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    2011

03.16

「ピースメーカー」小路幸也

ピースメーカー (文芸)ピースメーカー (文芸)
(2011/01/14)
小路 幸也

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僕らが通う、中高一貫教育で知られた伝統ある〈赤星学園中等部・高等部〉は、今は〈赤星中学校〉と〈赤星高校〉という名前になってる。赤い星っていうのは火星のことで、戦いの神様らしい。そのせいじゃないだろうけど、何故か伝統的に文化部と運動部の戦いが続いているんだ。放送部の顧問の先生、コウモリは言う。「放送部が唯一、運動部と文化部を結び付けられる平和の使者〈ピースメーカー〉になれると僕は思ってる。部の活動を把握して、取材から現場の仕切りから放送まで、すべてにおいて彼らを結べるのが、放送部だ」運動部と文化部を繋ぐ架け橋となって平和をもたらすもの。まさしく、ピースメーカー――その実態は、放送部の良平とケンちゃん――知恵と愛嬌の凸凹コンビだ! これぞ、小路幸也印! ハートフルでちょっとノスタルジックな青春エンターテイメント。

アイデアの良平と技術のケンちゃん。彼らが校内で起きる問題を解決するための情報を入手する手段は、放送部の禁断の武器。ハッキリ言ってしまえば、盗聴。また、まったく部活動に参加しないスーパー部長の沢本さん、天使の声を持つ転校生の三浦さんも途中から加わり、情報とアイデアを駆使して、ピースメーカーとして活躍する。主人公たち中学生以外でも、コウモリとかみーちゃんとか、とにかくキャラがいい。さくっと読めて、楽しいYA作品かな。

文化部総合顧問の菅野先生と運動部総合顧問の玉置先生。その二人の間にある確執。通称〈カンタマの戦い〉。それが、カンタマの息子と娘が、恋仲になってしまった。それに、玉置先生の娘が文化部で、菅野先生の息子が元運動部。どうなるんだ? 「一九七四年の〈ロミオとジュリエット〉」

全国大会へ向けて代表を勝ち取るための予選試合はもうすぐに始まる。三年生の折原と河内は、赤星中剣道部始まって以来の期待の二つ星。間違いなく代表になるのはその二人のうちのどちらかといわれている。なのに、八百長をするんじゃないか、という噂が。「一九七四年の〈サウンド・オブ・サイレンス〉」

創立以来続く伝統ある赤星祭。フォークソングのグループ活動は、吹奏楽部と同じ音楽活動だから菅野先生が権限を持つ文化部の範囲だ。ところが、ロックバンドに関しては、あんな騒音はとても文化活動ではない、と言い出した。バンドを組んだ岩島がサッカー部だからだ。「一九七四年の〈スモーク・オン・ザ・ウォーター〉」

職員会議の結果、お昼の校内放送の音楽鑑賞プログラムでロックを流すことは禁じられた。会議で言い出したのはカンタマ。最近の構内の服装や髪型、風紀の乱れは全てロックが原因だって言い出したらしい。ロックだけが流すことを禁止されるなんて、ゼッタイにおかしいと思う。どうやって、ロック禁止をぶっ潰す? 「一九七四年の〈ブート・レグ〉」

放送部に廃部の危機が。顧問のコウモリと良平の姉が付き合っているらしい。みーちゃんは十九歳。コウモリは三十五歳。恋に年の差なんて関係ない。問題は、コウモリが放送部の顧問で、みーちゃんが初代ピースメーカーとして活躍していた時期にはもうそういう関係だったとか、そういう疑惑が掛けられてしまったからだ。一九七四年の〈愛の休日〉」

書道部からエス・オー・エス。一月の二日、書道部は有名な書道家を招いて、体育館の半分が埋まってしまうような大書初めをすることになっていた。ところが、バスケット部もバスケットの実業団から胸を借りる約束をしていた。それぞれに依頼した校長と理事長のお互いの確認ミス。そのとばっちりが生徒に来て。「一九七五年の〈マイ・ファニー・バレンタイン〉」

二月に入ったある日曜日に、電話で沢本さんに呼び出された。放送室に来てちょうだい。一人でね。高峰くんは連れてこないでね。沢本さんはそう言っていた。なんの用事かも言わないし、とにかく来てくれればわかるって。そんなこと今まで一度もなかったから、いったい何があったんだろうって思って、良平は学校に向かった。「ボーナストラック」

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小路幸也
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    2011

03.10

「白いしるし」西加奈子

白いしるし白いしるし
(2010/12)
西 加奈子

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夏目が好きそうな絵を描く。友人の瀬田がそんな風に言って、フレイヤーをくれたのが、五月の終わりのことだった。私も絵を描いている。夏目香織、三十二歳。独身で恋人もおらず、新宿三丁目にあるバーでアルバイトをしながら、金にならぬ絵を描いている。まさに細々とした生活というやつである。絵はずっと描いていた。だが、そううまくはいかなかった。個性が強すぎるようで、媒体を選んだ。

ギャラリーは小さな一軒屋だった。そこには、私を祝福するように、真っ白な光があった。白い地に、白い絵の具が、すう、と引かれている。それは、山の稜線だった。私の絵とは、対極にあるような絵。白い富士山。美しい稜線。私はこの絵が、本当に好きだった。今思うと、その興奮は、その絵に出遭えたことと、自分はきっと、彼に恋をするだろう、という、予感からくるものであった。

