枝黒江は、茨木在住の中学三年生。両親は離婚し、二人暮らしの母親は仕事人間で、意思疎通が取れないことにお互いが慣れないことに慣れてしまっている。仲の良い友人とも微妙な距離感を保ったまま学園生活を送っていた。そんなある日、転校生がやって来た。酒井彌生。その後、告白して、付き合うことになるが。

高校生になった黒江は、新しく友人になった百合の友人関係の結果、暴力をなんとも思わない羽場先輩と付き合い始めることに。だが、そこにもうひとり、彼女を事あるごとに誘う人物がいて。黒江はある事件をきっかけにして高校を辞め、憧れのカメラマンに会いに東京へ上京する。そして師匠・浦賀仁の住み込みのアシスタントとして働くことになる。

助手になり二年が経ったある日、中学のクラスメイトが交通事故で亡くなった。葬儀に出席するため故郷に帰った黒江は彌生君と再会。二人は再び付き合い始める。そんな中、頻繁ではないけれど、嫌なことを思い出しかけると、吐きそうになってしまう。黒江は、怖かった。ずっと前から、気付いて、分かって、受け止めてくれて、助けてもらいたかった。

あまり内容を明らかにされていない上下巻なのであらすじを纏めてみた。なんで。なんで。読みすすめる度に、ひっかかってくるのは主人公の無防備な行動。この危うさだけは理解できなかった。たとえ後半部分で秘められた過去が明らかにされてもだ。しかしこの主人公の両親の酷さといったらまあ、呆れて開いた口が塞がらない。ムカツク。許せない。

だが読後感はすごく良かった。過去の体験による恐怖。そこから連鎖する不幸な出来事。そして大人になって分かること。女子ゆえのヘビーな展開だが、浦賀仁さんをはじめ、要所要所に登場する不器用な男の子たちにその重苦しさが救われた。そして心のバランスを崩すものの、回復していくその過程に胸を打たれる。明日への希望。そのラストに泣けた。

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島本理生
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    2011

02.17

「エルニーニョ」中島京子

エルニーニョ (100周年書き下ろし)エルニーニョ (100周年書き下ろし)
(2010/12/10)
中島 京子

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東京の女子大生・瑛(てる)は、同居している男・ニシムラのDVから逃れるため、新幹線に飛び乗った。行き着いた先は、行ったこともない南の町。そこで、ニノという男の子と出会った。ニノもまた、何者かから逃げているらしい。南へ南へ、2人の逃避行が始まった――。そして、ついに引き裂かれてしまう瑛(てる)とニノ……。二人は再び出会うことができるのか――? 21歳の女子大生・瑛と7歳の少年・ニノ、逃げたくて、会いたい二人の約束の物語。

エキゾチックな顔たちのニノはおそろしく口数が少ない。しゃべれないのかと、最初、瑛は思った。そんなニノ少年は、フィリピーナのお母さんとはとても小さいときに別れてしまい、お父さんの顔は見たこともない。施設には帰らないと言い張り、だいいち施設にはもうニノの居場所がない。なぜなら灰色の男がニノをどこか外国に連れて行こうとしているからと、逃げることにしたという。

てるは、ストリートのスーザンおばちゃんに〈森のくまさん〉の歌の意味を教えられて逃げ出し、そしてホテルの電話に残されていた不思議なメッセージに導かれてニノと出会い、昔ながらの商店街にある石松砂糖販売のおばあさんを助けて商店街を活性化させる。てるとニノの距離感もよく、間に挟まれる伝承あるいは物語との実際の今とのリンクも楽しい。だけど、そんな二人には追跡者がいて、その影が見えるたびに次の町へと逃走劇が続く。

ニノとてるはよくかくれんぼをして遊んだ。ニノの大好きな遊びだ。不思議なことに、ニノは必ず鬼になった。瑛に隠れさせておいて、見つけるのが好きだったのだ。てるはとろいからけっしてニノを見つけられない。もしおれがいなくなっても、てるは探さなくていい。おれがてるを見つけるから。ニノはそう、瑛に言った。読み進むうちに、このセリフが、物語の中心にと据えられる。

