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    2008

12.14

「公園で逢いましょう。」三羽省吾

公園で逢いましょう。公園で逢いましょう。
(2008/10/23)
三羽省吾

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市営アパートのベランダから見下ろすと、その公園は二つの丸い土地がつながったような形をしている。敷地を縁取るようにサクラやブナやイチョウなどが植えられ、その内側にジョギングコースが少し歪な8の字を描いている。東側の丸の中心には噴水が、西側には花壇と芝生が設けられ、双方とも空いた場所にお決まりの遊具が一通り並んでいる。私達はそこを「ひょうたん公園」と呼んでいた。

「春の雨」
昼下がりのいつもの公園、いつもの場所、いつものみんながやって来た。五人のママと六人の子供達だ。古株のユウマくんママは、新顔であるもう片方のママに押されまくっている。押している方はトラブルメーカーのアキちゃんママ。旦那が勤める会社のマルチ商品を売り付けようと熱弁。それを見かねて仕切りたがりのサトルくんママ登場。楚羅くんと星羅ちゃん兄妹のママは羅々ママと呼ばれ、いつも一人ジャングルジムに腰掛けてメールばかりしている。大輔を連れてきているダイちゃんママこと美咲の役割は、ママ達ではなく子供達を見ること。美咲は小学四年生になる直前に、とても小さな琢矢くんと一緒に学校に行くように頼まれた、あの頃からずっと、物言わぬ者を見ることが私の役割。

「アカベー」
サトルくんママこと里美。弟の誠治は、小さな頃から物を作るのが好きで、作った下駄車がトラックに激突し、木っ端微塵となった。その下駄車には私が可愛がっていたコマネズミを乗せていた。コマちゃんの死から姉弟は不仲になった。里美は悟を抱いていつもの公園にやって来ていた。里美は誰に対しても腹を立てている。アキちゃんママの無神経さに、ユウマくんママの煮え切らなさに、ダイちゃんママの巧妙な狡さにも、羅々ママの奔放さにも。悟は私が何かに怒り始めたと感じるや、すぐに憤る。そうだ。それがどんな種類の腹立たしさであっても、怒った数だけ赦さなければならない。何故なら、私もまた赦されているのだから。あの日、私はそう考えた筈だ。アカベーと呼ばれた彼の引退試合だった。

「バイ・バイ・ブラックバード」
ユウマくんママこと倫子。高校時代、私は瀬川さんと付き合っていた。そこで終わっていれば、青春の一ページとしてはかなりいい線をいっていたのだと思う。別れる別れないで揉めている子がいて、瀬川さんは退屈しのぎのつもりでその男に話を付けに行った。瀬川さんは男から十万円を貰った。援交だった。それから瀬川さんは、知人を集めて援交狩りという名の強請り組織を作った。私の役目は、ヤバい相手か性質を判断すること。私は人がなにかどす黒いものを内側に溜め込んでいると臭いを感じた。今はもう、臭いの感覚はなくなってしまった。ただ、変な癖がついてしまった。この公園に集うママ達とお喋りする時も、よく試す。最も頻繁に試験台になってくれるのが、アキちゃんママ。

「アミカス・キュリエ」
双子のパパこと久保っち。亜希が友人の結婚式に出席することになったので、俺は初めて育児休暇なるものを取った。乳児を世話する労力を舐めていた。しかもウチの子は、双子なのだ。公輔と友美を乗せたツインバギーを押しながら、俺は亜希や近所のママさん連中がピーナッツ・パークと呼んでいる公園にやって来た。亜希によると、俺とは初対面でも、公輔と友美のことは見知っているから、すぐに話し掛けてくれる筈だという。ママさん連中が寄って来た。ここだったのか。だけど、どうもおかしい。間違えて別のコミュニティに来てしまったらしい。あの時も、こんな感じだった。六年前、司法浪人だったあの時、なにもかも嫌になりかけていた俺は、これに似た状況に救われたのだ。

