2008
![]() | 退出ゲーム (2008/10/30) 初野 晴 商品詳細を見る |
穂村チカ、高校一年生、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみで同じく吹奏楽部のホルン奏者、完璧な外見と明晰な頭脳の持ち主。音楽教師・草壁信二郎先生の指導のもと、廃部の危機を回避すべく日々練習に励むチカとハルタだったが、変わり者の先輩や同級生のせいで、校内の難事件に次々と遭遇するはめに―。《本の帯より》
「結晶泥棒」
文化祭が中止に追い込まれそうな危機が起こった。掲示板に脅迫状が貼られたのだ。要求を呑まなければ屋台の食べ物に毒を盛ると。でも確か去年は、クレープ。一昨年は、たこ焼き。今年は、やきそば。そして今年の要求は、教頭のかつら。毎年恒例の脅迫状だった。だけど今回は、科学部の展示から硫酸胴の結晶が何者かに盗まれた。劇薬の盗難なら、すぐに警察に届けないといけない。だが、そんなことをしたら、文化祭が中止になってしまう。文化祭の実行委員をするチカは、ハルタに助けを求める。
「クロスキューブ」
文化祭の余韻からさめた十一月の上旬、学校で突然ルービックキューブが流行り出した。先輩がバザーで売れ残ったルービックキューブを部室に持ってきて、机の上にコロンと転がした。すくない部員たちがわらわらと集まる。翌日、一個が三個に増え、一週間後、三個が七個に増えていた。さらにその数日後、校舎のあちこちでキューブを見かけるようになった。そんなとき真打ちが登場した。スピードキュービストのハルタだ。いまハルタが挑戦しているのは、六面すべて白色のルービックキューブだった。
「退出ゲーム」
吹奏楽部と演劇部。みんながハッピーになれるために、ハルタは戯曲を創作した。だが、その演劇部部長とハルタが喧嘩をはじめてしまう。その結果、演劇部と吹奏楽部で即興劇対決をすることになった。内容は、設定されたシチュエーションでそれに合った役柄になりきる。そして制限時間内にステージから退出すればいいだけの話。どんな理由をでっちあげてもいい。相手のチームはそれを阻止する。想像力を駆使して退出方法を考えること。演劇部部長と看板女優VSハルタとチカの対決が始まる。
「エレファンツ・ブレス」
現実にあった思い出を夢の中で再生できる枕。発明部の萩本兄弟は、作ったオモイデマクラなる発明品を、生徒限定で極秘に販売してしまった。これが表沙汰になれば、二人は停学処分もので、事情を話して返金することになった。購入者はハルタともうひとり。この発明の発想は、夢を三つの色でコントロールできるということ。そこで希望者には、三色の色とその比率を提出させていた。もうひとりの購入者が申請した色は、象の息づかいという誰も見たことがない色のみ。エレファンツ・ブレスの謎を解くことになった。
チカとハルタは、幼なじみにして最大のライバル。廃部の危機を回避すべく、チカは草壁先生と一緒に部員集めに奔走して、ずっと先生をそばで見つづけてきた。だから、他の生徒の「好き」とチカの「好き」は次元が違う(チカ談)。しかし誤算があった。部員集めに奔走して先生を好きになったのはチカだけではない。もうひとりいたのだ。ハルタだった。おいおい、という感じだけれど、ハルタがぽうっとした目で草壁先生を眺めている姿は、確かにかわいい。そのチカがワトソン役で、ハルタがホームズ役というのが本書。そして部員集めという側面も各編に仕込まれている。米澤さんの古典部シリーズを思わせる作品だけど、独自色が出ていて、中々の上質な作品だと思う。今後の部員集めも読みたいし、普門館出場の場面も読んでみたい。というわけで、続刊希望。
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