エルニーニョとは、大気と海洋が密接に連動した現象で、片方の気圧が平年より高いと、もう片方が低くなる傾向にある。また海水温がシーソーのように変化する現象である。そしてニーニョという言葉は、小さな男の子のことらしい。てるとニノ。ふたりは互いに守り守られ、絆を深めていく。そして苦しい現実と向き合いながらも、なんとかしようとする。清々しくて、切なくて、その絆の強さに感動する物語。

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中島京子
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    2011

02.15

「聖夜(School and Music)」佐藤多佳子

聖夜 ― School and Music聖夜 ― School and Music
(2010/12/09)
佐藤 多佳子

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壇上のオルガンを弾いているのは、やはり、二年の天野だった。あいつのオルガンの音は、なぜか、よく聞こえる。チビな女だ。今、礼拝奏楽を担当している生徒は五人で、三年の俺と渡辺、二年の青木と天野、一年の北沢。俺は父が牧師、母が元ピアニストという環境のせいで、記憶のないころからピアノやオルガンは触っている。それでも、俺が気になるのは、いつも天野の音だ。なんでかは、よくわからない。ただ、あのチビッ子には、何かがある気がする。俺にはない何かが。

ピアノもオルガンも母に習った。とにかく、俺の記憶の中の母は、いつも鍵盤に向かっていた。母が家を出てから、俺はピアノもオルガンも弾かなくなった。鍵盤を見るのも我慢できなかった。半年くらいたってから、また弾くようになったのは、祖母にリクエストされたからだった。たぶん、父の顔色が変わったから、弾く気になったのだ。母の罪を許したまえと神に祈る、そんな鉄壁な牧師の顔が一瞬崩れたから。洗礼は受けているものの、俺はキリスト教を信仰していない。

オルガン部は、普通の部活のように、放課後に皆で集まって練習するわけじゃない。結局、オルガンは一人で弾く。一人ずつしか弾けない。それでも特設クラブとして認可されたのは、キリスト教にかかわる活動を充実させようとする学校の方針だった。そして、文化祭の発表会でやるそれぞれの曲目を最終決定した。俺はメシアンに挑戦することになった。母が一番好きな作曲家だった。中途半端に心の傷をつついているような俺の日常。そう、鳴海一哉としては、他に選びようなどなかった。

俺のキーワードは、神と母。信じられない神と、思い出したくない母。負のダブルだ。俺は逃げ出したかった。色々なものから。メシアンからも、オルガンからも、母からも、何より、人の目には優秀なオルガン弾きに見えてしまうかもしれない、立派そうな自分から逃げ出したかった。そんなんじゃねえやと。俺はそんなんじゃねえって。そこにロック好きの深井が天使のように降臨して手を引いてくれた。バンドのライブを見に行かないかと誘われ、発表会を――。

音楽小説の音楽の楽しさを期待して読み始めると、そんなのはこれっぽっちもない。窮屈というか、閉塞感のかたまりのような作品だ。捨てられたことを許せない母を引きずり、全てが正しい父にイライラして、思い通りに弾けないオルガンからも逃げ出して。客観的に見ると、主人公はすげえ嫌なヤツだ。だけど、嫌なヤツに思えないところが、児童文学出身である著者の筆致の上手さだ。これまで当たり前でも、なんでもない幸せに気づいた時。そんな時に人って成長するのかも。そう思った一冊だった。

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佐藤多佳子
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    2011

02.11

「歌舞伎町セブン」誉田哲也

歌舞伎町セブン歌舞伎町セブン
(2010/11)
誉田 哲也

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歌舞伎町の可視化を目的とした再開発計画が遅々として進まない中、反対派の歌舞伎町一丁目の町会長高山和義が不審な死を遂げた。死因は、直前まで元気だったのに、なぜか急性の心不全。事件性はないはずだった。しかし、彼の周辺には不動産取引にまつわるキナ臭い話もあったから、その死に疑問を抱いた者がいる。

前区長だった父の死亡状況とあまりにも似すぎていると直感する、交番勤務の小川幸彦巡査部長。そして歌舞伎町の不動産を買い漁っている円勇社の岩谷という男を探っている、フリーライターの上岡慎介。手探りで真相を追い始めた人間たちが、必ずぶつかるのは、歌舞伎町セブン。それと、欠伸のリュウ。一方、ゴールデン街のバーで働く陣内陽一は、あれはあんたの手口だと、関根組組長の市村光雄に疑われた。

