2008
![]() | イノセント・ゲリラの祝祭 (2008/11/07) 海堂 尊 商品詳細を見る |
東城大学医学部付属病院不定愁訴外来の責任者で、万年講師の田口公平は、いつものように高階病院長からの呼び出しを受けていた。高階病院長の“ささやかな”お願いは、厚生労働省主催の会議出席。依頼主は、厚生労働省役人にてロジカル・モンスター、白鳥圭輔。名指しで指名を受けた田口は嫌々ながら、東京に上京することを了承した。行き先は白鳥の本丸・医療事故調査委員会。さまざまな思惑が飛び交う会議に出席した田口は、グズグズの医療行政の現実を知ることに・・・・・・。《出版社より》
事件は現場で起こっているんじゃない。会議室で起こっているんだ。とどこかであったセリフの逆を行く作品。リスクマネジメント委員会委員長の田口は、厚労省役人・火食い鳥こと白鳥に招聘されて、厚労省医政局長の私設懇談会、医療事故調査委員会創設検討会の立ち上げに協力することになった。しかし白鳥いわく、検討会の議論なんて前菜。その内容を拡散し攪拌し、ひっちゃかめっちゃかにして、始めからあった結論をぽんとメディアに投げる。これが厚労省のやり方で、官僚は医療なんてどうでもいいと思っており、大切なのは予算と法律だけとのこと。その典型が、ミスター厚生省こと八神課長という男の存在だ。
始まった検討会では、病理学会の田沼教授と法医学会の西郷教授がいがみあっていて、同じ解剖同士でも縄張り争いが激しいのだから、実際に何も進まない。それにミスター厚生省と議事はなあなあの仲。そのミスター厚生省の画策をなんとか防ごうと、白鳥が水面下で動いている。そのひとつのキーが招聘された田口であり、もうひとつが作品タイトルの「イノセント・ゲリラ」である異端の病理医・ひねくれ彦根の存在だ。白鳥と彦根は田口にとって軍師のようであり、一方で田口はただの駒のようでもある。検討会での田口は、すべてを俯瞰するただひとりの男。唯一まともな思考を持った存在だ。。
そんな不毛な議論、医療事故および解剖制度の立て直しとして登場するのが、エーアイ主体の新システムである。このシリーズは一環してエーアイを推進しているので、今更エーアイについて説明することはしない。読んでいると、なんでこんな簡単なことがすんなり通らないのか不思議。官僚というのは、本当になんて頭でっかちなどうしようもない存在なのだろうとしか思えない。それと既得権益を守ろうと固執するエライ人たちや、現代に適応しない法律を後生大事にしている法律家。そんな悪弊を本書はバッサバサと気持ちよく斬っちゃている。その一方で夢物語の大風呂敷も広げている。そこはやりすぎかなとも思ったけれど、海堂さんのご指摘は明快である。
今回は問題提起が前面に出ているので、少し小難しい内容になっている。またエンタメ要素も大幅に控えられている。できれば東城大学医学部付属病院が舞台の作品が読みたかったけれど、こういうのもありかなぁ、なんて思った次第です。
海堂さんのサイン会に参加してきました。意外と男性のファンの方が多かったです。ご本人は、見た目は三谷幸喜で、話口調は酒井敏也とそっくりでした。(おい)

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