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    2009

01.05

「橋をめぐる」橋本紡

橋をめぐる―いつかのきみへ、いつかのぼくへ橋をめぐる―いつかのきみへ、いつかのぼくへ
(2008/11)
橋本 紡

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深川を舞台に描く六つの人生。「清洲橋」「亥之堀橋」「大富橋」「八幡橋」「まつぼっくり橋」「永代橋」を収録。

「清洲橋」
清洲橋を渡った。五年ぶりだった。隅田川を絶対に渡るまいと誓ったわけではなかった。なんとなく隅田川を越えないまま日々は流れ、気がつくと五年が過ぎていた。友香は今、二十七歳。そこまで強く父を恨んでいるわけではない。あえて表現するなら、性格の不一致。父と折り合いが悪くなったのはいつだろうか。はっきりとは覚えていない。いつしか父のことを受け入れられなくなり、それはやがて嫌悪へと変わっていた。家庭における父は傲慢そのものだった。その父が老い始めた。

「亥之堀橋」
亥之堀橋を渡りきった十字路の角に、焦茶色の賃貸マンションが建っている。十二階建てである。一階に入っているのが耕平の店であった。楓という。耕平は長年、バーテンをやってきた。酒も触るが、心も触る。銀座時代から、耕平は揉め事の仲介を頼まれることが多かった。場所を変え、深川に移っても、染み付いたものは変わらない。昔から深川に住んでいる人間と、ここ数年で移ってきた人間とでは、考え方に大きな隔たりがあった。その町内会とマンションの自治会で揉め事が起こった。

「大富橋」
間近に迫った大学受験や、ライバルとの競争なんかに絡め取られ、身動きできないでいる自らを、陸は情けなく感じた。大富橋で思い出したのは、嘉人のことだった。陸にとって、嘉人は特別な存在だった。ライバルの吉岡なんかとは、まったく違う。家が隣同士だし、同じ年の生まれなので、ゼロ歳からの付き合いだった。かたや学校一の秀才。かたや学校一の不良。嘉人はそう、とんでもないワルだった。吉岡の通夜は、迷惑この上ないことに、センター試験の二日前だった。その吉岡は親に陸のことを友達と話していた。

「八幡橋」
佳子と翔太は八幡橋の下をくぐった。九歳になった翔太の学校と、佳子の勤め先である英会話学校は、同じ方向なので、時間が重なるときは、一緒に家を出るのだった。そこに携帯電話が鳴った。三崎からのデートの誘いだった。息子をシッターに預け、男と会う。母だが、女。翔太の次を欲したのは佳子だった。もとの夫はそこまで積極的ではなかった。二度の流産。和也は相変わらず優しかったし、時間が解決してくれることを願ったが、どうにもならなかった。別れを切り出したのは佳子の方で、和也はただ頷いた。

「まつぼっくり橋」
美穂と哲也が条件を口にしていくたびに、不動産屋の顔が曇っていた。家賃に割けるのは十五万円が上限で、それ以上は無理だった。明るいし、行動力もあるけれど、いざ決断を迫られる場面になると、哲也はためらうことが多い。あまり深く考えず、決断がやたら早い美穂とは、正反対の性格。哲也とはこの前、婚約を交わしたばかりだ。彼が勤めているのは、中堅のデベロッパーの設計部門だった。本人は意匠屋と称している。彼の大学時代の同級生が、深川の不動産屋に勤めていることがわかったので、案内を頼むことになった。

「永代橋」
お父さんとお母さんのあいだがぎくしゃくしていた。千恵の私立中学進学が問題だった。一日が憂鬱だった。隠すのなら完全に隠して欲しいと思った。意外なことが起きたのは、夏休み直前のこと。お祖父ちゃんのところに行くことになった。お祖父ちゃんのエンジは圓治と書く。笑うエンジに、通りがかる人がしょっちゅう話しかけていった。みんなが知り合いの、エンジの住む街は、千恵には不思議なところだった。友達ができた。ずっとここで暮らすことになっても、かまわないような気がしはじめた。でも…。


個人的に好きだったのは、バーテンダーらしく、空気を読んで空気に任せる「亥之堀橋」と、受験勉強がすべてではなく、もっと友情が大事と気づく「大富橋」と、理想と現実の不動産探しと、価値観の違う婚約者が滑稽な「まつぼっくり橋」と、両親の不仲の原因になってしまった少女と、それを救う粋な江戸っ子じいさんの「永代橋」だ。逆に、父との折り合いが悪い「清洲橋」は、自分と重って分かりすぎてダメで、母でも女という「八幡橋」では、それ以前に息子のことを考えろとムカムカ。六試合中、四勝、二敗かな。

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橋本紡
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comments

なんだかお話そのものより、深川辺りに興味のわいた一冊でした。
行ってみたなあ。
「まつぼっくり橋」のお話が可愛らしくてなんだか好きです。

ちきちき:2009/02/07(土) 21:54 | URL | [編集]

ちきちきさん
知らない土地に共鳴することはあまりありませんが、これは別でした。
橋本さんの文章だからなのか、この下町風情に惹かれました。
大阪人にとって、敵は標準語だけど。
「まつぼっくり橋」のお話はかわいいけれど、お客としては困った客。
おれ、この仕事をしてるから^^;

しんちゃん:2009/02/08(日) 22:27 | URL | [編集]

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2009/01/29(木) 10:45 | 狭間の広場

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