十三年前のあの火災で「セブン」は解散状態になった。マサにキョウ、マキコ、それにユタカを失った。現場にいて助かったメンバーは陣内のみ。彼自身も大火傷を負い、一時は生死の境をさ迷った。難を逃れたのは、たまたま遅刻した現商店会長の斉藤吉郎と市村だけだった。何者かが、陣内たちに接触しようとしている。それも背後から迫る黒雲のように、悪意と災いを引き連れて。

青春まっしぐらのシリーズで最近ファン層を拡大して、元からのファンはなんとなくもやもやしていた。それが誉田哲也の全てじゃないぞ。もっともっとダークで理不尽な世界を読ませる作家だと。そこで本書だが、ダークはダークだけど、なんつうか、テレビ受けを狙ったような作品だった。誰もが想像しやすいのは、中村主水の必殺シリーズ。その仲間われ。しかしこれが中々読ませる悪漢小説なのだ。また「ジウ」とのリンクもあるので、ファンなら思わずニヤリ。

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誉田哲也
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    2011

02.03

「長い廊下がある家」有栖川有栖

長い廊下がある家長い廊下がある家
(2010/11/19)
有栖川有栖

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火村英生准教授。犯罪社会学者の彼は、警察の許可を得た上で捜査の現場に乗り込み、これまでに幾多の事件の解決に貢献してきた。いわば臨床犯罪学者である。プラスその助手と称する推理作家の有栖川有栖。このコンビは、警察にすればありがたい協力者であり、一方で煙たい存在だ。今回の一冊は、そんな彼らが活躍する、表題作「長い廊下がある家」、「雪と金婚式」、「天空の眼」、「ロジカル・デスゲーム」の四つの短編集。

山奥で迷い、廃村に踏み迷った英都大学生の日比野浩光は、夜も更けて、ようやく明かりのついた家に辿り着く。そこもやはり廃屋だったが、三人のオカルト雑誌取材チームが訪れていた幽霊が出ると噂される屋敷で、地下にはもうひとつの屋敷とを繋ぐ、長い、長い廊下があった。その中間地点にある閉ざされた扉の向こう側で、胸にナイフを突き立てられた刺殺死体を発見する。「長い廊下がある家」

田所雄二、安曇夫婦が迎えた結婚五十一年目の最初の朝。ボランティア活動の打ち合わせに行く夫を送り出し、安曇は離れに居候する義弟にコーヒーをふるまってやろうと思いついて行ったところ、義弟の絞殺遺体を発見した。その一週間とたたないうちに、犯人の見当がついたと言っていた田所氏が、アクシデントでその記憶を失ってしまった。さて、彼は何を根拠に誰を疑ったのか。「雪と金婚式」

現場となった二階建ての空き家は斜面に立っていた。若い男が死体となって発見された。屋上からの転落死だった。死体のすぐ横に、壊れた手摺が転がっていた。いささか不審な点があった。手摺には何者かが壊したような後があった。手摺が切断されていた理由が判らない。何故、被害者がここの屋上に上がったのかも、何故、手摺にもたれたのかも。屋上には、青銅製らしき魔除けの像が鎮座していた。「天空の眼」

大阪、京都、神戸の順でトリカブトによる自殺者が相次いだ。そして自殺未遂の男が病院で手当を受けていた。男は、救助された際に「ゲームをさせられた」と話している。火村は理不尽な強制によって、その事件の犯人からの挑戦を受けなければならなくなった。勝ち負けを競って負けた方が自殺するというゲーム。火村は命を賭けてある選択をしなければならなくなる。「ロジカル・デスゲーム」

「長い廊下がある家」は著者にとってはめずらしい館ミステリ。トリックに目新しさはないが、勘が働けば正解の可能性は大。ストーリーも面白かった。「雪と金婚式」は夫婦愛が美しい。でも使われた小道具は大掛かりすぎかな。「天空の眼」はもう一つのストーリーとからむ異色作。そして探偵役は有栖川有栖だから。「ロジカル・デスゲーム」は殺人犯に挑まれる死を賭した賭けゲーム。ちょっと難しいけれど、なんとなく納得させられた。

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