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    2009

01.16

「どこから行っても遠い町」川上弘美

どこから行っても遠い町どこから行っても遠い町
(2008/11)
川上 弘美

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ビルの屋上には、妙な小屋が建っている魚屋の魚春。常連客で賑わう小料理屋と居酒屋の中間くらいのお店ぶどう屋。サイドメニューが充実しているたこ焼き屋のロマン。八百屋の八百吉。鳥肉屋の鳥勝。東京のはずれにある小さな町の商店街と、そこをゆきかう人びと。人と人とが濃く結びつき、それでいて侵しがたい領域もちゃんとある。そんな平凡な日々。

男二人で同居する平蔵さんと源さん。恋人の隣で眠れない塾講師の先生。穏当ではない父親と二人暮らしの高校生。家庭内別居をしている両親をじっと見つめる女子高生。人の口癖をずっと考え続ける三十代半ばの男性。三回別れた元恋人と店をやっている板前とおかみ。危ういひとと付かず離れずの関係を続ける大学生のわたし。大きな出会いをふたつした占い師。雨の写真を撮り続けている女性。ロマンで働いている一人暮らしの老女。好きな人が死ぬと、少しだけ自分も死ぬという春田真紀。

彼らはすこしずつ重なり合って、交じり合い、結びついたかと思えばぼやけてみたり、そうして大きな円になって、また最初に戻る。彼らは出会ったり、すれ違ったりしながらも、この小さな町のどこかで繋がっている。ここにある物語は、決してドラマチックなものではなくて、日常のどこにでもあるような、些細なエピソードの連なり。人が生きていくうえでの拠りどころのような、心の落ち着く在りかを描いていて、それが心地よくて、また、人の本質が巧みに散りばめられている。

そんな中で印象に残ったのは、男女の喧嘩のやり取りだ。「どうすればいい、なんて、聞かれても困る」という女の言葉に、男は口をつぐむ。すると女は「黙らないでよ」と。それならばと、とりあえず、謝ってみると、「ごめんなんて言ってほしいわけじゃない」と女が怒る。「じゃあ、どうすればいいの」という男に、「だから、あたしからこうしてって言うんじゃ、だめなの」男はため息をつくしかない。

男性なら、こういうシチュエーションは何度も経験していることだろう。女の“わかって欲しい病”ほど、面倒なものはない。わかるわけがないのに。女性にとっても、思い当たることがありそう。わかってもらえたためしがないのに。

そんな不毛なやり取りに対して、父から息子へのアドバイスがとても気の利いたものだった。情けなくもあるが、読んでいて膝を打ちたくなった。それは、「女は、どうやっても機嫌をなおさない。ただびくびくしながら、怒りをやり過ごすしかない」ということ。その通りかもしれない。このエピソードを読んでいて、何故か嬉しい気分になった。

このように、沢山のエピソードが盛り込まれているので、読む人それぞれの共感ポイントが見つかるかもしれないし、いろんな人に思いを馳せることができるかもしれない。そいう意味でいえば、好きな作品が人によって別れそうだし、ちょっとした名言集のような作品でもあると思った。また、人と人との距離感が絶妙で、上手く口にできないけれど、なんかいいのだ。

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comments

喧嘩のやり取り、私も一人で「そうそう」って思ってました。
女の人はたぶん何を言われたって気に入らないの。
お父さん、結構いいこと言ってたんですね。
記憶から飛んでました。
そう、女はただ甘えたいだけなのだ。

なな:2009/01/16(金) 21:06 | URL | [編集]

ななさん
喧嘩のやり取りは、男女共にわかっているのにねぇ。
お互いに消耗するだけなのに何度経験したことか^^;
自分の場合、親父の名言が一番印象に残りました。

しんちゃん:2009/01/17(土) 16:17 | URL | [編集]

こんばんは。
日常の何気ないエピソードが川上さんらしく丁寧に
描かれていて、読んでいて心地いい短篇集でしたね。
男女の関係とか人生とかって、きっと正しい答えは
ないように思うんだけど、だからきっと昔からみんな
悩み続けてきたのかな…。
読む人がきっと好きな短編を見つけられそうな本ですね。

mint:2009/01/17(土) 18:58 | URL | [編集]

まさに!私の夫は、まさに私が怒って騒いでるときは、「さわらぬ神に・・」と言わんばかりに黙ってやり過ごしていますね。
おかげで、私はいつも戦意消失です(笑)
こういう小さな共感って嬉しいものですね。

EKKO:2009/01/18(日) 13:27 | URL | [編集]

mintさん、こんにちは。
そうそう。読む人によって好きな短編を見つけられそうな本でした。
みんな何がしかの悩みを持っていて、過去があって…。
だけど、ふらふらと蛇行しながらも、前を向いて歩いている。
素敵な作品だと思いました。

しんちゃん:2009/01/18(日) 17:02 | URL | [編集]

EKKOさん
旦那さまは実践してるんだ。敵はやりますね(笑)
自分もこれを機に実践しなくては。にゃはは。
小さなあるあるを読むのは、楽しいですね~。

しんちゃん:2009/01/18(日) 17:08 | URL | [編集]

素敵な短編集で、かなり好きな感じでした。
男女の喧嘩のところはなんだかリアルでしたね(笑)
なんだかんだいって、うちもこういう感じかも知れないです。

ちきちき:2009/02/05(木) 22:14 | URL | [編集]

ちきちきさん
全体的にやわらかい印象を受けました。
その中でもあの喧嘩はとびきりのご馳走でした。
みんな同じことを経験して悟っていくのでしょうね(笑)

しんちゃん:2009/02/06(金) 13:52 | URL | [編集]

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