「魔法使い」
羅々ママことあかね/羅夢椰。幼い頃のあかねは公園にいるのが大好きだった。あたしがそこにいても許されて、たいして知り合いじゃなくても構ってもらえた。あたしはそれを、魔法みたいだと感じていた。だから、親子が帰っていく夕暮れの公園や、誰もいない雨の日の公園は嫌いだった。その雨の日、ホームレスのおじさんと出会った。雨が降る度に、五歳のあたしは魔法使いのおじさんとごはんを食べた。でもその日、お巡りさんがおじさんを連れていった。そしてあたしは、あの公園に戻って来た。あたし以外のおばさん達は、全員、魔法使いみたいだった。積極的に会話に加わらないけど、そっと聞き耳を立てる。本当は覚えることがいっぱいあり過ぎて、ケータイにメモったりで、大変だった。


これは本当に良かった。いつもの公園の風景だけど、そこにいるママ達がそれぞれに思うこと。知り合いと言っても、ママたちの本音の部分はわからない。そこで視線のリレーしていくことで、ママ達のドラマがあって、いつもの公園にユーモアが生まれていく。一番強烈なキャラは、マルチを勧めるアキちゃんママ。それと、いかがわしい仕事をしている父親と空気の読めない母親をもってしまったせいか、一歳半にして二日酔いのおっさんみたいな顔(ダイちゃんママ談)、気苦労が絶えない中間管理職のような顔(サトルくんママ談)、という言われようのアキちゃん。いったいどんな顔をした幼児なのだろう。気になる~。

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三羽省吾
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comments

視点が変われば、公園のママたちの位置づけも変わって見えるのも面白かったですね。アキちゃんママを試験台にするユウマくんママの強かさとか、読んでいてニヤリとしてしまいました。
アキちゃんの言われようったら、抜き出してみると結構ひどいこと言われてるんですね。何か気の毒・・(^_^;)

エビノート:2008/12/15(月) 20:20 | URL | [編集]

面白かったですね。
ママたちのそれぞれの事情を聞いてみると、新しい関係があったりして…
それにしても、アキちゃんの言われようはひどいかも…(笑)
気の毒と思いつつ、ここまで言われるアキちゃん、見てみたいです。

ちきちき:2008/12/15(月) 21:37 | URL | [編集]

おはようございます。
アキちゃんの事、みんな言いたい放題だったんですね。
私が勝手に不細工顔を想像してたのも、みんなのコメントのせいだったのだ~と納得(笑)

なな:2008/12/16(火) 10:49 | URL | [編集]

エビノートさん
明らかになっていくママたちの内面が面白かったですね。
押しに弱いと思われたユウマくんママとか、携帯をいじってる羅々ママとか、本音を知るとニヤリしまくりでした。
酷い言われようのアキちゃんの容貌は一番気になりました。

しんちゃん:2008/12/16(火) 19:54 | URL | [編集]

ちきちきさん
これは面白かったですよね。構成もよく練れたものだと思いました。
アキちゃんの顔はぜひとも拝見したいです。

しんちゃん:2008/12/16(火) 19:56 | URL | [編集]

ななさん、こんばんは。
アキちゃんが個人的にツボでした。それとアキちゃんママも。
この母子がいたから、こんなにも面白く読めたのでしょうね。
不細工バンザイです。

しんちゃん:2008/12/16(火) 20:00 | URL | [編集]

初読み作家さんでしたが、
最初の作品が良いと、次からも読みたくなります。
まさにこの作品はそんな感じ。
公園に集うママたちの表の顔と本当の顔。
その違いがリアル。
個人的には羅々ママの頑張りに好感持てました。

す〜さん:2008/12/28(日) 09:23 | URL | [編集]

す~さんはこれが初読みでしたか。
自分はデビュー作がもうひとつだったから、飛び飛びに読む作家になりました。出会いって大事ですよね~^^;
羅々ママのわけにはぐっときますよね♪

しんちゃん:2008/12/28(日) 12:02 | URL | [編集]

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