夏目の人生は、失恋の歴史であった。青い髪の人に始まり、カメラマン、ミュージシャン、劇団員。彼らは皆、容赦なく私の前から姿を消し、そしてすぐさま、新しい恋にいそしんだ。彼らの変わり身の早さに、いつも驚嘆した。そのダメージのたびに、私は体重を失い、動けなくなった。でも、間島昭史を見たとき、からだの中が、内臓の、血液の、もっと奥にある何かが、発熱して、動き出す予感がしていた。

体を重ねた。彼のすることのすべてが、私の琴線に触れた。だが、彼が家に来てから、私は笑うことが出来なくなった。私はずっと、怖がっていた。彼への愛情は増すばかりで、際限はなかったが、その底なしの先が怖かった。彼から生い立ちを聞いたのは、彼が家に来て、何度目かの夜だった。彼が去るとき、私は泣かなかった。彼が去った後も、泣かなかった。彼は、恋人の元へ帰った。

彼のどこが好きなのだ、と聞かれたら、彼が好きなのだ、としか、答えられない。人を好きになるのに理由なんてない。人は恋をしてアホになり、幾度と失恋の傷であかん人になっても、また人は恋をする。アホな人と、あかん人を、繰り返して生きていく。あまりの切迫に気おされ、苦しさに溺れそうでも、大阪弁の文章が刻むリズムは心地よく、いつまでも読んでいたくなる。失恋小説であり、恋愛小説。そんな一冊だった。

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西加奈子
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    2011

03.03

「祝福」長嶋有

祝福祝福
(2010/12/11)
長嶋 有

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なにかドラマがあるわけではない。それぞれの人物にある日常の風景。そんな誰にでもある時間だけが淡々と流れていく。さらっとした内容ではあるものの、浅香唯や小沢健二、カップラーメンや携帯電話など、エッセイ「電化製品列伝」でわかるとおり、著者ならではの小道具の扱い方がおもしろい。だけど記憶に残るかどうかは…。

遠くで丹下、と聞こえる。寝たまま天井の、明るさをみる。遮光カーテン越しでも、外は明るい、晴れていると分かる。そうだ、今日こそこだま亭にいこう。サンマ定食食べたい。ある物臭い女性作家の、いつもと変わらないだろう物臭な一日「丹下」

マラソン大会の最中、根暗で運動音痴な僕に話しかけてきたのは同級生の川田だ。川田は学年でただ一人の不良だった。浅香唯のセシルって歌、知ってるか。川田の誘いで二人は川田の家へと向かう。「マラソンをさぼる」

前を歩いていた恋人がつぶやき、顔をあげると遠くで最初の花火が輝いた。川面に花火が次々とうつる。「こっちこっち!」と呼び止められる。振り向けば河原の斜面に数人が座り込んでいた。知らない男女ばかりで、誘ってくれた友人の顔の広さに感心する。「穴場で」

コンビニでお湯を入れさせてもらったカップラーメンをコンビニの前で食べる。遅れて山根がコンビニから出てくる。山根は機種変更したばかりの携帯電話の着信した時のアンテナを何色に光らせるかで悩んでいる。二人は歩き出し、近くの公園にきた。「山根と六郎」

頼子は銀行強盗に遭遇した。大きな爆発音が響き、顔をあげたら男が天井に銃を向けており、その銃口からは煙が揺れていた。身をすくませ床をみつめつづけると頼子の気持ちは不意に高校時代に戻ってしまった。銀行強盗の最中なのに。「噛みながら」

毎年父とくる山荘に、今年は一人で向かう。バスを降りて二十分かけて山荘まで歩く。いつも山荘に原稿用紙やノートパソコンを持参するが、ほとんど仕事のはかどった例がない。いい天気だ。東京は猛暑だった。へっへっへっと声がもれた。「ジャージの一人」

コマーシャルに小沢健二の曲をつかうのは反則だ。画面をみてしまって、ちっと思う。人気が出るまでは応援に力が入る。売れすぎてしまうとなんだか冷めてしまう。テレビでみたから、久しぶりに小沢健二の曲をかけて家事を始める。「ファットスプレッド」

久しぶり。どうせならさあ、釣りいかない。西口の改札で待ち合わせをしたが、大勢いる中で釣り人の格好をしているのは原田だけだった。今日、ここにきてよかったのか、悪かったのか、どっちなんだろうかと考え始める。「海の男」

怒鳴ると妹はしょげる。泣き出すことも多いのに、そのくせいつまでも怒られるようなことをする。いつまで待っても母は帰ってこない。人が住まなくなった社宅。出入りするのは、たくさんの猫だけ。そんな時、積雪から屋根に穴があき、照明も消えた。「十時間」

すでに大勢いて、ざわついている。都内で評判のレストランを新郎新婦は借り切った。いわゆる気のおけないパーティー形式だ。なんだか熱っぽい。会場を出てタクシーに乗り込んだところでLから着信。自分はちゃんと好きになることができているのか。「祝福」

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長嶋有
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